スーパーロボット大戦CROSS

第12話「戦士の集いし時」

 

 

 タリアたちや海潮と合流するため、カナタは魅波、ジョエルとともにイザナギを急がせていた。彼らが小さな孤島のそばを通り過ぎようとしたときだった。

「あ、あれって・・!」

 ジョエルが孤島を指さして、カナタと魅波が視線を移す。孤島の海岸に何かが浮かんでいるのを、2人も目にした。

「何かしら、あれは・・?」

「ちょっと見てみます。何もなければまた急ぎます・・」

 魅波が疑問を覚えて、カナタが言いかける。イザナギが降下して、その物体に近づいていく。

 物体の正体はヴィルキスだった。破損はないが、近くにアンジュの姿が見えない。

「あれは、あのドラゴンと戦っていた子たちの・・」

 魅波がヴィルキスを見て呟く。海岸に下りたイザナギから、カナタが出る。

「アンジュさん、どこにいるんですかー!?アンジュさーん!」

 カナタが叫ぶが、アンジュは現れない。

「まさか、海に投げ出されて、どこかに・・・!?

 彼が海に目を向けて、緊張を膨らませる。

「ヴィルキス、ここにあったか!」

 そこへエアバイクに乗るタスクが駆けつけて、ヴィルキスを見つけた。

「早くアルゼナルに運ばないと・・!」

「あの・・君は・・?」

 ヴィルキスを運ぼうとするタスクに、カナタが声をかけてきた。

「それはオレの知り合いが乗っているものです。その人が、もしかしたらこの近くにいるのかもしれないんです・・・!」

「その知り合い、アンジュのことだね・・アンジュなら無事だよ。」

 事情を話すカナタに、タスクが答える。

「アンジュを知っているんですか!?あなたは・・!?

「オレはタスク。アンジュならある場所にいる。彼女と一緒にいるメイドさんも無事さ。」

 戸惑いを覚えるカナタに、タスクが名乗る。

「モモカさんも無事だったのか・・それで、2人はいまどこに・・!?

「悪いけど、その場所は教えられない・・極秘の場所だからね・・でも2人の無事は間違いないから・・・」

 カナタが問いかけるが、タスクはアルゼナルの場所を教えなかった。アルゼナルは絶海の孤島にあり、その場所もその任務も極秘とされている。

「2人が無事と分かっただけでもよかったけど・・遅かれ早かれ、また2人に会うことになる気がする・・・!」

「・・あなたたちは、いったい・・・?」

 真剣な面持ちで言いかけるカナタに、タスクが戸惑いを覚える。

「それじゃヴィルキスのことはあなたに任せます。オレ、急いで行かないといけないところがあるから・・」

 カナタがタスクにヴィルキスを任せて、イザナギに戻っていった。

「君の名前は?」

「オレはカナタ。天命カナタです。」

 タスクが問いかけて、カナタが微笑んで答えた。コックピットのハッチが閉じたイザナギが、タスクの前から飛び去っていった。

(あの機体、知らないタイプだ・・パラメイルでもモビルスーツでも、あのダイミダラーとも違う・・)

 イザナギのことを気にしながら、タスクはエアバイクでヴィルキスを引き上げた。彼はヴィルキスのコンピューターを操作して、自動操縦に切り替えた。

「よし。早く戻らないと・・」

 タスクはエアバイクにヴィルキスをつなげて、アルゼナルに向かった。

 

 サリアたちに助けられて、タリアたちはオーブから、そしてドラゴンたちの襲撃から抜け出すことができた。ミネルバにインパルスとランガ、パラメイルが収容された。

「ふぅ・・何とかミネルバと合流することができたなぁ・・」

 ロザリーがミネルバのドックに足を付けてひと息つく。

「世界そのものだけじゃなく、いろんなとこでもゴチャゴチャになってるみたいだな・・」

「世界が違うのに、私たちに敵対する国や勢力ばかりが同盟を結ぶなんて・・」

 ヒルダがため息をついて、ヒルダが世界の現状に対して毒づく。

「すごかったわね、シン・・いったいどうしちゃったわけ!?なんか急にスーパーエース級じゃない!?

