スーパーロボット大戦CROSS
第53話「月面決戦」
ジブリールが発射したレクイエムによって、甚大な被害が出たプラント。ミネルバが出発の準備を整えている間に、アンジュからと思われる通信がアウローラに届いた。「ジャスミンさん、アンジュさんから通信が入ったって・・!」「あぁ。だけどちょっとしか言ってこなくて、すぐに切れてしまったよ・・」 恭子が話を伺い、ジャスミンがため息混じりに答える。「それで、何か詳しいことは?・・居場所とか・・」「ほとんど何も言っていなかったです・・でも、逆探知はできています。」 恭子がさらに問いかけて、オリビエが答える。「その場所はどこだ!?」 孝一が問い詰めると、パメラがモニターに現在の世界の地図を表示した。「ここが私たちが今いる日本。逆探知した場所はこの小島になります。」 オリビエが孝一たちに位置を指示して説明する。「そこにアンジュがいるってことだな!・・タスクたちも一緒なのか!?」「それは分からない。通信はアンジュの声だけだったし、通信もわずかだったし・・」 孝一がさらに問いかけて、ジャスミンが答える。「早くアンジュを助けに行かねぇと・・!」「そうしたいところだけど、プラントを攻撃した兵器を野放しにするわけにもいかないよ。」 ヒルダがアンジュ救出を考えるが、マギーがレクイエムのことを気にして懸念する。「でもアンジュをほっとくわけにもいかねぇよ・・クリスたちや連合軍に見つかったりしたら・・・!」「私が地球に残るよ。私がアンジュを捜しに行く。」 ヒルダが抗議の声を上げると、海潮がアンジュの救出を志願した。「今の私ならランガを動かせる。それに、アンジュたちに何かあったら、ランガの力が必要になるかもしれない・・」「海潮・・・」 海潮が決意を口にして、魅波が戸惑いを見せる。「みんなは宇宙に行って・・こんなことで大勢の人が死ぬなんて、私はイヤだから・・・!」「海潮・・私も残って、武蔵野を立て直すわ。虚神会のことも含めて話して、みんなを安心させないと・・」 海潮に続いて、魅波も地球に残ることを告げた。「私も残るわ。宇宙に行くのは次の機会にする。」 夕姫も肩を落とす素振りを見せて、考えを口にした。「分かったわ。島原家は武蔵野に滞在。海潮ちゃんはアンジュさんたちをお願い・・」 恭子が聞き入れて、海潮たちが頷いた。「もうすぐアウラの戦士がこの世界に来るわ。ナーガ、カナメ、あなたたちもこの地球に残って、魅波さんたちの警備をしてください。」「了解です、サラマンディーネ様。」 サラマンディーネからの指示に、ナーガが答えた。「私はヒルダたちと共に宇宙に上がります。あのような兵器を、破壊や殺戮だけのために使わせるわけにはいきません。」「分かりました。こっちは任せてください。」 サラマンディーネが自分の意思を告げて、カナメが笑顔で頷いた。 海潮たちが地球に残ることは、ミネルバにいるタリアたちに伝えられた。そしてカナタから事前に聞かされていた話から、シンたちは武蔵野からシクザルドームを訪れた。「ここに大型の宇宙戦艦があるとの話だけど・・」「でもこのシクザルドームは少なくても2回は攻撃を受けています。収容場所によっては戦艦にも危害が及んでいるかもしれないわ・・」 ドーム内の地下への階段を下りながら、ルナマリアとサラマンディーネが戦艦について話す。「それに、私たちの誰かが分かる操縦システムでないと、うまく動かすこともできない・・今はカナタもラブもここにいないのだから・・」「動かせなかったら最悪、私たちザフトだけで行かなくちゃならなくなる・・・」 メイとルナマリアが戦艦と宇宙での戦いに対する懸念を抱く。2人はドームの最下層まで下りて、ドアを開けた。 