スーパーロボット大戦CROSS
第38話「強襲と決死行」
ベルリンで生き延びていたのはスティングだけではなかった。ネオも負傷から立ち直って、ウィンダムに乗って戦列に復帰していた。
「ケガが治った途端に駆り出されるとは・・しかしこれも、軍人の運命(さだめ)というヤツだ・・」
地球連合、ロゴス、連合軍に従う軍人の皮肉を口にして、ネオが戦況を見ていく。
「そのことについてどうこういう権利はオレにはない・・ただ、上の命令に従って遂行するだけ・・」
ネオは割り切って、スティングのデストロイに目を向ける。
「お前にまたこんな戦いをさせてすまない・・これで終わらせる・・今度こそ・・!」
スティングに対して罪の意識を感じながらも、ネオは彼を戦わせたまま、自らも戦いに赴いた。
「アウル、ステラ、お前たちの無念、オレが晴らしてやるからな・・・!」
自分の部下を思うネオ。彼はステラがまだ生きていることを知らなかった。
「では行くぞ・・ここでザフトを討つ・・!」
ネオが気を引き締めて、ウィンダムも攻撃を開始した。
レジェンドがビーム攻撃を続けながら、レイはデストロイの動きをうかがっていた。
(やはりパワーがあるが、巨大のためにスピードはない。攻撃は当てやすい。)
デストロイの弱点を見出すレイ。レジェンドが立て続けにビームを放ち、デストロイに命中させていた。
「ちくしょう・・こうなったら!」
スティングが声を荒げて、デストロイがモビルアーマー形態に変形した。レジェンドがドラグーンからのビームを放つが、デストロイが展開した陽電子リフレクターに弾かれた。
「ビームを弾く!?オーブに現れた連合の機体と同じものか・・!」
レイがザムザザーを思い出して毒づく。
「だが、レジェンドの武器は、ビームだけではない。」
レイが冷静に判断して、レジェンドが2本のビームサーベルを手にして、柄同士を組み合わせた。
デストロイが放つビームをかいくぐり、レジェンドが詰め寄りビームサーベルを振りかざす。デストロイが傷を負わされて押される。
「物理攻撃までは防ぎ切れない。ビームでも打撃や切断に特化しているものならば、そのバリアは破れる。」
デストロイの弱点を見抜き、レイは勝機を見出す。
「ちくしょうが・・よくもやってくれたな!」
スティングがいら立ちを募らせ、デストロイが再び変形してビームを放つ。しかしレジェンドにことごとく回避される。
「スティング!」
そこへネオのウィンダムが駆けつけ、レジェンドにビームを放つ。レジェンドはこのビームをかわすが、レイは奇妙な感覚を覚える。
(この感じ・・あのときの・・・!)
そこへネオのウィンダムが駆けつけ、レジェンドにビームを放つ。レジェンドはこのビームをかわすが、レイは奇妙な感覚を覚える。
(この感じ・・あのときの・・・!)
レイがウィンダムを見つめて、緊張感を膨らませる。
(これは・・あの白い機体の坊主か・・・!)
ネオもレイの気配を感じ取っていた。彼はブレイズザクファントムのことを思い出していた。
(新しい機体に乗り込んだか・・それでも引くわけにはいかないな・・!)
思考を巡らせてから、ネオがレイと戦うことを決める。
(ヤツの攻撃が全て読める・・きっと、ヤツもオレの動きを読めている・・・!)
レイがネオの動きを直感して、心を揺さぶられる。
(だがこの機体の性能差、さすがに埋めようがない・・・!)
