スーパーロボット大戦CROSS
第45話「共鳴!2大ダイミダラー」

 

 ミスルギ皇国とエンブリヲによって壊滅状態となったアルゼナルから、ミネルバと飛行艇、アウローラは離脱していた。イザナギたちを捜索するタリアたちだが、見つけられないまま夜を迎えていた。
「海潮たちはまだ見つからないんですか・・!?」
 近くの島に着陸した後、魅波がミネルバに赴いてタリアに問い詰めてきた。
「捜索隊が現場に到着し、私たちのほうでも捜索を続けているけど、誰も見つかっていないわ・・」
「・・ランガがいたら、私たちも飛んで捜しに行けるのに・・・!」
 深刻な面持ちで答えるタリアに、魅波が悔しさを感じていく。
「クリスもエルシャも見つかってねぇ・・サリアも・・・!」
 ヒルダもサリアたちのことを気にして、憤りを浮かべる。
“艦長、シンたちを発見することができません。”
 ミネルバに向けてレイからの通信が入る。レイのレジェンド、霧子と将馬のダイミダラー6型もカナタたちの捜索に出ていた。
「レイ、捜索を中断して帰艦しなさい。霧子さんたちも戻ってきて。」
“了解。”
“分かりました。”
 タリアが指示を送り、レイと霧子が答えた。
「今夜はもう休んでください。昼間の戦闘でみんな疲れているのだから・・」
「艦長、私が夜の見張りに着きます。艦長も休んでください。」
 タリアが魅波たちに呼びかけて、アーサーが夜の見張りを志願した。
「私はミネルバの艦長よ。私が起きていなければ・・」
「艦長はこれからの戦いに必要です。そのときに備えてください。」
「では私が先に4時間ここにいるわ。アーサーはその後をお願い。」
「艦長・・分かりました。4時間後に戻ります。」
 タリアの意思を汲み取り、アーサーが敬礼した。
“グラディス艦長、我々は我々のみで行動させてもらう。”
 そのとき、アウローラから通信が入り、ジルが進言をしてきた。
“ヒルダ、アウローラに戻れ。いなくなったサリアの代わりに、お前が中隊の指揮をするのだ。”
「待ってください、ジル司令。単独行動は危険です。」
 ヒルダに呼びかけるジルを、タリアが呼び止める。
“我々には我々の果たすべきことがある。アルゼナルが攻撃された以上、使命を遂行しなければならないのだ。”
「ジル・・まさかアレをやるつもりじゃ・・・!?」
“余計なことを言わずに、早くアウローラに戻れ。”
 目を見開いたヒルダの言葉を遮り、ジルは通信を終えた。
「どういうことですか、ヒルダさん?ジル司令は何をしようとしているのですか?」
 ジルに対する疑問を、タリアがヒルダに投げかける。
「リベルタスとか言ってた・・詳しいことは知らないが、ノーマが革命を起こすとかなんとか・・」
「リベルタス・・・?」
 ヒルダが口にした言葉に、タリアが眉をひそめる。
「詳しいことはジルに聞いてくれ。と言っても、向こうは素直に答えるつもりはなさそうだけどな・・」
 ヒルダがため息まじりに言って、ミネルバを後にした。
「艦長、サリア隊は・・いえ、ヒルダ隊はクロスから抜けるのでしょうか・・!?」
「それはジル指令との話と、彼女たちの行動次第ね・・」
 動揺を見せるアーサーに、タリアが冷静に答える。
「何か行動を起こすとしても、すぐとはいかないわ。今は休息を取りましょう。」
「はい、艦長・・」
 タリアの呼びかけにアーサーが答えて、魅波が頷いた。
 魅波が飛行艇に戻って夕姫たちと合流した。それから少し経つと、レジェンドとダイミダラーが戻ってきた。
 カナタたちを見つけられないまま、捜索は翌朝に再会するとタリアたちは決断した。
 
 ダイミダラー6型の出現と日に日に戦力を増していくクロスを警戒していたペンギン帝国だが、リッツカスタムの修復と改良を完了させた。
「これでチンも、ものすごく強くなってるクロスと戦えるってわけだね♪」
 リカンツがリッツカスタムを見つめて喜び、意気込みを見せる。
「このリッツカスタムの力、今までの南極シリーズで1番だ。ダイミダラーだけでなく、他のクロスのメカとも渡り合えるであろう。」
