スーパーロボット大戦CROSS

第39話「運命の翼」

 

 

 窮地に追い込まれたインパルスたちの救援に駆け付けたのは、シンの駆るデスティニーだった。

「あれは、もう1機の新型・・でも、誰が・・・!?

 ルナマリアがデスティニーを目の当たりにして、動揺を覚える。

「大丈夫か、ルナ、みんな!?

「シン!?・・乗ってるのはシンなの!?

 呼びかけてきたシンに、ルナマリアが驚きの声を上げる。

「体は大丈夫なの!?・・完治してないのに出撃したら・・!」

「周りにいる敵機はオレが倒す!ルナたちはみんなの援護をしてくれ!」

 心配するルナマリアに、シンが指示を出す。

「あれがデスティニー・・・」

「ザフトの、もう1機の新型・・・」

 霧子と将馬がデスティニーを見て、戸惑いを感じていく。

「ありがとう、ルナ・・オレの代わりに、インパルスで戦ってくれて・・・!」

「シン・・・」

 感謝するシンに、ルナマリアが戸惑いを募らせていく。

「早く行くんだ・・!」

「シン・・気を付けてね・・・!」

 シンの呼びかけに、ルナマリアが小さく頷いた。

「霧子、私たちはレイたちの援護に行くわよ!」

 ルナマリアがダイミダラーに目を向けて、霧子たちに呼びかける。

「でも、シン1人であれだけの数を相手にするのは・・・!」

「シンを信じるしかないわ・・シンの信念が強くなっているから・・・!」

 心配する霧子だが、ルナマリアはシンを信じた。

「今は僕たちの戦いに専念しよう、霧子ちゃん・・!」

「うん、将馬くん・・・!」

 将馬からも言われて、霧子が頷いた。インパルスとダイミダラーがレジェンドたちの援護に向かった。

 デスティニーがビームライフルを構えて、ウィンダムたちに射撃を当てていく。デスティニーはインパルス以上のスピードとパワーを発揮し、シンも正確に攻撃の狙いを定めていた。

「あれもザフトの新型か・・!」

「ヤツの戦闘力も並外れているぞ・・!」

 連合軍のパイロットたちがデスティニーの戦いに対して、緊迫を募らせる。

「だがビーム攻撃ばかりでは、我々に勝つことはできないぞ!」

 ザムザザーのパイロットが臆せずに言い放つ。

 ザムザザーがデスティニーに向かってビームを放出する。デスティニーは光の翼を広げて、加速してビームをかわす。その動きは翼の光に込められている粒子「ミラージュコロイド」の効果により、残像を伴っていた。

「小賢しいまやかしを・・だが素早いばかりでは・・!」

 パイロットが毒づきながらも、ザムザザーの勝利を確信する。

 デスティニーが右背面に装備されているビームソード「アロンダイト」を手にした。デスティニーが構えると同時に、折りたたまれていたアロンダイトの刀身が展開された。

「直接攻撃のできる武器・・しかもあのような巨大なものを!?