ドアの先の格納エリアに、巨大な戦艦が置かれていた。ルナマリアたちがエリアに入ると、遮断されていた空気が循環を始めた。「これが戦艦“オルペウス”・・!」「早速動かせるかどうかをチェックしないとね・・」 ルナマリアがオルペウスを見つめて、メイがチェックに向かった。「カナタとラブから説明書を受け取っていて、助かったよ・・これで何とかやってみよう・・」 ブリッジに来たメイが、説明書を頼りにコンピューターを操作する。オルペウスが起動して、中に明かりが灯る。「よし!これなら私たちでも動かせそうだね!」 メイが頷いて、外にいるルナマリアたちに合図を送った。「私はミネルバに知らせてくるわ。」「私はオルペウスに乗って外に出ます。」 ルナマリアがミネルバに戻り、サラマンディーネもオルペウスに乗り込んだ。「オルペウスが上昇すれば、上のハッチが反応して自動で開くようになっているよ。」「ではこのまま外に出て、機体と物資を移動しましょう。」 メイが説明して、サラマンディーネが助言を送る。オルペウスは地下を出て、シクザルドームのそばのヘリポートに着陸した。「す・・すっげぇ・・!」「これが、ここにあった宇宙戦艦・・・!」 ロザリーとマギーがオルペウスを見上げて、驚きを感じていく。「動かすのに問題はなさそうだね。さっさと全部こっちに移動させるよ!」 ジャスミンが指示を出して、ヒルダたちが飛行艇とアウローラからオルペウスに機体と物資を移動させた。 その様子を、ルナマリアからの連絡を受けたタリアが見守っていた。「積み込みと移送が完了次第、月に向けて発進します。ルナマリア、あなたたちも出撃に備えて。」「了解です。」 タリアからの指示に答えて、ルナマリアはドックに向かった。 海潮もランガに入って、アンジュのいる島に向かっていた。「この先の小さな島だよね?・・みんな、無事でいて・・・!」 アンジュ、タスク、モモカ、カナタ、ラブのことを心配して、海潮は意識を集中する。ランガが翼をはばたかせて加速する。「シン、あなたたちも生きて帰ってきて・・・!」 月に向かうシンたちのことも気にして、海潮はアンジュの救出に向かって急いだ。 飛行艇、アウローラからオルペウスへの機体の移動が完了し、クロスは発進準備を整えた。「これより、クロスは月に向けて発進します。この戦いの敗北、ジブリールの逃亡はプラントと地球、双方の滅亡につながります。必ずジブリールを、連合軍を討ちます!」 タリアが檄を飛ばして、シンたちが真剣な面持ちで頷いた。「回収したガイアもミネルバに入れた。でもこれに乗って出撃するかどうかはステラ、君次第だよ。」 ヨウランがステラにガイアのことを説明する。回収、修復されてミネルバに収容されていたガイアは、ステラの参加を受けて戦線に加えられることになった。「ステラ、これから戦いになる・・君にとってのイヤなもの、怖いものがたくさん出てくるんだぞ・・それでも君は・・」「シンとルナがいっしょだから、こわくないよ・・こんどこそ、こわいものをなくして、みんなといきていく・・」 シンが心配するが、ステラは彼らと共に戦うことを決意していた。「分かったよ、ステラ・・でも、まずは生き残ることを1番に考えるんだ。危なくなったらすぐに逃げるように。」 シンがステラの思いを受け取り、自身の思いも伝えた。「うん、そうする・・シンもみんなも、いっしょにいきてかえろうね・・」 ステラが言いかけて、シンとルナマリアたちが頷いた。「オルペウス、発進準備完了!」 ジャスミンが通信を送って、タリアが頷いた。「クロス、月へ向けて発進!」 タリアの号令で、ミネルバとオルペウスがシクザルドームから発進。大気圏を抜けて宇宙へ飛び出した。 