スーパーロボット大戦CROSS

第77話「次元の決着」

 

 

 ついに時間を超えるまでに至ったカナタとラブ。イザナギがスサノオの動きを捉え、ビームライフルの銃口を向けていた。
「カナタくん、ラブちゃん・・君たちも時間を超えられるようになったのだな・・それも、私以上に使いこなしている・・・」
 ゼロスがカナタたちの発揮した力を痛感して、息を呑む。
「私たち、もう確信してるよ・・博士よりも早く時間を超えられることに・・・」
「オレたちはアンタを止めるために、時間を超える禁忌を犯す・・・!」
 ラブとカナタが静かに告げて、イザナギがビームライフルを発射した。スサノオが時を超えて、ビームをかわした。
 だがその先にイザナギが回り込み、再びビームライフルを構えていた。
「そう動くことも見えていた・・」
「私を大きく凌駕している・・イザナギ・・思っていたよりも完成度が高かったようだ・・・!」
 次元の力をより強く使いこなしているカナタとラブに、ゼロスは追い詰められながらも歓喜を感じていた。
「もっとイザナギと君たちを調べる必要がある・・もっともっと・・!」
 ゼロスが目を見開いて、スサノオがワープしてイザナギの背後に回る。
「私たちも世界も、あなたの研究の道具じゃない!」
 ラブが言い放ち、同時にイザナギがスサノオの背中をビームライフルで撃った。
「うおっ!」
 スサノオが爆発に襲われて、元の次元に飛び出した。イザナギもスサノオを追って次元を超えた。
「カナタたちが、ゼロスを追い詰めている・・!」
 シンがイザナギの姿を見て、戸惑いを覚える。
「カナタとラブも、ゼロスのように時間を超えられるまでに、次元の力を強化することができたのか・・」
「これで2人は、博士を超えることができた・・!」
 レイもカナタたちの力の飛躍を確信し、ルナマリアも微笑んだ。
「よっしゃー!このままやっちまえ、2人ともー!」
 孝一がカナタたちに呼びかけて、ダイミダラー2機がダイケンゼン、ペンギンロボと激しくぶつかり合う。
「ゼロス博士、もうこんな研究はやめるんだ・・この研究はこの世界だけじゃなく、いろんな世界や、そこに住むみんなを危険に巻き込んでいるんだ・・・!」
 カナタがゼロスに降参するように言う。
「私はこの最高の研究を進め、世界の発展を目指すのだ・・それは全てのためにもなるはずだ・・・!」
「それでみんなに迷惑を掛けたら、意味がないよ・・!」
 探求心を強めるばかりのゼロスに、ラブが不満を口にする。
「カナタくん、君やカンナくんも新しい発見に向けて努力し、私に協力してくれたではないか・・それなのに、私の研究を阻むというのか・・・?」
 ゼロスがイザナギに向かって手を伸ばし手招きをする。
「確かにオレたちも探求心を持って、あなたに協力してきた・・でも世界を混乱させてみんなに迷惑を掛けてまで、研究を成功したいとは思わない!」
「この研究で世界がつながってみんなと出会えたよ・・でもこれ以上次元を歪めて、世界を滅ぼすようなことはしちゃいけないよ!」
 カナタもラブも研究熱心になることは認めるも、ゼロスの行き過ぎた研究を認めようとしない。
「君たちの探求心もその程度か・・残念だよ・・・!」
「あなたは人の心を失い、人ばかりか世界までも研究のための道具だと考えるようになってしまった・・アンタは絶対に許さない!」
 ため息をつくゼロスに、カナタが怒りをぶつけた。
「私はこれからも研究を進め、次元の果てを目指して追及していく・・誰にも邪魔はさせん!」
 ゼロスが自身の野心に突き動かされて、スサノオが次元を超えて移動した。
「もう私たちから逃げられないよ、博士・・・!」
 ラブが言うと、イザナギもスサノオを追って、その背後に回り込んだ。
「私は、追いつかれるわけにはいかん!」
 ゼロスが感覚を研ぎ澄ませて、体から次元の力の光を発する。スサノオが速度を上げて、イザナギの後ろを取ろうとする。
 しかしどれだけ時間や空間を超えても、スサノオはイザナギに背後を取られる一方だった。
(もはや、イザナギからは逃げきれないというのか・・・!?)
