闇夜の蹂躙
「あ・・・あたし・・・」
あたしが目を覚ましたのは、全然知らない暗い部屋。何でこんなとこにいるのか、あたしはすぐに思い出せなかった。
「えっ・・・!?」
思い出そうとしていたとき、あたしは緊張した。あたしのいるこの部屋は、裸の女の石像がたくさん置かれてた。
「何なの、ここ!?・・・気分が、悪くなりそう・・・」
「どうだい?すばらしいだろう、私のコレクションたち・・」
声をかけられて、あたしは振り向いた。女の石像の間を通り抜けて、1人の男の人がやってきた。
「元はどいつもこいつも薄汚いブタさ。それを美しいオブジェに変えてやった・・美しく、すばらしくなれて、こいつらも感謝しているだろう・・・」
「何言ってるのよ・・こんなにたくさんの石像、かえって気分が悪くなるじゃない・・・!」
石像を見回す男に、あたしは不満を口にした。そのとき、あたしはこの男が誰なのかを思い出した。
「思い出した!・・アンタ、花山クラインね・・・!」
クラインに向けて声を上げるあたし。クラインは警察に寄付したりといったボランティアをしていると、みんなが大騒ぎしている人。今の警察を信用してなかったあたしは、クラインも信じてなかった。
「まさかアンタが連続誘拐犯だったなんて・・正義の青年実業家が聞いて呆れるわね・・・!」
「何だ、その態度は・・悪いヤツだと思っているのか・・・!?」
あたしがバカにすると、クラインがあたしに突っかかってきた。
「ではお前たちはどうなんだ!?私は金も地位も名誉も持っている!その素晴らしさがなぜ分からんのだ!?私がプライドを抑えて、これだけアプローチしているというのに!」
「分かりたくもないわよ!自分が偉いと思い上がってる上に、誘拐なんてやってるヤツのことなんて!」
怒鳴ってくるクラインに、あたしも言い返す。怒りを感じてたあたしをクラインが睨み付けてくる。
だが突然に、クラインが怒りを抑えて笑みを見せてきた。
「でももういいんだ。あの宝石を手に入れて、私はその悩みを解消させることができた・・」
「宝石・・・?」
クラインが口にした言葉の意味が、あたしには分からなかった。
「世の中の女は私のものだ。世界中の女が全員私に屈服することになる・・」
「ふざけないで!女はアンタのおもちゃじゃないのよ!アンタのようなヤツの思い通りにはさせない!あたしはアンタに絶対に屈服しない!」
クラインが最低なヤツだと思って、あたしは怒鳴った。どういうことになってるのか分かっていなかったけど、クラインを絶対に許しちゃいけないのは確かだと分かってた。
「それはどうかな?お前はもう私のコレクションの仲間入りをしているというのに・・」
「何を言ってるの!?あたしはアンタのいいようには・・!」
クラインが何を言ってるのか分からなくて、あたしは声を上げた。
ピキッ ピキッ ピキッ
そのとき、あたしの耳に何かが固まるような音が入ってきた。そしてあたしは自分の体に違和感を覚えた。
自分の体を見たとき、あたしは見たものが信じられなくなった。あたしの左手が固くなってひび割れてた。
「な・・何なの、コレ・・どうなってるの!?」
固まった自分の左腕に、あたしは目を疑った。ホントに石化なんてものがあるなんて信じられなかった。
さらに驚いたのは、体だけが石になって、その部分の服が破れていたことだった。つまりあたしは、クラインに裸を見せてたの。
「あのシャドウレディに挑戦した正義の稲光が聞いて呆れる。実に無様なことだな・・」
クラインがあたしの裸を見てあざ笑ってくる。体が思うように動かせず、あたしは裸になっている自分の体を隠せなかった。
「女は全員、私に屈することになる。お前も例外ではない・・」
「こんなんで・・こんなんであたしがアンタなんかに・・・!」
ピキッ パキッ パキッ
クラインに言い返そうとしたとき、あたしの体がさらに石に変わっていった。さらに動けなくなって、さらに裸にされていって、あたしは恥ずかしい気持ちを見せないようにするのに精一杯だった。
「ここまでやられても反抗的でいられるとはな・・だがムダだ。お前もオブジェとなって私のものとなるのだから・・」
「冗談じゃないって・・アンタみたいなサイテーなヤツのものに、誰が・・・!」
さらに笑ってくるクラインに言い返そうとしたけど、石になった体はあたしの体の自由だけじゃなく、力さえも奪ってた。アイツに体だけじゃなく、心まで好き勝手にされてくように、あたしは次第に気持ちまで後ろ向きになっていった。
「イヤ・・アンタなんかに・・・!」
パキッ ピキッ
気分がおかしくなりそうになっても、あたしはクラインに逆らおうとした。でもあたしは体のほとんどを石にされて、声を出すことも思うようにできなくなってた。
ピキッ パキッ
髪も口も動かせなくなって、あたしは声を出せなくなった。
(ゴメン・・アイミちゃん・・・ブーちゃん・・・)
悲しくなって辛くなって、あたしは涙を浮かべた。もうあたしにはこれしかできなかった。
フッ
次の瞬間、あたしはあたしの体があたしの言うことを全然受け付けなくなったと感じた。同時にあたしの体が全部石に変わってしまったとも。
「ヒッヒッヒッヒ・・正義の稲光とやらも、オブジェとなって私のものになるしかなかったな・・」
クラインがあたしを見て笑い声をあげてきた。アイツは笑いを続けながら、動けないあたしに近寄ってきた。
「こんなマネをされても、お前はもう私に逆らうことはできない・・」
そしてクラインはあたしの体を触ってきた。裸の自分が一方的に触られてることに、あたしは不快感と恥ずかしさを覚えた。
(やめて!あたしの体に触らないでよ!)