宇宙に上がったオルペウスでは、ヒルダたちは宇宙用のパイロットスーツとヘルメットを身に着けていた。ザフトからの至急であるが、シンたちの着ているパイロットスーツとは模様が若干違っていた。「何だかちょっと暑苦しいスーツだなぁ・・」 ロザリーがスーツの着心地に違和感を覚える。「今までのヤツじゃ酸素が保てないからね。慣れるしかないよ。」 マギーに言われて、ロザリーが渋々聞き入れた。「それと、パラメイルは空気を遮断するようになっていないから、絶対にメットを外しちゃダメだからね。特にフライトモードには絶対にしたらダメだよ。」 メイが続けてヒルダたちに注意を投げかけた。「分かってるって!そう何度も言わなくたって・・!」「大事なことだから何度でも言うの!」 ロザリーが文句を言うと、メイが詰め寄って念を押す。「宇宙の戦いは初めてでぶっつけ本番だけど、気を抜くんじゃないよ。」 ジャスミンが檄を飛ばして、ヒルダたちが出撃に備える。「この格好・・翼と尻尾を出せませんが・・命には代えられませんね・・・」 同じくパイロットスーツを身に着けたサラマンディーネだが、この着心地に違和感を感じていた。「おっしゃー!ダイミダラー、ついに宇宙に進出だぜー!」 孝一が意気込みを見せて、高らかに言い放つ。「宇宙は思っているほど甘くはないわよ、孝一くん。」「へっ!どんな危ねぇとこでも、オレのハイエロパワーで乗り越えてやるぜー!」 恭子が注意するが、孝一は意気込むばかりである。「私も、この戦いに参加します・・・!」 そこへ霧子がやってきて、孝一たちに声を掛けてきた。「霧子さん、もう動いて大丈夫なの・・!?」「もう平気です、動けます・・それに私、じっとなんてしていられません・・・!」 恭子が心配して、霧子が声を振り絞って決意を口にする。「でも将馬くんがいなくて、あなたはハイエロ粒子を出すことが・・・」「そばにはいないですが・・将馬くんへの想いは、今でもどんどん大きくなっています・・・すぐにでも助けに行きたいですけど、地球があんな攻撃をされたら大変ですから・・・!」 恭子がさらに心配するが、霧子が将馬への正直な思いを口にした。「分かったぜ、霧子!オレは真玉橋孝一!よろしくな!」 孝一が気さくに挨拶して、霧子に手を差し伸べた。「真玉橋孝一さん・・あなたが、ダイミダラーの新しいパイロット・・・!」 霧子が孝一を見つめて戸惑いを覚える。「うん・・私こそよろしく、孝一くん!」 霧子が頷いてから、孝一の手を取って握手を交わした。「見えたよー♪お月様だよー♪」 ヴィヴィアンがモニターに映った月面を指さした。「あれが、月・・・!」「あそこのどっかに、プラントを撃った兵器があるのか・・!」 恭子とヒルダが月を見つめて緊張を覚える。「第2射がいつになるかは分かりませんが、撃たれればプラントは終わりです。発射される前に必ず破壊します。」 タリアが冷静さを保ちながら、シンたちと孝一たちに檄を飛ばす。「今度こそジブリールを討ち、連合軍の一角を崩します!」 タリアの言葉に背中を押されて、シンたちが出撃に備えた。ミネルバとオルペウスの前に、連合軍のモビルスーツ、モビルアーマーが多数姿を現した。「たくさん出てきやがったな、連合軍のメカが!」「アイツらをみんなぶっ潰すぞ!」 ロザリーが不敵な笑みを浮かべて、ヒルダが言い放つ。「シン・アスカ、デスティニー、いきます!」「レイ・ザ・バレル、レジェンド、発進する!」「ルナマリア・ホーク、コアスプレンダー、いくわよ!」 シンのデスティニー、レイのレジェンド、ルナアリアのコアスプレンダーがミネルバから発進した。チェストフライヤー、レッグフライヤー、ブラストシルエットが続けて射出されて、コアスプレンダーと合体してブラストインパルスとなった。