スーパーロボット大戦CROSS
第73話「大決闘」

 

 

 ダイミダラー超型と6型、リッツカスタムがピンギーとの激闘を繰り広げる。しかしピンギーはダイミダラーたちを手玉に取るかのように、素早く立ち回っていた。
「んもー!ペンギンロボならチンのほうが上なのにー!」
 リカンツがアムダに勝てないことに不満をあらわにする。
「同じペンギンロボだから面白くなると思ってたのに・・それじゃ僕が楽しめなくなっちゃうじゃな~い・・」
 アムダがリカンツに対してため息をついた。
「ホントに腹が立ってくるよ、アイツー!」
「落ち着いて、リッツ!あの子はハイエロ粒子を使っているけど、子供のように無邪気なんだよ!」
 ふくれっ面を浮かべるリカンツを、霧子がなだめる。
「そろそろ本気を出しちゃうよー♪ちゃんとやらないとすぐにやられちゃうよー♪」
 アムダが明るく言い放ち、ハイエロ粒子を放出する。
「と、とんでもないハイエロ粒子だ・・!」
「あそこまで強いハイエロ粒子は初めてよ・・!」
 将馬と恭子がアムダに脅威を覚える。
「どんなに強くても関係ねぇ!わがままなガキにはお仕置きが必要だ!」
 孝一は不敵な笑みを浮かべて言い放つ。
「あなたも十分お仕置きされることをしているけどね・・」
「こんなときにそんなことを言うなよ・・やる気がなくなるじゃねぇかよ・・・」
 恭子が注意すると、孝一が大きく肩を落とす。
「でもこれ以上、あの子の悪い遊びを止めることには賛成です!」
「うん!まずは大人しくさせよう、霧子ちゃん!」
 霧子が賛同して、将馬も頷いた。
「僕たちの愛は、どんな困難も乗り越える・・そうだね、霧子ちゃん!」
「うん!・・将馬くん、私たちなら、どんなことでもできる・・・!」
 将馬と霧子が見つめ合い、愛を分かち合う。2人を彼女の強まったハイエロ粒子が包み込み、ダイミダラー6型からあふれ出した。
「やるな、霧子、将馬!オレたちも負けてられねぇぞ、恭子!」
 孝一が喜び、恭子の座席を自分に向けさせた。
「今回は今まで以上に刺激的になるぞ~!」
「ちょっと、孝一くん!?変な気合いが入りまくりよ・・!?」
 興奮を膨らませる孝一に、恭子が緊張を覚える。
「行くぜー!」
 孝一が恭子の上着をめくり上げて、顔を胸の谷間にうずめてきた。
「キャアッ!」
 孝一に弄ばれて、恭子があえぐ。彼女はその状態で孝一に指で乳房を撫でられて、恍惚を募らせる。
「イヤアッ!」
 恭子が悲鳴を上げて、孝一が絶頂する。彼から放たれたハイエロ粒子が、ダイミダラー超型からあふれ出す。
「ダイミダラーのハイエロ粒子が、ものすごいことになってる!」
 リカンツがダイミダラーたちを見て驚く。
「前よりすごいけど、僕の方がもっとすごいよ♪」
 アムダが喜んで、自分の胸に手を当てて揉み始めた。
「感じてくる・・僕は僕自身を気持ちよくできる!」
 自分自身を弄ぶことで、アムダは快感を湧き上がらせていた。これにより彼女は強力なハイエロ粒子を放出していた。
「おいおい・・アレに乗ってるのはアイツ1人だろ!?」
「1人でエッチをやったってこと・・・!?」
 孝一がアムダの行為に驚き、恭子が頬を赤らめたまま呟く。
「それならチンだって!チンには、ペンギンのみんながついてるんだから!」
 リカンツが負けじと、体を後ろに反らして胸に力を入れた。
「あぁ・・みんなが、チンに触れていく・・・!」
 リカンツが心地よさを覚えてあえぐ。彼女はペンギンたちに体を触られる想像をして、快感に浸っていた。
「イ、イメージでハイエロ粒子を!?」
「し、将馬くん、イメージしたらダメだよ、イメージしたら・・!」
 動揺する将馬を、霧子が慌てて赤面する。
「みんなもやるねー♪でも僕のほうが上だよー♪」
 アムダが喜んで、ピンギーが高速で突っ込んできた。
「ぐっ!」
 ダイミダラー超型が突撃されて落下していく。ピンギーが旋回して、ダイミダラー6型とリッツカスタムにぶつかっていく。
