スーパーロボット大戦CROSS
第7話「歪む世界」
イザナギの前に現れたイザナミ。カンナの登場にカナタが緊張を覚える。
「カンナ・・どうして、オレたちに襲い掛かってくるんだ!?・・オレたちと一緒に強くなればいいのに・・!」
カナタが声を振り絞って、カンナに問いかける。
「ゼロス博士に任せ切りでは、いつ力を高められるか分からない・・イザナミを使っているので、博士の科学に頼っているところはまだあるけど、ここからは私の意思で力を高めていく・・!」
自分の中にある力への渇望を告げて、カンナが笑みをこぼす。
「だからって、オレたちを攻撃してくることはないじゃないか!ラブちゃんを悲しませてまで、力を求めるのか!?」
「あなたがそれをいうの!?あなたの存在が、私の力への欲求を強めた原因と言っていいのよ!」
必死に呼びかけるカナタに、カンナが過剰を込めて言い返す。
「私には力がなかった・・あのときのあなたに比べたら・・あの力に屈したら、私は終わりだと・・・!」
「あのとき・・・もしかして、イザナギが暴走したっていう、あの・・・!?」
カンナからの指摘を受けて、カナタが記憶を呼び起こそうとする。
「あのときのイザナギとイザナミは、完成直前のテスト段階だった。イザナギのパイロットとなったあなただけど、イザナギは暴走して周囲を無差別に攻撃していった・・」
「そうだったと聞いている・・でもあのときはオレは、意識がなかったんだ・・・!」
「そう・・あなたはそう言っていた・・イザナギの中にいながら、その暴走を直接見ていなかった・・でもあの力が、私の心を刺激したのも間違いないのよ・・!」
「だから君は、イザナミを持ち出してここを出たっていうのか・・・!?」
自分の考えを口にするカンナに、カナタが問い詰めていく。
「ラブちゃんも、君の帰りを待ってるんだ・・今からでも遅くない・・戻ってきてくれ・・!」
「そんなつもりはないよ・・私はまだ、誰にも負けない力を手にしてはいないんだから・・・!」
説得を試みるカナタだが、カンナは聞き入れようとしない。
「最高の力・・それはイザナミだけじゃなく、イザナギも必要になってくる・・カナタ、私と一緒に来て。そうすればあなたも・・・!」
「冗談じゃない!ラブちゃんや他のみんなを切り捨てて、何が最高の力だ!そんなものを求めても手に入れても、何の満足もしない!」
誘いをしてくるカンナだが、カナタは感情を込めて言い返して拒絶した。
「そう・・・だったら、力ずくであなたとイザナギを連れていくしかないようね・・・!」
カンナがため息をついて、イザナミがビームライフルを手にして射撃してきた。カナタが反応し、イザナギがビームをかわす。
「カンナ・・・力ずくでも、イザナミを止めるしかないのか・・・!」
カンナと対峙することに苦悩するカナタ。彼は迷いを振り切ろうとしながら、イザナギを動かした。
シンたちとアンジュたちがウィンダム、ドラゴンと交戦している最中、マイケルたちペンギンコマンドも動き出していた。彼の元に新たなロボットが現れた。
「まさかまたロボットがこっちに送られてくるとは・・!」
「しかも新型・・南極9号ってところか・・!」
マイケルとデニスがロボット「南極9号」を見上げて、驚きの声を上げる。
「いったい何者なんだ、あの美女は・・!?」
ジェイクが少し前のことを思い出していた。
孝一たちに敗れて、またも途方に暮れていたマイケルたち。彼らは基地にも帰れず、気まずくなるばかりになっていた。
「オレたち、これからどうしたらいいんだ・・?」
「このまま野良ペンギンになっちまうのかよ〜・・!?」
デニスとジェイクがこれからの自分たちを悲観して、落ち込んでいく。
「絶望ばかりとは限らないわ。」
そこへ声がかかり、マイケルたちが足を止めて振り返る。次の瞬間、突然起こった揺れに彼らが揺さぶられる。
「な、何だ!?」
眼前に現れた南極9号に、マイケルが驚きを見せる。
「これがあれば、あなたたちの敵に少しは対抗できると思うのだけど?」
彼らの前に1人の女性が現れた。
「おー!綺麗な女だー!」
「もしかして、あなたがこのロボをー!?」
マイケルとジェイクが女性と南極9号を見て、感動の声を上げる。
「しかしお前、なぜこれを?・・お前はいったい・・・!?」
デニスが女性に疑問を投げかける。