「あ、あぁ・・」

 驚きの声を上げるルナマリアに、シンが当惑しながら答える。

「なになに?何かあったの?」

 ヴィヴィアンがシンたちに近づいてきて、興味津々に聞いてきた。

「連合軍の新型の機体に、シンのインパルスがやられそうになったけど、そのときにものすごいパワーとスピードを発揮したの。そして新型も戦艦もどんどん倒していって・・」

「つまり、いきなりすごい力を発揮したというのね・・」

 ルナマリアが説明をして、エルシャが頷く。

「それってつまり、ブチ切れたってこと?それとも火事場の馬鹿力か?」

「いや、そういうことじゃないと思う・・連合を討ったのも、よく覚えてるし・・」

 ヒルダの問いかけに、シンが記憶を呼び起こしながら答える。

「ドラゴンと戦ったときも、アンタたちが来たことも・・」

「もしかしたら、とんでもないパワーが眠ってて、それが爆発したんじゃないかなー?」

 シンの話を聞いて、ヴィヴィアンが首をかしげていく。

「とにかく、お前の力があったから、オレたちは生き延びることができた。」

 レイもシンに向けて声をかけてきた。

「生きているということは、それだけで価値があることだからな。」

 レイは告げてからこの場を立ち去る。彼の意味深な言葉に、シンとルナマリアは疑問を感じていた。

「生きていることに価値がある・・ただドラゴンと戦うだけの私たちにも、価値があるというのかしら・・・」

 自分の生きる意味、戦う理由について考えて、サリアが空しさを覚えた。

 ノーマとして蔑まれ、囚人同然の扱いの中、いつ死ぬともわからないドラゴンとの戦いを続ける。自分たちの存在意義に、サリアは苦悩を感じていた。

「何はともあれ、これで連合軍を追い払って、オーブ軍も振り切ったってことだろ?ドラゴンたちにもやられずに済んだし。」

 ヨウランがやってきて、シンたちに声をかけてきた。

「マジですごかったよ、シン!あんなすごい戦いしちゃうんだからさー!」

 ヴィーノが感動と安心を込めて言いかけて、シンに近寄る。

「いや、ホントに無我夢中みたいな感じだったんだ・・」

 シンが戸惑いを感じながら答える。

「でも助かったよ〜。あなたたちが来なかったら、ドラゴンたちにやられてたかもしれない・・」

 ヴィーノがサリアたちに振り向いて、感謝と感動を見せる。

「オーブや連合が、あたしたちと対立しているところとも同盟を結んだからね。敵の敵は味方ってわけじゃないけどね・・」

 ヒルダが自分たちの考えを正直に言う。

「前に協力して戦った縁もあったから。それだけでも力を貸す理由には十分よ。」

「ありがとう、みんな。改めてよろしくね。」

 同じく自分の思いを告げるエルシャに、ルナマリアが感謝した。

「改めて自己紹介するわね。私はルナマリア・ホーク。」

「あたしはヒルダ。そっちはロザリーとクリスだ。」

 ルナマリアが自己紹介をして、ヒルダが自分とロザリーたちを紹介する。

「よろしくね、ルナマリ・・えっとマリルナ・・?」

 ヴィヴィアンがルナマリアに声を掛けるが、名前が覚えられずに首をかしげる。

「ルナって呼んでもいいよ。シンも私のこと、そう呼んでるから。」

「わーい♪よろしくね、ルナー♪」

 ルナマリアが苦笑いを見せて言うと、ヴィヴィアンが喜びを振りまく。

「私はエルシャよ。よろしくね、ルナマリアちゃん、シンくん。」

 エルシャが笑顔で挨拶して、ルナマリアと握手を交わした。

「私はサリアよ。これからあなたたちの艦長のところに行ってくるわ・・これからのことを話したいから・・」

 サリアも自己紹介をしてから、タリアのいる指令室に向かった。

(人の中にある強い力・・私の中にもそういうのがあれば、ヴィルキスを動かせる・・・)

