欲望の真相
それは1つの宝石から始まった。
「魔石」と呼ばれる宝石。そのひとつを手にしたことで、1人の男の人生が変わった。
魔石には欲望を糧にする魔人が封印されている。
男が手にした魔人には、石化の力を備えていた。
男は力を求めた。自分が満たされるための力を。
それから男の手によって、多くの美女が連れ去られて石にされていった。
この石化は体だけが石になり、同時に衣服が破れていくもので、彼女たちは全員全裸の石像にされていた。
この不可思議な事件の真相に近づける出来事があった。
犯人である男、花山クラインが、怪盗、シャドウレディを追い詰めたスパークガールと遭遇した。
戦いを挑まれたクラインは、スパークガールに向けて目を光らせた。次の瞬間、彼女のスーツと装備品が崩れだし、あらわになった体が石になっていた。
体の自由が利かないまま、スパークガールはスーツ、装備品、かつら、全てを取り払われ、全裸の石像となってしまった。彼女を嘲笑しながら、クラインは少女を連れ去って姿を消した。
だがその後、クラインは死亡した。石化されていた女性は元に戻っていたが、何が起こったのか覚えていなかった。
クラインを殺害したのはシャドウレディとされていた。だが真犯人は彼女ではなく、魔石から復活した魔人だった。
数多くの美女が素肌をさらけ出したこの美女誘拐事件。
事件の中には様々なキーパーソンが存在している。
どのような思惑があったのか。どのような心境だったのか。
その真相が語られようとしていた。
花山クライン。
今回の事件の犯人。
石化の力を得て美女たちを屈服させてきた彼の心境とは?
「クラインさんが事件を起こしたきっかけを教えていただけますでしょうか?」
「それはもちろん、あの宝石を手に入れたのがきっかけですね。宝石には、私の望みを叶える力が宿っていましたからね。」
「それで石化の能力を手に入れたのですね・・」
「私には地位も名誉もあったのです・・ところが誰も愛想笑いを振りまくだけで私を認めようとしない!特に女!」
「女・・・」
「いつも自分勝手で、私のことを頭ごなしに・・だから宝石を手にしたとき、願ったのです・・世界中の女を私のものにして、従わせてやろうと・・」
「それで美女を誘拐して、石化させていったわけですか・・ですがクラインさんが使う石化は、体だけを石にして服や装飾品は壊れていく、というものですが、その力を選んだ理由はなんですか?結果的に、石化された人は全裸にされるわけですが・・」
「女など元々薄汚いブタだ。ところが私がオブジェに変えたことで、ヤツらは見違えるほどに美しくなった。素肌をさらけ出させることで、その美しさは極まったのだ。それに女は私のものとなる。私のものは服で己を隠すことも許さない。それなりの服であってもヤツらがそれを着ていることもな。」
「なるほど。それであなたに石化された人は全員裸だったのですね・・でも男としては、女性の裸には動揺させられてしまうのではないでしょうか?」
「言ったでしょう、元々薄汚いブタだと。その裸を見ても嬉しくも何ともない。ヤツらが怖がったり恥ずかしがったりするのを見るほうが、よほど気分がいい。」
「時折石化した美女を壊すこともありましたよね。せっかくのコレクションを壊してもったいないとも思いますが・・」
「それもストレス解消にもなっているので・・・」
「そして、数々の美女をものにしてきたクラインさんに、あのスパークガールが挑戦してきましたが・・」
「スパークガール?誰のことだ?」
「最後にあなたが遭遇した美少女のことです。あの怪盗、シャドウレディを追い詰めた正義の稲光です。」
「あぁ、あの女か・・ずい分と口が悪く正義面したヤツだった・・しかし、あんな女がシャドウレディを追い詰めたというのは疑わしいことだな・・」
