スーパーロボット大戦CROSS
第30話「登場!将馬と霧子」
世界の融合による混乱は広がりつつあった。その不安を感じながらも、穏やかな日常が流れている場所もあった。
「ねぇ、今から映画見に行こうよ。今日公開されたばかりの恋愛モノなんだけど。」
クラスメイトに声を掛けられて、女子、喜友名霧子が振り向いた。
「ゴメン。これから用事があるの・・また今度誘って。」
霧子は苦笑いを見せて、再び歩き出した。
「霧子は恋とかに無頓着だよね。恋愛映画にも興味がないみたい。」
「もしかしたら、前に失恋して、それがトラウマになっていたりして。」
クラスメイトたちが霧子のことを気に掛けていた。
クラスメイトたちと別れて、霧子は1人下校していた。
「霧子ちゃーん!」
そこへ1人の男子がやってきて、霧子に声を掛けてきた。
「将馬くん、丁度こっちに来てたんだね。」
「丁度、霧子ちゃんを見かけてね。」
男子、天久将馬に霧子が答える。2人は出会えたことを喜んでいた。
「ゴメンね、将馬くん。付き合っていることを学校では内緒にするって言って・・」
「ううん。僕は気にしていないよ。こうして霧子ちゃんと会う楽しみが増すってことだから・・」
謝る霧子に将馬が気を遣う。
(今日こそ・・今日こそ告白しよう・・霧子ちゃんに、僕の想いを・・・!)
将馬が心の中で、霧子に対する想いを確かめていた。
(このまま・・このままずっと穏やかに過ごしたい・・将馬くんと一緒に、穏やかな時間を・・・)
霧子も心の中に正直な願いを秘めていた。
街道の真ん中にある広場で、霧子が足を止めた。彼女の前に現れたのは一雄だった。
「見つけたぞ、喜友名霧子。お前に話がある。」
一雄が真剣な面持ちで、霧子に声を掛けてきた。霧子は深刻な表情を浮かべて、一雄から目をそらす。
「何ですか、あなたは?霧子ちゃんの知り合いですか?」
将馬が一雄を不審に感じて問いかけてきた。
「部外者は関わる必要のないことだ。これは私と霧子の話だ。」
一雄は表情を変えずに将馬に言い返す。霧子は一雄との対話に消極的だった。
「霧子ちゃんは困っています!ムリに話をするのはよくないです!」
「今は一刻の猶予もないのだ。彼女がいなければ・・!」
「事情は分からないですが、霧子ちゃんが関わりたくないことに、無理やり巻き込まないでください!」
「だから、部外者には関係のないことだと・・!」
不満を言う将馬に、一雄も不満を感じていく。
「霧子ちゃん、行こう・・!」
「う、うん・・」
将馬は霧子の手を握って、2人で一雄の前から走っていった。
「おい!待て、霧子!」
一雄が呼び止めるが、霧子たちは止まらずに去っていった。
「孝一と恭子がいなくなった今、霧子が必要だというのに・・・!」
霧子を呼ぶことができず毒づく一雄。彼は霧子をプリンスの戦力にしようと考えていた。
タマキの死を弔うカナタたち。ラブとモモカがシクザルドームに花を供えた。
「ありがとうございました、メイさん・・私たち、これからも続けていきます・・世界を元に戻す戦いを・・・」
ラブがタマキに向けて決意を口にする。
「マナの光でも、死んだ人を生き返らせることはできません・・命を失ったら、助かる見込みはありません・・・」
「モモカさんやみんなが自分を責めることはないです・・悪いのは、メイさんを助けるどころか助けられてしまった、弱い私ですから・・・」
悲しい顔を浮かべるモモカを励まして、ラブが自分を責める。
「そんなことはありません。ラブさんの力は私のマナの光を大きく超えていました。それにカナタさんもイザナギで戦いを続けています。」
モモカが微笑んでラブを励ました。
「パイロットはパイロットのやるべきことがありますし、それ以外にもやるべきことはあります。私たちは、それぞれの場所で尽力すればいいのです・・」
「そうです、ラブさん。僕たちのできることを、これからもやっていきましょう。」
