スーパーロボット大戦CROSS
第5話「健全!ダイミダラー降臨!」
武蔵野の丘の上にある島原家。ランガが滞在することになったその場所で、カナタはこれまで起こっていることを海潮たちに話した。
「では、そのイザナギっていうメカの力で、空間に穴が開いて、アンジュさんたちがこの世界に来てしまったというんですか?」
話を聞いた海潮が、戸惑いを感じながら問いかける。
「はい・・次元エネルギーの衝突で空間が歪んで、別の世界をつなげてしまったんです。その結果、アンジュさんたちのようにこの世界に引き込まれてしまった人が出てしまったんです・・」
カナタがさらに説明して、アンジュに目を向ける。
「おかげでこっちはいい迷惑よ。こんなワケの分かんないところに連れてこられて・・でもアルゼナルよりは多少はマシかもしれないけど・・」
アンジュが不満げに言って、武蔵野の景色を見渡していく。
「どう?王様になった気分は?」
「ど、どうって・・・」
振り向いたアンジュの問いかけに、海潮が口ごもる。
「まだ、実感が湧かないよ・・国の王様だなんて・・」
「私も・・いきなり王様にされて、神様を託されるって言われても、ピンとこないわよ・・」
海潮と魅波が首をかしげてから、ランガに目を向ける。
「私は力が手に入って、嬉しく思っているわ。これでバカな大人に、私たちの力を見せつけることができるから。」
夕姫はランガが来たことを喜び、野心を見せてきた。
「ゆうぴー、そんなことでランガを使うなんてダメだよ!」
「だって、このランガの力はすごくて、軍隊も政府も手を焼いていたじゃない。だったら十分思い知らせることだってできるじゃない。」
海潮が注意をするが、夕姫は不敵な笑みを絶やさない。
「どうやら、その黒髪のお嬢さんのほうが目的をハッキリさせてるみたいね。」
アンジュが夕姫に目を向けて笑みをこぼす。
「そういうあなたは、何か目的とか、やりたいこととかあるの?」
「言ったはずよ。ただ敵を倒すだけだって。そのために戦って、死ぬだけ。それが私たちの生き方なのよ・・」
夕姫が問いを投げかけると、アンジュがため息まじりに答える。
「生憎、こっちでは力による戦いや戦争は起きてないわ。もっとも、裏でコソコソやったり私たちを思い通りにしようとしたりする人はいるけどね・・」
「なるほど。こっちはまだまだ平和で穏やかのようね・・」
夕姫の話を聞いて、アンジュが皮肉を口にした。自分を脅かし貶める敵の数が、今の自分と比べて確実に下回っているこの世界に、アンジュは複雑な気分を感じていた。
「それよりもお金よ、お金!これだけランガが世間から注目されているのよ!インタビューやTVの出演が、たっぷり来るはずよ!」
魅波が金儲けを考えて、意気込みを見せてきた。
「お姉ちゃんまで、そんなこと考えて・・・」
「何言ってるのよ!?私たちの家計はいつも厳しいのよ!これはそれを抜け出す絶好のチャンスなのよ!」
海潮が注意するが、魅波も自分の考えを変えない。
「ちょっとみなさん・・ケンカをするのはよくないかと・・・」
カナタが苦笑いを浮かべて、海潮たちをなだめる。
「部外者は黙ってて・・!」
「これは私たち家族とランガの問題なんだから・・!」
しかし夕姫と魅波に睨まれて、カナタが呆れて肩を落とした。
「んもう!お姉ちゃんもゆうぴーもいい加減にしてー!」
海潮がふくれっ面を浮かべて、注意を叫ぶ。
「そういう海潮はランガを何に使うつもりでいるのよ?」
「それはもちろん、悪いことをするヤツらを懲らしめるのよ!みんなを困らせる連中を捕まえて、みんなを平和にしていくんだから!」
夕姫が問いかけると、海潮が答えて意気込みを見せる。
