スーパーロボット大戦CROSS

第21話「魔性の龍神」

 

 

 海潮たちの叫びを聞き入れたかのように、ランガがバロウ島に姿を現した。

「ランガ・・ホントにランガなの・・!?

 海潮がランガに視線を向けて、戸惑いを覚える。

「何をしている!?撃て!すぐに3姉妹を始末しろ!」

 隊長が命令して、兵士たちが海潮たちに向かって発砲した。しかしランガが出してきた左腕に弾丸が阻まれた。

「何っ!?

 隊長がランガの介入に驚愕し、兵士たちが動揺して後ずさりする。

「ランガ・・ホントにランガだよね?・・私たちのこと、分かってるんだよね・・?」

 海潮が声を掛けると、ランガの顔に変化が起こった。瞳のある目がランガに浮かび上がった。

「暴走していない・・私たちのランガよ!」

 海潮の意識がランガに入ったことに、魅波が喜ぶ。

「海潮ちゃん!」

 そこへ隼人がエリナ、翔子、穂波とともに飛び出してきて、海潮たちに駆け寄って磔の縄をほどき始めた。

「すまない、海潮ちゃん!オレたちがつけられたせいで・・!」

 謝罪する隼人に助けられて、海潮たちが解放された。

 そこへシンの乗るコアスプレンダーが駆けつけて、射撃して兵士たちを遠ざけた。

「隊長、これでは我々は全滅してしまいます!」

「やむを得ん・・一時撤退!体勢を整えるぞ!」

 兵士が焦りを浮かべて、隊長が指示を送る。彼らは海潮たちから離れて、海岸に停めている戦艦に戻っていった。

「逃がさないで!私たちがひどい目にあった分、やり返してやるんだから!」

 夕姫が小隊への怒りを込めて、ランガに呼びかける。

「ううん、そこまでやらなくていいよ・・」

 海潮が顔を横に振って、ランガも小隊を追わずにその場に留まっている。

「どうしてよ!?アイツら、またやってくるよ!」

「そのときはまた追い返せばいいだけだよ・・命まで奪う必要はない・・・!」

 不満を言う夕姫に、海潮が正直な考えを言う。

「これだから海潮は甘いのよ・・私の前に出てきたら、ランガで踏み潰してやるんだから・・!」

 夕姫は不満を抱えたまま、海潮に背を向けた。

「軍隊は追い払ったけど、まだアイツが残っているわね・・!」

 エリナが言いかけて、海潮たちがミナカタに目を向ける。ミナカタにはラブレが取り込まれたままである。

「アイツからあの子をひっぺがえす、それしかないわね・・!」

 魅波が言いかけて、海潮たちが頷いた。

「ランガが近づいて、あの子を救い出すよ・・今度は暴走しない・・私は、そう信じてる・・!」

 海潮がラブレを救う方法について口にする。

「しかしアイツは海の上にいて、しかも動きが機敏だ。日本に来たときのランガの海でのスピードも遅い・・!」

「空を飛んでいるなら話は別だけど・・・!」

 隼人と穂波がランガの劣勢を痛感していた。海を進むランガは動きが鈍り、ミナカタの攻撃の格好の的になってしまう。

「王が願えば、ランガはその通りになります。」

 ジョエルが海潮たちの前にやってきて、助言を送った。

「私たちが願えばって、例えば空を飛ぶように言ったら、ランガは飛べるようになるの?」

 魅波が聞くと、ジョエルが真剣な面持ちで頷いた。

「だったら・・・ランガ、飛んで・・・!」

 海潮が目を閉じて、ランガに対して念じた。するとランガの背中から黒い翼が生えてきた。

「何っ!?!?