「私のことはどうでもいいじゃない。それよりも、それであなたたちのしたいことをすればいい・・」
女性は微笑んで、南極9号に目を向ける。
「見届けさせてもらうわ。あなたたちのがんばりをね。」
女性はそういうと、マイケルたちの前から姿を消した。
「何だったんだ、あの女は・・!?」
デニスが女性に対して疑問を膨らませていく。
「親切だったなぁ〜♪あんな美女が、オレたちにここまで親切にしてくれるなんて〜♪」
「もしかして、オレたちペンギンの熱烈なファンだったんじゃないか!?」
しかしジェイクとマイケルは女性に対して感謝と感動を感じていた。
「よーし!このロボでやつけてやるぞー!ダイミダラーも他のロボットもー!」
マイケルが意気込んで、南極9号に乗り込んだ。動き出した南極9号を、デニスとジェイクが追いかけていく。
「せいぜい派手に盛り上げてくれると嬉しいわ・・」
女性が微笑んで、マイケルたちを見届けた。この女性こそがカンナだった。
シクザルドームに近づいてくる南極9号に、ゼロスたちは気付いた。
「あれはペンギン帝国のロボット!・・こんなときに現れるなんて・・!」
恭子が南極9号を見て緊迫を覚える。
「相手がペンギン帝国なら、オレの出番だな!行くぞ、恭子!」
「えぇ!・・シクザル博士、私たちも行きます!」
孝一が意気込みを見せて、恭子がゼロスに呼びかける。
「すまない、君たちもみんなも・・このような混迷とした問題に巻き込んでしまって・・」
「いえ。ペンギン帝国との戦いは、元々は私たちの戦い。今も私たち自身の戦いに挑むだけのことです。」
謝意を示すゼロスに恭子が弁解する。彼女は孝一とともにダイミダラーに乗り込んだ。
「覚悟しろよ、ペンギン帝国!」
「ダイミダラー2型、発進します!」
孝一が不敵な笑みを浮かべて、恭子が掛け声を上げる。ダイミダラーがシクザルドームから出て、近づいてきた南極9号の前に立ちはだかった。
「こんなとこにいたか、ダイミダラー!だがここでお前たちは敗北を喫することになるのだ!」
マイケルがダイミダラーに向かって言い放つ。
「そうはいくか!おめぇらの好き勝手にさせるかよ!」
孝一が言い返して、集中力を高める。彼の体からハイエロ粒子の光があふれ出して、ダイミダラーのパワーが上がる。
南極9号がダイミダラーに向かって突っ込む。ダイミダラーがジャンプして、南極9号の突進をかわした。
「くらえ、指パーンチ!」
孝一が言い放ち、ダイミダラーが降下しながら左手にエネルギーを集めて突き出した。
次の瞬間、南極9号の体が縦半分に分かれて、ダイミダラーの左手をかわした。
「何っ!?」
南極9号の分離に驚く孝一。南極9号の体2つが高速で動くと、ダイミダラーを挟み込んだ。
「ぐおぉっ!」
ダイミダラーが押しつぶされて、孝一がうめく。
「このままではダイミダラーがバラバラになってしまう・・脱出しないと・・!」
恭子が呼びかけて、孝一がダイミダラーを動かす。しかし南極9号を跳ね除けることができない。
「こうなったら、ハイエロ粒子を高めるしかねぇ・・恭子!」
孝一が呼びかけて、恭子の座っているシートが動いて、後ろを向いて彼と向かい合う「フロントアタックモード」となった。
「行くぜ、恭子・・!」
「わ、私も覚悟を決めるわ、孝一くん・・・!」
孝一と恭子が共に息をのむ。孝一が手を伸ばして、恭子の胸を揉み始めた。
「う・・うぅぅ・・うあぁぁ・・・!」
「来た来た来たー!力がみなぎってきたぜー!」
恭子があえぎ声を上げて、孝一が快感を覚える。彼の体からハイエロ粒子の光があふれ出し、ダイミダラーに伝わっていく。
「たとえパワーを上げても、体2つで押さえてるんだ!片方しかあのビームを出せないお前には止められんぞ!」
マイケルがアイミダラーに負けていないと実感して、高らかに言い放つ。
「やべぇ!これじゃせっかくのパワーも空回りになっちまう!」
「でも抜け出さないと・・このままだと、ダイミダラーが押しつぶされてしまうわ・・・!」
南極9号を押しのけられず、孝一と恭子が危機感を覚える。南極9号がダイミダラーを追い込みつつあった。
ダイミダラーのピンチを、シクザルドームの研究室から見ていた海潮、魅波、夕姫。海潮がいてもたってもいられなくなる。
「どこへ行くの、海潮!?」
