スーパーロボット大戦CROSS
第16話「揺れる衝動」
連合軍も世界で起こっている現状の把握に時間と苦悩を労した。ユニウスセブン落下の際に立ち会った部隊も、地球に下りた後に気が滅入っていた。
「まさか、我々の知らない世界や国が出てくるとはな・・」
部隊の指揮官、ネオ・ノアロークが呟く。
「連合がオーブや他の国、ミスルギ皇国というところとも同盟を結んでいるが、プラントも他の国や勢力と手を組んだようだ。」
「はい。バロウ王国、美容室プリンス、対ドラゴン組織であるアルゼナル、研究所のシクザルドームの面々です。」
ネオの話に彼の部下である兵士が答える。
「ミネルバは現在、アルゼナルに滞在している模様。この近日に立て続けに戦闘が行われたとの報告があります。」
「よし。我々もアルゼナルに向かうぞ。詳細な情報を入手した後、我々も攻撃を仕掛ける。」
兵士がミネルバの位置情報を報告して、ネオが指示を出す。彼らもミネルバやアルゼナルを攻撃するため、行動を起こした。
サラマンディーネの駆る焔龍號の収斂時空砲の砲撃で、アルゼナルは甚大な被害を被った。ドックの一部が削られて、機体や戦艦はドックへの出入りにより慎重にならないといけなくなった。
「ずいぶんと派手にやられたね。これじゃ、ドラゴンたちだけじゃなく、他の敵に狙われても危なっかしいよ。」
マギーがアルゼナルの現状に苦言を呈する。
「この事態を狙って、連合軍が動き出すんじゃないかって、グラディス艦長が考えているそうだ。」
ジャスミンがタリアたちのことをマギーに話す。
「連合軍を引き付けるために、アルゼナルから離れるってことか・・せめて、ミネルバがそいつらを食い止めてくれるならいいんだけど・・」
「せめてここがある程度まともに直るまではね・・」
事態の好転を望んで、マギーとジャスミンがため息をついた。
「あ〜・・この事態・・管理委員会にどう報告すれば〜・・・」
2人の近くにエマが通りがかった。彼女はアルゼナルの被害の報告について考えて、それにおける自分の処遇を不安に感じていた。
「あ、あの、ジル司令官は・・?」
「グラディス艦長たちと話をしているよ。ミネルバが1度ここを離れると言って、ジルや他の代表の意見を聞いている。」
エマが聞いてきて、ジャスミンが答える。
「メイたちがパラメイルの整備やドックのチェックをしている。ミネルバの整備士も手伝ってくれているよ。」
「でも、すぐに元通りってわけにはいかないね。たとえマナ使いが総動員したとしてもね・・マナだって、万能ってわけじゃないんだからね・・」
マギーがエマに答えて、ジャスミンがこれからのことに皮肉を口にした。
ジルのいるアルゼナルの指令室に赴いたタリア、魅波、恭子、カナタ。ミネルバがアルゼナルから離れることを、カナタたちは聞かされた。
「敵の同盟軍が来るから、自分たちが注意を引き付けてアルゼナルから遠ざける、ということね・・」
「はい。今のアルゼナルは、攻撃を被れば今度こそ無事では済みません。動ける我々が連合軍を食い止める必要があります。」
ジルが言いかけた言葉に、タリアが頷いた。
「ただしヴィルキスやパラメイルを同行させるわけにはいかない。ドラゴンの味方をしていたあの機体と互角に渡り合えたのはヴィルキスだけ。他の機体では及ばないことは、先の戦闘で分かっているはずだ。」
「連合やオーブ軍、他の国の軍勢が同時に攻めてくれば、私たちでも手に負えません。それに、その機体が我々の前に現れる可能性も否定できません・・」
「情けないことを・・正規の軍隊であるザフトがそんな弱腰だとはな・・」
「虫のいい話だとは分かっています。しかしこの状況を打開するには、我々全員の力を合わせなければならない。あなたもそのことは分かっているはずです。」
ジルの嘲笑を甘んじて受けるタリアが、改めて協力を求める。
「私たちがいるではないですか、グラディス艦長。是非協力させてください・・!」
恭子がタリアの頼みを快く引き受けようとする。
「しかし我々は海を渡ることになるのです。飛行が可能のイザナギはともかく、ランガとダイミダラーは戦闘が不利になります・・」
海での戦いのことを考慮して、タリアが恭子に注意を投げかけた。
