石化討論・加害者編

 

 

ここはどこともつかない異空間。

今ここで、異形とされている存在による討論が行われていた。

 

 

メデューサ「なぜ私が呼ばれなければならないの?」

ゴーゴン「仕方なかろう。今回の議題に精通しているのだからな、私も君も。」

 

メ「それで、今回の議題は何なの?」

ゴ「あぁ。これだ。」

 

「石化加害者」

 

メ「石化加害者?つまり石にする側よね?私たちみたいな。」

ゴ「そうだ。何らかの石化の力を持った者について、今回は話し合っていくことになる。

  その人物の性格や立場、その石化の詳細などを掘り下げることになる。」

メ「石化の詳細?そんなの文字通り、石に変わるってだけなんでしょう?」

ゴ「ところがそんな単純なものではないのだよ。」

メ「へぇ?どういう風に凝っているというの?」

ゴ「そのことを頭の片隅に置いて、討論を始めよう。まずはこの人物だ。」

 

「フェイト・アーウェルンクス」

 

メ「おやおや、かわいい坊やねぇ。逆に石にしてかわいがってあげたいわねぇ。」

ゴ「外見に惑わされるのは君の悪い癖だぞ。これでも彼は身体的に高位の力を持っている。」

メ「おやおや、本当に見かけによらないのね。」

ゴ「彼は魔法使いに属する者でね。しかもどうやら人間でないとの情報もあるが、詳細は不明だ。

  魔法において高レベルとされている石化魔法の他、水の魔法や格闘にも長けているな。」

メ「でも石化自体は割と普通よね?・・あら、その子、服だけ石になってるわね。しかも服が壊れた。

  こんな器用なこともできるのねぇ。」

ゴ「いや、これは彼女の能力によるものだよ。

  マジックキャンセルによって、肉体は石化せず、服しか石化しなかったのだよ。」

メ「この子もこの子でなかなか眼が離せないものね。」

ゴ「実力は大したものだ。だが我々が求める石化としてはいかんせん威力に欠ける。」

メ「あらあら、きついコメントね。私は高く評価するわよ。

  主観すぎてるわけでなく、公平に評価してね。」

ゴ「ではそろそろ話を対象を変えよう。次はこの人物だ。」

 

「花山クライン」

 