 絶体絶命を痛感して、ゼロスが目を見開く。時間を超えて回り込む速さにおいて、イザナギはスサノオを上回っていた。
(もはや逃げも小細工も通じない・・ならば打つ手は1つしかない・・!)
 思い立ったゼロスがコンピューターを操作する。スサノオが移動を続けながら、両肩に展開させた砲門にエネルギーを集束させる。
(スサノオのディメンションブレイカーは、次元の力をより強く効率よく放つことができる・・イザナギはたとえディメンションブレイカーで迎え撃っても、押し切られることになる・・!)
 ディメンションブレイカーを撃てれば勝てると、ゼロスは確信していた。スサノオはイザナギの追撃をかわしながら、チャージを急ぐ。
(もうすぐ撃てる・・しかも不意を突ければ、イザナギは回避が不可能になる・・・!)
 ゼロスがチャージ完了を見据えて、スサノオがイザナギと向かい合った。
「君たちもイザナギも消してしまうのは残念だが、研究が阻まれるよりはいい・・!」
「ゼロス・・ディメンションブレイカーを撃つつもりなのか・・他の次元の影響を考えずに・・・!」
 倒すことを優先させるゼロスに対し、カナタが目つきを鋭くする。
「ラブ、次元の歪みを最小限に食い止めるよ・・こっちの攻撃を、ゼロスの攻撃を押さえ込めるように集中させる・・・!」
「うん・・みんなの世界を、これ以上ムチャクチャにできないもんね・・・!」
 ゼロスを迎え撃つカナタの言葉に、ラブが賛同する。イザナギも時間を超えながら、既にディメンションブレイカーの発射準備を整えていた。
 イザナギとスサノオが元の次元に戻って、海上で向き合っていた。
「カナタもゼロス博士も、ディメンションブレイカーを撃つつもりだよ・・!」
「離れないと巻き添えになりそうだよ・・・!」
 海潮が緊張を膨らませ、霧子が呼びかける。
「私たちも一気に吹っ飛ばしてやるわよ・・!」
「ディスコードフェイザーでも収斂時空砲でも、今のイザナギたちのディメンションブレイカーを相殺することはできませんわ。」
 加勢しようとするアンジュを、サラマンディーネが呼び止める。
「もうオレたちは、ホントにカナタとラブに任せるしかないってことなのか・・・!」
 シンもカナタたちを助けられない無力さを感じて、悔しさを浮かべる。
「いくよ、ラブ・・!」
「うん、カナタ・・!」
 カナタが声を掛けて、ラブが頷く。
「ディメンションブレイカー、発射!」
 カナタの掛け声と同時に、イザナギがディメンションブレイカーを発射した。スサノオも同時にディメンションブレイカーを発射した。
 2機の砲撃がぶつかり合い、かつてない衝撃を巻き起こして空間を大きく揺さぶった。
「こ、こりゃ・・思ってた以上の歪みじゃねぇかよ・・!」
「近くにいると、高性能の機体でもひとたまりもないわ・・!」
 大規模な次元の変動に、ヒルダが毒づき、エルシャが警戒を強める。
「うわっ!」
「キャッ!」
 隼人の操縦するビッグエース、翔子と穂波のエースが歪みの衝撃を受けて火花を散らした。
「鉄さん!」
「もっと離れたほうがよさそうね・・!」
 海潮が叫び、魅波が注意する。ランガもデスティニーたちもイザナギたちから離れる。
「イザナギのディメンションブレイカーの光を、スサノオの光の中心に集中させる・・!」
「私たちの力も、博士の光の中心に・・・!」
 カナタとラブが目を閉じて、感覚を研ぎ澄ませる。イザナギの光が細くなり、スサノオの光を貫き始める。
「その手は私も予測しているぞ。」
 ゼロスも冷静に判断し、スサノオも光を集束させていく。
「向こうの力を破れない・・・!」
「早く押し切らないと、取り返しがつかなくなっちゃうよ・・!」