「しかし、何もせずに黙って見ていることはできません・・足手まといになると思ったら、すぐに引き上げます・・」
「ですが、海上や空中で飛行できる機体が、パラメイル以外でインパルスとセイバーだけでは・・」
覚悟を伝える恭子だが、タリアの不安は解消されない。
(あの赤い機体や連合軍が相手では、我々がバラバラに行動していては敗北は免れない。しかしアンジュたちがいないときに、アルゼナルが狙われても同じことだ・・)
ジルが自分たちにとってどれが最善手なのかを考える。
「いいだろう。ただし条件がある。アルゼナル付近に敵が現れれば、すぐにアンジュたちをこちらに戻せ。いつでもどこでもすぐに連絡ができるように。」
ジルがタリアの申し出を受け入れることにした。
(我々の戦力を集中させれば、それだけで敵の目を引き付けることができる。その方がむしろ、こちらの目的を進めやすくなるか・・)
ジルはアルゼナルが遂行すべき目的を抱えていた。しかしそれをタリアたちには明かしていなかった。
「ありがとうございます。その条件でお願いします。」
タリアも条件をのんで頷いた。
「もちろん恭子さん、魅波さん、カナタくん、あなた方の協力にも感謝しています。」
「そちらのお偉いさんからたくさん提供を受けているんです。その分働かせていただきます。」
タリアからの感謝を受けて、魅波も微笑んで答えた。
「出発は明朝を予定しています。みなさん、よろしくお願いします。」
「分かりました、グラディス艦長。」
話を続けるタリアに、カナタも微笑んで答えた。それぞれの思惑が交錯しながらも、彼らは改めて一丸となろうとしていた。
タリアたちとの話を、カナタ、魅波、恭子はラブたちに話した。
「私たちもアルゼナルを離れるんだね・・」
「あぁ。アルゼナルがこれ以上被害に遭わないように、場所を変えることにしたって。オレたちもゼロス博士の行方を見つけないといけないし・・」
ラブが言いかけて、カナタが語っていく。
「それでどこへ向かうことになったんだ?」
「私たちが武蔵野に戻ることを言って、艦長もそっちに行くと言ってくれたわ。」
アスランが問いかけて、魅波が答える。彼女はしばらく戻っていない武蔵野や自分たちの家のことを気に掛けていた。
「世界の混乱が私たちの住んでいる町に起きてないとは思えない。みんなに私たちも無事だってことを知らせてあげないと・・」
夕姫も武蔵野のことを考えて、海潮が頷いた。
「どんな世界、どんな国があるのかを見て回るいい機会かもね。」
アンジュが呟いて、カナタたちに笑みを見せてきた。
「そうだね。もしかしたら、あたしらにとっての楽園が見つかるかもしれないね。」
「おー♪どんなところに行っちゃうのかな〜!?」
ヒルダも乗り気になって、ヴィヴィアンも期待を膨らませていく。
「ピクニックに行くんじゃないのよ、ヴィヴィちゃん。」
エルシャが微笑んで注意するが、ヴィヴィアンは笑顔を絶やさなかった。
「武蔵野かぁ・・魅波さんたちがいるんだから、他にどんな美女がいるんだろうか〜♪」
孝一がいやらしい意味での期待を武蔵野に向けてにやける。
「そんな変態なことを考えないの、孝一くん・・」
彼に注意して恭子が肩を落とした。
「又吉長官からの連絡からだと、日本はまだ、シンくんたちの世界における地球連合と同盟を結んだという話は聞いていないそうよ。」
「日本とうまく協力できれば、心強くなるてことか・・!」
恭子が日本のことを伝えて、孝一が笑みをこぼす。
「他の世界のは分からないけど、私たちの世界の日本は頼りになるのかしら・・」
しかし夕姫は日本政府を信じようとしていなかった。
「オレたちは協定を結んで、仲間として力を合わせるって決めたはずじゃないか・・それなのに、最初から信じないって考えたら、みんなが分かり合うなんてムリってものだ・・・!」
カナタがシンたちに向けて信頼を口にする。
「1回は分かり合えるように歩み寄ろう。それでも信じられないかどうかは、そのときに考えればいい・・」
「そうだよね・・まずは信じてみなくちゃ、何も始まらないよね・・!」
カナタに賛成して、海潮も呼びかけてきた。
「信じる・・自分が信じたいと思っているからじゃないのか・・?」
