スーパーロボット大戦CROSS
第27話「散華の海」
キラのフリーダムによって、アスランのセイバーは破壊された。その直前、キラはセイバーから出たアスランを救出していた。
しかしその瞬間は周りには見えていなかった。
「そんな!?・・アスラン・・アスランまで・・・!?」
空に散ったセイバーを目の当たりにして、シンが愕然となる。
「ハイネさんだけじゃなく、アスランさんまでやられるなんて・・・!?」
「何で・・何でそこまで勝手でひどいことを・・・!」
アスランが倒されたことに、エルシャも海潮も驚きを隠せなくなる。
「アイツ・・フリーダム!」
激高したシンの中で何かが弾けた。彼の感覚が研ぎ澄まされて、インパルスの動きが機敏になる。
インパルスがフリーダムを追おうとするが、アビスが放つビームに妨害される。
「逃がすかよ!お前の相手は僕だぞ!」
アウルが強気に言って、アビスがさらにビームを放って、インパルスを狙う。
「コイツらも・・!」
シンがいら立ちを募らせ、インパルスがビームをかわして、ビーム砲で反撃する。アビスは水中を駆け回り、ビームをかいくぐる。
「今日こそ落とす!」
アウルが言い放ち、アビスが海上に飛び出して、インパルス目がけてビームランスを振り下ろす。シンが反応し、インパルスが紙一重でビームランスをかわす。
インパルスがデファイアントを手にして、アビスが続けて振りかざすビームランスを受け止める。
「いい加減に見飽きてんだよ、その顔!さっさとやられちゃいなよ!」
アウルもいら立ちを膨らませて、アビスがインパルスを押し切ろうとする。インパルスが体勢を崩して、海上で押される。
「もらった!」
アビスがビームを一斉発射する。インパルスもビーム砲を発射するが、2機のビームはすれ違い、互いに砲門に命中させられる。
シンが目つきを鋭くして、インパルスがとっさにデファイアントをアビス目がけて投げつける。
「アウル!」
そこへステラのガイアが飛び込み、ビームブレイドでデファイアントを弾いた。
「くっ・・メイリン、フォースシルエットを!」
“はいっ!”
シンが呼びかけて、メイリンが答える。ミネルバから射出されたフォースシルエットと、インパルスがブラストシルエットと入れ替える。
「コロコロ姿を変えたところで!」
アウルがあざ笑い、アビスがビームランスを構える。
「アイツ、倒す・・怖いもの、なくす・・・!」
ステラも言いかけて、ガイアもビームライフルを手にして、インパルスを狙撃する。シンが反応し、インパルスが加速してビームをかわす。
インパルスがビームライフルを連射して、ガイアのビームライフルを破壊した。
「そんな!?」
簡単に負傷されたことに、ステラが驚愕する。
「私を・・私をよくも!」
ステラがいきり立ち、ガイアがビームサーベルを手にしてインパルスに飛びかかる。インパルスもビームサーベルを振りかざして、ガイアとサーベルをぶつけ合う。
「お前たちも許せないが・・アイツも・・フリーダムも許せない!」
シンが怒りを募らせて、インパルスがガイアのビームサーベルを押していく。
「ぐっ!」
ガイアが突き飛ばされて、ステラが衝撃に揺さぶられてうめく。
「ステラ、お前だけにやらせるかよ!」
アウルが言い放って、アビスがビームを発射する。インパルスは素早く動き、アビスのビームをかいくぐっていった。
激しさを増していく戦いに、孝一はいても立ってもいられない気分に駆られていた。
「おい、恭子!オレたちも発進しようぜ!」
「まだよ!もう少し移動すれば、島の近くに来る!」
孝一が呼びかけるが、恭子が飛行艇の小さな島のそばを進んでいるのを確認してなだめた。
「よっしゃ!あそこならダイミダラーが思い切り動けるぜ!」
孝一も島に目を向けて、笑みと意気込みを見せる。
「孝一くん、島の海岸を見て!ペンギンロボが!」
「何っ!?」
恭子が指さして、孝一が目を凝らす。島の海岸にリッツカスタムが移動して、ウィンダムを撃墜させていた。
「アイツはオレたちが相手しなくちゃな!」
「ダイミダラー、発進します!」
