スーパーロボット大戦CROSS
第47話「驚異の自由、裏切りの正義」

 

 

 ジブリール拘束のため、オーブに対し強硬策に出たクロス。カナタのイザナギ、シンのデスティニー、レイのレジェンドが先行して、オーブ軍のムラサメ隊が迎え撃つ。
「そこをどけ!あんな勝手な代表のほうがいいっていうのか!?」
 シンが不満を言い放ち、デスティニーがビームライフルを手にして発射する。ムラサメが次々に撃たれて落下していく。
「突撃と回避を最優先にするんだ!ここで撃墜させたら市街に落ちる!」
「あくまで狙いはオーブ行政府だ。首脳陣からジブリールの居場所を聞き出す。」
 カナタとレイが意見を交わし、シンが渋々頷く。行政府へ真っ直ぐに突き進もうとしたイザナギたちだが、ムラサメ隊が横に並んで防衛網を敷いた。
「そんなに世界を敵に回したいのか・・アンタたちは!」
 シンが怒りの声を上げて、デスティニーがムラサメ隊に向かって突っ込もうとした。
「待て!」
 そこへ声がかかり、カナタたちとムラサメ隊のパイロットたちが視線を移した。1機の金色の機体が駆け付けた。
「何だ、あの機体は!?・・隊長機のようだが、どこの部隊のだ・・!?」
 カナタが金色の機体を見て声を荒げる。
「私はウズミ・ナラ・アスハの子、カガリ・ユラ・アスハ!国防本部、聞こえるか!?」
「えっ!?」
 金色の機体「アカツキ」に乗っていたのはカガリだった。彼女の声が響き、ユウナたちが驚きの声を上げる。
 アカツキはカガリの父、ウズミ・ナラ・アスハがオーブの理念、本当の願いと共に彼女に託した機体である。
「突然のことで驚いているかもしれないが、オーブを守るために尽力したい。この防衛の指揮官は誰だ?」
「カガリ!カガリ~♪来てくれたんだね、マイハニー♪ありがとー、僕の女神♪指揮官は僕♪僕だよ~♪」
 カガリの呼びかけに、ユウナが喜びを見せて答える。
「信じてくれるのか、ユウナ?私はお前の言う偽者かもしれないぞ?」
「そんなことはない♪僕にはちゃーんと分かる♪彼女は本物♪本物のカガリだよ~♪」
 問いかけるカガリに、ユウナが喜びを振りまいて答える。自分たちの保身のために邪険にしたカガリにすがるユウナの手のひら返しに、指揮官とオペレーターたちは不満を抑えるのに精一杯になっていた。
「ユウナ・・私を本物のカガリと、オーブ連合首長国代表首長、カガリ・ユラ・アスハと認めるか?」
「もちろん、もちろん、もちろん♪」
「ならばその権限において命ずる!将兵たちよ、直ちにユウナ・ロマ・セイラン、ウナト・エマ・セイランを国家反逆罪で逮捕、拘束せよ!」
「えっ・・・!?」
 カガリが下した命令に、ユウナが耳を疑った。笑顔を凍りつかせた彼に、指揮官が詰め寄った。
「命令により、拘束させていただきます・・・!」
 指揮官は鋭く言うと、ユウナを殴り飛ばした。床に倒れたユウナを、そばにいた兵士たちが捕まえて、ロープで縛り上げた。
「な、な、何をするんだ!?どうしてこんなことを!?」
 動揺と不満をあらわにするユウナだが、兵士たちに布で口もふさがれた。
「オーブ軍、これより私の指揮下とする!防衛線を立て直し、市街や人々への被害をこれ以上出させるな!ユウナからジブリールの居場所を聞き出し、ヤツを拘束せよ!」
「カ、カガリ様!」
 呼びかけて檄を飛ばすカガリに、他のムラサメのパイロットたちが驚きの声を上げる。彼女からの激励を受けて、ムラサメのパイロットたちが笑みを浮かべた。
「クロス、私たちはジブリールの捜索と拘束に協力する・・あなた方にした数々の非礼、申し訳なく思っている・・すまない・・・!」
 アカツキがイザナギたちに振り向いて、カガリが謝罪する。