「ちょっと!こんなことができるなら最初からやってよ!」

 隼人がランガを見て驚き、夕姫が文句を言う。

「王が願えばランガが応える。ランガのこの姿は今までなかったです。」

 ジョエルもランガを見つめて答える。彼もランガが翼を生やすのを初めて知った。

「これならランガも空を飛ぶことができるわ!」

「うん・・ランガ、ラブレを助けて!」

 魅波に頷いて、海潮がランガに呼びかけた。ランガが翼をはばたかせて、海から空へ飛び上がった。

「ランガが飛んだ!」

「アイツ、そんなこともできるのか・・!?

 カナタとシンもランガを見て驚く。

「シン、インパルスに合体するんだ!援護するぞ!」

「了解!」

 ハイネの指示にシンが答える。ミネルバから射出されたフォースシルエット、チェストフライヤー、レッグフライヤーがコアスプレンダーと合体して、フォースインパルスとなった。

「オレが押さえている間に、この子を助けてくれ!」

 イザナギがミナカタを取り押さえたまま、カナタが海潮たちに呼びかける。

 そのとき、イザナギの左肩が爆発を起こした。ビームが飛んできて、イザナギの直撃したのである。

「うぐっ!」

 カナタが衝撃に襲われ、イザナギが体勢を崩してミナカタから離れてしまう。

「カナタくん!」

 海に倒れたイザナギを見て、ラブが叫ぶ。

「久しぶりね、カナタ。」

 カナタに向かってさらに声がかかった。立ち上がったイザナギの前に現れたのは、カンナの駆るイザナミだった。

「カンナ!?

 カナタがイザナミを見て声を荒げる。

「世界の融合が起こった日から、あなたがどれだけイザナギの力を引き出せるようになったのか、直接確かめさせてもらうわ・・」

 カンナがイザナギを見つめて笑みをこぼす。

「やめるんだ、カンナ・・そんなことをしている場合じゃないのは分かっているはずだ・・!」

「状況は分かっているわ。その上で私はあなたとの勝負を楽しもうとしているのよ・・」

 カナタが呼びかけるが、カンナはイザナギへの攻撃をやめない。

「何を言ってるんだ!?あの虚神には、1人の子供が捕まっているんだぞ!」

「私は私とイザナミの力を高める・・私たちの力が誰にも負けないことを証明するのよ・・!」

 怒りを覚えるカナタを、カンナがあざ笑う。

「お姉ちゃん、やめて!お姉ちゃんだって、みんなが大変な思いをしているのに、ほうっておくなんてできないでしょ!?

 ラブも飛行艇からカンナに向かって呼びかけた。

「私は力を求めているのよ。この世界の融合という混沌も、私の力の刺激につながる・・」

「お姉ちゃん・・本気でそんなことを言ってるの!?・・みんなが辛い思いをしても、お姉ちゃんは平気なの!?

 自分が強くなることしか考えていないカンナに、ラブも憤りを覚える。

「力がなければ何もできない。弱い人は虐げられるしかない。」

 そこへ別の声が聞こえてきて、カナタが視線を移した。

 イザナギたちのそばに現れたのは、1体の黒い機体。背面には黒い翼と尻尾が生えていた。

「また新しい機体が現れた・・!?

「あの姿かたち・・ドラゴンに似ている・・!?

 アーサーとサリアが機体を見て声を上げる。

「これは黒龍神(こくりゅうじん)。私はアブル。私もあなたたちの相手をさせてもらう。」

 機体、黒龍神に乗るアブルが、カナタたちに呼びかけてきた。

「アブル、カナタの、イザナギの相手は私がするわ。あなたは他の相手を。」

「いいよ。敵を倒せるなら、どんな相手でもいい・・」

 カンナが指示を送り、アブルが納得する。

「これであなたと存分に戦えるわね、カナタ。」

 カンナがイザナギに視線を戻して笑みをこぼす。

「いい加減にしろ、カンナ!自分が強くなるなら、他の人がどうなってもいいっていうのか!?

