スーパーロボット大戦CROSS
第26話「乱舞!連合とペンギン」
シンたちに告げたアスランの言葉。友と対峙することを決意した彼に、シンは思わず息をのんだ。
「あなたが、フリーダムを倒すかもしれないっていうんですか・・!?」
シンが問いかけると、アスランは小さく頷いた。
「でもアスラン、アークエンジェルはあなたの仲間じゃ・・!?」
「よせ、ルナマリア。任務に私情を入れてはならない。」
アスランに心配を投げかけるルナマリアを、レイがとがめる。
「レイの言う通りだ。そのことで任務や戦いに影響が出たらいけない。まして一方的に攻撃をしてくるなら・・」
アスランが冷静にルナマリアに言葉を返した。
「相手の事情を聞かずに一方的に戦いを終わらせるやり方は、決して正しいことじゃない。その上で直接撃墜しようとせずに武器だけを削ぐ攻撃方法など・・」
キラの戦い方への不信感を浮かべるアスラン。
「あれで誰も死なずに済むと思っているんだろうか・・戦いの場で戦えなくなったら、何もできずに敵の格好の的になってしまうというのに・・・!」
カナタもキラの戦い方に疑問を抱いていた。一方的に力ずくで戦いを止めようとしても、解決どころか状況を悪化させるだけだと、彼も思っていた。
「グラディス艦長、アスラン、フリーダムへの対応のこと、ラブたちにも伝えておきますね。」
「あぁ。ありがとう。」
カナタがこれからのことをラブたちに伝えることを告げて、アスランが礼を言った。
(キラ、戦いを終わらせたいと思っているなら、お前もオレたちと力を合わせることができるはずだ・・・!)
もう1度キラと分かり合えると、アスランは信じていた。
ダイミダラーとクロスの打倒のため、南極8号・リッツカスタムはさらなる調整が施されていた。
「リッツ、今度こそダイミダラーを倒せるよう、リッツカスタムにあるものを取りつけたぞ!」
ペンギン帝王がリカンツにリッツカスタムについて告げた。
「“ハイエロ粒子ジェネレーター”。リッツ、お前の持つハイエロ粒子が、リッツカスタムのパワーを増幅させるのだ。」
「ありがとう、帝王様!チンは必ずダイミダラーに勝ってみせるよ!」
ペンギン帝王が説明をして、リカンツが感謝して意気込みを見せる。
「ただしジェネレーターもお前のハイエロ粒子も未知数だ。くれぐれも過剰に力を使うのは避けるのだぞ。」
「了解でーす!」
ペンギン帝王が注意を投げかけて、リカンツが明るく答えた。
「帝王様、人間どもが行動を開始する模様です。クロスと連合軍という連中です!」
ペンギンコマンドの1人がペンギン帝王に報告に来た。
「よし。我々も動く!人間どもに、我々の力を存分み見せつけてくれようぞ!」
「はい!」
ペンギン帝王が命令を出して、ペンギンコマンドたちが答えた。
「リッツカスタムの調整、完了しました!」
「よーし!早速チンが乗るよー!」
ペンギンコマンドがさらに報告して、リカンツがリッツカスタムに乗り込んだ。
「何だかすっごいパワーを感じる気がするよ・・・!」
リッツカスタムを試運転するリカンツが、その力を実感して戸惑いを覚える。
「よし!南極8号・リッツカスタム、出撃だ!」
ペンギン帝王の号令で、リカンツの駆るリッツカスタムが出撃した。
「マイケル、デニス、ジェイク、ジム、ネルソン、お前たちもリッツの援護のため出撃だ!」
「了解!」
ペンギン帝王は続けて指示を出して、マイケルたちがリカンツを追いかけていった。
武蔵野に着いてから一夜が過ぎた。カナタたちはミネルバ、飛行艇に乗ってシクザルドームに向かうことになった。
「ラブレ、ヴィヴィアン、体のほうは大丈夫・・?」
海潮が心配の声を掛けて、ラブレが小さく頷いた。
「私も元気だよ♪たっぷり寝たから元気100倍♪」
ヴィヴィアンが満面の笑みを浮かべて、明るく振る舞う。