 ザムザザーのパイロットがアロンダイトを見て驚く。陽電子リフレクターを展開しているザムザザーに向けて、デスティニーがアロンダイトを振り下ろす。

 陽電子リフレクターが防ぐこともできずに、ザムザザーがアロンダイトに真っ二つにされた。

「ギャアッ!」

 パイロットの絶叫が響く中、ザムザザーが落下しながら爆発して消えた。

「なんという機体だ・・ザムザザーを簡単に落とすとは・・!」

 ロゴスのパイロットたちがデスティニーの力に危機感を覚える。

「こうなれば、取り囲んで動きを封じるしかない!一斉攻撃をすれば、いくらヤツとて・・!」

 パイロットたちがいきり立ち、ウィンダムたちがデスティニーを取り囲んで距離を縮めていく。

「そんなことで・・!」

 シンが言いかけて、デスティニーが左背面に装備されているビーム砲を展開して発射する。出力の高いビームが放たれ、ウィンダムやゲルズゲーたちが撃ち抜かれた。

「ごあぁっ!」

 パイロットが絶叫を上げて、ウィンダムたちが次々に爆発していく。

「本当に武器が多彩・・いずれも強力なものばかり・・!」

「力も武器もあまりに違いすぎる・・!」

 パイロットたちがデスティニーに脅威を感じて、冷静さを保てなくなっていた。

「うろたえるな!ここでザフトを討たねば、我々に未来はない!」

 他のパイロットが怒鳴って、デスティニー打倒に意識を向ける。

(オレは戦う・・戦いのない世界のために・・・それを壊そうとするヤツらを、オレは倒す・・!)

 シンが心の中で決意を固めていく。

(もう、あんな悲劇は繰り返させない・・・!)

 彼の脳裏に家族やハイネ、孝一の死、アスランの撃墜の瞬間がよぎる。

 あのような悲劇を繰り返させない。そのための力を求め、シンは戦いを終わらせる戦いをする決意を固めた。

 デスティニーも自分の確固たる力であると、シンは思っていた。

 

 デスティニーの登場をレイも、ネオもスティングも気付いていた。

「あれもザフトの新型か!?・・ザフトはこのような新型を作っていたとは・・!」

「何が出てきても、オレが全部吹き飛ばしてやるよ!」

 ネオが毒づき、スティングがいきり立つ。

(シン、やはりお前も来たか。デスティニーに乗って・・)

 レイがシンのことを考えて笑みをこぼす。

「ここにいるヤツもアイツも、オレが倒してやるよ!」

 スティングが高らかに言い放ち、デストロイがレジェンドに向かってビームを発射した。

 

 シンがデスティニーで出撃して、連合軍の機体を圧倒していることに、アンジュたちも気付いていた。

「あれが、ザフトももう1機の新型・・・!」

「速いし強い・・・」

 ロザリーとクリスがデスティニーの戦いを見て、戸惑いを覚える。

「だけど、掌から出ている武器・・ヴィルキスやパラメイルとそっくりじゃない・・・!」

 アンジュがデスティニーの武装の1つに対して、不満を覚えた。

 デスティニーには両手の掌にある砲門「パルマフィオキーナ」が搭載されている。掌の砲門からビームを放出して敵を破壊する武装だが、ヴィルキスやパラメイルの腕部にある凍結バレットに酷似していた。

「あの新しい2機はザフトで、デュランダル議長の指揮で開発されたものよね?」

「もしかして、パラメイルとかいろんな機体が参考にされてるんじゃ・・・!?

 エルシャとヒルダがデスティニーとレジェンドの開発経緯、ギルバートの思惑について考えていく。

「パラメイルの技術をリスペクトして、強い機体ができたってとこか・・」

「デュランダル議長には言いたいことができたけど、今はコイツらを倒すのが先ね・・!」

 ロザリーが感心して、アンジュが気持ちを切り替えて、黒龍神に視線を戻す。

「新しい機体が出てきて、戦いが激しくなったようだね・・・」

 アブルがデスティニーの参戦を見て呟く。

「こっちは余裕があるわけじゃないから・・急ぐよ、カンナ・・」

 彼女が黒龍神の状態を確かめて、カンナに呼びかけた。

 

 一進一退の攻防を繰り広げるイザナギとイザナミ。長期戦を危惧したカナタが、ディメンションバーストの発動に踏み切った。

「行くぞ、カンナ・・ディメンションバースト、発動!」

 カナタがイザナギのコンピューターを操作して、ディメンションバーストを起動させた。イザナギからまばゆい光があふれ出した。

「ついに使ったわね・・この力をイザナミでも使えるようにして、私のものに・・・!」

 カンナが笑みをこぼして、イザナミがビームサーベルを構える。次の瞬間、カンナの視界からイザナギの姿が消えた。

「速い!」

 カンナが感覚を研ぎ澄まして、イザナギの行方を探ろうとする。

「うっ!」

 突然振り下ろされたビームの刃がイザナミのビームサーベルを叩いて、カンナがうめく。イザナギが一瞬でイザナミのそばに回り込み、ビームサーベルを振り下ろしたのである。

(高速で動いている限度を超えている・・やはり空間を越えて移動している・・・!)