モモカに続いてジョエルも呼びかけてきた。元気付けられたラブが、カナタに目を向けて互いに頷き合った。
カナタたちはその後、ミネルバと飛行艇に戻った。カナタはタリア、サリア、魅波とこれからのことを話し合っていた。
「カナタくん、ゼロス博士の行方に関する情報は、他にはないのですか?」
「はい・・シクザルドームの研究室もコンピューターも調べてみたのですが、博士の居場所の手がかりは何も・・」
タリアが追いかけて、カナタが顔を横に振る。
「シクザルドームからも情報が得られなかった・・また途方に暮れることになりましたね・・」
サリアが判断が下せず、深刻さを感じていく。
「ディメントと連合軍の動きはどうなっているのですか?」
「どちらも動きは見られません。現在、他の部隊が捜索を続けています。」
タリアが問いかけて、メイリンが報告をする。
「ディメント、連合軍、ドラゴン、ペンギン帝国、アークエンジェル・・警戒すべき相手が多すぎる・・・」
カナタが深刻さを募らせて、両手を強く握りしめる。
「落ち着くのよ、カナタくん。敵を撃退し、世界を元に戻そうと考えているのは、私たちも同じよ。」
タリアに励まされて、カナタが小さく頷いた。
「ゼロス博士も、引き続き捜索隊が捜索しているわ。私たちは戦いに備えて、万全を期すのよ。」
タリアが呼びかけて、サリアと魅波が頷いた。
「特にカナタくん、あなたはこの前発揮した力は、極力使わないほうがいいわ。あの力はあなたたちにとっても未知のもの。少なくともエネルギーの消耗が激しく、使いすぎればイザナギの活動に支障が出るわ・・」
「分かっています・・もしもあのとき、カンナたちが撤退しなかったら、オレたちはやられていました・・・」
タリアからの注意に答えて、カナタがカンナとの戦いとディメンションバーストのことを思い出す。
(メイさんの思いをムダにしないためにも、この力、慎重に使わないと・・カンナを止めるため、世界を元に戻すため、この力、まだ失うわけにいかない・・・)
タマキのことを思い、カナタはディメンションバーストを慎重に扱うことを肝に銘じていた。
「グラディス艦長、プリンスから連絡はありませんか?」
サリアが恭子や一雄たちのことをタリアに聞いてきた。
「まだ連絡がないわ。恭子さんが療養中ということしか・・」
「となると、このまま私たちだけで、これからの戦いを続けることになるわね・・」
タリアの答えを聞いて、魅波がこれからのことを考える。
「今までのことはプラントに報告してあります。近いうちに、私たちに指令に届くはずです。」
「その間は修繕と休息ですね・・」
タリアの言葉を聞いて、サリアが頷いた。
(その休みのうちに、気持ちを落ち着かせるんだ・・そして、自分を見失わないようにするんだ・・・)
カナタが自分に言い聞かせて、ゼロスの行方が分かるのを待った。
一雄から離れた霧子が公園の出入り口で足を止めた。
「霧子ちゃん、大丈夫?・・とても不安になってたみたいだけど・・」
「うん・・ありがとうね、将馬くん・・将馬くんがいなかったら、私・・・」
心配する将馬に霧子が感謝する。
「霧子ちゃん、さっきの人と知り合いみたいだったけど・・・」
将馬が一雄のことを聞くと、霧子が深刻さを募らせていく。
(このことを話したら、将馬くんに本当の私を知られてしまう・・・)
霧子が将馬のことを思って、話をすることをためらう。
「霧子ちゃん・・言いたくなければいいよ・・霧子ちゃんにだって、秘密の1つぐらいあるし、それでも僕は、霧子ちゃんのこと・・・」
「将馬くん・・・」
気を遣う将馬に、霧子が戸惑いを覚える。彼女は将馬に心を動かされていた。
そのとき、霧子の体から突然ピンクの光があふれ出してきた。
「な、何だ!?」
「いけない・・こんなときに・・!」
将馬が驚き、霧子が異変の起きた自分に動揺する。
「どうしたんだ、霧子ちゃん!?この光は・・!?」