「この正義バカ・・海潮だって、私たちと大差ないじゃない・・」
「何言ってるのよ!自分のことばかりなのと、みんなのためにがんばるのは全然違うじゃない!」
呆れる夕姫に、海潮が抗議の声を上げる。
「正義の味方気取りなんてバカバカしい・・お姉さんと妹さんのほうがまだ共感できるわ・・」
アンジュが海潮に対して呆れて、ため息をついた。
「ちょっとあなた、みんなを守ったり助けたりすることが、いけないわけないじゃない!」
「そんなの、自分勝手な考え方と思い込みで、簡単に覆るのよ・・皇女だった人に対しても、例外じゃないわ・・」
文句を言う海潮を嘲笑するアンジュ。これには彼女の自分自身への皮肉も込められていた。
「そうだ、そうだ・・聞きたいことがあるんだった・・!」
カナタが話題を変えようと、海潮たちに質問を投げかけた。
「愛野カンナって人を知りませんか?もしくは、このイザナギに似た機体を見てませんか?」
「ううん、聞いたことないし、あれに似たものも見たことはないわ・・」
カナタがカンナのことを聞いて、魅波が答える。海潮も夕姫もジョエルも知らずに、顔を横に振る。
「ランガがこうしてここまで来たことだけでも驚きだったし、鉄さんたちが乗ってたエースというロボットも初めて見たし・・」
海潮も答えて、ランガに目を向けた。
「そうでしたか・・ここにカンナの手がかりがあると思ったのは、オレの思い込みだったのか・・・」
カンナがいなかったことに、カナタが悲しい顔を浮かべる。
「その人、カナタさんの友達か何かですか・・?」
「あ、あぁ・・オレたちの前からいなくなって・・今になって現れたんだ・・いきなりオレたちに攻撃をしてきて・・・」
海潮が話を聞いて、カナタが語りかける。
「みんな、込み入った事情があるってことね・・」
自分たちの現状に魅波がため息をつく。
「まるでロボット映画だな。公開させたら大好評だろうな。」
そこへ1人の男がやってきて、海潮たちに声をかけてきた。彼は持っていたビデオカメラで、彼女たちを映していた。
「長谷岡さん、そんなのんきなことを言ってる場合じゃないって・・」
海潮が男、長谷岡聖吾に注意して肩を落とす。
「しかし、本当にとんでもないことになっちまったな。あんなとんでもないのを持ち込んで、ご近所も納得させたんだから・・」
聖吾がランガを見上げて、海潮たちに感心する。
「ところでアンタたちは誰だ?あのデカいヤツの仲間・・・ってわけじゃないな・・」
「そんなわけないでしょ。私はこのヴィルキスに乗ってきてるんだから・・」
聖吾に声を掛けられて、アンジュが不満げに答えてヴィルキスに目を向ける。
「ランガっていうのもだけど、アンタらのメカも見かけない代物だな。」
「まぁ、話すとややこしいということは言っておきます・・今は・・・」
ヴィルキスとイザナギを見て言いかける聖吾に、カナタが苦笑いを浮かべた。
「それで、みなさんはこれからどうするのですか?」
カナタが改めて海潮たちに問いかける。
「ランガがここに来て、あなたたちに対して何かを仕掛けてくる人が現れるはずです。軍隊だってきっと、自分たちより強いランガを、このまま野放しにするとは思えない・・」
「もしそんなヤツが出てきたら、やっつけてやるわよ。2度とそんなマネができなくなるくらい、徹底的にね。」
自衛隊や一部の人間に対する警戒を口にするカナタだが、夕姫は強気な意思を崩さない。
「それって、世界を敵に回しても敵わないって口ぶりね・・面白そうじゃない、そういうのも。」
アンジュが夕姫に賛成して微笑んできた。
「あなたまで、とんでもないことを言わないでください!そういうのは悪い人のやることです!」
