悠久の歌
第2話「銀色の女騎士」

 

 

街道

 

馬車の中

 

「カヤキス様、聖ハルイは如何でしたか?」

ふと口を開くカルナ

「…そうだな。中々に良い国だ。城下の民も、城も、兵も充実して生き生きとしてい

る。

我が黒竜国もあんな風にしたい物だ。」

「カヤキス様なら出来ますよ、きっと。」

「…ありがとう、紅。」

 

2日後

 

聖ハルイ

 

城のテラスで空を眺めるクリス

「クリス、どうしたの?」

ふと声を掛ける女性の声

その声のした方を向くクリス

「ラムダお姉様。いえ、特に何も。」

「嘘。大方黒竜国のカヤキス王子の事でも考えていたのでしょう。」

「なっ!そ、そんな事は有りません!」

ラムダの言葉に必死で否定するクリス

「あら?そうと言えるのかしら?」

「お姉様!!!」

クリスをからかうラムダ

ふとその時兵士がやってきた

「クリス様・ラムダ様!城下の酒場にて暴れている者が居るとの伝達が!」

その言葉に真剣な表情になる二人

「今行くわ。それと、リューイにも伝えて。お姉様。」

クリスの言葉に頷く

それを見てテラスから飛び降りるクリス

「さて、私も行きますか。」

 

城下町

 

酒場

 

男3人が酒場のウェイトレスを人質にしていた

「早く金と金品を寄こせって言っているだろう!」

男の一人が声を上げる

騎士団も出入り口を封鎖しているのだが、人質が居る為手が出せない

「クリス様はまだか!」

「今向かっておられます!」

騎士団の兵の声が響く

「クリス様〜?ほぅ、王女様が来るのか。面白い。」

そう言うと薄汚い笑みを浮かべるリーダー各の男

 

その直後の酒場の外

 

「お待たせ!中の状況は?」

「ハッ。立てこもってる男は3名!ウェイトレスの女性が1名人質となり、

他にもう一人銀色の鎧を纏った女性が中におります。」

「銀色の鎧の女性?その女性は中のどこら辺に?」

「申し訳ございません、そこまでは。」

「解ったわ、ありがとう。」

そう言うと考え込むクリス

「出てきたぞ!」

その言葉に顔を上げるクリス

そこにはウェイトレスを人質に取った男性の姿が有った

「あんたが王女様か?」

「えぇ。貴女達の目的は何かしら?」

「な〜に、国庫から財宝を少しだけ出してくれれば良いんだよ。」

男の言葉にざわつく騎士団

「騎士団!動揺などするな!それとこの事件が終わる迄口を開くな!真剣な表情をし

てなさい。良いわね?」

「ハッ!」

クリスの言葉に答える騎士団

「さてと、国庫の財宝がお目当てよね?」

「あぁ、そうだ。」

「無理ね、貴方達みたいな人間には、財宝なんて似合わない。合うのは、死だけよ。

そうクリスが良い放った直後

「ぐあっ!」

男の一人が叫ぶ

叫んだ男の方を見るとそこには銀色の鎧を纏った女性が居た

その一瞬の隙をつき、リーダー各の男からウェイトレスを引き離すクリス

そのまま男を切り伏せるクリスと銀色の鎧の女性

男達は手足を切りつけられただけだった

「ふぅ。騎士団、連行しなさい!」

「ハッ!」

クリスの言葉に答えると捕らえた男達と去っていく騎士団

騎士団が去って行ったのを確認すると口を開くクリス

「ご協力ありがとう。お陰でけが人を出す事なく片付いたわ。」

「いえ、私はただその場に居ただけですから。」

クリスの言葉にそう答える女性

「お礼をしたいわ。城へ来てくれるかしら?」

クリスの言葉に考える女性

「無理強いはしないわよ。」

そう付け加えるクリス

「…お伺い致します。」

「そう、ありがとう。それじゃ行きましょう。」

そう言って城へ向かおうとした時にふと何かに気付き振り返るクリス

「そう言えば自己紹介がまだだったわね。私はクリス。クリス=オーリ=ハルイ。

この聖ハルイの王女で有り、聖騎士団の団長よ。」

「レイピア。ティリス=レイピアよ。」

そう言うと握手を交わし、城へと向かう

 

