スーパーロボット大戦CROSS
第76話「果てなき戦い」

 

 

 手に入れた次元の力を使い、ゼロスは若返り姿を変えた。その変貌にカナタたちは言葉を詰まらせていた。
「ゼロス博士が、若返った・・・!?」
「いくら時間を操れるようになったからって、反則が過ぎるって・・!」
 サリアとヒルダがゼロスの変貌を目の当たりにして声を荒げる。
「私は次元にも空間にも時間にも介入でき、私自身の時間をも変えられるまでに至った。その私がスサノオを操れば、向かうところに敵はない。」
 ゼロスが今までの研究の成果を実感して、笑い声をあげる。
「いつまでも調子に乗っているんじゃないわよ!」
 アンジュが苛立ちを募らせ、ヴィルキスがラツィーエルを手にしてスサノオに向かっていく。ヴィルキスが振りかざしたラツィーエルを、スサノオが高速でかわした。
「調子に乗っているのではなく、戦力の差を確かめてそう言っているだけだ。」
 ゼロスがヴィルキスを見つめて告げる。
「それが調子に乗っているって言うのよ!」
 アンジュが怒鳴り、ヴィルキスがラツィーエルを振りかざす。その瞬間、後ろに移動していたスサノオが、右手でヴィルキスの右腕をつかんで止めた。
「なっ!?」
 瞬く間に後ろに回り込まれたことに、アンジュが驚愕する。スサノオがヴィルキスの腕を引っ張り、地上に向かって投げ飛ばした。
「このっ!」
 アンジュが毒づき、ヴィルキスがブースターを吹かせて地上への激突を避けた。
「アンジュ、大丈夫!?」
 アーキバスがヴィルキスに駆け寄り、タスクがアンジュに呼びかける。
「このくらい、何でもないわ、タスク・・!」
「よかった・・でもあのスサノオという機体とゼロス博士、ものすごく強力みたいだ・・・!」
 アンジュがため息混じりに答えて、タスクがゼロスを警戒する。
「イザナミたちだけでなく、君たちのデータも分析してスサノオに組み込んでいると。つまり君たちは自分自身と戦っていると言っても、全く間違っているというわけではない。」
 ゼロスが悠然と語って、スサノオの中に乗り込んだ。
「私が本格的に動かすスサノオの真の力、存分に体感したまえ。」
 ゼロスが不敵な笑みを浮かべて、スサノオが巨大なビームの剣を手にした。
「あれは、ビームサーベル・・いや、大きさがアロンダイトと差がないぞ・・!」
「スサノオの高いパワーとあの大きさのビームの剣・・直撃されれば両断は確実です・・・!」
 シンとサラマンディーネがスサノオのビームソードを見て、警戒を強める。
「単純に考えて、攻撃は受けられないと思っているだろう・・しかし、今よりも警戒したほうが身のためと言っておくぞ。」
 ゼロスが忠告を送り、スサノオがビームソードを構えた。
「アイツ、仕掛けてくるぞ・・!」
「みんな、すぐにあのロボットの前から離れて!」
 孝一が声を上げて、海潮がとっさに彼らに呼びかけた。
「退避!」
 タリアが号令して、ミネルバとオルペウス、イザナギたちがスサノオの前から離れる。同時にスサノオがビームソードを振りかざし、光の刃を放った。
 イザナギたちがいた場所を光の刃が突き抜けた。光の刃は通り過ぎた場所の空気だけでなく、空間をも切り裂いていた。
「く、空間攻撃・・!?」
「次元の力も込められていて、空間の壁にも攻撃できる・・・!」
 カナタと霧子が切り裂かれた空間の裂け目に目を見開く。
「あんなのを1発でも食らったら、豆腐みてぇに簡単に斬れちまうってことかよ・・!」
「これじゃ剣のつばぜり合いもできないぞ・・!」
 孝一とナーガがスサノオの力に毒づく。
「私とスサノオは時間も空間も超越した存在。君たちの力で真っ向から挑むのは、自殺行為に等しいぞ。」
 ゼロスがスサノオの力を誇示し、喜びに打ち震える。
「私の研究の邪魔をするな。そうすれば消えることはなくなるぞ。」
「そんな脅しに屈するオレたちじゃねぇ!こっちはこんな修羅場、たくさん潜り抜けてきたんだ!」
 ゼロスが忠告するが、孝一は屈しない。
「まだ本当の楽園を見つけたわけじゃないけど、みんなとなら見つけられる気がする・・・!」
