真相への追及

 

 

次々と起こる美女の誘拐事件。

警察が包囲網を敷くが、犯人の手がかりすら見出すことができない。

 

その中で1人、事件の真相に迫ろうとする人がいた。

 

 

 美女の連続誘拐事件について、新聞でもニュースでも触れられていた。その事件の謎を突き止めようとする1人の女性がいた。

 女性の名前はサラ。彼女は様々な事件やスキャンダルの取材や情報収集を行ってきた。彼女によって暴かれた事件や問題もあった。

 サラはこの誘拐事件の真相を暴こうと行動していた。

 街の至る所に刑事や警官が警備に当たっていた。彼らは誘拐犯の捜索だけでなく、出歩く人、特に女性に早く帰るように注意を促していた。

(やっぱり警備は厳しいわね。でももっと厳しいところに潜入したことがあるんだから・・)

 サラは臆することなく、自信を感じて調査を続ける。彼女が警察に気付かれることなく、重苦しい夜が訪れた。

(そろそろ誘拐犯が現れる時間帯ね・・そっちのほうに注意しなくちゃね・・)

 気を引き締めなおして、サラは誘拐犯の行方を追った。警備する警察にも気を配りながら。

 そしてしばらく街の中を歩いたところで、サラは緊張を覚える。街中に白い霧がかすかに立ち込めてきた。

(何、この霧?・・こんな街中に霧なんて・・・)

 霧に対して疑問を覚えるサラ。彼女は慎重に霧が流れてくるほうへ向かっていく。

 さらに進んでいくと、サラは鋭く風を切るような音を耳にした。

(そこに例の誘拐犯が!?・・戦っている・・!?

 サラは疑問を感じながら、音のするほうに向かっていく。その先にいる何かに気付かれないように、彼女は慎重に進んでいった。

 そしてサラは霧の中に全身黒ずくめの男がいるのを目撃した。

(あれが誘拐犯!?・・それにあれは・・・!)

 サラは誘拐犯と戦っている少女も目にした。街に現れた正義の稲光、スパークガールだった。

(でも苦戦してるみたい・・あの犯人、それだけ強いってこと・・!?

 スパークガールの悪戦苦闘を見て、サラが緊張を募らせる。

 スパークガールは1人の少女を助けようと、誘拐犯と戦っていた。その隙に少女がその場から逃げ出そうとした。

 だが誘拐犯の伸ばした髪が少女を捕まえた。彼女に気を取られたスパークガールも、誘拐犯の手に捕まってしまう。

(つ、捕まった!?これはピンチ・・!)

 2人が捕まったことに、サラも緊張を膨らませていく。

 

     カッ

 

 次の瞬間、誘拐犯の目からまばゆい光が放たれた。

 

    ドクンッ

 

 光を受けたスパークガールが強い胸に高鳴りを覚える。

  ピキッ ピキッ ピキッ

 そして次の瞬間、彼女の着ていた衣服が突然引き裂かれた。

(えっ!?こ、これって・・!?

 サラがこの瞬間に目を疑った。あらわになったスパークガールの体が石に変わっていた。

(体が石になるって・・そんなこと、現実になるわけ・・・!?

 現実離れしたことに動揺するサラ。

  パキッ

 石化が進行して、スパークガールの衣装を剥がしながら、彼女の体を石に変えていた。

(これって、あの誘拐犯がしたってこと!?・・何者なの・・・!?

 サラは誘拐犯に対する疑問を膨らませていく。

 スパークガールは衣装や装備だけでなく、髪までも崩れ出した。この髪は本物ではなくかつらだった。

  ピキキッ パキッ

 石化がさらに進行して、スパークガールの両足や右手の先まで石に変わった。身動きが取れなくなった彼女は、もうただ完全に石になるのを待つだけとなってしまった。

  パキッ ピキッ

 スパークガールのかつらが崩れて、石化した本当の髪もあらわになる。

「ヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ・・!」

 彼女に対して誘拐犯があざ笑う。

  ピキッ パキッ

 唇さえも石にされて、スパークガールは声を出すこともできなくなった。

   フッ

 目から涙があふれたと同時に、スパークガールが完全に石化に包まれた。

「スパークガール!!!」

 少女の悲痛の叫びが、物言わぬ石像となったスパークガールに向けられる。誘拐犯が白い霧とともに、少女を連れて姿を消した。

「き、消えた・・ど、どこに・・・!?

 消えた誘拐犯に困惑するサラ。戦いがあった場所には、全裸の石像にされて、背中にくっついたワイヤーで宙づりになっているスパークガールだけが取り残されていた。

「ほ・・本当に石になっている!?・・そんなことが、現実に起こるなんて・・・!?

 サラが恐る恐るスパークガールに近づいていく。石化されたスパークガールは微動だにせず、サラが来ても反応しない。

(これが、スパークガールの正体・・かつらまで付けて、全身を変装していたなんて・・・!)

 サラが全裸となっているスパークガールを見つめる。衣装も装備もかつらも全て引き剥がされた彼女は、ショートヘアの少女だった。

「これは、本当にスクープよ・・情報を整理して、警察や報道に知らせないと・・!」

 思い立ったサラが1度戻ることを決めた。彼女のカメラには、誘拐犯と戦って石化されたスパークガールの姿が映っていた。

 そのとき、1度消えた白い霧が再び立ち込めてきた。

「えっ!?

