石化討論・被害者編

 

 

ここはどこともつかない異空間。

今ここで、異形とされている存在による討論が行われていた。

 

 

メデューサ「また私たちが呼ばれたということは・・」

ゴーゴン「そうだ。我々に精通した議題だ。」

 

メ「さて、今回の議題は何?」

ゴ「大方の予想はついていると思うが?」

 

「石化被害者」

 

メ「被害者?興味の中ではいいけど、わざわざ議論するほどのことではないのでは?」

ゴ「だがこれも侮れないのだよ。石化はかける側よりもかけられる側のあり方が重視されるらしい。

  だから被害者よりも慎重に討論すべきかもしれんな。」

メ「まぁ、私としてはなかなかの議題だと思うけどね。それで、最初は誰からなの?」

ゴ「まずはこの人物だ。」

 

「ヤクモ」

 

メ「あら。清楚でありながらかわいらしいお嬢さんじゃないの。

  その子がどんな石化を受けたのかしらね?」

ゴ「では説明しよう。

  彼女は蛇族のギャザという男の蛇に首を噛まれ、その毒を受けて石化している。

  手足の先から徐々に白に近い灰色の石に変わり、最後には全身に行き渡っている。」

メ「ウフフ、元々がさることながら、なかなか鮮明な石の質ね。」

ゴ「だがこれからがまた凄まじいものがある。

  その後、崖を落とされ、その下にある酸の海に落とされたのだ。」

メ「あらあら、ぞんざいな扱いされるのね。かわいそう。

  私ならいろいろとかわいがってあげるのだけれど。」

ゴ「石化を使う者の中には、そういった残忍な考えの持ち主もいるものだ。

  だが彼女の石化した姿は、神秘の女神像を彷彿とさせるな。その点では私も評価したい。」

メ「ホント、きれいよね。私が石化してお持ち帰りしたいくらいね。」

ゴ「では次の人物にいこうか。」

 

「パン」

 

メ「これはやや強気な女の子ね。こんな子がどうやって固まるのかしらね。」

ゴ「彼女は何度か固めの効果を受けている。

  ルードというマシンミュータントの光を受けて人形にされている。

  その後彼女は、ドルタッキーという男に捕まり、人形遊びに付き合わされることになる。」

メ「あらあら。見るからに変態よね、この男。そんな人に振り回されるなんて、この子も不憫よね。」

ゴ「だが髪型を変えられるだけで彼の行為は中断されたがな。」

メ「残念ね。でも私なら丁寧に扱うけどね。女性の扱いはかなりデリケートなのよ。」

ゴ「君のような考えの持ち主が言っても、説得力に欠けるが・・

  そして彼女はリルドというマシンミュータントによって金属板にされている。」

メ「まるで金属化とカーボンフリーズの合わせ技ね。

  体が金属になってるだけじゃなくて、金属の板の中にもめり込んでいるわね。」

ゴ「これだけ固めを経験していることは評価に値するだろう。」

メ「私もそう思うわ。さて、そろそろ次に行きましょうか。」

ゴ「そうだな。次はこの人物だ。」

 

「大道寺知世」

 

メ「あらあら。この子もけっこうかわいいじゃないの。つい手が出てしまいそう。」

ゴ「彼女も君に似て狂喜乱舞する一面も持っている。だが我々が評価すべきはそこ以上である。」

メ「そうね。それで彼女はどんな感じで固められるのかしらね。」

ゴ「彼女は“クロウカード”と呼ばれる魔法のカードの効力をよく受けている。

  まず“タイム”で時間停止を被ったことが何度かある。

  続いて“フリーズ”で氷付けにもあっている。」

メ「カードの効果もさることながら、ここまで固められると抜け目がないというしかなくなるわね。」

ゴ「あとこれはカードではないが、魔導師に水の水晶に閉じ込められたこともあったな。」

メ「あらあら。これはますます私がかわいがってあげないといけないわね、ウフフフ。」

ゴ「これはいろいろな意味で強敵なのかもしれんな。」

メ「私もこれほど手ごわいと逆に追い込まれてしまうわね。」

ゴ「ではそろそろ次に行こう。次はこの人物だ。」

 

「細川ライム」

 