レジェンドはウィンダムを超えていると、レイは確信する。ビームサーベルのつばぜり合いの中で、レジェンドがウィンダムを押し込む。
「ぐっ!・・なんという力だ・・!」
レジェンドの力を痛感して、ネオがうめく。
「このヤロー・・お前の相手はこのオレだ!」
スティングがいきり立ち、デストロイがビームを放つ。レイが回避が間に合わないと判断して、レジェンドがビームシールドを展開してビームを防ぐ。
「隙を見せたな・・こっちにも運が回ってきたか・・!」
ネオが呟いて、ウィンダムもミサイルを発射してレジェンドを攻め立てる。
「くっ・・!」
レジェンドが防戦一方となり、レイが毒づく。
「レイ!」
カナタがレイに向かって呼びかけるが、イザナギの前に他のデストロイたちが行く手を阻んだ。
「さすがに多勢に無勢になってきたか・・・!」
カナタが危機感を覚えて毒づく。デストロイが出すビームに阻まれて、イザナギはレジェンドの援護に行けなかった。
イザナギとレジェンドが苦戦しているのを見て、タリアがルナマリアに出撃の指令を出した。
“ルナマリア、出撃よ。レイたちを援護して。”
「はい!」
タリアの言葉に答えて、ルナマリアが発進に備える。
(シン、私も戦うよ・・シンの分まで・・・!)
「ルナマリア・ホーク、コアスプレンダー、行くわよ!」
シンへの想いと決意を胸に秘めて、ルナマリアがコアスプレンダーで発進した。続けてチェストフライヤー、レッグフライヤー、フォースシルエットが射出されて、コアスプレンダーと合体してフォースインパルスとなった。
タリアの指示はアンジュたちのいる飛行艇にも伝えられた。
“サリアさん、あなたたちも出撃してください。”
「はい。ただしアーキバスとヴィルキスは修理が終わっていないので、ヒルダたちが先に出ます。」
タリアに現状を伝えるサリア。彼女とアンジュは腑に落ちないながらも、大気を余儀なくされていた。
「せいぜい高みの見物でもしてろよ。あたしらでケリを付けてやるからさ。」
ヒルダがサリアたちに強気な態度を見せる。
「あの巨大兵器の破壊力は、あなたたちも分かっているはずよ。油断しないように。」
「もちろん分かっているわ、サリアちゃん。」
サリアが注意して、エルシャが微笑んで答えた。
「行くよ、みんな!グズグズしてると置いてくよ!」
「そんなことになんないから安心しな!」
檄を飛ばすヒルダに、ロザリーが勝気に答える。
「パラメイル部隊、出るよ!」
ヒルダの掛け声とともにグレイブ、ハウザー、レイザーが飛行艇から発進した。
「私とヴィルキスだけでも行かせてよ・・!」
アンジュが不満を募らせて、メイに文句を言う。
「そうはいかないよ!今出ても十分に力を発揮できない!」
整備を続けているメイが彼女に言い返す。
「アンジュたちは少し待っていて。私たちも行くから。」
将馬と共にダイミダラーに乗った霧子が、アンジュに呼びかける。
「私たちは付近の一般人の避難誘導をするわ。エースじゃあんな大きなヤツに太刀打ちできないから・・」
「海潮ちゃんたちの分まで、オレたちもがんばってくるからな・・!」
エリナも言いかけて、隼人が海潮に声を掛けた。
「すみません・・こんなときに何もできなくて・・・」
「気にするな。みんなを守るのがオレたちの正義だ!」
自分の無力さを気にする海潮を励まして、隼人が意気込みを見せた。
「ダイミダラー・霧子6型、出ます!」
「エース部隊も出るぞ!」
霧子と隼人が掛け声を上げて、ダイミダラーとビッグエース、エースが飛行艇から出て降下した。
インパルスがビームライフルを手にして、レジェンドに迫るウィンダムを狙って射撃した。ウィンダムの1機がビームを当てられて落ちる。
「レイ、大丈夫!?」
「ルナマリア、お前も出てきたか・・」
ルナマリアが呼びかけて、レイが言いかける。
「あの機体・・エースくんも出てきたか・・!」
ネオがインパルスを見て、警戒心を強める。
「隊長、他のクロスの機体も出てきました!」
ウィンダムのパイロットがグレイブたちを見て声を荒げる。
「あの機体の相手は私がする!みんなは他のヤツらを仕留めろ!」
「了解!」
ネオが呼びかけて、他のウィンダムのパイロットが答える。ウィンダム、ザムザザー、ゲルズゲーがイザナギだけでなく、グレイブたちにも向かっていく。
「では行くぞ、エースくん!」
ネオが言いかけて、ウィンダムがインパルスに迫る。インパルスもビームサーベルを手にして、ウィンダムのビームサーベルとぶつけ合う。
「ん!?・・お前、今までのエースじゃないな・・!?」