「悪い人ねぇ・・果たしてどっちが悪なのかどうか・・自分たちが正しいと信じて疑わないことのほうが、実は悪なのかもしれないわ・・」
海潮が抗議の声を上げるが、アンジュがさらにあざ笑う。
「そうやって悪いこともいいことだって決め付けることは、絶対ダメだよ!悪いことは悪いんだから!」
「いつまでも綺麗事を思い込んでるといいわ。ムチャクチャな現実に直面しても平気でいられるなら・・!」
詰め寄ってくる海潮と、鋭い視線を向けるアンジュ。
「2人とも、ケンカはよくないって・・!」
カナタが気まずくなって、2人を止めに入ろうとした。
次の瞬間、海潮のスカートが突然めくれ上がった。同時にアンジュが尻を触られた感覚を覚えて、目を見開いた。
「えっ・・!?」
海潮とアンジュが赤面しながら、視線を動かして、自分たちを襲ってきた者の正体を探る。
「ふぅ〜・・1人はすばらしいレディの感触・・もう1人は中高生ぐらいだけど、スタイルがいいと直感した・・!」
海潮たちの近くに、1人の青年が立っていた。彼が高速で飛び込んで、海潮のスカートをめくり、アンジュの尻に触ったのである。
「うわあっ!何よ、アンター!?」
「いきなり現れて私の体に触るなんて!」
海潮とアンジュが青年に向かって鋭く言い放つ。
「オレの名は真玉橋孝一!この新しい世界でも、オレはエロを極めてみせるぞー!」
青年、孝一が高らかに名乗りを上げる。
「ちょっとー!いきなり何するのよ!?」
「誰にもオレのエロは止められねぇぜ!とことん突き詰めてやるからな〜!」
怒鳴る海潮に、孝一が自信満々に言い返す。
「そんな悪者も、私は許さないよー!」
海潮が怒りを膨らませて、孝一に飛びかかる。しかし孝一に軽やかに突撃をかわされる。
「だから言っただろ!オレのエロは止められねぇって!」
「だったらそれがホントかどうか・・確かめさせてもらうわよ!」
勝ち誇る孝一に対し、アンジュが銃を取り出した。
「おい、マジかよ!?」
孝一が驚きながらも、アンジュの射撃を軽やかにかわしていく。
「ランガ!」
海潮の叫びを受けて、ランガが動き出して左手を伸ばして、アンジュの射撃を阻んだ。同時にランガは左手から触手のような指を伸ばして、孝一を捕まえようとする。
「おわわわ!」
孝一が慌ててランガの指をすり抜けて回避していく。
「何て素早い動きなのかしら・・」
「あの年と格好で、アクション俳優か何かか?」
魅波と聖吾が孝一の動きを見て感心する。
「いやらしい下心がなければ、私も褒めているところだけどね・・」
夕姫が孝一のいやらしさに呆れて、ため息をつく。
「何なんだ、こりゃ!?こっちの世界もおかしなことだらけじゃんか!」
銃を持って発砲してきたアンジュと、海潮に従って捕まえに来るランガに、孝一が驚きを隠せなくなる。
ランガの伸ばす左手から、孝一が後ろに下がって逃げていく。
「アンタたち、何者だ!?ペンギン帝国の連中じゃないのは間違いねぇみてぇだが・・!」
「えっ?ペンギン?」
警戒を強める孝一の口にした言葉に、カナタが疑問符を浮かべる。
「こんなところにいたのね、孝一くん!」
そこへやってきたのは、孝一を捜して追いかけてきた恭子だった。
「うえっ!?恭子!」
孝一が恭子に振り返り、驚きを見せる。
「ここがどこだかよく分かっていないのに、勝手に動いたらダメじゃない・・!」
「いやぁ、綺麗なお姉さんやかわいい美少女を見てたら、もっと追究しなくちゃって思っちまって〜♪」
恭子が注意すると、孝一が浮かれ出す。
「そうやって関係ない人に迷惑を掛けてはいけないわよ・・私たちはこんなことをしている場合じゃないんだから・・」
「いいじゃんかよ!せっかくの巡り会わせなんだから・・!」
