スーパーロボット大戦CROSS
第66話「動転!健全ロボ軍団」

 

 

 地球に向かって移動していくメサイアに、シンたちも急いでいた。ザフトのモビルスーツや戦艦が攻撃を仕掛けるが、デスティニーたちが迎撃する。
「やめろ!生き方を誰かに決められる生き方を、アンタたちも望んでるのか!?」
 シンがザフトに向けて呼びかける。
「プラントを裏切った貴様らの言うことなど、聞く耳持たん!」
「我々はザフトだ!プラントと、その最高議長であるデュランダル議長に従うのが、我々の任務だ!」
 しかしザフトの兵士と隊長は彼らの言葉を聞こうとしない。
「上官の命令に従う。それが軍人の本分だ。それを忘れた貴様らを、見過ごすわけにはいかん!」
 隊長が言い放つと、ザフトの戦艦がミネルバに向けて砲撃を開始した。
「シン、やむを得ないが、強行突破するしかないわ・・・!」
 タリアが覚悟を決めて、シンに呼びかける。
「ですが、ザフトを討つわけには・・・!」
「私たちは議長だけでなく、ザフトとも対立する覚悟で離反を決めた。ザフトも多くは自らの意思で議長に従うことを決めているわ。」
 ためらいを抱くシンに、タリアが檄を飛ばす。
「できるだけ命を奪わないようにしたいけど・・割り切って進むしかないよ・・・!」
「ルナ・・・そうだ・・オレたちはレイと戦うことも覚悟した・・みんなとも戦うことにも、迷っていられない・・・!」
 ルナマリアも励まして、シンが迷いを振り切った。
「このままデュランダル議長のいる要塞に直進だ!ザフト軍が邪魔するなら、まとめて蹴散らすだけだ!」
「うん・・議長は、デスティニープランは絶対に止めなくちゃ・・・!」
 孝一が不敵な笑みを浮かべて、海潮が頷いた。
「クロスはメサイアに向けて前進!進路を阻む兵力は、迷いなく迎撃せよ!」
「了解!」
 タリアが指示を出して、シンとルナマリアが答えた。ミネルバとデスティニーたちがメサイアに向かって加速する。
「行かせんぞ、クロス!」
「裏切り者め、デスティニー!」
 ザフト兵たちが言い放ち、ザクとグフがビームを発射する。デスティニーとインパルスがスピードを上げて、ビームをかわした。
「どいてくれ・・そこをどいてくれ!」
 シンが叫び、デスティニーがインパルスと共にビームライフルを手にして発射する。ザクがビームライフルを弾かれ、グフがビームガンのある腕を撃ち抜かれる。
「ミネルバは先に行け!ザコはあたしらに任しとけ!」
「我々もあなたたちに加勢します!」
 ロザリーとナーガがシンたちに呼びかける。グレイブとハウザーがザクたちを迎撃する。
「オルペウスが艦隊を引き付けておく。グラディス艦長は先を急ぐことだ。」
「感謝します、みなさん。」
 ジルも告げて、タリアが敬礼を送る。ミネルバ、デスティニー、インパルス、イザナギ、ランガが前進を続ける。
「どっからでもかかってこい!オレたちがまとめて相手をしてやるぜ!」
 孝一が言い放ち、ダイミダラー超型がザフト艦隊に向かっていく。
「そうはいかんぞ、ダイミダラー!」
 そこへ声がかかり、孝一と霧子が視線を移した。その先に複数の機影が点在していた。
「何だ?ザフトの増援か・・!?」
 ロザリーがその機体を注視する。機体がダイミダラーたちに近づいてきて、その姿をあらわにした。
「あ、あれって・・・!?」
「ダイミダラーに似ている・・・!?」
 クリスと将馬が機体を見て、驚きの声を上げる。
「“ダイミダラー3型”・・廃棄処分されたはずなのに・・!?」
 恭子が機体、ダイミダラー3型の出現に目を疑う。
「知ってるのか、恭子!?」
「問題があって凍結、廃棄処分がされたのだけど、いつの間に・・しかも量産されているなんて・・!?」
 孝一が聞いて、恭子がダイミダラー3型について説明する。
「あなたもザフト軍なの!?どこから3型のデータを!?」
「我々は日本の自衛隊に所属していた部隊だ。デスティニープランとデュランダル議長の防衛のため、我々はザフトと共闘する。」
 恭子が問い詰めると、自衛隊の司令官が名乗る。
「自衛隊!?」
「まさか日本は、デスティニープランに賛成したのですか!?」
 将馬が驚き、霧子が問い詰める。
「これは我々の独断に過ぎない。日本の未来のためには、デスティニープランが必要不可欠であると、我々は判断した。」
「何だって!?」
 司令官が口にした言葉に、海潮も驚きを隠せなくなる。
「今の日本は、いや、世界は不健全で満ちている。店からTVまで、人に悪影響を及ぼすものであふれかえっている。誰の目にも触れさせないよう、徹底的に規制して、世界の社会を健全なものとする!」
「そのために、デスティニープランに賛同しようというの!?」
 健全な世界を目指す司令官を、恭子が問い詰める。