「将馬くん・・これは・・・!」
将馬に問い詰められて、霧子が困惑する。
「おー!すごいハイエロ粒子だぞー!」
そこへペンギンコマンドたちが現れて、霧子たちを取り囲んできた。
「お前たちは・・もしかして、あの噂のペンギン帝国!?」
将馬がペンギンコマンドたちを見て、緊張をふくらませる。
「これだけの量・・あのダイミダラーのパイロットに負けず劣らずのハイエロ粒子だぞ!」
「今のうちに何とかしなければ、大変なことになるよ〜!」
光を発している霧子を、ペンギンコマンドたちが警戒する。
「将馬くん、逃げて!あのペンギンたちに襲われたら大変だよ!」
「霧子ちゃん・・うん!」
霧子が呼びかけて、将馬が頷いた。2人は一緒に逃げようとして手を握り合った。
そのとき、霧子は将馬と手を取り合ったことに安らぎを感じていく。彼女は動揺を抑えて落ち着きを取り戻そうとしていた。
次の瞬間、霧子から出ていた光が弱まり出した。
「消えていく・・私の、ハイエロ粒子が・・・」
「ハイエロ粒子?・・霧子ちゃん、この光、一体何なの・・!?」
霧子の呟きを聞いて、将馬が疑問を投げかけてきた。
「将馬くん・・でも、このことを話したら、将馬くんも巻き込んでしまう・・・!」
「霧子ちゃん・・僕のことを気遣ってくれて・・・でも、霧子ちゃんが大変なことになっているのに、放っておくことはできないよ・・!」
躊躇する霧子を、将馬がさらに心配する。
「どんなに大変なことでも、僕は君を守ってみせる!何ができるか分かんないけど、霧子ちゃんを不幸にはさせない!」
「将馬くん・・・!」
必死に想いを言う将馬に、霧子が心を動かされていく。
そのとき、1体の巨大なロボが現れて、霧子と将馬の前に降り立った。
「えっ!?ペンギンのロボ!」
将馬がロボ「南極11号」を見て声を荒げる。続けてペンギンコマンドたちが再び現れて、彼らの前に立ちはだかった。
「囲まれた・・これじゃ逃げられない・・・!」
ペンギンコマンドたちに逃げ道をふさがれて、将馬が焦りを募らせる。
「将馬くん・・あなたには教えるね・・本当の私を・・・」
霧子が覚悟を決めて、将馬が戸惑いを募らせる。霧子が腕輪型のリモコンが着けられている左腕を掲げた。
「ダイミダラー、発進!」
霧子の呼びかけを受けて、プリンスの秘密基地から発進したロボが飛行して、彼女のそばに降り立った。
「あ、あれは、まさか、ダイミダラー!?」
「バカな!?ダイミダラーはリッツに倒されたはず!?」
「少し形が違う!別のダイミダラーということか!?」
ペンギンコマンドたちがロボ「ダイミダラー6型」を見上げて、緊迫を覚える。
「将馬くん、こっち!」
「えっ!?あ、うん!」
霧子が将馬を連れて、ハッチが開かれたダイミダラーのコックピットに入った。
「霧子ちゃん、まさか君は・・!?」
「うん・・私はダイミダラーのパイロット・・ハイエロ粒子を持つ1人なの・・・!」
戸惑いを感じていく将馬に、霧子が声を振り絞るように答える。ダイミダラーが南極11号に近づいていく。
「南極11号、ダイミダラーを倒せ!」
ペンギンコマンドの指示により、南極11号が大砲を発射する。ダイミダラーがハイエロ粒子を集めた右手を突き出して、砲撃を弾き飛ばした。
「つ、強い!」
「11号はリッツカスタム以外では最強の南極シリーズのはずなのに!?」
ペンギンコマンドたちがダイミダラーの力に脅威を覚える。
ダイミダラーが拳を振りかざして、南極11号に叩き込む。南極11号が両手を振りかざすが、ダイミダラーに弾かれていく。
ダイミダラーがさらに拳を繰り出して、南極11号を突き飛ばした。
「おのれ、ダイミダラー・・南極11号、南極ブラスターだ!」
ペンギンコマンドが呼びかけて、南極11号が大砲にエネルギーを集めていく。
「南極ブラスター、発射!」
ペンギンコマンドが南極11号の大砲から光線を発射した。
