スーパーロボット大戦CROSS
第56話「ミスルギ大混戦」
武蔵野からミスルギ皇国に向けて出発したカナタたち。ミネルバとオルペウスが海上を飛行し、アウローラが海中を進んでいた。「エンブリヲによって捕らわれているアウラを奪還、解放することで、世界をひっくり返すことができます。」 サラマンディーネが次の戦いの作戦の確認をする。「アウラを取り戻せば、エンブリヲの支配の体制を崩すことができます。」「そのために、敵を撃退するよりもアウラ奪還を優先してほしいところです。」 ナーガとカナメも作戦について話を続ける。「もちろん、それぞれ思うところはあるでしょう。向き合わなければならない相手もいるでしょう・・」「要するに、アウラってヤツを助けて、エンブリヲってヤツをぶっ潰せばいいんだろ?」 サラマンディーネがなだめると、孝一が口を挟んできた。「相手したいヤツがいるなら相手すりゃいいぜ!その代わり、アウラを助けるのはオレがやるぜ!」「その心意気は頼もしいのですが、いくらハイエロ粒子を使って莫大な力を発揮しても、ダイミダラーだけで乗り切れるものではないわ。」 意気込みを見せる孝一に、サラマンディーネが助言を送る。「焔龍號の収斂時空砲。それに相当するほどの力がなければ、おそらくアウラを救出できないでしょう・・」「それだけ頑丈な牢屋に入れられているのでしょうか・・・!?」 サラマンディーネの話を聞いて、霧子が不安を浮かべる。「だったらあのくらいにまでハイエロ粒子をアップさせて・・!」「何だかとんでもないことになりそう・・・」 孝一がまた意気込みを見せて、恭子が気まずく。「それぞれの思惑を優先させても、その上でみんなが協力することが大事だと思う。」 カナタがシンたちに向けて、自分の考えを告げる。「みんなも、このことを覚えていてほしい・・」「つまり、あんまり自分勝手になりすぎるなってことよね・・」 頼み込むカナタに、アンジュが肩を落として言いかける。「私たちや世界を思い通りにするヤツが許せない。ここにいる私たちに共通している気持ちがある。」「1つでも同じ気持ちがあるなら、力を合わせることができるはずだよ・・!」 アンジュが共に戦うことに納得して、海潮も訴える。「この戦いを終わらせる・・戦いや支配を持ちかけるヤツを、オレたちで討つ・・!」「私たちは何にも支配されたくない・・支配や縛りを超えた先に、楽園があるから・・・!」 シンと海潮もそれぞれの決意を口にする。クロス全員が戦う理由を確立させていた。「エンブリヲを対し、サリアたちを止める。ペンギンたちが出てきたら返り討ちにする。アークエンジェルが出てきたら、今度こそ倒す・・!」「助けられるなら助ける・・でも、向こうがどうしても私たちを拒絶しようとするなら、覚悟を決める・・・!」 カナタとラブが決意と覚悟を口にする。シンたちも2人の言葉に頷いていた。「ミスルギ皇国の到着まであと10分よ。パイロットは出撃準備を。」 タリアが指示を送り、カナタたちがそれぞれの機体に乗って出撃に備えた。 クロスの接近をサリアたちは迎え撃とうとしていた。「まずはクロスを討つのが最優先よ。他の勢力が乱入してくる可能性があるから、警戒を怠らないように。」 サリアがエルシャたちに注意を投げかける。「サリアちゃん、エンブリヲさんからアンジュちゃんを連れてくるように言われているのよ・・アンジュちゃんもまとめて倒すつもりなの・・?」 エルシャがサリアにアンジュのことを聞く。「アンジュは私が相手をするわ。4人は他の撃墜を任せるわ・・」「サリア・・まさか、アンジュのことを・・・!?」 指示を出すサリアの思惑を悟り、ターニャが問い詰める。