 イザナギの動きに対して推測を巡らせるカンナ。イザナギが再びビームサーベルを振りかざすが、カンナが反応し、イザナミが紙一重で回避した。

 次の瞬間、距離を取っていたはずのイザナミの後ろに、イザナギが一瞬にして回り込んできた。

(私もイザナミも反応が追いつかない・・これが、イザナギの真の力・・・!?

 ディメンションバーストの力に脅威を感じて、カンナが目を見開いていた。

 

 ミネルバと合流して、ウィンダムたちを迎撃していたインパルスとダイミダラー。そこへ周囲の連合軍の機体を撃破したデスティニーが駆けつけてきた。

「シン!」

 ルナマリアがデスティニーを見て声を上げて、霧子と将馬も戸惑いを覚える。

「ありがとう、シン・・助かったよ・・・!」

 シンに向けてルナマリアが感謝する。彼女はデスティニーに乗って自分たちを守ってくれたシンに、心を動かされていた。

「礼を言うのはオレのほうだよ、ルナ・・ルナがインパルスでここまで戦ってなかったら、ミネルバは危なかった・・・」

 シンが正直な思いを口にする。彼の言葉を聞いて、ルナマリアが戸惑いを覚える。

「オレはレイと合流する。アイツも新型に乗ってるんだろ?」

「うん・・レイは今、レジェンドに乗ってる・・ベルリンでステラが乗っていたのと同じ機体も出ている・・!」

 シンが言いかけて、ルナマリアが答える。

「みんなはこのままヘブンスベースを押さえてくれ。オレはレイと合流して活路を開く・・!」

 シンがルナマリアに呼びかけて、ヘブンズベースの中心部に目を向ける。

「本艦はこのまま前進。敵の本拠地を押さえて、ロゴスのメンバーを拘束します。」

 タリアがシンたちに向けて声を掛けてきた。

「シンはレイと合流して、敵機の殲滅を。ルナマリアは本艦に同行して。」

「了解!」

 タリアからの指示に、シンとルナマリアが答える。

「メイリン、レイに向けてソードシルエットを!」

「えっ!?レイに・・!?

 シンの呼びかけにメイリンが動揺を浮かべる。

「エクスカリバーなら他の機体でも使える!レイならうまく使うはずだ!」

「シンの言う通りにして、メイリン。レジェンドに向けてソードシルエットを。」

 シンに続けてタリアもメイリンに呼びかける。

「はい!ソードシルエット、射出!」

 メイリンが答えて、ミネルバからレジェンドに向けてソードシルエットが射出された。シンのデスティニーがそれに続くように加速した。

 

 スティングのデストロイとレジェンドの戦いは、互いに拮抗していた。そこへネオのウィンダムが駆けつけて、デストロイと合流した。

「大丈夫か、スティング!?

「ネオ・・邪魔すんなよ・・オレがそいつを潰すんだから・・!」

 心配するネオに、スティングが不満を口にする。

「戦いを長引かせるわけにはいかない。オレたちであの新型を倒すぞ!」

「だからオレの邪魔をするなって言っているだろ!」

 指示するネオに怒鳴るスティング。デストロイが前進して、レジェンドに向けてビームを一斉に発射する。

 レイが反応し、レジェンドがビームを回避していく。その間にウィンダムが回り込み、レジェンドの後方に来た。

 デストロイのビームを回避していくレジェンドを狙って、ウィンダムもビームライフルを手にして射撃してきた。

 2機のビーム攻撃によって、レジェンドが動ける範囲を狭められていく。

「どうやらここまでのようだな、白い坊主くん・・・!」

 ネオがレイに言いかけて、ウィンダムとデストロイがレジェンドをさらに挟み撃ちにする。

(ここまでか・・・!)