「ステラ、出られるよー!」「うん・・・!」 ヴィーノが呼びかけて、ステラがガイアで発進した。「ヒルダ隊、出撃するよ!」 ヒルダのアーキバス、ヴィヴィアンのレイザー、ロザリーのグレイブがアサルトモードで発進した。「サラマンディーネ、焔龍號、出ます!」 サラマンディーネの駆る焔龍號もオルペウスから発進した。「ダイミダラー超型、行くぜ!」「ダイミダラー6型・霧子、いきます!」 孝一と恭子のダイミダラー超型、霧子のダイミダラー6型も発進した。宇宙の無重力で一瞬体勢を崩すも、ダイミダラー2機はすぐに安定させて進行を続けた。「くっ!・・これが無重力での操縦ってヤツかよ・・!」「気を抜けば振り回されることになります。味方の機体や隕石にぶつかる危険もあります・・!」 無重力のために機体の体勢が不安定となり、ヒルダが毒づき、サラマンディーネが注意を口にする。「ヤツらが来るぞ!みんなまとめてぶっ飛ばしてやろうぜ!」 孝一が檄を飛ばして、ダイミダラー超型が連合軍に向かっていく。(待っていて、将馬くん・・地球に戻って、あなたを助けに行くから・・・!) 将馬への想いを秘めたまま、霧子もダイミダラー6型を前進させる。 デスティニーがビーム砲を発射して、ウィンダムたちを薙ぎ払っていく。焔龍號とアーキバスたちもウィンダムを撃ち抜いていく。「ちくしょう!狙いがぶれやがる・・!」「いっけー!ブンブンまるー!」 ロザリーが思うように戦えないことに毒づく中、ヴィヴィアンが明るく言い放ち、レイザーがブーメランブレードを投げつけて、ゲルスゲーたちを薙ぎ払っていく。「覚えるのが早いな、ヴィヴィアンのヤツ・・・!」「あたしらもいいとこ見せねぇとな!」 ロザリーがヴィヴィアンに感心して、ヒルダが負けん気を見せる。「いくぞ、霧子!」「うん、孝一くん!」 孝一と霧子が声を掛け合い、ダイミダラーたちが手にハイエロ粒子を集める。「W指ビーム!」 ダイミダラーたちが放ったビームが、ザムザザーたちを押し込んでいく。 一方、レジェンドもビーム攻撃を仕掛けて、連合軍のモビルスーツを撃破していく。しかしレジェンドのビームも、デストロイとザムザザーの陽電子リフレクターには通じない。「やはり正面からは通じないか・・だが・・」 レイが呟いて、レジェンドが背部にあるドラグーンを射出した。遠隔操作されたドラグーンが、陽電子リフレクターの死角に入って、ザムザザーとデストロイを射撃した。(やはりこの機体、オレに馴染む・・ドラグーンも自在に動かせる・・・!) 思うようにレジェンドを動かせることを実感するレイ。レジェンドがさらにドラグーンを動かして、デストロイたちを攻撃していく。「ここでもたついている場合ではないです・・!」「私が兵器に向かって突入するわ!みんな、援護をお願い!」 サラマンディーネが注意を投げかけて、ルナマリアがシンたちに指示を出す。インパルスが前進を再開して、デスティニーたちが続く。「こうなればコイツらから先に始末するしかないな!」「数で押せば、いくら新型でも倒せないことはない!」 パイロットたちがいきり立ち、ザムザザーがデスティニーとレジェンドに迫ると同時に、デストロイが2機に対してスーパースキュラの発射体勢に入る。 そのとき、デストロイたちがビームに撃たれて爆発を起こした。ビームを撃ったのはデスティニーでもレジェンドでもない。「今の攻撃は・・!」 シンが目を見開いて、レイと共に視線を移す。 攻撃を仕掛けたのはフリーダムとジャスティス。2機は大型武装「ミーティア」を装備していた。 「フリーダム・・こんなときまで、戦いをムチャクチャにするつもりか・・・!?」 シンがフリーダムを見ていら立ち、ジャスティスに視線を移す。