不敵な笑みを浮かべる孝一と、掛け声を上げる恭子。ダイミダラーが飛行艇から出撃して、リッツカスタムのいる海岸に向かった。
「あれはダイミダラー!やっと出てきたね!」
リッツカスタムがダイミダラーに振り返り、リカンツが喜びを感じていく。
「パワーアップしたチンと南極8号の力を見せてやるよ!」
「次は負けねぇ!あのときからオレもパワーアップしてんだからな!」
リカンツと孝一が言い合って、ダイミダラーがリッツカスタムに向かって左手を突き出す。リッツカスタムが後ろに動いて回避する。
リッツカスタムが胸部からミサイルを連射する。ダイミダラーが左手からハイエロ粒子のバリアを発して、ミサイルを防ぐ。
「このまま押し通す!」
孝一が言い放ち、ダイミダラーがバリアを張ったまま前進する。ダイミダラーがバリアをリッツカスタムに押し当てた。
「チンも負けないよー!」
リカンツが言い返して、リッツカスタムが負けじと押し返す。激突の衝撃で、2機が突き飛ばされて引き離される。
「次は負けねぇって言ったはずだぜ!」
「負けないのはこっちのセリフよ!ペンギンの底力はまだまだなんだから!」
孝一とリカンツが言い放ち、ダイミダラーとリッツカスタムが再び激突しようとした。
そのとき、ダイミダラーたちのいる島の空で、空間の歪みが起こった。その穴の中からドラゴンの群れと3機の機体が出てきた。
「あれはドラゴン!こんなときに出てくるなんて!」
「しかも、アルゼナルに出てきた赤いヤツもいるぞ!」
恭子と孝一がドラゴンたちと焔龍號を見て声を荒げる。他にも2体の青と緑の機体もいた。
ドラゴンたちとともに空間を超えて現れた焔龍號。サラマンディーネが混迷している戦況を確認する。
「ずいぶんと込み入った状況に飛び入りしてしまったようですね・・」
様々な勢力が入り乱れての戦闘に、サラマンディーネがため息をつく。
「サラマンディーネ様、いかがいたしますか?」
青い龍神器「蒼龍號」の操縦者、ナーガが指示を仰ぐ。
「我らの狙いは、我らに敵対する偽りの民、そして世界を動かすあの者です・・」
サラマンディーネが冷静に答えて、ヴィルキスに目を向ける。
「私はあの相手をします。」
「了解です!援護します、サラマンディーネ様!」
彼女の指示に、緑の龍神器「碧龍號」の操縦者、カナメが答えた。
焔龍號がウィンダムたちと交戦していたヴィルキスに向かっていく。蒼龍號、碧龍號も続いた。
キラがアスランを討ったと思い込み、カナタもキラへの怒りを感じていた。
「どうして・・どうしてお前は!」
怒号を放つカナタから光があふれ出し、イザナギから出てくる。
「アレは・・!?」
向かってきたイザナギに、キラが警戒を覚える。イザナギとフリーダムがビームサーベルを手にしてぶつけ合う。
「お前たちは、他のヤツをみんな倒して、自分たちが世界を思い通りにしようというのか!?」
「違う!僕は戦いを止めたいだけだ!だから武器を壊せば、戦いを止められる!」
問い詰めるカナタに、キラが言い返す。
「それでその機体は相手の格好の的になるだけだ!それじゃお前の考えと逆をしていることになるんだぞ!」
「それでも、このまま戦いが続いていくのを、黙って見ているなんてできない!」
カナタに怒りをぶつけられるも、キラは自分の考えを変えない。
「自分のわがままを貫くために力ずくで物事を進めて、それを綺麗事でごまかす・・そんなヤツに、これ以上好き勝手にさせるか!」
さらに怒りを膨らませるカナタ。イザナギのビームサーベルの刃が大きくなり、力が増していく。
キラが警戒を覚えて、フリーダムがイザナギから離れる。
「待て!」
カナタが叫び、イザナギがフリーダムを追っていく。そこへドラゴンたちが飛び込み、2機の前に立ちふさがった。
「これは!?」
「ドラゴン!?・・邪魔をするな!」
キラが声を荒げて、カナタが怒号を放つ。イザナギがビームサーベルを振り上げて、ドラゴンを切りつけようとした。
だがその瞬間、カナタが我に返り、イザナギがビームサーベルを止めた。
(ドラゴンは人間だった・・ドラゴンを討つのは、人殺しと同じ・・・!)