「全てはエンブリヲ様のためよ。エンブリヲ様が築く世界のために、私たちは戦う。それだけよ・・」 サリアはエルシャたちに背を向けて、ダイヤモンドローズ騎士団としての意思を口にする。サリアの口にする意思があくまで自分の考える理想ではないのかと、エルシャは疑問を感じていた。「ダイヤモンドローズ騎士団、出撃よ!」 サリアが檄を飛ばし、クロスへの迎撃に向かった。 ミスルギ皇国からクレオパトラ、レイジア、テオドーラ、ビクトリア、エイレーネが発進した。ウィンダムも多数出撃し、ビッグエースの部隊も海岸線で防衛網を敷いていた。「連合軍の機体も使っているわね。」「数でもこっちに負けてないってところを見せてるのかね・・」 マギーとジャスミンがウィンダムたちを見て、ため息をつく。「エルシャ、悪いヤツから助けてあげるからね!」「クリス、首根っこを引っつかんででも、お前を連れ戻すからな・・・!」 ヴィヴィアンとヒルダがエルシャ、クリスへの思いを口にする。(将馬くん・・もしまたあなたと会ったなら、今度こそあなたを元に戻してみせる・・・!) 霧子が心の中で将馬のことを考えて、想いを強めていく。(やっとロゴスを倒した・・エンブリヲも倒して、ホントの平和を取り戻すんだ・・・!) シンも戦いのない世界のため、エンブリヲやペンギン帝国も倒すことを心に誓っていた。(オレは世界のため、ラブのために戦う・・カンナ、お前を倒すことになっても・・・!) カナタも決意を強めて、カンナを倒す覚悟も決めていた。「目標は国の中心部。その地下にアウラが拘束されています。妨害する敵を退け、アウラを解放します。」 タリアが作戦の内容を伝えて、カナタたちが頷いた。「天命カナタ、イザナギ、行きます!」「シン・アスカ、デスティニー、行きます!」「レイ・ザ・バレル、レジェンド、発進する!」「ルナマリア・ホーク、コアスプレンダー、行くわよ!」 カナタのイザナギ、シンのデスティニー、レイのレジェンド、ルナマリアのコアスプレンダーがミネルバから発進した。続けてチェストフライヤー、レッグフライヤー、フォースシルエットが射出されて、コアスプレンダーと合体してフォースインパルスとなった。「ヴィルキス、行くわよ!」「アーキバス、発進する!」 アンジュのヴィルキス、タスクのアーキバスがアウローラから発進した。「ヒルダ隊、出撃するよ!」 ヒルダが掛け声を上げて、アーキバス、グレイブ、レイザーが続けて発進した。「お姉ちゃん、ゆうぴー、行ってくるね・・!」「アンジュの言っていたあの変態に、私の分まで思い知らせてやってよね。」 海潮が挨拶をして、夕姫がエンブリヲへの敵意を彼女に伝える。「その人が私たちのことも思い通りにしようとしているなら、私は迷わない・・全力でその人の悪さを止める・・・!」 海潮もエンブリヲを討つことへの迷いを振り切り、本気で戦うことを決意していた。「行くよ、スーラ、ランガ・・!」 海潮が呼びかけてから、ランガの中に入った。ランガがオルペウスから飛び降りて、背中から翼を広げて飛行した。「穂波、翔子、ビッグエースの調子はどう?」「すごいね、ビッグエースはやっぱり・・!」「エースより難しい操縦だけど、私たちも訓練はこなしているわ。」 エリナが声を掛けて、翔子が戸惑いを浮かべて、穂波が期待チェックをしながら答える。「オレたちの役目はこのオルペウスとアウローラ、ミネルバの防衛だ!敵を近づけさせるなよ!」 隼人が檄を飛ばして、エリナたちが頷いた。ビッグエース2機がオルペウスの艦上に出て、迎撃に備えた。「ダイミダラー超型、出るぜ!」「ダイミダラー6型・霧子、行きます!」 