スーパーロボット大戦CROSS

第6話「すれ違う心」

 

 

 海潮たちやランガだけでなく、孝一と恭子、ダイミダラーと出会ったカナタ。彼からの連絡をゼロスが受けていた。

「そうか・・また別の世界からこちらに来た人が現れたか・・」

“はい。それとペンギンのような怪人と、ヤツらが操るロボットも・・”

 ゼロスが言いかけて、カナタが報告を続ける。

「ドラゴンにペンギン、そして神と慕われている巨大生物か・・」

 ゼロスが考えを巡らせながら、シンたちとアンジュたち、海潮たちと孝一たちのことを気に掛ける。

“それで、博士のことを話したら、孝一くんたちも海潮ちゃんたちも話を聞きたいと言ってきたのですが・・”

「それはいいが、少し待っていてくれ。リョータくんに飛行艇で迎えに行ってもらうから、それに乗ってもらってくれ。」

 カナタがさらに告げると、ゼロスが指示を出す。同時にリョータの操縦する飛行艇が、シクザルドームから発進した。

“分かりました。みなさんにはそのように伝えます。”

 答えたカナタとの通信を終えて、ゼロスがひと息つく。

「また別の世界から来た人がいましたか。」

 話を聞いていたタリアが声をかけて、ゼロスが振り向いて頷いた。

「しかしランガと呼ばれる存在は、次元の壁を通ってこちらに来たのではないようです。」

「この世界に元々存在していた神だと・・」

「はい。バロウという国があり、ランガという神を崇めていたことは知っていましたが、まさかその神が実在していたとは・・」

「その神が日本に上陸して、武蔵野という場所に辿りついた・・」

 ランガについて語っていくタリアとゼロス。

「そして私たちとは別の世界のロボットと戦いが、ここに持ち込まれている・・」

 サリアもゼロスたちに歩み寄り、話に加わる。

「そこの話もすぐに聞けると思う。それとサリアくん、カナタくんとアンジュくんはリョータくんの飛行艇が到着次第、各々の機体で戻ることになった。」

「そうですか・・すみません。アンジュが迷惑をかけて・・」

 ゼロスが報告を伝えて、サリアが謝罪する。

「気にすることはない。アンジュくんにも君たちにも、私たちは助けられているからね。」

 ゼロスがサリアに励ましてから、手元のコンピューターを操作した。

「グラディス艦長、サリアくん、あなたたちに見てほしいものがありまして・・」

 ゼロスがタリアたちに告げて、モニターに映像を映した。

「イザナギのカメラが捉えた映像ですが・・イザナギたちはこの機体と戦闘している。これは私たちが見たことのない形状です。」

「これは、もしかして・・・連合のモビルスーツ・・・!?

 ゼロスが示した機体を見て、タリアが緊張を覚える。

「グラディス艦長、知っているのですか・・?」

「えぇ・・確信があるわけではないですが、私たちの世界にある機体に似ている姿かたちに見えます・・」

 ゼロスが聞くと、タリアが深刻な面持ちで答える。

「私の知る限りでは、ザフト所属の機体ではありません。おそらく“地球連合”の機体かと・・」

「地球連合?」

 タリアの説明を聞いて、サリアが疑問を投げかける。

「私たちの世界での主な軍事勢力は3つ。1つはプラントが擁する私たちザフト。もう1つは地球連合軍。3つ目は中立国“オーブ”が擁するオーブ軍です。」

「アンジュたちを襲った機体は、その中の地球連合のモビルスーツの可能性が高いということですね・・」

 タリアの説明を聞いて、サリアが答える。

「その機体もあなたたちと同じように、この世界に来てしまったのだろうか・・」

 ゼロスがその機体に対する推測も巡らせる。

「そこのところも調査するつもりですが、まずは再び次元の穴を開けて、あなたたちを元の世界に戻すことに専念します。」

「お手数をおかけします、私たちのために・・」

「いいえ。私たちが犯した行為ですので・・」

 礼を言うタリアに、ゼロスが責任感を示す。彼は次元エネルギーの制御の成功を見据えていた。

 