メ「割といい好青年、といったところね。見たところ“いいひと”ね。」

ゴ「それは彼の表の顔だ。本当の彼は欲望と野心に満ちあふれた男だ。」

メ「どのように様変わりするのかしら?それでその人の石化というのは?」

ゴ「彼の使う石化は体を石に変え、その人の身につけているものを全て引き剥がしてしまうものだ。」

メ「つまりその石化を受けた人は丸裸の石像と化すわけね。

  裸という恥ずかしい姿になっていくのに、体が石になっているから自分を抱きしめて隠すこともできない。

  完全に石化してからは、いろいろなところを触り放題ということね。

  腕や足、胸やお尻、唇、触れてはいけないところまで。ウフフフ・・・」

ゴ「石化としてはかなり強力な効果となっているが、問題は彼だな。」

メ「彼?」

ゴ「彼は世界の女を従わせたいという支配欲を強く抱いている。

  この石化も彼のその欲望を象徴しているといっても過言ではない。」

メ「あら、この人、ずい分と成果があるじゃない。美女をさらっては石にしてる。

  これだけの人を丸裸の石像にしてものにするなんて、まさに“すばらしい”の一語よね。」

ゴ「しかし石にした女のほとんどを壊してしまっている。女への支配が裏目に出ているな。」

メ「本当にもったいないことをするわね。せっかく手に入れた美女なのに。

  ここまで器用に裸の石像にしたのに、それを自分で踏みにじってしまうなんてね。

  このような裸の石像なら、いろいろなところをいじくってしまえばいいのに。胸や足、唇などもね。

  相手は石になって動けないわけだから、抵抗されることもないのだから。」

ゴ「君は何気に破廉恥な言動に走る傾向があるな。私は感心しかねるが。」

メ「あら?この石化、彼のオリジナルではないのね。」

ゴ「そうだ。“魔石”と呼ばれる宝石に封印されている魔人の1人、メデューの力を借り受けたものだ。」

メ「メデューってあのメデュー?彼も物知りね。人間に力を貸すなんて。

  いくら欲望の力を得る魔人だからって、ムダが嫌いなあの人がねぇ。」

ゴ「知り合いだったのかね?」

メ「知り合いというよりも、同族の性というべきね。

  クラインが使っていたタイプの石化を使えるのに、ムダだからって使わないのよね。」

ゴ「そういう気難しく思われる者も、石化を使う者の中にはいるさ。それは君も分かっているはずだ。」

メ「それもそうね。そろそろ次に行きましょう。」

ゴ「そうだな。次は石化とは少し違うが、似ているということで取り上げてみた。」

 

「ヨシュア・クリストファ」

 

メ「あら。この子もかわいいじゃないの・・この子、頭に角が出ているわね?」

ゴ「それは尖角(ホーン)と呼ばれる悪魔の角だ。悪魔の力の源となっている。」

メ「悪魔?でもこの子、人間でしょう?」

ゴ「引き抜かれた尖角を植えつけられたようだ。

  だが悪魔としての強い力を制御できず、彼は押し寄せるノイズに苦しめられている。」

メ「ノイズ?」

ゴ「雑音。すなわち他人の心の声だ。周りの人間の声が頭に直接響き、彼はそれに苦しめられている。

  結果、彼はそのノイズをかき消そうと、その尖角の力である時間凍結をかけていっている。

  親友の子供たちを始め、多くの人間の時間を止めてきている。」

メ「少し待ちなさい。今回の議題は石化の加害者。時間停止を扱うのは場違いというものよ。」

ゴ「言ったはずだ。石化とは少し違うが似ていると。

  時間凍結を受けたものは、石のように硬質化してその場に停滞している。

  そういうことだ。」

メ「なるほど。納得したわ。かわいい子だから認めてあげるけど。」

ゴ「君はそのようなことに興味を持つのだな。では次だ。

  今度も石化とは少し違うが、似ているので取り上げてみた。」

 

「真祖」

 

メ「真祖?どういうことなの、その名称は?」

ゴ「正確にはオトメと呼ばれる存在の先祖というべき存在だ。

  かつて世界的戦争を鎮圧させた伝説のオトメということなのだが、実際に現れたのがその真祖と同一かどうかは定かではない。」

メ「その真祖がどのような石化を使うのかしら?」

ゴ「手段は明確。眼からの光を受けたものは石化するというものだ。

  精密に言うと、オトメにはナノマシンが内蔵されている。

  真祖の光はそのナノマシンを硬質化し、そのオトメを鉱物に似た石像へと変えるのだ。

  実際にはオトメだけでなく、他のものの硬質化も認められているがな。」

メ「石化されても生命反応はあるみたいね。意識はないみたいだけど。」

ゴ「それに真祖というのは伊達ではないようだ。高いレベルのオトメですら手に負えない強さを持っている。」

メ「これもまた侮れないということね。」

 

メ「結局、今回の討論はどういう結論に至ったわけ?」

ゴ「石化も、単純に人を石にするだけではないということだな。

  こだわりや付加効果、単純な石化と呼べない部類まで存在している。」

メ「私としては、フェイトやヨシュアのような子供が、クラインのような石化を使ってたら面白いと思うんだけどね。」

ゴ「全く、君はおかしな趣味に走る悪い傾向にあるな。」

メ「いいじゃないの。私はかわいいのといやらしいのがいいのよ。」

ゴ「人それぞれだから口出しはしないがな。」

メ「さて、次はどんな討論になるのかしらね。」

ゴ「次があればいいのだがな。」

メ「あってほしいわね、ウフフ・・・」

 

 

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