 自分の潜在能力について考えるサリア。彼女はヴィルキスを乗りこなす可能性を見据えていた。

 

 ミネルバが航行を続ける中、海潮は指令室にて魅波と夕姫のことを聞いていた。しかしレーダーをチェックしてもイザナギ、ヴィルキス、ダイミダラーの反応は見られなかった。

「残念だけど、協力してくれた人たちの機体の反応はないわ。SOS信号も届いていない。」

「そうですか・・・すみません、私たちのために・・・」

 顔を横に振るタリアに、海潮が謝る。

「私たちも連合に追われる身になってしまった。だから広範囲の捜索は今はできない・・」

「はい・・その中で、お姉ちゃんとゆうぴーにうまく会えればいいですが・・・」

 タリアが投げかけた言葉に、海潮が小さく頷いた。

「上層部からの指令がこれから来るので、判断はそれからになるけど、進路の候補に日本も入っているから、あなたを送り届けるわ。」

「ありがとうございます。私たちのためにわざわざ・・」

 気を遣うタリアに海潮が笑顔で感謝した。

「グラディス艦長、話したいことがあるのですが・・」

 そこへサリアがやってきて、タリアに声をかけてきた。

「サリアさん、あなたも戦闘部隊として行動しているなら、基地か戦艦があるはずです。もしも本艦の進路にそれがあるなら、あなた方を送り届けることができます。」

「でしたらこちらの好都合です。艦長、これから言うポイントに行っていただけませんでしょうか?」

 話をするタリアに、サリアが提案をしてきた。

「その場所は?」

「私たちの基地、アルゼナルです。」

 タリアの問いに答えて、サリアが地図を見てアルゼナルのある地点を指し示した。

「私たちはマナという力を持つ者たちと違い、マナを打ち消してしまう存在、ノーマです。私たちは隔離され、このアルゼナルに送られるのです・・」

「そんな・・それじゃ囚人じゃ・・!?

 サリアが自分たちのことを話して、海潮が愕然となる。

「それが私たちの世界よ。ノーマは世界から差別され、迫害される。そしてノーマには、ドラゴン討伐の任務が与えられる。」

「そんなの間違っているよ!ノーマっていうのに生まれたからってだけで悪者にするなんて!」

「私たちも納得していないわ・・でもこれはどうすることもできないのよ・・世界そのものを作り替えない限りね・・・!」

 不満の声を上げる海潮に、サリアが憤りを噛みしめて言い返す。この言葉に反論できず、海潮は押し黙るしかなかった。

「アルゼナル・・この位置なら日本よりは近いわね・・」

 タリアがアルゼナルの位置を確認して、判断を下す。

「分かったわ。アルゼナルに寄らせてもらいます。ただしあなたたちのことをプラントに、私たちの上層部に報告しますが、よろしいですか?」

「その上層部だけに留めて、他には口外をしないというのであれば・・私たちやアルゼナルのことは、私たちの世界では極秘事項とされていますので・・」

 互いに了承して頷くタリアとサリア。

「このこととこれまでのことを暗号化して、プラント最高評議会、ギルバート・デュランダル議長に通達します。」

「了解、グラディス艦長!」

 タリアが指示を出して、アーサーが答えて敬礼する。タリアが報告をプラントに向けて送信した。

(ドラゴンと戦うメイルライダー、バロウの神であるランガと王となった海潮さんたち、ペンギン帝国と戦うダイミダラー、そして混じり合った世界・・私たちは、かつてない事態に直面している・・)

 タリアが現状を確かめて、深刻さを募らせていく。

(大西洋連邦と同盟を結んだのはオーブだけではない。ミスルギ皇国を含む多くの国も同盟を、あるいは協力関係を結んでいる。私たちも、サリアさんや海潮さんたちと協力して戦う必要がある・・)