「アスラン・・アンタもフリーダムの味方をするのか・・!?」 アスランに対しても憎悪を向けるシン。「シン、レイ、オレはお前たちと戦うつもりはない。お前たちと同じ、月にある破壊兵器の停止が目的だ。」 アスランがシンたちに事情を話す。ただしキラたちではなく、アスラン個人の意見である。「お前たちが快く思わないのは、オレも十分分かっている。しかし今は兵器を止めるのが最優先だということは、お前たちも理解しているはずだ。」「ふざけるな!目的が同じだから、敵でも力を合わせて戦えというのか!?」 状況を告げるアスランだが、シンは憤って反発する。「裏切り者がのこのこと・・キラ・ヤマトとともに、お前もここで討つ・・!」 レイもアスランに対して敵意を向けていた。「あれは、この前オーブに出てきた!」「フリーダムとジャスティス!」 ロザリーと孝一がキラたちの出現に声を荒げる。「あれが新しいフリーダム・・それにジャスティスというのも・・・!」 霧子もフリーダムたちを見て、警戒を抱く。 アークエンジェルとエターナルも続いて駆け付けた。さらにハーケンたちの乗るドム3機も、エターナルから発進した。「アークエンジェルも来たようね・・!」「ピンクもいるー♪ピンクの戦艦だよー♪」 恭子が警戒心を強める中、ヴィヴィアンがエターナルを見て喜ぶ。「こちらはエターナル、ラクス・クラインです。私たちの目的は、プラントを攻撃する破壊兵器の破壊です。あなた方も同じ目的ならば、協力することを提案します。」 エターナルにいるラクスが、タリアたちに進言をしてきた。「冗談じゃないよ!いつもいつも戦いに割り込んでムチャクチャに暴れ回るヤツらの手を借りるつもりはねぇよ!」「目的が同じだからって、テメェらなんかと仲良くなるなんてできねぇよ!」 ヒルダと孝一がラクスに対して反発をしてきた。「ラクス・クライン。プラントの歌姫で、エターナルの指揮官であることは知っています。しかし今のあなた方のやり方に、私も賛同しかねます。」 サラマンディーネもラクスの言葉を拒絶する。「しかし今は一刻を争うとき。あなたたちの相手までしている余裕はありません。こちらの邪魔をしなければ、ここは見逃します。」 彼女はデストロイたちに視線を戻して、ラクスたちに忠告を送る。「クロス全員に通達します。アークエンジェル、エターナルからの助力を容認。連合軍の兵器の破壊を最優先とします。」 タリアが共闘を容認して、シンたちに指示を出した。「艦長・・・!」「しかし、ヤツらは敵です。このまま放置することは、今の作戦に影響が出るのは確実です。」 彼女の言葉に対してシンが声を荒げ、レイが反論する。「アークエンジェルと交戦している間にロゴスの2射目が撃たれたら、何もかも終わりよ!向こうも同じ目的だとするならば、協力はできなくても利用しても問題はないわ!」「それは・・・!」 タリアの下す判断に不満を感じるも、シンは反論できずに言葉を詰まらせる。「確かに連合軍とアークエンジェルの両方を相手にするよりはいいかもしれない・・」 霧子がタリアの判断に賛成する。「冗談じゃねぇよ!またこっちのパラメイルを壊されちゃたまんないって!」「この際だからみんなまとめてやっつけちゃおうよー!」 ロザリーが文句を言って、ヴィヴィアンがキラたちも倒すように呼びかける。「攻撃目標に変更はありません!月面上の破壊兵器の停止と、妨害する勢力の排除に尽力すること!アークエンジェル、およびエターナルは標的から除外!ただし彼らの行動次第では、適切な対応を取ること!」 タリアがシンたちに向けて指示を出す。シンもロザリーたちも腑に落ちないながらも従うことにして、レイもタリアの指示通りにした。