 リョータが操縦する飛行艇が武蔵野に辿りつき、島原家のそばに着陸した。

「お待たせしました、みなさん。ゼロス博士がお待ちです。」

 飛行艇から出てきたリョータが、海潮たちと孝一、恭子に挨拶する。

「あなたたちのおかげで、わけの分かんないことが起こっているってことでいいのよね・・?」

 夕姫が疑いの眼差しをリョータに送る。

「はい、すみません・・必ず元に戻すと、博士は調査と研究を進めています。」

 リョータが謝罪して、ゼロスの意思を伝える。

「話を聞くのはいいけどよ、研究所だと美女や美少女は期待できねぇかなぁ・・ま、美女の科学者や助手がいたら万々歳だけどなぁ〜♪」

 孝一が美女に対する期待と欲望を膨らませていく。

「孝一くん、あなたという人は・・・」

 いやらしさをあらわにしている彼に、恭子が呆れて肩を落とす。

「ではみなさん、乗ってください。あなたたちの機体とあのランガという巨人は格納庫のほうに。」

 リョータが案内して、カナタ、アンジュ、海潮たちと孝一たちが飛行艇に乗った。イザナギ、ヴィルキス、ランガ、ダイミダラーも飛行艇の格納庫に入った。

「ロボットに研究所・・ロボットアニメの基本だね♪」

 海潮がイザナギやシクザルドームのことを考えて、目を輝かせる。

「やれやれ。すっかり子供ね。これで一国の王様だっていうんだから、お笑い種ね・・」

 アンジュがため息をついて、海潮を嘲笑する。

「何がいけないんですか!?誰だってかわいいものやかっこいい人に憧れるじゃないですか!」

「そんなものにすがったって、何にもいいことはないわ。振り回されて痛い目を見るのがオチよ・・」

 海潮が抗議の声を上げるが、アンジュがさらにあざ笑う。

「そうやって希望のないことを言わないでよ・・誰だって、何かにすがらなくちゃ、生きていくことはできない・・・!」

 海潮が悲しい顔を浮かべて、アンジュに言い返す。アンジュが彼女に背を向けて、再びため息をついた。

「このアンジュって人、海潮とは正反対かもね。むしろ私と似てるかも・・」

 夕姫がアンジュについて口にする。アンジュの世界の身勝手に対する不満を抱えているところが自分と同じだと、夕姫は思っていた。

「でもあなたと違って、実際にそういう理不尽を体験しているように思えるわ・・」

 魅波がアンジュの心境を察して、夕姫が戸惑いを覚える。

「もしかしたら、私たちの世界のほうが、まだ平和なんじゃないかって思えるのよね・・」

「そんなこと言っても、私たちは私たちじゃない・・まずは私たちが幸せになんないと、話にならないよ、お姉ちゃん・・」

 自分たちが幸せの中にいると思うようになる魅波だが、夕姫は納得していなかった。

 海潮とアンジュが反目しあったまま、飛行艇がシクザルドームに向かって発進した。

 

 飛行艇がシクザルドームに戻った。開かれたハッチから機体が移動されていく中、ランガが歩いて飛行艇から出てきた。

「映像で見てもビックリだったけど・・・」

「こうして間近で見るともっとビックリしちまうなぁ・・」

 ヒルダとロザリーがランガを見上げて呟く。

「ロボットじゃない・・生き物・・怪物・・・?」

 クリスもランガの見つめて眉をひそめる。

「うほ〜♪かわいこちゃんがより取り見取りだ〜♪」

 孝一がサリアたちやルナマリアを見て、興奮を抑えられなくなる。

「オレのハイエロ粒子は、最高潮に高まってるぜー!」

「あっ!孝一くん、待ちなさい!」

 飛び出す孝一を恭子が慌てて呼び止める。孝一が高速で動いて、サリアたちとルナマリアの胸や尻に触ってきた。

「フッ・・この心地よさ・・・今まで以上だ・・・!」

 孝一が感触を確かめて、満足げに頷いた。

「ア、アンタ・・いきなり何を・・・!?