孝一と恭子のダイミダラー超型、霧子のダイミダラー6型もオルペウスから出撃して、ミスルギ皇国の陸地に着地した。 イザナギ、デスティニー、レジェンド、インパルスがビームライフルを手にして、ウィンダムたちを撃ち落としていく。「量産機に構っている場合じゃないわ!シンたちはどんどん進んで!」 ルナマリアがウィンダムたちを自分に引き付けようとして、シンたちを先に向かわせる。「私もルナに賛成です・・性能の高い機体が先に進むのが、最善の方法です・・!」 サラマンディーネが賛成して、ルナマリアと共に微笑んで頷いた。「ステラもてつだう・・ルナ、いっしょにやろう・・」 ガイアがインパルスの眼下に来て、ステラもルナマリアに声を掛けてきた。「ステラ・・分かった!シン、みんなは行って!」 ルナマリアがステラの協力に感謝して、シンたちに呼びかけた。「分かった!・・ルナ、ステラ、気を付けて!」 シンが頷いて、デスティニーが加速して前進した。イザナギたちも続いて、ウィンダムたちの横を通り抜けていった。「ステラ、ムチャはしないようにね・・!」「うん・・・!」 ルナマリアが注意を促して、ステラが頷く。インパルスとガイアがビームライフルを構えて、ウィンダムたちに攻撃を仕掛けた。 ルナマリアたちの援護を受けて、イザナギたちが城を目指す。その前に、出撃したクレオパトラたちが行く手を阻んできた。「サリア・・あなたたちも出てきたわね・・・!」 アンジュがクレオパトラを見て、目つきを鋭くする。「さっき言った通りよ。私がアンジュの相手をするわ・・」「分かったわ・・他のみんなは任せて・・」 サリアが言いかけて、エルシャが当惑を抱えたまま答えた。「そんなに私が気に入らないみたいね・・・いいわ・・!」 サリアの敵意を感じ取り、アンジュが彼女と戦うことを決意する。「みんなは先に行って・・サリアは私が倒すわ・・!」「ダメよ、アンジュ。アウラを救うためには、あなたとヴィルキスの力も必要なのよ・・!」 しかしサラマンディーネがアンジュを呼び止める。「ヴィルキスに負けない機体なら他にもいるわ。もちろん、私もさっさとサリアを倒してすぐに追いつくけどね。」 アンジュはサリアとの対決をやめず、カナタたちもアウラを助けられると示唆する。「アンジュ、悪いけどあたしには、相手しなくちゃならないヤツがいるんでね・・」 ヒルダがアンジュに言って、クリスの乗るテオドーラに目を向ける。「あたしもエルシャを止めなくちゃ!」 ヴィヴィアンもエルシャと対峙することを決意していた。「僕はアンジュのために戦う・・アンジュと一緒に戦うよ・・!」 タスクもアンジュと共に戦うことを心に決めていた。「みんな、考えがまとまってるみてぇだな・・!」「城に突入するには、サリアさんたちと戦うしかないみたいね・・!」 孝一が不敵な笑みを、霧子も深刻な面持ちを浮かべる。(アンジュ、あなたがいなくなれば・・エンブリヲ様は、私を受け入れてくれる・・・!) エンブリヲへの想いを募らせて、サリアがクレオパトラでアンジュのヴィルキスに向かっていく。 ヴィルキスとクレオパトラがラツィーエルを手にして、激しくぶつけ合う。2機はさらにラツィーエルを振りかざして、何度も衝突していく。「サリア・・・!」「アンジュを捕まえるんじゃなくて、本気で討つつもりなの・・・!?」 ターニャとイルマがサリアの戦い方に困惑する。 ヴィルキスとクレオパトラがアサルトライフルとビームライフルを手にして、同時に発射する。アサルトライフルの弾丸がビームに弾かれ、ヴィルキスが紙一重でかわす。「あなたがいなければ、ここまで苦しむことはなかった・・あなたがいなければ!」