 カナタがカンナに怒りを覚えて、イザナギが飛翔する。

「イザナミの動きを止めて、カンナ、お前を連れ出す!」

 カナタが言い放ち、イザナギがビームサーベルを手にして飛びかかる。イザナミもビームサーベルを手にして、イザナギのサーベルを受け止める。

「その気になったようね。でもその程度じゃ私には勝てないわよ・・!」

 カンナが笑みを絶やさずに言って、イザナミがイザナギのビームサーベルを押し返す。イザナミがビームサーベルを振りかざして、イザナギのサーベルを連続で叩いていく。

「何やってるんだよ、アイツ!?こんなときに追い詰められて・・!」

 劣勢になっているカナタに苛立つシン。インパルスがイザナギたちに向かっていくが、黒龍神に行く手を阻まれる。

「あなたたちの相手は私だよ。」

「アンタも戦いたいっていうのかよ・・!?

 言いかけるアブルにシンが怒りを募らせる。インパルスがビームライフルを手にして発射して、黒龍神がビームを回避する。

 インパルスがビームサーベルに持ち替えて、黒龍神に飛びかかる。黒龍神が黒い刀身の光子剣「黒炎(こくえん)」を手にして、ビームサーベルを受け止めた。

「その程度じゃ私の相手は務まらないよ。」

 アブルが呟くように言って、黒龍神が黒炎を振りかざしてインパルスを突き飛ばす。

「ぐっ!」

「シン!」

 うめくシンにルナマリアが叫ぶ。落下するインパルスが海上すれすれで浮上、上昇して体勢を立て直す。

「1人で飛び出してやられているんじゃ世話ないわよ!」

 ヴィルキスが駆けつけて、アンジュがシンに不満を言う。サリアのアーキバス、ヴィヴィアンのレイザーも駆けつけてきた。

「ドラゴンみたいだからドラちゃんだねー♪」

「くだらないことを言ってる場合じゃないわよ!」

 浮かれているヴィヴィアンにサリアが注意する。

「パラメイル・・アルゼナルのメイルライダーもクロスの一員になっていたのだった・・」

 アブルがヴィルキスたちを見て、目つきを鋭くする。

「あなたたちは、私が滅ぼさないといけないわね・・」

「あなたたちにも負けるつもりはないわ・・!」

 言いかけるアブルにサリアが言い返す。アーキバスがアサルトライフルを発射するが、黒龍神が素早く回避し、さらに黒炎で射撃を弾いていく。

「もっと力を上げてくれないと、倒し甲斐がなくなるよ・・」

 アブルがため息をついて、黒龍神が左手を構えて、甲にあるビーム砲「白虎(びゃっこ)」を発射する。速く鋭い光線にアーキバスがアサルトライフルを叩かれた。

「ぐっ!」

「サリア!よくもやったなー!」

 サリアがうめき、ヴィヴィアンが怒った。レイザーがブーメランブレードを手にして、黒龍神目がけて振りかざした。

 黒龍神が黒炎でブーメランブレードを受け止めて耐える。

「ドラちゃん、友達にひどいことをしたらメッだよ!メッ!」

「黒龍神を勝手な名前で呼ぶなんて・・・」

 怒鳴ってくるヴィヴィアンに、アブルが不満を覚える。

 黒龍神が力を入れて、黒炎でブーメランブレードを押し返した。

「うわっ!ブンブン丸が!」

 ブーメランブレードに引っ張られてレイザーが体勢を崩して、ヴィヴィアンが慌てる。

「ヴィヴィアン、下がって!私がやるわ!」

 アンジュがヴィヴィアンに呼びかけて、ヴィルキスがラツィーエルを手にする。ヴィルキスと黒龍神がラツィーエルと黒炎をぶつけ合う。

「ヴィルキス・・また戦いに駆り出されるとは・・」

 アブルがヴィルキスを見つめて呟く。

「でもその力を完全に引き出せてはいないようね・・」

「どういうこと!?何を知っているの!?