「デスティニープランで誰もが正しく生きていけるならば、これほど健全なことはない!我々も助力してプランを徹底させ、不健全なものを世界から排除する!」
「デスティニープランが導入されたら、私たちやあなたたちだけじゃない!普通に暮らしている人も、誰かの言いなりで生きていくしかないんですよ!」
 デスティニープラン導入に加担する司令官に、海潮が訴える。
「健全な世界を実現させるためには、規制や管理が必要なのだ!」
「そんな押し付けがましいのはいけないことだよー!」
 自分たちの考えを押し通そうとする司令官に、ヴィヴィアンがふくれっ面を浮かべる。
「そして不健全の元凶はプリンス、お前たちそのものでもあるのだ!」
 司令官は孝一たちに向けて、鋭く言い放つ。
「何言ってんだよ!?何でオレたちが不健全の元凶なんだよ!?」
「あなたの場合、自覚がないというのが正解かもね・・」
 文句を言う孝一に、恭子が肩を落とす。
「お前たちが出すハイエロ粒子が、一般人に悪影響を及ぼしている!国民を不健全へと導くお前たちは、確実に排除しなければならない!」
「ふざけんな!テメェもこのオレのエロの邪魔をしようっていうのかよ!?」
 言い放つ司令官に、孝一が文句を言う。
「私たちはただ恋や愛をしているだけです!それだけで誰かの迷惑になるのですか!?」
「霧子ちゃん・・・」
 司令官を問い詰める霧子に、将馬が戸惑いを覚える。
「お前たちが出したハイエロ粒子を浴びることで、国民も不健全となっていく。エロや凶暴性を増強させ、邪な人間へと変えてしまうのだ!」
「そんなムチャクチャな考え、納得できませんよ!」
 司令官の言い分に、将馬が反発する。
「おめぇらのいう健全ってのがどういうもんかは分かんねぇ!けどな、オレたちのやることに目くじら立ててケチをつけるっていうなら、オレたちは容赦しねぇぞ!」
 孝一が怒りを込めて、司令官に言い放つ。
「あたしらはあたしらの生き方ってもんがあんだよ!」
「私たちはもう、誰かに利用されたくない・・・!」
 ロザリーとクリスも司令官への反感を示す。
「あなたたちも自分勝手な大人のようね・・」
「アンタたちにも議長にも、私たちの人生をいじくり回されるわけにはいかないのよ!」
 夕姫と魅波も司令官に対する不満を口にする。
「プリンスだけでなく、クロスの他の者たちも不健全に走るか・・ならばクロス全員、ここで処罰する!」
 司令官が孝一たちだけでなく、海潮たちも敵視した。
「自分の考えに逆らう者は全て敵。そうだと言いたげなヤツだな・・」
「相手が私たちの言うことを聞かずに、自分の考えを押し通そうとするなら、遠慮なしで返り討ちにするだけよ・・!」
 ナーガもカナメも司令官の言動に反対の意思を示す。
「ザフト軍同様、あの集団に対しても迎撃態勢を取る!攻めてきたなら返り討ちにするんだ!」
 ジルが指示を送り、ジャスミンとマギーが笑みを浮かべた。
 グレイブとハウザーがアサルトライフルとロングバレルライフルを発射して、ザクとグフを撃ち抜いていく。
「我らもクロスを叩くぞ!ダイミダラー3型、攻撃開始!」
 司令官が命令を下し、ダイミダラー3型10体がダイミダラー超型たちに向けて前進をした。
「望むところだ!どっちのダイミダラーが上か、白黒つけてやるぜ!」
 孝一が不敵な笑みを見せて、ダイミダラー超型が6型と共に3型を迎え撃つ。
「オルペウスは先に行って!アークエンジェルとエターナルを追って!」
 ランガもダイミダラー3型に立ち向かい、海潮がジルたちに呼びかけてきた。
「ここにいるザフト軍と3型を倒して、すぐに追いつきます!」
「私たちでみんなやっつけちゃうんだからー!」
 エルシャもダイミダラー3型と戦う決意を告げて、ヴィヴィアンも意気込みを見せる。
「分かった・・必ず追いついてこい!」
 ジルが頷き、オルペウス、蒼龍號、碧龍號がアークエンジェルを追って加速した。
「性能はこっちのダイミダラーの方が上よ!」
「数でもオレたちクロスも負けちゃいねぇぜ!」
 恭子と孝一が言い放ち、ダイミダラー超型と6型が3型を迎え撃つ。ランガとレイジアたちも続いた。

 ミネルバに追いつこうとしていたアークエンジェルとエターナル。そこにオルペウスも追いついてきた。
「ミネルバ、私たちが2隻を食い止める!お前たちはこのまま進め!」
 ジルがタリアに向けて指示を送った。
「艦長、メサイアが近づいてきます!」
 アーサーが報告して、タリアが視線を移す。地球に向けて移動するメサイアの姿を、シンたちは目撃した。
“レイ、頼むぞ。お前がこの戦いの勝利のカギだ。”
「はい、議長。」
 ギルバートからの指示に、レイが冷静に答える。
(オレだけでもデスティニープランを、争いが2度と起こらない世界を実現する・・そのためならシン、お前たちも倒す・・・!)