城内謁見の間

 

玉座にはネルビス。その隣にラムダ

向かい合うようにしてクリス。その後ろにレイピアが居る

そんな中でネルビスが口を開く

「クリス、その方が先程の事件を収めてくれた協力者?」

「はい。」

「そう。貴女、名前は?」

ネルビスに問われ口を開くレイピア

「レイピア。ティリス=レイピアと申します。」

そう言うと真っ直ぐにネルビスを見据えるレイピア

「そう。ラムダ、クリス。彼女と二人っきりで話しがしたいわ。外してくれるかし

ら?」

「「はい。」」

そう言うと部屋から出て行く二人

 

謁見の間の外

 

部屋の外に出たクリスが口を開く

「二人っきりで話しをしたいだなんて、どう言うつもりかしら?お母様は。」

「何か意味が有るのでしょう。」

「…そうしときますか。」

そう言って話を区切るクリス

その直後

「ラムダ様・クリス様!」

そう言いながら兵士がやってくる

「どうしたの?」

「至急修練場へお越し下さい!」

兵士の言葉に何かを感じ修練場へ急ぐ二人

 

修練場

 

「次。」

そう言うと剣先を横に向ける蒼い髪の男性

「リューイ様、どう致しますか?」

兵士の言葉に返答に困るリューイ

何故ならば蒼い髪の男性の周りには倒れている兵士が多数居るのだから

「どうした?来ないのか?」

蒼い髪の男性が挑発する

その挑発に対しリューイが剣に手を掛ける

その瞬間

「なら私がお相手しようかしら?」

蒼い髪の男性の後ろから女性の声が聞こえる

「クリス隊長!」

思わずそう叫ぶリューイ

それに気付き後ろを見る蒼い髪の男性

「ほぅ、本命の御登場かい?」

その言葉に剣を抜くと口を開くクリス

「怪我をしていない者は怪我人を!リューイ、貴方も怪我人の快方を。」

「ハッ!」

そう言うと一斉に怪我人の快方をする兵士達

それを見て蒼髪の男性に剣を向けるクリス

「さて、私はクリス。聖騎士団の団長よ。貴方は?」

「ユアだ。」

そう言うと剣を構えるユア

「ユアね。さぁ、行くわよ。」

そう言うと一気に間を詰め、切りかかるクリス

それを間一髪で避けるユア

「(早い!)」

心の中でそう言うユア

尚もクリスの攻撃は続くが、それを避けるか受け流すユア

その様子を見て口を開くクリス

「へぇ、中々やるじゃない。」

「そうか?」

クリスの言葉に遠慮がちに答えるユア

「えぇ。」

そう言うと間を空けるクリス

「姉さん、防御結界の展開を。」

クリスの言葉に少しだけ呆れながらも口を開くラムダ

「あれする気ね。解ったわ。」

そう言うと詠唱に入るラムダ

「あら〜、やってるわね。」

ふと女性の声が聞こえる

「…レイピア、話は終わったの?」

間を空け、剣を構えながら口を開くクリス

「えぇ。クリス、貴女の部隊に入る事になったから。よろしく。それと、お手伝い。

そう言うとラムダと同じ防御結界魔術の詠唱に入るレイピア

「詠唱が、早い!」

側で聞いていたリューイが思わず驚く

その直後、同時に詠唱を終え、防御結界魔術を発動させるラムダとレイピア

「ひゅ〜。これで心置きなく放てるわね。」

そう言うと後ろに下げていたクリスの剣が光りだす

「受けきれるかしら?私の剣を。」

その言葉を聞き口を開くユア

「…なら、俺もそれ相応の技で対抗しなくちゃいけないな。」

そう言うと剣先を下にし、持ち手を顔の横に持ってくるユア

「…行くわよ。」

そう言うとユアに向かって駆け出すクリス

「受けてみなさい!我が一撃を!」