「アンジュ、またヴィヴィアンがドラゴンになる可能性は否定できない。もしもそうなったときは、あなたがフォローするのよ。」
サリアが小声でアンジュに指示を送る。
「分かっているわ。次もうまくいくかどうかは分からないけど・・」
アンジュがため息まじりに答えて、ヴィヴィアンを見つめる。
「それに、今はドラゴンと戦うことに疑問を感じているのよ・・」
アンジュがメイルライダーとして戦うことへの疑問を、サリアに向けて口にした。
「いきなりふざけたことを言わないで。私たちの本来の目的は、ドラゴンの討伐よ。私たちがやらなければ、ドラゴンは世界を飛び回り、破壊することになるのよ・・」
「そうなってもいいわ・・私たちの世界なんて、みんな勝手な家畜ばかりだから・・」
注意をするサリアだが、アンジュは世界の人々を邪険に考える。
「ドラゴンを見つければためらわずに仕留める。躊躇や逃亡は許されないわ・・」
「躊躇なんてしないわ。敵に対してはね・・」
苦言を呈するサリアに、アンジュが悪ぶった態度を崩さずに言い返した。
「みんな、そろそろ出発するよ!」
メイがアンジュたちに声を掛けてきた。
「連合軍もだけど、この前出てきたのもまた出てくるかもしれない・・・」
クリスがキラたちのことを考えて呟いた。
「アイツらのせいで、こっちのおまんま食い上げだぜ!」
「あぁ!また出てきたら倍返しにしてやるよ!」
ロザリーがキラたちへの不満を口にして、ヒルダも敵意を強める。
「そのことだけど、そのフリーダムというモビルスーツの相手は、アスラン隊長が1人ですることになったわ。」
サリアがアスランのことをアンジュたちに伝えた。
「おいおい、そりゃねぇだろ、独り占めなんてよ!」
「フリーダムがかなり強いのは、私たちも十分に分かっているわ。それを1人で相手をするのは危険よ・・」
ロザリーが文句を言って、エルシャがアスランを心配する。
「話に聞いたんだけど、アスラン隊長とフリーダムのパイロット、キラ・ヤマトは友人同士だそうよ。向こうの真意を問いただして、考え直させるようね。」
サリアがアスランの考えを伝える。
「昔の友達だからって、いきなり攻撃してきたヤツが素直に聞いてくれたら、苦労はしないわよ・・」
アンジュが不満を込めてため息をつく。
「フェイスであるアスランが申し出て、グラディス艦長が了承したのよ。私たちに拒否する権利はないわ・・」
「ハァ・・あんまり期待しないでおくわ・・ハッキリしている敵は連合軍なんだから・・」
サリアが話を続けて、アンジュがまたため息をついた。
ゼロスに会えることを心から願うカナタとラブ。ゼロスやカンナ、リョータたちの心配をして、2人の心は大きく揺れていた。
「みんな、無事だよね?・・博士もタマキさんも、きっと生きている・・・!」
「あぁ・・誰がシクザルドームから連絡してきたかは分からないけど、今はそれだけが頼りなんだ・・だったらそれを頼りに行くしかない・・・!」
ラブとカナタがゼロスたちへの思いを口にする。
「カンナより先に博士を見つけて守らないと・・これ以上、カンナの好き勝手にさせてたまるか・・・!」
「カナタくん・・・」
カンナと敵対することを決めているカナタに、ラブが困惑する。彼女は姉であるカンナが傷つくことにも、辛さを感じていた。
ミネルバ、飛行艇共に発進準備が完了して、タリアはアーサーからその報告を聞いた。
「クロス、これより発進します。目標はシクザルドーム。」
タリアの指示がカナタたちに伝えられる。ミネルバと飛行艇が島原家から浮上して、武蔵野を後にした。
「さてと、私たちは情報収集よ。戻って各地の情報の整理をしないと。」
茗がミネルバを見送ってから、会社に戻っていった。彼女は独自に世界の動きをつかんで、タリアたちに伝えようとしていた。
