スーパーロボット大戦CROSS
第65話「最後の戦い」

 

 

 メサイアを目指して航行するミネルバとオルペウス。カナタとラブ、アンジュとタスク、海潮たちは宇宙の無重力に翻弄されていた。
「これが無重力の感覚・・・」
「思っていたよりもふわふわしてて、楽しくなってくるね♪」
 カナタが戸惑いを感じて、ラブが楽しくなって笑顔を浮かべる。
「でも足が床につかないと、ちょっと落ち着かないな・・」
「そうだね。そこは慣れだよ、慣れ♪アハハハ・・」
 無重力の中での行動に慣れようと、カナタとラブは意識を集中していく。
「イザナギに重力制御が利くのは助かった・・今のこんな状態が続いたんじゃ、戦いもおかしくなっちゃうから・・」
 カナタがイザナギのことを考えて、安心を見せる。するとラブが自分の胸に手を当てて、表情を曇らせる。
「ラブ?・・どうしたんだ・・・?」
「うん・・私が持っている力って、何なのかなって・・・」
 カナタが問いかけて、ラブが自分の力のことを考える。
「今でもこの力がどういうものなのかが分からない・・これが私やみんなに、どんな影響が出るのか・・・」
「イザナギにも共鳴していることもあった・・ホントに何なのか、オレも気になってはいる・・・」
 ラブの話を聞いて、カナタもその力を気にする。ラブに何かが起こるのではないかという不安も、カナタは感じていた。
「戦いはオレとシンたちがやる。ラブはムチャしないようにな・・」
「うん・・カナタもムチャしないで、みんな無事に帰ってきて・・・」
 互いにお願いをして、約束をしたカナタとラブ。2人は顔を近づけて、口付けを交わした。
「それじゃ、オレも行く・・・!」
 唇を離してから、カナタはラブと別れてドックに向かった。
(カナタ・・・)
 見送るラブが、カナタたちの無事を祈っていた。

 各国とキラたち、そしてクロスの動向を伺うギルバートたち。彼らのいるメサイアに通信が入ってきた。
“プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルですね。我々は日本自衛隊所属の特別部隊です。”
 特別部隊の司令官が、ギルバートに通信を送ってきた。
“日本政府は未だにデスティニープランの導入の承認について決めあぐねていますが、我ら部隊は独自に判断し、プランへ賛同いたします。”
「そうか・・それは喜ばしいことですが、日本政府に背くことになるのではないですか?」
“いえ、この日本は、ハレンチや強欲によって不健全に染まりつつあります。ダイミダラーやプリンスの暴走により、その愚行はさらに加速することになりました。健全の外敵となるものは排除し、世間の目に触れさせない環境を整える必要があります。”
「つまり、君たちの謳う健全のために、デスティニープランへ賛同するということですね。」
“それだけではありません。我々はダイミダラー打倒のため、新型ロボを開発、量産しています。その名も“ダイケンゼン”。ダイケンゼンと共に、我々もあなた方の警護と敵の排除に参加したいと所望いたします。”
「分かりました。あなた方の協力、感謝します。すぐに迎えを送りますので・・」
“いえ、そちらの位置情報をいただければ、シャトルでこちらが向かいます。”
「ではこちらの位置を提示します。展開しているザフト艦隊にも、あなた方のことは知らせておきます。」
“了解です。では後ほど。”
 ギルバートと協定を結び、司令官は通信を終えた。
「よろしいのですか?連合軍ではなかったとはいえ、詳しく素性の知らない者を引き入れるのは・・」
 オペレーターがギルバートに疑問を投げかける。
「クロスとミネルバが離反してしまった以上、戦力の補給は助かる。もしも何か企んでいるのなら、分かり次第一掃すればいいだけだ。」
 ギルバートは悠然さを崩さずに事を構える。彼は特別部隊を利用することを考えていた。

 メサイアに向かうミネルバとオルペウス。そのレーダーがザフトの部隊とアークエンジェル、エターナルの反応を捉えた。
「ザフト軍とクライン派がもうすぐぶつかるか。」
「向こうは今まで戦いに乱入してきたけど、今度はこっちがアイツらの戦いに乱入することになるな。」