 カナタとラブが集中力を高めて、次元の力を強めていく。
「性能ではスサノオの方が上だ。力を集めればイザナギに勝機はない・・!」
 ゼロスが勝利を確信して笑みを強める。スサノオの光がイザナギの光を押し始める。
「君たちとイザナギの代わりに、私とスサノオが次元の研究を完成させよう!」
「いいや・・アンタはオレたちが止める・・絶対に止める!」
 言いかけるゼロスにカナタが言い放ち、イザナギが放出している光を強めた。
「君たちは、まだこれほどの力を出せるのか・・ますます研究を果たさねばならんな!」
「あなたの手で、この研究が最後まで成功することはないよ・・私たちが、あなたを止めるから!」
 喜びに打ち震えるゼロスに、ラブが自分たちの意思を言い放つ。
 イザナギの光が強まり、再びスサノオの光を押し込んでいく。
「バカな!?・・スサノオが、私の力が押し切られるなど・・・!」
 自身の全力が競り負けていることに、ゼロスが驚愕する。
「私も次元の力を使えるようになった!その結果、肉体も全盛期以上の力を持つようになり、私は体も頭脳も最高となった!」
「でもその次元の力は、私から奪ったものだよね・・・?」
 歓喜を募らせるゼロスに、ラブが静かに問いかけた。
「次元の力を本当に使いこなしているのは、博士じゃなく、私たちのほう・・元々次元の力を持っていた私たちのほう・・」
「機体の性能は負けているとしても、総合的な力だったらオレたちの方が上だ!」
 ラブに続いてカナタもゼロスに言い放つ。2人から出ている光は、まばゆいほどになっていた。
「君たちは次元の力は、底なしなのか・・・!?」
 カナタたちの力に、ゼロスが愕然となる。
 そのとき、ゼロスが自分の中にある次元の力が弱まっていることに気づいた。
「力が抜けていく!?・・私から次元の力が消えていく・・・!?」
 自分から光が離れていくことに、ゼロスが愕然となる。
「使いすぎたことで、次元の力を維持できなくなったみたいだな・・」
「博士が使っていた力は、結局借り物だったってことだね・・・」
 ゼロスに対する皮肉を感じて、カナタとラブが表情を曇らせる。イザナギの放つ光が収束して、スサノオの光の中央を突き抜けた。
「私が・・わしが・・この栄光の研究を成功させるはずだった・・新しい可能性を見出すはずだったのに・・・」
 敗北を痛感するゼロスが絶望する。次元の力を失い、彼の体が元の老人に戻っていく。
「わしは・・何も実現できずに・・全てを失うのか・・・」
 イザナギの光に抗うことができず、ゼロスはその中に消えた。スサノオも光の中に姿を消した。
「やった・・博士を止めることができたよ・・・でも・・・」
「ゼロスを・・博士を助け出すことはできなかった・・・オレたちの言葉を、全然聞き入れてくれなかった・・・」
 ラブとカナタはゼロスとの戦いに勝ったことを、素直に喜べなかった。覚悟をしていたが、戻ってきてほしいという気持ちも2人にはあった。
「戻ろう、ラブ・・みんなのところに・・・」
「うん・・みんなも、博士が呼び出した機体と戦っているはずだよ・・・」
 カナタとラブがデスティニーたちのいるほうへ視線を移す。イザナギとスサノオのディメンションブレイカーの激突の衝撃で、シンたちとフリーダムたちの交戦が中断していた。
 そのとき、イザナギの周辺の空間がさらに歪み出した。
「こ、これって・・!?」
「オレたちの力で、次元の歪みが大きくなったんだ!」
 ラブが驚愕して、カナタが緊迫を募らせる。
「カナタ!」
「ラブ!」
「みんな、来るな!」
 シンと海潮が近づこうとして、カナタが呼び止めた。