「それほどクラインさんの力がすごいということですね・・あのスパークガールさえも石化して、丸裸にして正体も暴いてしまったのですから・・」
「ヤツの正体などどうでもいい。誰だろうと女は私に屈することになる。ヤツも結果、私にオブジェにされて屈服したのだから・・」
「本当にすごいですね・・スパークガールは、あなたに全然攻撃を当てられなかったですし・・」
「いや、1回当たっている・・顔を傷つけられた・・・あんなヤツは私のコレクションに入れるわけにはいかない・・・!」
「だからその場で石化して置き去りにしてしまったのですね・・でもそんなことをしてよかったのでしょうか?・・石化されたスパークガールが誰かに発見されれば、あなたに疑いがかけられたかもしれなかったのに・・・」
「あれが元が本物の女だとはまず思わないだろう?それに私に屈服したこのいい誇張にもなるし・・それにしてもあの女、今思えば、まさかかつらまでつけていたとは・・だが私の手にかかれば、全てが暴かれることになる・・」
「スーツもかつらもボロボロ崩れていましたね・・」
「あれだけ反抗的だったあの女が、石化されて抵抗できなくなり、ただ涙を浮かべていた姿を見たときは、本当に愉快だった・・・」
「しかしその後、あのシャドウレディと遭遇したのですよね?」
「そうだ・・あの怪盗、シャドウレディを石化して屈服させれば、私の力も輝かしくなる・・そう思っていた・・・」
「ですが、完膚なきまでに叩きのめされましたね・・・」
「あれは悪夢だった・・私の力が、全くあの女には通じなかった・・そんなこと、あるはずが・・・」
シャドウレディに敗れたショックは相当のもので、思い出してしまったクラインは落ち込んでしまった。
しかし数多くの美女を手玉に取り、あのスパークガールさえも全裸の石像にしたことは脅威であるといえる。
スパークガール。
本名、細川ライム。
打倒シャドウレディのために現れた美少女。ワイヤーや電撃棒「エレキロッド」といった装備を持ち、常人離れした動きを発揮する。
その巧みな動きでシャドウレディを追い詰めたが、結局は敗北している。
彼女も今回の美女誘拐事件のキーパーソンの1人である。
クラインに戦いを挑んだ彼女だが、逆に石化され、素顔も素肌もさらけ出すことになってしまった。
他の美女とともに後に彼女も石化を解かれている。
全裸の石像にされてしまった正義のヒロインは、どのような気分を体感していたのか?
「ライムさん、今回はよろしくお願いします。」
「インタビューって、何だか緊張しちゃうな・・でも今回はスパークガールということで話をするんだよね?だったら正体をばらすようなことは・・」
「大丈夫です。この場は極秘の取材ですし、公開する際には正体を明かすようなことはしませんので・・」
「そう。それならいいんだけど・・実は、その事件のことは、なぜかよく覚えてないんだよね・・」
「ライムさんもですか・・事件の被害者は全員、事件に関する記憶がないみたいで・・・」
「もう、ホントに何があったっていうの!?気が付いたら外で裸になってたし、何でそういうことになってるのか全然分かんないし・・!」
「思い出したいですか?でしたらそのときのあなたの行動を記録した映像をお見せしましょう・・」
それからライムは、当時の自分の行動を映した映像を見た。
スパークガールに変装した彼女は、事件解決のためにクラインに立ち向かった。だが隙を突かれてクラインに捕まり、その場で彼が放った眼光を浴びてしまう。
するとスパークガールの衣装が崩れだし、あらわになった彼女の体が石に変わりだした。裸にされ、さらに体の自由が利かなくなることに困惑しながらも、スパークガールはクラインに発信機を付けた。
しかし石化が全身に行き渡り、彼女はスーツも装備もかつらも壊されて全裸の石像へと変わり果てた。もう彼女はスパークガールではなく、ライムという素顔と素肌をさらけ出していた。