ミネルバを追走するネオたち。彼らがミネルバの位置を突き止めた。
「ミネルバを発見しました!こちらへ向かってきます!」
オペレーターがネオに報告をする。
「ヤツらも我々に気付いて、先手を打とうとしてきたか。」
ネオもレーダーに目を向けて呟く。
「こちらもモビルスーツを出すぞ!発進準備!」
「はっ!」
ネオが呼びかけて、オペレーターが答える。ウィンダムが発進して、ミネルバに向かっていく。
「スティング・オークレー、カオス、発進する!」
「アウル・ニーダ、アビス、出るよ!」
「ステラ・ルーシェ、ガイア、出る・・」
スティング、アウル、ステラがカオス、アビス、ガイアで出撃した。
「よーし!ムラサメ発進だ!今度こそザフト自慢のミネルバに、引導を渡してやるぞ!」
タケミカヅチでは、ユウナが高らかにパイロットたちに指示を出していた。ムラサメも続いて続々と発進していった。
ネオたちやオーブ軍が動き出したのを見て、ジュリオが笑みを浮かべた。
「よし!我々も続くぞ!エンペラージュリオ1世、全速前進!」
ジュリオの号令で、彼らの乗る戦艦「エンペラージュリオ一1世」も動き出した。
日本列島を離れて海に出たところで、ミネルバは連合軍の接近を探知した。
「やはり私たちが動くのを待っていたわね・・」
タリアが悪い予測が当たったことに毒づく。
「第一級戦闘配備。各パイロットは出撃準備を。」
「了解。」
彼女が指示を出して、メイリンがミネルバ艦内と飛行艇に伝えた。
連合軍の追跡を迎え撃つべく、シンたちはそれぞれの機体に乗り込み、発進に備えた。
「シン、いいか?」
「何ですか、隊長?もうすぐ発進だっていうのに・・」
そんな中、アスランが投げかけた声に、シンがため息まじりに返事をする。
「オレは隊長としてはまだまだ未熟だ。お前たちに偉そうに言えたものじゃない。だからハイネのように、オレのことも隊長とかじゃなく、名前で呼び捨てにしていい。」
アスランが投げかけた言葉に、シンが戸惑いを覚える。
「オレもお前たちと一緒に成長して、戦いのない世界を実現したいと思っている。だから、お互い頑張っていこう。」
「あなたは・・・分かりました。一緒に、この戦いを終わらせましょう、アスラン!」
アスランの考えを受け止めて、シンが答えた。シンはアスランに心を開くようになっていた。
(あの人も戦いを終わらせようとしている。そうですよね、ハイネ・・)
ハイネのことを考えて、シンが落ち着きを取り戻していく。ハイネが自分とアスランの間にあった溝を埋めてくれたと、彼は思っていた。
「アスラン、あなただけで大丈夫ですか?あのフリーダムとアークエンジェルの相手を・・」
カナタがアスランを心配して声を掛けてきた。
「カナタ、君やクロスの人たちには感謝している。君たちの力がなかったら、連合軍を始めとした敵の勢力に負けていたかもしれない・・」
「そんなことは・・・オレたちに力を貸してくれたあなたたちに、すごく感謝しています・・!」
互いに感謝の言葉を掛け合うアスランとカナタ。共に出会えたことで強く勇気づけられたと、2人は互いに思っていた。
「シン、レイ、ルナマリア、カナタ、行くぞ!」
「はい!」
アスランが呼びかけて、シン、ルナマリア、カナタが答えて、レイが頷いた。
「シン・アスカ、コアスプレンダー、行きます!」
「アスラン・ザラ、セイバー、発進する!」
「ルナマリア・ホーク、ザク、出るわよ!」
「レイ・ザ・バレル、ザク、発進する!」
「天命カナタ、イザナギ、行きます!」
シンのコアスプレンダー、アスランのセイバー、ルナマリア、レイのザク、カナタのイザナギがミネルバから発進した。コアスプレンダーがブラストシルエット、チェストフライヤー、レッグフライヤーと合体して、ブラストインパルスとなった。
飛行艇でもアンジュたちが出撃準備を整えていた。