 ペンギン帝王がリカンツの前に来て、リッツカスタムに感心を寄せた。
「しかもこのリッツカスタムはペンギン装置を加えることにより、さらなるパワーアップを果たすのだ!」
「パ、パワーアップ・・!」
 ペンギン帝王が高らかに行って、リカンツが心を揺さぶられる。
「その名も、“超南極フンボルト改”だ!」
「超南極・・フ、フンボル・・・」
 ペンギン帝王が超南極フンボルト改のことを話すが、リカンツはうまく言えない。
「んも~!言いづらいから“アラタメ”と呼ぶことにしよー!」
 ふくれっ面を浮かべたリカンツは、アラタメと名付けた。
「ではリッツよ、リッツカスタムに乗り、アラタメの力を存分に振るうがいい!」
「アイアイサー!」
 ペンギン帝王に敬礼をして、リカンツがリッツカスタムに乗り込んだ。
「お前たちも量産型の南極で出撃せよ!」
「おー!」
 ペンギン帝王の指示で、マイケルたちも南極シリーズに乗り込んで、リカンツに続いた。
 
 カナタたちが見つかることなく、一夜が過ぎた。リベルタス遂行を決起したジルが、アルゼナル壊滅で絶望しているノーマたちに檄を飛ばした。
 ジルはその目的のために、タリアたちから離れて独自行動を取ろうとした。
“ジル司令、説明を求めます。なぜ今になってノーマのみで別行動をとるのですか?”
 アウローラに向けてタリアが通信で問いかけてきた。
「グラディス艦長、昨日話した通りだ。我々は我々だけで戦いを続け、最大の敵であるエンブリヲを討つ。」
“エンブリヲ?”
「世界を生み出し世界を動かす男。我々は神とも呼んでいるがな。アルゼナルでミスルギ皇国の戦艦を破壊した機体に乗っていた男だ。」
 タリアにエンブリヲのことを話すジル。
“・・神というのはともかく、その人物の操るあの機体の性能の高さは認めざるを得ません・・だからこそ、我々が別々に動くのは危険だと、あなたも分かっているはずです。”
「ならばミネルバもザフトも、エンブリヲと連合軍の打倒のために、すぐに行動を起こすべきだ。上の判断を待っているようでは、好機を逃すぞ。」
“功を焦っても自滅するだけです。我々はあなた方の、あなたの単独行動を支持しません。”
「ならばあなたたちとはここまでだ。我々は我々の使命を果たす。」
 タリアたちの説得を聞かず、ジルは独自の道を進もうとする。
「こちらに接近する熱源複数!」
 そのとき、パメラがレーダーに映った反応を報告してきた。
「敵かい!?誰か来たんだ!?」
「これは・・ペンギン帝国のロボです!」
 ジャスミンが問いかけて、パメラが答える。アウローラのモニターにリッツカスタムと南極シリーズの姿が映った。
「迎撃に出ますか?各中隊、出撃可能ですが・・」
「いや、ヤツらの撃退はクロスがやってくれる。我々はこれに乗じて出発する。」
 オリビエからの問いに言い返すジル。彼女はタリアたちだけにペンギン帝国の相手をさせようとしていた。
 
 ミネルバと飛行艇、アウローラを発見して、リカンツたちがやる気を強くした。
「見つけたよ、クロス!みんなまとめてやっつけちゃうんだから!」
 リカンツがクロスを倒そうと高らかに意気込む。
「リッツ、いつにも増して燃えているぞ!」
「そのやる気にアラタメの力が組み合わされば、ダイミダラーもクロスも敵じゃない!」
「オレたちも負けてはいられないぞ、みんな・・!」
 マイケル、デニス、ジェイクもリカンツに触発される。
「ありゃ!?船の1つが動き出そうとしてるよー!」
 浮上を始めるアウローラを、ネルソンが指さす。
「チンがアレをやるから、みんなは他をお願いねー♪」
「アイアイサー!」
 リカンツが呼びかけて、マイケルたちが答えた。リッツカスタムがアウローラに、南極たちがミネルバに向かっていった。
 
「ペンギン帝国のロボットがこちらに迫ってきます!」
 メイリンもリカンツたちの接近をタリアに報告する。
「ここで討たれるわけにいかないわ・・迎撃しつつ移動する!」