「この歪みに巻き込まれたら、バラバラになってしまう!オレたちとイザナギじゃないと耐えられない!」
「だけど、このままじゃカナタたちが、歪みに巻き込まれて・・!」
 注意を伝えるカナタだが、シンは納得しない。
「みんなは残った機体とバンガを倒してくれ!オレたちは必ず戻るから!」
「私たちは、私たちとみんなが幸せになるのを願っているから!」
 カナタとラブが呼びかけて、周囲の歪みへの対応に集中する。
「2人とも・・・必ず帰ってこいよ!」
「喫茶店を開くから、あなたたちも絶対に来なさいよ!」
 シンがカナタたちを信じて、アンジュが呼びかける。
「武蔵野にまた来て!私たちも商店街のみんなも、2人を待っているから!」
「そのときは、私たちみんなでパーティーをやりましょう!」
「おめぇらがいねぇと盛り上がらねぇからな!」
 海潮、霧子、孝一もカナタたちに呼びかける。
「みんな・・・ありがとう!」
「必ずこの世界に戻るからね!」
 カナタが感謝して、ラブが笑顔で答えた。2人は空間の歪みの、シンたちはフリーダムたちの対処に専念した。
「これでますます、みんなのところに帰らないといけないな・・!」
「うん!家に帰るまでが遠足!みんなのところに帰るまでが戦いだね!」
 カナタとラブが希望を見つけて笑みをこぼした。2人は意識を集中して、イザナギが押し寄せる歪みを中和しようとする。
「オレたちの力やゼロス博士の研究で、世界がムチャクチャになってしまった・・みんなと出会えて救われたことはあるけど、これ以上世界を歪ませて崩壊させるわけにはいかない・・・!」
 カナタが呟きながら、これまでの出会いと戦いを思い出していく。
「シン、ホントに感情的だったけど、戦いを終わらせるために必死だった・・孝一はいやらしいけど、お前から何度も元気をもらったな・・・」
「霧子、将馬くんとラブラブなところ、また見に行くからね・・アンジュ、必ず喫茶店に行くよ・・海潮、みんなで楽園を見つけよう・・・」
 カナタとラブがシンたちへの思いを口にする。2人からあふれた光がイザナギから放出され、空間の歪みを抑えていく。
 しかし歪みはイザナギを取り囲むように変動し、別の次元へ引き込もうとする。
「歪みが、次元の力を出している私たちに引き寄せられているみたいに・・!」
「こっちに来るなら好都合って、考えるしかないな・・・!」
 ラブが緊張を募らせて、カナタが覚悟を決める。2人が次元の力の光をイザナギに集束させて、迫る歪みを中和させていく。
「このままじゃ歪みに押しつぶされちゃう・・・!」
「オレたちが、別の次元に行ってでも・・そうすれば、ここは助かるはずだ・・・!」
「でも私たちは帰ってこれなくなるかもしれないよ・・・!」
「それでも帰るんだ・・帰るって、みんなと約束したんだ!」
 ラブが不安を覚えるが、カナタは諦めずに力を振り絞る。歪みは集束されることで、限定的に力が増していた。
「もう1度、ディメンションブレイカーを撃つ・・歪みを歪みで相殺する・・毒を以て毒を制す!」
「でもものすごく危険だよね・・今までで1番ってくらいに・・!」
「今までだって危険の連続だった・・死ぬかもしれないって思ったこともあった・・それでもオレたちは力を合わせて乗り越えてきた・・!」
「今回だって乗り越えられる・・・カナタと一緒なら・・・!」
 カナタに励まされて、ラブが希望を取り戻していく。
「行くぞ・・ディメンションブレイカー!」
 カナタが叫び、イザナギが歪みに範囲を絞ってディメンションブレイカーを発射した。空間の歪みが入り乱れて、収束に向かっていく。
 しかしイザナギも現れた空間の裂け目に巻き込まれて、デスティニーたちから遠ざかっていく。
