悠久の歌
第1話「聖ハルイ」

 

 

王国暦700年

 

現国王ネルビス女王が第2子を出産

第2子は第1子ラムダに続き女性

名は「クリス」と名づけられた

 

それから15年

 

聖ハルイ王国内騎士団修練場

 

「次!」

そう叫ぶ女性の前に誰も出る様子が無い

「もう終わりなの?」

「クリス、それ程迄に貴女が強くなった証拠よ。」

ふと掛けられた声に反応するクリス

「ラムダお姉様。そうですか?私はそんなに実感が無いのですが。」

「こうして誰も出てこない事が何よりの証拠よ。それよりもお母様が呼んでいたわ

よ。何か話があるみたい。」

「解りました。この汗を流したら迎います。」

「あまり遅れないようにね。」

そう言うと修練場から去っていくラムダ

「さてと、私も。」

そう言うとクリスも修練場から去っていく

 

王の間

 

「ラムダ、クリスの様子はどう?」

「剣の腕は日々上達してます。恐らく国内で右に出る者は居ないでしょう。」

ラムダの言葉に喜ぶ女性

「お母様、何がそんなに嬉しいのですか?」

「いえね、貴女とは全く正反対だから。…跡継ぎに困るわね。」

「全く、またその話ですか。まだ若いんですから、早いですよ。お母様。いえ、ネル

ビス陛下。」

「そうね。」

ネルビスがそう言うとドアをノックする音が聞こえる

「クリスです。」

「入りなさい。」

「失礼します。」

そう言うと王の間に入りネルビスの前迄来ると頭を下げるクリス

「参上致しました。どのようなご用件でしょうか?」

「頭を上げなさい、クリス。今ここには私達しか居ないのですから頭を垂れる必要は

無いわ。」

ネルビスの言葉に頭を上げるクリス

「クリス、近頃街道沿いで盗賊が頻繁に出没しているのを知っているかしら?」

「はい。兵から聞いております。その盗賊を退治せよと言うのですか?」

「えぇ。物分りが良いわね、クリスは。それで、出来るかしら?あぁ、勿論兵は用意

するわよ。」

「クリス、頼むわよ。盗賊のお陰で物資が不足気味になっているのよ、お願いね。」

「はい!」

ネルビスとラムダの言葉に返事をするクリス

「それでは準備をしますので失礼します。」

そう言うとお辞儀をし、王の間から去っていくクリス

「…娘の成長がこんな楽しみだなんて。」

「お母様、まだまだ若いのですから。」

「そうね。」

 

翌日

 

修練場

 

そこには一個師団の兵が集まっていた

「これより街道沿いに出没する盗賊の殲滅を行う!各自心して任務に当たって!」

そう言うと剣を抜き頭上に掲げる

「全ては平穏な暮らしの為に!」

そう言うと兵達から歓声が湧き出る

それを聞き剣を収め手を振るクリス

 

城門前

 

そこにはクリスとラムダの姿が有った

「それではお姉様、行ってきます。」

「えぇ。けどその前に一人だけ、紹介したい人が居るのよ。」

ラムダの言葉に疑問に思うクリス

「リューイ。」

ラムダにそう呼ばれ姿を現す男性

「彼の名前はリューイ。平民の出身だけど、自身の力だけでここまで来たの。お供に

でもしてやって。」

「姉さん。解りました。私はクリス。よろしくね、リューイ。」

「は、はい!」

緊張しながらも返事をするリューイ

「それでは、行ってきます。」

そう言うと出発するクリスとリューイ

 

街道をしばらく行くと兵士の一人から伝令が伝わる

「クリス隊長に伝令!前方の馬車が盗賊に襲われております!」

「リューイ、行くわよ。」

「あっ、はい。」

そう言うと駆け出す二人

「…見えた。リューイ、貴方はこのまま真っ直ぐ行って目の前の盗賊を倒して。」

「クリス様は?」

「私は馬車の後ろに回る!」

そう言うと横に反れ、その瞬間木を利用して馬車の後ろへと回る

(見っけ。襲われようとしてる。)」

そう言うと木を蹴り5〜6人居る盗賊の集団の中に割って入り一気に蹴散らすクリス

 