「またオレたちはここの護りかよ!」
「ダイミダラーは空が飛べないからね。近づいてくる敵を追い払うのも、私たちの重要な戦いよ。」
文句を言う孝一に、恭子が冷静に答える。
「ダイミダラーもランガみてぇに翼でも生えてくれたらよかったのに・・!」
愚痴をこぼす孝一に、恭子がいが笑いを浮かべた。
「敵のほうはあたしらに任せな。アンタらの分もやっつけてやるからさ。」
「この前のやられた鬱憤を、連合軍にぶつけてやるよ!」
ヒルダとロザリーが孝一に気さくに言ってきた。
「おい、ズルいぞ、おめぇらー!」
孝一が不満の叫びを上げるのをよそに、ヴィルキスたちが発進に備えた。
「ヴィヴィちゃん、体の方は大丈夫?」
「うん♪大丈夫、大丈夫♪ブンブン丸も投げられるよー♪」
エルシャが心配すると、ヴィヴィアンが笑顔で答える。
「もしもどこかおかしいと思ったら、すぐにこっちに戻ってくるんだよ。」
「うん。そうするね。」
海潮も注意を投げかけて、ヴィヴィアンが頷いた。
(いつまたドラゴンになるか分からない。もしも戦いの場でヴィヴィアンちゃんがドラゴンになったら、必ず混乱してしまう・・)
ヴィヴィアンのことを心配して、海潮は思いつめていた。
「サリア隊、発進するわ!」
サリアが号令を上げて、アンジュたちとともに飛行艇から発進した。
「ランガ、あなたも行って!」
夕姫が呼びかけて、ランガの中に意識を送る。顔の変わったランガも、飛行艇を飛び出した。
セイバー、イザナギがビームライフルを手にして、ウィンダムやムラサメを射撃していく。さらにインパルスがケルベロスを発射して、ウィンダムたちを撃墜させていく。
「今度こそこの戦いを終わらせてやる!」
シンが言い放ち、インパルスが砲撃を続けていく。
(そうだ・・あのステラみたいな子を増やしたらいけない・・オレが戦いを終わらせて、みんなが平和に暮らせるようにする・・!)
ステラのことを思い出して、シンは敵に対する怒りを燃やしていた。
(シン・・強い感情が込められているみたいだ・・・)
インパルスの戦いを見て、カナタが戸惑いを感じていく。
「アイツ・・・こんどこそやっつける・・・!」
ステラが怒りを浮かべて、カオスに抱えられていたガイアが、インパルスに向かって飛び込んだ。
「おい、よせ、ステラ!」
スティングが呼び止めるのも聞かずに、ステラのガイアがインパルスに組み付いた。
「コイツ!」
シンが毒づき、インパルスがガイアを両手で引き離した。ガイアは海に落ちたが、インパルスはブースターを噴射して海上すれすれで浮いた。
「まったく!手間かけさせんじゃねぇって!」
アウルがステラに毒づき、アビスがインパルスを追って海中を進む。
「新型、今日こそ落とす!」
アウルが言い放ち、アビスがインパルスのそばに飛び出した。アビスが突き出したビームランスを、インパルスがビームジャベリン「デファイアント」を手にして食い止めた。
「コロコロと変わりやがって・・けどそれも今日までだ!」
アウルが感情をあらわにして、アビスがビームランスを振り上げた。そのとき、フライトモードのヴィルキスとアーキバスがアサルトライフルを発射して、ビームランスに射撃を当てた。
「ちっ!また邪魔をして!」
アウルがいら立ちを膨らませて、両肩のビーム砲を発射する。ヴィルキスとアーキバスがスピードを上げて、ビームをかいくぐる。
「さっさと片付けるわよ、シン!」
「分かっている、アンジュ!」
アンジュの呼びかけに、シンが不満げに答える。ヴィルキスたちがアサルトモードに変形して、アサルトライフルを構えた。
「ヘッ!みんなまとめてやっつけてやるよ!覚悟するんだね!」
アウルが笑みをこぼして、アビスがヴィルキスたちも相手しようとした。
「みんな、回避して!」