シンが不満を感じながら、カナタたちに言いかける。
「おい、シン・・!」
「綺麗事ばかりを並べるヤツを信じても、結局は裏切られるだけなんだ・・・!」
アスランが咎めるが、シンは不満を言い続ける。
「信じたいと思う・・それさえもなかったら、何を信じたらいいのか分かんなくなってしまうじゃないか・・・!」
カナタが体を震わせて言い返す。彼はカンナを連れ戻したいという気持ちを呼び起こしていた。
「信じるだけじゃ何も変えられない・・強くならないと、戦いを終わらせることはできないんだ・・・!」
シンは憤りを抱えたまま、カナタたちの前から離れていく。
「シン!」
ルナマリアが呼び止めるが、シンは止まることなく去っていった。
「すみません、ザラ隊長。シンってば子供で・・」
「自分も注意してはいるのですが・・」
ルナマリアとレイがアスランに謝意を示す。
「でも信じる気持ちが持てないのも分からなくはないわ。今まで信じてきたものに裏切られた怒りと悲しみは、私にもあるから・・」
悪態をつくシンに共感して、アンジュが笑みをこぼした。
「君たちにもシンにも事情があるようだが、いつまでもそれに囚われてはいけない。」
アスランが真剣な面持ちでアンジュたちに注意を投げかける。
「ザフトの中で位が上みたいだけど、あたしらにまで偉そうに言ってこられちゃ困るな・・」
「いくら協力関係になってるからって、他の部隊の誰かの言いなりになるつもりもないぜ。」
しかしヒルダもロザリーも彼の言葉に従おうとしない。
「みんな、アスランさんも協力者なんだから、仲よくしないと・・」
エルシャが苦笑いを浮かべて、ヒルダたちをなだめた。
「思ってた以上に、一癖も二癖もある人たちだね、みんな・・」
「あぁ・・そうだな・・・」
ラブとカナタがアンジュたちの言動を見聞きして、肩を落としていた。
思いのすれ違いを残したまま、翌朝を迎えた。ミネルバの他、パラメイルを収容するための飛行艇も同行することになった。
「この操縦方法なら何とかなるかな。」
ラブが飛行艇の操縦室を見回して、自信を持った。
「ラブさんが飛行機の操縦ができるとは驚きです・・!」
モモカがラブの操縦の腕を確認して、驚きを見せる。
「シクザルドームで覚えて、飛行機の操縦を任せられるようになりました。といってもメインパイロットをやったのは少なかったですけど・・」
「それでも助かります。メイルライダーやパイロットは大勢いますが、戦艦や飛行機のパイロットは少ないので・・」
ラブが事情を話してモモカが感謝する。
「サリア隊のパラメイルとランガ、ダイミダラーはここから発進するよ。ミサイルもあるけど、ミネルバと違ってあくまで護衛用だからね。」
メイも操縦室に来て、ラブたちに注意する。
「はい。攻撃を受けないように注意します。」
ラブが答えて、モモカと目を合わせて頷き合った。
“ラブさん、本艦は間もなく発進します。”
ミネルバからメイリンからの通信が入ってきた。
「分かったよ。こっちももうすぐ準備が終わる。」
メイが応答して現状を話した。
「さぁ、システムの最終チェックだよ!」
ラブが意気込みを見せて、操縦席についてシステムを確かめる。
「準備OKです!発進します!」
ラブが操縦する飛行艇が浮上した。直後に発進したミネルバに、飛行艇がついていった。
アルゼナルに滞在するジルたちが、ミネルバと飛行艇を見送った。
「また行っちゃったね、アイツら・・」
「ここのこと、他の誰かにばらしたりしないだろうね・・・?」
マギーが呟いて、ジャスミンが苦言を呈する。
「私たちのことは口外しないことを、協定の条件に組み込んでいる。破られたときは、彼らとの縁もそこまでということになる・・」
ジルが不敵な笑みを浮かべて答える。
「さて、どう転がるかな・・」
今後の行く末を気にして、ジャスミンも笑みをこぼした。
ミネルバが移動したのを、ネオたちは捕捉していた。
「ようやく動き出したか・・ヤツらを追うぞ。」
「了解。ミネルバの進路上に回ります。」
ネオの指示に兵士が答えた。
「ヤツらが滞在していた孤島は調査しますか?」
「それは別の部隊がやってくれる。オレたちはミネルバを落とすことに集中するぞ。」