「今は分かり合えなくても、この先必ず分かり合えるときが来ます。」「いえ、中には絶対に分かり合えないこともありますよ。どちらかが己の意思を頑なに貫こうとするならば・・」 思いを投げかけるラクスに、サラマンディーネが反論する。 自由、正義、平和のためと信念を貫くこと自体は悪くはない。しかしそのために他者の意思を無視していいという言動は、その信念に背く行為である。「フリーダムやアークエンジェルがクロスに対して行った行為の数々、そして彼らを信用、扇動するあなた方の考えを、私たちは認めるつもりはありません。」 サラマンディーネはラクスに意思を伝えると、焔龍號で前進した。彼女たちと分かり合えないことに、ラクスが表情を曇らせた。 タリアの指示を受けて、シンたちは連合軍の機体との交戦に専念する。キラとアスランも戦闘に加勢する。「オレはアンタたちを信用していない・・アスランは生きていて、アンタはステラを助けてくれたけど、ハイネのことがあるからな・・!」「たとえ信じてもらえなくても、誰かが死ぬかもしれない今を、黙って見ているなんてできない・・・!」 不信感を抱えているシンに、キラが自分の思いを口にする。「それでこれからも好き勝手に攻撃して、綺麗事ばかり並べてムチャクチャにするつもりなのかよ!?」「違う!それは・・!」「結局アンタは自分の考えを押し付けて、それを綺麗事でごまかしてるだけなんだ!・・アンタと心から手を取り合うことはできない!」 言い返そうとするキラへの反発を強めて、シンがロゴスとの戦いに専念する。キラはシンに言い返すことができないまま、フリーダムを動かす。「アスラン、もはやお前は我々の敵だ・・たとえアークエンジェルの面々と考えが違うと言い張ったところで、オレたちのこの意思は変わらない。」 レジェンドとジャスティスがロゴスの機体への攻撃を続ける中、レイもアスランに対して不信感を抱いていた。「オレがザフトに戻らなかったのは、今のザフトに、いや、デュランダル議長のやり方にも疑念があったからだ・・議長は平和の実現のためと銘打っているが、シンや世界の人々の心を掌握しているように思えてならない・・!」 アスランも自分の考えをレイに向けて告げる。アスランはギルバートに対する不信感も抱いていた。「議長を信じず、彼のやり方に反発するなら、やはりお前はオレたちの敵だ・・」「レイ、お前も議長の言葉を鵜呑みにするのはやめろ!お前も世界の破滅に加担するつもりなのか!?」「議長は正しい世界、戦いのない世界を築こうとしている。それを阻む敵と戦うのが、オレたちの使命だ。」「目を覚ませ、レイ!議長の言いなりになるな!お前もお前自身で考えろ!」「議長の築く世界こそ、オレ自身が望んでいること。自ら考えて決めたことだ。」「レイ・・・!」 頑なに考えを変えないレイに、アスランはこれ以上呼びかけることができなくなる。「今はジブリールを討つのが先だ。その後でお前たちも倒す・・」 レイはアスランに告げて、レジェンドがジャスティスから離れて前進を再開した。 ヒルダたちもキラたちの言動が許せず、タリアの指示に納得がいかなかった。「いくらこうしたほうが効率がいいからって・・・!」 ロザリーが不満の声を上げると、アーキバスたちの近くにドム3機が近づいてきた。「お前らとは因縁があるが、今はアイツらが先だ!あたしらが突っ込むから援護しな!」「アンタらの言うことは聞かないよ!邪魔だからあの船のお守でもしてな!」 命令するハーケンに、ヒルダが反発する。「アイツ、ラクス様を侮辱するとは・・!」「よせ、マーズ!オレも不満だが、今対立するのはラクス様のためにならん!」 怒りをあらわにするマーズを、ヘルベルトが苛立ちを感じながらなだめる。