「やられっぱなしってわけじゃないよ・・!」
「ペンギンの真の力、見せてやるわ!コケコッコーアターック!」
 霧子が力を振り絞り、リカンツが言い放つ。リッツカスタムがピンギーを迎え撃ち、嘴を突き出した。
 ピンギーも嘴を出して、リッツカスタムと連続で嘴をぶつけ合う。
「今のうちよ!」
 霧子が叫び、ダイミダラー6型がピンギーに向かって急降下する。ダイミダラー超型も同時にピンギーへ上昇する。
「リッツ、離れて!」
「W指ビーム!」
 霧子がリッツに呼びかけて、孝一が叫ぶ。2機のダイミダラーがハイエロ粒子を集めた手を、ピンギー目がけて繰り出した。
 アムダが反応し、ピンギーがリッツカスタムから離れて、ハイエロ粒子のバリアを発する。ダイミダラーたちの手がバリアを押し込んでいく。
「もっと・・もっと刺激を・・もっと快感を!」
 アムダが自分の体を撫でまわして、恍惚とハイエロ粒子を増していく。ピンギーのバリアも強化されていく。
「オレたちのエロは、まだまだこんなもんじゃないぜー!」
「私と将馬くんの愛は無限大!どんなに強い力でも、どんな相手でも乗り越えてみせます!」
 孝一と霧子が言い放ち、ハイエロ粒子を強める。ダイミダラーたちが再びバリアを押し込む。
「チンの全力も、まだまだこんなもんじゃないよー!」
 リカンツが言い放ち、リッツカスタムがハイエロ粒子をまとって突っ込んできた。リッツカスタムがバリアを破り、ピンギーに突撃した。
「うっ!」
 リッツカスタムの嘴がピンギーの胴体に食い込み、アムダがうめく。
「まだだよ・・まだまだ世界を楽しんじゃいないんだから・・・!」
 アムダが全身に力を込めて、ハイエロ粒子を放出した。その衝撃で彼女の着ていた服が全て吹き飛んだ。
「この開放的なのも、エッチの形なんだからー!」
 アムダが高らかに言い放ち、ピンギーがハイエロ粒子でリッツカスタムとダイミダラー2機を押し返す。
「アイツ、まだこんな力を持ってるのかよ!?」
「それだけじゃない・・これって私と同じ・・オーバーバースト・・!?」
 孝一がアムダの力に毒づき、霧子が脅威を覚える。アムダはハイエロ粒子を限界以上に引き出していた。
「落ち着いて!これ以上力を出し続けたら、あなたの体が持たないよ!」
 霧子が呼び止めるが、アムダはハイエロ粒子の解放を続ける。
「ダメだよ!僕たちの声が届いていない!」
「こうなったら、こっちも全力全開でアイツを止めるしかねぇぜ!」
 将馬が慌ただしく声を上げて、孝一が言い放つ。
「でも過剰に力を使ったら、私たちも・・!」
「私たちが力を合わせれば、負担は大きくならないはずです!」
「チンがいれば全然問題ないよ!」
 恭子が心配するが、霧子とリカンツに迷いはなかった。
「よーし!霧子、リッツ、アイツのパワーをぶっ飛ばすぞ!」
 孝一が檄を飛ばし、霧子とリカンツが頷いた。ダイミダラーたちがハイエロ粒子を放出して、ピンギーに突っ込む。
「ダイミダラー・インサートブレイク!」
 孝一と霧子が叫び、ダイミダラー超型と6型がハイエロ粒子を集めた手を突き出した。
「リッツカスタム・大激突!」
 リカンツもリッツカスタムで全速力で突っ込む。3機の激突が、アムダのハイエロ粒子を突き破り、ピンギーの胴体にめり込んだ。
「うわあっ!」
 アムダが悲鳴を上げて、体から出ていたハイエロ粒子が消えた。ピンギーが力なく落下して、リッツカスタムの背中に受け止められた。
「おーい!ちょっとは落ち着いたのー!?生きていたら返事をしなさいよー!」
 リッツカスタムがピンギーを地上に降ろして、リカンツがアムダに呼びかける。
「あ・・・ぁぁぁ・・・」
 ピンギーの中で倒れているアムダが、弱々しく声を発した。
「よかった・・無事のようね・・」
 彼女に息があることを確かめて、恭子が安心する。
「最高に・・最高に気持ちよかった・・・」
「あ・・・もう、このファクターは・・・」