「レイ・ザ・バレル、レジェンド、発進する!」
 ギルバートのために全てを賭けるレイが、レジェンドでメサイアから出撃した。
「レイ・・!」
 シンがレジェンドを見て当惑を覚える。レジェンドがドラグーンをデスティニーたちに向けて射出した。
 ドラグーンから放たれるビームを、デスティニーとイザナギがスピードを上げてかわす。
「これが、ドラグーンの戦い方・・!」
「先の大戦で、“プロヴィデンス”が使っていた・・基にしているから、レジェンドも使うってことか・・・!」
 ドラグーンによる全方位攻撃の威力を痛感するカナタとシン。
「シン!カナタ!」
「来るな、ルナ!狙い撃ちされるぞ!」
 援護しようとしたルナマリアを、シンが呼び止めた。イザナギがビームライフルを発射して、レジェンドをけん制した。
「レイ・・・!」
「シン、お前たちクロスを許しはしない・・・」
 困惑を浮かべるシンに、レイが鋭い視線を向ける。
「レイ、私たちはデュランダル議長を止めるために来ました。ただし、アークエンジェルとも敵対関係にあるままです。」
 タリアがレイに向けて自分たちの意思を伝える。
「できることなら、あなたとは戦いたくはありません・・撤退するならば、攻撃はしません。」
「議長の意志に背くならば、何者だろうと敵・・グラディス艦長、あなたも例外ではありません。」
 タリアから警告を投げかけられても、レイはギルバートのために戦う意思を変えない。
「クロスは議長と袂を分かった・・あなたたちはもはや、我々の敵です。」
「レイ・・・」
 敵視するレイに、シンが心を揺さぶられる。
「デスティニープランは必ずやり遂げなければならない・・全ての世界から悲劇を起こさせないために・・・!」
 レイが言い放ち、レジェンドが再びドラグーンを操作する。デスティニーとイザナギがビームシールドを発しながら高速で回避するが、ビームをかわし切れずに爆発に巻き込まれる。
「シン!」
「シンとカナタくんの援護を!」
 ルナマリアが叫び、タリアがシンたちの援護を指示する。
「艦長、レイのことはオレに任せてください!」
 するとシンがタリアに呼びかけてきた。
「レイはオレたちと一緒に戦ってきた仲間です!これからどうしたらいいのかハッキリとはしてませんが、レイを説得してみせます・・最悪、力ずくでも止めるつもりです・・!」
「シン・・・オレも、援護ぐらいはさせてくれないか・・・」
 レイと向き合う決意を固めるシンに、カナタも協力を伝えた。
「レイの仲間なのはシンや艦長たちだけじゃない。レイを連れ戻したいと思っているのは、オレたちみんな同じだ・・!」
「カナタ・・・分かった!ありがとう!」
 カナタに励まされて、シンが感謝した。
「レイのことはシンとカナタくんに任せます。本艦はメサイアを目指します。」
「了解!」
 タリアが指示を出して、アーサーたちが答えた。
「アークエンジェルとエターナルは、こっちが食い止めるよ!」
 ジルが呼びかけて、アークエンジェルに目を向けた。
「そうはいかないよ!」
 そこへハーケンの声が飛び込んできた。彼女はマーズ、ヘルベルトと共にドムで出撃し、エターナルの防衛をしていた。
「ラクス様の邪魔をしようとは、身の程知らずもいいところだな。」
「全員まとめて、オレたちでぶっ飛ばしてやるぜ!」
 ヘルベルトとマーズが不敵な笑みを浮かべる。
「行くよ、ヤローども!遅れんじゃないよ!」
「おう!」
「ラクス様のために!」
 ハーケンが檄を飛ばし、マーズとヘルベルトが答える。3機のドムがオルペウスに向かっていく。
「私たちがあの3機の相手をする!」
「オルペウスはアークエンジェルとエターナルを!」
 ナーガとカナメがジルに向けて呼びかける。蒼龍號と碧龍號がドムを迎え撃つ。
「クロスの戦艦が接近してきます!」
 エターナルを操縦するマーチン・ダコスタが報告する。
「オレがガイアで出る!ラクスとエターナルを頼むぞ、ダコスタくん!」
「了解です!」
 バルトフェルドが指示して、ダコスタが答える。バルトフェルドがブリッジを出て、格納されているガイアに乗り込んだ。
「アンドリュー・バルトフェルド、ガイア、出るぞ!」
 バルトフェルドの掛け声と共に、ガイアがエターナルから発進する。ステラの黒いボディのガイアに対して、彼のガイアは朱色となっていた。