その瞬間、ネオはインパルスのパイロットが変わっていることを直感した。インパルスとウィンダムが押し合って、互いに距離を取る。
「違うパイロットでも、あのエースくんみたいな力が果たして出せるかな・・!」
ネオが言いかけて、ウィンダムが飛びかかる。インパルスも迎え撃ち、再びビームサーベルをぶつけ合う。
ウィンダムが間髪置かずにミサイルを発射する。インパルスが盾を構えて、ミサイルを防ぐ。
「なかなかの腕だな。だが、あのエース君ほどじゃない・・!」
ネオがシンのことを考えて、ウィンダムがスピードを上げて旋回する。縦横無尽に動き出したウィンダムに、ルナマリアが一瞬動揺を覚える。
「ルナマリア、飛行していれば下からも攻撃されることを忘れるな!」
レイが呼びかけて、ルナマリアが頷く。彼女が冷静さを取り戻して、インパルスがビームライフルに持ち替えて構える。
インパルスとウィンダムがビームライフルを発射して、互いのビームを回避していく。
「このままじゃルナマリアとレイが・・!」
ルナマリアたちの危機に、カナタが焦りを噛みしめていく。
そのとき、上空からイザナギに向けてビームが飛んできた。カナタの駆るイザナギが動いて、ビームをかわした。
イザナギの前に、カンナの乗るイザナミが現れた。さらにアブルの黒龍神も来ていた。
「カンナ・・・!」
「ディメント・・こんなときに現れるなんて・・・!」
カナタとエルシャがカンナたちの登場に緊張を募らせる。
「何者だ、貴様ら!?我々の邪魔をするつもりか!?」
「それはあなたたち次第。私たちが倒したいのは、そこにいるクロスよ。」
声を荒げるパイロットに、カンナが冷静に告げる。
「とりあえず味方だと認識しておこう・・まずはクロスの排除が先決だ!」
「私と一緒にパラメイル部隊を殲滅することを提案する・・」
共闘を受け入れたパイロットに、アブルがヒルダたちへの攻撃を呼びかけた。
「アイツら、手を組みやがった・・!」
「面倒なことになった・・・」
連合軍に協力するアブルたちに、ロザリーが毒づき、クリスが不満を覚える。
「カナタ、ここであなたと決着を付けさせてもらうわ・・そしてイザナギが発揮した新しい力を、イザナミも使えるようにする・・・!」
カンナが野心を口にして、イザナミがイザナギと対峙する。
「こんな戦況が混乱している状態でも、君は力を高めることに固執するのか!?」
「他のことを気にしている暇はないのよ・・私は、世界を動かせるほどの力をつかむのよ・・!」
カナタが問い詰めるが、カンナは力への渇望に突き動かされて、制止を聞こうとしない。
「そこまで言い張るなら・・オレが君を止める・・そしてラブちゃんの前に来させて、謝らせてやる!」
カナタが怒りを膨らませて、イザナギがビームサーベルを手にして構える。
「イザナギを倒して、新しい力の秘密を手に入れる・・!」
カンナが鋭く言って、イザナミもビームサーベルを手にして飛びかかる。2機がビームサーベルをぶつけ合い、激しい衝撃を巻き起こす。
一方、黒龍神がデストロイ2機を伴って、グレイブたちに迫ってきた。
「テメェ、いい気になってんじゃねぇぞ!」
ヒルダが言い放ち、彼女のグレイブがアサルトライフルを発射する。黒龍神が白虎を発射し、ビームでアサルトライフルの弾丸を弾いた。
「うっ!」
ビームにアサルトライフルも破壊されて、ヒルダがうめく。
「こ、この・・!」
ヒルダがいら立ちを募らせて、グレイブがパトロクロスを手にする。ロザリーのグレイブとクリスのハウザーがアサルトライフルを構える。
「その程度の力でこの黒龍神に勝つことはできないよ・・」
アブルが呟き、黒龍神が白虎を発射する。ヒルダのグレイブがパトロクロスを振りかざして、ビームを弾く。
「いつまでもやられてるあたしらと思わないことだね・・!」
ヒルダが不敵な笑みを浮かべて、グレイブが黒龍神に飛びかかる。黒龍神は黒炎に持ち替えて、振り下ろされたパトロクロスを受け止めた。
「ぐっ!このっ!」
ヒルダが毒づき、グレイブがパトロクロスの持つ手に力を込める。しかし黒龍神も黒炎もビクともしない。
「やはり黒龍神には遠く及ばない・・あの白い機体なら張り合えるけど・・・」
「白い機体?・・ヴィルキスのことか・・・!?」
アブルの呟きを聞いて、ヒルダがいら立ちを膨らませる。
「どいつもこいつもアンジュばっか・・あたしらがいることを、忘れんなよな!」
ロザリーが不満をあらわにして、グレイブが黒龍神に向かって突っ込み、アサルトライフルを連射する。黒龍神が射撃をかわして、グレイブに一気に詰め寄った。
(や、やべぇ・・・!)