研究室から飛び出そうとした海潮を、魅波が呼び止める。
「みんながピンチなのに、黙って見てるなんてできないよ!私たちも何とかしなくちゃ!」
「でもこれは、私たちには関係のないことよ。それぞれ関わり合いのある他のみんなと違って・・」
カナタたちを気遣う海潮だが、夕姫は半ば呆れた素振りを見せる。
「だからって、見捨てていいなんてことはないよ!それにみんなは、この世界やここだけじゃなく、私たちを守るために戦ってるんだよ!」
それでも海潮は引き下がらず、1人飛び出してしまった。
「海潮!・・しょうがないんだから・・!」
魅波が肩を落としてから、海潮を追いかけた。
「アンタはここにいて。海潮を連れ戻してくるから・・!」
夕姫もジョエルに言ってから、研究室から出ていった。
(夕姫・・・海潮さん・・魅波さん・・・)
彼女たちを見送るジョエルが、不安を感じていた。
(カナタくん・・・お姉ちゃん・・・)
ラブもカナタとカンナのことを思って、胸を締め付けられるような気分に襲われていた。
シクザルドームの前で待機していたランガのそばに、海潮が駆けつけた。
「お願い、ランガ・・みんなを助けたいの・・ここや世界を守ろうとしているみんなの力になりたい・・・!」
海潮がランガを見上げて、自分の願いを口にする。
「力を貸して・・ランガー!」
彼女の叫び声を受けて、ランガが動き出した。ランガの顔が変わり、光を発した胸の紋様から剣を引き抜いた。
ランガがダイミダラーを挟んでいる南極9号に向かっていき、剣を振りかざした。剣は南極9号の体の1つを叩いて、ダイミダラーから引き離した。
「あれは、ランガ・・!」
「助かったぜ、アンタ・・!」
恭子と孝一がランガと海潮を見て言いかける。
「今までやってくれたお礼、たっぷりしてやるぜ!」
孝一が感情をむき出しにして、ダイミダラーが左手にハイエロ粒子を集中させていた。南極9号が分かれていた胴体を合体させて、ダイミダラーに向かっていく。
「くらえ!必殺、指ビーム!」
ダイミダラーが左手を突き出して、ビームを放った。ビームが南極9号の胴体を貫いた。
「ちくしょー!あの黒いのに邪魔されなければー!」
絶叫を上げるマイケルが、慌てて南極9号から脱出した。その直後に南極9号が爆発した。
「うん。またペンギン帝国のロボットを倒したわ。」
「あぁ!ありがとな、ランガ!
微笑みかける恭子と、ランガを見て感謝する孝一
「でも、私たちのいたのとは別の世界であるここに、なぜ新しいペンギン帝国のロボットが・・・?」
恭子が疑問を感じて眉をひそめる。
「まだまだやり足りねぇなぁ・・もっとやらせてくれ、恭子ちゃーん♪」
孝一がにやけて、再び恭子に飛びついてきた。
「ち、ちょっと、孝一くん!そんなことしている場合じゃないでしょ!」
恭子が悲鳴を上げるが、孝一はハレンチの手を止めない。ダイミダラーの中でドタバタしている2人に、海潮も魅波たちも呆れていた。
シンの駆るインパルス、タリアの指揮するミネルバはウィンダムたちに対して優勢を見せていた。レイのスラッシュザクファントム、ルナマリアのガナーザクウォーリアもミネルバにウィンダムを近づけさせないように、攻撃を続けていた。
「戦闘の後に敵機の調査を行います。機体とそのパイロットの回収の準備を・・」
タリアが戦いの後のことを考えて、指示を出す。インパルスとミネルバがそれぞれ残り1機のウィンダムを撃墜させた。
ウィンダムが落ちた場所に徐々に降下していくインパルス。シンがウィンダムを見据えて、コックピットや周囲にも目を向ける。
「パイロットが、いない!?・・どうなってるんだ・・!?」
パイロットが見当たらないことに、シンが目を疑う。インパルスが地上に着地して、シンがコックピットから外に出て、破損したウィンダムに近づく。
「やっぱりいません!逃げ出した様子も見られない・・!」
シンがさらに見回して、驚きを募らせる。
「ミネルバのカメラも捉えられません・・!」
メイリンもパイロットを捜索するが、見つけることができない。
「まさか、機体に誰も乗っていなかったというの・・・!?」
「そ、そんな!?」
タリアがこの事態に対して推測を巡らせて、アーサーが驚きの声を上げる。
(これだけの数のモビルスーツが、全て自動操縦で動いていたというの・・・!?)