「私もこれから悠々自適な暮らしをしていくつもりなんだから、そっちこそ邪魔しないでほしいわね。」
 海潮が自分の思いを口にして、アンジュが強気な態度でゼロスに言い返す。
「オレたちは戦いのない世界を実現させるために戦う!ゼロス博士、アンタの研究は、争いや支配を生み出すことにしかならない!」
 シンも自分たちの考えをゼロスに言い放つ。
「みんな世界も感じてきたことも、考え方も違うけど・・オレたちはこうして力を合わせて戦ってきたんだ・・・!」
 カナタが今までの日々や戦いを思い返して、今の自分たちの大切なことを確かめる。
「あなたが自分の研究や欲望のために世界やオレたちを引っ掻き回すつもりでいるなら、オレたちはそれを全力で叩き潰す!」
 カナタもゼロスに対して敵意を向けた。彼の体から光があふれ出す。
「カナタくん、君も次元の力を覚醒させ、そこまで高めたのは称賛に値する。しかし今の私には遠く及ばん。」
 ゼロスがカナタの光を見て、悠然と告げる。
「単純に考えても、時間を超えられる分、私の方が有利だ・・」
 彼が言った直後、スサノオがイザナギの背後に回り込んだ。
「いつの間に・・!?」
 時間を超えたゼロスとスサノオに、カナタが驚愕する。
「カナタ!」
 シンが叫び、デスティニーがビーム砲を発射した。カナタが反応し、イザナギが高速で前へ動いた。
 ビームがスサノオに向かって飛んでいく。だが次の瞬間、ビームが通り過ぎる瞬間に、スサノオがイザナギを追いかけて後ろに張り付いた。
「時間を超えて、オレについてきた・・!?」
「だから言っただろう。私の方が有利だと・・」
 脅威を覚えるカナタに、ゼロスが笑みを消して言いかける。スサノオがイザナギ目がけてビームソードを振り下ろしてきた。
 そのとき、ゼロスの視界からイザナギが消えた。ランガの時を超える力で、イザナギはスサノオから離れて救われた。
「うあっ!」
 スサノオのビームソードの一閃が空間を裂き、その裂け目を通じてランガが左足を切り裂かれて、海潮たちが悲鳴を上げる。
「時を超えるランガでもかわし切れないなんて・・!」
「本当に私たちの力を全部使いこなせるっていうの・・!?」
 魅波と夕姫がゼロスとスサノオの力に毒づく。
「これじゃどこにいても攻撃されるし、よけてもよけられないじゃない・・!」
「ここまでチートだと、さすがに面白くない・・・」
 ロザリーとクリスがゼロスに対して不満を感じていく。
「私たちの能力には、ばらつきはありますが一長一短なのは確かです。それではゼロスに太刀打ちするのは厳しいです・・」
 サラマンディーネが双方の能力を把握して、自分たちの劣勢を痛感する。
「でも、同じ次元の力を持つカナタとイザナギなら・・」
「えっ・・・!?」
 彼女の言葉を聞いて、カナタが戸惑いを覚える。
「ゼロス博士が研究を進めていた次元の力は、イザナギも発揮できる。スサノオの力も、元々はラブさんの次元の力です・・博士とスサノオに対抗できる可能性が高いのは、カナタです・・」
「オレが、可能性が高い・・・」
 サラマンディーネの説明を聞いて、カナタが自分の持つ次元の力を実感していく。
「私もいるよ、みんな・・!」
 そのとき、ラブが意識を取り戻して声を掛けてきた。
「ラブ!大丈夫なのか!?」
「うん・・疲れが残っているけど、辛くはないよ・・」
 カナタが声を掛けて、ラブが微笑んで答えた。
「私もできる限り、カナタやみんなの力になる・・ゼロス博士のために、これ以上世界がムチャクチャになるのは耐えられない・・・」
 ラブが自分の思いをカナタたちに伝える。世界やみんなを守りたい気持ちを、彼女も強く持っていた。
「でも君は力を奪われている・・完全に回復していない状態で力を使おうとしても・・・!」
「分かっているよ・・たとえちょっとでも、カナタの力になれるなら・・・!」
 心配するカナタだが、ラブは彼らと共に戦おうとする。
「それでもムダだ、ラブちゃん、カナタくん。たとえ君たち2人が万全の状態だったとしても、イザナギではスサノオを上回る能力を発揮することはできんよ。」
 ゼロスは悠然さを消さずに、カナタたちに告げる。