「ラクスには近づけさせないぞ・・!」
 バルトフェルドが言い放ち、ガイアがオルペウスの前に立ちはだかる。
「ガイア・・ガイアがもう1つ・・・!」
 ステラがバルトフェルドのガイアを見て、心を揺さぶられる。彼女のガイアがバルトフェルドのガイアに向かっていく。
「ステラ、待って!・・ミネルバ、インパルスとガイアにデュートリオンビームを!」
 ルナマリアがステラを呼び止めて、タリアに声を掛けた。彼女はバルトフェルドやハーケンたちと全力で戦うことを決めていた。
「メイリン、インパルスとガイアにデュートリオンビーム照射。その後、改めてメサイアへ向かいます!」
「はい!」
 タリアが指示して、メイリンが答える。ミネルバからのデュートリオンビームを受けて、インパルスとステラのガイアのエネルギーが回復した。
「ステラ、私から離れないで!」
「うん・・!」
 ルナマリアが声を掛けて、ステラが頷いた。インパルスとガイアがバルトフェルドのガイアに向かっていく。
 バルトフェルドのガイアがビームライフルを手にして撃つ。インパルスとステラのガイアがビームをかわして、ビームライフルを発射した。
「わるいガイア・・ガイアを、わるいことにつかわせない・・・!」
 ステラがバルトフェルドに対して怒りを覚える。2機のガイアがビームライフルの撃ち合いを繰り広げる。
「ガイアの使い方に慣れているな。だが手を抜いてやるほど甘くはないぞ・・!」
 バルトフェルドがステラの力を称賛しながらも、全力で倒す決意を固めていた。
 インパルスがバルトフェルドのガイアを狙ってビームライフルを発射した。バルトフェルドが反応し、ガイアがビームをかわした。
「私がいることを忘れてもらったら困るわ!」
「お嬢さん2人が相手とはね・・戦いでなければ、あたたかく迎えてもよかったかもしれん・・だが、ここが戦場である以上、誰が相手でも敵には容赦しないぞ。」
 バルトフェルドがからかって、ガイアがビームサーベルを手にして加速した。インパルスとステラのガイアがビームライフルを撃つが、バルトフェルドのガイアがビームをかいくぐる。
 インパルスもビームサーベルを手にして、バルトフェルドのガイアのビームサーベルとぶつけ合う。
「ルナ!」
 ステラが叫び、彼女のガイアがビームライフルを撃つ。バルトフェルドのガイアがインパルスから離れて、ビームを回避した。
「2人同時だと手こずりそうか・・・!」
 ルナマリアとステラを相手にした2対1の状況に、バルトフェルドが皮肉を口にした。

 ダイミダラー3型の軍勢に対して、ダイミダラー超型と6型がレイジアたちと協力して優位に立っていた。
「オレたちはオレたちの道を進む!やりたいようにやる!」
「あなたたちの一方的な考えの押し付けを、認めるわけにはいかない!」
 孝一と将馬が自分たちの考えを言い放つ。彼らの態度と自分たちの劣勢に、司令官が苛立つ。
「こうなれば、我らの3型の切り札を使うまでだ・・・!」
 司令官がクロス打倒の策に出ることを決める。
「W指ビーム!」
 そのとき、ダイミダラー超型と6型が手からのビームを放ち、3型の1体の両肩に直撃させた。3型は両腕を失い、後方の隕石に叩きつけられた。
「くっ・・1機やられたか・・だがまだ残りを合わせれば・・!」
 司令官が毒づきながらも、残り9体のダイミダラー3型の無事を確かめる。
「行くぞ!健全合体!」
 彼の号令と共に、ダイミダラー3型がそれぞれ変形、合体し、超巨大ロボが3体現れた。
「な、何だよ、ありゃ・・!?」
「すごーい♪ものすごく大きいロボットだよー♪」
 超巨大ロボを見てロザリーが驚き、ヴィヴィアンが喜ぶ。
「これぞ我らの最高の力!その名も“ダイケンゼン”だ!」
 司令官が高らかに言い放つ。超巨大ロボ、ダイケンゼンがダイミダラーたちの前に立ちふさがる。
「合体して強くなったと思っているみたいだけど・・・」
「的が大きくなって攻撃しやすくなったわね・・」
 ダイケンゼンを見て、クリスが呟いて、夕姫が微笑む。
「ダイケンゼンをただの3型の寄せ集めと思うな。これでお前たちを確実に断罪する!」
 司令官が言い放ち、ダイケンゼンの1機が右手を振りかぶりパンチを繰り出した。
「ぐおっ!」