タリアはウィンダムに対して疑問を感じていく。
「本艦が敵機の回収に当たります。シンはカナタくんの援護に向かってください。」
「了解!インパルスにデュートリオンビームを!」
タリアの指示に答えて、シンが呼びかける。ミネルバから光線「デュートリオンビーム」がインパルスに向けて照射された。
インパルスには「デュートリオンシステム」が搭載されており、デュートリオンビームを受けることでエネルギーを回復させることができるのである。
エネルギーを回復させたインパルスが、イザナギの加勢に向かった。
ヴィルキスたちの攻撃の前に、ドラゴンたちも次々に落とされていった。
「これだけの数だ!仕留めた数は痛姫に負けてねぇ!」
ヒルダが手応えを感じて笑みをこぼす。
「ここでクイズでーす♪倒したドラゴンの分のお金は、誰がくれるのでしょーか?」
「あっ・・・」
ここでヴィヴィアンが声をかけて、ヒルダとロザリーが言葉を詰まらせた。
「ち、ちょっと待て!これじゃただ働きじゃねぇかよ!」
「早くアルゼナルに戻んなくちゃー!」
ヒルダが文句を言って、ロザリーが頭を抱える。
「気を抜くのは早いわ!まだ戦いは終わっていないのよ・・!」
サリアが呼びかけて、イザナギとイザナミの戦いに目を向ける。イザナミの攻撃にイザナギは悪戦苦闘していた。
「まったく、見ていられないわね・・・!」
アンジュがため息をついて、ヴィルキスがイザナミに向かっていった。
ビームライフルによる速く正確な射撃を仕掛けるイザナミに、イザナギが追い詰められていく。カナタはカンナに対して迷いを振り切ることができないでいた。
「最初の威勢はどこに行ったの?これで私を連れ戻すなんて、笑わせるわ・・」
カンナがイザナギを見下ろしてあざ笑う。
(ダメだ・・どうしてもカンナを攻撃することができない・・・!)
迷いに囚われて苦悩するカナタ。イザナミが放つビームを、イザナギがとっさに後ろに動いて回避する。
(カンナを止めるには、攻撃を仕掛けるしかない・・だけど、オレは傷つけるために、このイザナギを使いたくはない・・・!)