「うちらの足を引っ張るようなら、速攻で潰すからね!」 ハーケンがヒルダたちに言い放ち、ドムたちが連合軍に向けて突撃を仕掛けた。「こっちも負けてらんないよ!」「おう!」 ヒルダが言い放ち、ロザリーが答える。アーキバスとグレイブも、ドムに負けじと加速する。「ステラ、私たちもいくよー♪」「うん・・ヴィヴィアン・・!」 ヴィヴィアンが呼びかけて、ステラが頷く。レイザーとガイアもアーキバスに続いた。 シンたちの援護を受けたルナマリアのインパルスが、レクイエムの砲門に向かって加速する。彼女もキラたちの加勢に気付いて驚きを感じたが、レクイエムの破壊遂行に意識を戻した。(アスランに言いたいことはあるけど、今はアレを止めないと・・プラントをこれ以上撃たせない・・!) ルナマリアが自分に言い聞かせて、インパルスが迫り来るウィンダムとゲルズゲーをケルベロスとレール砲「デリュージー」でなぎ払っていく。「どうしてもアレを発射するつもりね・・そんなこと、絶対にさせない!」 ルナマリアが言い放ち、インパルスがさらにビームを撃ってウィンダムたちをなぎ払う。「なかなかですね。あなたもザフトの赤服の1人ということですね。」 焔龍號がインパルスに合流して、サラマンディーネがルナマリアを称賛する。「あなたやシンたちと比べたらまだまだだけどね・・」 ルナマリアが謙遜して、サラマンディーネと共に笑みをこぼした。「私たちが活路を開きます。あなたは突破してください。」「分かったわ!」 サラマンディーネが指示を出し、ルナマリアが頷いた。 サラマンディーネが永遠語りを詠唱し、焔龍號が収斂時空砲を発射して、連合軍の機体を薙ぎ払っていく。「ありがとう、サラ!」 ルナマリアがサラマンディーネに感謝して、インパルスが加速する。 その行先でザムザザーたちが現れ、インパルスの進行を阻んだ。「あれは!」 ルナマリアが声を荒げて、インパルスがケルベロスを発射する。しかしザムザザーの陽電子リフレクターにビームが防がれる。「やっぱりビームが通じない・・ミネルバでも突破できない・・・!」 ルナマリアが毒づき、インパルスがデファイアントを手にした。しかし射撃、砲撃が主体のインパルスが、強力なハサミを備えたザムザザーに接近戦を挑むのは無謀である。「あれは遠距離攻撃主体では厳しいですが・・」 サラマンディーネが冷静に判断して、天雷をザムザザーに向けて振りかざす。ザムザザーの1機が切り付けられて、他のザムザザーが距離を取る。「もう1度、収斂時空砲で一掃する必要がありますね・・・!」 サラマンディーネが再び砲撃を仕掛けようとした。「ルナ!」 そのとき、ルナマリアの耳にシンの声が入ってきた。アロンダイトを手にしたデスティニーが突っ込んできた。「シン!」 ルナマリアがシンに向けて声を上げる。デスティニーが突き出したアロンダイトが、ザムザザーを陽電子リフレクターごと貫いた。「シン!そっちは片付いたの!?」「アイツらは、フリーダムとジャスティスが相手をしているようだ・・・!」 ルナマリアが驚きの声を上げて、シンがキラたちのことを口にする。「私も彼らに対して思うことがあります。しかしそれは、連合軍の兵器を排除してからです。」 サラマンディーネが冷静に告げて、シンたちが頷く。デスティニー、インパルス、焔龍號、そしてクロスとフリーダムたちが連合軍との激突を続けていた。 イザナミのディメンションブレイカーによって吹き飛ばされたイザナギ。しかしイザナギは消滅しておらず、小さな島に打ち上げられていた。 イザナギのコックピットで、カナタとラブは意識を失っていた。ラブがかすかに動いて、意識を取り戻そうとしていた。 第54話へ その他の小説に戻る TOPに戻る