黒龍神に真っ二つにされると直感し、ロザリーが目を見開いた。
「ロザリーちゃん!」
そのとき、エルシャのハウザーがアサルトライフルを発射して、黒龍神をグレイブから遠ざけた。
「いけー、ブンブンまるー!」
ヴィヴィアンが叫び、レイザーがブーメランブレードを投げつける。黒龍神が黒炎を振りかざして、ブーメランブレードを弾き飛ばした。
「ウソー!?ブンブン丸がー!」
レイザーがブーメランブレードを受け止めるも、ヴィヴィアンが頭を抱える。
「5体揃っても私には敵わないとは・・・やっぱり白いのが出てこないと・・・」
アブルがため息をついて、黒龍神が黒炎を振りかざす。黒炎の刀身に炎が灯った。
「剣に炎が・・・!?」
「やべぇ・・みんな、よけろ!」
クリスが緊張を覚えて、ヒルダが呼びかける。
「玄武黒炎斬(げんぶこくえんざん)・・・!」
アブルが言いかけて、黒龍神が黒炎を振り下ろした。黒炎から灼熱の刃が放たれ、グレイブたちがいた場所を通り抜け、その先にいたザフトの飛行戦艦の1隻を真っ二つにした。
「えっ!?」
黒龍神の一閃の威力を目の当たりにして、エルシャが驚きを隠せなくなる。
「マジかよ・・・!?」
「あんなの当たったらバラバラになっちゃうよー!」
ロザリーが息を呑み、ヴィヴィアンが悲鳴を上げる。
「みんな、散開して!集まると全滅するわ!」
エルシャがとっさに呼びかけて、グレイブたちがアブルの注意を乱そうとする。
「力の差があるから、小細工は無意味・・」
アブルがまたため息をついて、黒龍神が黒炎を構えた。
クロスに優勢になっていることも、カンナたちが加勢してきたことも、ジブリールは喜びを感じていた。
「いいぞ、いいぞ!さすがのクロスも、これだけの機体が相手では手を焼かざるをえまい!しかもアイツらが我々に力を貸してくれている!」
笑い声を上げて、ジブリールがさらに戦況を見届ける。
「このまま押し切り、ミネルバを落とせ!そうすればザフトの指揮系統も乱れ、こちらの進撃もたやすくなる!」
「はっ!」
ジブリールが下した命令に、オペレーターが答えた。オペレーターたちがパイロットたちにジブリールの命令を伝えた。
「思い知るがいい、デュランダル・・最後に笑うのは、お前たちコーディネイターではなく我々であることを・・青き清浄なる世界のために!」
ジブリールが野心をむき出しにして、ザフトの打倒という決意を強めていた。
アブルに苦戦を強いられているヒルダたちに、アンジュは我慢の限界を迎えていた。
「本調子じゃなくていい!ヴィルキスで出るわ!」
「だからダメだって、アンジュ!やられちゃうよ!」
ヴィルキスに乗り込んだアンジュを、メイが呼び止める。
「今出ていかなくちゃ、ヒルダたちがやられるわよ!」
「アンジュ・・・」
怒鳴るアンジュにメイが戸惑いを覚える。