 ダイミダラー超型が殴り飛ばされて、孝一がうめく。
「孝一!」
 超型が隕石に叩きつけられて、海潮が孝一に向かって叫ぶ。
「気を付けて!あの巨大ロボ、パワーアップしているし、見た目以上のスピードもあるわ!」
 エルシャがダイケンゼンを警戒して、ヴィヴィアンたちに注意を呼び掛ける。
「たとえ他のダイミダラーだろうと、他のクロスの戦力だろうと、このダイケンゼンに勝つことはできない!」
 司令官が勝ち誇り、ダイケンゼン3機が前に伸ばした両手から一斉にビームを放った。
「うわっ!」
「うっ・・!」
 海潮たちが回避するが、グレイブとハウザーが回避しきれずにビームの余波を受けて火花を散らし、ロザリーとクリスがうめく。
「ロザリー!」
「クリスちゃん!」
 ヴィヴィアンとエルシャがロザリーたちに向かって叫ぶ。
「あれだけの火力のビームを撃たれたら、ランガはよけられても、みんなはよけきれないわ・・!」
 魅波がダイケンゼンの力に毒づく。
「だったら1体ずつブッ倒してけばいいだけのことだ!」
 孝一がいきり立ち、ダイミダラー超型がスピードを上げてダイケンゼンたちに向かっていく。
「必殺・指ビーム!」
 ダイミダラー超型が繰り出した左手からビームが放たれた。
「健全ビーム!」
 ダイケンゼンの1機がビームを放射して、ダイミダラー超型のビームを押し込んだ。
「おわあっ!」
「キャアッ!」
 ダイミダラー超型が火花を散らして、孝一と恭子が絶叫する。
「孝一くん!恭子さん!」
 将馬が孝一たちに向かって叫ぶ。そこへ他のダイケンゼンたちもダイミダラー6型を狙ってビームを撃ってきた。
 ダイミダラー6型が手から指バリアを出して防ぐが、ダイケンゼンのビームに耐えきれずに吹き飛ばされた
「キャッ!」
「き、霧子ちゃん・・!」
 強い衝撃に襲われて、霧子が悲鳴を上げて、将馬が声を振り絞る。
「いっけー!ブンブンまるー!」
 ヴィヴィアンが叫び、レイザーがブーメランブレードを投げ飛ばした。しかしダイケンゼンが掲げた腕に弾かれた。
「わわわっ!」
 ヴィヴィアンが慌てて、レイザーがブーメランブレードを受け止める。
「貴様らなど、ダイケンゼンの前では蚊トンボも同然だ。」
 司令官が不敵な笑みを浮かべて、ダイケンゼンの1体が右手を振りかぶりパンチを繰り出した。
「うわあっ!」
 パンチの衝撃にレイザーが押されて、ヴィヴィアンが悲鳴を上げる。
「ヴィヴィちゃん!」
 エルシャが叫び、レイジアがビームライフルを撃ちながらダイケンゼンに向かっていく。
「海潮!」
「うんっ!」
 魅波が呼びかけて、海潮が頷く。ランガもダイケンゼンたちに向かって突っ込み、左手から砲撃を放つ。
 レイジアもビームライフルを発射するが、ダイケンゼンたちの発するバリアに防がれる。
「健全ビーム!」
 ダイケンゼンたちが一斉にビームを放つ。ランガとレイジアが防御するが、止めきれずに吹き飛ばされる。
「くっ・・よくもやってくれたわね・・!」
 夕姫がいら立ちを噛みしめて、ランガが飛び出して加速した。
 ダイケンゼンたちが放つビームを、ランガは時間を超越して回避していく。すると回避されたビームが軌道を変えて、再びランガに向かって飛んできた。
「バロウの神、ランガ。そのエネルギーの反応は既に記憶させてある!」
 司令官がランガに向けて言い放つ。放たれるビームの数が増えて、時を超えるランガが回避しきれなくなる。
「うわあっ!」
 ランガがビームを当てられたことで、海潮たちが苦痛を覚えて悲鳴を上げる。
「海潮!」
「いくら時間を超えられても、ホーミングで狙われ続けたら・・・!」
 ヴィヴィアンが叫び、エルシャがダイケンゼンの性能に危機感を覚える。
「理解したか。我々の世界を憂う正義は、次元をも超越するまでになったと。」
 司令官が孝一たちに対して勝ち誇る。
「アイツら、調子に乗りやがって・・!」
 2機のダイミダラーが起き上がり、孝一が怒りを噛みしめる。
「美容室プリンス、そしてプリンスが与するクロスは、健全な青少年の育成を阻害する社会の害悪となっている。これはそのための措置である。」
 司令官が自分たちの考えを孝一たちに向けて告げる。