「性能、攻撃力、防御力、スピード、空間や時間に干渉する力。あらゆる点でスサノオはイザナギとイザナミを大きく上回っているのだよ。」
「今はそうかもしれないけど、イザナギだってまだまだ可能性を秘めているんだ・・オレたち自身だって・・!」
 勝ち誇るゼロスに、カナタが気圧されることなく言い返す。
「私がまだ見ぬイザナギの可能性か・・ならば私の研究のために披露してもらおうか。」
 ゼロスが笑みをこぼして、次元の光を放出する。スサノオが一瞬にしてイザナギに詰め寄り、ビームサーベルの柄で叩いた。
「うあっ!」
「キャッ!」
 イザナギが突き飛ばされて地面に叩きつけられ、カナタとラブがその衝撃でうめく。
「カナタ!」
「ラブ!」
 シンと海潮が叫び、デスティニーとランガがスサノオに向かっていく。
「邪魔はさせないよ。」
 ゼロスが遠隔操作して、フリーダムたちがデスティニーたちの前に立ちはだかる。
「コイツら、こんなときに・・!」
「しかもまだ別の平行世界から呼び寄せてるぞ!」
 シンが苛立ちを募らせ、孝一が声を荒げる。次元のトンネルが空に現れて、別の次元から機体やバンガが次々に出てきた。
「あれって全部、別の世界にいたラグナメイルやモビルスーツ・・!?」
「冗談じゃねぇぞ!とんでもねぇヤツらが無限に出てくるなんて、反則もいいとこだぞ!」
 エルシャが緊張を膨らませて、ロザリーが不満を爆発させる。
「カナタ、ゼロスはあなたとラブに任せるわ!だから、必ずゼロスを倒すのよ!」
 アンジュがカナタに向かって呼びかける。
「オレが、博士を・・・!」
 カナタが戸惑いを感じてから、ラブと頷き合う。シンたちも2人に全てを託していた。
「ありがとう、みんな・・オレとラブ、イザナギがゼロスを止める!」
 カナタが感謝して、意識を集中する。彼の体から光が出て、イザナギからあふれ出す。
「クロスメンバー、全員に通達します!カナタくんとラブさんを援護し、敵勢力の足止めをします!」
 タリアがカナタたちに向けて指示を送った。
「ただし自分が生き延びることを優先するように!全員死ぬことなく、この戦いを乗り切ります!」
「私もアーキバスで出る!死んだら許さないからな!」
 タリアに続いてジルも檄を飛ばす。
「もちろんやられるつもりはねぇぜ!」
「この戦いを終わらせて、平和な時間を取り戻します!」
 孝一が強気に言い放ち、霧子も言って将馬と目を合わせた。
「お姉ちゃん、海潮、私たちも全力でやるわよ!」
「うん!こんな争い、もう終わりにしなくちゃ・・!」
 夕姫が呼びかけて、海潮が頷いた。
「アンジュ、この戦いが終わったら、一緒にお店を開こう。喫茶店とかいいかも。」
 アーキバスがヴィルキスに近づいて、タスクが声を掛けてきた。
「こんなときに何言ってるのよ・・・でも、そういうのも悪くないわね。」
「ありがとう、アンジュ!じゃ、早くこの戦いを終わらせよう!」
 ため息をついてから笑みを浮かべるアンジュに、タスクは喜んだ。
「あたしたちも一緒だよ、アンジュ♪」
「そのときは私たちも店員にしてくださいね。」
 ヴィヴィアンとエルシャがアンジュたちに笑顔で頼んできた。
「給料は安いわよ。それでもいいなら・・」
「メイルライダーだけじゃなく、他の仕事もやってみたいと思っているのよ。」
 アンジュが悪態をつくが、エルシャは笑顔を絶やさない。
「これは、にぎやかな開店になりそうだ。」
 タスクがアンジュたちを見て、期待を膨らませていく。
「だったら武蔵野に店を出してみるのはどう?みんな贔屓にしてくれるわよ。」
 ランガも近づいて、魅波が提案をしてきた。
「それも後で考えましょうか。」
「生き残る理由がまた増えたわね。」
 アンジュが話を聞いて、夕姫がため息混じりに言った。
「お店かぁ・・喫茶店でもレストランでも、きっとかわいいウェイトレスの格好すんだろうなぁ~♪」
「孝一くん、そこでも変なことしたら、そこを出禁にされるわよ・・」
 想像してにやける孝一に、恭子が呆れる。
「プラントに留まるだけじゃなく、たまに地球にも行かないとね。」
「あぁ。ルナもステラもみんな一緒だ。もちろんレイも一緒だ。」