「アスハが・・・ふざけるな!」
 シンが怒号を放ち、デスティニーがアカツキに向かって突撃してきた。カガリがとっさに操縦して、アカツキが上昇してデスティニーから離れる。
「アンタたちの勝手で、どれだけ世界が混乱したと思っている!?そんなものに乗って、今さらのこのこ出てきて、偉そうなことを言うな!」
「すまない・・どんなに謝っても、どんなに償っても償い切れない罪を犯したことは分かっている・・あのとき、ユウナたちを止めてさえいれば・・!」
 怒りをぶつけるシンに、カガリが謝罪する。
「その機体に乗っているのはシンだろう!?今の私には、頭を下げることしかできない・・・!」
「謝れば全部丸く収まると思ってるのか!?そんな身勝手でいい加減な気持ちで、どれだけの命が失われたのか、まだ分かんないのかよ!?」
 しかし彼女のこの姿勢は、シンの感情を逆撫でする。
「シン、やめろ!そんなことをしている場合じゃないだろ!」
 カナタが呼び止めるが、シンは聞かず、デスティニーが攻撃を続ける。
「レイ、お前もシンを止めてくれ!こんなことをしているわけには・・!」
「いや、今はジブリールの確保が先決だ。シンがオーブの機体を食い止めている間に、オレたちは行政府へ。」
 カナタがレイにも声を掛けるが、レイは冷静に判断を下した。
「オーブは連合軍の一派。譲歩する必要はないし、そんな時間もない。」
「だからって一方的に戦いを持ち込むようでは、その連合軍と同じだ!」
 レイの考えを冷徹だと思い、カナタがシンを止めに向かう。だがレジェンドがイザナギの前に立ちはだかり、2機が同時にビームライフルを構えて互いに銃口を向け合った。
「すぐにジブリール確保に向かうんだ。シンはザフトのために尽力している。」
「オレはザフトじゃない!たとえお前が指揮官でも、オレはオレの判断で行動する!」
 指示を告げるレイだが、カナタはシンを止めるという意思を貫く。
「もう綺麗事は聞き飽きた!オレがアンタを討って、オーブの間違いを終わらせる!」
 シンが怒りを募らせて、デスティニーがビーム砲を展開してビームを放つ。ビームがアカツキの胴体に直撃したが、そのビームが跳ね返された。
「何っ!?」
 シンが驚き、デスティニーが素早くビームをかわす。デスティニーは即座にビームライフルを発射するが、そのビームもアカツキの胴体に跳ね返された。
 アカツキは鏡面装甲を備えていて、敵のビーム攻撃を鏡のように反射するのである。
「ビームを弾く!?・・だったら!」
 シンが毒づき、デスティニーがアロンダイトを手にして構えた。アカツキが右手にビームサーベル、左手に盾を持って、デスティニーを迎え撃つ。
 デスティニーが振り下ろしたアロンダイトを、アカツキが紙一重でかわす。直後にアカツキがビームサーベルを振りかざして、アロンダイトの刀身とぶつけ合う。
「シン、やめろ!お前たちが求めているのは、ジブリールだろう!?ヤツは私たちが必ず見つけ出して引きずり出す!だから・・!」
「ふざけるな!ジブリールを匿おうとするアンタたちの綺麗事なんか、信じられるか!」
 呼びかけるカガリだが、シンは信じようとしない。
「ジブリールの味方をするアンタたちは、オレたちが倒す!そして力ずくでも、ジブリールを引きずり出して捕まえる!」
 シンが言い放ち、デスティニーがアカツキを突き飛ばす。デスティニーが振りかざしたアロンダイトが、アカツキの持つビームサーベルをはじき飛ばし、さらに盾を真っ二つに切り裂いた。
「まずい・・!」
 カガリが危機感を覚えて、アカツキがビームライフルを持って発射して、デスティニーをけん制しようとする。デスティニーが左手でビームブーメランを持って投げつけて、アカツキが左でを切り裂かれた。