 レジェンドがビームサーベルを手放していて、レイは覚悟を痛感する。

 そのとき、デスティニーがソードシルエットを伴って、レジェンドのそばに駆けつけてきた。

「デスティニー・・シン・・ソードシルエット・・!」

 レイがデスティニーとソードシルエットを見て、目を見開いた。

「レイ、エクスカリバーを!そいつならその機体と戦える!」

 シンがレイに向けて呼びかける。レイが頷いて、レジェンドがエクスカリバーを手にした。

「シン、来たか・・正直、危ないところだった・・・」

「ミネルバはルナたちと一緒に中心部へ向かった。オレたちはコイツらを倒す・・レイ、大丈夫か・・!?

「オレは平気だ。お前のおかげで助かった・・」

「よし、やるぞ!反撃開始だ!」

 レイとシンが声をかけ合って、レジェンドとデスティニーがデストロイたちと対峙する。

「ザフトの新型がもう1機あったか・・しかも万能型のようだ・・!」

 ネオがデスティニーを見て焦りを噛みしめる。

「誰が出てこようと、オレがまとめてぶっ潰してやる!ネオ、アイツらはオレに任せろ!」

 スティングがネオに呼びかけて、デストロイがデスティニーたちに迫る。

「これ以上、アイツらを暴れさせてたまるか・・!」

 シンが言い放ち、デスティニーがアロンダイトを手にした。

「これなら、アイツも切り裂ける!」

 シンが目つきを鋭くして、デスティニーがデストロイに向かっていく。

「くらえ!」

 スティングが言い放って、デストロイがビームを一斉発射する。デスティニーは残像を伴った高速で、ビームの間をかいくぐる。

 デスティニーがデストロイに詰め寄り、アロンダイトを振りかざした。

「ぐおっ!」

 デストロイの胴体が切りつけられて、スティングが衝撃に襲われてうめく。コックピットにいる彼の姿を、シンは視界に入れた。

「アンタも、ステラと同じなのか!?・・あの子のように、戦うために仕立てられたっていうのかよ・・!?

「ステラ!?何だ、そりゃ!?・・オレはオレの意思で、お前たちを討つ!」

 問い詰めるシンだが、スティングはその意味を理解していない。ベルリンでの戦いの後に調整された際、スティングはステラのことを消されていた。

「ステラのことを忘れて、今も世界を壊す戦いを続ける・・それがアンタの望むことなのか!?

 ステラと同じエクステンドでありながら自ら望んでロゴスの破壊と暴挙に加担するスティングに、シンは体を震わせる。

「お前たちのようなヤツらがいるから、世界は!」

 怒りを膨らませたシンの中で、何かが弾けた。彼の感覚が研ぎ澄まされ、デスティニーの動きがより機敏になった。

 デストロイが続けてビームを放つが、デスティニーは素早くかわしていく。デスティニーが立て続けにアロンダイトを振りかざして、デストロイの胴体をさらに切りつけて、両腕も切り裂いた。

「くそぉっ!」

「スティング!」

 うめくスティングに、ネオが叫ぶ。ウィンダムがデストロイを加勢しようとするが、エクスカリバーを構えたレジェンドに行く手を阻まれた。

「シンの邪魔はさせない・・お前の相手は、オレだ・・!」

 レイがネオに向けて鋭く言いかける。

「お前たち、スティングを援護しろ!ヤツを引き離せ!」

「はっ!」

 ネオが呼びかけて、パイロットたちが答える。他のウィンダムたちがデスティニーに向かっていって、ビームライフルを発射する。

 デスティニーがビームをかわすと、両肩に装備されているビームブーメラン「スラッシュエッジ」のうち、右肩のものを左手でつかんで投げつけた。ビームの刃を発したビームブーメランが回転しながら飛んで、ウィンダムたちを次々に切り裂いていく。