カナタがドラゴンと戦うことに迷いを覚える。彼はヴィヴィアンがドラゴンになったときのことを思い出していた。
次の瞬間、イザナギがドラゴンの1体の突進を受けて突き飛ばされた。
「ぐっ!」
カナタが衝撃に揺さぶられるも、イザナギが空中で体勢を整えた。
(迷ってる場合じゃない・・同じ人間でも、機体のパイロットと同じ・・そこまで気にしていたら、戦いができなくなる・・・!)
カナタが自分に言い聞かせて、ドラゴンとも対峙しようとする。
(これ以上留まっていたら、アスランも危険に巻き込まれる・・・!)
キラがアスランのことを気に掛けて、戦場から離脱しようとする。
「カガリ、1度離れて戻ってこよう。アスランをアークエンジェルに連れていかないと・・」
「ダメだ!オーブ軍が危機に陥っているのを放っておくことなんて、私にはできない!」
キラが呼びかけるが、カガリは聞こうとしない。
「カガリ・・・アスランを送ったらすぐに戻る・・それまで、危ないことはしないで・・・!」
キラがカガリに呼びかけて、フリーダムがアークエンジェルに戻っていった。
「オーブ軍・・・やめろ・・早く撤退するんだ・・・!」
カガリがオーブ軍にひたすら呼び続ける。彼女は悲痛さを募らせて、目から涙をこぼしていた。
サラマンディーネたちの参戦に、アンジュたちも海潮たちも気付いていた。
「あの赤いのがまた現れたの・・・!?」
「しかも似たようなメカが他に2機も来ている・・・!」
アンジュと海潮が焔龍號たちを見て呟く。
「何体出てきても、敵として向かってくるなら倒すだけよ!」
夕姫が言い放って、ランガが左手から砲撃を出す。焔龍號、蒼龍號、碧龍號が砲撃を回避する。
「あれはまさか、ランガ・・!?」
「あのバロウの神と呼ばれていたランガが、偽りの民と手を組んでいるのか・・!?」
カナメとナーガがランガを見て驚きを覚える。
「私たちの世界とは別の世界に存在しているランガなのでしょう。しかしこのランガも野放しはできません・・」
サラマンディーネが深刻さを感じて、ランガへの警戒心を強める。
「サラマンディーネ様はあの白い戦機を!ランガは私とナーガが討ちます!」
カナメがサラマンディーネに呼びかけて、碧龍號がランガに向かっていく。
「私もランガ討伐に向かいます。」
「お互い、十分に注意するように。」
ナーガも声を掛けて、サラマンディーネが注意を投げかけた。蒼龍號も碧龍號に続いてランガに攻撃を仕掛けた。
焔龍號が降下して、ヴィルキスの前に出た。
「お久しぶりですね。偽りの民の姫。」
「また私と戦おうというのね・・ここで決着を付けさせてもらうわよ・・!」
微笑みかけるサラマンディーネに、アンジュが鋭く言い返す。
そこへビームが飛び込み、ヴィルキスと焔龍號が後退してかわす。ウィンダムとムラサメがビームライフルを撃ってきた。
「どちらも我々の敵だ!」
「2機に集中砲火を浴びせるのだ!」
パイロットが言い放ち、ウィンダムとムラサメが射撃を続ける。
「邪魔よ!」
アンジュが不満の声を上げて、ヴィルキスが射撃をかわしてラツィーエルを手にする。ムラサメがラツィーエルに切り裂かれて落下する。
「あの機体よりも、あなたたちを先に倒さなければならないようですね・・」
サラマンディーネも半ば呆れながら、連合軍と対峙することになった。焔龍號も晴嵐を発射して、ウィンダムを撃ち落としていく。
「どちらもできる・・・!」
「しかし引くわけにはいかない・・オーブの未来のため、我々は戦わなければならない・・!」
パイロットたちがヴィルキスたちに脅威を覚えるも、引き下がろうとしない。指揮官であるユウナの指揮の下で戦うしかないと、オーブ軍のパイロットは思い込んでいた。
(申し訳ありません、カガリ様・・しかし我らには、この道しかないのです・・愚かな戦いに身を投げるこの道しか・・・!)