「自分の不幸を私のせいにするなんて、最低じゃない・・!」 不満を言い放つサリアに、アンジュも不満をぶつける。「アンジュ!」 ヴィヴィアンがアンジュを助けようとするが、レイザーの前にレイジアが現れた。「サリアちゃんの邪魔はさせないわ、ヴィヴィちゃん・・!」「エルシャ・・・ダメだよ、エルシャ!あんな悪いヤツの言いなりになるなんて!」 サリアを援護するエルシャに、ヴィヴィアンが呼びかける。レイジアがラツィーエルを振りかざして、レイザーがブーメランブレードで受け止める。「ヒルダ、ロザリー・・・」 クリスがヒルダのアーキバスとロザリーのグレイブを見て、怒りを募らせる。「私とランガも、あなたたちを止めるよ・・!」「お前たちの機体の攻撃の手を止める・・」 海潮とレイがクリスに言いかけて、ランガとレジェンドがテオドーラの前に来た。「あなたたちも、邪魔をするなら叩き潰すよ・・」 クリスが海潮たちにも敵意を向ける。「協力は感謝するけどな、クリスとはあたしらがケリをつけなきゃならねぇ・・!」「手を出すっていうなら、援護だけにしてもらうよ・・!」 ロザリーとヒルダが海潮たちに忠告する。「相手が何人でも、全員倒す・・私には、エンブリヲくんがついているのだから・・・!」 クリスが低く告げて、テオドーラがアーキバスたちに飛びかかる。レジェンドがドラグーンからビームを発射して、テオドーラの行く手を阻んだ。「余計なことをするなって言ってんだよ!」「クリスの相手はあたしらだよ!」 ロザリーとヒルダがレイに文句を言う。「ならば望み通り、存分にやらせてあげるよ。」 そこへ声がかかり、海潮たちが視線を移す。ランガたちの前に、ヒステリカが現れた。「あれは、あのときアルゼナルに現れた・・!」「エンブリヲくんも来てくれたんだね・・!」 ヒステリカを見て、ヒルダが記憶を呼び起こし、クリスが笑みをこぼす。「まずはレジェンドから引き受けよう。君の健闘を祈っているよ、クリス・・」「エンブリヲくん・・うん・・・!」 ヒステリカからエンブリヲの声がかかって、クリスが頷いた。「どういうことかな、サリア?私はアンジュは生かして連れてくるように言ったはずだよ。」 エンブリヲから問い詰められて、サリアが息をのむ。「君が私の期待を裏切るとは・・実に嘆かわしいことだ・・・」「申し訳ありません、エンブリヲ様・・どのような処罰も受けます・・・それでも私は、アンジュを受け入れることはできないのです!」 ため息をつくエンブリヲに謝罪するも、サリアはアンジュを討つという考えを変えない。「本当に度し難いな・・素直に私に従っていればいいものを・・・」 エンブリヲがヒステリカを使い、ヴィルキスと戦い続けるクレオパトラを押さえようとした。 そのとき、レジェンドがビームライフルを発射して、ヒステリカが動いて回避した。「お前の相手はオレがする。お前たちも決着をつけて、任務を遂行するんだ。」 レイがヒルダたちに冷静に告げる。「礼は言わないよ・・!」 ヒルダがレイに言い返して、クリスとの戦いに専念する。「エンブリヲ・・アンジュに手出しはさせない!」 タスクがアーキバスを駆り、ヒステリカに向かっていく。「タスク・・・いいわ。これでサリアと存分にやれるってものよ・・!」 アンジュがタスクを見送ってから、クレオパトラに視線を戻す。「アンジュ・・・エンブリヲ様があなたを望んでも、私はあなたを許さない!」 サリアが憎悪を募らせて、クレオパトラがビームライフルを連射する。「どっちも迷惑なのよ!」 アンジュが文句を言って、ヴィルキスがラツィーエルでビームを防ぐ。