 眠っていても心地よさを口にするアムダに、恭子は呆れた。
「この子を安全な場所に置いたら、カナタくんたちと合流しましょう!」
「あぁ・・オレたちが来る前にケリ付けてるよな、カナタ!」
 霧子に答えて、孝一はカナタに向けて檄を飛ばした。

 シンのデスティニーとレイのレジェンドが、ヘクトのアンチェーンとの攻防を繰り広げていた。しかしレジェンドはドラグーンを遠隔操作できず、素早く動くアンチェーンの動きを封じることができないでいた。
「宇宙なら多少は優位に立てると思っているのだろう・・大気圏内で、私が確実に優位に立つことになるだろう。」
 ヘクトが戦況を把握して、シンたちに告げる。
「ドラグーンは宇宙空間でなければ遠隔操作ができない。だが調整によって、大気圏内でもそれが可能となった。」
「何っ・・!?」
 ヘクトの口にした言葉に、レイが耳を疑う。アンチェーンが大気圏内であるにもかかわらず、ドラグーンを射出し操作してきた。
「バカな!?ドラグーンを地球で使うなんて!?」
 シンがアンチェーンに対して驚愕する。
「アンチェーンは調整が施され、場所を問わずドラグーンを使えるようになった。お前たちはより劣勢に追い込まれているということだ。」
 ヘクトが語り、アンチェーンがドラグーンを動かして、デスティニーとレジェンドを包囲する。
「クロス、ザフト、お前たちは我々が粛清する・・正しき世界に、お前たちもデュランダルも存在してはならない・・・」
「お前にこれ以上、ギルを愚弄させはしない・・世界の混迷を広げるわけにはいかない・・・!」
 敵意を向けるヘクトに、レイが鋭い視線を向ける。
「デュランダル議長の平和に対する願いは本物だ!それを侮辱することは、オレが許さない!」
 ギルバートの意思を訴えるシンの中で何かが弾けた。彼の感覚が研ぎ澄まされ、視界がクリアになった。
「許されないのはお前たちだ・・オレの手に掛かり、デュランダルの後を追え・・!」
 ヘクトが鋭く言って、アンチェーンがドラグーンを操作して射撃を仕掛ける。飛び交うビームをデスティニーとレジェンドが素早くかわす。
「宇宙でも地球の空でも、デスティニーは素早く動ける!」
 シンが言い放ち、デスティニーが残像を伴った高速でアンチェーンに近づいていく。アンチェーンとデスティニーがビームライフルを手にして、ビームを放ちぶつけ合う。
「たとえ包囲ができなくても、レジェンドが負けることはない・・オレたちは倒れるつもりはない・・・!」
 レイは動じることなく、レジェンドもアンチェーンに向かっていく。レジェンドが背部にあるドラグーンの銃口の向きを変えて、ビームを一斉に発射した。
 ヘクトが反応し、アンチェーンがビームを難なくかわした。
「展開していないドラグーンの攻撃は直線的になる。ならば対応は難しくはない。」
 ヘクトはレジェンドとデスティニーの動きを見極めて、冷静に対処していた。
(厄介なのはデスティニーのほうか。シン・アスカはまだまだ力を秘めているようだ。デスティニーがより速く、より強力な戦いをするようになった・・)
 ヘクトはシンとデスティニーに対する警戒を強めていた。
(動きに惑わされず、隙を突くのが最善手か・・)
 デスティニーを倒す術を模索するヘクト。デスティニーがアロンダイトを手にして構える。
(今のヤツは接近戦が特に強い・・・!)
 アンチェーンはドラグーンを操作して、デスティニーを近づけさせないようにする。
「オレが接近戦が強いことを分かっているか・・だけどオレは・・!」
 シンは自分の戦い方を曲げることができず、デスティニーがドラグーンの包囲網をものともせずに突っ込んだ。
 ドラグーンから放たれるビームをかいくぐるデスティニー。アンチェーンは一定の距離を保ち、デスティニーは近づくことができない。
(デスティニーは、遠距離から確実に仕留める・・レジェンドも同様に近づけさせなければ・・・!)