「連合軍やペンギン帝国のおかげで、世の中は浄化されるはずだった。なのにどうだ?貴様らの愚行によって、いかがわしい商売やメディアが一斉に復活してしまった。よって貴様らは、健全な青少年の育成のために消えてもらわねばならんのだ!」
「私たち、そんなに悪いことしました・・・!?」
 言い放つ司令官に、霧子が憤りを覚える。
「将馬くんとラブラブするのが、殺されるほど悪いこと?・・消えなくちゃならないことなの!?」
「霧子ちゃん・・・」
 問い詰める彼女に、将馬が戸惑いを感じていく。
「私は将馬くんのことが好きです!ですがそれは、家族でも友達でもないあなたたちには、何も迷惑をかけてはいません!」
 霧子が怒りを言い放ち、ダイミダラー6型からハイエロ粒子があふれ出す。
「今まで以上のハイエロ粒子を出すとは・・やはり貴様らは危険で有害だ・・・!」
 ダイミダラー6型の力に脅威を感じて、司令官が憤りを強める。
「貴様らは健全な世界のために排除する!貴様らの愚行は、我々がここで完全に断つ!」
「愚行を犯しているのはあなたたちです!」
 自分たちの使命を遂行しようとする司令官に、霧子が怒鳴り返す。
「将馬くんと私の尊い愛を否定するヤツらは許せません・・命に代えても、私がすり潰します!」
 彼女が自身のリミッターを外そうと、髪飾りを外そうとした。
「待って、霧子ちゃん!それは危険だよ!」
 すると将馬が心配して呼び止めてきた。
「それは霧子ちゃんのリミッターなんだよね!?それで霧子ちゃんに何かあったら、オレは・・!」
「ありがとう、将馬くん・・私は死ぬつもりは絶対にないよ・・将馬くんと離れ離れになるなんて、死ぬよりも辛いことだから・・・!」
 心配する将馬に、霧子が微笑んで想いを伝えた。
「霧子ちゃん・・ありがとう・・・!」
 戸惑いを感じた将馬が霧子に感謝した。
「貴様らはここで終わる。貴様らの邪な世迷言など、決して認められはしない!」
 司令官が言い放ち、ダイケンゼン3機がビームの発射体勢に入る。霧子はリミッター外しが間に合わない。
「コケコッコーアターック!」
 そこへ1機の機体が飛び込み、ダイケンゼンの1体に突撃した。
「あ、あれは!?」
 恭子がその機体を見て驚愕する。ダイミダラーたちの前に現れたのは、リッツカスタムだった。
「ダイミダラー、あんなふざけたのに負けるなんて、絶対認めないからね!」
 リカンツが孝一たちに向かって不満を言ってきた。
「リッツ!?何でおめぇがここに!?」
「ダイミダラーが他のヤツにやられるなんて、納得いかないからね!それに、デスティニープランなんてものがあったら、ペンギンたちが安心して暮らせなくなるからね!」
 孝一が問いかけると、リカンツが自分たちの考えを口にする。ペンギン帝国もデスティニープランに反対していた。
「今回だけはそっちの味方になってあげる!でもこれが終わったら、今度こそ決着をつけてやるんだから!」
「そうかよ・・だったらよろしくな、リッツ!」
 リカンツの言い分を聞き入れて、孝一が気さくに答えた。
「ペンギン帝国とはまだ納得いかないところがありますが、今はあのロボットを倒すのが先です!」
 霧子も割り切って、リカンツとの共闘を受け入れた。
「ペンギン帝国が、クロスと手を組むとは・・・!」
 司令官がリッツカスタムの出現に苛立つ。
「ペンギン帝国のロボもまとめて倒す!行け、ダイケンゼン!」
 彼が命令して、ダイケンゼンたちがリッツカスタムを狙ってビームを放射した。するとリッツカスタムが回転して、ビームをかいくぐっていく。
 ダイケンゼンがビームを続けて撃つが、リッツカスタムのスピードを捉えることができない。
「ダイケンゼンがリッツに注意を向けているわ!」
「今のうちに!」
 恭子が声を上げて、霧子が髪飾りを外してハイエロ粒子を開放する。ダイミダラー6型の力がアップしていく。
「孝一くん、遠慮することはないわ・・徹底的にやっちゃって!」
「よーし!全力全開でやらせてもらうぜー!」
 恭子が呼びかけて、孝一が彼女の胸をわしづかみにして揉んでいく。2人が絶頂したことで孝一のハイエロ粒子が増して、ダイミダラー超型もパワーアップを果たす。
「行くぞ、霧子!」
「はい、孝一くん!」
 孝一と霧子が声を掛け合い、ダイミダラー超型と6型がダイケンゼンたちに向かっていく。
「ダイミダラー、まだ我々に抵抗する気か!」