自分たちが誤った選択をしていることを自覚しながらも、オーブ軍のパイロットは連合軍の一員として戦い続けることにした。
蒼龍號と碧龍號がランガに攻撃を仕掛ける。ランガの左手からの砲撃を、2機は素早くかわしていく。
蒼龍號と碧龍號が天雷を手にして、ランガに振りかざす。左腕で天雷を受け止めるランガだが、2機に押されて突き飛ばされる。
「速い!こっちの攻撃が当たらない!」
「私に代わって!接近戦で倒してやるわ!」
焦りを噛みしめる夕姫に、魅波が呼びかける。
「しょうがないわね・・お姉ちゃん、お願い!」
夕姫が渋々聞き入れて、魅波がランガに意識を傾けた。
「ランガ、今度は私よ!」
魅波の意識が入って、ランガの目つきが変わり、右手も刃となった。
「ランガの姿が変わった・・!?」
「伝承通り、姿を変えられるようだ・・・!」
カナメとナーガが変化したランガを警戒する。
「行くぞ、カナメ!」
「うん!」
2人が声を掛け合い、蒼龍號と碧龍號が飛びかかる。2機の振り下ろす天雷を、ランガが両腕で受け止めた。
「そろそろこっちが攻撃する番よ!」
魅波が言い放ち、ランガが蒼龍號たちを押し返す。ランガが右手を振りかざして、刃を蒼龍號の天雷にぶつけた。
「強い・・この蒼龍號と互角とは・・・!」
ナーガがランガの力を痛感する。
「ナーガ!」
カナメの碧龍號が天雷を振り下ろしてきた。ランガが蒼龍號から離れて、天雷の一閃をかわした。
「しかもまだ力を隠している可能性がある・・本領を発揮する前に倒さなければ、手に負えなくなる・・・!」
「これ以上、厄介な相手が増えたらまずいもんね・・!」
ランガに対して緊張を募らせるナーガとカナメ。天雷を構える蒼龍號、碧龍號をランガが迎え撃った。
ガイア、アビスとの交戦を続けるインパルス。思うように攻められず、アウルがいら立ちを募らせていく。
「さっさと落ちろってんだよ!このヤロー!」
「お前たちは、人間の命を何だと思ってるんだ!?人の体を弄んででも、戦争して、何もかもムチャクチャにしたいのか!?」
怒鳴るアウルにシンが怒りをぶつける。
「ヘッ!何をワケ分かんないことを!」
アウルがさらにあざ笑い、アビスがビームランスを振りかざす。インパルスがビームサーベルを振り下ろして、ビームランスを押す。
「子供を使って兵器のようにして戦わせて・・人間のすることじゃない!」
「兵器のように!?・・あの場所・・・!」
シンの怒号を耳にして、アウルが動揺を覚える。彼の脳裏に昔の記憶がよみがえってきた。
「かあ・・さん・・母さん・・!?」
アウルが込み上げてきた記憶に動揺を覚える。
「母さんはどこなんだ!?・・母さん!」
記憶の中に現れた女性への感情を隠せなくなるアウル。彼の動揺はアビスの動きにも影響した。
アビスがインパルスに突き飛ばされて、海に落ちる。追撃に向かうインパルスを、ガイアが阻む。
「アウルは守る・・怖いもの、私が失くす・・!」
「お前も、いつまでこんなことを続けるつもりだ!?」
声を振り絞るステラに、シンが怒鳴りかかる。
インパルスとガイアがビームサーベルを何度もぶつけ合う。インパルスが力任せに攻めて、徐々にガイアを押していく。