 ジルとジャスミンがメサイア近辺の現状を見て呟く。
「今までの借りを返すには丁度いいシチュだな・・・!」
「私たちもこの倍返しにお付き合いしますよ。」
 不敵な笑みを見せるヒルダに、サラマンディーネが声を掛けてきた。
「私たちとランガを敵に回したことを、たっぷり後悔させてやるから・・!」
 夕姫がギルバートへの憤りを浮かべる。
「私たちもしっかりと宇宙服を着るわよ。ランガに入って私たちも戦うことになるけど、外に出る場合もあるからね。」
「分かってるわよ。それはグラディス艦長に感謝してる。動きにくいってこともないし・・」
 魅波に答えて、受け取っていたパイロットスーツを着ている夕姫がその感触を確かめる。
「ん~・・宇宙だと服脱がして直揉みできねぇのか~・・」
「孝一くんは宇宙に出ても相変わらずなんだから・・」
 大きく肩を落とす孝一に、恭子が呆れていた。
「エースとビッグエースに補助ブースターを取り付けたわ。これで宇宙でもある程度自由に動かせるはずよ。」
 エリナがエースたちの状態について、隼人たちに伝える。
「まさかエースが宇宙に進出するなんてねぇ・・」
「私たちもいつか、他の世界の力を借りずに自力で宇宙に上がりたいものね・・」
 翔子が宇宙に来れることへの戸惑いを言って、穂波が願望を口にする。
「オレたちはこのオルペウスの護衛と援護だ。ランガとミネルバ組、カナタが先陣を切る。」
「私たちと孝一たちは、オーブ軍の相手をする。これでみんなのやることは決まったわね。」
 隼人がそれぞれのやることを言って、アンジュが納得する。
「ザフト軍とアークエンジェルが見えました!」
 霧子が声を上げて、アンジュたちが外に目を向けた。展開しているザフト軍と、そこに向かうアークエンジェルとエターナルを、アンジュたちが目撃した。
「艦長、どうしますか?・・このまま艦隊の防衛を突破して、メサイアに突入するのですか・・!?」
 アーサーが深刻な面持ちでタリアからの指示を仰ぐ。
「各機発進。ただし次の指示があるまで攻撃はしないように。」
 タリアが冷静に指示を出して、ドックにいたカナタたちが頷いた。
「海潮、夕姫、ランガに入るわよ。」
「うん。フリーダムにもザフトにも容赦しないんだから・・!」
 魅波が呼びかけて、夕姫が敵対勢力への敵意を示す。
「こんな争い、馬鹿げているけど・・このまま何もしなかったら、誰かの言いなりになる世界になってしまう・・それはもっとイヤだから・・・!」
 海潮は戦いをよく思っていないが、支配への拒絶のほうが強くなっていた。
 海潮たちが頷き合ってから、ランガの中に入っていった。カナタたちもそれぞれの機体に乗って、発進に備える。
 そしてミネルバ、オルペウスのハッチが開かれた。
「天命カナタ、イザナギ、行きます!」
「シン・アスカ、デスティニー、行きます!」
「ルナマリア・ホーク、コアスプレンダー、行くわよ!」
 カナタのイザナギ、シンのデスティニー、ルナマリアのコアスプレンダー、ステラのガイアがミネルバから発進した。続けてチェストフライヤー、レッグフライヤー、フォースシルエットが射出されて、コアスプレンダーと合体してフォースインパルスとなった。
「アンジュ隊、出撃するわよ!」
 アンジュが掛け声を上げて、アサルトモードになっているヴィルキスがオルペウスから発進した。
「私たちも出るわよ!」
「分かってるよ、サリア!」
 サリアも呼びかけて、ヒルダが言い返す。クレオパトラとテオドーラもオルペウスから発進した。
 続けてエルシャのレイジア、タスクのアーキバス、ヴィヴィアンのレイザー、ロザリーのグレイブ、クリスのハウザーが出撃した。
「ナーガ、カナメ、私たちも行きますよ。」
「はい、サラマンディーネ様!」
 サラマンディーネが声を掛けて、ナーガとカナメが答えた。焔龍號、蒼龍號、碧龍號も発進していった。
「ランガ、出ます!」
 海潮が掛け声を上げて、ランガがオルペウスから飛び出して翼を広げた。
「エース部隊も出撃する!」
 隼人の掛け声と共に、ビッグエースとエースも出て、オルペウスの防衛に回った。