 彼のハレンチな行為に、ルナマリアが赤面する。

「あれ?今、何かあったの?」

 ヴィヴィアンがキョロキョロして疑問符を浮かべる。

「まさか、私たちの知らない世界に、あのような命知らずがいたとは・・・!」

「みんな、あの大バカヤローを叩き潰すよ!」

 エルシャが怒りを覚えて、ヒルダが檄を飛ばす。彼女たちが飛びかかり、孝一が慌てて逃げ出す。

「ふざけたマネをした代償は高くつくよ!」

「・・・殺す・・・!」

 ロザリーとクリスが殺気を浮かべて、ヒルダとともに銃を手にして、孝一に向かって発砲した。

「アンタたちも物騒じゃねぇかよー!」

 孝一が悲鳴を上げながら、慌てて射撃をかわしていく。

「孝一くんったら、いやらしいことをするから・・・」

 恭子が孝一のハレンチな行為に呆れて、頭に手を当てる。

(それにしても、あの女性の指揮している部隊だけでなく、孝一くんを追っていった人たちも軍人としての鍛錬を積んでいるようね。それぞれ別の世界の軍隊か武装組織かしら・・?)

 恭子がタリアたちミネルバの面々とサリアたちを見て、推測を巡らせていった。

 

 シクザルドームの研究室に足を運んだタリア、サリア、魅波、恭子。ゼロスが彼女たちに握手を交わしていく。

「あなたたちお二人ははじめましてになりますね。改めて自己紹介をします。私はゼロス・シクザル。このシクザルドームの責任者です。」

 ゼロスが魅波と恭子に挨拶をする。

「こちらこそはじめまして。島原魅波です。バロウ王国のランガを預かりました。」

「ランガ・・あの怪物・・いや、巨人のことですね。」

 魅波も自己紹介をして、ゼロスがランガのことを口にする。

「先ほど、各国の政府はこの巨人を“Monster from Marine”、“MM”と呼称すると発表した。しかし我々はあなたたちの呼び名通り、ランガと呼びます。」

 ゼロスが視聴したニュースのことを語る。

(MM・・海から来た怪物・・確かにそうね・・)

 サリアもランガのことを考えていた。

「私は楚南恭子。真玉橋孝一くんとともに、ダイミダラーのパイロットを務めています。」

 恭子も自己紹介をして、孝一のことも話す。彼のことを思い出して、サリアと魅波が肩を落とす。

「世界支配を企むペンギン帝国と戦っていたのですが、空に空いた穴に吸い込まれて・・」

「そうだったのですか・・あなたたちも、別の世界からこちらに来てしまったのですね・・・」

 恭子の話を聞いて、ゼロスが深刻な面持ちを浮かべた。

「それぞれの世界で、それぞれ事情があるでしょう。あなたたちのために、一刻も早く次元のトンネルをつなげてみせます。」

「ありがとうございます、ゼロス博士。私たちもできることがあれば、お手伝いさせてください。」

 決心を告げるゼロスに、恭子が協力を申し出る。

「ありがとうございます。迷惑をかけているのはこちらだというのに・・」

 ゼロスが感謝をして、恭子が微笑んだ。彼女とタリアたちは元の世界に戻るという共通の目的のため、協力することとなった。

 