「人の体を弄んで、さらに戦いを広げていく・・それがいいことだと本気で思ってるのか!?」
シンが怒鳴り、インパルスがビームサーベルを振りかざす。ビームサーベルを持つガイアの腕が切り裂かれた。
「お前たちのしていることで、どれだけの人が死ぬと思っているんだ!?」
問い詰めるシンの言葉を聞いて、ステラが目を見開いた。
「死ぬ・・死ぬ!?」
死への恐怖に襲われて、ステラが体を震わせる。
「死ぬのはイヤ・・死んじゃうはダメ・・・!」
体を震わせて自分を見失うステラ。ガイアの動きも鈍って、攻撃をかわすこともままならなくなっていた。
シンは戦意を強めたまま、インパルスがビームサーベルを振りかざした。インパルスの一閃が、ガイアのコックピットのハッチを切り裂いた。
シンがガイアにとどめを刺そうとした。そのとき、シンの視界に、コックピットの中にいるステラの姿が入った。
「なっ・・!?」
ステラがガイアを操縦していたことに、シンは目を疑った。インパルスもガイアへの攻撃が止まった。
(ステラ!?・・どうして君が・・・!?)
シンもステラを見つめたまま、動揺を隠せなくなる。
「いや・・死ぬ・・死ぬ・・イヤアッ!」」
頭を抱えて悲鳴を上げるステラ。
「どうしてそんなものに乗ってるんだ!?君は、地球軍のパイロットだったのか!?」
感情を込めて問い詰めるシンだが、ステラは死の恐怖に駆られて悲鳴を上げるばかりになっていた。
アウルとステラが混乱状態に陥っていることに、ネオも気付いた。
「いかん・・2人とも危険な状態だ・・すぐに2人を連れ戻せ!」
「ムリです!戦況が大きく混乱しています!」
ネオが呼びかけて、オペレーターが状況を報告する。
「私が出て連れ戻していく。全機、全艦は援護しつつ撤退の準備を!」
「了解!」
ネオがさらに指示を出し、オペレーターが答えた。
「ネオ・ノアローク、ウィンダム、出るぞ!」
ネオがウィンダムで出撃して、インパルスと交戦しているガイア、アビスと合流した。
「ステラ、アウル、すぐに戻れ!」
「ネ・・ネオ!」
ネオが呼びかけて、ステラが我に返る。
「アウル、お前もだ!」
「イヤだ・・僕は、母さんの所に行くんだ・・!」
ネオが続けて呼びかけるが、アウルは聞こうとしない。
「それを邪魔するアイツは・・アイツだけは!」
アウルが感情をむき出しにして、アビスがインパルスに向かっていく。シンもアビスに気付き、インパルスがアビスを迎え撃つ。
「よせ、アウル!・・完全に冷静さを失っている・・!」
呼び止めも聞かずに戦おうとするアウルに、ネオが毒づく。
「まずはステラを連れ戻す・・すぐにアウルを連れ戻すぞ・・!」
ネオはまずステラを連れ戻すことに専念した。ウィンダムがガイアを連合の母艦に連れ戻すと、アビスを連れ戻しに向かった。
リッツカスタムは調整によってリカンツの力をより感応するようになっていた。しかし彼女の力よりも、孝一のハイエロ粒子に磨きがかかったダイミダラーの力が上回っていた。
「どうなってるのよ!?チンもペンギンも強くなったはずなのに!」
「オレが全力を出せばこんなもんだぜ!」
不満を膨らませるリカンツと、勝ち誇る孝一。
「これで終わりにしてやるぜ!恭子!」