「ダイミダラー超型、出るぜ!」
「ダイミダラー6型・霧子、行きます!」
 孝一と恭子のダイミダラー超型、霧子のダイミダラー6型もオルペウスから出撃した。

 先にザフト艦隊の防衛網に接触することになったアークエンジェルとエターナル。エターナルに乗艦しているラクスが、艦隊に向けて呼びかけた
「こちらはエターナル、ラクス・クラインです。移動要塞を護衛するザフト軍兵士に通告します。」
 ラクスがザフトに向けて呼びかける。
「私たちはこれより、ジェネシスとデスティニープランの停止を遂行します。それは人が守らねばならないものでも、生きるために必要なものでもありません。平和のためと思うなら、その軍服をまとった誇りがまだその身にあるのなら、道を開けなさい・・!」
 プラントの歌姫からの勧告に、ザフトの面々の動揺は少なからずあった。
「ザフト艦隊、及びラクス・クラインに通達します。」
 そこへさらに声がかかり、ラクスたちが視線を移した。ミネルバたちも接近して、タリアが呼びかけてきた。
「ミネルバ艦長、タリア・グラディスです。我々クロスはデスティニープランに反対し、プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルの拘束を遂行します。同時にアークエンジェル、及びエターナルの攻撃の阻止も行います。」
 タリアが自分たちの考えを告げる。カナタたちはデスティニープランを強要するギルバートを止め、同時にキラたちの進撃も迎撃しようとしていた。
「グラディス艦長、あなた方の目的もデュランダル議長の阻止のはずです。ここは共闘することが最善のはずです。」
「そうやって私たちを思い通りにしようとしてもムダです!」
 共闘を提案するラクスに反発したのは、霧子だった。
「ラクス・クライン、あなたのことはグラディス艦長から聞いているわ。」
「別の世界の方々・・アルゼナル、バロウ王国、プリンスですね。」
 サリアも続けて言って、ラクスが言葉を返す。
「プラントの歌姫とのことだけど、自ら戦場に赴くとは・・」
「度胸があるというか、何というか・・」
 エルシャがラクスに感心して、ヒルダが肩を落とす。
「しかし、私たちはあなたたちの言葉を聞くつもりも、手を組むつもりもありません。あなたたちの勝手な正義感のために、クロスは余計な痛手をこうむることになったのです。」
「その謝罪もろくにせず、自分の考えを押し付けようとするアンタたちを、私たちが受け入れると思ってるの?」
「いつまでも虫のいい考えが通じると思わないことね・・!」
 サラマンディーネがラクスたちへの不信感を伝えて、アンジュと夕姫も続けて不満を口にする。
「誰もが幸福にならなければ、本当の平和になりません・・あなたたちがやっているのは、平和を取り戻すことでも戦いを終わらせることでもない・・力を見せつけて、みんなを従わせようとしているだけです!」
 海潮もラクスたちに反対の意思を示した。海潮はラクスたちが志している正義と自分の正義が違うことを実感していた。
「アンタみたいなかわいい司令官は悪くねぇとは思うけどな・・オレはオレだ!オレのやることはオレが決めるぜ!」
 孝一もラクスたちと対峙する姿勢を見せていた。
「あなたたちは平和を取り戻すため、戦争を終わらせるために戦ってきたつもりなのでしょう・・しかし今まで取ってきたやり方は、その理念や信念から大きくかけ離れている!」
 カナタもラクスやキラたちの行動に対する非難をする。一方的な攻撃をされて、それを正当化されることは、カナタにとっても納得できるものではなかった。
「私たちクロスはデュランダル議長の破壊行為を止め、あなた方も討ちます。双方、これ以上の暴挙を許すわけにはいきません。」
 自分たちの決意を告げるタリアに、ラクスが深刻な面持ちを浮かべた。
「本艦はメサイアに向けて突入します。みなさんは援護をお願いします。」
「分かった。お互い、遠慮なしで行くわよ・・!」
 タリアが指示を出して、ジルが答えた。ミネルバ、デスティニー、インパルス、イザナギ、ランガがメサイアに向けて移動を始めた。
「行かせるな!ミネルバもクロスも我々の敵だ!」