「すぐにハッチを開けなさい!でないとぶち破るわよ!」
「分かった!分かったから急かさないでよ!」
不満をぶつけるアンジュに言い返して、メイが飛行艇のハッチを開いた。
「ヴィルキス、行くわよ!」
アンジュの駆るヴィルキスが飛行艇から発進した。
(アンジュ・・・今の私は、何もできない・・敵わないと分かっていて戦うことも・・・)
サリアも何もできない自分の無力さを感じて、悔しさを膨らませていた。
「サリア・・・すぐにアーキバスを直すから・・・!」
彼女が困惑しているのを見てから、メイはアーキバスの修理を再開した。
黒龍神に対して防戦一方となっているヒルダたち。黒炎を構える黒龍神の前に、アサルトモードに変形したヴィルキスが駆けつけた。
「アンジュ!?」
「もうヴィルキスを動かせるの!?」
ヒルダとエルシャがアンジュに向けて驚きの声を上げる。
「いつまでもじっとしていられる私じゃないのよ!」
アンジュが言い返して、黒龍神に目を向ける。
「出てきたか、白い機体・・・」
アブルがヴィルキスを見て呟く。
「気を付けて、アンジュちゃん・・あの機体、かなりの力があるわ・・・!」
エルシャがアンジュに注意を呼びかけて、黒龍神が黒炎を構える。
「私たちに戦いを挑んでくるヤツは、どんなヤツでも容赦しない・・!」
アンジュが強気に言って、ヴィルキスがラツィーエルを手にした。
「あなたの力、ここでまた確かめさせてもらう・・・!」
アブルが言いかけて、黒龍神がヴィルキスに向かっていく。2機が黒炎とラツィーエルをぶつけ合い、激しい衝撃を巻き起こす。
「あなたも黒龍の炎を受けてみなさい・・」
アブルがアンジュに言いかけて、黒龍神の握る黒炎から炎が出た。
「アンジュ、その炎の一撃を受けたらヤバいぞ!」
ヒルダが黒龍神を警戒して、アンジュに呼びかける。
「だったら、出す前にアイツを倒すまでよ!」
アンジュは逃げずに、ヴィルキスが真っ向から黒龍神に向かっていく。ラツィーエルを黒炎にぶつけられて、黒龍神が一閃を繰り出せない。
(やはり他の機体とは違う・・この性能、間違いない・・・!)
(まだ完全に直りきっていない・・いつもよりパワーが出ない・・!)
ヴィルキスの力に脅威を覚えるアブルと、ヴィルキスが本調子でないことに毒づくアンジュ。ヴィルキスと黒龍神がラツィーエルと黒炎に力を込めて、互いに突き放す。
「ヴィルキスでも互角かよ・・アイツ、なんてヤツだよ・・!」
「いや、ヴィルキスの力はこんなもんじゃない・・まだ整備が完璧じゃなかったみたいだ・・!」
ロザリーが焦りを膨らませて、ヒルダがヴィルキスの状態を把握する。
(打ち損なったのも含めて2発。次に出せるのはあと1発かな・・)
黒龍神のエネルギー量を確かめて、アブルが焦りを噛みしめる。
(相手の動きを押さえて、確実に当てる・・・!)
