闇夜の美少女
街の平和を守ろうとする1人の美少女。
だがある日、彼女は正義の味方から美しきオブジェと化した。
それからの彼女には、さらなる運命が待ち構えていた。
この街では最近、美女が次々と誘拐される事件が起こっていた。警察が警戒網を張っても、事件に歯止めがかかることはなかった。
その誘拐事件から街を守ろうと、1人の少女が立ち上がった。
細川ライム。スパークガール。街を騒がせる怪盗、シャドウレディを倒すためにやってきた正義の稲光。
スパークガールの衣装を身につけて果敢に挑んだライム。衣服を切り裂かれて痴態をさらすことになったが、シャドウレディを追い詰めることができた。
シャドウレディ打倒にさらなる正義感を燃やす一方、連続誘拐犯から街と女性を守ろうと、ライムは意気込んでいた。
そしてライムは、スパークガールとして誘拐犯である黒ずくめの男に立ち向かっていった。
だが一瞬の隙を突かれて、ライムは誘拐犯に捕まってしまう。さらに誘拐犯の目からまばゆいばかりの光が放たれた。
「私のコレクションに加わる資格もない!終わることのない昼と夜のくり返しを見守り続けるがいい!」
ピキッ ピキッ ピキッ
誘拐犯が不気味に言い放った瞬間、突然スパークガールの衣装が引き剥がされた。あらわになったライムの体が人でないものへと変化していた。
「な、何なの、コレ!?」
変わり果てた自分の姿に驚愕するライム。彼女が見つめる左腕は固くなっており、ところどころにヒビが入っていた。
左腕だけでなく、左胸、お尻、秘所さえも石に変わり、誘拐犯にさらけ出されることになった。
パキッ
石化がさらに進行し、スパークガールの衣装や装備、さらにはかつらまでが崩れ出していく。恥じらいを思い知らされるが、体が石になって自由が利かず、ライムは裸を隠すこともできなかった。
パキッ ピキッ
手足の先まで石化がおよび、手袋やブーツまでも壊れていった。さらに首元から頬にまで石に変わり、かつらが壊れて石になった本当の髪があらわになっていた。
「ヒッヒッヒッヒ、ヒッヒッヒッヒ・・」
ピキッ パキッ
誘拐犯があざ笑う前で、ライムはほとんど石に変わっていた。唇までも石に変わり、彼女は声を発することもできなくなった。
どうすることもできなくなり、ライムは目に涙を浮かべる。
フッ
その涙があふれた瞬間に、瞳にもヒビが入った。
誘拐犯の石化を受けて、ライムは全裸の石像と化した。スパークガールの衣装を全て引き剥がされ、素肌も素顔も全てさらけ出された彼女は、誘拐犯が去った夜道に置き去りにされてしまった。
次々と美女を連れ去っていく誘拐犯。誘拐した美女を石化して全裸の石像にしてコレクションにしていった。
ライムもその誘拐犯の手にかかり、スパークガールの衣装を全て引き剥がされて、全裸の石像にされてしまった。
一糸まとわぬ姿の物言わぬ石像と化したまま、ライムは微動だにすることなく立ち尽くしていた。
彼女が元に戻らないまま、夜が明けてしまった。
全裸の石像となったままのライムは、すぐに街の人々に発見され、ついには警官たちも駆けつけることとなった。
「いったい何なんだ、こりゃ・・・」
「誘拐を警戒していたエリア内に、全裸の女性の石像・・・」
道の真ん中で立ち尽くしていたライムに、警官や野次馬たちが困惑して呟きかける。
「それにしても、すごいきれいだな・・・」
「こんなきれいな石像・・すばらしい体してる上に裸だなんて・・・」
ライムの石の裸身を見つめてにやけ顔を浮かべる警官たち。だが彼らはすぐに我に返る。
「しかし、この女性の石像がどうしてこんな道の真ん中に・・・?」
「もしかして、あの誘拐事件と関係しているんじゃ・・さらわれた女性が石にされて・・・!?」
「バカなこと言ってんじゃないって。そんな非現実的なこと、あるわけないだろ・・」
「そうだな・・事件とは無関係なのかな・・・?」
誘拐事件との関連性を模索するも、そのつながりを見出せず、警官たちの疑問は深まるばかりだった。