「いいわね、あなたは・・最初は皇女として裕福に暮らしていて・・!」「その裕福もバカな国のせいでなくなったけどね・・!」 羨ましい渋りを見せるサリアに、アンジュが記憶を呼び起こして不満を口にする。「アルゼナルに来ても、あなたはヴィルキスを与えられた・・私じゃなくて、あなたに・・!」「ヴィルキスをよこしたのはアレクトラよ!それにヴィルキスの力のカギになる指輪も、お母様から譲り受けたものよ・・!」 サリアの言葉にさらに反論して、アンジュが身に着けている指輪を見て、母のことを思い出す。「どうして・・どうしてあなたばかり!」 サリアが激高し、クレオパトラがラツィーエルを振り下ろす。ヴィルキスもラツィーエルを掲げて受け止め、力比べを演じる。「私には何もなかった!皇女でもない、歌も知らない、指輪だって持っていない!どんなに頑張っても選ばれなかった・・ヴィルキスにも、アレクトラにも!」 自分の強い願望が叶わないことへの不満を募らせていくサリア。その行き場のない願望は、アンジュへの憎悪に変わっていく。「そんな私を、エンブリヲ様は選んでくれた・・だから、あなたたちはもういらないのよ!」「呆れてものが言えないわ・・すっかり子供ね・・・」 エンブリヲを慕い、アンジュやアルゼナル、自分を認めないものを切り捨てるサリアを、アンジュが呆れ果てる。「ないものねだりをして、与えてくれる人に入り浸って、思い通りにならない人に文句を言う・・あなたはわがままな子供よ!」「いいものをたくさんもらったあなたには、私のこの辛さは分からないわ!」「分かりたくもないわ、そんなわがままなんて!」「どこまでも身勝手ね、あなたという人は!」「今のあなたに言われたくないわよ!」「・・そうね・・今の私も、自分勝手になってしまった・・・!」 アンジュと言い合ううちに、自分に対する皮肉を感じていくサリア。「それでも私は、あなたを受け入れたくないのよ!」「そんなんでやられちゃたまんないのよ!」 自分を押し通そうとするサリアに、アンジュが不満を言い返す。クレオパトラとヴィルキスがまたラツィーエルをぶつけ合う。「私こそが、エンブリヲ様と結ばれるのよ!」 サリアが言い放ち、クレオパトラがヴィルキスを突き飛ばした。「うっ!」 アンジュが衝撃に揺さぶられて、ヴィルキスが城に叩き込まれた。「サリアのヤツ、やってくれたわね・・・!」 アンジュが毒づき、城から出ようとした。そのとき、彼女の視界に、逃げ遅れた国の住人の姿が入った。「て、敵がここまで攻めてきたぞ・・!」「助けて・・助けて、エンブリヲ様!」 人々が恐怖を覚え、エンブリヲたちに助けを求める。その様子に呆れたアンジュが、ヴィルキスのコックピットのハッチを開けた。「ア、アンジュリーゼ!?」「お前がそれに乗っていたのか!?」 人々がアンジュの姿を見て驚愕する。その直後、近くで爆発の音がしたのが、彼らの耳に入ってきた。「もうそこまで迫っている!」「お願いだ、アンジュリーゼ!私たちを助けて!」 人々が恐怖を募らせ、アンジュに助けを求めてきた。「助けて?なぜそんなことをしなくちゃいけないの?」 するとアンジュが冷淡な態度で言い返してきた。「私も忙しいのよ・・あなたたちの相手までしている余裕はないの・・」「そんなことを言わずに助けてくれ!そのロボットがあれば、何とかできるんだろ!?」「いい加減にしなさい!助けを求めれば必ず助けてもらえるだなんて思わないことね!」「なっ・・!?」 不満を言い放つアンジュの態度に、人々が驚愕する。「何故だ!?何故助けてくれないんだ!?」「助けられるだけの力があるのに、助けてくれないなんて!」 すると彼らはアンジュに対する不満をあらわにしてきた。