恭子が苦言を呈するが、孝一は考えを改めない。
「もしかして、あなたたちも・・・!?」
カナタが孝一と恭子も別の世界から来たのではないかと推測する。
そのとき、カナタたちの前に怪人の大群が一斉に現れた。ペンギンを思わせる姿をしていて、股間から長い物が出ていた。
「ち、ちょっと、何、あの人たち!?」
「アンタたち、前に何付けてんのよ!?」
海潮とアンジュが怪人たちを見て声を荒げる。
「失礼な見方をするな!これは我らペンギンコマンドの、栄光な前しっぽだぞ!」
「お前たち人間どもにはない、立派な前しっぽだぞ!」
怪人、ペンギンコマンドが高らかに言い放ち、股間から出ている前しっぽを見せつける。
「何よ、あの変態ペンギンは・・!?」
夕姫がペンギンコマンドたちを見て、不審に思いながら問いかける。
「あれはペンギン帝国・・世界とハイエロ粒子を狙っている連中です・・!」
「えっ!?・・ハイエロ!?」
恭子が説明をするが、海潮が当惑して顔を赤くする。
「ここは我らの知る世界ではないようだが、エロスがあふれてることは間違いないようだ!」
「ここでもエロスを謳歌して、すばらしきペンギンの世界としてやるぞ!」
ペンギンコマンドがエロスとハイエロ粒子を狙って、高らかに言い放つ。
「そうはいくか!エロスを謳歌するのはオレだー!」
孝一がペンギンコマンドたちに言い放って、不敵な笑みを見せてきた。
「アイツは真玉橋孝一!」
「ヤツもこの世界に来ていたか!」
「しかしダイミダラーは近くにないみたいだ!今のうちにヤツらを仕留めるぞ!」
ペンギンコマンドたちが声を荒げて、孝一に向かって飛びかかる。そこへアンジュが発砲して、ペンギンコマンドたちが慌てて止まる。
「どこの誰だかよく分かんないけど、アンタたちみたいな変態ペンギンにウロウロされたくないの。さっさと消えてほしいんだけど・・」
アンジュがため息まじりに、ペンギンコマンドたちに言いかける。
「うおー!いきなりそんな物騒な物を持ち出したらいかんじゃないかー!」
「しかし、この女もなかなかセクシーな美女だぞー!」
ペンギンコマンドたちがアンジュに対して様々な反応を見せる。
「彼女でもエロスを楽しむには十分すぎるぞ〜!」
ペンギンコマンドの1人がアンジュを狙って近づいてくる。いら立ったアンジュが発砲して、ペンギンコマンドが頭を撃たれた。
「あーっ!デニスがやられたー!」
「デニス、しっかりしろ!傷は浅いぞー!」
ペンギンコマンドの2人、マイケルとジェイクが撃たれたデニスに駆け寄る。
「う〜・・あれ?そんなに痛くない?・・かすめただけだ・・・!」
うめくデニスが頭に手を当てて、大した負傷をしていないことに気付く。
「よくもデニスをー・・覚えていろ、きさまー!」
マイケルが捨て台詞を吐くと、デニスたちとともにカナタたちの前から姿を消した。
「何だったんだ、ありゃ・・・?」
聖吾がカナタとともにマイケルたちにあ然となる。
「本当に何者なの、あなたたち?詳しく話を聞かせてもらえない?」
魅波が孝一たちに疑問を投げかける。
「オレたちはアイツら、ペンギン帝国と戦ってる。そしてヤツらの使うロボの1体を倒したときだった・・」
「突然空に穴が開いて、私たちは吸い込まれてしまったのです。気が付いたら、私たちがいたのとは違う日本にいたの・・」
孝一と恭子が自分たちに起こったことを説明する。
「だけどこっちの世界も美女がたくさんいて、じっとしてられなかったんだよ〜♪」
「そうして勝手に動き回って・・元の世界に戻れなくなってどうするのよ・・」
浮かれる孝一に恭子が呆れて肩を落とす。
「戦っていたって・・あなたたちも何かロボか武器をもっているのですか・・?」