「邪魔するな!そいつはオレがやる!」

 いきり立つスティングが怒鳴って、デストロイがビームの発射を再開する。

「許すものか・・世界も命もムチャクチャにしようとするロゴスも、そのやり方にも力にも乗っかってるアンタも・・・!」

 シンが怒りを募らせて、デスティニーがアロンダイトを構えて、デストロイに向かって突っ込む。

「許すもんか!」

 シンが激高して、デスティニーがアロンダイトを振り下ろす。デストロイの胴体が切り裂かれて、スティングのいるコックピットに爆発が及ぶ。

「オレは・・オレはまだ・・・!」

 スティングが声を振り絞って、真上にいるデスティニーを狙ってデストロイがまたビームを放つ。しかしデスティニーはこれもかいくぐる。

「これで、終わりだ!」

 シンが言い放ち、デスティニーが左手を突き出して、パルマフィオキーナでデストロイの頭部に攻撃した。デストロイが頭部から胴体に掛けて爆発に襲われた。

「オレの・・・オレの・・夢は・・・!」

 声を振り絞るスティングが、爆発と閃光の中に消えた。彼の乗っていたデストロイが倒れて、爆発を起こした。

「スティング・・!」

 スティングの死にネオがいら立ちを噛みしめた。ネオはスティングを死なせたシンだけでなく、彼を戦場に駆り立てた自分を責めていた。

「アイツ、デストロイを倒しただと・・!?

「なんてヤツだ、あの新型・・!」

 他のパイロットたちがデスティニーの強さに驚愕する。

「うろたえるな!デストロイはまだまだいる!一斉にかかれば倒せない敵はいない!」

 パイロットたちが檄を飛ばし合い、残りのデストロイたちがデスティニーを取り囲んだ。

「お前たちがこんな戦いを続けようとするなら、オレが終わらせてやる!」

 シンが感情を込めて言い放ち、デスティニーがアロンダイトを構えて、デストロイたちに向かっていった。

 

 レイの駆るレジェンドがエクスカリバーを手にしたまま、ネオのウィンダムとビームの撃ち合いを繰り広げていた。

「くっ・・やはり機体の性能の差は埋めようがないか・・!」

 ネオが危機感を募らせて、ウィンダムがビームライフルを構えた。

「たとえ性能差がなくても、オレは負けはしない・・議長の描く理想を実現するために、オレは戦い続ける・・・!」

 レイが揺るぎない意思を口にして、レジェンドがドラグーンからビームを発射する。回避行動をとるウィンダムだが、かわし切れずに左腕と右足を撃ち抜かれた。

「ぐっ!」

 ウィンダムが損傷して、ネオがうめく。レジェンドが左手でビームライフルを手にして発射するが、ウィンダムは紙一重でかわして、レジェンドに組み付いた。

「くっ・・どうやら・・君との因縁はここまでのようだ・・・だが・・!」

 ネオが声を振り絞り、ウィンダムが右手で持ったビームサーベルを突き出した。レイがとっさに反応して、レジェンドが左手に持っていたビームライフルを掲げて、ビームサーベルを止めた。

「そうだ・・お前はここで終わりだ・・!」

 レイも声を振り絞り、レジェンドが右手に持ったエクスカリバーをウィンダムに突き立てた。

「ぐおっ!」

 爆発がコックピットに及んで、ネオがうめく。胴体を貫通されて突き飛ばされたウィンダムが、落下しながら爆発した。

(これでヤツとの因縁は終わった・・だが、オレの運命はまだ・・・)

 レイが心の中で呟いて、自分の開いた手を見つめた。彼は自分自身のこととシンのことを考えていた。

「それでも、オレが今を戦うことに変わりはない。シンとともに・」

 レイが呟いて、レジェンドがデスティニーのところへ向かった。

 

 デストロイ4機が取り囲むが、アロンダイトを振りかざすデスティニーに対して、劣勢を強いられていた。

「バカな!?・・デストロイはロゴスが所有する最強の機体だぞ・・・!」

「それを4機使っても、あの機体に勝てぬというのか・・!?