 サラが霧を見て緊迫を覚える。彼女の周りを霧が取り囲んできた。

「この霧って、まさか・・・!?

 サラはたまらずこの場から駆け出していく。彼女は霧から離れようと必死に逃げていく。

 しかし霧は離れるどころかさらに濃くなってサラを取り囲んでいく。

「私のことを暴こうとは愚かな・・・」

 サラの前に現れた黒い影。少女を連れ去った誘拐犯が戻ってきた。

「もしかして、私が見ていたのがばれていた・・・!?

「私を陥れようとした償いをしてもらう・・」

 後ずさりするサラに誘拐犯が低く告げる。彼が伸ばしていた髪が、サラの腕と足を縛って捕まえた。

「キャッ!」

 持ち上げられたサラが手からカメラを落としてしまう。そのカメラを誘拐犯がつかんで、力を込めて壊す。

「カメラが・・!」

 スパークガールの戦闘など、事件を映したカメラを壊されて、サラが愕然となる。

「お前も私のコレクションに加わる資格はない・・・!」

 誘拐犯がサラに言いかけて、目つきを鋭くする。

 

    カッ

 

 身動きの取れないサラに、誘拐犯からの眼光が放たれた。

 

   ドクンッ

 

 サラが強い胸の高鳴りに襲われて、動揺を浮かべる。

「これって・・もしかして、私もスパークガールのように・・!?

  ピキッ ピキッ ピキッ

 不安を覚えたサラの上着が突然引き裂かれた。あらわになった彼女の体も石に変わって動かなくなった。

「わ・・私の体も、石になって・・・!?

「お前も終わることのない昼と夜の繰り返しを見守り続けるがいい・・!」

 驚愕するサラに誘拐犯が鋭く言いかける。サラも彼の石化に体を蝕まれていた。

「もうちょっとで、犯人の手掛かりに辿りつけたのに・・・!」

  ピキッ パキッ パキッ

 焦るサラにかけられた石化が進行して、彼女の下半身も石に変えた。裸になっていく彼女を見て、誘拐犯があざ笑う。

「お前もあの女も私に屈服するのだ・・全ての女が私にひれ伏すことになる・・・」

  ピキッ ピキッ

 誘拐犯の眼前で、サラの体がほとんど石に変わっていく。棒立ちになっている彼女の頬も髪も石化していた。

「真相を突き止めようとした私が・・逆に全部を突き止められるなんて・・・」

  ピキッ パキッ

 絶望を感じるサラが、唇も石にされて声も出せなくなる。

(ダメ・・声も出ない・・・私・・このままずっとここで・・・)

 サラが心の中で絶望と悲痛さを募らせていく。

(イヤ・・やめて・・・助け・・・助けて・・・)

 心の中で助けを請うサラ。

   フッ

 その彼女の瞳にもヒビが入り、サラも完全に石化に包まれた。

「ヒッヒッヒッヒッヒ・・私に刃向かう者は、私のコレクションから外れることになる・・誰も私に逆らうことはできんし、許されん・・・!」

 誘拐犯が嘲笑を浮かべながら、霧とともに姿を消した。この場にはサラだけが取り残された。

 スパークガールと同様、サラも誘拐犯によって全裸の石像にされてしまった。

 事件の真相への手がかりを映したカメラも誘拐犯によって壊され、その証拠は完全に潰されてしまった。

 

 誘拐犯によって石化されて全裸の石像にされて、夜の街中に置き去りにされてしまったサラ。静寂の中、彼女はその場にただただ佇んでいた。

 そして石化されてからしばらく時間がたった。突然、サラの体が石から元に戻った。

「あ、あれ?・・私?・・えっ!?私、裸!?

 何が起こったのか分からないサラが、自分が裸になっていることに気付いて、動揺を覚える。

(こ、ここって外!?何で私、外で裸になってるの!?

 そばの物陰に隠れて、サラが状況が分からなくて疑問を膨らませる。

(この格好でどうやって帰ればいいの〜!?

 安心して帰ることができず、サラは心の中で悲鳴を上げていた。

 

 何とか帰宅することができたサラ。自分がなぜ外で全裸でいたのか、彼女はその後も分からなかった。

 そしてサラの抱える疑問は深まるばかりとなった。

 行方不明になっていた女性たちのほとんどは、実業家の花山(はなやま)クラインの邸宅で見つかった。ところがクラインはその中で死亡しており、全裸の姿で発見された女性たちは全員、自分たちに何が起こったのかを全く覚えていなかった。

 そのため、女性たちがなぜクラインの邸宅にいたのか、分からずじまいになってしまった。

 そもそもサラは、自分が何を調べようとしていたのかも分からなくなっていた。

「私、何か大事なことを忘れているような・・・」

 思い出そうとしても全然思い出せず、サラは悩み続ける。

「私が外で裸になってたことと関係あるのかな?・・・全然スッキリしなくて、気分がおかしくなってしまいそう・・・!」

 夜の外で裸でいたことを思い出して、サラが顔を赤らめる。

「どうしても思い出せない・・思い出さないといけないと思うのに・・・!」

 思い出そうとしても思い出せない。疑問の答えを出せないまま、サラは他の事件や問題の情報集めに行くことになった。

 

 記憶も写真も全て握りつぶされて、女性誘拐事件は謎のまま終息した。

 この事件の詳細を知っているのは、サラたちの記憶を消した張本人と、世間を騒がせている怪盗だけ・・・

 

 

短編集

 

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