「アスハを倒す・・そうしなきゃ、オーブは変わらないんだ・・!」
 シンは声を振り絞り、デスティニーがアロンダイトを構えて、アカツキにとどめを刺そうと飛びかかる。
「この反応・・シン、何かが空から落ちてくるぞ!」
 カナタがイザナギのレーダーに映った反応を見て、声を上げる。彼の呼びかけを耳にしたシンが、上から飛んできた光線に気付いた。
 突撃を止めたデスティニーの前を、光線が飛び込んだ。このまま前進していれば直撃されていた。
「これはビーム攻撃・・メカが降りてきたのか!?」
 カナタが光線の正体を探りながら、空を注視する。
 上方の大気圏を突破して、2機の機体が急降下してきた。そのうちの1機がもう1機を手放すと、デスティニーを狙って腰のレールガンを発射した。
 シンが反応して、デスティニーが素早く動いてビームをかわした。
「なっ!?」
 デスティニーに攻撃をしてきた機体に、シンが目を疑った。その機体はシンが撃破したフリーダムそっくりだった。
「フリーダム!?どうして!?・・アイツは倒したはず・・!」
 シンがその機体を見て、驚きを隠せなくなる。
「いや、少し違う・・似てはいるけど、この前倒したフリーダムとは別物だ・・!」
 カナタがその機体の姿かたちを確かめて言いかける。以前のフリーダムと似ているが、所々に差異があった。
 デスティニーの前に立ちはだかった機体は「ストライクフリーダム」。フリーダムの後継機となるその機体に乗っているのは、ラクス専用の戦艦「エターナル」に合流したキラである。
「カガリ、ここは僕が引き受ける!早く国防本部へ!」
「その声、キラか!・・分かった!」
 キラが呼びかけて、カガリが笑みを浮かべて答えた。アカツキが機体から離れて、オーブの国防本部へ向かう。
「デスティニーは強力なモビルスーツだ・・だけどあのフリーダムは、ただ見た目が違うだけじゃないはずだ・・シンだけじゃ戦いが長引く・・・!」
 カナタが以前のシンとキラの戦いを思い出して、再び激戦になることを直感した。
「カナタ、お前は行政府へ行って、ジブリールの居場所を聞き出すんだ。シンの援護はオレが行く。」
 レイがデスティニーの戦いを見ながら、カナタに指示を送る。
「レイ・・・ミネルバ、オレだけで行政府へ行きます!シンとレイの援護をお願いします!」
 レイの考えと判断が腑に落ちなかったカナタが、ミネルバに応援を頼んだ。
「分かったわ、カナタくん。アンジュさんたちには、こちらから伝えておくわ。」
「ありがとうございます、艦長!オレも行きます!」
 タリアが聞き入れて、カナタが感謝した。イザナギがアカツキを追うように行政府へ向かった。
「アンジュさんと孝一くんはシンとレイの、ヒルダさんたちはカナタくんの援護をお願いします。」
「いいわ。あのフリーダムにはイヤな思いをさせられたし、やってやるわ。」
「進化したのはアイツだけじゃねぇってところを、オレが見せつけてやるぜー!」
 タリアが指示を伝えて、アンジュがフリーダムに対する苛立ちを浮かべて、孝一が意気込みを見せる。
「孝一くん、あくまでみんなの援護と、フリーダムの足止めが目的よ。」
 恭子がなだめるが、孝一は舞い上がっていて聞いていない。
「オレたちも行ってくるぜ。海潮ちゃんたちやランガの分も頑張ってくる。」
 隼人が海潮に近づいて、意気込みを見せる。
「シンくんやアンジュさんたちみたいにとはいかないけと、私たちもやれるだけやってやるわ。」
「エレナさん・・鉄さん・・・」
 続けてエレナが呼びかけて、海潮が戸惑いを浮かべる。
「オレたちはオーブの街に行って、避難する人たちを守るぞ。」