「アンタは国や国民がどうなってもいいっていうのか!?」「えぇ・・構わないわ、全然・・」 問い詰めてくる人々に、アンジュが冷たく言い返した。彼女の態度に人々が言葉を詰まらせた。「私が今のあなたたちのように助けを求めたとき、あなたたちは何をしたのかしら?私を助けるどころか、ノーマというだけで虐げてきたじゃない・・それを棚に上げて自分たちだけ助けてもらおうなんて、虫がよすぎると思わないの・・?」 自分たちの都合ばかり考える人々に、アンジュが怒りを込めた言葉を投げかける。「自分の頭で考えることもせず、常に誰かにすがり、都合が悪くなればその誰かに責任を押し付ける、都合のいい豚ども・・だからエンブリヲなんかに管理されるのよ・・・」「やはり貴様はノーマなのか・・許されざる存在が、この機に乗じて弱みに付け込んで・・!」 軽蔑するアンジュに、人々が憤りをあらわにしていく。「やっぱり・・愚かさは死ななきゃ治らないようね・・・!」 見下げ果てたアンジュが、銃を取り出して構えた。彼女に銃口を向けられて、人々が恐怖を募らせる。(もう、こんな豚どもの命を奪うのに、何のためらいもないわ・・・) アンジュはミスルギ皇国の住人を本気で手に掛けようとした。“正しい人殺しなんてない!あっていいわけがない!殺されるために生まれてきた人なんていない!” そのとき、アンジュの脳裏に海潮の悲痛の叫びが響いた。次の瞬間、彼女は発砲するも、弾丸は人々ではなくそばの床に命中した。(海潮・・こんなときに邪魔をしてくるなんてね・・・) アンジュが心の中で海潮への不満を呟く。海潮の心からの嘆きが、アンジュの殺意を抑えたのである。「さっさと私の前から消えなさい・・言うことを聞かないと、今度こそ命はないわよ・・・!」 アンジュが低い声で忠告して、再び人々に銃口を向けた。恐怖に駆られた人々が慌てて逃げ出していく。(これで文句ないでしょ、海潮?・・この後に生きるも死ぬも、アイツらの勝手よ・・・) アンジュが海潮に向けて言いかける。嫌悪しか湧かないミスルギ皇国の住人を手に掛けなかったことに、彼女は複雑な気分を抱えていた。「待ちなさい、あなたたち・・私を、助けなさい・・・!」 そこへ声がして、アンジュが視線を移す。シルヴィアが車椅子から落ちて倒れて、助けを求めるが人々はいなくなってしまった。「私はミスルギ皇国の第一皇女・・いえ、女帝、シルヴィアですよ!誰か、早く私を助けなさい!」 シルヴィアが声を張り上げるが、戻ってくる人はいない。「無様なものね、シルヴィア・・私のように、誰も助けてくれないのだから・・・」 アンジュが声を掛けて、シルヴィアが緊迫を募らせる。彼女が恐る恐る振り向いて、アンジュを視認する。「それであなたはどうするの?それでも命乞いでもする?それとも、諦めて死ぬつもり?」 アンジュが問い詰めて、銃口をシルヴィアに向けてきた。「あなたも十分分かっているはずです!私が歩けないことを!・・その私を、あなたは冷酷に殺すつもりなのですか!?」「死刑にされそうになった私を、みんなは助けるどころか死ぬことを望んでけしかけた・・タスクやラブが助けてくれなかったら、私は本当に死んでいたわ・・」 必死に訴えるシルヴィアに冷淡に告げて、アンジュが首吊りの直前の出来事を思い出して、目つきを鋭くする。「そんなことを言って、自分が被害者だとでも言うつもり!?全て自業自得ではないですか!あなたはノーマで、あなたが私を歩けなくしたのですから!」「甘ったれてるんじゃないわよ!何でもかんでも人のせいにして!」 憎悪を込めて責任転嫁するシルヴィアに、アンジュが怒鳴り声をあげる。