「将馬くん、しっかりつかまっていて・・!」
「う、うん・・・!」
霧子が呼びかけて、将馬が頷いて衝撃に備えた。
霧子がハイエロ粒子を放出して、ダイミダラーに集中させる。腰に備えていた特殊武器「ディスガイズ」が左腕に装着されて、マスクが外れた。
「ディスガイズ、エネルギーチャージ!」
ダイミダラーがディスガイズにハイエロ粒子を集中させて、威力を上げていく。ディスガイズから光の刃が発せられた。
「ダイミダラーCPスラッシュ!」
霧子が言い放ち、ダイミダラーが光の刃を振りかざした。南極11号の光線が刃によって両断された。
「なんと!?南極ブラスターが真っ二つにされただと!?」
「あれが破られたとなれば、もはやアレを使うしかない・・!」
ペンギンコマンドたちがダイミダラーに対して、焦りを募らせる。
「南極11号、ペンギンチェンジだ!」
ペンギンコマンドの命令で、南極11号が変形を始める。両手にドリルが出て、足が伸びた。
「行け、南極11号!今度こそダイミダラーを倒せ!」
ペンギンコマンドが呼びかけて、南極11号が一気にスピードを上げた。南極11号が振りかざした両手のドリルを、ダイミダラーが光の刃で受け止めた。
ダイミダラーが光の刃を振りかざして、南極11号の左腕を切り裂いた。
「バカな!?これでも勝てないだと!?」
「まずい!これ以上は危険だ!撤退だ!」
危機感を募らせるペンギンコマンドたちが慌てて逃げ出す。南極11号も元の形態に戻って、ダイミダラーから離れていった。
「勝った・・霧子ちゃん、勝ったんだね・・・!」
将馬が撤退する南極11号を見送って、霧子に声を掛けた。霧子からあふれていたハイエロ粒子が治まっていく。
「将馬くん、ゴメンね・・大変なことに巻き込んでしまって・・・」
霧子が悲しい顔を浮かべて、将馬に振り向いて謝ってきた。
「ううん・・でもビックリしたよ・・霧子ちゃんが、あのダイミダラーのパイロットだったなんて!」
将馬が答えて、霧子に感動の眼差しを送った。
「将馬くん・・・私は、この力を持つことをよく思っていなかったの・・将馬くんやみんなのように、普通の生活がしたかったの・・」
「霧子ちゃん・・・」
霧子が自分の正直な思いを告げて、将馬が当惑を浮かべる。
「だから将馬くんたちにダイミダラーのことやこの力のことを話せなかった・・あなたたちを巻き込みたくなかったから・・・」
「・・・ありがとう・・僕たちにそこまで気を遣ってくれて・・・」
想いを伝える霧子に、将馬が感謝をした。
「霧子ちゃんは優しいね。それでいて強い・・僕も、そんな人になれたら・・・」
「そんなことないよ!将馬くんだって優しい!・・私のこと、何度も励ましてくれた・・!」
将馬に褒められて、霧子が動揺する。消えていた彼女のハイエロ粒子の光が再びあふれ出した。
「えっと、これは・・興奮すると出てしまうというか・・いつもそれで悩んでいて・・・!」
「だから、あまり人に関わる様子がなかったんだね・・特に恋愛とかに・・・」
慌てて説明する霧子に、将馬が納得する。
「でもどうして僕とは・・・」
「よくは分からないけど・・将馬くんといると、気分が落ち着くというか・・」
将馬が疑問を投げかけると、霧子が自分の気持ちを確かめていく。
「私、この光が出てしまうことに悩んできた・・でも、将馬くんのそばにいると、光があまり出なくなったの・・」
「それって、どういう・・・」
「ううん、将馬くんを利用したとか、そんなんじゃない・・本当に、将馬くんのことが・・・」
互いに投げかけた言葉に動揺する将馬と霧子。2人が見つめ合うと、戸惑いを募らせていく。
「ダイミダラーに乗ったということは、また任務に戻る気になったと思って間違いないか?」
そこへ声が掛かり、霧子たちが外に目を向けた。ダイミダラーの前に一雄が現れた。
「又吉長官・・・」
「話がある。そばにいる男子学生にも付き合ってもらう。」