 タリアが指示を出し、ミネルバが発進準備に入る。
“艦長、出撃してヤツらを引き離します。”
 レジェンドに乗ったレイが、タリアたちに声を掛けてきた。
「いいわ。ただし私たちの戦力は低くなっている。倒すことよりも回避を優先するように。」
“了解。”
 タリアの指示に答えて、レイが発進に備えた。
「レイ・ザ・バレル、レジェンド、発進する!」
 レイの駆るレジェンドがミネルバから発進した。
「ダイミダラー6型・霧子、行きます!」
 霧子と将馬の乗ったダイミダラーも飛行艇から発進した。
「アウローラ、パラメイルを出撃させてください!」
“そうはいかない。我々はここで離脱させてもらう。”
 タリアが呼びかけるが、ジルは聞かずにアウローラを発進させる。
「本当に我々を見捨てて自分たちだけ・・!」
「今は私たちだけで迎撃するしかないわ。全員、辛いけど気を引き締めて。」
 アーサーがジルたちの行動に動揺して、タリアが激励を送った。
 
「お!?クロスのヤツら、二手に別れたぞ!?」
 マイケルがアウローラの動きを見て声を荒げる。
「さっきも言ったように、アレはチンが相手をするよ!みんなはそっちの2隻を!」
 リカンツが指示を出して、リッツカスタムが南極たちと別れた。
「この新しいリッツカスタムの力を試す相手になってもらうよー♪」
 リカンツが高らかに言い放ち、リッツカスタムがアウローラを追う。
 そこへダイミダラー6型が駆けつけ、リッツカスタムの前に立ちふさがった。
「あなたの相手は私たちです!」
「ダイミダラー!こうなったら、この前やられたお返しをしてやるんだからー!」
 霧子が言い放ち、リカンツが狙いをダイミダラーに変える。
「霧子ちゃん、僕にできることは少ないけど、霧子ちゃんの力になりたいって思ってる・・!」
「将馬くん・・・ありがとう・・将馬くん、一緒に戦おう!」
 互いに想いを伝え合う将馬と霧子。愛情を強める2人からハイエロ粒子があふれ出し、ダイミダラーの力を高める。
「ハイエロ粒子だって、チンは負けないんだからー!」
 リカンツも気合いとペンギンたちへの愛情を大きくして、ハイエロ粒子を発揮する。
 ダイミダラー6型の手の打撃とリッツカスタムの突撃が、立て続けに巻き起こる。2機の戦闘力は互角で、霧子もリカンツも力を消耗させていった。
「このままじゃ共倒れになっちゃうかもしれない・・何とか、もっとパワーを上げないと・・・!」
 霧子が呼吸を整えようとしながら、リッツカスタムに勝つ方法を探る。以前のリッツカスタムよりもパワーアップしていると、彼女は痛感していた。
「僕も大きな力を出せたら・・それを霧子ちゃんに渡せたら・・・!」
 霧子を助けたいという気持ちを強めていく将馬。彼は苦悩を抱えながら、必死に力を振り絞ろうとする。
「僕にも・・僕にもすごい力があったら・・・!」
 力を求めてひたすら念じる将馬。その強い意思に呼応するように、彼から出ているハイエロ粒子が強まった。
「すごい・・すごい力だよ、将馬くん!」
「ホントだ・・僕自身、信じられない・・!」
 霧子も将馬自身もこの光の強まりに戸惑いを募らせていく。やがて光に将馬が完全に包まれた。
 次の瞬間、光が消えて現れた将馬に異変が起こった。その姿はペンギン帝国のペンギンそのものだった。
「し、将馬くん!?」
 ペンギンとなった将馬に、霧子が目を疑う。
「ヤ、ヤッホー♪すっごい清々しい気分だよ~♪」
 将馬が上機嫌になって大はしゃぎする。
「将馬くん、どうしたの、一体!?何でいきなりペンギンに!?」
 霧子が動揺しながら、将馬に問いかける。
「霧子ちゃん、見て見て~♪僕、ペンギンになれたんだよ~♪」
「イヤー!将馬くーん!将馬くんがペンギンになるなんてイヤだよー!」
 喜びを振りまく将馬に、霧子が悲鳴を上げる。
「どうしたんだよ、霧子ちゃーん?僕、ペンギンになれたんだよ~♪もっと喜んでよ~♪」
「将馬くん、目を覚まして!あなたは人間なんだよ!」