ワイヤーが背中にくっついて宙吊りになったまま、物言わぬ石にされたライム。あざ笑うクラインが姿を消し、彼女はこの場に置き去りにされてしまった。
ライムが石化から解放されるのは、それからしばらく後になってからのことである。
「あ・・あたし、そんなことになってたの・・・!?」
「そうです。あなたは石にされて、街中で裸にされていたのです。石化が解かれたと同時に記憶が消えたので、このいきさつが分からなかったのでしょう・・」
「そんな・・そんな恥ずかしいことを忘れていたなんて・・・!」
「全てを思い出していただいたところで、いろいろとお聞きしたいと思います。」
「ふぅ・・もうこうなったら恥をかき捨てるしかないね・・・」
「ライムさんがこの事件に関わった理由とは何ですか?」
「もちろん正義のためよ!悪い誘拐犯のためにたくさんの女性が怖い思いをしているのを、黙って見ているなんてできない。だからスパークガールとして、誘拐犯を成敗しようとした・・」
「なるほど。ですが攻撃を当てられず、逆に捕まっていましたよ・・」
「ホントにすばしっこくて・・逆に捕まるなんて・・それでアイツの目がピカッて光ったら、あたしの服がボロボロになってて、あたしの体が固くなってひび割れてて自由に動かせなくなって・・!」
「それが石化が始まった瞬間ですね・・」
「左腕だけじゃない!左の胸もおしりも石になってるのが実感できた!それに前はほとんど丸見えになってるって気付いて、アイツに裸を見られて、すっごく恥ずかしくなったよ!」
「体が石になる恐怖と、裸にされる恥ずかしさ・・確かに動揺が膨らんでしまいますね・・」
「でもこのまま逃げられるわけにもいかなかったから、発信機だけは付けたけど・・・犯人を捕まえるどころか、逆に裸の石にされて・・思い出すだけで涙が出そう・・」
「あの石化で、あなたが扮していたスパークガールの衣装は、スーツや装備だけでなく、かつらも全て壊れていましたね。裸だけでなく、正体もばれてしまったのでは・・?」
「そうだった・・元に戻ったとき、ホントに何も身につけていなかった・・アイツだけじゃなく、アイミちゃんにもあたしのことが知られちゃった・・・!」
「アイミさん・・あなたがお友達になった人ですね・・」
「一応は正体は隠してることにしてるけど・・衣装全部引き剥がされて、あたしのことが知られてないわけがないよ・・」
「あの、アイミさんも犯人にさらわれてるのですよね?・・彼女も同様に石にされたかもしれないと、心配にならなかったのですか・・・?」
「あぁ・・アイミちゃんとどう会ったらいいのか・・・」
親友が連れ去られて自分と同じように全裸の石像にされたかもしれないという心配よりも、クラインに石化されたことで自分の正体が親友に知られてしまったことに不安になり、ひどく落ち込むライム。
正義と親友を守ろうとして石化と脱衣を強いられ、全裸の石像にされるというこの上ない敗北を喫したスパークガール。彼女の石化は、事件を知る者に強烈な印象を植えつけることになった。
小森アイミ。
クラインに最後に誘拐された人物で、世間を騒がせる怪盗、シャドウレディである。
アイミは魔石を回収するために行動していた。この誘拐事件の裏に魔石があるのではないかと睨み、囮となって犯人をおびき出そうとしていた。
だがシャドウレディに変身しようとしたところでスパークガールが現れ、アイミは思い切った行動ができなくなってしまった。
逃げようとするもクラインに捕まり、目の前でスパークガールが石化されていったのを目の当たりにしながら、アイミはクラインの屋敷に連れ込まれてしまった。
だがクラインの傍若無人に激怒したアイミは、シャドウレディに変身。クラインを叩きのめした後、彼が持っていた魔石を奪取した模様。
様々な思惑の交錯の中心にいた彼女には、どんな思いが宿っていたのか?