孝一が後ろから恭子の胸をわしづかみにした。彼は恭子の胸の乳房を指でピンポイントで撫でた。
「あ・・あぁぁ・・!」
瞬間的に激しい快感を感じて、恭子があえぎ声を上げる。
「師匠の教えが活きてきたぜ・・恭子もオレもビンビンに感じてきたー!」
興奮して叫ぶ孝一から、まばゆい光があふれ出した。強く濃いハイエロ粒子が彼から出て、ダイミダラーの力を上げた。
「ウソっ!?こんなにすごいハイエロ粒子が!?」
パワーアップを果たしたダイミダラーを見て、リカンツが驚きの声を上げる。
「くらえ、ペンギンロボ!フルパワー指ビームだー!」
孝一が言い放ち、ダイミダラーが突き出して左手から閃光を放出した。
「うわあっ!」
リッツカスタムが閃光を浴びて、リカンツが苦痛に襲われる。
(負けるわけにいかない・・帝王様のため、ペンギンのみんなのため、チンは負けるわけにいかないの!)
リカンツが痛みに耐えながら、全身に力を入れる。
(絶対に、ダイミダラーに勝つんだからー!)
激情のままに力を解き放つリカンツ。彼女の体からも強力なハイエロ粒子があふれ出して、リッツカスタムがダイミダラーを押し返していく。
「何っ!?」
リカンツの発揮した驚異の力に、孝一が驚愕する。
「消えろ・・消えちゃえ、ダイミダラー!」
怒号を放ち、怒りのままにハイエロ粒子を放出するリカンツ。リッツカスタムが目にも留まらぬ速さでダイミダラーに詰め寄り、嘴を突き立てていく。
「ぐあっ!」
「キャアッ!」
ダイミダラーがダメージを増して、孝一と恭子が絶叫と悲鳴を上げる。
「ちくしょう・・負けるかよ・・オレたちが負けるかー!」
孝一が力を振り絞り、ダイミダラーが左手からの光でリッツカスタムを押し返そうとする。2機の発するエネルギーが高まっていく。
「い、いかん!リッツカスタムのエネルギーが膨張している!」
デニスがリッツカスタムを見て緊迫を覚える。リッツカスタムもリカンツとともに暴走状態に陥っていた。
「リッツカスタムのエネルギーが、ハイエロ粒子ジェネレーターが限界突破しちゃうよー!」
「あれだけのエネルギーが膨らんで爆発すれば、この辺り一帯が吹き飛ぶぞ・・!」
マイケルとジェイクがリッツカスタムの限界の爆発を予感して慌てる。
「リッツだけでも助け出さないと・・!」
「あれだけのパワーの中に飛び込んだら、オレたちも無事でいられるかどうか・・・!」
サムがリカンツ救出を考えるが、ネルソンが不安を膨らませていく。
「フルパワー指ビーム!」
孝一がハイエロ粒子を振り絞り、ダイミダラーが左手から光線を放つ。リッツカスタムが真正面から光線を突き破ると、ダイミダラーに組み付いた。
「やべぇ!早く離れねぇと、ダイミダラーがバラバラになっちまう・・!」
「それだけじゃないかもしれない・・あれだけの力が制御できずに暴発したら・・・!」
危機感を覚える孝一だが、恭子もリッツカスタムの爆発を予感していた。
激しさを増していく混戦の中、ユウナはクロス討伐の好機を見出した。
「ヤツらは動揺している!今のうちに我らが連中を仕留めるのだ!」
ユウナが高らかにオーブ軍に指令を出す。彼はクロスに特攻を仕掛けようと考えていた。
「ユウナ様、ここからの任務、私のみで果たさせていただきます。」