「あぁ!オレが乗るのは、ダイミダラーっていうんだ!」
カナタが聞くと、孝一が高らかに答えた。
「みだらって・・なんて名前なのよ・・・」
夕姫が孝一の話を聞いて、さらに呆れる。
「ダイミダラーって名前のロボットなんです。ハイエロ粒子を力に変えて戦うのです。」
「ハイエロ粒子・・いろいろといわくつきの力みたいだけど・・・」
恭子が語りかけて、カナタが苦笑いを浮かべた。
孝一たちの前から撤退したマイケルたちペンギンコマンド。彼らは本部に戻れず、途方に暮れていた。
「うわ〜・・散々だ〜・・!」
「ダイミダラーは倒せないわ、この世界のヤツらにもやられるわ、帰れないわ・・!」
「オレたち、マジでどうしたらいいんだよ〜・・・!?」
マイケル、デニス、ジェイクが悲壮感を膨らませて、悲鳴を上げる。
そのとき、突然轟音と揺れが起こって、マイケルたちが揺さぶられた。
「な、何だ!?」
声を荒げる彼らが周りを見回すと、その前に2体の巨大なロボットが現れた。
「これは、南極8号!?」
「8号はダイミダラーに破壊されたはずだぞ!」
「1つは8号そのまんまだが、もう1つは色が違うぞ・・!」
マイケル、デニス、ジェイクが南極8号を見て驚く。
「何だかよく分からんが、これでオレたちは戦える!本部へ帰れるかもしれないぞ!」
歓喜を覚えたマイケルたちが意気込みを見せる。彼らの興奮に呼応するように、南極8号1と8号2が武蔵野に向かって動き出した。
「また何かがこっちに来たぞー!」
町の人たちの声が、カナタたちの耳に入ってきた。前進する南極8号たちを、彼らが目撃した。
「今度は何!?またペンギン!?」
「ペンギンロボ!?あれもここに来ていたの!?」
海潮だけでなく、恭子も驚きの声を上げる。
「もしかして、さっきのペンギンたちと関係しているのですか!?」
「えぇ!ペンギン帝国のロボットです!」
カナタの問いに恭子が答える。南極8号たちは彼らのいるほうに向かっていく。
「恭子、ダイミダラーに戻るぞ!」
「あ、孝一くん、待って!」
走り出す孝一を恭子が追いかける。
「アイツらが進むと町が巻き込まれる・・止めないと・・!」
危機感を覚えるカナタがイザナギに乗り込んで発進した。
「アイツらにウロウロされると、気分が悪くなりそうだからね・・・」
アンジュも呟いてから、ヴィルキスに乗って飛翔した。
「私もランガと一緒に・・!」
「ダメよ、海潮・・!」
海潮も続こうとしたが、魅波に呼び止められる。
「私たちやランガがわざわざ相手をすることはないわ。私たちは私たちの家と町を守ればいいのよ。」
「だったらここで迎え撃たずに、町に入れる前にやっつけちゃえばいいのに・・!」
魅波の投げかける言葉だが、海潮は納得しない。
「イザナギっていうのとヴィルキスっていうのが戦いに行ったのよ。私たちまで出張る必要はないわよ・・」
「ゆうぴー、あなたまで・・・!」
夕姫からも言われて、海潮は困惑していく。みんなを守るためにランガとともに戦いたいと思いながら、彼女は行動に移せなかった。
海潮たちの家のほうへ進んでいく南極8号たち。そこへカナタのイザナギ、アンジュのヴィルキスが現れた。
「あれは、さっきのヤツらのメカだぞ!」
「こうなれば、真のペンギンの力を見せつけてやる!」
マイケルとジェイクがイザナギたちを指さして言い放つ。ヴィルキスがフライトモードからアサルトモードに変形する。
「また変なペンギンを出してきて・・・世界の果てに追いやってやるから・・・!」
アンジュが言い放ち、ヴィルキスがアサルトライフルを手にして構えた。
「そうはいくか!この2体の南極8号のタッグで、お前たちを返り討ちだー!」