 パイロットたちが自分たちが直面している現実が信じられずに、困惑を抑えられなくなる。

 デスティニーがアロンダイトを構えて、デストロイたちに向かって突っ込む。デストロイたちのうちの2機が、デスティニーが振りかざしたアロンダイトに胴体を切り裂かれた。

「おのれ・・おのれ、ザフトめぇー!」

 絶叫を上げるパイロットが、デストロイの爆発に巻き込まれて吹き飛んだ。

「許さん・・許さんぞ、ザフト!」

 パイロットたちが怒りをあらわにして、デストロイ2機が同時にスーパースキュラを発射した。デスティニーが加速して、2つのビームをかいくぐった。

 しかしウィンダム2機がその直後にデスティニーに近づいて、両腕をつかんだ。

「今だ!オレたち諸共コイツをやれ!」

「コイツをやらなければ、オレたちは終わりだ!」

 ウィンダムのパイロットたちが呼びかける。デストロイたちが再びビームを放とうとする。

「コイツら、自分を犠牲にしてオレを・・!」

 シンが毒づき、デスティニーがウィンダムたちを振り払おうとする。

 そこへレジェンドが駆けつけて、エクスカリバーでデストロイの1体の胴体を切り裂いた。

「レイ!」

 シンがレイに向けて声を上げる。だが残りのデストロイがデスティニーに向かって、スーパースキュラを発射した。

「シン!」

 レイが叫び、レジェンドがエクスカリバーを投げつけて、デスティニーを取り押さえているウィンダムの1機に突き立てた。

 デスティニーがそのウィンダムを振り払って、加速して退避した。突き飛ばされたウィンダムが、ビームに貫かれて爆発した。

「レイ、大丈夫か!?

「あぁ・・だがこれであの巨大な機体に対抗する術が、オレにはなくなったが・・」

 シンが心配の声を掛けて、レイが答える。デスティニーとレジェンドが合流して、デストロイに振り向く。

「シン、コイツを潰すんだ・・切り込めるか・・!?

「あぁ・・レイは援護してくれ!他のヤツらの相手をしてくれ!」

 レイとシンが声を掛け合い、デスティニーがデストロイに向かっていく。レジェンドがドラグーンからのビームで、ウィンダムたちを射撃していく。

「シンにはこれ以上近づけさせないぞ・・!」

 レイが鋭く言いかけて、レジェンドが射撃を続ける。デスティニーが加速して、デストロイの胴体、スーパースキュラの発射口にアロンダイトを突き刺した。

「ぐあぁっ!」

 パイロットが爆発に巻き込まれて、アロンダイトを引き抜かれたデストロイが倒れて動かなくなった。

「デストロイが、全滅・・!?

「もうダメだ・・我々は、おしまいだ・・・!」

 連合軍のパイロットたちが絶望を感じて、ウィンダムたちの中から逃げ出す機体が出てきた。

「逃がさないぞ・・!」

 レイが見逃さず、レジェンドがビームでウィンダムたちを撃ち落とす。シンのデスティニーもビームライフルを手にして、さらにビーム砲も駆使して射撃する。

 残りのロゴスの機体も、デスティニーとレジェンドによって撃墜された。

 

 ネオたちが倒され、連合軍が壊滅的な打撃を被った。それにカンナとアブルが気付き、イザナミと黒龍神が攻撃の手を止めた。

「ここまでのようだね・・カンナ、私たちも終わりにしよう・・」

「仕方がないわね・・でも、イザナギのこの力がどういうものなのか、分かりかけてきたわ・・・」

 アブルの呼びかけに答えて、カンナがイザナギを見つめて笑みをこぼした。

「カナタ、イザナギのこの力、必ず私もものにして見せるわ・・!」

「カンナ・・もはや、討つ以外に、君を止める方法はないみたいだ・・・!」

 力への渇望を膨らませるカンナと、彼女と戦い倒す覚悟を決めたカナタ。イザナミと黒龍神が飛び去り、イザナギがディメンションバーストを解除した。

「あの黒いヤツ、今度会ったら確実に仕留めてやるんだから・・!」

 アンジュがアブルに対していら立ちを募らせていた。

「アンジュちゃん、今はみんなと合流するのが先決よ。」

「みんなと一緒に悪者のお城へ乗り込もー♪」

 エルシャがアンジュに呼びかけて、ヴィヴィアンが掛け声を上げる。

「ミネルバも中央に向かってる!あたしらも行くよ!」

 ヒルダが檄を飛ばして、グレイブたちがミネルバを追いかけていった。だがヴィルキスの戦闘での負荷が大きくなっていることに気付いたアンジュは、ヒルダたちとは行かなかった。