別の兵士が問いかけて、ネオが口調を変えずに答える。
「やっと見つけたか、ネオ。」
そこへ3人の少年少女が入ってきて、その中の1人、アウル・ニーダが声をかけてきた。
「あぁ。待たせたな、お前たち。もうすぐ出撃だぞ。」
ネオがアウルたちに振り向いて檄を飛ばす。
「これで退屈しなくて済むぜ。思いっきり体を動かせる。」
「アウル、気さくにしすぎだ。いつまでもアイツらに付き合わされるわけにはいかねぇんだからな・・」
アウルが背伸びをすると、少年、スティング・オークレーが注意をしてきた。
「ステラ、やれるな・・?」
ネオが少女、ステラ・ルーシェに近づいて、優しく声をかける。
「うん・・ネオ、やるよ・・・こわいもの、なくす・・・」
ステラが頷くと、ネオが微笑んだ。
「3人とも、いつでも出撃できるようにしておくんだぞ。」
「りょーかーい。」
ネオが呼びかけて、アウルが気さくに返事をした。
アルゼナルから日本、武蔵野方向へ進むミネルバと飛行艇。そのレーダーが接近する艦隊を捉えた。
「針路方向に艦隊あり!連合軍です!」
メイリンが報告して、タリアとアーサーがモニターを注視する。モニターには前方で待ち構えている連合の艦隊が映し出されていた。
「ラブさんたちは本艦から離れないようにしてください。敵を倒すことよりも、自分たちの身を守ることを優先するように。」
“分かりました、グラディス艦長!”
タリアが呼びかけて、ラブが答えた。
「コンディションレッド発令!各モビルスーツ、発進準備!」
「コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機してください。」
タリアが呼びかけて、メイリンが命令を伝達する。ミネルバが連合に対して臨戦態勢に入った。
ミネルバのドックでは、カナタとシンたちがそれぞれの機体に乗って、発進の準備を整えていた。
「オレたちの任務は敵部隊を撃退とこちらの2隻の護衛だ。各々の即断即決も重要だが、この命令から外れる勝手な行動は慎むように。」
「了解!」
アスランが投げかけた言葉に、レイとルナマリアが答える。
「シン、お前もいいな?」
「は、はい・・」
アスランに言われて、シンが遅れて答える。彼の態度を気にしながらも、アスランはこれから起こる戦いに集中する。
「カナタくんはオレの指示に従ってほしい。本来ならザフトでない君に、オレたちが命令することはできないのだが・・」
「いえ、指示通りにします。戦闘の経験はザフトとサリアさんたちのほうが全然ありますから・・」
アスランが意見を聞いて、カナタが答える。イザナギに乗っての戦いを何度かこなしてきたカナタだが、シンたちやアンジュたちには及ばないと自覚していた。
(みんなの戦い方を学んで、自分の戦いに活かすしかない・・特にアスランさんは、彼の世界では前の戦争を終わらせた1人だそうだし・・)
カナタが心の中で呟いて、決意を確かめる。合わさってしまった世界を元に戻す方法を見つけるため、カンナを連れ戻すために。
「シン・アスカ、コアスプレンダー、行きます!」
シンの駆るコアスプレンダーでミネルバから発進した。続けてチェストフライヤー、レッグフライヤー、フォースシルエットが発進して、コアスプレンダーと合体してフォースインパルスとなった。
「アスラン・ザラ、セイバー、発進する!」
アスランの乗るセイバーも続けて発進した。
「ルナマリア・ホーク、ザク、出るわよ!」
「レイ・ザ・バレル、ザク、発進する!」
ルナマリアとレイのザクもミネルバの艦上に出た。
「天命カナタ、イザナギ、出ます!」
カナタの駆るイザナギもミネルバから発進した。
その頃、アンジュたちも飛行艇から発進しようとしていた。
「今度の相手は軍隊。いつも戦っているドラゴンとは勝手が違うから、そこだけ気を付けるように。」
サリアがアンジュたちに注意を投げかける。
「関係ないね。相手がドラゴンだろうと人間だろうと。」
「倒す・・それだけ・・・」
ヒルダが強気な態度を見せて、クリスも呟くように答える。
「アスラン隊長たちとも連携を取って、敵部隊の撃退に当たる。みんな、いいわね?」
「いいわよ、サリアちゃん。」
「OK♪」