マイケルが言い放って、南極8号1がミサイルを発射する。ヴィルキスがアサルトライフルを発射して、イザナギもビームライフルを持って射撃して、ミサイルに当てて爆破した。
「な、南極8号の攻撃を止めただと!?」
「しかし、8号2体による一斉砲撃を出せば、勝てるはずだー!」
デニスとジェイクが叫び、南極8号が大砲の砲門をそれぞれイザナギとヴィルキスに向ける。カナタとアンジュが対処のために集中力を高める。
「ちょっと待ったー!」
そこへ声がかかり、カナタたちが視線を移した。イザナギたちのところへ、孝一と恭子の乗ったダイミダラーが降下した。
「な、何だ、このロボットは・・!?」
「左手だけが大きい・・・!」
カナタとアンジュがダイミダラーを見て、驚きの声を上げる。
「あのペンギンロボットどもは、オレがブッ倒してやるぜ!」
孝一が南極8号たちに向かって言い放つ。
「ダイミダラーまで現れたか!しかしこっちは2体あるんだ!」
マイケルが負けじと、孝一たちに言い返す。
「だけど、敵は3体もいるんだけど・・・」
「あっ・・・」
デニスの指摘を聞いて、マイケルとジェイクが唖然となる。
「こうなったら、さっきの3姉妹を狙ってやるぞ!みんな、手を貸してくれ!」
マイケルがいきり立って、彼の操縦する南極8号1が8号2の上に乗った。
「よし、行けー!」
デニスとジェイクが檄を飛ばして、南極8号2が押して、8号1が同時に大きくジャンプした。
「何っ!?」
「跳んだ!?」
跳び越えた南極8号1に、孝一と恭子が驚く。
「いけない!海潮ちゃんたちの家のほうだ!」
カナタが緊迫を覚えて、南極8号1を追いかける。しかし8号2が大砲を発射して、イザナギの行く手を阻んだ。
「お前たちの相手はオレたちだ!」
「まとめて足止めさせてもらうぜー!」
デニスとジェイクが言い放ち、南極8号2がイザナギ、ヴィルキス、ダイミダラーの3体を相手にしようとする。
「そうはいくか!おめぇの相手はオレたちだけで十分だ!」
孝一が言い放ち、ダイミダラーが南極8号2へ向かっていく。
「おめぇらはもう1体の相手をしてくれ!コイツを片付けたらすぐに追いかける!」
「孝一くん・・・ありがとう!」
呼びかける孝一にカナタが感謝する。イザナギが南極8号1を追って、島原家に戻っていった。
「コイツをさっさと片付けて戻ればいいだけのことでしょ。」
アンジュは島原家に戻らず、孝一たちと戦うことを決めていた。
「だったら見てってくれよ!オレたちとダイミダラーの戦いをな!」
「別にあなたたちには興味はないんだけど・・」
高らかに言う孝一に、アンジュが呆れながら言い返す。
南極8号2がミサイルと大砲を一斉発射するが、ミサイルはヴィルキスにかわされ、砲撃はダイミダラーのかざした左手から出た光に止められた。
「どうだー!これがオレたちとダイミダラーの力だー!」
「力だって・・エッチなことでパワーを上げてるんだけど・・・!」
言い放つ孝一と、あえぎながら続ける恭子。孝一は後ろから恭子の胸をわしづかみにして揉んでいた。
ハイエロ粒子はエッチな妄想や行為をすると増大する。そしてダイミダラーはハイエロ粒子が増すことでパワーを増すのである。
「あなたたち、本当に何をやっているのよ・・・!?」
恭子のあえぎ声からいやらしい行為が行われていることが容易に想像できてしまい、アンジュが呆れ果てる。
「来た来たー!ハイエロ粒子が高まったー!」
孝一が興奮を膨らませて、ダイミダラーの左手から発している光が強まっていく。ダイミダラーが大きくジャンプして、南極8号2に向かって急降下する。
「必殺、指ビーム!」