 同じ頃、海潮たちも孝一も、シンたちやアンジュたちからそれぞれの世界のことを聞いていた。

「戦争に、ドラゴンとの戦い・・他の世界で、そんなことが・・・!」

 海潮が荒んだ世界の情勢を知って、困惑を隠せなくなる。

「私たちの世界は、私たちが生まれるずっと前に戦争が終わっている。でも私たちの世界も、見えないところで歪みが出ているわ・・」

 夕姫が語りながら、自分たちのいる世界の不条理を思い返していく。彼女は身勝手な大人の社会に不満を抱いていた。

「でもランガがやってきて、悪者を懲らしめてみんなを助けることができる!みんなを平和にできるよ!」

 海潮がランガのことを思って、笑顔と自信を見せる。

「のん気なものだな。王様になって、さらに正義の味方気取りか?」

 するとシンが彼女に対して不満を投げかけてきた。

「気取りって・・気取りじゃないよ!本気でみんなを平和にできるって思えるようになったんだよ!・・今までは夢になっちゃうんじゃないかって思うこともあったけど・・今なら実現させることができる!」

「アンタも綺麗事を言うヤツだったのかよ・・それで平和にできるなら、誰も辛い思いをしてはいない!」

 感情を込めて呼びかける海潮に、シンが反発する。

「そんな綺麗事やいい加減な態度が、どれだけの人が悲しむことになるか、アンタは分かってない!」

「そうね・・地獄みたいな人生は、体験した人にしか分かんないものね・・」

 シンの怒号に続いて、アンジュも海潮に対して嘲笑を向けてきた。

「何にも分かってないくせに、分かったようなことを言わないでほしいね!」

「分かってないって・・誰だって平和になってほしい、幸せになりたいって思ってる・・あなたたちはそう思ってないの!?

 納得しないシンに困惑しながらも、海潮が必死に訴える。

「みんながみんな、海潮と全く同じ気持ちってわけじゃないみたいね。」

 夕姫も海潮に対して微笑みかけてきた。世界の不条理に怒りや不満を感じているシンとアンジュに、海潮の心は揺れ動いていた。

「みんな、何を言い争っているの!?

 そこへラブがやってきて、シンたちに注意を呼びかけてきた。

「ケンカしたらダメだよー!ここで会ったのは何かの縁っていうから、仲良くやろうよ〜!」

「何なんだよ・・別にケンカしているってわけじゃ・・」

 慌てながらもなだめようとしてくるラブに、シンが不満げに言い返す。

「夢みたいなことや綺麗事を言ったって、実現できなければ空しいだけよ・・かえって自分を追い詰めるだけってこと・・」

 アンジュがラブに対しても呆れた素振りを見せる。

「でも、そうやって楽しいことや嬉しいことを求めないようにしたら、もっと辛くなってしまいますよ・・・!」

 ラブが悲しい顔を浮かべて、シンたちに必死に呼びかける。

「あなた、何かあったの・・・?」

 海潮がラブのことを気にして、当惑しながら問いかける。

「私は両親を亡くしたの・・5年前の大災害、ブレイクホールで・・・」

「ブレイクホール?」

 ラブが語りかけて、シンが疑問符を浮かべる。

「空の空間が歪んで、その衝撃でその付近が巻き込まれてムチャクチャになってしまったの・・私の親もカナタくんの親も、ブレイクホールに巻き込まれて・・」

「アンタたちも、家族を・・・」

 ラブの話を聞いて、シンが戸惑いを浮かべる。

「もしかして、君も親を・・・!?

 彼の言葉を聞いて、ラブも心を動かされる。

「あぁ・・戦争に巻き込まれて、親も妹も死んだ・・・オレたちをこんな目に合わせた戦争だけじゃなく、オレたちのいた場所にも戦争を持ち込んだヤツらも許せない・・・!」

 シンが自分の過去を口にして、憤りを募らせる。戦争に対する怒りと悲しみが、彼を突き動かしていた。

「私は、ただ家族を失っただけじゃない・・・」

 アンジュが悲しい顔を浮かべて、自分のことを話し始めた。

「私は母親を失い、かつての国を追放された・・それも、実の兄に・・・私が、ノーマというだけで・・・」

「ノーマ・・・?」

 語りかけるアンジュの言葉に、夕姫が疑問を覚える。

「ア、アンジュリーゼさま〜!」

 そのとき、モモカが悲鳴を上げて、慌ててアンジュたちのところへ駆け込んできた。彼女を孝一が追いかけていた。

「アンタ・・いつまで私たちにそういう態度を取れば気が済むのよ・・・!?