 艦隊の司令官が兵士たちに命令を下す。ザクとグフが射撃しようとするが、イザナギがビームライフルを発射してけん制する。
「グラディス艦長は行ってください!シンとルナも!」
「ありがとう、カナタ、みんな!」
 呼びかけるカナタに、ルナマリアが礼を言う。
「私たちもデュランダル議長の下へ・・」
 ラクスがバルトフェルドたちに指示を送る。だがエターナルとアークエンジェルの前に、ヴィルキスたちが立ちはだかる。
「あなたたちの相手は私たちよ、偉そうな歌姫さん!」
「いつまでもアンタたちの自由にできると思うなよ!」
 アンジュとヒルダがラクスに言い放ち、ヴィルキスとテオドーラがクレオパトラと共にラツィーエルを手にした。
「なぜ私たちと戦うのですか?一刻も早く議長を止めなければならないのは、あなた方も分かっているはずです。」
「それはシンたちがやってくれるわ。もちろん私たちも、アンタたちをブッ倒した後で追いかけるけどね。」
 問い詰めるラクスに、アンジュが自分たちの考えを告げる。
「私たちはお前たちを倒す・・・」
「今までの借り、何倍にもして返してやるよ・・もちろんプラントの痛姫にもね!」
 クリスが目つきを鋭くして、ロザリーが言い放つ。ハウザーとグレイブがアサルトライフルを構えた瞬間、フリーダムとジャスティス、ドムがエターナルから出てきた。
「アイツら・・!」
 ロザリーがフリーダムに視線を移して毒づく。
「ミーティア、リフトオフ!」
 エターナルから射出されたミーティアを、フリーダムとジャスティスがそれぞれ装着した。
「そんな大きなものを付ければ勝てると思ってるの?」
 アンジュがため息をついている中、フリーダムが先行してきた。
「あくまで議長狙いってことかよ・・!」
「メサイアにたどり着く前に、フリーダムはミネルバに追いついてしまいます・・!」
 ヒルダが毒づき、サラマンディーネが焦りを浮かべる。ジャスティス、ドム、アークエンジェル、エターナルも前進を始めた。
「艦長、いかがいたしますか・・!?」
「敵勢力の指揮官の1人は、あのラクス様ですよ・・!」
 兵士やオペレーターがラクスへの攻撃にためらいを抱く。
「何をしているか!ヤツらは敵だ!議長の言葉を聞かず、その思想を自己満足に壊そうとする連中だ!撃て!たとえ相手がプラントの歌姫であろうと、世界のために戦わねばならん!」
 司令官が兵士たちに檄を飛ばす。パイロットたちが迷いを振り切ろうとしながら、ザクやグフたちがビームを発射した。
 フリーダムたちが散開して、ザクたちを迎え撃つ。フリーダムがミーティアとともにビームを一斉発射して、ザクたちを一気に撃ち抜いた。
 キラは今回もパイロットを殺さないように努めていた。
「まだこのような戦い方を・・・」
「直接命を奪わない戦い方ですが、他の敵から狙い撃ちされる・・そのことも分からないとは・・・」
 彼のこの戦いにエルシャが深刻さを感じて、サラマンディーネが苦言を呈する。
「ザフトとオーブで戦いを始めてしまったよ・・!」
「こうなったら、みんなまとめてぶっ飛ばしてやるぜ!」
 将馬が動揺を浮かべて、孝一がいきり立って言い放つ。
「そうね・・ああいうゴチャゴチャした相手は、みんなまとめて倒せばいいだけ!」
「ザフト軍、オーブ軍の両方に攻撃よ!」
 アンジュが笑みを浮かべて、サリアが指示を出す。
 ヴィルキスたちもザフト艦隊とキラたちの交戦の真っ只中に飛び込んだ。ヴィルキス、クレオパトラ、テオドーラがラツィーエルでザクやグフを切り付けていく。
 ダイミダラー超型と6型も突撃して、指ビームでザクたちを撃ち抜いていく。
 ザフト艦隊がオルペウスにも攻撃の矛先を向けたが、オルペウス、ビッグエース、エースの迎撃で攻撃を阻まれる。
 タスクのアーキバスも迫るザクたちをアサルトライフルで撃ち落としていく。
「いきなり混戦しているな・・離れ離れになるのは危険だ・・!」
 タスクが戦況に毒づき、アンジュたちと合流しようとした。
 そこへフリーダムが近づいてきたことにタスクが気付き、アーキバスが振り返った。