 ルナマリアの声に答えて、シンがレイにも声を掛ける。
「オレも命ある限り、やれるだけのことはしていく・・・」
「ステラ、シンたちとどこまでもいっしょ・・・」
 レイとステラが頷いて、思いを口にした。
「カナタ、ラブ、私たちも生きるために戦うよ!」
「だから2人も生きて帰ってこい!」
「終わったらみんなでパーティーやるぞ!」
「だから、死んだら絶対に許さないからね!」
 海潮、シン、孝一、アンジュがカナタとラブに呼びかける。
「みんな・・ありがとう!」
「オレたちは死なない・・必ずこの戦いを終わらせて、絶対に生きて帰るよ!」
 ラブが感謝して、カナタがゼロスとの戦いを終わらせる決意を強める。
「確かにこの戦いは終わるよ。ただし勝利するのは君たちではなく私の方だ。」
 ゼロスが悠然と語って笑い声をあげる。
「スサノオの強さ、次々に出てくる戦力。君たちに勝てる可能性は限りなくゼロに近い。」
「限りなくゼロに近い、か・・だったらまだ可能性が残されているってことだな!」
 警告するゼロスだが、カナタは希望を感じて笑みを浮かべた。
「私たちとイザナギには可能性がある・・私たちは、それに賭ける!」
 ラブが笑顔で言って、カナタに抱きついて揺さぶられないようにした。
「ラブ・・しっかりつかまっているんだ!」
「うん!」
 カナタが呼びかけて、ラブが頷いた。イザナギが構えたビームサーベルの刃が強くなっていく。
「スサノオに負けないように、サーベルの出力を上げたか。しかし余力はスサノオのほうが上だぞ。」
 ゼロスが悠然とした態度を崩さず、スサノオがイザナギに向かっていく。2機がビームソードとビームサーベルをぶつけ合い、激しい衝撃を巻き起こす。
(サーベルのつばぜり合いで、空間に歪みが起こっている・・!)
(ディメンションブレイカーもディメンションバーストも使っていないのに・・・!)
 カナタとラブがスサノオの脅威を痛感していく。
「確かに君たちもイザナギも力を増している。しかし私とスサノオにはまだ届かんよ。」
 ゼロスが勝ち誇り、スサノオがビームソードの出力を上げて、イザナギを押し込んでいく。
「このままだと押し切られる・・・!」
 カナタが毒づき、イザナギが右に動いてスサノオから離れる。イザナギが左手でビームサーベルを持って、スサノオに向けてビームを放つ。
 しかしスサノオは胴体にビームが当たっても全く傷つかない。
「そんな!?」
「ダイヤが含まれている装甲だ・・普通の武器だと簡単には傷をつけられない・・・!」
 ラブが驚き、カナタがスサノオの耐久力に毒づく。
「あの装甲を破るには、あの硬さ以上の攻撃をするか、空間ごと削るしかない・・・!」
「でもみんな、博士が呼んだフリーダムたちと戦っている・・イザナギでやるしかないよ・・・!」
 カナタが互いの糸口を探り、ラブがシンたちの戦いを見てから呼びかける。デスティニーたちは次々に現れるフリーダムたちの相手で手一杯だった。
「スサノオに対抗するには、ディメンションバーストのディメンションブレイカーしかない・・・!」
「でも、それで次元と空間が歪んで、また世界を混乱させてしまうんじゃ・・・!?」
「ディメンションブレイカーの放射範囲を狭めれば、影響を少なくできるかもしれない・・・!」
「そこに賭けるしかないね・・・!」
 イザナギの力を最大限に引き出し、被害を最小限に食い止めることを、カナタとラブが考えていた。
「ディメンションバースト、起動!」
 カナタが操作して、イザナギがディメンションバーストを発動させた。
「ディメンションバーストも使えるようになっていたか。しかし使えるのはこのスサノオも同じだ。」
 ゼロスが笑みを浮かべて、スサノオを操作した。するとスサノオから強い光があふれ出した。
「スサノオも、ディメンションバーストを・・・!」
「スサノオの底力は、まだまだあるっていうのかよ・・・!?」
 同じくディメンションバーストを発動させたスサノオに、ラブとカナタが息を呑んだ。
「さぁ、ここからが本当の戦いだよ、君たち。」
 ゼロスが笑みを消して告げると、スサノオの姿がカナタたちの視界から消えた。