メ「あら。この子もなかなかかわいらしいじゃない。それにきれいだし。

  そんな子がそんな固めにあうのかしらね?」

ゴ「その前に補足だ。彼女は正義の稲光“スパークガール”と称して戦う一面もある。

  世間を騒がせる怪盗に挑み、敗れるも後一歩というところまで追い込んだという。」

メ「なるほどね。でもどんな人でも、固められたらそれまでよ。それで?」

ゴ「彼女は新たに世間を騒がせた連続誘拐犯に挑むも、彼が放った石化を受けてしまう。

  彼女は体の石化と同時に、その付加効果で衣服を剥がされ、石の裸身をさらけ出すことになる。

  石化は割合徐々に進行しているので、彼女の感情の変化が表れている。」

メ「ホント。石の質もそうだけど、彼女の裸にも興味をそそられるわね。」

ゴ「石化に侵食されながらも、彼女は誘拐犯に発信機を付けるが、それまでだった。

  誘拐犯にあざ笑われながら、彼女は完全に石と化した。

  彼女の装備品であるワイヤーが背中に密着したのを除いて、全ての衣服を引き剥がされ、彼女は全裸の石像としてその場に留まることとなった。」

メ「ウフフ。これは本当に興味をそそられるわね。

  彼女もまさか自分の体が石になると同時に丸裸にされるとは思わなかったでしょうね。

  しかも石化した石の質がすばらしい。思わず触れてみたいくらい。」

ゴ「やはり君はそのような趣向に走るのだな。」

メ「でもそれだけ見事な石像になったのに、どうして連れ帰らずに置き去りにしたのかしらね?」

ゴ「どうも顔を傷つけられたため、自分のコレクションに加えずにこの場で石化したようだ。」

メ「あら、ずい分と意地悪な誘拐犯なのね。そんなことで切り捨てるなんて。

  手向かわれるのを覚悟の上でなければ、コレクターは務まらないわよ。」

ゴ「その後彼女は全裸の石像となったままその場に留まり続ける。

  そしてその石化の力の源となっている魔人が、石化された美女たちを元に戻し、同時にそれに関する記憶を消した。

  もちろん彼女も石化から解放されたのだ。」

メ「あら。記憶を消しちゃったの?もったいないわね。

  元に戻ったときの反応も、固めの醍醐味だというのに。

  しかも裸なんだから、その動揺も眼を見張るものになってるというのに。」

ゴ「ムダが嫌いだったということと騒ぎにしたくなかったらしい。」

メ「それもまたもったいないこと。それにしても本当にかわいらしい子ね。

  変装した格好と普段の姿。この姿のギャップも見事ね。

  正義のヒロインが一気に、本当に飾らない少女へと変わり果てる。

  それを体現した彼女は、最高位の石化被害者であるといえるわね。

  それに石化が全身に行き渡るまでの反応も、私としては評価したいところね。

  石化してあらわになった自分の手を見て驚きを見せる。

  さらに体が石になって裸へと近づいていくことを恥らいながら、誘拐犯に反抗の意思を見せている。

  でもそれが限界。石化で自由が効かなくなり、力を入れられなくなる。

  友達を助けられなかったことへの悲しみの涙が、石化が完了する瞬間に流れ出す。

  このシチュエーションも引き込まれてしまうわね。」

ゴ「君は引き込まれると見境なく語りだして止まらない傾向があるようだ。

  自分があの誘拐犯に成り代わろうとする魂胆も見え見えだ。」

メ「あら、よく分かったわね。」

ゴ「君の考えは筒抜けだからね。だが私も彼女を高く評価しているつもりだ。

  これほど石化というものを身をもって体現しているのだからな。」

メ「ウフフフ、よきことかな、よきことかな。」

 

メ「それで今回の結論は?」

ゴ「石化は攻め手だけでなく、受け手も重要な役割となっていることだな。

  攻め手の一方的な攻めだけでは固めは際立たない。

  受け手の容姿、石化を受けての体現を含めることで、評価を高めることになる。」

メ「そうね。石化されての反応が、石化をよりすばらしいものへと昇華していく。

  そこが石化の本当の魅力ということね。」

ゴ「さて、次はどのような議題が出るだろうか。」

メ「また楽しくなるような議題になるといいわね。」

 

 

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