そのとき、アンジュが呼びかけて、シンとサリアたちが反応する。インパルス、ヴィルキス、アーキバスが動いた瞬間に、空からビームが飛んできた。
「うぐっ!」
アビスが左肩にビームを当てられて、アビスが衝撃に揺さぶられてうめく。キラの駆るフリーダムが現れ、インパルスたちを攻撃したのである。
「フリーダム!・・アンジュが声を掛けてくれなかったら、オレはやられていたかもしれない・・・!」
フリーダムを見たシンが、不意打ちされたかもしれないことに困惑を覚える。
「キラ!」
アスランもフリーダムを見て声を荒げる。
「オーブ軍、直ちに戦闘をやめろ!」
さらにストライクルージュもアークエンジェルと共に駆けつけて、カガリがオーブ軍に呼びかけてきた。
「こんな戦いをしても、何も守れはしない!地球軍の言いなりになるな!オーブの理念を思い出せ!」
「カ、カガリ様・・!」
必死に呼びかけるカガリに、ムラサメのパイロットたちが当惑を覚える。このまま戦闘を続けていいのか、彼らは迷いを感じていた。
「アンタは・・どこまでも勝手なことをしておきながら・・そんな綺麗事を、いつまでも!」
シンがカガリの言葉に怒りを覚える。インパルスがストライクルージュに向かってビーム砲を発射する。
キラがとっさに反応し、フリーダムもストライクルージュの前に出てクスィフィアスを発射して、インパルスのビームと相殺した。
「お前も、ふざけるな!」
シンがフリーダムに対しても怒りを膨らませる。
「待て、シン!」
そこへアスランが呼びかけて、セイバーがインパルスとフリーダムの間に割って入ってきた。
「お前は連合軍の攻撃を止めろ!フリーダムは、キラはオレが止める!」
「アスラン・・はい!」
アスランの呼びかけにシンが答える。セイバーがフリーダム、ストライクルージュと対峙する。
「キラ、やめろ!なぜお前たちがこんなことを!?」
「その機体に乗っているのは、アスランなのか・・!?」
アスランが呼びかけて、カガリが驚きの声を上げる。
「どういうことなんだ!?・・お前はオーブ軍に攻撃しようとしてるんだぞ!」
「カガリ・・しかし今のオーブは、連合軍の1組・・ザフトの敵になっているんだぞ!」
困惑しながら問い詰めるカガリに、アスランも反論する。
「でもだからって、お前も以前はオーブにいたじゃないか!それなのにお前は、オーブを討つというのか!?」
「そうさせないためにも、カガリ、お前は何としてでも同盟を結ばせないようにすべきだった!それなのに・・!」
怒鳴りかかるカガリに、アスランが責任を追及する。彼の言葉にカガリが困惑して、言葉を詰まらせる。
「はっ!お前たち、まとめて仕留めてやるよ!」
そこへスティングのカオスが飛び込んできて、セイバーたちに向かってビームを放ってきた。セイバーたちが横に動いてビームをかわす。
キラは感覚を研ぎ澄ませて、フリーダムが加速してビームサーベルを振りかざして、すれ違いざまにカオスのボッドと両手を切り裂いた。
「な、何だとっ!?」
スティングが愕然とする中、カオスが機動力を失って海に落ちた。
「おのれ、フリーダム!」
連合のパイロットたちがいら立ちを膨らませて、ウィンダムたちが迫る。キラが気付き、フリーダムがビームライフルとバラエーナを発射して、ウィンダムの腕と武装を撃ち抜いていく。
「キラ、お前もよせ!」
アスランが呼びかけて、セイバーがフリーダムの前に来る。
「なぜお前がこんな!?・・今のお前たちは、ただ戦況を混乱させているだけだ!」
アスランがキラに向けて呼びかける。
「ただ戦いや破壊を目的としている連中ばかりじゃない!戦いを終わらせるために戦っている者もいる!それが分からないお前じゃないだろう!」
「分かっているけど、それでもみんなに傷ついてほしくない・・誰にも討たせたくないんだ・・失った命は、2度と戻らないから・・・」
アスランからの不満に、キラが言い返す。