 司令官が声を荒げて、ダイケンゼンの1機がダイミダラーたちに狙いを変えた。ダイミダラーがビームを当てられるも、強いハイエロ粒子の膜がビームを弾いた。
「健全ビームが弾かれてしまいます!」
「ダイミダラーのパワー、なおも上昇中!」
 兵士たちがダイミダラーに脅威を覚えて声を荒げる。
「うろたえるな!ダイケンゼンのパワーを上げればいいだけのこと!」
「ダイケンゼン、出力アップします!」
 司令官が檄を飛ばし、兵士たちがダイケンゼンの能力を引き上げた。放たれるビームの威力も上がっていく。
「今まで以上のビームが飛んでくるわ!」
「あたしらもあのデカ物の注意を引き付けるぞ!」
 エルシャが危機感を覚えて、ロザリーが呼びかける。レイジア、グレイブ、ハウザー、レイザーもダイケンゼンに向かっていく。
「貴様らが束になろうと、正しき世界の前では駆逐されるのみ!」
 司令官が怒りの声を上げ、ダイケンゼンがビームを連射する。ダイミダラー超型と6型が、追跡してくるビームをおびき寄せていく。
「自分の攻撃を食らわせてやるぜー!」
 孝一が言い放ち、ダイミダラーたちがダイケンゼンに近づいていく。ダイケンゼンがビームを放つと、ダイミダラーたちは上へ急上昇して回避した。
 挟み撃ちにしようとしたビームがぶつかり合い、爆発してまばゆく煌めいた。
「ま、まぶしい・・・!」
「でも私は見える・・ランガには見えている・・孝一くんたちも見てる!」
 クリスが目がくらんでうめくが、海潮は光に負けずにダイケンゼンの位置を把握する。孝一にも霧子にもダイケンゼンの位置が分かっていた。
「見えなくたって、チンには心の目がある!」
 リカンツも回転するリッツカスタムの中で言い放つ。彼女は目を閉じていて、心眼で周囲の位置を把握できるまでになっていた。
「そこね!コケコッコーアターック!」
 リッツカスタムがダイケンゼンの1体に詰め寄り、嘴で連続でつついた。ダイケンゼンが胴体に穴を開けられ、火花を散らす。
「し、司令!こちらの機能が低下していきます!」
「空気が外に漏れだしています!離脱しなければ危険です!」
 負傷したダイケンゼンにいるパイロットが、司令官から指示を仰ぐ。
「クロスを倒さずして引き下がれるか!ここで屈すれば、世界は再び不健全なものとなる!」
 司令官が檄を飛ばして、兵士たちが納得した。負傷したダイケンゼンは退かずに戦いを続けようとする。
「あんな状態になっても戦おうとするなんて・・・!」
「くだらないことのために、そこまでやるなんてね・・・」
 海潮がダイケンゼンを見て深刻な面持ちを浮かべて、夕姫が呆れてため息をつく。
「くらえ!指パーンチ!」
 孝一が叫び声を上げて、ダイミダラー超型がハイエロ粒子を集めた左手を突き出した。ダイケンゼンがビームを放つが、ダイミダラー超型の手がビームを打ち破り、ダイケンゼンの胴体にぶつかった。
 ダイケンゼンが突き飛ばされ、損傷しているダイケンゼンに衝突した。
「うわあっ!もう持ちません!」
 パイロットが悲鳴を上げて、ダイケンゼンの1機が落下して爆発した。
「おのれ!どこまでも世界を不健全にしたいか!」
 司令官が怒号を放ち、残りのダイケンゼンが光を発した右手を伸ばす。ダイミダラー超型が加速して、手をかわす。
 ダイケンゼンがビームを連射して、ダイミダラー超型を追跡して包囲した。
「これで終わりだ!まずは貴様だ!」
 司令官が勝ち誇り、ビームがダイミダラー超型に向けて一斉にとんだ。その直後、ダイミダラー超型の姿が突然消えた。
「何っ!?どこへ行ったんだ!?」
「あ、あんなところに!?」
 パイロットが周りを見回して、ランガのそばにいたダイミダラー超型を見つけた。
「もしかして、私たちを過去から今に呼び寄せて、ダイケンゼンの攻撃から助けてくれたの・・・!?」
「すまねぇ、海潮!ありがとな!」
 霧子が戸惑いを感じて、孝一が海潮たちに感謝した。ランガが一瞬前の過去からダイミダラー超型を呼び寄せて、ビームから救ったのである。
「どこまでも不健全に振る舞い、我らに逆らうか!」
 司令官が激高し、孝一たちに敵意を向ける。
「我々は健全な世界のために戦っている!それに逆らうことは、世界に逆らう敵に他ならん!」
“貴様たち、健全とは何ぞや!?”