そこへ1人の初老の男が現れ、警官たちに声をかけてきた。
「この像は、何か事件と関係しているのかな?」
「いえ、まだ断定ができていなくて・・詳しく調べていない状態でして・・」
男がかけた言葉に警官たちが答える。
「大丈夫なようでしたら、この像、もらってもよろしいでしょうか?もちろん持ち主がいれば話は別ですが・・」
「いえ、持ち主は分かっていないのですが・・現在調査中です。」
「では持ち主が分かるまでの間だけということにしましょう。持ち主が分かればすぐに引き渡します。」
「しかし・・」
「いくら石像だからといって、裸の女性をこのまま外に置いたままにするのはいかがなものかと・・」
腑に落ちない警官たちだが、男に押し切られてしまう。結果、ライムはこの通りから運び出されることになった。
ライムは男が経営している展示館に運ばれることになった。そして彼女は展示品として飾られることになった。
全裸であるため、観覧は制限されることとなった。それでも見に来る客がひっきりなしに訪れてきた。
石像、彫刻としても美しさ、すばらしさよりも、全裸の美少女としてのいやらしさをあらわにする客が多かった。接触禁止とされているにもかかわらず、触ろうと柵の中に入ろうとして警備員に連れて行かれる客もいた。
良くも悪くも注目が膨らんでいくライム。
展示館が開館時間を過ぎても、ライムに対する関心は消えていなかった。
重宝されて厳重に保管されているはずの彼女。ところがそのセキュリティをわざと解除して、館長である男が彼女の置かれている場所に入ってきた。
「フフフフフ、待っていたぞ、このときが来るのを・・・」
全裸の石像であるライムを見つめて、館長がいやらしい笑いを浮かべる。
「こんなに美しくきれいな体型をしている美女の石像だ・・もっと堪能しないわけにいかない・・・」
館長がライムの石の胸に手を当てて撫でていく。石となっているライムは、体や胸を触られても微動だにしない。
「いい、いい・・大きく形のいい胸だ・・こんないい姿かたちなのに石像だとは・・まるで本物みたいだ・・・」
ライムの石の裸身を堪能し、喜びを膨らませていく館長。彼が触れている全裸の女性の石像が、本物の少女が石化されたものとは思いもよらなかった。
「本当に本物であったら、もっとよかったかもしれない・・石だとやわらかさがないから・・・」
不満を口にしながらも、館長はライムの石の裸身をさらに撫でまわしていく。様々なところを触られているにもかかわらず、それでも彼女は全く動かない。
「いやぁ、やっぱり美女はいいものだぁ・・」
ライムの石の裸身を堪能して、館長が満面の笑みを浮かべる。だがすぐに彼の表情が曇った。
「これほどの上物、泥棒が誰も狙わないはずがない・・もっと警備を厳重にしたほうがよさそうだ・・」
ライムを奪われないよう、館長は警戒を強めていた。
「特にあのシャドウレディは要注意だ・・警察も手を焼いていたし・・」
館長は危機感を感じながら、ライムの置かれている部屋から出ていった。
後日、館長の提案で警備を強化することになった。警察にも警備を依頼していた。
泥棒から石像を守ろうという館長の狙いだった。
だがいつまでたっても、シャドウレディが現れることも予告状が送られることもなかった。
シャドウレディが現れないのは当然だった。
次々と美女を誘拐して石化してコレクションしていた誘拐犯。シャドウレディに変身していた少女も、誘拐犯に連れ去られて、ライムと同様に全裸の石像にされてしまっていた。
いつしかシャドウレディは都市伝説として扱われることになった。
正義の稲光として街に現れたライム、スパークガール。
だが今の彼女は正義のヒロインではなく、全てをさらけ出した全裸の石像である。
美しき像として立ち尽くしているライム。
欲望が招いた世界の終わりまで、闇夜の美少女は美しき姿を保ち続けることだろう。