「自分だけ分かったような綺麗事を言うな!お前の手だって、既に命を奪ってるんだぞ!この前だって、お前が乱入しなければハイネは・・!」
アスランがキラに対して、さらに不満をぶつける。
「それでも、討ちたくない・・みんなを討たせたくないんだ・・!」
「キラ!」
あくまで自分を貫こうとするキラに、アスランが怒りを爆発させた。セイバーが振りかざしてきたビームサーベルを、フリーダムもビームサーベルで受け止めた。
アスランとキラの対立に困惑するカガリが、ミネルバを攻撃しようとするムラサメに対しても気が気でなかった。
「やめろ、ムラサメ隊!こんな戦いをしてはいけない!」
カガリが呼び止めて、ストライクルージュがムラサメたちの前に立ちはだかる。
「カ、カガリ様!?」
ムラサメのパイロットたちがカガリの登場に驚愕する。
「オーブ軍は連合とともに戦うのをやめろ!あの艦を、ミネルバを討つ理由がどこにある!?」
カガリがオーブ軍に向けて呼びかける。
「討ってはならない!オーブの敵でないものを、オーブは討ってはならない!」
「いいえ・・ミネルバは、ザフトは我らの敵です・・!」
カガリの言葉に、ムラサメのパイロットの1人が反発してきた。
「これは命令なのだ・・ミネルバを、ザフトを討てという・・現在の我が軍の司令官、ユウナ・ロマ・セイラン様の!」
「ならばそれがオーブの意志!我らオーブ軍はそれに従うのみ!」
別のムラサメのパイロットも、続いてカガリに意志を言い放つ。
「たとえ過ちだと知りながらも、この任務、果たさねばならぬのです!」
「ならば過ちを繰り返すな!退くも勇気だ!軍を退くことは恥ではない!」
パイロットたちに対して、カガリが必死に呼びかける。
「もはや我らに退路はない・・おどきください、カガリ様!」
「我らの行く手を阻むならば、たとえあなたでも容赦は致しません!」
パイロットたちが鋭く言い放ち、ムラサメたちがストライクルージュに向かって加速する。ムラサメの1機が突っ込み、ストライクルージュを突き飛ばした。
「うあっ!」
「カガリさん!」
悲鳴を上げるカガリに、マリューが叫ぶ。ストライクルージュがアークエンジェルの艦上に落ちて、事なきを得た。
「カガリさん、大丈夫!?応答して、カガリさん!」
マリューがストライクルージュに向かって呼びかけるが、カガリからの返事はない。彼女は悲しみを膨らませて、コックピットの中で泣いていた。
どれだけ呼びかけても止まらないオーブ軍に、カガリは身を引き裂かれる思いに襲われていた。
混迷を深めていく戦いに、ジュリオも困惑を感じていた。
「あれがフリーダムというヤツか・・クロスも我々もお構いなしとは、馬鹿げているな・・!」
ジュリオがキラたちの行動をあざ笑う。
「だが我々の最も倒すべき存在が、この戦場にいる・・!」
ジュリオが笑みを消して、ヴィルキスに目を向けていら立ちを浮かべる。
「覚悟するがいい、アンジュリーゼ・・この前受けた屈辱、ここで晴らしてやるぞ・・・!」
アンジュへの憎悪に駆られるジュリオ。彼は彼女に傷を付けられた顔を手で押さえて、敵意を募らせた。
「こちらに近づいてくる物体あり!」
そのとき、兵士の1人がジュリオに報告をしてきた。
「もしや援軍か!?」
「いえ、この形状・・ペンギン帝国という怪物のものです!」
ジュリオが声を荒げると、兵士が緊張を浮かべて答えた。リカンツの操縦するリッツカスタムが、クロスと連合軍の戦いに飛び込んできた。
リッツカスタムで駆けつけたリカンツが、戦況を確かめて笑みをこぼした。
「みんな派手に暴れてるね。でもこの中にダイミダラーがいない・・」
リカンツが周りを見回してダイミダラーを捜す。
「こうなったらみんなまとめて相手しちゃうからね♪」