(あの黒いの、ドラゴンと一緒にいたのと同じくらい強かったわね・・ヴィルキスが万全だったら・・・!)

 アンジュがサラマンディーネと焔龍號のことを思い出して、ため息をついた。

 

 アーキバスの修理が終わる前にカンナたちが撤退したのを見て、サリアは複雑な気分を感じていた。

(私がいなくても、この激しい戦いを切り抜けられた・・私にできることは、何もないというの・・・?)

 自分の無力さを感じて、戦う理由を見失ってしまい、サリアは不安と苦悩に襲われる。

「やっとアーキバスの修理が終わったよ・・ゴメンね、サリア。すっかり遅くなっちゃって・・」

 メイがため息をついてから、サリアに謝る。

「いいわ・・私はここで待機している。」

 サリアが小さく頷いて、ヘブンスベースの制圧と後処理を飛行艇から見守ることにした。

 

 ヘブンズベースの中心に向かったミネルバとインパルス。他のザフトの機体も駆けつけて、中心部は包囲された。

 そこにいた連合軍のメンバーが観念して建物から出てきて、ザフトのパイロットたちに拘束された。

「艦長、ジブリールだけがいません!」

 拘束したメンバーとデータを照合したアーサーが、タリアに報告する。

「まだ中にいるはずよ!捜し出して!ヘブンズベースから逃がしてはならないわ!」

「はっ!」

 タリアが呼びかけて、アーサーが答えて施設へ向かう。

「私がヘブンスベースの中に入るから、霧子たちは万が一に備えて待機していて。」

「分かった。ルナマリアさんも気を付けて・・」

 ルナマリアが呼びかけて、霧子と将馬が頷く。ルナマリアがインパルスから降りて、他のザフトの兵士たちとともに施設へ乗り込んだ。

 慎重かつ迅速に捜索を行うルナマリアたち。施設の中や周辺、ヘブンズベースのエリア全体をくまなく捜したが、ジブリールを発見することはできなかった。

「既に脱出した後だったか・・・!」

「もう少しというところだったのに・・・!」

 ジブリールに逃げられたことに、アーサーとルナマリアが毒づく。

「シンたちにも連絡を取って、捜索範囲を広げます!」

 ルナマリアはアーサーに言ってから、1度外に出てインパルスに戻った。飛翔したインパルスにデスティニーとレジェンドが合流した。

「ジブリールだけが見つからない・・!」

「逃走したモビルスーツが数機あった。そのどれかに乗って逃走した可能性もある・・」

 ルナマリアが事情を話して、レイが冷静に推測を告げる。

「この辺りを捜索するんだ。まだ遠くに入ってないはずだ・・!」

「オレたちも別れて捜してみる!」

 シンが呼びかけて、カナタが頷いた。彼らとヒルダたちがジブリールや連合軍の生き残りを追い求めて、周辺を捜索した。

 しかしカナタたちの捜索も空しく、ジブリールを発見することはできなかった。

 

 ミネルバが中心部に到着する前に、ジブリールは逃亡を図った機体の1機に乗ってヘブンズベースから脱出していた。

「おのれ、ザフト・・おのれ、デュランダル・・だが、これで終わる私ではないぞ・・・!」

 いら立ちを募らせるジブリールを乗せたウィンダムが移動していく。

「我々にはまだ切り札がある・・そのためには、まずはあそこへ・・・!」

 野望を諦めていなかったジブリールは、目的の場所に急いだ。

 

 

40

 

小説

 

TOP

inserted by FC2 system