 自分たちも手を組んで、自分たちや世界、宇宙を脅かす存在に対抗する。その必要性をタリアは感じていた。

 

 タリアからの報告は、コーディネイターの住むスペースコロニー、プラントの最高評議会に伝達された。

「世界の融合、他の世界の者たちとの出会い・・人知を超えた異変が起こっているとは・・・」

 最高評議会議長、ギルバート・デュランダルがタリアからの報告に目を通して、世界の現状について呟く。

「連合やオーブのように、我々も我々に協力してくれた者たちと、本格的に手を組む必要がある・・」

「デュランダル議長・・・」

 ギルバートの判断を耳にして、近くにいた議員が戸惑いを覚える。

「グラディス艦長の提案を承認しよう。アルゼナル、バロウ王国、プリンス、そしてシクザル博士との協力を申請してくれ。私も交渉に参加する。」

「分かりました。そのようにミネルバに通達いたします。」

 ギルバートの決断と指示に、議員が答えた。彼らの了承の回答が、タリアたちに伝えられた。

 

 ギルバートからの指令がタリアに届いたのは、ミネルバがアルゼナルに到着する直前だった。

「プラントからの許可が出たわ。本艦はこのままアルゼナルに向かいます。」

「感謝します、グラディス艦長。」

 タリアがギルバートからの通達を話して、サリアがお礼を言う。

「それとサリアさん、海潮さん、あなた方に協定を結びたいと、議長は申しています。」

「私たちと!?

 タリアが続けて言ったことに、海潮が驚きの声を上げる。

「私たちの敵対勢力が同盟を結んでいます。私たちが別個に行動していては、とても対処しきれません。」

「だからあたしたちも手を組んで、万全を期すってわけか。」

 タリアの見解を聞いて、ヒルダが笑みを浮かべる。

「それは分かりますが、私たちだけで決めるわけにはいきません。アルゼナルの司令の判断を仰がなくては・・」

 サリアは冷静に判断して、タリアに提言する。

「このような重要なこと、簡単に決められることではないわね・・まずはアルゼナルに到着して、司令官にもこのことを伝えます。」

 タリアが考えを告げて、サリアが頷いた。

「海潮さんもこの話は魅波さん、夕姫さんと合流してからでよろしいですね?」

「はい。私も、私だけで決めるわけにはいきませんから・・」

 タリアから話を投げかけられて、海潮も頷いた。

「プリンスとシクザル博士とも、みんなと会ってからになるわね・・・」

 孝一たちとカナタたちのことも考えるタリア。ミネルバはアルゼナル内の平原に着陸した。

 

 ミネルバがアルゼナルに来るという知らせは、ジルたちにも伝わっていた。

「別の世界のヤツらが、私たちと協定を結ぼうとはな。だが、そいつらの実力も兵器の性能も悪くはない。」

 サリアからの通信とともに送られてきたカナタたちの戦闘データに目を通して、ジルが笑みを浮かべる。

「しかし、私たちを利用する魂胆かもしれないよ。用心するに越したことはないね。」

「そんなことは言われなくても分かっている。向こうの代表とは私が話をする。」

 ジャスミンからの注意に言い返して、ジルはミネルバの動きをうかがう。ミネルバからタリアとレイが出てきた。

 ジルもアルゼナルの指令室から外に出て、タリアたちと対面した。

「私がこのアルゼナルを管理しているジルです。サリアたちがお世話になったそうですね。」

「はい。ザフト所属、ミネルバ艦長、タリア・グラディスです。私たちのほうがサリアさんたちに助けられました。感謝しています。」

 ジルとタリアが自己紹介をして、右手を差し出して握手をした。ジルは右腕を失っていて、機械の義手となっていた。

「あなたたちのことは調べさせていただきました。あなたたちの世界では、かつてナチュナルとコーディネイターによる戦争が行われ、今またその戦いが始まろうとしていることも。」