霧子が真剣な面持ちを浮かべて、一雄が呼びかけた。霧子と将馬が目を合わせて、小さく頷いた。
霧子と将馬の乗ったダイミダラーがプリンスの格納庫に戻った。2人をより子たちが迎えた。
「霧子ちゃん、戻ってきたんだねー!もう、どこで何をやってたのよ〜!」
そり子が霧子に詰め寄って、不満を言ってきた。
「すみません・・でも私、戦いばかりの時間が辛くなって・・・」
霧子が謝って、そり子たちにも心境を打ち明けた。
「その辺にしときなさいよ。霧ちゃんには霧ちゃんの事情や気持ちがあるんだから・・」
より子がなだめてきて、そり子が腑に落ちないながらも小さく頷いた。
「ところで霧ちゃん、その子は誰なの?」
より子が将馬に目を向けて、霧子に問いかけた。
「天久将馬くんです。私と同じ高校に通っています・・」
霧子が照れながら、将馬を紹介する。
「もしかして、霧ちゃんの彼氏ってヤツかな〜?」
より子が妖しく微笑んで、将馬に顔を近づけてきた。彼女に近づかれて、将馬が動揺して後ずさりする。
「そうなの?ということは2人で、あんなことやこんなこと、やっちゃったりするのかな?」
せわし子も問いかけてきて、将馬と霧子が顔を赤くする。
「な、何を言っているんですか!?霧子ちゃんに失礼なことは何も・・!」
「そうですよ、せわし子さん!失礼なことを言わないでください!」
将馬と霧子が慌ただしくせわし子に注意した。
「今は真面目な話をしなければならないときだ。」
一雄がやってきて、より子たちに声を掛けてきた。
「長官・・・」
霧子が思いつめた面持ちで一雄に言いかける。
「私はあなたたちの言いなりになるつもりはありません。ただ、ペンギン帝国に将馬くんが襲われるのがイヤだから・・・!」
霧子が一雄に正直な考えを口にした。彼女は将馬を守るために、ダイミダラーに乗って戦う決意をしたのである。
「お前の考えは聞いた。だが我々の前に立ちはだかる敵は、ペンギン帝国だけではない。」
「えっ・・!?」
一雄が打ち明けた話に、霧子が当惑を覚える。
「地球連合、ミスルギ皇国、虚神会を始めとした復讐の国や組織が結託した連合軍、異次元から現れるドラゴンも、我々の敵として立ちはだかっている。」
一雄は連合軍とドラゴンのことを霧子たちに伝えた。
「連合、ドラゴンって・・何を言っているんですか・・!?」
「信じられないだろうが、これは事実だ。実際、我々は先日まで、異世界の戦士たちと共闘して戦ってきた・・」
疑問を覚える将馬に、一雄が今までの戦いについて語っていく。
「だがダイミダラー2型は破壊され、パイロットの1人が行方不明となってしまった・・」
「だから、霧子ちゃんにまた戦えっていうんですか!?・・そんなの、都合がよすぎます!」
一雄たちの考えに将馬が反発してきた。
「しかしペンギン帝国や連合軍に対抗するには、霧子くん以外に戦える者がいないのだ・・」
「だとしても、私は私の意思で戦います・・将馬くんを守るために、その敵と・・・!」
戦いへの復帰を求める一雄に対し、霧子が自分の意思を貫く。
「霧子ちゃん・・・」
将馬が霧子に目を向けて、戸惑いを募らせていく。
「将馬くん・・・」
霧子も将馬と目を合わせて、互いに見つめ合う。
「何なんだ、この2人は・・・何だかよく分からんが・・・」
愛情を膨らませている2人を見て、一雄が声を振り絞る。
「すごくムカムカするぞ〜・・!」
いちゃついている霧子と将馬に不快感を覚えて、一雄が首をかきむしるしぐさをしていた。
シクザルドームで休息を取っていたタリアたち。その最中、ミネルバにプリンスからの通信が入った。
「新しいダイミダラーとパイロットですか?」
“そうだ。ダイミダラー6型を再び導入し、そのパイロットも戻ってきて、そちらに送る算段も付けた。”
タリアが聞き返して、一雄が霧子たちについて説明をする。
“ダイミダラーとファクターをそちらへ送る。ミネルバの現在位置はどこだ?”