 キラが複数をロックオンして、フリーダムとミーティアから一斉に発射されたビームがザクたちを撃ち抜いた。
「フリーダム・・オレが止めるしかない・・!」
 タスクが覚悟を決めて、アーキバスがアサルトライフルを発射した。キラが気付き、フリーダムが射撃をかわした。
 フリーダムがビームを放ち、アサルトライフルを弾き飛ばした。
「くっ・・・!」
 タスクが毒づき、アーキバスがドラゴンスレイヤーを手にする。
「どうして、僕たちの邪魔をするんだ?・・君たちも、デュランダル議長を止めようとしているんじゃないのか・・・!?」
 キラがタスクに向けて問い詰める。
「オレたちはデュランダル議長もアンタたちも止める・・それにオレはアンジュの騎士だ・・アンジュが生きる世界のためにも、オレは戦う!」
 タスクが自分の正直な思いを言い放つ。
「そんなに立ちはだかるなら・・僕は・・・!」
 キラが迷いを振り切り、目つきを鋭くする。彼の中で何かが弾けて、感覚が研ぎ澄まされる。
 アーキバスがフリーダムを狙ってドラゴンスレイヤーを振りかざす。フリーダムがミーティアの右のアームからビームソードを発して振り下ろす。
 フリーダムの一閃が、ドラゴンスレイヤーの刀身を叩き折った。
「なっ!?」
 力の差を見せつけられ、タスクが驚愕する。フリーダムが再びビームソードを振りかざして、アーキバスの右腕を切り裂いた。
「まずい・・このままだと・・・!」
「タスク!」
 危機感を覚えるタスクに、アンジュの声が届いた。ヴィルキスとクレオパトラがアーキバスと合流した。
「ゴメン、アンジュ・・何もできずに・・・」
「アイツの相手は私がするから、あなたはオルペウスに戻りなさい。」
 謝るタスクにアンジュが呼びかける。彼女はキラと戦うことを決意していた。
「でも、アンジュだけにアイツの相手をさせるわけには・・・!」
「そう思うなら、さっさとパラメイルを直して出直すことね。今の状態で戦ってもやられるだけよ。」
「アンジュ・・・分かったよ・・でも、気を付けて・・・」
「私はもう、あんなヤツには負けないわよ・・・!」
 引き上げるタスクに、アンジュが自信を込めて答えた。アーキバスがオルペウスに戻っていく。
「アンジュだけじゃない。フリーダムの相手は私もするわよ。」
「勝手にして・・巻き添えになっても知らないわよ、サリア。」
 サリアが口を挟み、アンジュがため息混じりに言い返す。
「君たちまで・・議長による攻撃がされたら、地球にも被害が出るんだぞ!それでもいいと言うのか!?」
 キラがアンジュたちにも問い詰める。
「自分が守りたいと思っているものだけでしょ?アンタたちが守ろうとしてるのは・・」
「違う!僕たちは・・!」
「それで全世界のためになるなんて、綺麗事ばかり・・そういうのは全然信用できないのよ・・!」
 反論しようとするキラを、アンジュが嘲笑する。
「私は、私たちはもう、誰かの思い通りになるのはイヤなんのよ・・私たちの生き方は、私たちが決める・・!」
 サリアも自分の考えを口にする。彼女はキラたちに振り回されることも拒絶していた。
「君たちが立ちはだかるなら、僕は・・!」
 キラが声を振り絞り、フリーダムがビームソードを振り下ろしてきた。ヴィルキスとクレオパトラが左右に動いて、ビームソードをかわす。
「挟み撃ちにしようとしても、同時に狙い撃ちしてくるわよ!」
 アンジュがサリアに向けて呼びかける。キラがヴィルキスとクレオパトラをロックオンし、フリーダムがビームを発射した。
 アンジュとサリアが反応し、ヴィルキスとクレオパトラが紙一重でビームをかわした。
「まずはあの大型の武装を破壊するわよ!」
「もうあなたの命令には聞かないわ!」
 サリアが指示を送るが、アンジュが反抗的な態度で言い返す。それでも2人はキラを倒そうと立ち向かう。
「ヴィルキス!」
 アンジュが掛け声を上げて、ヴィルキスがアリエルモードとなった。フリーダムがミーティアと共にビームを放つが、ヴィルキスは高速でかいくぐる。
 ヴィルキスがラツィーエルを振りかざして、ミーティアの左腕部を切り付ける。しかし大きな傷をつけることができない。
(スピード重視だと力不足になる・・!)