 ジルがタリアたちのことを告げる。世界の融合を知ったジルは、融合した並行世界について調べていた。

「現状把握が早いですね。私たちも次元や並行世界について研究している人物と会っていなければ、調査が遅れていたでしょう・・」

「こっちも、アンジュやラブという娘の話を聞いていなければ、理解に時間がかかったでしょう・・」

 2人が話を進めて、現状把握と見解を口にする。

「先程連絡した通り、アンジュさんたちはここにいるのですね・・!」

「えぇ。今はドラゴン出現に備えて待機させてますが、あなたたちのいるほうにドラゴンの群れが現れるとは・・」

 タリアにアンジュたちのことを聞かれて、ジルがアルゼナルの施設のほうに目を向ける。

「ジル、サリア隊、ただ今戻りました・・」

 サリアがジルの前に来て挨拶をした。

「災難だったな、サリア。ドラゴン討伐に関する報告は、後で聞かせてもらう。」

「分かりました。」

 ジルが指示を送り、サリアが答えた。

「グラディス艦長、せっかくの協定の申し入れだが、私たちには私たちのやるべきことがある。あなたたちの戦いにまで介入する余裕はないのです。」

 ジルがタリアからの申し出を拒否する。ジルはアルゼナルでの戦いを優先していた。

「もちろん、ドラゴン打倒においてあなた方に協力します。」

「それでも我々はまだここを離れるわけにはいきませんよ。これ以上サリアたちを外へ出すこともね。」

 協力の意思を示すタリアだが、ジルは賛同しない。

「コーディネイターの居住区であるプラントの最高評議会の議長、ギルバート・デュランダルからの申請書になります。」

 タリアが申請書を取り出して、ジルに手渡した。

 申請書の内容は、サリアたち一個中隊をザフトの傭兵、遊撃隊として雇いたいというものだった。報酬は中隊の1人1人だけでなく、アルゼナルにも与えられる形で、金額もドラゴン退治の収入を大きく上回っていた。

「ほう?私たちを買収しようとでもいうのか?」

「資金が増えれば、あなた方の任務もしやすくなると、議長の判断です。」

 嘲笑を見せるジルに、レイが続けて告げた。

「手を組んだ勢力が大きくなった今、自分たちだけで乗り切るのは難しいことは、あなたたちも分かっているはずです。」

「分かった風なことを言う。私たちとは違う世界の人間でありながら・・」

「ならば今の世界の状況を打開する策があるのですか?自分たちだけで乗り切れる決定的な策が・・」

「フン。つくづく言ってくれるな・・」

 レイの指摘を受けて、ジルがさらに笑みをこぼした。

「貴様のことは気にくわないが、その申し出、聞き入れることにしよう。」

 レイへの不満を見せながらも、ジルは申請書の内容を受け入れることにした。

「ありがとうございます、ジル司令。」

「詳しい話は後で。我々の協力者は他にもいるのでしょう?」

 礼を言うタリアに言いかけて、ジルはきびすを返して施設の中に去っていった。

「ここの人たちとはうまく話がつきましたね。」

「うまくいったかどうかは微妙だけどね・・後は魅波さんとプリンス・・カナタさんとはうまく話が進むと思うけど・・」

 レイが表情を変えずに言って、タリアがこれからのことを考える。

(大金絡みとはいえ、ジルがこのようなことを受け入れるとは・・・)