「何っ!?」
 カナタが驚きの声を上げた直後、イザナギが背中を撃たれた。スサノオが背後に回り、ビームライフルで射撃してきた。
「また、空間と時間を超えて・・・!」
「そうだ。一瞬後に出れば君たちに攻撃することは造作もない。君たちは空間を超えられても時間を超えるまでにはなっていない。それが私と君たちの決定的な差だ。」
 うめくカナタにゼロスが語っていく。
「ランガの時を司る力を使えば抵抗できるのだがな。しかしランガもみんなも私の仕掛けた戦力の相手に掛かりっきりだ。」
 ゼロスは話を続けて、イブキやレムイと戦っているランガに目を向ける。
「私たちもイザナギも時間を超えることができたら・・・」
「でも時間を超えることは、時間を操り過去まで変えることができる禁忌だ・・この世界の今も、オレたちの存在も消すことになる・・・!」
「その力を、海潮たちはうまく使っているけど・・ゼロス博士は自分の研究のためにしか使っていない・・このままじゃ、世界やみんなだけじゃなく、自分の過去まで変えてしまう・・自分でも気づかないうちに・・・」
「そんなことは絶対にさせない・・オレたちがこの力を、正しく使わなくちゃ・・・!」
 自分たちの持てる力の使い方を痛感するラブとカナタ。
「私は次元の研究を完遂させる。そのためならどんな障害をも掌握するぞ!」
 ゼロスが野心をむき出しにして、スサノオからさらに光があふれ出す。
「ディメンションブレイカーを当てれば、スサノオを確実に倒せる・・だけど・・・!」
「一瞬で動かれたんじゃ当てようがないよ・・・!」
 焦りを噛みしめるカナタと、不安を募らせるラブ。
「みんなに甘えることはできない・・オレたちだけでやるしかない・・・!」
 カナタが言って、ラブが頷く。2人がイザナギのコックピットの前方を見つめる。
「空間を超えられたんだ・・時間だって超えられる・・・イザナギ、お前を信じているぞ・・・!」
 カナタが信頼を口にして、ゼロスとの戦いに臨む。
「さて、戦いを続けることになりそうだ・・」
 ゼロスがため息をついて、スサノオがカナタたちの視界から再び姿を消した。
「また時間を超えて・・・あっ!」
 ラブが呟いた途中で驚きを覚えた。イザナギの周りに複数のスサノオの姿が現れた。
「ぶ、分身!?残像!?」
「いや、全部本物だ・・あのバンガと同じだ・・!」
 ラブが驚愕し、カナタがレムイのことを思い出す。スサノオは時間を超えたことで、複数のスサノオが出現してイザナギを包囲していた。
「一斉に攻撃をしてきたら、どんな相手でも回避ができない・・・!」
 カナタは危機感を感じながらも、イザナギを動かして一斉射撃に備える。スサノオ全てが一斉にビームライフルを発射して、イザナギが空間を超えて回避する。
「空間を超えるだけでは、私から逃げることはできんよ。」
 だがゼロスの駆るスサノオが多数、別の空間に行ったイザナギの周りに現れた。
「こっちの動きが完全に読まれている・・・!」
 時間を超えたことによって、イザナギの動きを見抜く。カナタはゼロスとスサノオから逃げきれないことを思い知らされる。
 スサノオが一斉にビームライフルを発射した。
「うあっ!」
「キャッ!」
 イザナギがビームの集中砲火を浴び、カナタとラブが悲鳴を上げる。イザナギが元の世界に飛び出して、地上に叩きつけられた。
「カナタ!ラブ!」
 シンがカナタたちに向かって叫ぶ。しかしデスティニーたちはフリーダムたちの攻撃に行く手を阻まれる。
「シン、深追いするな・・逆に不利になるぞ・・・!」
「ここはカナタたちを信じよう!」
 レイとルナマリアがシンに注意を投げかける。
「レイ、ルナ・・・!」
 2人に励まされて、シンが落ち着きを取り戻していく。
「シン、ステラもいっしょだから、もうすこしがんばろう・・・!」
「ステラ・・あぁ!みんなで乗り切ろう!」
 ステラも声を掛けて、シンが笑みを浮かべて答えた。
(カナタ、ラブ、絶対に勝って、生きて帰ってきてくれ・・・!)
 カナタたちを信じて、シンはフリーダムたちとの戦いに専念した。
(シン・・お前たちの思い、受け止めたぞ・・・!)