 ヘクトはレジェンドにも目を向けて、2機を仕留める最善手を模索する。
「シン、オレがヤツのドラグーンを撃つ。お前はその間にヤツ本体を叩け。」
 レイがアンチェーンに目を向けたまま、シンに指示を送る。
「レイ・・・分かった!冷静な判断だ!」
 シンが笑みを浮かべて頷いた。
 レジェンドがビームライフルとドラグーンを駆使して、アンチェーンのドラグーンを狙う。しかしヘクトの操作によってドラグーンが射撃を回避していく。
「残念だが、お前たちの動きは把握している。反撃を受けることはない。」
 ヘクトが冷静にデスティニーたちの動きを見極め、把握していた。
 デスティニーが左手で右肩のビームブーメランを手にして投げつける。直後にデスティニーはアロンダイトを左手に持ち替えて、右手で左肩のビームブーメランを投げた。
 ヘクトがビームブーメランの動きを見て、アンチェーンがドラグーンのビームでビームブーメラン弾き返した。
 その瞬間にデスティニーが突っ込み、アロンダイトを振り上げた。
(同時攻撃か。)
 ヘクトは同時にレジェンドがビームを一斉発射してきたことに気付いていた。アンチェーンがアロンダイトとビームを全てかわした。
(お前たちを葬る準備は整いつつある。戦艦の陽電子砲に勝るとも劣らない威力の武装“リベラル”・・)
 ヘクトがアンチェーンの高出力ビーム砲、リベラルのエネルギーチャージを進めていた。アンチェーンの両肩から砲門が出て、デスティニーに狙いを定めた。
(中心捕捉をすれば、たとえ高速でも無事に回避することはできない・・・!)
 ヘクトがレーダーを注視し、デスティニーをその中心に捉えてロックオンした。
「リベラル!」
 アンチェーンのリベラルがデスティニーに向けて発射されようとしたときだった。
 2つの武器がそれぞれアンチェーンの下と右から飛んできた。それはエクスカリバーとデファイアントだった。
 ヘクトが気付き、アンチェーンが回避した。その直後に2つのビームが飛んできた。
「くっ・・!」
 ヘクトが毒づき、アンチェーンがビームも回避する。しかしそのためにリベラルの発射タイミングを外された。
 攻撃してきたのはブラストインパルスとガイアだった。フォースインパルスがブラストシルエットと入れ替えて、同時に射出されたソードシルエットから手にしたエクスカリバーを、ミネルバの上にいたガイアが投げたのである。
「ルナ、ステラ!」
 シンがルナマリアたちに対して声を上げた。
「シン、今よ!」
 ルナマリアが呼びかけて、シンがアンチェーンに視線を戻す。デスティニーがアロンダイトをアンチェーン目がけて突き出した。
 アンチェーンの胴体をアロンダイトが貫いた。衝撃と破損がコックピットにも及び、ヘクトが苦痛を覚える。
「あの2機・・こちらの援軍の相手をせずに、こちらに加勢しに来るとは・・・!」
 ルナマリアとステラはデストロイたちと戦っていると思っていたヘクトが毒づく。
「オレもここまでか・・せめてシン・アスカ・・お前だけでも道連れにする・・・!」
 ヘクトが声を振り絞り、アンチェーンがデスティニーの腕をつかんだ。ヘクトはリベラルをゼロ距離で発射して、シンを巻き込んで自爆しようとする。
「コイツ、往生際が悪いぞ!」
 シンが毒づき、デスティニーが離れようとする。しかしアンチェーンはデスティニーの腕を放そうとしない。
「このっ!」
 シンが激高し、デスティニーが左手のパルマフィオキーナでアンチェーンを攻撃しようとする。アンチェーンはデスティニーの左手を外側に引き離す。
「シン、巻き込まれるわ!」
「はやくにげて!」
 ルナマリアとステラがシンに向かって叫ぶ。
(今の敵機の武装を攻撃してもチャージのエネルギーが誘爆するだけ・・シンを救うには・・・!)