「何っ!?」
艦長が告げた言葉に、ユウナが驚きの声を上げる。
「ちょっと待て!オーブの勝利が目前なのに、僕にここから降りろって言うのか!?手柄を独り占めするつもりか!?」
「クロス打倒には、ムラサメ隊だけでは足りません。タケミカヅチも攻め込まなければなりませんが、ユウナ様が危険にさらされることもあってはなりません。」
文句を言うユウナに、艦長が語りかける。
「ユウナ様を連れて、総員脱出だ!」
艦長は軍人たちに指示を出すと、ユウナに拳を叩き込んだ。ユウナが昏倒して意識を失った。
「しかし、現在のオーブに従った以上、もはや我らに戻る場所はありません!」
「我らも艦長と同行させていただきます!」
軍人たちが艦長に付いていこうとする。
「ならん!」
すると艦長が怒鳴って、軍人たちに命令を出す。
「既にない命と思うならば、生き残った者たちを連れて、アークエンジェルへ向かえ!真の指揮官の待つ艦へ!」
「艦長・・・了解しました・・・!」
「艦長、ご武運を・・・!」
艦長の言葉を受けて、軍人たちが答えて敬礼を送った。軍人たちは艦長を残して、ユウナを連れてタケミカヅチを脱出した。
艦長は1人タケミカヅチを操縦し、前進を始めた。
ステラはネオによって連れていかれたが、アウルは戦おうとする。記憶の中の母を追い求めて、彼はアビスを駆ってインパルスを攻め立てる。
「お前をやっつけて、僕は母さんのところへ行く!」
「何をワケの分からないことを!」
絶叫するアウルに、シンが怒鳴り返す。インパルスが突き出したビームサーベルが、アビスの左肩に突き刺さった。
「ぐっ!このっ!」
うめくアウルがさらに絶叫する。
「あれは、オーブの戦艦!?」
そのとき、シンがタケミカヅチが前進してきたのを目撃した。
「メイリン、ソードシルエットを!一気に叩き切る!」
“はいっ!”
シンが呼びかけて、メイリンが答える。インパルスがフォースシルエットと分離して、ミネルバから射出されたソードシルエットと合体した。
「これで終わりだ、オーブ!」
シンが言い放ち、ミネルバに向かうタケミカヅチに向かって、インパルスが降下してエクスカリバーを振り下ろす。
インパルスの一閃が、艦長のいるブリッジに叩き込まれた。タケミカヅチが爆発を起こして動きを止めた。
「これで終わりだよ!」
そこへアウルのアビスがインパルスに向かって突っ込んできた。シンが気付き、インパルスが身をひるがえしてビームランスをかわす。
インパルスがとっさにエクスカリバーを突き出した。その刃がアビスの胴体を貫いた。
「がはっ!」
アビスの致命傷の衝撃がコックピットにも及び、アウルがあえぐ。
「か・・かあ・・さん・・・!」
声を振り絞るアウルが、力尽きて前に倒れる。エクスカリバーが引き抜かれたアビスが、沈んでいくタケミカヅチの甲板から落ちて、海中で爆発した。
ステラのガイアを連れ戻して戦場に戻ってきたネオのウィンダム。
「アウル・・・!?」
アビスの撃墜を目の当たりにして、ネオが驚きを覚える。
「くっ・・間に合わなかったか・・・!」
彼がアウルの死を痛感して毒づく。
“大佐、10時の方向に高エネルギーの膨張を確認!ペンギン帝国のロボからです!”