サリアが改めて呼びかけて、エルシャとヴィヴィアンが答える。
「サリア隊、発進するわよ!」
サリアの掛け声でアーキバス、ヴィルキス、グレイブ、ハウザー、レイザーが飛行艇から発進した。
「私たちはこの飛行艇の守りに専念するわよ。」
「おう!よろしく頼むぜ、恭子!それとランガもな!」
恭子に答えて、孝一がランガに目を向けた。
「今度は私が入るよ・・ランガ!」
海潮が呼びかけて、ランガに意識を傾けた。顔が変わったランガが、ダイミダラーとともに飛行艇の上に出てきた。
インパルスたちを出撃させたミネルバ。他にもランガや様々な機体が出てきたのを、ネオたちが目撃した。
「あれか。ミネルバに味方しているのは。」
「機体やメカは分かりますが、あの黒いのは・・・!?」
ネオがイザナギやヴィルキスたちを見て呟くそばで、兵士がランガを見て驚く。
「機械ではなく生物のようだな。いずれにしろ、ただ者ではない敵であることに変わりはない。」
ネオもランガのことを考えてから、部下に指示を出す。
「カオス、アビス、発進!ガイアは別命あるまで待機だ。」
彼の出撃の命令が、ドックに向けて伝わった。
スティング、アウル、ステラがモビルスーツ「カオス」、「アビス」、「ガイア」に乗り込み、出撃に備えていた。その彼らにネオからの命令が届いた。
「どうして・・ステラだけ・・・?」
「ガイアは飛べもしなけりゃ海も泳げないんだ。当然だろ。」
自分だけ出られずに落ち込むステラに、アウルが気のない返事をする。
「軽口を叩くな、アウル。ステラ、お前にもすぐに出番が来る。それまで待つんだ。」
スティングがアウルに注意してから、ステラを励ます。
「わかった・・おるすばんしている・・・」
ステラが渋々納得して待つことにした。
「スティング・オークレー、カオス、発進する!」
「アウル・ニーダ、アビス、出るよ!」
スティングのカオス、アウルのアビスが出撃する。カオスが飛行して、アビスが海中を潜行してミネルバに近づいていく。
「世界が無茶苦茶になっても、お前たちはまた戦いを仕掛けてくるのか・・!」
シンが怒りを噛みしめて、インパルスがビームライフルを手にして、カオスを狙って射撃する。スティングが反応し、カオスがスピードを上げてビームをかわす。
アスランのセイバーもビームライフルを手にして、インパルスとともにカオスへ連射する。
「そんなにまとめてやられてぇか!」
スティングがいきり立ち、カオスが機動兵装ポッドからミサイルを発射する。インパルスとセイバーが素早くかわす。
そこへウィンダムの部隊が出撃して、インパルスたちに向かってビームを放ってきた。
「何体出てきたところで・・!」
「カオスはオレが相手をする!シンは量産型をミネルバに近づけさせるな!」
言い放つシンにアスランが指示を出す。
「カナタ、君もシンと一緒に向かってくれ!」
「分かりました、アスランさん!」
アスランが続けて指示を出して、カナタが答える。セイバーがビームサーベルを手にして、カオスに向かっていく。
「新入りの赤、お前はオレが落としてやるよ!」
スティングが不敵な笑みを浮かべて、カオスもビームサーベルを手にして、セイバーのサーベルとぶつけ合う。
「シンくん、ミネルバを守るよ!」
「分かっている!」
カナタが呼びかけて、シンが感情を込めて答える。イザナギもビームライフルを手にして、インパルスとともにビームを放ち、ウィンダムを撃ち抜いていく。
「おい、次元を歪めた武器は使わないのか!?」
「ディメンションブレイカーはまだ制御できていない・・相手どころか、こっちまで危険にさらしてしまうかもしれない・・!」
シンが問いかけると、カナタが歯がゆさを感じながら答える。また空間を歪めて世界に異常を起こしてしまうことを、カナタは危惧していた。
「せっかくの力があるのに使わないなんて・・!」
「使いこなせないなら、使ってメチャクチャにしてしまうより、使わないほうがまだマシだ!」
不満を感じていくシンに、カナタもたまらず感情をあらわにした。
「オレには力があるし、使いこなせる・・戦いを止めることができるんだ・・!」
強くなったという自信を強めるシン。インパルスがビームサーベルに持ち替えて、ウィンダムたちを切りつけていく。