 アブルの投げかけた言葉に、アンジュが声を荒げる。

「そうなる前に、私がヴィルキスを破壊させてもらうよ・・」

「そんなことはさせない・・答える気がないなら、このままアンタを討たせてもらう!」

 言いかけるアブルに、アンジュが激情を浮かべる。ヴィルキスが黒龍神を突き飛ばして、再びラツィーエルを振りかざす。

 黒龍神がラツィーエルを回避して、ヴィルキスに向かって黒炎を振り下ろす。

「アンジュちゃん!」

 そこへエルシャのハウザーがロングバレルライフルを発射して、黒龍神に命中させてヴィルキスから遠ざけた。

「アンタの相手はあたしらだよ、ドラゴンもどき!」

「私たちが仕留める・・・!」

 ヒルダが言い放ち、クリスが鋭く言う。

「相手の数が多くても、私は負けるつもりはない。」

 アブルが呟いて、黒龍神が黒炎を構えた。2機のハウザーのロングレンジライフルが発射して、黒龍神が射撃を回避する。

「さすがに大勢の相手を私だけでやるのは手を焼くね・・」

 アブルがため息をついて、黒龍神が黒炎を下げた。

「アレにはまだ及ばないけど、一気に追い込むことはできるはず・・」

 黒龍神の両肩が展開されて、大きなレンズが現れた。

「あの形・・この前、ドラゴンと一緒に現れたメカが使ったのに似てる・・!」

「みんな、散開して!集まっていると全滅するわ!」

 ロザリーが息をのんで、サリアが指示を出す。

「雷鳴、発射。」

 アブルが黒龍神の時空砲「雷鳴」を発射した。アーキバスたちが回避行動をとる中、アンジュが永遠語りを歌って、ヴィルキスが両肩の次元破壊砲「ディスコードフェイザー」を起動した。

 2機の砲撃がぶつかり合い、激しい衝撃を巻き起こす。ヴィルキスの砲撃が黒龍神の砲撃を押していく。

「力負けする・・ヴィルキスはまさか・・・!?

 アブルがヴィルキスについて気付いたことがあり、驚愕を覚える。

「1度出直したほうがよさそうかもしれない・・」

 彼女が危機感を覚えて、黒龍神がヴィルキスから離れた。

「カンナ、決着を付けるならそろそろそうしたほうがいい・・」

 アブルがイザナミに目を向けて、戦いを急ごうとしていた。

 

 背中から生やした翼をはばたかせて、ランガが飛翔した。上空から降下するランガが、ミナカタが飛ばす氷の刃をかわしていく。

 ランガがミナカタの眼前まで詰め寄って着地した。ランガが左手から触手を伸ばして、ミナカタの体にめり込ませた。

 ミナカタからラブレを引きずり出して救出したランガ。その瞬間、ミナカタが水流を発してランガに向かって飛ばしていた。

 ラブレを守りながら、上昇して水流をかわすランガ。ラブレを失ったことで、ミナカタが動かなくなった。

 ランガが胸の紋様から剣を引き抜いて、右手で持って振りかざした。ミナカタが首を切られて、頭が海に落ちた。

「ラブレちゃん!」

 叫ぶ海潮の前にランガが降りてきた。ランガが下ろしたラブレに海潮たちが近づく。

「ラブレ、しっかりして!ラブレ!」

 ジョエルがラブレを支えて呼びかける。

「気を失っているみたいね。村に連れていって手当てしましょう。」

 エリナがラブレの状態を確かめて、海潮たちが頷いた。エリナがラブレを抱えて隼人、翔子、穂波、ジョエルとともに村に向かった。

「私たちはみんなを助けに行くわよ!」

 魅波が呼びかけて、海潮が頷いた。

「今度は私が行くわ、ランガ!」

 夕姫が呼びかけて、ランガに意識を傾けた。ランガの目つきが変わり、左手に砲門が現れた。

 

 カンナのイザナミに対し、カナタは激情を募らせて、イザナギは劣勢を強いられていた。

「本気を出しなさいよ、カナタ・・そうじゃないと、意味のない戦いになるじゃない・・」

 カンナがため息をついて、カナタに苦言を呈する。

「もうゼロス博士に頼るしかないようね・・」

「ゼロス博士!?カンナ、博士がどこにいるのか知っているのか!?