 隼人が檄を飛ばしてエレナ、翔子、穂波が頷いた。
「私はあのフリーダムの相手をします。ナーガとカナメはカナタの援護を頼みます。」
 サラマンディーネがナーガたちに呼びかけてきた。
「我らもサラマンディーネ様にご同行します!」
「今はロード・ジブリールの確保が先決です。それに、フリーダムの強さを直に確かめたいと思っているので・・」
 援護を志願するナーガに檄を飛ばして、サラマンディーネが本心を口にする。
「お戯れが過ぎますぞ・・・分かりました。仰せのままにいたします・・」
 ナーガがため息をつくも聞き入れて、カナメが笑みをこぼした。
「ルナマリアは待機して。ジブリールが脱出した際に追跡してもらうわ。」
「分かりました・・」
 タリアが続けて指示を出して、ルナマリアが頷いてコアスプレンダーで待機した。
「エース部隊、発進する!」
 隼人の掛け声でビッグエース、エースが飛行艇から出た。
「焔龍號、参ります。」
 サラマンディーネも焔龍號で飛行艇から出撃した。ナーガの蒼龍號とカナメの碧龍號も続いた。
「ヒルダ隊、出るよ!」
 ヒルダの掛け声でアーキバス、グレイブ、レイザー、ヴィルキスがアウローラから発進した。
「ダイミダラー超型、発進するぞ!」
 続けてダイミダラーも飛行艇から発進して、ヴィルキス、焔龍號と共にフリーダムに向かっていった。
 
 デスティニーとフリーダムの対決が始まった。2機がビームライフルを手にして、同時に放たれたビームがぶつかり合い、弾け飛ぶ。
 デスティニーとフリーダムがさらにビームを放つ。2機は互いのビームを素早くかわす。
 その最中、シンはフリーダムの攻撃を見極めていた。フリーダムはデスティニーのコックピットではなく、頭部や武装を狙っていて、デスティニーは紙一重でその射撃をかわしていた。
「戦い方も同じ・・パイロットも同じみたいだ・・あのフリーダムの中で、生きていたっていうのか・・!?」
 以前のフリーダムの戦いを思い出して、シンが毒づく。
「強力になったみたいだけど、デスティニーだってインパルス以上のパワーを持ってる・・負けることはない!」
 シンが自信を口にして、デスティニーがアロンダイトを手にして構えた。
「あの戦い方・・あの人が乗っている・・・!」
 キラもデスティニーに乗っているのがシンだと気付いた。
 フリーダムがレールガンを発射するが、デスティニーは残像を伴った高速でかわして、フリーダムに向かっていく。
 フリーダムが両手にそれぞれビームサーベルを手にして、デスティニーを迎え撃つ。デスティニーが振りかざすアロンダイトを紙一重でかわして、フリーダムがビームサーベルを振りかざす。
 アロンダイトを持つ手を狙われていると思い、シンが反応する。デスティニーが腕を動かして、ビームサーベルをかわそうとした。
 だがフリーダムのビームサーベルは、デスティニーの腕をまだ捉えていた。
「何っ!?」
 シンが驚きを覚え、デスティニーがビームシールドを展開してビームサーベルを防いだ。しかし衝撃までは防ぎ切れず、デスティニーが突き飛ばされた。
「アイツ、こっちがギリギリでよけるのを先読みして、攻撃をしてきた・・!」
 フリーダムの動きにシンが毒づく。フリーダムが腹部のビーム砲「カリドゥス」を発射した。
「くっ!」
 シンがさらに毒づき、デスティニーもビーム砲を展開して発射する。2つのビームがぶつかり合って、激しく火花を散らす。
 デスティニーとフリーダムの互角の攻防。攻め切れずにいるシンが焦りを噛みしめていた。
 
 オーブ行政府に向かっていくアカツキとイザナギ。アーキバス、グレイブ、レイザー、蒼龍號、碧龍號がイザナギと合流した。