「なんだ貴様!ぐわっ!」

クリスに驚き声を上げた瞬間斬られる盗賊の一人

「中は?」

そう口にした瞬間断末魔が聞こえた

「…無事みたいね。」

「クリス様。」

「リューイ、大丈夫だった?」

「はい。それと、どうやら当たりだったみたいですね。」

「えぇ、そうね。それより馬車の人達は?」

クリスの尋ねる

「はい、手綱を握っていた方がお亡くなりに。中の人は無事なようです。」

「そう、ありがとう。」

リューイからの報告を聞くと馬車の幌をめくるクリス

「客人、大丈夫でしたか?」

そう言って中を見ると漆黒の鎧に身を包んだ男性が一人

同様に女性が二人

一人は少し真紅が混じっていた

…一目見て、隣国黒竜国の人だと解った

「あぁ、ご協力ありがとう。」

そう言って男性は手を差し伸べると同時に再度口を開いた

「黒竜国のカヤキス=フォル=ティアーズだ。貴女の名前は?」

カヤキスの問いに手を握ると口を開くクリス

「聖ハルイのクリス=オーリ=ハルイよ。聖ハルイ迄の道中、護衛に付かせて貰いま

す。」

「ありがたい、感謝する。」

カヤキスの言葉を聞くと外に出て指示を出すクリス

「誰か馬車引ける人居ない?」

「あ、あの、一応引けますけど…。」

直ぐ側からその声がして少し驚くクリス

「リューイ。解ったわ、お願いね。誰か!」

クリスの声に一人の兵士が近づいて来る

「盗賊はどうなった?」

「ハッ!殆ど殲滅致しました。それとアジトを突き止め捕らえられていた人々を解放

致しました。

それと財宝などを蓄えていたのですが、どう致しましょう?」

「捕らえられていた人々はこちらで保護。財宝はこちらで回収後国内の貧しい人々へ

と渡しなさい。」

「ハッ!」

そう言うとその場から去っていく

「リューイ、行きましょう。」

そう言うと馬車に乗り込むクリス

 

聖ハルイへ向かう馬車の中、一人考え込むクリス

(黒竜国の次期国王カヤキス。その彼が何故ここに?)」

 

それが、私と彼の最初の出会いだった

 

馬車に揺られふと口を開くクリス

「ねぇリューイ。」

「何ですか?クリス様。」

「黒竜国のカヤキスって知ってる?」

ふと出た質問に一瞬戸惑いつつも口を開くリューイ

「えぇ。知っています。黒竜国の次期王で剣の腕が抜群に良いと聞いています。それ

がどうかしたんですか?」

「いえ、なんでも無いわ。」

そう言うと遥か広い青空を眺めるクリス

 

聖ハルイ

 

城下町を城門目指して歩くクリス達

「それじゃあ親書を渡しに聖ハルイ迄?」

「あぁ。うちの親父も聖ハルイとの友好関係壊したくないみたいだからさ。」

「そぅ。それじゃ私が取り次いであげる。リューイ、後よろしく。っと、それと門通

る時は私の名前出してね。」

そう言うと城の中へと去っていくクリス

「…凄い性格だな。」

「自分も初めて知りました。」

「…そうか。」

呆れながらも城門へと向かうカヤキス達

 

城門

 

「クリス様は?」

城門の兵士に問いかけるリューイ

「女王陛下に会いに行くと言っておりました。それと、後ろの方々が?」

「あぁ。通っても大丈夫だよな?」

「はい。伺っております。」

「すまない。それじゃ、行きましょう。」

リューイの言葉の後城内へ入って行くリューイ達

 

修練場

 

「へぇ、修練場が有るのか。」

ふとカヤキスが口を開く

「えぇ。日々兵士達が修練を行っています。」

「ほぅ。」

リューイの言葉に関心するカヤキス

「あっ、居た居た。」

「クリス様。」

そう言うとクリスに向け敬礼をするリューイ

「リューイ、楽にして良いわよ。」

クリスの言葉に敬礼を解除するリューイ

「それで、ネルビス陛下は何と?」

「とりあえず面会はOKよ。こちらとしても関係をこじらせたく無いみたいだし。」

「そうか。ありがとう。」

「それじゃ、付いてきて。リューイも。」

そう言うと移動を始めるクリス

 

王の間の前

 

「この奥に居るけど、準備は良い?」

「あぁ。」

カヤキスの言葉に扉のノックし、口を開くクリス

「クリスです。黒竜国の方々をお連れしました。」

「入りなさい。」

「はい、失礼します。」

そう言うと扉を開けるクリスとリューイ

扉が開ききると再び声がする

「こちらへ。」

その言葉に玉座の前迄行き膝を付くカヤキス達

「お初目にかかります。黒竜国次期国王カヤキス=フォル=ティアーズです。後ろは

部下のカルナと紅です。」

「私はネルビス=オーリ=ハルイ。聖ハルイの今の王よ。隣はラムダ。私の娘でクリ

スの姉。

そして宮廷魔術師よ。…それより親書は?」

「こちらに。」

そう言うと新書を取り出すカヤキス

それを受け取るラムダ

「こちらです。」

そう言うとネルビスに手渡すラムダ

ラムダから手渡され親書を見るネルビス

親書を見終わり口を開くネルビス

「…解ったわ。これからも聖ハルイと黒竜国は友好関係を築いていきましょう。」

「ありがたいお言葉、ありがとうございます。」

礼儀正しく返事をするカヤキス

「クリス・ラムダ、黒竜国の皆さんに色々と教えてあげなさい。」

「「はい。」」

「それじゃ、行きましょう。城内を案内するわ。」

そう言うと王の間から出て行くクリス達

 

その後城内を案内され一泊し、翌日にカヤキス達は帰路に着いた

 

城下町の城門

 

そこには数人の兵士とクリスにラムダの姿が居た

 

「…クリス、もしかして惚れた?」

唐突に口を開くラムダ

「なっ!姉さん、何を言ってるんですか!わ、私はまだ15ですよ。そんな恋愛だな

んて…。」

焦るクリス

「フフッ、冗談よ。でも、結構良い人じゃない。早くしないと取っちゃうわよ。」

「姉さん!!!」

そのやり取りを見て軽く笑う兵士達

「貴方達!!!」

「「す、すみません!!!」」

「もぅ。」

そう言うと街道の方を見るクリス

(・・・カヤキスか、忘れないでおこう。)」

 

第2話「銀色の女騎士」へ続く

 

 

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