「目ならとっくに覚めてるよ~♪さっきまでは人間だったけど、やっとペンギンになったんだよ~♪」
「やめてー!こんなのイヤだよー!」
 ペンギンになって有頂天になっている将馬に、霧子が混乱して目を回す。彼女と同様にダイミダラーも頭を抱えていた。
「ダイミダラーの様子が変です!」
「霧子さん、将馬くん、どうしたの!?何があったの!?」
 メイリンがダイミダラーのことを伝えて、タリアが霧子たちに呼びかける。
「何で~!?何で将馬くんがペンギンに~!?」
 霧子の悲鳴がミネルバにも響き渡った。
「んもー!チンの前でふざけないでよー!」
 様子のおかしいダイミダラー6型に、リカンツが文句を言う。
「えっ!?その声、もしかしてリッツなのかーい♪」
 将馬が明るく答えると、ダイミダラーのコックピットのハッチを開けた。
「ええーっ!?ダイミダラーからペンギンが出てきたー!?」
 ペンギンの姿の将馬を見て、リカンツが驚きと感動を込めた笑顔を見せた。
「リッツー、今そっちに行くよー♪」
「将馬くん、待って!行かないでー!」
 リッツカスタムに向かってジャンプした将馬を、霧子が呼び止める。将馬がリッツカスタムの上に乗って、その中に入った。
「来たよ、リッツー♪今日からよろしくねー♪」
「うんうん♪今からダイミダラーをやっつけちゃうから、ちょっと待っててねー♪」
 将馬とリカンツが手を取り合って、出会いを喜び合う。
「返して!将馬くんを返して!」
 霧子が悲痛の声を上げて、リカンツに向けて呼びかける。
「チンが人質を取ったみたいに言わないでよねー!この子はこの子の意思でこっちに来たんだからー!」
 するとリカンツがふくれっ面を浮かべて、霧子に言い返した。
「返して・・将馬くんを返して!」
 怒りを膨らませた霧子が、将馬を助けようとダイミダラー6型を加速させた。ダイミダラー6型が突撃するが、リッツカスタムに軽々とかわされる。
 リッツカスタムがそばの島に着陸して、将馬を降ろした。
「危ないからちょっとここで待っててね。必ず勝って戻ってくるから♪」
「分かったよ、リッツー♪頑張ってねー♪」
 リカンツが声を掛けて、将馬が明るく答える。彼に見送られて、リッツカスタムが飛翔してダイミダラー6型の前に戻ってきた。
「あなたを倒して、将馬くんを取り戻す・・!」
「言いがかりも甚だしいよね・・あの子がどっちの味方なのかを、ちゃんと理解しなさいよ!」
 鋭く言いかける霧子に、リカンツが不満を膨らませていく。
「絶対に将馬くんを連れ戻す・・ディスガイズ!」
 霧子が操作して、ダイミダラー6型が左腕にディスガイズを装着させて、ハイエロ粒子を集めていく。
「ダイミダラーCPスラッシュ!」
 ダイミダラー6型がディスガイズを振りかざして、光の刃を放った。
「アラタメ、発動!」
 その瞬間、リッツカスタムが変形してアラタメとなり、光の刃を突き破った。
「そんな!?」
 必殺技を破られて、霧子が驚愕する。
「おー!ついに出たぞ、アラタメが!」
「ダイミダラーの力を押しのけたぞー!」
 デニスとマイケルがアラタメの強さに感動する。
「あれがダイミダラーの全力なら、アラタメの勝利だ・・!」
 ジェイクが真面目にリカンツの勝利を確信する。その直後、レジェンドのドラグーンから放たれたビームが南極たちに直撃して、マイケルたちが揺さぶられた。
「お前たちの相手をしている時間はない。早く済ませてもらう。」
 レイが冷静に言って、レジェンドがビームライフルを手にしてビームを放つ。
「わわーっ!」
 南極たちがビームを当てられて、マイケルたちが悲鳴を上げる。
“レイ、霧子さんを援護して!霧子さん、怒りで我を忘れているわ!”
 レイに向けてタリアからの通信が入る。
“いや、このまま彼女に任せろ!”
 その通信に割って入ってきたのは、プリンスにいる一雄だった。
“又吉長官!?しかし、このままでは霧子さんが・・!?”
“構わん!怒りに身を任せて敵を倒す!すばらしいではないか!”