「カナタ・・・カナタ!ラブ!」
 シンがカナタたちに向かって叫ぶ、収束されていく歪みに引き寄せられて、フリーダムたちが吸い込まれていく。
 そのとき、1機のザクが飛び出して、イザナギに向かっていく。
「えっ!?何!?」
「ザク!?ミネルバから出たのか!?」
 ルナマリアとシンがザクを見て驚く。ザクはミネルバから発進したものだった。
「艦長、愛野カンナが医務室から抜け出して、ザクで出ていったそうです!」
「何ですって!?」
 アーサーが報告して、タリアが驚きの声を上げる。
「戻りなさい!あなたでは止められないわ!」
「そうはいかないわ・・ラブとカナタを助け出せるのは、私しかいないから・・・!」
 タリアが呼び止めるが、ザクに乗っているカンナは引き返そうとしない。空間の歪みの衝撃で、ザクの胴体から火花が散る。
「ムチャだよ!カナタたちのところに行く前にバラバラになっちゃうよ!」
「ランガでもヴィルキスでも、時間も空間も歪ませるあの歪みに飛び込めば無事では済まない・・同じ次元の力を持つ私しか、ラブたちを連れ戻せない・・・!」
 海潮が呼び止めるが、カンナは止まろうとしない。ザクが衝撃を受けて、左腕が爆発した。
「カンナ!?」
「お姉ちゃん!」
 カナタとラブも気付いて、カンナへ叫ぶ。
「ハイブリッドディメンションを持たない機体でここに来るなんて、ムチャもいいとこだ!」
「カナタ、私はまた生きているし、負けを認めているわけじゃない!あなたを倒すまでは、私は死なない!」
 怒鳴るカナタに、カンナが自分の考えを言い放つ。
「私はあなたを倒す・・イザナミよりも強力な力を手に入れて、次は私が勝つ・・!」
「カンナ、まだそんなことを・・何が大切なことか、お前は分からないのか!?」
「今の私には、それしかないのよ!あなたたちが違うと言ってもね!」
「カンナ・・どこまでお前は・・・!」
 引き下がろうとしないカンナに、カナタが憤りを浮かべる。
「もうあなたはお姉ちゃんじゃない・・だから、あなたに助けられるつもりはない!」
 ラブがカンナを見放して、自分たちで脱出しようと考える。
「お前はオレを倒すことしか考えなくなり、差し伸べられた救いの手をことごとく払ってしまった・・もう、救いようがない・・・!」
 カナタもカンナのことを見放そうとする。しかし彼もラブも、カンナを失う悲しみを噛みしめていた。
「私を甘く見ないで・・私も、あなたたちと同じ力を持っているのだから・・!」
 カンナが意識を集中させて、次元の力を発揮する。
「カンナ、何を・・!?」
「あなたたちをここから押し出すわ・・そうすればあなたたちは元の世界に戻れる・・・!」
 カナタが声を荒げて、カンナが呼びかける。
「どういうつもりだ!?そんなことをしても、お前が犠牲になるだけだぞ!」
「言ったはずよ。私はあなたを倒すまで死なないと・・私も必ず生き延びてみせる・・・!」
 問い詰めるカナタに、カンナが声を振り絞る。ザクからあふれた光がイザナギを押し出していく。
「これは・・!?」
「カンナの力がオレたちを外へ出していく・・・!」
 ラブとカナタがカンナの力に助けられていることに当惑する。
「お互い生き残るのよ・・そして今度こそ、私が勝つ・・・!」
「カンナ・・・お前ってヤツは・・・!」
 笑みをこぼすカンナに、カナタが戸惑いを覚える。
「お・・・お姉ちゃん・・・!」
 ラブがカンナに対して、再び姉への思いを感じるようになった。
 イザナギが空間の歪みから離れていく。同時に歪みそのものも収縮し消えようとしていく。
「私は必ず戻ってくる・・もっと強くなってね・・・!」