彼女が思い立ち、黒龍神が白虎を発射してヴィルキスをけん制する。
「今のうちに玄武黒炎斬を・・・!」
アブルがヴィルキスの動きを見計らい、黒龍神が黒炎を構えた。
「させない・・・!」
クリスのハウザーが黒龍神を狙って、アサルトライフルを発射する。アブルが気付き、黒龍神が射撃を回避する。
「邪魔をして・・連合軍は何をしているの・・・?」
アブルがヒルダたちだけでなく、手こずっている連合軍にも不満を感じていく。
「じっとしていないで!的になりたいの!?」
「ア、アイツ、勝手なことを・・!」
彼女に文句を言われて、ウィンダムのパイロットも不満を覚える。
「しかし、クロスのいいようにされてもいい気がしない・・!」
「我々も攻撃だ!」
パイロットたちがいきり立ち、ウィンダムたちが攻撃を再開した。ウィンダムたちがビームライフルを発射して、グレイブたちを黒龍神から引き離す。
「これじゃアンジュがクロドラにやられちゃうよー!」
「こんなときに変なあだ名を考えんなよ!」
慌てるヴィヴィアンに、ロザリーがツッコミを入れる。
「さっさとそいつらを片付けて、あの黒いヤツを仕留めるぞ!」
ヒルダが呼びかけて、グレイブたちが連合軍との交戦を再開した。
ベッドから立ち上がったシンは、1人で医務室から出ようとしていた。
「待ちなさい!まだ戦闘を行える状態ではない!」
医務官が慌ててシンを呼び止める。
「行かせてください・・オレがやらなければ、みんなを助けられない・・!」
シンが言いかけて、ドックへ向かおうとする。
「たとえこの戦いに勝利できても、命を落とすことになりかねないぞ・・!」
「オレは死なない・・みんなを悲しませたくないから・・・!」
警告する医務官に、シンが自分の意思を口にする。彼の脳裏に微笑むステラの顔が浮かぶ。
自分が死ねばステラを悲しませることになる。シンの中で、生きようとする思いが強くなっていた。
「オレは行きます・・オレが、みんなを守る!」
シンが医務官の手を振り払って、ドックに向かって走り出した。体に痛みを感じていたシンだが、痛みに耐えて前進する。
「シン!お前、起きてて大丈夫なのか!?」
ドックに来たシンを見て、ヴィーノが声を上げた。彼はヨウランと共にシンのところへ駆けつけた。
「あぁ・・オレも行かないと・・・コアスプレンダーはどうした・・!?」
シンがコアスプレンダーがないことに気付いて、ヴィーノたちに問いかける。
「インパルスは今、ルナマリアが乗ってるんだ・・お前の代わりに、インパルスで出て・・!」
「ルナが、インパルスに!?」
ヴィーノの答えを聞いて、シンが驚愕する。彼らがドックにあるモニターを見て、ルナマリアの駆るインパルスを目にした。
「ルナはずっとインパルスの戦闘シュミレーションを続けてきた。インパルスで戦うことは大丈夫だけど・・」
ヨウランがルナマリアのことを口にする。この言葉を聞いて、シンは心を揺さぶられた。
(ルナ・・オレの代わりに、インパルスで・・・!)
インパルスを動かして必死に戦っているルナマリアに、シンは戸惑いを感じていた。
「あの機体・・新しい機体・・・!?」
シンはレジェンドも目にして、さらに戸惑いを感じていく。
「新しく導入された新型、レジェンドだ・・レイが乗っている・・!」
「レイが・・!」
ヨウランがレジェンドとレイのことを話して、シンが戸惑いを募らせていく。レジェンドもデストロイたちを相手に、決死の攻防を繰り広げていた。
「新型はそれだけじゃないぜ!あのデスティニーもそうだよ!」
ヴィーノがデスティニーのことを話して、シンが振り返る。彼はドックに収納されているデスティニーの姿を目の当たりにした。
「デスティニーはシンの新しい機体だ。操縦データもシンに合わせて調整されていた・・」
「それじゃ、オレがこのままこの機体に乗っても・・・!」
ヨウランからの話を聞いて、シンが改めて決意を固めた。
「オレも出撃する!すぐに機体のチェックをするぞ!」
シンがヨウランたちに呼びかけて、デスティニーに向かう。
「ダメだって、シン!まだ戦える体じゃ・・!」
「オレが行くしかない・・オレに行かせてくれ!」
ヴィーノが止めに入るが、シンは彼の手を振り切って、デスティニーに乗り込んだ。
“シン、発進は許可できないわ。今の状態では、あなたには戦闘はムリよ・・!”
シンのいるデスティニーのコックピットに向けて、タリアが通信で呼びかけてきた。
「オレが行くしか、みんなを守ることはできません!レイもルナも、アンジュも海潮も霧子も、カナタも・・!」
シンがタリアに言い返して、デスティニーで発進しようとする。
「オレは必ず生きて戻ります・・みんなと一緒に・・!」
“シン・・・”
揺るがない意思を示すシンに、タリアが戸惑いを浮かべた。
“もしも様子が違うと判断したら、撤退を指示する。分かったわね・・?”
「艦長・・はい!」
タリアの言葉を受けて、シンが笑みを浮かべて頷いた。
「シン、必ず帰ってこいよ!」
「ロゴスをやっつけて、みんな一緒に戻るって信じてるぞ!」
ヨウランとヴィーノが呼びかけて、シンが真剣な顔で頷いた。
(ありがとうございます、艦長・・ありがとう、ヨウラン、ヴィーノ・・・!)