 レイがシンを救う術を模索する。
「このっ!」
 シンが操縦し、デスティニーがブーストを全開にしてアンチェーンから離れようとした。
 そのとき、デスティニーの両足がアンチェーンの胴体に当たった。それを見たシンがデスティニーを動かし、足でアンチェーンを押しのけようとする。
「足で払いのける気か・・それで失態を犯すオレではない・・!」
 ヘクトがいら立ちを覚えて、アンチェーンがデスティニーを放すまいとする。それでもデスティニーは強引に引き離そうとする。
 そしてデスティニーの腕が引きちぎられた。その結果、デスティニーはアンチェーンから離れることができない。
「何っ!?」
 思わぬ形で引き離されたことに、ヘクトが驚愕する。
 デスティニーは他のモビルスーツと比べてより細かい動きができるように設計されている。そのため、関節など脆い部分もあり、その防御力の低さを攻撃力とスピードで補うようになっている。
 デスティニーは足に力を入れてアンチェーンを引き離そうとするあまり、つかまれていた腕が損傷しちぎれたのだった。
「レイ、今だ!撃て!」
 シンが呼びかけて、デスティニーがアンチェーンから離れる。レイがアンチェーンを狙い、レジェンドがビームを一斉に発射して、アンチェーンを撃ち抜いた。
「まだだ・・・オレはまだ・・オレだけの道を生きてはいない・・・!」
 コックピットも包んだ爆発の中で、ヘクトが生き延びようとする。しかし彼は閃光の中に消え、アンチェーンが大爆発を起こした。
「やった・・あのモビルスーツを倒した・・・!」
 ルナマリアがヘクトの最期を見て、戸惑いを覚える。
「シン!」
 ステラが呼びかけて、デスティニーが安定して宙に留まった。
「ステラ、ルナ、オレは平気だ・・だけど、デスティニーは今は戦えない・・・」
 シンがステラたちに答えるが、表情を曇らせる。アンチェーンから離れるために、デスティニーは両手を失っていた。
「シン、お前はミネルバに戻れ。後の処理はオレたちでやる。」
「シンばかりに負担を掛けさせるわけにいかないからね。」
 レイとルナマリアが呼びかけて、シンを気遣う。
「レイ、ルナ・・・ありがとう・・!」
 シンが感謝してひと息つく。
「ステラ、シンを守ってあげて。私たちはこの戦いを終わらせてくるから・・」
「うん・・まかせて・・・」
 ルナマリアがシンを託して、ステラが頷いたミネルバに戻ったデスティニーをガイアが支えた。
「私たちはみんなの援護に向かうわよ。」
「分かった。」
 ルナマリアが指示を送り、レイが頷いた。
「その必要はねぇよ。」
 そこへテオドーラが来て、ヒルダが2人に声を掛けてきた。
「ヒルダ!みんなは!?」
「みんな片付けたぜ。オルペウスと一緒にカナタのとこに向かってる。」
 ルナマリアが問いかけて、ヒルダが不敵な笑みを浮かべて説明する。
「そうか・・オレたちもこのまま残りの敵の掃討に向かうぞ。」
 レイが冷静に呼びかけて、ヒルダが頷いた。
「ミネルバ、デュートリオンビームを!このまま行きます!」
 ルナマリアが意思を伝え、インパルスがミネルバからデュートリオンビームを受けた。

 ラブとゼロスをイザナギに乗せたまま、カンナのイザナミと交戦することになったカナタ。不利な状況の中、彼は一時的に離脱することを考えていた。
(このままじゃやられる・・全力を出せば、ラブと博士が危険になる・・・!)
 ラブたちを気遣うカナタが、焦りを募らせていく。
「カナタ、ミネルバとオルペウスが来たよ!」
 ラブが声を掛けて、カナタが視線を移す。ミネルバとオルペウスがクレオパトラたちと共に駆け付けた。
「ミネルバ、オルペウス!ラブと博士をお願いします!」
 カナタが呼びかけて、イザナギがオルペウスに向かった。
「待ちなさい!」
 カンナが叫び、イザナミがイザナギを追う。だがクレオパトラと焔龍號が来て行く手を阻んだ。
「慌てなくても、カナタはあなたと全力で戦うわ。その戦いに、私たちは加勢しないわ。」
「あなたも全力勝負をして勝たなければ、心残りが出るとは思いませんか?」
 サリアとサラマンディーネがカンナに進言する。ランガたちもクレオパトラたちと合流した。
「カグラ、アブル、ヘクト・・3人もやられたというの・・・!?」
 カンナがヘクトたちの敗北に驚愕する。
「こっちのおめぇの仲間は、オレたちが預かってるぜ!」
 孝一がカンナに向かって言い放つ。アムダは恭子の上着を掛けられた状態で眠っていた。
「その気になれば、あなたを倒すことは造作もないことです。それをカナタさんに任せると言うのです。」
「・・・私をすぐに倒さなかったことを、後悔することね・・・!」
 忠告をするサラマンディーネに言い返して、カンナがオルペウスに着艦したイザナギを見つめた。

 オルペウスに戻ったイザナギから、ラブがゼロスと一緒に降りてきた。