「カンナ!」
「お姉ちゃん!」
 自信を見せるカンナに、カナタとラブが叫ぶ。カンナの乗るザクが空間の歪みの中に消えた。
 カナタとラブの乗るイザナギも、元の世界から離れていく。
「お姉ちゃん・・・!」
「ラブ、カンナのことを気にするのは後だ・・このままじゃ、オレたちも別の世界に出てしまう・・・!」
 困惑しているラブをなだめるカナタが、焦りを感じていく。
「ディメンションブレイカーを使うしかない・・そして開いた次元の穴から帰るんだ!」
「カナタ・・・うん!みんなのことを強く想えば、元の場所に帰れる・・!」
 カナタが決意して、ラブが頷く。2人は目を閉じて、シンたちのことを考える。
「頼む、イザナギ・・みんなのいる場所に、道をつなげてくれ・・!」
 イザナギの力を信じて、カナタがディメンションブレイカーの発射準備を整えた。
「ディメンションブレイカー!」
 カナタとラブが同時に叫び、イザナギがディメンションブレイカーを発射した。砲撃がぶつかって、空間の穴が現れた。
「みんな!」
 カナタが外の世界を求めて、イザナギが急ぐ。その瞬間、空間の歪みが凝縮されて、爆発のような衝撃がイザナギのいる異空間に広がった。

 カナタとラブの帰りを待ちながら、シンたちはフリーダムたちとの戦いに集中していた。空間の歪みに巻き込まれたことでフリーダムたちは数を減らし、シンたちは勢いに乗った。
「偽物のペンギンは、とっとと消えちゃえー!コケコッコーアターック!」
 リカンツが言い放ち、リッツカスタムが南極たちに高速で嘴をつついていく。胴体に穴を開けられたペンギンロボたちは、落下して海に沈んだ。
「行くぞ、霧子、将馬、恭子!」
「はい!」
「えぇ!」
 孝一が呼びかけて、霧子と将馬、恭子が答える。彼らからハイエロ粒子が放出されて、ダイミダラーたちを強化していく。
「ダイミダラー・インサートブレイク!」
 孝一たちが叫び、ダイミダラー超型と6型がハイエロ粒子を集めた手を突き出した。ダイケンゼンがダイミダラーたちに押されて、次々に大爆発を起こした。
「よっしゃー!やったぜー!」
 孝一が勝利を喜び、恭子が微笑む。
「将馬くん!」
「うん!」
 霧子と将馬が手を取り合って見つめ合い、愛を分かち合う。
「相変わらずね・・でもチンも、帝王様やペンギンのみんなを守れて嬉しい♪」
 リカンツが孝一たちの様子に呆れるも、ペンギン帝王たちのことを考えて笑顔を浮かべた。
「そのラグナメイルは見飽きているのです・・!」
「いつまでも付きまとわないでもらいたいわ・・!」
 サラマンディーネとサリアがヒステリカたちに向かって言い放つ。焔龍號が収斂時空砲の、ヴィルキスたちがディスコードフェイザーの発射体勢に入る。
「どの世界にも、アンタはいてはいけないのよ!」
 アンジュが言い放ち、ヴィルキスたちが一斉に砲撃を発射した。ヒステリカを含む別世界のラグナメイルが砲撃を受けて吹き飛んだ。
「これで今度こそ、オレたちの戦いが終わったんだ・・・」
「もうエンブリヲの相手をするのはこりごりよ・・」
 タスクが笑みをこぼして、アンジュが肩を落とす。
「ランガ、終わらせよう・・こんな悲しい争いは・・・」
 海潮が悲しい顔を浮かべて、ランガに意識を傾ける。
 ランガが剣を手にして、時間を超えてアカサたちを切り付けていく。
「みんな、本物には全然届かないわよ!」
「ランガと同じように時間を超えられるようにならない限り、追いつくことはできないわ・・!」
 夕姫と魅波が勝利を確信して、地上や海に落下していくアカサたちを見下ろした。
「でも、私たちにはまだ、タオとの戦いが残っているんだよね・・・」