そう言うと剣を振り上げるクリス

それに対し切り上げる形で構えるユア

「ライトニングノヴァ!!!」

「月下昇華!!!」

クリスとユアの一撃がぶつかり合い、巨大な衝撃波が発生する

「全を防ぐ楯―エル・イージス―」

咄嗟にシールドを張るレイピア

しばらくし、発生した煙が収まると背中合わせに立つ、クリスとユアの姿が有った

「驚き。まさか対抗してくるなんてね。」

「俺もだ。」

そう言うと同時に倒れこむ二人

「医療班!二人を!」

ラムダの声に二人を医務室に運ぶ医療班

 

王族用医務室

 

「う、う〜ん。」

そう言うと目を覚ますクリス

「おはよう。ゆっくり眠れたかしら?」

そう言ったのは…

「レイピア。私は一体?」

「ユアと打ちたって倒れたのよ。共倒れ。」

「…そう。彼は?ユアは無事なの?」

クリスの言葉に頷くレイピア

それを見て安心するクリス

「それと、ネルビス女王から伝言。」

「お母様から?」

疑問に思うクリス

「えぇ。本日付で私とユアを貴女の部隊に編入との事よ。よろしくね、クリス隊長さ

ん。」

「…えぇ、よろしく。レイピア。」

レイピアの言葉にそう答えるクリス

 

それから3日後

 

いつも通りの訓練を終えた時、ふとユアがクリスに声を掛ける

「クリス隊長。今よろしいですか?」

「ユア。えぇ大丈夫よ。それで用件は?」

クリスにそう言われ答えるユア

「はい。明日、正確には今日の夜から2〜3日程休みを頂きたいのですが、よろしい

でしょうか?」

「何?何か用事でも有るの?」

「はい。とても大事な用事です。」

ユアの態度と言葉に口を開くクリス

「解ったわ。今の所任務も無いと思うし。」

「ありがとうございます。」

そう言うと一礼をして去っていくユア

その様子を遠目で見ていたレイピア

 

その日の夜

 

聖ハルイから少し離れた街道

 

その道を歩くユア

ふと目の前に人影が現れる

「誰だ?名乗れ!」

ユアが叫ぶ

「…ユア、貴方何処に行く気なのかしら?」

「…この声。レイピアか?」

ユアの言葉の後月光に照らされて姿が露になるレイピア

「ユア、何処に行く気なの?」

再度同じ事を問うレイピア

「お前には関係ない事だ。」

そう言うとレイピアの横を通り過ぎようとする

レイピアの横を通り過ぎる瞬間口を開くレイピア

「黒竜国を滅ぼしに行くんでしょ?」

その言葉に間を空け構えるユア

「レイピア。何故その事を知っている?」

「さぁ?何故でしょうね。月の民ユア!」

そう言うとレイピアも剣を抜く

しばしの沈黙の後口を開くレイピア

「止めとくわ。」

そう言うと振り返り剣を仕舞うレイピア

「レイピア、何故止める!」

ユアの言葉に口を開くレイピア

「既に起きた事を変えたくは無い。それによって何が起きるか解らないからね。」

「どう言う事だ?」

レイピアの言葉に混乱するユア

「私は未来から来た者。信じたくなければ信じなくても良いわ。それじゃ。」

そう言うとその場から姿を消すレイピア

「未来から、来た者。」

そう呟くユア

「ユア!」

その瞬間ユアを呼ぶ女の声

「ルナ。それにユイア。」

「どうしたの?」

ルナが問いかけてくる

「いや、なんでもない。それでは行こうか。黒き竜を潰しに。」

ユアの言葉に頷く二人

 

第3話「崩壊の序曲〜前編〜」へ続く

 

 

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