「ラブ、ゼロス博士を頼んだぞ!」
「うん!カナタ、気を付けて・・!」
 カナタがゼロスを託して、ラブが頷いた。カナタは1人イザナギでカンナのイザナミの前に戻っていった。
(カナタ・・・)
 カナタの無事を信じて、ラブはオルペウスの中に入った。

 イザナギがイザナミの前に戻ってきて、クレオパトラたちが少し離れた。
「みんな、すまない・・オレのためにわざわざ・・・」
「私たちは因縁に決着を付けました。今度はあなたの番です。」
 戸惑いを覚えるカナタに、サラマンディーネが微笑んだ。
「他の敵が出てくる可能性がある。オレたちは周辺を警戒する。」
「カナタくん、危なくなったらすぐに助けに行くからね。」
 レイと海潮もカナタを励ました。カナタが頷いて、イザナミに視線を戻した。
「カンナ、今度こそ決着をつけるぞ・・・!」
「私はあなたに勝つ・・あなたを消して、私の方が上であることを証明する・・・!」
 カナタが真剣な面持ちで言って、カンナが自分の考えを口にする。イザナギとイザナミがビームサーベルを手にする。
 カナタとカンナが互いの出方を伺い、イザナギとイザナミがじっと構える。その静寂をシンたちが見守る。
 そしてイザナギとイザナミが同時に飛び出し、ビームサーベルをぶつけ合う。2機は立て続けにビームサーベルの衝突を繰り返す。
「私とあなたは、ゼロス博士の研究に協力して、イザナギとイザナミのパイロットとなった。私たちなら、次元と空間を超える研究の成功につなげられると・・」
 カナタと交戦する中、カンナが過去を振り返っていく。
「でも研究と操縦を続けるうち、カナタの方が上だと思い知らされた・・それが悔しくて、許せなくて・・・!」
「だからオレたちの前からいなくなって、オレたちを裏切って、世界までひっくり返そうというのかよ・・!?」
「このままこの敗北に苦しめられる生き方をするよりは、全然いいわ!」
「そのために、大事なものを捨てたのかよ、お前は!?」
 自分の考えを言い放つカンナに、カナタが憤りを募らせる。イザナギとイザナミが左手でビームライフルを手にして、ビームを発射してぶつけ合う。
「オレは別にそんな勝ち負けにこだわりはなかった・・むしろあのとき、カンナの方がうまく操縦ができているとオレは思っていた・・・」
「そうやって謙虚を見せて、私を哀れむつもり!?私をまだ愚弄するつもりなのね・・!」
「そうじゃない・・これはオレの本心だ・・・それが許せないって言うなら構わない・・・だけど・・!」
 不快を訴えるカンナに、カナタが言い返す。
「妹のラブをここまで悲しませたことは、オレは絶対に許さないぞ!」
 怒りの叫びを上げたカナタの体からまばゆい光があふれ出し、イザナギからも放出された。
「こ、これは・・!?」
 カナタの変化にカンナが緊張を覚える。彼女はイザナギの力も高まっていることを痛感する。
 イザナギがビームライフルを構えて発射する。カンナが反応し、イザナミがとっさにビームをかわした。
 イザナミもビームライフルを撃つが、イザナギを覆っている光にビームが弾かれた。
「そんな!?・・そんなことが!」
 カンナがいら立ちを噛みしめて、イザナミがさらにビームライフルを発射する。しかしビームをことごとくイザナギの光に弾かれていく。
「何なのよ、あなたは!?・・イザナギに、あなたにこんな力があるなんて!」
 カンナが憤りを募らせて、イザナミがビームライフルを撃つ。イザナギのビームライフルからもビームが放たれ、イザナミのビームを打ち破った。
「うっ!」
 イザナミがビームライフルを撃ち抜かれて破壊され、カンナがうめく。
「認めない・・認めるわけにいかない・・私はカナタより強いのよ・・私とイザナミが、それを証明するのよ・・!」
 カンナが怒号を放ち、イザナミが飛びかかりビームサーベルを振り下ろした。ビームサーベルが光をぶつかり、イザナミとイザナギが押された。
「イザナミ、あなたや私にも同じような力があるはずよ!その方法を教えて!」
 カンナがイザナミに呼びかけて、コックピットに握った両手を叩きつける。
「カナタとイザナギにできて、私とあなたにできないことはない!できないことがあっていいはずがない!」
 彼女が叫び、感情のままに感覚を研ぎ澄ませようとする。
「私はカナタを超えないと、死んでも死にきれないのよ!」
 カンナが絶叫を上げたときだった。彼女の体からも光があふれ出した。
「この光・・・カナタから出ているのと同じ・・・!?」
 自身の光を見て、カンナが戸惑いを覚える。彼女の光がイザナミからもあふれた。
「この光・・まさか・・!?」
 カンナとイザナミの変化に、カナタが緊張を感じていた。
 
 
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