 カンナが口にした言葉を聞いて、カナタが目を見開いた。

「正確な位置は知らない。でもどこかで生きていることは確かよ。」

「博士・・やっぱり生きてたんだ・・!」

 カンナがゼロスのことを言って、カナタが戸惑いを覚える。

「博士は私が見つける。そしてイザナミの強化をしてもらい、私が使いこなす・・!」

「博士を、そんなことに利用するなんて・・・!」

 自分の目的を果たそうとするカンナに、カナタが怒りを募らせていく。

「博士に助けてもらった恩や、ラブちゃんへの愛情を捨てて、自分の目的のために他を平気で犠牲にする・・そんな人間になるなんて・・・!」

 カナタが目を見開き、握っている操縦桿に力を込める。イザナギのディメンションオーブにエネルギーが集まっていく。

「その気になったようね・・でも、私は負けるつもりはない・・!」

 カンナが笑みをこぼして、イザナミもディメンションオーブにエネルギーを集めた。

「カナタくん、お姉ちゃん、ダメだよ!また次元が歪むよ!」

 ラブが不安を膨らませて、カナタたちを呼び止める。

「ディメンションブレイカー!」

 イザナギとイザナミが同時に光線を放射した。2つの交戦がぶつかり合い、周囲の海やバロウ島を揺さぶるだけでなく、次元にも刺激を与えていた。

「いけない!空間が歪み出してる!また次元の穴が開くよ!」

 メイが空を見上げて緊迫を覚える。

「2人ともやめてよ!」

 そのとき、叫び声を上げたラブの体から、光が霧のようにあふれ出した。

「ラ、ラブ!?

 カナタとカンナがラブの変化を目の当たりにして驚愕する。

「2人ともやめて・・私たちが争うことなんてないんだから・・!」

 ラブが鋭く言って、激情を募らせる。彼女から放たれた光がイザナギとイザナミに伝わり、その動きを押さえて光線を止めた。

「イ、イザナギが動かない!?

「どうなっているの!?

 機体を動かすことができず、カナタとカンナが焦りを感じていく。

「ラブ・・ラブがオレたちを止めてるのか・・!?

 カナタが困惑しながらラブを見つめる。

「やめてくれ、ラブ!これじゃオレまで動けない!」

「こうしないと、カナタくんもお姉ちゃんを傷付けてしまうよ・・・!」

 カナタが呼びかけるが、ラブは光を消そうとしない。

「あの2体が動かない・・金縛りにあっているみたいだぞ・・!」

 ハイネがイザナギたちを見て戸惑いを覚える。

「今のうちにアイツに攻撃を!」

 シンがいきり立ち、インパルスがビームサーベルを手にしてイザナミに向かっていく。

「待って!」

 ラブがインパルスを止めようと意識を傾けた。彼女の光がインパルスにも向かっていく。

 そのとき、出ていた光が途切れてラブがふらついた。

「あ、あれ・・・!?

「ラブちゃん!?

 仰向けに倒れたラブに、カナタが叫ぶ。光で動きを封じられていたイザナギとイザナミが、自由を取り戻す。

「何だったの、今のは!?・・ラブに、何が起こったの・・!?

 カンナがラブの発揮した力に、驚きを隠せなくなる。

(ラブにあれだけの力があるってことは、私にも・・・!)