 タリアが苦言を呈するが、一雄は霧子が感情に任せて戦うことをよしと思っていた。
“それに、霧子が全ての力を開放するなら、加勢に行けば逆に手傷を負うことになるぞ。”
“力を開放・・それはどういうことですか・・!?”
 一雄が告げた言葉に、タリアが疑問を投げかける。
「ダイミダラー、このアラタメの力を知るのはこれからだよ!」
 リカンツが高らかに言い放ち、アラタメがダイミダラー6型に向かっていく。
「将馬くんは絶対に助ける・・将馬くんを連れていくなんて、絶対に許さない・・・!」
 霧子が怒りを募らせて、髪に付けていた飾りを外した。
「絶対に許さない!」
 次の瞬間、霧子からあふれているハイエロ粒子が強まった。その光はダイミダラーからもあふれて、さらに熱量も上げていた。
「な、何だ、あの光の強さは!?」
「あれもハイエロ粒子だっていうのか!?」
 アウローラにいたヒルダとロザリーが、ダイミダラーを見て驚愕する。
「ち、ちょっと・・何が起こってるのよ・・!?」
 リカンツもダイミダラーに対して驚きを隠せなくなる。
 霧子が叫び声を上げて、ダイミダラーがディスガイズを振りかざして光の刃を飛ばした。アラタメが回避したが、光の刃は海を深く切り裂いていた。
「ウソっ!?・・あんな威力を出せるなんて・・・!?」
 モモカがダイミダラーの発揮した力に、脅威と共に恐怖を感じる。
「ものすごくパワーアップしちゃったみたいだけど、チンとアラタメのほうが上なんだからねー!」
 リカンツもいきり立ち、アラタメからも強いハイエロ粒子があふれ出す。
 ダイミダラーと改めて力任せに激しくぶつかり合う。2機とも押されることなく、霧子もリカンツもハイエロ粒子の放出を続ける。
「すごい・・ものすごい戦闘力だ・・・!」
「しかしこれでは霧子さんの負担も並外れているはずよ・・すぐに止めなければ・・!」
 アーサーが驚きを隠せなくなる中、タリアが霧子の暴走を危惧する。
“いや、このまま続けさせろ!力の限り、ペンギンどもを叩き潰すのだ!”
 しかし一雄は霧子に戦い続けるよう求める。
“ペンギン帝国を倒せるなら、その命を散らすことなど惜しくはない!”
 ペンギン帝国への憎しみに駆られている一雄に、タリアが反感を覚える。
「又吉長官、仲間や部下をそのように切り捨てる考え方を、我々は認めるわけにはいきません。レイ、霧子さんを止めるのよ!」
「了解。ただしあれほどのエネルギーなので、加減は厳しいです。撃墜もやむを得ない状態ですが、構わないですね?」
 一雄の暴走化に反発したタリアからの指示を受けて、レイが疑問を投げかける。
「いいわ・・加減をすれば逆にやられることになる。油断は許されないわ・・!」
「分かりました。」
 タリアが了承して、レイが頷いた。
(ドラグーンのビームを一点集中させる。それでレジェンドの攻撃の威力を上げることができる・・)
 レイがレジェンドを操縦して、ドラグーンの標準をダイミダラー6型の左腕に定めて、ビームを一斉に発射した。彼はディスガイズが攻撃力の源の1つであると推測していた。
 しかしダイミダラーから出ているハイエロ粒子によって、ビームが弾かれた。
「レジェンドの攻撃が通らない!?」
「ダイミダラーから出ている強いハイエロ粒子が、バリアになってビームを止めました!」
 アーサーが驚愕し、メイリンがダイミダラーの状態を分析する。
(いくら束にしても、ライフルやドラグーンのビームではあのエネルギーを破れない・・デスティニーがいれば、打ち破ることが可能だが・・・!)