「シンくん!」
単独で攻め立てるシンに、カナタがたまらず叫ぶ。彼が困惑を感じている中、イザナギのそばにヴィルキスとアーキバスが来た。
「何をボーっとしているの!?動かないと的にされるわよ!」
「あ、あぁ・・!」
アンジュに言われて、カナタが動揺しながら答える。ヴィルキスとアーキバスがアサルトモードに変形して、アサルトライフルを発射してウィンダムを撃ち落とす。
「数が多いわ・・接近戦で仕留めるわよ!」
サリアが指示を出して、ヴィルキスとアーキバスがラツィーエルとドラゴンスレイヤーを手にする。
「ヒルダとヴィヴィアンも前線へ!エルシャ、ロザリー、クリスは援護射撃を!」
「了解!」
サリアがさらに指示して、エルシャが答えた。レイザーとヒルダのグレイブもブーメランブレードと可変斬突槍「パトロクロス」を手にして、ウィンダムたちに向かっていく。
「いっけー、ブンブンまるー!」
ヴィヴィアンが高らかに叫び、レイザーがブーメランブレードを投げつけて、ウィンダムたちを切りつけていく。
「あたしらの力、連合軍にも見せつけてやるよ!」
ヒルダが言い放ち、グレイブがバトルクロスを振りかざして、ウィンダムたちをなぎ払う。
「ずるいなぁ。ヒルダたちだけ暴れられて・・」
「こっちはこっちで撃ち落としていけばいい・・」
ヒルダたちを僻むロザリーと、それでも敵を倒すことに集中するクリス。2人のやり取りを聞いて、エルシャも笑みをこぼした。
「ロボットが出てくるあれをやっつけちゃおー!」
ヴィヴィアンが意気込みを見せて、レイザーがネオたちに向かっていく。
「ネオは、ステラがまもる・・・!」
するとステラの乗るガイアが飛び出して、レイザーに突撃した。
「うわっ!」
突撃の衝撃でヴィヴィアンが悲鳴を上げる。レイザーとガイアが近くの島の海岸に落ちた。
「ヴィヴィアン!」
サリアが叫ぶが、アーキバスにウィンダムたちが迫る。
「私がヴィヴィアンのところに行くわ!」
アンジュが呼びかけて、ヴィルキスがレイザーの援護に向かう。
「イタタタ・・まだあんなのが出てくるなんて〜!」
ヴィヴィアンがガイアに対して不満の声を上げる。
「こわいもの、なくす・・てきは、やっつける・・・!」
ステラが呟き、ガイアがレイザーに向かっていく。
「ブンブン丸!」
レイザーがブーメランブレードを投げつけるが、ガイアが4足歩行のMA形態に変形してかわした。
「やばい!」
ヴィヴィアンが危機感を覚えて、レイザーが後ろに下がる。しかし走るガイアのほうが速い。
そこへヴィルキスが降下して、ラツィーエルを振り下ろしてきた。ガイアが横に動いて、ヴィルキスの一閃をかわした。
「ヴィヴィアン、下がりなさい!こいつの相手は私がする!」
「ありがとう、アンジュ!」
アンジュが呼びかけて、ヴィヴィアンがお礼を言う。
「おまえもてき・・・たおす・・・!」
ステラがヴィルキスに対しても鋭い視線を向ける。
ガイアが背部から「グリフォン2ビームブレイド」を発して、ヴィルキスに突撃する。ヴィルキスがラツィーエルを構えて、ガイアのビームブレイドを受け止める。
ガイアがヴィルキスに押し返されて、距離を取って着地した。
「よくも・・よくも!」
ステラが怒りを覚えて、ガイアが再びヴィルキスに向かっていく。
そこへインパルスが急降下してきて、ガイア目がけてビームサーベルを振り下ろしてきた。
「うっ!」
ビームサーベルの一閃でガイアが背部を切りつけられ、ステラがうめく。
「おまえも・・わたしのじゃまをして・・!」
ステラがインパルスに対しても不満を感じて、ガイアがモビルスーツ形態に戻ってビームサーベルを手にする。
そこへ飛行艇からランガも来て、ガイアが前後の挟み撃ちの状態になった。
「もうやめて!おとなしくそれから降りてきて!」
海潮が飛行艇からガイアに向けて呼びかけてきた。ステラはシンたちに包囲されて、不安を感じていた。
空と陸で戦闘が繰り広げられている中、アウルの乗るアビスが海中を進み、ミネルバのそばに来た。
「ようし・・ここから撃ち落としにかかるぜ・・!」
アウルが海上にいるミネルバを見上げて、アビスが攻撃の狙いを定めていた。