 シンの声を聞いて、カナタが薄らいでいた意識を覚醒させる。
「私の研究は空間も時間も超えた。ランガをバンガが食い止めている以上、君たちは絶対に私を上回ることはできない・・」
 スサノオがイザナギの前に降り立ち、ゼロスが告げる。
「そうかもしれない・・だったら何が何でも、時間を超える力を出さないといけないな・・!」
「私たちの持っている次元の力に、賭けるしかない・・・!」
 カナタとラブが気を引き締めなおし、次元の力を引き出そうとする。
「まだそこまで底力があったか・・これは興味深いことだ・・・!」
 イザナギからあふれる光が強まり、ゼロスが期待を膨らませていく。
「さて、もっと本気になるように追い込んでいくか・・」
 ゼロスが探求心を強めて、全てのスサノオがドラグーンを射出して、イザナギに向かってビームを連射した。カナタが反応し、イザナギが素早く動いてビームを回避する。
「このドラグーンも時間と空間を超えて、攻撃を続ける。君たちも時間を超えなければ、いずれ攻撃を受けることになるぞ。」
 ゼロスが警告して、ドラグーンの射撃がイザナギをに命中していく。
「うあっ!」
「キャッ!」
 イザナギが爆発と衝撃に襲われ、カナタとラブがうめく。イザナギがうつ伏せに倒れて動かなくなる。
「さぁ、立つんだ、カナタくん、ラブちゃん。これで終わりだとがっかりしてしまうよ。」
 ゼロスが呼びかけて、カナタたちに戦うようけしかける。
「ちくしょう・・オレたちの力を引き出すために、わざといたぶっている・・・!」
「でもそれしか、博士に対抗できないよ・・・!」
 カナタが憤りを覚え、ラブが焦りを募らせる。
「もっと・・もっと力を・・・!」
「ゼロスの研究のためじゃなく、オレたちのため、この世界のために・・・!」
 2人が意識を集中して、次元の力を高めていく。
「時を超える・・みんなのために、世界のために!」
 カナタとラブの声と思いが重なった。2人は光を発するだけでなく、瞳も白く輝き出した。
「光がさらに強くなった・・ついに時間を超えてくるか・・・!」
 ゼロスが歓喜を覚えて笑みをこぼす。スサノオたちがイザナギに向けて、ドラグーンのビームを発射した。
 その瞬間、イザナギの姿がゼロスの視界から消えた。
「今の私が見失うとは・・・!」
 ゼロスが感覚を研ぎ澄まして、イザナギの行方を追う。全てのスサノオの中にいるそれぞれのゼロスが捜しても、イザナギが発見できない。
「本当に2人は、時間を超えられるようになったのか・・・!」
 ゼロスはスサノオを操作して、時間を跳躍する。彼は別の時間からカナタたちを捜し続ける。
「元の世界に戻るしかないか・・・」
 ゼロスがため息をついて、元の次元に戻ろうとしたときだった。
 スサノオの後方に向かって、ビームの刃が飛び込んできた。ゼロスが気付き、スサノオが高速で回避した。
 背後に視線を向けるゼロスだが、そこにイザナギの姿はなかった。
「いない・・時間と空間を移動して、私の探索をかいくぐっている・・・」
 ゼロスが視線を巡らせて、イザナギを見失ったことを呟く。
 その直後、再びビームの刃が飛び込んできた。スサノオも時間を超えて回避するが、ビームの刃が追ってくる。
「サーベルだけを出して、自分は別の空間の狭間に潜む・・ここまで時間を跳躍できるというのか・・・!」
 今のイザナギの能力に脅威を感じて、ゼロスが息を呑む。
「ドラグーン!」
 ゼロスが操作し、スサノオがドラグーンを射出して、イザナギを追う。
(イザナギを見つけ次第、ドラグーンは攻撃を仕掛ける。その変動を見逃さずに詰め寄る・・!)
 イザナギの迎撃を見越して、ゼロスがスサノオを移動させる。
 そのとき、スサノオのドラグーンの数基が爆発を起こした。その先にイザナギがいると、ゼロスは判断した。
 次の瞬間、移動していたスサノオの顔面に、イザナギがビームライフルを構えて銃口を向けていた。
「あなたが近づいてくることは、オレたちはもう知っていた・・・!」
 カナタが低い声でゼロスに告げる。イザナギは時間を超えて、カナタとラブはスサノオの動きを完全に把握していた。
 
 
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