 アンジュが孝一のハレンチな言動に、不満を膨らませていく。

「私も抵抗しようとしたのですが、攻撃が全部よけられて・・マナが使えたら、返り討ちにできたと思うのですが・・・」

 モモカが孝一に目を向けて、困った顔を浮かべる。

「マナとかノーマとか、あなたたちの世界の言葉?」

 夕姫がモモカに話を聞いてきた。

「はい。マナは他の世界では魔法と呼ばれるものでしょうか。物を動かしたり対象を拘束したりすることができるのです。」

 モモカがマナについて説明する。

「そしてマナが使えず、マナの光を打ち消してしまうのがノーマ。私やアルゼナルの人たちがそうよ・・」

 アンジュも話を続けて、思いつめていく。

「ノーマは世界の嫌われ者よ・・マナの光を壊す忌まわしき存在・・世界から迫害されたまま、アルゼナルに送られて、ドラゴンとの戦いに駆り出されることになる・・本当の名前も奪われて・・・」

「それは違いますよ!アンジュリーゼ様はアンジュリーゼ様!何があってもそれは変わりません!」

 語り続けながら皮肉を感じていくアンジュに、モモカが必死に呼びかける。

「えっと・・アンジュさん?アンジュリーゼさん?・・どう呼べばいいのですか・・・?」

 海潮がアンジュたちに対して首をかしげる。

「私はアンジュよ。モモカが勝手に“アンジュリーゼ”って呼んでるだけだし、勝手にすればいいわ・・」

 するとアンジュがため息まじりに答えた。海潮はただ彼女に頷いていた。

「それじゃ“アンちゃん”って呼んじゃおうかな♪」

 ラブが笑顔を見せて、アンジュを呼んだ。

「それは恥ずかしいからやめて・・・」

 子供扱いされると思ったアンジュが反論する。

「え〜!?かわいいと思ったのに〜!」

「呼び捨てしても許すから、それはやめて・・!」

 不満の声を上げるラブを、アンジュが睨みつけてくる。

「それじゃ“アンジュ”って呼ぶことにするね。みんなも私のことを“ラブ”って呼んでいいから。」

 ラブが気を落ち着けてから、アンジュたちに自分の気持ちを告げた。

「ヘッ!オレのことも“孝一”って呼んでくれよな!」

「私も“海潮”でいいから。」

「オレも“シン”って呼んでいいから・・」

 孝一が気さくに、海潮が微笑んで、シンが憮然とした態度で答えた。彼らと名前で言い合えると思って、ラブは喜んだ。

「それじゃみんな、少しの間になるかもしれないけど、改めてよろしく。」

 カナタもシンたちのところへ来て挨拶をしてきた。

「早く次元エネルギーを制御して、空間をつなげないと・・・!」

 シンたちのことを思うカナタは、自分のやるべきことを改めて痛感していく。

「ところで、カナタさんはどうやって世界と世界とつなげたんですか?」

 海潮がカナタに疑問を投げかけてきた。

「あのイザナギというロボットの力で空間が歪んだって言ってましたよね?でも今はコントロールができていないって・・」

「うん・・次元エネルギーを力としているのは、イザナギだけじゃないんだ・・」

 イザナギのことを聞いた海潮の問いを受けて、カナタが深刻な面持ちを浮かべた。