「オーブのモビルスーツの相手はあたしらに任せな!」
「さっさとジブリールってヤツを捕まえてきな!」
 ヒルダとロザリーがカナタに呼びかけてきた。
「分かった!ありがとう!」
 カナタが感謝して、イザナギが加速しようとした。
「待て!上空から何かが降りてくるぞ!」
 ナーガが呼び止めて、カナタたちが空を見上げた。効果ポッドが降下して、中にいた3機の機体が飛び出してきた。
「ふぅ・・やはり鬱陶しいな、地球の重力は・・」
「文句言うなって。重力に参ってるのはお前だけじゃないんだからな・・」
「ホラ、行くよ、ヤローども。地球へおしゃべりしに来たわけじゃないんだからな。」
 着地した3機の機体「ドムトルーパー」のパイロット、ヘルベルト・フォン・ラインハルト、マーズ・シメオン、ヒルダ・ハーケンが声を掛け合う。
「ラクス様のために!」
 ハーケンたちが声をそろえて、ドムたちが前進する。
「何者なんだ、あなたたちは!?オーブ軍か!?」
「あたしたちはラクス・クライン様の親衛隊!ラクス様に盾突くヤツは、誰だろうと容赦しないよ!」
 カナタが問いかけるが、ハーケンは敵意を示すだけである。
 ドムがビームライフル、ビームバズーカを発射する。イザナギたちがスピードを上げて、攻撃を回避する。
「今のうちだぜ、オーブのお姫様。」
「ここはオレたちに任せて、さっさと行きな!」
 ヘルベルトとマーズがカガリに呼びかける。
「お前たち・・協力、感謝する・・!」
「勘違いするなよ。この国のことも大切に思っているラクス様のためだ。」
 感謝するカガリに、ハーケンが自分たちの意思を告げる。アカツキがムラサメたちを伴って、国防本部へ向かった。
「待て!オレたちはジブリールを捕まえようとしているだけだ!」
「ゴチャゴチャ言ってんじゃねぇぞ!」
「言ったはずだ。ラクス様のためにってね。」
 カナタが呼び止めるが、マーズもヘルベルトもこれをはねつける。
「ヒルダ!」
「分かってるよ!」
 ロザリーとヒルダが声を掛け合う。グレイブとアーキバスがフライトモードからアサルトモードに変形して、ドムを迎え撃つ。
 アーキバスがドラゴンスレイヤーを手にして振り下ろし、ハーケンのドムが素早くかわす。
「アンタ、名前はなんていうんだ?」
「ヒルダ・ハーケンだ。コイツはドムトルーパーっていうんだよ。」
「奇遇だね。あたしもヒルダっていうんだよ。」
「けど、ブッ倒されるのはアンタらのほうだけどね!」
 ヒルダとハーケンが不敵な笑みを浮かべる。アーキバスがアサルトライフルを手にして、ドムと撃ち合いを繰り広げる。
「あたしがいるのを忘れてもらっちゃ困るよ!」
 ロザリーが言い放ち、グレイブがハーケンのドムに突っ込んできた。ドムがビームライフルでけん制しながら、グレイブの突撃をかわした。
 一方、蒼龍號と碧龍號が崩壊粒子収束砲「瑞雲ずいうん」を発射する。マーズとヘルベルトのドムがビームを素早くかわす。
「アイツらも鬱陶しいねぇ・・さっさと片付けないとな・・」
「だったらアレをやるしかないよ。」
「アレか・・いいぜ!やってやろうじゃねぇか!」
 愚痴をこぼすヘルベルトにハーケンが呼びかけて、マーズが笑みを浮かべた。
「ジェットストリームアタック!」
 ドム3機がそれぞれ背中合わせになる陣形を取り、左胸部にある攻性防御装置「スクリーミングニンバス」を起動する。ビーム粒子が発生して光の壁となる。
 蒼龍號と焔龍號が瑞雲を発射するが、ドムのビーム粒子にビームが弾かれた。
「射撃を弾く障壁を作り出している・・!」
「剣でもある程度は防御されそうね・・これは本腰入れてかからないと・・!」
 ドムのスクリーミングニンバスを警戒するナーガとカナメ。