 レイが危惧して、シンとデスティニーのことを思い出す。しかしシンたちはそばにいないことを、レイは理解していた。
「危険な賭けだけど・・タンホイザーを使うしかないわ・・・!」
 タリアが覚悟を決めて、タンホイザーの発射を決断する。
「しかし、それではあのバリアだけでなく、ダイミダラーそのものを吹き飛ばしてしまいます!」
「だから直撃させるのではなく、ギリギリ横を通すのよ・・ビームの余波でバリアだけを破るのよ・・!」
「それは、極めて難しい砲撃ですよ・・!」
「それでもやるしかないわ・・このまま暴走が続けば、霧子さんだけでなく、周囲にも被害が広がるわ・・!」
 不安を口にするアーサーに、タリアが呼びかける。
「艦長・・・分かりました・・・!」
 彼女の覚悟を理解して、アーサーが頷いた。
 その間にもダイミダラー6型とアラタメの激突は続いていた。フルバーストを超えたオーバーバーストとなっている霧子も、体に大きな負担がかかり、着ていた服もボロボロになっていた。
「しつこいじゃない・・いい加減にやられちゃえー!」
 リカンツが不満を言い放ち、ハイエロ粒子を強めていく。
「これはペンギン帝国の真の強者が会得できる必殺技・・チンが特訓に特訓を重ねて、やっとものにした技・・・!」
 彼女がペンギン帝国での、強いペンギンたちを相手にしての特訓の日々を思い出す。
「お前たちを倒して、将馬くんを人間に戻す!」
 霧子も持てる力を振り絞り、ダイミダラーがディスガイズにハイエロ粒子を集めていく。
「指ビーム・オーバーバースト!」
 ダイミダラーが左手から大出力のビームを放った。
「必殺!烈風ペンギン突き!」
 アラタメが全速力で突っ込み、ビームを突き破る。霧子が目を見開く中、アラタメはバリアをも突き破り、ダイミダラー6型に突撃した。
 ダイミダラー6型が強く押されて、その先の孤島まで飛ばされた。
「ダイミダラーが、やられた・・!?」
 その瞬間を目の当たりにして、オリビエが目を見開く。孤島で倒れたダイミダラー6型は破損が激しくなっていて、中で霧子が意識を失っていた。
「やったー!ダイミダラーに勝ったぞー!」
「ダイミダラーもすごいパワーだったが、それを上回ったリッツとアラタメはもっとすごい・・!」
 マイケルとデニスがアラタメの力に感嘆する。アラタメから出ていたハイエロ粒子が弱まり、リカンツがコックピットの前にもたれかかる。
「すっごく疲れた・・でも、ダイミダラーをやっつけるまであと1歩・・頑張らなくちゃ・・・!」
 リカンツは呼吸を整えながら、力を振り絞ってアラタメを操縦する。
「これで終わりよ、ダイミダラー・・前のダイミダラーと同じように、木っ端微塵に吹き飛ばしてやるんだから・・!」
 彼女が疲れを感じながらも、アラタメを前進させてダイミダラー6型に向かっていく。
「ダイミダラー、応答してください!霧子さん!」
 メイリンが呼びかけるが、霧子からの応答はない。
「タンホイザーであのペンギンロボを攻撃するのよ!ロボの放出するエネルギーを破るのは、並大抵の攻撃では厳しいわ・・!」
 タリアが指示を出し、ミネルバがタンホイザーの発射体勢に入る。しかしエネルギーをチャージしている間に、アラタメはダイミダラー6型の眼前まで迫っていた。
「これで終わりだ、ダイミダラー!」
「ペンギン帝国の勝利だー!」
 マイケルとデニスがリカンツの勝利を確信した。
 そのとき、上空の空間に歪みが起こり、次元のトンネルが開かれた。
「この穴・・ドラゴンがまた・・!?」
「こんなときにドラゴンが出てくるのかよ・・・!」
 ヒカルが緊迫を募らせて、ロザリーが毒づく。
 次の瞬間、次元のトンネルから一条の光が飛び出して、アラタメに直撃した。
「うわあっ!」
 リカンツが衝撃で揺さぶられて悲鳴を上げる。
「リッツ!」
「誰だー!?こんなひどいことをするのはー!」
 ジェイクが声を上げて、デニスが文句を言う。
 続けて次元のトンネルから飛び出してきたのは、ダイミダラー超型だった。
「あ、あれはダイミダラー!?」
「でも霧子さんの6型とは違います!孝一くんの2型と形状が似ていますが・・!」
 アーサーとメイリンが声を荒げる。ダイミダラー超型が右手を突き出して、アラタメを突き飛ばした。