「シクザルドームにいます。翌朝に出発する予定です。」
“そうか。それまでにはそちらへ到着できるはずだ。2人とダイミダラーをそちらへ送る。”
「分かりました。お待ちしています。」
霧子と将馬、ダイミダラーが来ることを聞き入れて、タリアは連絡を終えた。
「新しいダイミダラーとパイロットがこちらに来るのですね。」
アーサーが声を掛けて、タリアが頷いた。
「ただし、そのパイロットはプリンスに完全に従っているわけではないわ。私たちと行動を共にすることを聞き入れたけど、私たちも2人に無理強いはできないわ・・」
「そのことを、シンたちにも伝えておきます。」
タリアが霧子と将馬を気遣い、アーサーが同意した。
タリアたちとの話し合いの後、カナタとラブはシクザルドームを探索して、ゼロスやリョータたちの行方を見つけようとしていた。
「ダメだ・・徹底的に調べたけど、これ以上は何の手がかりも出てこない・・・」
調べ尽くしても進展せず、カナタは大きく肩を落としていた。
「私たちが戻ってくる前に、メイさんはここを調べていたんだよ・・」
ラブがタマキのことを考えて、悲しい顔を浮かべる。
「シクザルドームにいても、博士たちのことは分かりそうにないよ・・」
「悔しいな・・オレたちだけでできることがないなんて・・・!」
ラブが言いかけると、カナタが無力さを痛感してため息をついた。
「まだこの中を探し回っていたんだね・・」
そこへ海潮がやってきて、カナタたちに声を掛けてきた。
「カナタ、ラブ、あなたたちは、これからも戦うつもりなんだよね?・・誰かの命を奪うかもしれない戦いを・・」
「海潮・・?」
海潮が口にした問いに、カナタが当惑を覚える。
「ザフトは軍隊。アンジュたちも軍人らしい訓練をしている・・人の命を奪って、それで平和になるのかな・・・?」
「オレとラブちゃんは、人殺しをいいこととは思ってない・・だけど誰にだって、味方も敵もみんな助けるなんてムリだよ・・神様じゃない限りは・・・」
不安を浮かべる海潮に、カナタが自分の考えを言った。
「シンたちもアンジュたちも、人殺しを望んでいるわけじゃない・・そうしないと止められない、大事なものを守れないと思っているだけなんだ・・・」
「でも、そんな形で戦いを終わらせようとしても・・・」
シンたちの心情を信じるカナタだが、海潮は納得していない。
(人が死ぬことをよしと思うヤツなんて、人の心を持っているならまずいない・・オレたちも辛いし、シンたちもそう思っているはずだ・・・!)
自分たちが命の大切さを理解していると、カナタは信じ続けていた。
クロスの反撃にあい、撤退を余儀なくされた連合軍。ジュリオたちと別れたネオたちは、ロシア国内の連合の基地に立ち寄っていた。
「他の戦力と共闘してもこの有様か。情けないことだ・・」
自分たちの不甲斐なさを呟いて肩を落とすネオ。
「仕方ありません。我々と同様、敵も共闘しているのですから・・」
「仕方ないか・・そんな言葉で片付けられるほど、短絡的ならいいのだがな・・」
兵士が弁解するが、ネオは皮肉を感じることになった。
「そこで新型の導入が決定しました。こちらに収納されています。」
「連絡してきたときに言っていたヤツか。パイロットも休息と調整を終えている。」
兵士の報告を聞いて、ネオが答える。彼らはスティング、ステラを連れて格納庫へ向かった。
格納庫には1機の機体が置かれていた。従来の機体を上回る巨体の機体である。
「これか、例の新型は。」
ネオがその機体を見上げて呟く。
「“デストロイ”。ノアローク大佐にはこの機体を使い、ザフト、およびクロスの殲滅をせよとのご命令です。」
兵士の説明を聞いて、ネオが頷いてステラに目を向けた。
「ステラ、これがお前の、新しい機体だ。」
「ステラの・・新しい・・?」
ネオが呼びかけて、ステラがデストロイを見上げる。
「ステラもこれでまた、戦わないとな・・でないと、怖いものが来て、オレたちを殺す・・」
「殺す?・・ステラも?・・ネオも・・・!?」
「そうだ・・・」
「イヤ!・・そんなのイヤ・・・!」
深刻な面持ちで言いかけるネオの言葉を聞いて、ステラが怯える。
「ならやらないとな・・怖いものはみんな、失くしてしまわないと・・・」
「怖いもの・・失くす・・・うん・・・」
ネオに投げかける言葉に、ステラ落ち着きを取り戻しながら、小さく頷いた。
「何でオレじゃなくてステラなんだよ!?・・オレも動かしたいのに・・!」
スティングが自分ではなくステラがデストロイを動かすことに納得いかず、不満を見せる。
「文句を言うな、スティング。お前よりステラのほうが相性がいいんだ。それにお前にはまだカオスがあるだろ?」
ネオがため息まじりに言って、スティングをなだめる。
「デストロイ、発進準備完了です!」
兵士がデストロイの起動を確認して、ネオたちが離れる。
「よし!オレたちも出るぞ!スティング、いいな!?」
「分かったよ、ネオ!」
ネオが呼びかけて、スティングが渋々聞き入れる。2人もそれぞれの機体に乗り込んだ。
「ネオ・ノアローク、ウィンダム、出るぞ!」
「スティング・オークレー、カオス、発進する!」
ネオのウィンダム、スティングのカオスが発進する。ステラの乗ったデストロイも基地から動き出した。