「宮廷医師が言ってたわ・・あなたのケガ、完全に治ってるって・・本当は歩けるのよ、あなたは・・自分で立とうとしないから立てないだけ・・・!」 アンジュが落ち着きを払い、シルヴィアに足の状態を告げる。「違う・・本当に自分で立てないんです・・あなたが私にショックを与えなければ、こんなことには!」 しかしシルヴィアは信じず、アンジュに責任をなすり付けようとする。この態度に憤りを募らせたアンジュが発砲し、シルヴィアのそばの柱に弾が命中した。「死ななきゃ治らないのかしら?・・その腐った性根は・・・!」 アンジュが低く鋭い声で言って、さらに銃を撃つ。足元に着弾が近づいてきて、シルヴィアが這うように逃げる。「やめて!やめてください!私はあなたの妹なのですよ!」「今さら妹面してもムダよ・・今のあなたを、私は家族だとは微塵も思っていないわ・・・!」 助けを請うシルヴィアだが、アンジュは冷徹に告げる。「死にたくなければ自分で立ちなさい!誰かに甘える暇はないわよ!」 彼女がまた発砲して、シルヴィアが必死に体を動かして、射撃をかわした。「あっ・・・!」 そのとき、シルヴィアは自分の足で立ち上がったことに気付き、戸惑いを覚える。「歩ける・・・自分の足で・・・!?」 立っている自分の足を見つめて、シルヴィアが動揺を見せる。「行きなさい、自分の足で!生きたいなら、自分の力で生きるのよ!」 アンジュが投げかけたこの言葉に背中を押されるように、シルヴィアがふらつきながらも走って、去っていった。(生きるのよ、シルヴィア・・もう、私たちは会うことはないわ・・・) 彼女に別れを告げてから、アンジュはヴィルキスに戻った。ヴィルキスが城から出て、クレオパトラの前に戻ってきた。「戻ってくるのに時間がかかったわね。このくらいでやられると思っていたのだけど・・」「ちょっと野暮用があっただけよ・・・」 声をかけるサリアに、アンジュがため息混じりに言い返す。「早く終わらせるわよ・・いつまでもあなたの相手をしている暇はないからね・・」「どこまでも勝手な態度ね・・でも、早く終わらせることには、賛成するわ!」 気分を落ち着けて言いかけるアンジュに言い返すも、サリアが笑みを浮かべる。クレオパトラがラツィーエルを構えて、ヴィルキスに向かって飛びかかった。 クロスとエンブリヲたちが交戦し、混迷を深めていくミスルギ皇国。その海岸にリカンツとマイケルたちが入り込んだ。「もう始めちゃってるよ~!」「あれに割って入るというのか・・・!」 ミスルギ皇国での戦いを目の当たりにして、マイケルが頭を抱えて、デニスが息をのむ。「チンもみんなも負けないよ!勝つのはペンギン帝国なんだからね!」「さすがだ、リッツ・・我らペンギン帝国の誇りだ・・!」 意気込みを見せるリカンツに、ジェイクが感嘆の声を上げる。「戦いはチンがやるから、みんなは危ないところには行かないようにね!」 リカンツがマイケルたちに呼びかけてから、リッツカスタムでカナタたちのところへ向かった。「危ないところに行かないでって言われてもなぁ~・・」「リッツだけを戦わせて、我々だけ指をくわえてみているわけにもいかんからな・・・!」 将馬が気まずくなって、ジェイクが深刻さを感じていく。「こうなれば、ここにあるメカを奪って、リッツに加勢しようよ!」 将馬が提案して、連合軍のビッグエースに目を付ける。「うむ!我らの力も、クロスにも連合軍にも見せつけてやるぞ!」「おー!」 ジェイクが檄を飛ばして、マイケルたちが掛け声を上げる。ペンギンコマンドーたちもペンギン帝国のため、行動を開始した。 第57話へ その他の小説に戻る TOPに戻る