 スピードを上げてビームライフルとビームバズーカを連射するドム。アーキバスたちが上昇して、射撃をかいくぐる。
「でたらめ撃ちやがって!」
「これじゃさすがに近づけないって!」
 ヒルダとロザリーがドムに対して不満の声を上げる。ドムたちは1度スクリーミングニンバスを解除して、体勢を整えた。
「カナタ、あなたは先に行って!あの3体は私たちが食い止めるわ!」
 カナメがドムの動きを見計らいながら、カナタに呼びかけた。
「その間にジブリールを捕らえろ!逃がしてはならんぞ!」
「分かりました・・オレ、先に行きます!」
 ナーガにも言われて、カナタがジブリールを追って先行した。
「行かせるか!」
 ハーケンが言い放ち、ドムがイザナギを止めようとする。だがアーキバスたちに行く手を阻まれる。
「アンタらの相手はあたしらだよ!」
「そんなにブッ倒されてぇみてぇだな・・!」
 言い放つヒルダに、ハーケンが鋭く言い返す。アーキバスたちに向かって、ドム3機が加速した。
 
 国防本部に到着したカガリは、ユウナが拘束されている管制室に駆け込んだ。
「カガリ様!」
 兵士とオペレーターたちがカガリに振り向いて声を上げる。
「ユウナ・・・!」
 カガリが憤りをあらわにして、ユウナが動揺する。
「ひ、ひどいよ、カガリ!あんまりだ!僕は君の留守を一生懸命・・!」
 不満をあらわにするユウナを、カガリが殴り飛ばした。
「お前だけを悪いとは言わない・・ウナトやお前、首長たちと意見を交わし、己の任を全うできなかった私も充分に悪い・・だがこれは何だ!意見は違っても、国を守ろうという思いだけは同じと思っていたのに!自己満足や己の保身のために、国を動かしたり国民を危険にさらしたり!」
「いや、だから、それは・・!」
 自分を責めながら怒りをぶつけるカガリに、ユウナが言い返す。するとカガリが彼の胸ぐらをつかんでつかみ上げる。
「言え!ジブリールはどこだ!?この期に及んでもまだ奴を庇い立てするのか!?」
「だから言ったじゃない!知らないって!」
「まだ言うか、ユウナ!」
「ホントだって!確かに家にはいるけど、今はどうしてるかは知らないって!」
 ジブリールの居場所を問い詰めるカガリに、ユウナが必死に言い返す。
「くっ!・・ジブリールを捜せ!ウナトもだ!そうすれば停戦の道も開ける!」
「はっ!」
 毒づくカガリが指示を出して、兵士が答えた。オペレーターもレーダーとモニターを注視して、ジブリールの行方を追った。
 
 フリーダムに続いて、アークエンジェルもオーブに現れた。撃墜されていなかったアークエンジェルに驚くも、タリアたちは冷静になって判断を下す。
「本艦はアークエンジェルの対処をします。オーブ軍やフリーダムの援護をさせないように。」
「り、了解!」
 タリアが指示を出し、アーサーが慌ただしく答える。
「こちらに接近する反応あり!エアバイクです!」
「えっ!?」
 そのとき、メイリンがレーダーを見て報告して、アーサーがさらに声を荒げる。エアバイクに乗ってきたのは、アルゼナルで行方不明になっていたサリアだった。
「サリア、無事だったんだね!」
 メイも海潮たちとサリアを確認して、喜びの笑みをこぼした。
「こちらサリア。クロス、応答して。」
「サリア、こっちに来て!今、戦闘中だからそこにいると危ないよ!」
 サリアが呼びかけて、メイが応答する。
「グラディス艦長、サリアはこっちで回収します!」
「分かったわ。アークエンジェルの注意をこちらに引き付けるから、その間に急いで。」
 メイが呼びかけて、タリアが指示を伝える。飛行艇のハッチが開き、サリアの乗ったエアバイクが収容された。
 