「イタタタ・・ダイミダラーがもう1体!?」
 リッツが痛がって、アラタメがゆっくりと起き上がる。
「アンタ誰よ!?誰が乗ってるのよ!?」
「真玉橋孝一、お前らの前に戻ってきたぜー!」
 リカンツが問い詰めると、ダイミダラー超型にいる孝一が高らかに名乗りを上げた。
「こ、孝一くん!?」
「あの変態、しぶとく生きていたのね・・!」
 タリアが声を荒げて、夕姫が肩を落とす。
「空間の穴から出てくる反応が、他にもあります!」
 メイリンがレーダーを確認して、タリアたちに報告する。
「デスティニー・・インパルス・・アルゼナルで行方不明になっていたみなさんです!」
「何だって!?」
 メイリンが報告を続けて、アーサーが驚く。時空のトンネルからイザナギ、デスティニー、インパルス、ヴィルキスが飛び出してきた。
「シン、ルナマリア、無事だったのね!?」
「グラディス艦長、ご心配をおかけしました!ただ今戻りました!」
 タリアが声を掛けて、デスティニーにいるシンが答えた。タスクとヴィヴィアンの乗ったエアバイクも出てきて、焔龍號たちも追いついた。
「あのドラゴンの仲間だと!?」
「何でアイツらとアンジュたちが一緒にいるんだよ!?」
 マギーとヒルダが焔龍號たちを見て声を荒げる。
「アンジュ、状況を説明しろ!なぜ敵であるドラゴンの機体と一緒にいる!?」
「詳しい話は後にして!ペンギンのロボを倒すのが先よ!」
 ジルが問い詰めるが、アンジュははねつけてアラタメに目を向けた。
「クロスの他のメカが出てくるなんて・・・!」
「しかも新しい仲間までできちゃったみたいだ・・!」
 マイケルとデニスがイザナギたちを見て驚愕する。
“引き上げるのだ、リッツ、ペンギンコマンドたちよ!加勢したヤツらの戦力と、今のアラタメの状態では、これ以上の戦闘は危険だ!”
 そこへペンギン帝王からの通信が入り、リカンツたちが動揺を覚える。
「でも帝王様、もうちょっとであのダイミダラーをやっつけられるのにー!」
“アラタメが限界を迎える!お前たちを失うわけにもいかん!”
「帝王様・・・分かったよ!すぐに帰るからね!」
 ペンギン帝王になだめられて、リカンツは撤退を聞き入れることにした。
「みんなー、戻るよー!」
「アイアイサー!」
 リカンツの呼びかけに、マイケルたちが答えた。将馬がマイケルの乗る南極8号の中に入っていった。
「逃がさないわよ、ペンギンたち!」
「待ってください、アンジュリーゼ様!ペンギンの中に、ペンギンになってしまった将馬さんがいます!」
 リカンツたちを追いかけようとしたアンジュに、モモカが呼びかけてきた。
「はっ!?あのボーイフレンドがペンギンになった!?」
「私たちも信じられていませんが、本当のことなんです・・・!」
 疑いを覚えるアンジュに、モモカがさらに言う。結局、カナタたちはリカンツたちを追うことができなかった。
「向こうはピンチだったけど、丁度いいところで来たという感じね。」
「丁度うまく合流する事ができたが、問題はここからだ。」
 カナメが笑みをこぼして、ナーガがアンジュたちに目を向ける。
「クロスのみなさん、私は真祖アウラの末裔にして、フレイアの一族が姫、近衛中将、サラマンディーネ。そちらの代表との会談を望みます。」
 サラマンディーネが呼びかけて、話し合いを持ちかけてきた。
「艦長、ドラゴンの仲間の機体から人の声が・・パイロットがいたのですね・・・!」
 彼女の声を聴いてアーサーがさらに驚く。
「メイリン、回線を開いて。向こうのパイロットとの会談に応じます。」
「はい。」
 タリアが冷静に言って、メイリンが答えて通信回線を開いた。
「ザフト、クロス所属、ミネルバ艦長、タリア・グラディスです。私たちは会談に応じます。あなた方のことを、詳しく聞かせていただけますか?」
「もちろんです。よろしくお願いします、グラディス艦長。」
 タリアが話し合いに応じて、サラマンディーネが頷いた。
 元の世界に戻ってきたカナタたち。彼らが再会の喜びを分かち合う中、タリアたちとサラマンディーネたちとの会談が始まろうとしていた。
 
 
第46話へ
 
その他の小説に戻る
 
TOPに戻る

 

inserted by FC2 system