 彼女は自分もラブのような力を出せるものだと考えた。

「ラブ、一緒についてきて・・あなたのその力を、詳しく知りたいから・・!」

 カンナが呼びかけて、イザナミがラブを捕まえようとする。

「そうはさせない!」

 カナタが叫び、イザナギがイザナミの行く手を阻んだ。インパルス、ランガ、そしてダイミダラーがイザナミを取り囲んできた。

「これ以上の好き勝手はさせないぞ!」

 シンが言い放ち、ランガが左手から砲撃を放つ。イザナミが飛翔して砲撃をかわす。

「みんな集まってきたわね・・もう少しというところで・・・!」

 大勢を相手にすることに、カンナが毒づく。

「カンナ、1度引き上げよう。私たちだけではさすがに無事というわけんはいかない・・」

「・・仕方がないわね・・どうやら、ゼロス博士を見つけて連れ出すほうが先決みたい・・」

 アブルが撤退を進言して、カンナが聞き入れた。

「今日はここまでにしておくわ・・カナタ、ラブ、私はもっと大きな力を手に入れてみせるわ・・!」

「お、お姉ちゃん・・・」

 言いかけるカンナに、モモカに支えられているラブが弱々しく声を発する。

「カンナ!ラブちゃんや博士を苦しめて、お前は何も感じないのか!?お前は心を捨てたのかよ!?

 カナタがカンナに向かって怒号を放つ。するとカンナが彼をあざ笑ってきた。

「私は強くなるのよ・・力がなければ何もできない・・そんな無力な私から脱するのよ!」

「カンナ・・お前はもう、オレの仲間でもラブちゃんのお姉さんでもない・・力に溺れたオレたちの敵だ!」

 言い放つカンナに怒りを爆発させるカナタ。そのとき、彼の瞳に赤い輝きが宿った。

「オレは、お前を倒すことをためらわない!」

 カナタの体から光があふれ出して、イザナギからも放出されていく。

「イザナギからも・・カナタからも光が出てきた・・・!?

 カンナがイザナギとカナタに対しても驚愕する。

「お前の思い通りにはさせない・・みんなを守り、ゼロス博士を助け出す!」

 カナタが怒りを込めて決意を言い放ち、イザナギがビームサーベルを構えた。そのビームの刀身が巨大になっていく。

「そんな!?ここまでの力を、イザナギが・・!?

 カンナが目を見開く中、イザナギが巨大な光の刃を振りかざした。カンナが反応し、イザナミがビームサーベルで受け止めようとするが、サーベルを持つ右腕を切り裂かれた。

「なっ!?

 イザナミが損傷を受けたことに、カンナだけでなく、アブルも目を見開いた。

「なんて威力・・イザナミがやられた・・・!?

 アブルがイザナミの劣勢とイザナギの力に脅威を感じていく。

「カンナ、本当に1度出直したほうがいい。イザナミも直したほうがいい・・」

「・・・そうするしかなさそうね・・・!」

 アブルの呼びかけを、カンナが渋々聞き入れた。

「あなたたちを超える力、私は必ず手に入れてみせる・・!」

 カンナがいら立ちを抱えたまま、イザナミと黒龍神がバロウ島から飛び去っていった。

「逃がすか!」

 カナタがいきり立ち、イザナギがイザナミたちを追いかけようとした。

「うっ!」

 そのとき、カナタが体に激痛を覚えて、意識がもうろうになる。イザナギの動きも鈍り、その場に立ち尽くした。

「カナタくん・・!?

 ラブが目を見開き、イザナギを見つめる。

「おい、カナタ・・!」

 ダイミダラーがイザナギに近づき、孝一がカナタに呼びかける。

「応答がない・・気を失っているの・・!?

「ランガ、イザナギをラブたちのところに運んで!」

 恭子が緊張を覚えて、海潮がランガに呼びかける。ダイミダラーとランガがイザナギを連れていく。

「カナタくん、返事して・・カナタくん!」

 ラブが呼びかけるが、それでもカナタからの返事がない。メイがイザナギの近づいて、外からコックピットのハッチを開いた。

「いた!やっぱり気を失っているよ!」

 メイがカナタの状態を伝えた。カナタはイザナギから連れ出されて、ミネルバの医務室に運ばれた。

 