 ジルの判断に、サリアが戸惑いを感じていた。

「あなたたちも無事だったのね。」

 アンジュがやってきて、サリアに声をかけてきた。

「アンジュ、あなたが先にアルゼナルに戻ってきていたとはね・・私たちはミネルバともにドラゴンの討伐をしていたのだけど・・」

 サリアがアンジュに答えて、自分たちの経緯を話す。

「いいわね、ドラゴン退治ができて・・私なんてひどいことの連続よ・・簀巻きにされて、ナイフで刺されて、みんなから罵声を浴びせられて・・」

 するとアンジュがため息をついて不満を口にしてきた。彼女の言っていることの意味が分からず、サリアが眉をひそめる。

「お〜♪サリアちゃんたちも戻ってきたか〜♪」

 そこへ孝一も飛び出してきて、サリアを見て目を輝かせてきた。

「あなたもここにいたの!?・・最悪な人物が来たものね・・」

「その意見には賛成するわ・・始末してもよさそうね、このけだものは・・」

 孝一がいたことにサリアが驚き、アンジュが肩を落とす。

「またオレのハーレムの時がやってきたぜ〜♪」

「調子に乗らないの、孝一くん!」

 有頂天になっている孝一を、恭子が夕姫と一緒にやってきて注意してきた。

「いいじゃんか、恭子!これでやっとハーレムが完成するっていうのによー♪」

「本当に始末したほうがいいわね・・射撃の的にしてもいいかも・・」

 ふくれっ面を浮かべる孝一に、アンジュが呆れ果てていた。

「ゆうぴー!やっぱりここにいたんだね!」

 海潮もミネルバから出てきて、夕姫に駆け寄ってきた。

「海潮、あなたもミネルバに乗っていたの・・!?

「うん!ランガも一緒だよ!」

 夕姫が戸惑いを覚えて、海潮が笑顔で頷く。ランガがミネルバから降りて、2人に姿を見せた。

「魅波お姉ちゃんは?・・一緒じゃないの・・?」

「ううん、あたしたちだけ・・グラディス艦長たちに助けられて、ミネルバでここまで来たの・・」

 夕姫が魅波のことを聞いて、海潮が顔を横に振る。

「カナタくん・・カナタくんとゼロス博士はいますか!?

 ラブもやってきて、タリアたちに聞いてきた。

「ラブちゃんも無事だったんだね・・カナタさんも一緒じゃないよ・・」

 海潮がラブとも再会できたことを喜ぶが、カナタもいないことを答えた。

「もしかしたら、2人一緒に行動しているのではないでしょうか・・?」

「だとしたら安心なのだけど・・あるいは、シクザル博士と再会していれば・・・」

 レイの推測に答えて、タリアがカナタたちの身を案じる。

「恭子さん、あなた方がどこかの部隊に所属しているのなら、司令官とお話がしたいのですが・・」

 タリアが恭子にも協定の話を持ちかけてきた。

「分かりました。すぐに連絡を取ります。プリンスの又吉長官と・・」

 恭子が頷いて、タリアとともにミネルバに向かった。

 

 恭子を連れてミネルバの指令室に戻ったタリア。そこではメイリンがオーブ近海での戦闘のデータを整理していた。

「メイリン、恭子さんの言うチャンネルに合わせて通信を送ってほしいのだけど・・」

 そんなメイリンにタリアが呼びかけてきた。

「はい。どこへ連絡するのですか?」

「この通信コードに合わせれば、私たちの本部に連絡ができます。」

 答えたメイリンに、恭子がプリンスの本部の通信コードを教えた。

“はい。こちらプリンスですが?”

 ミネルバからの通信に、女性の声が返ってきた。

「その声・・もり子博士ですね!」

“えっ!?もしかして恭子ちゃん!?

 喜びの声を上げる恭子に女性、友寄(ともよせ)もり子が驚く。

“恭子から連絡!?う、うわっ!”

 別の声が聞こえて、その声の主である少女が転んで悲鳴を上げた。

“もう、そり子は相変わらずドジっ子なんだから〜・・”

 転んだ少女、真境名(まじきな)そり子にもう1人の少女、呉屋(ごや)せわし子が注意をしてきた。

「みんな、長官と話をしたいのだけど・・」

“あ、又吉長官ですね。すぐに知らせます・・!”

 恭子が苦笑いを浮かべて呼びかけて、そり子が慌ただしく答えた。

“恭子、孝一、お前たち今まで何をしていたー!?