 ミーティアを破壊しきれないことに、アンジュが毒づく。
 次の瞬間、クレオパトラが振りかざしたラツィーエルが、ミーティアの右腕部を切り裂いた。
「アンジュに注意を向けすぎたようね・・!」
「サリア!」
 笑みを浮かべるサリアに、アンジュが叫ぶ。
「ミーティアがやられた・・!」
 キラが声を荒げ、フリーダムがミーティアを切り離した。
「大きな武装を外した分、より機敏に動けるはずよ・・!」
「見るだけで分かるわよ、そんなの・・!」
 サリアが注意を言うと、アンジュが不満げに言い返す。
 キラがヴィルキスとクレオパトラを警戒して、フリーダムが2つのビームライフルを手にして発砲した。ヴィルキスとクレオパトラがスピードを上げて、ビームを回避する。
 キラが2機の動きを読み、フリーダムが続けて射撃した。
「くっ!」
 ヴィルキスが射撃を受けて爆炎に押されて、アンジュがうめく。
 直後にクレオパトラがフリーダムに向かっていく。振り下ろされたラツィーエルをかわし、フリーダムがレールガンを発射する。
 クレオパトラがビームシールドを発して、ビームを防いだ。
 クレオパトラが続けてビームライフルを発射した。フリーダムもビームライフルを撃って、打ち合いを繰り広げる。
「私を差し置いて、勝手にやり合わないでよね・・!」
 アンジュが不満を感じて、ヴィルキスもフリーダムに向かっていった。

 キラのフリーダムと離れてしまったアスランたち。彼らはザクたちと交戦しながら、キラの行方を探った。
「キラなら大丈夫です。私たちはメサイアを目指しましょう。」
「そうだな・・キラならやられたりしない・・・」
 ラクスが先に行くことを言って、アスランがキラが追いついてくると信じた。
 そのとき、ジャスティスたちに向かってビームが飛んできた。ジャスティスたちが前進を止めて、ビームを回避した。
 サラマンディーネの焔龍號、ヒルダのテオドーラが駆け付け、晴嵐とビームライフルを撃ってきた。
「クロス・・オレたちにも攻撃をしてくるなんて・・・!」
 アスランがヒルダたちと戦うことに毒づく。
「あの赤い機体の相手は私がしますわ。みなさんはミネルバを追ってください。」
 サラマンディーネが呼びかけて、ヒルダたちを先に行かせようとする。
「サラマンディーネ様だけに戦わせるわけにはいきません!」
「私たちも加勢します!」
 ナーガとカナメがサラマンディーネと共に、アスランと戦おうとする。
「今はデュランダル議長を止めるのが優先です。他の脅威を止めるのは、力のある私のやるべきことよ。」
「サラマンディーネ様・・・」
 サラマンディーネに諭されて、ナーガが戸惑いを覚える。
「すぐに片づけて追いかけますので、ご心配なく。それよりも、アークエンジェルとエターナルが先に行ってしまいますよ。」
「分かりました!ご武運を、サラマンディーネ様!」
 微笑むサラマンディーネに、カナメが答える。焔龍號がジャスティスの相手をして、蒼龍號と碧龍號がオルペウスと共に先へ進んだ。
「待つんだ、みんな!」
 アスランが叫び、ジャスティスがオルペウスを追いかけようとした。だがテオドーラのビームライフルからの射撃が、ジャスティスの行く手を阻んだ。
「アンタももはやそっちの人間だ。今のうちにこっちに引き返さねぇつもりなら、テメェにも借りを返させてもらうぞ。」
 ヒルダがアスランに向けて忠告を送る。
「先に行けって言うのは、私は聞けないね。あたしらはフリーダムやアークエンジェルに散々イヤな思いをさせられてきたんだ。そいつらの味方になったんなら、そいつもブッ倒さないと気が治まらねぇんだよ・・!」
「ヒルダさん・・・分かりました。ただし、私たち2人で戦いましょう。」
 残って戦おうとするヒルダの申し出を、サラマンディーネが聞き入れる。
「アンジュとサリアはフリーダムと戦ってるから、そっちは任せるけどね・・!」
「アスラン・ザラ・・フリーダムのキラ・ヤマトとは負けず劣らずの力を持っているようですから、相手にとって不足はないはずですわ。」
 ヒルダとサラマンディーネが笑みを浮かべて、ジャスティスに視線を戻した。
「邪魔をするな!早く議長を止めなければならないことが、君たちには分からないのか!?」
「それはミネルバのみなさんの責務です。私たちは、綺麗事を正当化しようとする狼藉者を討ち果たすだけです。」
「今ここで、あたしたちがケリをつけてやるよ!」
 問い詰めるアスランに、サラマンディーネとヒルダが考えを言い放つ。ジャスティスに対し、焔龍號とテオドーラが同時に飛び出した。
 
 
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