 ミナカタは倒され、小隊も撤退していった。ランガも暴走することなく、海潮たちの意思を聞き入れていた。

 カナタはミネルバの医療班によって検査されていた。ラブも身体チェックを受けていた。

「何だったんだ・・カナタとラブの出した光は・・・?」

「ラブさんがあの光を出したことは前にもありました。ミスルギ皇国で・・」

 シンがカナタたちのことを考えて、モモカが前にラブが光を発したときのことを思い出す。

「その力で私たちは助かりましたが、どういうものなのかは、ラブさんもカナタさんも知らないようで・・」

「2人の力について知っている可能性があるのは、どこかにいるシクザル博士だけなのね・・」

 モモカが話を続けて、恭子がゼロスたちのことを考える。

「ミネルバでもプラントでも博士の行方を追ってはいるが、発見には至っていない。」

 レイもプラントの調査の状況を話す。

「それで、私たちはこれからどうするのですか?どこか行く当てがあって、そこへ向かわれるのでしょうか・・?」

 モモカがクロスのこれからの行き先を聞く。

「私たちはまた武蔵野に戻らないといけない・・武蔵野を、私たちの暮らす場所を取り戻さないと・・・」

 魅波が再び武蔵野へ行くことを提案する。虚神会によって日本が裏から支配されていることを知った彼女たちは、その支配から武蔵野を開放しないといけないと考えていた。

「全てはカナタとラブが目を覚まして、検査が終わってからよ。」

 サリアが冷静に状況を判断していく。

「グラディス艦長と話をしてくるわ。」

「私も行くわ、サリアさん。」

 サリアと魅波がタリアのところへ話をしに向かった。

「ドラゴンに連合、ペンギンにわけの分かんないものまで・・これ以上おかしなのが出てこないでほしいものね・・」

 アンジュがため息をついてから、シンたちから離れた。

(オレも、カナタたちのような力を出せたら・・・!)

 シンが力への渇望を抱いて、両手を強く握りしめていた。

 

 タリア、アーサー、アスラン、ハイネは次の行先について話し合っていた。サリアたちと恭子が来て、話はさらに進む。

「また武蔵野に・・その進路はデュランダル議長からも提案されているわ・・」

「だったら問題なしですね。早く行きましょう。」

 タリアがギルバートのことを伝えて、魅波が呼びかける。

「しかし、オレたちがバロウ島にいることに、連合も感付いているはず。武蔵野までのルートに来て、待ち伏せている可能性があります。」

「だけど迂回しても、向こうにこっちの動きを読まれて先回りされることになる・・ここは万全の準備をして、正面から打って出るしかないな・・」

 アスランとハイネが連合の動向を気にして意見する。

「最短ルートで武蔵野へ向かいます。敵が現れた場合、全力でこれを叩く・・魅波さん、サリアさん、恭子さん、それでよろしいですか?」

 タリアがこれからのことを確認して、サリアたちが頷いた。

「その前に、プラントというところのトップと話をしたいのだけど。」

 アンジュがモモカとともに来て、タリアたちに声をかけてきた。

「プラント最高評議会のギルバート・デュランダル議長ですね。議長もあなたたちと話をしたいと仰っています。」

「最高評議会・・政治的なのは、私はいいとは思わないんだけど・・・」

 タリアがギルバートのことを話すが、夕姫は国を動かす立場にある彼を信じようとしない。

「あなたたちと直接会ってお話をしたいとも言っていたけど、プラントでの責務のため、地球に赴くことができない。せめて通信でお話ができればと・・」

「それでも構いません。議長と話ができるなら、私は嬉しいです。」

 タリアから事情を聞いて、恭子はギルバートとの対話を承諾した。

「1時間後にまた連絡が入ります。そのときにまたここに集まってください。」

 タリアからの言葉に、サリアたちもアンジュも頷いた。クロスの面々もギルバートとの対話を果たすことになった。

(これでいいのかな・・ギルバート・・・)

 融合した世界にギルパートも深く介入しようとしていることに、タリアは困惑していた。

 

 

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