戦うことへのためらい、傷つけてしまうことへの不安を感じて、カナタは戦う意思を揺さぶられていた。
「つまらない・・拍子抜けね・・だったらこのまま、イザナギを連れていくわ・・」
カンナがため息をついて、イザナミがイザナギに近づいていく。彼女はイザナギを連れていこうとした。
そのとき、イザナミに向かってビームが飛んできた。カンナが反応し、イザナギがビームをかわした。
シンのインパルスが駆けつけて、立ち上がったイザナギと合流した。続けてアンジュのヴィルキスも駆けつけた。
「何やってるんだよ!?やられっぱなしじゃないか!」
「あなたがグズグズしているから、こっちは片付いてしまったわ・・」
シンがカナタに文句を言って、アンジュがため息をつく。
「もう片付けてしまったのね・・あなたたちの力を侮りすぎてしまったわね・・」
カナタがインパルスとヴィルキスを見て笑みをこぼす。
「せっかくの機会だから、あなたたちの力も確かめさせてもらうわ。私がより強い力を手に入れられるように・・」
カナタがシンたちに言いかけて挑発する。
「アイツ・・いい気になるな!」
シンが怒りをあらわにして、インパルスがビームライフルを発射した。イザナミもビームライフルを発射して、ビームがぶつかり合って相殺された。
インパルスがビームサーベルに持ち替えて、イザナミに向かっていく。イザナミもビームサーベルを手にして、2本のビームの刃がぶつかり合う。
「力強い攻撃ね。でも荒々しいから、隙も見え隠れしている・・」
カンナがシンの力と戦い方を把握して言いかける。イザナミがインパルスのビームサーベルを受け流す。
「何っ!?」
シンが驚愕して、インパルスが体勢を崩す。イザナミがビームサーベルを振り上げて、インパルスに攻撃しようとした。
そこへヴィルキスが飛び込み、ラツィーエルを振りかざしてきた。イザナミがビームサーベルで受け止めるが、ヴィルキスに押されていく。
「あなたも似たようなものね。機体の性能は、あなたのほうが少しだけ上だけど・・」
カンナがアンジュとヴィルキスの力を確かめて微笑む。
「甘く見ないで!」
アンジュが言い返して、ヴィルキスがラツィーエルを押し込む。イザナミが後ろに動いて、ヴィルキスの一閃を回避する。
「あなたたちも強くなるのよ。そうすれば私も力を手に入れられるから・・」
カンナがシンとアンジュにも挑発を投げかける。
「オレたちがいることも忘れるなよ!」
そこへ孝一の駆るダイミダラーが駆けつけて、イザナミに左手を突き出してきた。カンナが反応して、イザナミが後ろに跳んでかわす。
その先にランガが待ち構えていて、持っていた剣を振りかざしてきた。イザナミが上に飛翔して、ランガの一閃さえもかわした。
「ペンギンたちも長くは持たなかったみたいね・・それに、他のも集まってきたし・・」
カンナがインパルスたちを見下ろして、さらにミネルバとアーキバスたちが近づいてきていることにも気付く。
「いくら私とイザナミでも、これだけの数を相手にするのは厳しいわね・・」
カンナが微笑みかけると、イザナミがさらに上昇した。
「このイザナミの持つ次元エネルギーで、あなたたちを一掃させてもらうわ・・」
カンナがイザナミの次元エネルギーを集中させていく。イザナミのディメンションオーブに光が集まっていく。
「ディメンションブレイカー・・直撃されたらひとたまりもない・・・!」
カナタが危機感を覚えて、イザナギもディメンションオーブに次元エネルギーを集めていく。
(だけど、また次元の歪みを引き起こしてしまうかもしれない・・・!)
しかしここでも彼はカンナと対峙することにためらいを感じていた。
「あの機体にエネルギーが集中し、高まっています!」
「全機、後退!サリアさんたちもあの機体から離れてください!」
メイリンがレーダーを見て報告し、タリアがシンたちだけでなく、サリアたちにも指示を送った。
「逃げられる前に撃たせてもらうわ・・フルチャージでなくても・・・!」
後退を始めるミネルバやアーキバスたちを見て、カンナがディメンションブレイカーの発射に踏み切る。
「やめて、お姉ちゃん!」
そのとき、ラブが外に飛び出してカンナを呼び止めてきた。モモカも彼女を連れ戻そうと外に出てきていた。
「ラブ!?危ない!出てくるな!」
カナタがラブに目を向けて叫ぶ。
「ラブ・・こんなところに出てくると、どうなるか分からないわよ・・・」
カンナもラブを見てため息をつく。カンナはディメンションブレイカーの発射をためらわない。
「カンナ!君は妹にも手を挙げるのか!?」
「私の邪魔をするならば、相手が誰だろうと容赦しないわ・・・!」