 アロンダイトを振りかざすデスティニーに対して、フリーダムは回避で乗り切っていた。パワーではフリーダムよりデスティニーのほうが上だと、キラは直感していた。
「逃げるな!アンタはオレが倒す!」
 シンが言い放ち、デスティニーがフリーダムを追っていく。フリーダムもビームによる遠距離攻撃を狙うが、デスティニーに素早く回避される。
「オレは負けられない・・戦いのない世界を取り戻すためにも、負けるわけにはいかないんだ!」
 感情を高ぶらせたシンの中で何かが弾けた。彼が感覚を研ぎ澄ませ、デスティニーの動きがより速く正確になった。
 デスティニーの機敏さを感じ取ったキラも、意識を集中して感覚を研ぎ澄ませた。フリーダムの動きも加速し、互角の戦いが激化することとなる。
「くそっ!このままじゃ、ジブリールを見つけることができない・・!」
「シン!」
 焦りを募らせるシンに向けて、レイが声を掛けてきた。レジェンド、ヴィルキス、ダイミダラー、焔龍號が駆け付け、デスティニーと合流した。
「あれは・・・!」
 キラがレジェンドを見て、驚きを覚える。彼はかつて戦った機体、プロヴィデンスを思い出していた。
「落ち着け、シン!自分を見失えば、倒せる敵も倒せなくなるぞ!」
「レイ・・・!」
 レイが呼びかけて、シンが落ち着きを取り戻していく。
「フリーダムに借りがあるのは、オレも同じだぜ!」
「いつまでもコイツの相手をしてる暇はないんでしょ?悪いけど、今回は1対1はさせられないわよ・・!」
 孝一とアンジュもシンに言いかける。
「卑怯だけど、さっさと片付けさせてもらうぞ!」
「オーブは僕が守る・・オーブは討たせない・・絶対に・・!」
 孝一が言い放ち、キラがオーブを守る意思を強める。キラの中で何かが弾け、五感が研ぎ澄まされた。
 フリーダムの動きがより速く正確になる。ヴィルキスがアサルトライフルを発射するが、フリーダムは素早くかわす。
 焔龍號も加勢して晴嵐を撃つが、フリーダムはビームの連射をかいくぐる。
「前よりも速くなっているわ・・!」
「オレたちもダイミダラーも超型になってパワーアップしてんだ!新しいフリーダムだろうと負けはしねぇぞー!」
 恭子がフリーダムへの警戒を強める中、孝一が高らかに言い放つ。
「くらえ、指パーンチ!」
 ダイミダラーがハイエロ粒子を集めた左手を突き出す。フリーダムが打撃をかわして、手にしたビームサーベルをダイミダラー目がけて振りかざす。
「甘いぜ!」
 孝一が言い放ち、ダイミダラーが体に回転を加えて左手を振りかざす。ビームサーベルと左手がぶつかり合い、2機が互いに押された。
 レジェンドがフリーダムに向けて、ドラグーンからビームを発射した。キラが気付き、フリーダムがビームをかわすが体勢を崩す。
「アイツは私が討つわ!」
「動きを止めるのが先ですけどね!」
 アンジュとサラマンディーネが言い放ち、ヴィルキスと焔龍號がフリーダムに飛びかかる。フリーダムがビームシールドを展開してラツィーエルと天雷を防ぐも、強く突き飛ばされた。
「シン、今だ!」
「もらった、フリーダム!」
 レイが呼びかけて、シンが目つきを鋭くする。デスティニーがアロンダイトを構えて、フリーダムに向かって加速した。
「やめろ!」
 そこへ声がかかり、シンが目を見開いた。スピードが弱まったデスティニーが横から突き飛ばされた。
 体勢を整えたデスティニーの前に現れたのは、1機の赤い機体。
 フリーダムと共に2年前の戦争を終結に導いた機体「ジャスティス」。その後継機である「インフィニットジャスティス」だった。
 
 
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