シンが心の中でタリアに感謝する。
(オレの代わりに戦ってくれてるルナもありがとう・・・ステラ、オレたちも死なない・・君も死なせない・・・そのために、オレは今を戦う・・!)
ルナマリアとステラのことも考えて、シンが決意を強めていく。ミネルバのハッチが開かれ、デスティニーが発進準備を整えた。
「シン・アスカ、デスティニー、いきます!」
シンの駆るデスティニーがミネルバから発進した。デスティニーの背中の両翼から光の粒子が発せられて、光の翼を成していた。
ミネルバからデュートリオンビームを浴びて、消耗していたエネルギーを回復させていたインパルス。ミネルバに近づくデストロイとザムザザー、ネオのウィンダムをインパルスとダイミダラーが迎え撃つ。
「あの2種類の機体は、タンホイザーも防いでしまうバリアを出すことができる・・懐に飛び込んで攻撃するしかないわ・・!」
ルナマリアが霧子たちにデストロイとザムザザーの特徴を説明する。
「それならダイミダラーで直接飛び込んで、叩いていくしかないね・・!」
打開の糸口を見出して、霧子が頷いた。
「将馬くん、危険だけど、一緒に来てくれる・・・?」
「もちろんだ!霧子ちゃんやみんなが戦っているのに、オレだけ安全なところにいるわけにいかないよ!」
霧子が頼むと、将馬が真剣な面持ちで答える。
「それじゃ行くよ・・援護をお願い、ルナマリア!」
「分かったわ、霧子!」
霧子が呼びかけて、ルナマリアが頷いた。
「将馬くん・・!」
「霧子ちゃん・・!」
霧子と将馬が寄り添い合って見つめ合い、愛を強くする。愛がハイエロ粒子となって彼女から出て、ダイミダラーの力になる。
ダイミダラーが加速して、デストロイたちに向かっていく。デストロイが発射したスーパースキュラのビームを、ダイミダラーが左手からのビームで止めた。
インパルスがビームライフルを発射して、デストロイのバリアに当てて注意を引き付ける。
「今だよ!」
霧子がデストロイの隙を見つけて、ダイミダラーが右手を突き出した。指ビームがスーパースキュラに直撃して、デストロイの胴体を貫通した。
「バカな!?デストロイをいとも簡単に!?」
ウィンダムのパイロットがダイミダラーの力に驚愕する。
「だがヤツも隙ができたぞ!」
そこへザムザザーの1機が飛び込み、右のハサミでダイミダラーの左腕をつかんだ。
「しまった!」
「やられない!」
驚きの声を上げる将馬だが、霧子がハイエロ粒子を発して、ダイミダラーが腕に力を込める。しかしザムザザーを振り払うことができない。
「霧子!」
ルナマリアが叫び、インパルスがダイミダラーを援護しようとする。しかしネオのウィンダムがビームを放ち、インパルスは援護に行けない。
「このままじゃダイミダラーが・・邪魔しないで!」
「そうはいかない。これは任務なのでね・・!」
焦りを募らせるルナマリアだが、ネオは退こうとしない。
インパルスとウィンダムがビームサーベルを手にして、ぶつけ合いつばぜり合いを演じる。
さらにもう1体のデストロイが、インパルスとダイミダラーを狙ってスーパースキュラの発射体勢に入った。
「まずい!このままじゃやられてしまう!」
将馬が慌てて、霧子とルナマリアが焦りを募らせる。
そのとき、ウィンダムが腰にある短剣型爆弾「ステイレット」を出して、インパルスに命中した。
「うっ!」
インパルスが爆発に押されて、ルナマリアが衝撃に揺さぶられる。
「もらった!」
ネオがインパルスの隙を見つけ、ウィンダムがビームサーベルを振り上げた。
そのとき、1つのビームが戦場に飛び込んできた。ネオが気付き、ウィンダムが後ろに下がってビームをかわした。
「な、何っ!?」
突然のことにネオとルナマリアが驚く。インパルスの窮地を救ったのは、ミネルバから出撃したデスティニーだった。