ダイミダラーが左手を突き出してビームを放つ。ビームは南極8号2の砲撃を打ち破り、そのままその胴体を撃ち抜いた。
「うわー!やっぱり南極8号なのかー!」
デニスとジェイクが慌てて脱出して、南極8号2が倒れて爆発した。
「私の出番がなくなった・・弾の節約にはなったけど・・」
アンジュがため息をついてから、島原家のほうに視線を移す。
「さーて、このままもう1体もやっつけてやるぜ!」
孝一が不敵に言うと、ダイミダラーが大ジャンプをして、さらに左手の指ビームの反動を使って空を進んだ。
「あ、あんなムチャクチャな・・・!」
ダイミダラーの破天荒な動きに、アンジュは唖然となっていた。
島原家を狙って大きくジャンプした南極8号1。操縦しているマイケルが、海潮たちとランガを目撃した。
「見つけた・・あれだ・・今行くぞー!」
マイケルが言い放ち、南極8号1が急降下する。
「ちょっと・・こっちに落ちてくるつもり・・!?」
夕姫が目を見開いて、海潮がランガに駆け寄る。
「ラン・・!」
海潮の呼び声がランガに伝わる前に、南極8号1が島原家の前に着地した。
「うわっ!」
そのときの衝撃に押されて、海潮が庭を転がる。
「海潮!」
魅波、夕姫、ジョエルがたまらず叫ぶ。倒れている海潮に、南極8号1が迫る。
「まずはそこの赤い髪から捕まえちゃおうかな〜!」
マイケルが海潮に狙いを定めて、南極8号1が彼女を捕まえようとする。
「来ないで・・海潮に近づかないで!」
魅波が海潮を守ろうとしたときだった。ランガの顔に変化が起こり、体の紋様から光が発した。
ランガの右腕が刃物の形に変形した。ランガの振りかざした右腕が、南極8号1の伸ばした腕を弾き返した。
「ラ、ランガ!?・・あの目は、お姉ちゃん・・!?」
顔を上げた海潮が、ランガの顔を見て戸惑いを覚える。ランガの中に魅波の意識が入っていた。
「あ、あの黒いの、腕が変わった!?ロボットとも違うし・・何なんだ、これは!?」
マイケルがランガを見て、驚愕を浮かべる。
「私たちの家に勝手に入ってきて、妹に手を出すなんて・・!」
魅波が感情をあらわにして、ランガが再び右腕を振りかざす。南極8号1が両腕を構えるが、ランガの腕に両腕をなぎ払われた。
「何っ!?」
南極8号1の腕が破壊されて、マイケルがさらに驚愕する。ランガが右手の刃を突き出して、南極8号1の胴体を貫いた。
「い、いかん!脱出だー!」
マイケルが慌てて外へ出て逃げて、南極8号1が爆発した。
「お、お姉ちゃん・・・!」
「海潮、大丈夫!?ケガとかはない!?」
立ち上がる海潮に、魅波が駆け寄って心配する。
「うん、大丈夫・・ありがとう、お姉ちゃん。」
海潮が頷いて、魅波に微笑んだ。2人が落ち着きを取り戻して、ランガに視線を向ける。
(ランガもありがとう、助けてくれて・・)
(私もランガの中に入れた・・ランガがいたから、家を、家族を守れた・・・)
海潮と魅波がランガにもお礼を言った。彼女たち3姉妹は、ランガとのつながりを強めていた。
「みなさん!」
カナタの乗るイザナギが駆けつけて、ランガのそばに降り立った。
「みなさん、無事ですか!?」
「もうランガが片付けちゃったわよ・・」
カナタが心配の声をかけて、夕姫が呆れた素振りを見せて答えた。
(すごい力を備えているのか、このランガというのは・・そしてまた別の世界からやってきた、ダイミダラーというロボット・・・)
カナタがランガとダイミダラーのことを考えて、息をのむ。
(オレとカンナ、イザナギとイザナミの力は、たくさんの世界とつなげてしまったのか・・・!)
自分たちのもたらした次元の力が、様々な世界に影響を及ぼしていることに、カナタは深刻さを募らせていた。