「博士はイザナギの他にもう1機、イザナミという機体も作っていたんだ。しかし持ち出されて、オレたちに攻撃を仕掛けてきたんだ・・」

「そのイザナミを奪ったのが、私のお姉ちゃん・・カンナだったの・・・」

 カナタに続いて、ラブも表情を曇らせて話をしていく。

「イザナミっていうのも、次元エネルギーっていうのを使えるのか?」

「つまり、空間に穴が開いたのは、イザナギだけじゃなくイザナミの力もあったってことね・・」

 孝一がイザナミのことを考えて、夕姫が頷いていく。

「2体のロボットの力がぶつかり合って、空間を歪めて・・その結果、私たちがこの世界に引きずり込まれてしまったということですね・・」

「それじゃ、また空間に穴を開けるには、イザナギだけじゃなく、イザナミも必要になるってわけ?」

 モモカとアンジュも話をして、カナタが小さく頷いた。

「オレはカナタを、イザナミを捜していた・・だからランガが現れたときに、その手がかりがあるんじゃないかと思って、武蔵野にも来たんだ・・」

「でも、お姉ちゃんは見つからなかった・・どこに行っちゃったの・・・?」

 カナタが答えて、ラブがカンナのことを思って、悲しい顔を浮かべる。

「姉妹なのに・・妹を放って、何をやっているんだ・・・!」

 シンがカンナのことを考えて、不満を覚える。彼は亡くなった妹、マユのことを思い出していた。

 そのとき、シクザルドームに警報が響き、カナタたちが緊張を覚えた。

「な、何・・!?

「何か来たの・・!?

 海潮とラブが動揺を浮かべて声を上げる。

「シン、モビルスーツの集団がここに近づいてきているわ!」

 ルナマリアが駆け込み、シンに呼びかけてきた。

「モビルスーツだと!?まさか、新型を盗んだ連中か!?

「分からない・・モニターを見た限りじゃ、新型は見当たらない・・!」

 シンが問いかけて、ルナマリアが答える。

「でもあの巨人に攻撃をしてきた2機とそっくりだった・・!」

「何だと!?・・まさか、そいつらの仲間が・・!?

 ルナマリアがさらに状況を話して、シンが驚愕する。

「グラディス艦長はミネルバか!?オレたちがアイツらを追い払ってやる!」

「あっ!シン、待って!」

 ミネルバに向かって走り出したシンを、ルナマリアが慌てて追いかけた。

「オレもイザナギで出る・・もしかしたらイザナミ・・カンナかもしれない・・・!」

 カナタがカンナが現れたのを予感して、ドックに向かった。

「カナタくん・・お姉ちゃん・・・」

 ラブがカナタを見送って、彼とカンナのことを思って辛さを感じていた。

 

 タリアたちが戻ったミネルバは、発進準備が整っていた。

「艦長、遅くなりました!」

 ルナマリアがシンとともにミネルバに乗り込み、パイロットスーツを着てドックに駆け込んできた。

“シン、ルナマリア、すぐに搭乗機へ。インパルスは先行して迎撃するのよ。”

 タリアが指示を出して、シンとルナマリアがコアスプレンダーとザクに乗り込んだ。レイは既にザクに乗り込んでいた。

「艦長が連絡を試みたが応答がない。集団はこちらへの接近を続けている。」

 レイがシンたちに状況を話す。

「何なんだ、アイツらは!?・・攻撃してくるつもりなのか・・!?