 海潮がタオのことを考えて、魅波たちが戸惑いを覚える。
「私たちが生きている間なのか、シンたちと一緒に戦うことになるのかは分からないけど・・」
 いつか訪れるタオとの戦いを予感しながらも、海潮は今の戦いの後の平穏な日々、楽園に心を寄せていた。
 レイもドラグーンを射出できないことを踏まえた上で、レジェンドのドラグーンの方向を前にして、一斉にビームを発射する。
 ウィンダム、ゲルスゲー、デストロイがビームを受けて倒れていく。ザムザザーがビームを弾き、フリーダムとジャスティスが回避する。
 そこへデスティニーが飛び込み、アロンダイトでザムザザーを切り裂いた。
 ジャスティスがビームブレイドを発した左足を振りかざし、デスティニーがアロンダイトを掲げて防ぐ。続けてジャスティスが2本のビームサーベルを振り下ろし、デスティニーもアロンダイトを振りかざして弾き返す。
 直後に右足のビームブレイドを繰り出すジャスティス。デスティニーはこれもアロンダイトでぶつけて押し返した。
「はあっ!」
 シンが叫び、デスティニーがジャスティスの胴体を切り裂いた。デスティニーが離れ、ジャスティスが落下しながら爆発した。
 次の瞬間、フリーダムが両手にビームサーベルを持って飛びかかってきた。シンが気付き、デスティニーが残像を伴った動きでフリーダムの攻撃をかわした。
 デスティニーがビームブーメランを手にして投げつけ、フリーダムのビームサーベルを弾いた。
 フリーダムがビームライフルを手にして、ドラグーンを除く全ての銃砲を展開し、一斉にビームを発射した。デスティニーがビームをかいくぐり、フリーダムに向かって突っ込んだ。
 デスティニーが突き出したアロンダイトが、フリーダムの胴体を貫いた。フリーダムがアロンダイトを引き抜かれると、落下して空中で爆発した。
「これで終わりだ・・何もかも・・・」
 シンがひと息ついてから呟く。戦いが終わっても、彼の気分は完全には晴れていなかった。
「だけど、失うものが多かった・・戦う前も、戦いの間も・・・」
「しかし、守れたものも多い・・オレたちが守ったんだ・・・」
 悲しい顔を浮かべるシンを、レイが励ます。
「お前は悩みながらも最善の方法を見つけようとした・・過ちを犯したオレやギルを助けようとした・・」
「レイ・・オレだって、みんながいなかったら、もしかしたら、間違った道を進んでいたかもしれない・・・」
 レイの言葉を受けて、シンが自分の気持ちを口にする。
「誰だって間違いや失敗をするものだよ・・同じ失敗を繰り返さないこと、取り返しのつかない間違いをしないことを心に刻めば・・」
「うん・・ステラ、シンがいたから、しあわせになれた・・・」
 ルナマリアとステラも言って、シンが勇気づけられる。
「ルナ、ステラ・・・そうだな・・オレたちの戦い、決して忘れてはいけない・・力を合わせた仲間も、戦った相手も・・・」
 シンがこの戦いを強く心に留めて、ルナマリアたちが頷いた。
「みんな決着がついたようね。」
 ヴィルキスがデスティニーに近づいて、アンジュが声を掛けてきた。
「イザナギは?・・カナタたちは・・・!?」
 海潮が周りを見回して、イザナギとザクを捜す。空間の歪みが収束し、次元のトンネルも全て消えていた。
「カナタ、ラブ、どこだ!?返事をしろ!」
 孝一が叫ぶが、カナタたちからの返事がない。
「カナタ・・カナタ!」
「ラブ!」
 シンと海潮の叫びが空にこだました。カナタとラブは彼らの前に戻ってこなかった。

 

 

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