 そのとき、司令官に向けて通信が飛び込んできた。
「その声は、又吉長官・・!」
「いきなり戦いに乱入してきた!?」
 通信をしてきた一雄に、恭子と将馬が驚く。
「健全が何かだと!?それはもちろん、正しい環境と倫理、正義で満ち足りた存在だ!そこにはエロなどといういかがわしいものなど存在しない、正しき理想郷なのだ!」
 司令官が感情的に一雄に言い返す。
「一切のハレンチを全て抹消する!それが世界と若者、双方の未来のためとなる!」
“笑わせるな!違うとは言わせんぞ!貴様は、いや貴様とて、エロい行為の産物なのだろう!自分たちもエロを謳歌して、年を重ねたのだろう!なのに若者には、それを見せず、聞かせず、蚊帳の外だ!”
 司令官の言葉に一雄が反論する。
“偽善者が!そこまで言うならエロをせずに子供を作ってみろ!恋人とエロ抜きで付き合ってみせろ!所詮愛など、エロの文学的表現に過ぎん!正しくエロを育むことこそ、愛を育むことに他ならんのだ!”
「調子に乗りおって・・貴様らの世迷言に耳を貸すものか!」
“よく聞くがいい!真の犯罪者とは、自分を棚に上げて身勝手な倫理を押し付ける、貴様らのような不健全な輩のことをいうのだ!不健全な中高年が!”
「貴様!健全な世界を目指す我々を、不健全とぬかすか!」
 一雄にエロと愛について訴えられて、司令官が怒りを爆発させる。
「言ってくれるぜ、長官!全くその通りだぜ!」
 孝一が一雄に共感して、不敵な笑みを見せる。
「あなたたちも人生のどこかで愛やエロを経験しているのに、私たちがダメだって理屈は、私たちは絶対に認めません!」
 霧子も言い放ち、2機のダイミダラーが全身から発するハイエロ粒子を手に集めていく。
「アンタたちみたいな押し付けがましいのに、ペンギンたちの理想郷を荒らさせるわけにいかないんだから!」
 リカンツも言い放ってハイエロ粒子を放出して、リッツカスタムからあふれ出す。
「必殺!ペンギン大激突!」
 両手を広げたリッツカスタムが高速で突っ込み、ダイケンゼンの1機の胴体を貫いた。
「う、うおぉっ!」
 パイロットが絶叫を上げて、ダイケンゼンが爆発を起こしながら隕石に落下した。
 ダイミダラー超型と6型が加速して突っ込む。ダイケンゼンがビームを放射するが、ダイミダラーたちの放出するハイエロ粒子に全て弾かれる。
「ダイミダラー・インサートブレイク!」
 孝一と霧子が叫び、ダイミダラー超型と6型がハイエロ粒子を集めた手を突き出した。ダイケンゼンがダイミダラーたちの手に胴体を貫かれ、体内にハイエロ粒子を送り込まれた。
「認めん・・認めんぞ!貴様ら不健全な存在など!」
 司令官が絶叫を上げて、ダイケンゼンがハイエロ粒子の光に包まれて、大爆発を起こした。
「やったぜ!巨大ロボをやっつけた!」
「すっごーい♪きれいな花火だよー♪」
 ロザリーが勝ち誇り、ヴィヴィアンが爆発を見てはしゃぐ。
「戦わないで済めばよかったけど・・いやらしいのはよくないとは思うけど・・・」
「自分たちを押し付けてくる人には、遠慮はいらないわ・・」
 複雑な気分を感じる海潮に、夕姫が笑みをこぼした。
「やったよ、将馬くん!私たち、勝てたね!」
「うん!霧子ちゃんが無事でよかった・・!」
 霧子と将馬が喜んで、抱きしめ合って愛を分かち合う。
「オレたちのエロ魂に敵うヤツはいねぇぜー!」
「ちょっと、孝一くん!調子に乗ってエッチをしないで!」
 大喜びする孝一に胸を揉まれて、恭子が悲鳴を上げる。
「みんな揃って緊張感がないんだから・・・帝王様、チンはみんなのために戦うよ・・!」
 孝一たちに呆れるも、リカンツはペンギン帝王やマイケルたちに想いを向けた。
 
 
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