「分からない・・向こうが攻撃を仕掛けてこない限り、こちらから下手に先手を打たないことだ。こちらは戦いを望んでいるわけではないのだから。」

 声を荒げるシンに、レイが冷静に答えた。

 

「シクザル博士、ミネルバはモビルスーツ部隊の迎撃に向かいます。よろしいですね?」

 ミネルバの指令室から、タリアがゼロスと連絡を取り合う。

“了解です。あなたのことだから気にすることはないと思うが、相手の正体を確かめてから対応してほしい。”

「それは十分に承知しています。向こうが話に応じる相手ならばよいですが・・」

 ゼロスからの進言に、タリアが落ち着きを払って答える。

「ミネルバ、発進!モビルスーツ部隊に接近します!」

 ゼロスとの連絡を終えて、タリアがアーサーたちクルーに指示を出した。ミネルバが飛翔し、モビルスーツ、ウィンダムの部隊に向かっていく。

「そこのモビルスーツ部隊、1度進行を停止し、こちらの呼びかけに応じてください。」

 タリアがウィンダムたちに向けて呼びかける。しかしウィンダムたちは停止も応答もしてこない。

 ウィンダムたちのうちの先頭の2機が、ビームライフルを手にして発射してきた。ミネルバが即座に動いて、ビームを回避した。

「艦長、向こうは問答無用のようです・・!」

「仕方がないわね・・・インパルス、発進!本艦も部隊を迎え撃ちます!」

 アーサーが声を荒げて、タリアが指示を出す。

「シン・アスカ、コアスプレンダー、いきます!」

 シンの乗るコアスプレンダーがミネルバから発進した。続けて射出されたチェストフライヤー、レッグフライヤー、フォースシルエットがコアスプレンダーと合体して、フォースインパルスとなった。

「戦いを仕掛けてくるなら、オレはお前たちを倒す・・!」

 シンが目つきを鋭くして、インパルスがビームライフルを手にして、ウィンダムたちに向かっていく。ウィンダムたちが放つビームをかいくぐり、インパルスがビームライフルを発射して、ウィンダムの2機に命中させた。

 ウィンダム3機がインパルスに迫る最中、2機がミネルバに近づいていく。

「近づけさせるな!トリスタン、ってぇ!」

 アーサーが号令して、ミネルバがビーム砲「トリスタン」を発射して、ウィンダムをけん制する。

「ゼロス博士、オレもイザナギで出ます!」

 カナタもイザナギに乗って、シンたちに加勢しようとした。

「ドーム付近に空間の歪みが発生!その穴から・・ドラゴンが出てきました!」

 そのとき、マサオがレーダーを注視して報告をしてきた。シンたちが交戦している地点の近くの空に、空間の穴が開き、ドラゴンの集団が出現した。

「おー!ドラゴンも出てきたよー!」

 ヴィヴィアンがドラゴンたちを目撃して、喜びを振りまく。

「これで退屈しないで済みそうだ・・!」

 ヒルダが歓喜を浮かべて、左手と握った右手を合わせた。

「サリア隊、出撃!私たちはドラゴンを討つわよ!」

 サリアが指示を出して、ヒルダたちとともにそれぞれのパラメイルに搭乗する。

「アンジュリーゼ様、お気を付けて・・!」

「モモカ・・ドラゴンも敵も全て片づけて、必ず戻ってくるから・・」

 無事帰還を祈るモモカに、アンジュが微笑んで答えた。アンジュもヴィルキスに乗って、サリアたちとともに出撃した。

「アルゼナルのパラメイル、ドラゴンと交戦します!」

 メイリンがアンジュたちの動きを報告する。

「ドラゴンはサリアさんたちに任せるわ。私たちはモビルスーツ部隊の対処を・・!」

 タリアが状況を把握して、アーサーたちに指示を出していく。シンたちもアンジュたちもウィンダム、ドラゴンに対して優勢を見せていく。

「みんな、圧倒している・・オレの出番がなくなる・・・!」

 シクザルドームから発進していたイザナギだが、自分が加勢しなくても勝利すると思い、カナタがため息をついた。

「あなたの相手は私がしようかしらね。」

 そこへ声がかかり、カナタが目を見開いた。イザナギの後ろにイザナミが現れた。

「カ・・カンナ・・・!」

 カナタがカンナに対して緊張を膨らませる。イザナギがゆっくりと振り返り、イザナミと対峙した。

 

 

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