そのとき、兵士からの報告がネオに伝わった。
「いかん!すぐにこの海域から離脱する!撤退だ!」
リッツカスタムの暴走とその高エネルギーを視認して、ネオが声を荒げて撤退を命ずる。連合の戦艦が戦場から離れていく。
「おい、ノアローク大佐、敵を前にして逃げ出すのか!?」
ジュリオがネオたちに向かって不満の声を投げかけてきた。
「あのエネルギーが爆発するようなことになれば、近くにいれば無事ではすみませんぞ!」
ネオが忠告して、ジュリオもリッツカスタムのハイエロ粒子を目撃する。
「やむを得ん・・我々も下がるぞ!」
ジュリオが毒づいてから後退を命じた。エンペラージュリオ一世も海域から離れていった。
連合軍が引き上げて、1度攻撃を中断したヴィルキスと焔龍號。アンジュもサラマンディーネもリッツカスタムの暴走と光に気付いていた。
「この力・・私が封じなければなりませんね・・・!」
危機感を募らせるサラマンディーネが、焔龍號の収斂時空砲をリッツカスタムに向けて放とうとした。
「孝一、恭子、早くそこから離れなさい!木っ端微塵になるわよ!」
アンジュが孝一たちに避難を呼びかける。
「ダメだ・・ダイミダラーのダメージが大きくなっちまった・・・!」
孝一がアンジュに答えて、恭子に目を向けた。
「アイツを連れて、できるだけみんなから離れる・・恭子、おめぇだけでも脱出しろ・・!」
「孝一くん、あなた何を言っているの・・!?」
脱出を促す孝一に、恭子が驚愕する。
「ダメよ、孝一くん!そんなことしたら、孝一くんが!」
「心配すんな・・オレは死なねぇ・・オレはまだ、おめぇとのエロを味わい尽くしちゃいねぇからな・・・!」
不安をあらわにする恭子に、孝一が不敵な笑みを見せる。彼が再び恭子の胸の乳房を指で撫でた。
「あぁぁ・・!」
恭子が刺激を感じた瞬間、彼女の体からも光があふれ出した。
孝一がダイミダラーのコックピットのハッチを開けた。彼が光を押して、恭子を外へ出した。
「孝一くん!」
球状の光に包まれている恭子が、孝一に向けて叫ぶ。
ダイミダラーがリッツカスタムをつかんで、イザナギたちから離れていく。
「アイツ、爆発でみんなを巻き込まないように、わざと離れるつもりか・・!?」
ナーガがダイミダラーの動向を見て呟く。
「私たちも引き上げて、体勢を立て直します。」
サラマンディーネが指示を送って、焔龍號が収斂時空砲の発射を中断する。
「分かりました、サラマンディーネ様・・・!」
カナメが答えて、ナーガが頷いた。焔龍號、碧龍號、蒼龍號がドラゴンたちとともに撤退していく。
「アンジュ、私たちも離れないと巻き込まれるわよ!」
サリアに声を掛けられて、アンジュもダイミダラーから離れていった。
「あっ!恭子さん!」
カナタが空中にいる恭子を発見して、イザナギが救助に向かおうとした。
その瞬間、リッツカスタムが爆発を起こし、ダイミダラーと孝一がその閃光の中に消えた。恭子も爆発に巻き込まれたが、包まれている光によって守られていた。
カナタが声をうまく出せないまま、イザナギが手を伸ばす。イザナギから発した光が爆発の光を打ち消して、恭子を引きずり出した。
爆発に巻き込まれたことで、恭子はボロボロの姿で気を失っていた。ハイエロ粒子の光に守られたことで、彼女は消滅を免れた。
「恭子さん!しっかりしてください、恭子さん!」
カナタが呼びかけるが、恭子は目を覚まさない。
「孝一・・返事をしてくれ、孝一!」
カナタが呼びかけるが、孝一からの返事はない。
“カナタくん、あなたも帰艦してください。恭子さんの手当てを・・”
タリアからの通信がイザナギに届く。
「分かりました、グラディス艦長・・・!」
カナタが怒りと悲しみを噛みしめて答える。イザナギは恭子を連れて、ミネルバに戻っていった。