大声を上げるあたしだけど、その声はあたしの心の中にしか響いていない。クラインに全然届いてない。
「私がお前をどれだけ弄ぼうと、お前はもう何もできない・・」
クラインが黒いマントをひらめかせて、あたしの体を包むように突然抱きしめてきた。
(ちょっと!何をしてるのよ!?こんなことして・・!)
クラインに抱きしめられて、あたしはものすごく恥ずかしくなった。でも体が全然動かなくて、逆らうことも抜け出すこともできない。
「さぁ、私の施しを受け、一方的に弄ばれる気分を味わうがいい・・」
クラインが笑いながら、マントで包んでるあたしの胸に触ってきた。
(やめて・・離れて・・離れろっての!)
どんなに声を出そうとしても全然声が出なくて、クラインにも伝わらない。クラインはさらにあたしの体を撫で回してくる。
「自分が正義だと生意気にしていた女が、何の抵抗もできずに一方的に弄ばれる・・実に心地よいことだ・・・」
笑いながらあたしの体を触り続けるクライン。胸やお尻だけじゃなく、ついに股下まで。
(ダメ・・そんなところまでやられたら・・どうかなっちゃう・・・!)
クラインに体を触られてるのに、一方的にいじくりまわされてるのに、気持ち悪さの中に気持ちよさがあるようにあたしは感じてきた。
(助けて・・助けて・・ブーちゃん・・・)
どうすることも逆らうこともできなくなって、あたしは助けを呼ぶことしか思いつかなくなった。その声さえも、誰の耳にも入らなかった。
もうコイツのものになるしかない。コイツの言いなりになるしかない。あたしはそのことしか考えられなくなった。
「女は全員私に従うしかない。そのことを思い知って、オブジェとして過ごすといい・・」
クラインが笑い声を上げながら、あたしから離れていく。
(あたしは・・石・・・アイツの・・もの・・・)
クラインのものになっていくことを、受け入れようとしている自分と、逆らおうとする自分。そんな気分を感じながら、あたしは頭の中が真っ白になった。
「えっ・・・?」
気が付いたら、あたしは外にいた。この瞬間に分かったのは、外が夜だったことぐらいだった。
「わっ!」
次の瞬間、あたしは突然落下した。なぜか空中にいた。
「なになになに、何なのぉーーー!?・・イタッ!」
何がどうなってるのか分かんないまま、あたしは落ちた。地面に体を打ち付けて、あたしは痛がった。
「イタタタ・・そ、それに、寒い!・・っていうか、何で裸なの!?」
丸裸になっていることと寒さで、あたしは自分の体を抱きしめた。誰かに見られないように、あたしは物陰に隠れた。
(何であたし、裸で外にいるのよ〜・・何でこんなことになってるのよ〜・・・!?)
何でこんなことになってるのか、あたしは気が付く前に何をされたのか、全然思い出せなかった。
「もー!どうやって帰ったらいいのよー!」
あたしはたまらず声を上げてた。あれから誰にも見つからずに帰るのに、あたしは必死だった。
何で道の真ん中で裸でいたのか。何があったのか。どんなに思い出そうとしても、あたしは思い出すことができなかった。
あのときあたしに何があったのか、とんでもないことをされたんじゃないか。あたしはこの後も分からないままだった。