 少しすると、突然怒鳴り声が響いてきて、恭子とメイリンがたまらず手で耳を押さえた。

「ち、長官・・そんな大声出したら迷惑がかかります・・・」

 タリアたちを気に掛けて気まずくなる恭子。

“す、すまん・・お前がいるところ、特殊な軍の施設かその類ではないか?”

 プリンス長官、又吉(またよし)一雄(かずお)が謝ってから、恭子に問いかける。

「はい。私たちは並行する別の世界の人たちと出会い、その協力に助けられました。プラントという国の軍、ザフトの戦艦から連絡しています。」

“プラント?ザフト?”

 恭子が説明すると、一雄が疑問符を浮かべる。

「平行世界に存在しているのです。そしてその世界が今、混ざり合っているのです・・」

“何だと!?・・どうりでおかしなヤツらが出てきたと思ったら・・・!”

「それで、ザフトの戦艦の艦長から、私たちに協定の話が出たのです。」

“協定だと?”

 恭子の持ちかけた話に、一雄が疑問を覚える。

「今、その艦長に代わります。」

 恭子がタリアと目を合わせて頷き合った。

「ザフト所属、ミネルバ艦長、タリア・グラディスです。恭子さんと孝一くんが助けていただき、感謝しています。」

“じ・・女性の艦長・・・!”

 タリアが挨拶すると、一雄が動揺をあらわにしてきた。

“プリンスの長官を務めています、又吉一雄です。お話というのは・・?”

 一雄が落ち着きを取り戻して、タリアの話に耳を傾ける。

「先ほど恭子さんが申したように、世界が融合し、数多くの国や組織が同盟を結び、私たちに敵対しています。私たちも力を合わせなければ、その巨大な勢力を迎え撃つことは厳しいです。」

 タリアが一雄に現状を話す。

「恭子さんと孝一くんは協力の意思を示しています。あなたからも許可が頂けるなら・・」

“1つ聞きたいことがあります。我々以外にも協力を求めている人物がいるなら教えていただきたい。”

 一雄がタリアに対して進言をしてきた。

「分かりました。これから交渉に当たる人も含めて、その代表と主なパイロットをリスト化してそちらに送信、提示します。」

 タリアが頷いて、自分たち、アンジュたち、海潮たち、そしてカナタたちのことを一雄たちに伝えた。

“これは・・なかなかの美女揃いだな・・・!”

 一雄がリストの中の女性たちに目を通して呟く。

“分かった。我々もあなた方に協力しましょう。”

「ありがとうございます、又吉長官。」

 協定を受け入れた一雄に、タリアが感謝した。

“ただし、我々が戦っているペンギン帝国が、その同盟軍と手を組む可能性も否定できない。そのときはあなたたちにも、帝国と戦ってもらいたい。”

「それはもちろんです。我々もあなた方への協力を惜しみません。」

 一雄からの進言に、タリアが快く答えた。

“グラディス艦長、よろしくお願いします。他の代表や司令官にも、後でお話させていただきます。”

 一雄が挨拶して、タリアとの通信を終えた。

「感謝します、又吉長官・・」

 恭子が一雄に礼を言って、タリアに目を向けて頷いた。

(残るはバロウ、魅波さんとカナタくん・・)

 タリアが他の協定の相手のことを考える。

(私たちの敵対勢力の規模は大きい・・連合、オーブ、ドラゴン、ミスルギ皇国、ペンギン帝国、そして愛野カンナさんとイザナミ・・他にも敵勢力が現れるかもしれない・・・)

 これからの戦いを予感して、彼女は決意と覚悟を胸に秘めていた。

 

 シンたちや海潮との再会を喜んだラブだが、カナタとまだ会えないことに悲しみを感じていた。

(カナタくん・・あなたはどこにいるの・・・?)

 カナタへの思いを募らせていくラブ。

(私に何かが起こってる・・カナタくんと博士は、何か知ってるのかな・・・?)

 自分の胸に手を当てて、不安を感じていくラブ。彼女は自分に起きている異変に気付き始めていたが、それが何かは自覚していなかった。

 

 

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