カナタが呼び止めるが、カンナは攻撃をやめない。
「まずい!ラブ、逃げろ!」
カナタが呼びかけて、イザナギがラブを守ろうとする。
「ディメンションブレイカー!」
イザナミから次元エネルギーの光が発射された。
「カンナ!」
カナタが激情をあらわにして、イザナギがディメンションオーブに宿していたエネルギーを放って、イザナミの光とぶつけ合った。
「うあっ!」
その衝撃による突風に、ラブとモモカ、そして遅れて駆けつけた海潮たちが吹き飛ばされた。
「ラブちゃん!みんな!」
カナタがラブたちに向かって叫んだ。そのとき、カナタの脳裏にブレイクホールの起こったときのことがよみがえってきた。
ブレイクホールによって両親を失い、カナタは強い悲しみと絶望を感じた。そのときと同じように今、彼は絶叫を上げた。
そのとき、イザナギのディメンションオーブに宿っている光が一気に強まった。イザナギから出ている光の威力が上がり、イザナミの光を押していく。
「イザナギの力が強くなった!?・・まさか、あのときみたいに・・・!?」
脅威を覚えるカンナも記憶を呼び起こす。以前にもイザナギが驚異的な力を発揮したことがあった。
「でもあのときの私ではない・・私は強くなった・・イザナミという力を手にしたのよ・・!」
カンナは自信と力を感じて、カナタに対抗する。イザナミも光を強めて、イザナギの光に押し返そうとする。
「オレは認めない・・オレはこれ以上、大事な人を失いたくない・・・!」
強い悲しみとそこから来る強い意思が、カナタを突き動かしていく。彼の高ぶる感情が、イザナギの力を増大させていた。
「イザナギの次元エネルギー、増大しています!」
マサオがイザナギのエネルギー値を見て声を上げる。
「いかん!やめるのだ、カナタくん!次元エネルギーを暴走させてはならない!」
ゼロスが血相を変えて、カナタに向かって呼びかける。しかしこの声はカナタに伝わっていない。
「ムリか・・イザナギのハイブリッドディメンションを強制停止させろ!」
ゼロスが指示を出して、リョータがイザナギの遠隔操作を試みる。
「ダメです!こちらからの操作を受け付けません!」
「早く止めなければ・・次元エネルギーの暴走によって、先日よりも大きな空間の歪みを誘発してしまうぞ!」
リョータが報告して、ゼロスが焦りを膨らませていく。
「グラディス隊長、サリアくん、カナタくんを、イザナギを止めてくれ!空間が歪んでしまう!」
ゼロスがたまらずタリアたちに、イザナギの制止を頼んだ。
「シン、カナタくんを止めるのよ!」
タリアが呼びかけて、シンが駆るインパルスがイザナギに向かっていく。
「やめろ!」
シンがカナタに言い放ち、インパルスがイザナギの足に向けてビームサーベルを振りかざした。しかしイザナギが放出している次元エネルギーの衝撃で、ビームサーベルがインパルスの手元から弾かれた。
「何っ!?」
インパルスの攻撃がイザナギの力に通じず、シンが驚愕する。
「うあっ!」
インパルスが次元エネルギーの衝撃に突き飛ばされて、シンがうめく。
「危ない!」
海潮が叫び、ランガが落下してきたインパルスを受け止めた。
「シン、大丈夫!?」
「あぁ・・インパルスでも止められないなんて・・・!?」
ルナマリアが声をかけて、シンが毒づく。イザナギのイザナミに向けて放つ光が、さらに強まっていく。
「ダメだ・・前よりも巨大な空間の歪みに、巻き込まれてしまう・・・!」
絶望を痛感して落ち込むゼロス。
「ドームにバリアを展開します!」
マサオがとっさのシクザルドームの敷地内を、バリアを展開して包み込んだ。
「なんということ・・イザナミでも、あの力を抑えきれない・・・!」
カンナもイザナギの高まる力を痛感していく。
「私は力を得たのよ・・このイザナミの力を・・たとえカナタ、あなたが相手でも、私は負けない!」
カンナも感情をむき出しにして、イザナミのディメンションオーブの次元エネルギーをさらに強める。イザナギとイザナミ、2機の放つ光がまばゆい閃光と爆発のような衝撃をもたらした。
暴発した次元エネルギーは周囲の空だけでなく、世界全体の空間をも大きく歪めた。
イザナギとイザナミ、2機の次元エネルギーの衝突と高まりは、次元の壁を大きく揺さぶった。
その変動は、平行世界の融合を引き起こすこととなった。
世界のつながりは正義、悪問わず、結束や対立、様々な混沌を生み出すこととなった。
2つの次元エネルギーを中心にして、合わさった巨大な力が今、破滅の扉を開いた。
強まる多くの力と様々な思惑が、それを加速させていた。