「よろしくお願いします、アイミさん。」
「わ、私・・インタビューや取材はすごく苦手で・・・」
「緊張しなくても大丈夫です。私がうまくリードしますので・・それに、あなたがシャドウレディであることも口外しませんので・・」
「そうですか・・よかったです・・それで、何を話したら・・・?」
「今回はあの連続美女誘拐事件についてです。あなたもその誘拐犯に誘拐された。しかも意図的に事件に関わろうとしましたね・・」
「は・・はい・・・」
「あなたはシャドウレディとして、魔石収集のために夜に出てきた。そこであなたは誘拐犯である花山クライン、さらに彼を捕まえようとしていたスパークガールと遭遇したわけですね・・」
「はい・・クラインと戦うためにシャドウレディに変身しようとしたら、スパークガールが出てきて・・変身できなくなっちゃって・・スパークガールに頼るしかなくなっちゃったの・・・」
「ですが離れようとしたあなたも、戦っていたスパークガールとともにクラインに捕まり、さらにスパークガールがクラインから石化をかけられてしまった・・」
「本当に驚きで怖かったです・・まさか人が石になることが現実にあるなんて・・しかもあのスパークガールが石化されて、服が壊されて裸にされていって・・・それなのにスパークガール、私のために必死になってました・・助けられなかったことを謝ってました・・・」
「石になっていく中で、涙を流していましたからね・・」
「もうたまらず叫んでましたよ・・私のためにあんなことになったスパークガールに・・・」
「ところで、スパークガールは石化された際、スーツも装備も全て引き剥がされて全裸にされたわけですが・・」
「はい・・・」
「結果的に彼女の正体が明るみになりましたが・・」
「実はそのとき霧がすごくて、石になっていくのは見えていたのですが、全体まではハッキリとは見えてなかったです・・だから仮に正体がばれていても、そのときの私には分からなかったです・・・」
「彼女の正体、知りたくはありませんか・・・?」
「いえ、そこまでは・・・私を助けようとして、あんなことになったんですから・・それに私も、正体を隠していますから・・・」
「そうですか・・・その後あなたは、クラインさんに連れ去られて、スパークガールと同じように石化された美女たちを目撃したのですね・・」
「はい・・あんなにたくさんの女性が、裸にされて石にされて・・・」
「あなたも同じように全裸の石像にされてしまう・・そんな怖さを感じていたのでしょうか・・・?」
「それもありましたが、自分のためにたくさんの女性にこんなことをしたのが許せない、という気持ちのほうが強かったです・・それで我慢ができなくなって、シャドウレディになってぶっ潰してしまったわけで・・」
「でもこれで、クラインさんの欲望を止めることができたわけですが・・」
「止めさせてもらった、というのが正しいのかもしれないですが・・・」
「結果、クラインにさらわれた美女の中で、あなただけが全裸の石像になるのを免れたことに・・」
「ちょ、ちょっと待ってください!誰だって有無を言わさず裸にされたらイヤですよ!」
「失言が過ぎました、すみません・・・」
「でも、スパークガールはどうしたのでしょう?・・・みんな元に戻ったみたいだけど、石化されてからずっと裸だったから・・・」
「大丈夫です。彼女に大きな問題は起きなかった模様です。全裸の石像にされていた間、彼女を目撃したのは知り合いの刑事1人のみでした・・」
「そ、そうだったんですか!?・・でも、知り合いでしたから、そんなに問題にならなかったかも・・・」
「何はともあれ、あなたは魔石を奪って、クラインに石化された人たちを助けたわけですから・・・」
「そういう言い方をされると、何だか正義の味方みたいですね・・怪盗なのに・・・」
「みんなを助ける怪盗も、いいと思いますよ・・」
「そういわれると嬉しくなってしまいますね・・・でも、この事件のように女性が裸になるようなことにはなってほしくない・・・」
「女性には災難でしたからね、今回は・・今後はこのようなことを引き起こす人が魔石を手にしないことを願いたいですね・・」
「そのためにも、急いで魔石を回収しないと!」
「意気込みがすごくなっているようです・・・」
魔石回収に意気込む怪盗の決心。それは女の意地も入り混じっているようだった。
魔石回収に尽力する怪盗は、石化した全裸の美女の美しささえも盗んでいったのだった。
たくさんの美女が石化によって全てをさらけ出された今回の連続美女誘拐事件。
ひとつの魔石とひとつの欲望が交わらなければ、このようなオブジェ、これだけのコレクションは実現しなかっただろう。
クラインの欲望と行動と、美少女たちの石の裸身は、より衝撃的な興奮をもたらすこととなった。