思い立ったリカンツが、リッツカスタムを操縦する。リッツカスタムが大砲を発射して、クロスも連合軍も関係なく攻撃を仕掛けた。
「アイツ、攻撃をしてきたぞ!」
「ならばヤツも敵だ!攻撃だ!」
連合のパイロットが声を荒げて、ウィンダムがリッツカスタムに向けてビームライフルを発射する。しかしリッツカスタムはビームを軽やかにかわした。
「そんなんで、チンとこのリッツカスタムに勝てるわけないよ。」
リカンツが微笑みかけると、リッツカスタムが大砲を発射して、ウィンダムたちを撃ち落としていく。
「早く出てきてよね、ダイミダラー・・!」
ダイミダラーの出現を心待ちにしながら、リカンツはリッツカスタムで乱戦を仕掛けていった。
アスランのセイバーとキラのフリーダムが、ビームサーベルの激しいぶつけ合いを演じていく。そんな中、アスランは激情に駆り立てられる。
「仕掛けてきたのは地球軍だ!ヤツらと手を組んでいるオーブ軍も、ミネルバを討つことに専念している!」
アスランが言い放ち、セイバーがビーム砲を発射する。フリーダムが加速して、ビームをかわす。
「オーブ軍を助けたいなら、オーブ軍を引き上げさせるべきだ!地球軍と同盟を締結させてはいけなかったんだ!」
「でも今オーブ軍は、ザフトと戦って討たれようとしているんだ・・だから・・!」
「だからお前たちはオーブ軍を下がらせず、地球軍やオレたちを攻撃するのか!?討ちたくないと言いながら、何だお前は!」
「でも、オーブが討たれたら、カガリが悲しむから・・・!」
怒鳴りかかるアスランに、キラが言い返す。
「分かるけど・・君の言うことも分かるけど・・でもカガリは、今泣いているんだ!」
キラが止まらないオーブ軍に涙しているカガリに目を向ける。
「こんなことになるのがイヤで、オーブが傷つくのがイヤで、今泣いているんだぞ!なぜ君はそれが分からない!?」
「こんなことになったのもオーブの首脳陣や軍自身だ!同盟を破棄せず、軍を引き上げさせず・・それなのにただ泣いているだけで、オーブを止められるのか!?」
感情をぶつけ合うキラとアスラン。
「だからオーブが討たれてもいいと、全てオーブとカガリのせいだと、そう言って君は討つのか!?カガリが守ろうとしているものを!」
「それを危険にさらしているのは、カガリたち自身じゃないか!」
カガリを思うキラと、彼女を責めるアスラン。
「オレはザフトとして戦う・・オーブが軍を退かずに攻め続けるなら、オレたちは、ミネルバは戦い続ける・・!」
「どうしてもオーブを討つというなら・・僕は・・君を討つ!」
ザフトの一員としての責務を果たそうとするアスランに対し、キラが戦意を強めた。フリーダムとセイバーがビームライフルを発射して、ビームをぶつけ合う。
フリーダムが加速して、ビームサーベルを振りかざす。セイバーもビームサーベルを手にして振りかざし、激しくぶつけ合う。
フリーダムがもう1本ビームサーベルを手にして、セイバーの右腕を切り裂いた。
「ぐっ!」
セイバーが損傷して、アスランがうめく。フリーダムがセイバーの残る手足を、ビームサーベルで切り裂いた。
「くそっ!」
アスランが毒づき、セイバーがビーム砲を発射する。フリーダムが左肩をビームで負傷した。
キラが目つきを鋭くして、フリーダムがバラエーナを発射して、セイバーのビーム砲も破壊した。
「キラ!」
アスランが叫ぶ中、フリーダムがさらにビームサーベルを振りかざした。セイバーの胴体を切りつけて、コックピットのハッチを引き剥がした。
「アスラン!」
キラがコックピットの中にいるアスランを目撃した。フリーダムが手を伸ばして、ふらついて前に倒れたアスランを受け止めた。
「キラ・・お前たちは・・どうして・・・」
声を振り絞るアスランが、フリーダムの手の上で意識を失った。フリーダムが離れたところで、落下したセイバーが爆発を起こした。