SDガンダムワールド
真・戦国英雄伝
第6章

 

 

 司馬懿は三蔵の不可思議な戦い方に翻弄されていた。
「三蔵・・つかみどころがないとは思っていたが、これほどまでとは・・・!」
 司馬懿が三蔵の脅威を痛感する。
「力任せの戦い方では、私を脅かすことはできませんよ。」
 三蔵が冷静に司馬懿に告げる。
「以前と比べて冷静になっているようですが、それでも怒りを武器としている節があります。それでは私に勝つことはできませんよ・・」
「オレはこの怒りの意味を理解した・・この怒りは、仲間を思えばこそだ・・・!」
 三蔵の投げかける言葉に対し、司馬懿が自分の意思を口にする。
「怒りを力に変え、その上でオレであり続ける・・それがオレの見出した強さだ・・!」
「それが強さ?・・あなたも道を見誤ったようですね・・・」
 両手を握りしめる司馬懿に対して、三蔵がため息をついた。
「あなたは、私自らに手で粛清させていただきます。正しき世界を目指すために。」
 三蔵が目つきを鋭くして、杖を構えて司馬懿に近づいていく。
 司馬懿が三蔵に飛びかかり、淵獄魔掌を振りかざす。三蔵は淵獄魔掌をかわして、司馬懿の背後に回った。
 三蔵が杖を突き出したが、司馬懿は紙一重でかわして、左手で杖をつかんだ。
「捕らえた・・!」
 司馬懿が杖を引っ張り、淵獄魔掌で三蔵の頭を叩いた。
「ぐっ!」
 三蔵が強い衝撃を受けて、体勢を崩した。
「逃がさないぞ!」
 司馬懿が左手で三蔵の右腕をつかみ、淵獄魔掌で何度も殴りつけた。
「はっ!」
 三蔵が杖から光を発して、司馬懿を引き離した。
「不覚を取りましたね・・ですが同じ手は2度は通じませんよ。」
 三蔵が告げて、再び司馬懿の前から姿を消した。
「同じ手が通じないのは、オレのセリフだ・・・!」
 司馬懿は冷静さを崩さず、目を閉じて感覚を研ぎ澄ませる。
(そこだ!)
「闇潰瞑想!」
 三蔵の気配を正確に捉え、司馬懿が振り向き様に赤い光を放つ。現れた三蔵が光を浴びて動きを封じられる。
「あなたは、完全に私の動きを読んでいるのですね・・・!」
「惑わされずに感覚を研ぎ澄ませれば、気配を感じ取れないことはない・・捉えにくいお前の気配も・・・」
 緊張を覚える三蔵に、司馬懿が冷静に答える。
「ここまで成長しているとは・・しかし道を外れている以上、野放しにはできません・・・!」
 三蔵が目つきを鋭くして、赤い光を破ろうとする。
「そうはいかないぞ!殲獄波動!」
 司馬懿が右手を振りかざして、淵獄魔掌から閃光を放つ。
「ぐっ!」
 三蔵が体に強い刺激を加えられてうめく。彼が吹き飛ばされて地面を転がる。
「三蔵、目を覚ませ・・悟空たちは、お前が帰り、再び共に旅ができると信じている・・・」
 司馬懿が三蔵に近づき呼びかける。
「過ちを繰り返し、悟空たちを悲しませるようなことは、オレが許しはしない!」
「許しはしない・・それは私のセリフです!」
 言い放つ司馬懿に、三蔵が感情をあらわにして言い返してきた。彼の体からあふれたオーラは、漆黒の禍々しいものだった。
「三蔵・・その力・・その姿は・・!?」
 司馬懿が三蔵の変貌に目を見開く。三蔵はオーラだけでなく、姿も漆黒となっていた。
「これが今の私の真の力です・・この姿の私に、慈悲の心は一切ありませんので、覚悟することです・・・」
 三蔵が低い声で司馬懿に告げる。
「では、参ります・・」
 三蔵が高速で移動し、司馬懿の横に回り込んだ。
「何っ!?」
 三蔵の動きを捉えることができず、司馬懿が驚愕する。三蔵が杖を振りかざし、黒い光の一閃を繰り出した。
「ぐっ!」
 司馬懿が光に突き飛ばされてうめく。三蔵が直後に動き、司馬懿の後ろに回った。
「うぐっ!」
 三蔵に杖で背中を突かれ、司馬懿が激痛に襲われる。
(強くなっただけじゃない・・前よりも、攻撃的だ・・・!)
 特異な力だけでなく、打撃といった直接攻撃も仕掛けてきた三蔵に、司馬懿が毒づく。
「このっ!」
 司馬懿が振り向き様に淵獄魔掌を振りかざす。三蔵は姿を消して、一閃をかわした。
(消えた・・気配さえもつかめなくなっている・・・!)
 感覚を研ぎ澄ませる司馬懿だが、三蔵の居場所を見つけられず、焦りを募らせる。
「あなたでも私を捕まえることはできませんよ・・!」
 三蔵が司馬懿の右側に出て、杖を振りかざして光を放った。
「ぐっ!」
 司馬懿が痛みに耐えて、左手で三蔵の左腕をつかんだ。
「もう逃がしはしないぞ、三蔵!」
 司馬懿が言い放ち、三蔵に向けて淵獄魔掌を繰り出そうとした。次の瞬間、司馬懿が三蔵に引っ張られ、強く投げ飛ばされた。
「力でヤツに押し返されただと!?」
 着地した司馬懿が、三蔵の力に驚愕する。
「言ったはずです・・今の私に、慈悲の心はないと・・」
 三蔵が彼に振り向き、微笑みかける。
「あなたは私を止められませんよ・・言葉でも能力でも、純粋な力でも・・」
「それでオレに勝ち目がないと言いたいのか・・・!」
 勝ち誇る三蔵に、司馬懿が怒りを募らせていく。
「総合的な力の差を把握しているに過ぎませんよ・・・」
 三蔵が言い返して、杖を振りかざして光を放った。司馬懿が反応し、速さを上げて光を回避した。
(攻撃的なのに、冷静さは崩れていない・・自分を見失うなと言われた後のオレと同じだ・・・!)
 司馬懿が三蔵の心理状態を把握して、緊張を募らせる。
(それなら、オレも同じようにして、もっと強くなる・・ここまで似ているなら、三蔵だけにできて、オレができないなんてことはない・・!)
 司馬懿は自信を抱いて、落ち着きを取り戻していく。
(オレであることを見失わず、手に力を集めていく・・・!)
 彼が手を強く握りしめ、淵獄魔掌にも力が込められる。
「まだ冷静でいますか・・ここまで成長したものです・・・」
 三蔵が司馬懿を見て称賛を送る。
「しかし世界のため、あなたは葬り去らなければならないのです・・・!」
 三蔵が目を見開き、大量の光の球を作り出した。
「いくらあなたが速くても、これを完璧にかわし続けることはできませんよ・・・!」
 三蔵が光の球を司馬懿に向けて一斉に飛ばした。司馬懿が飛び交う球を素早くかわしていく。
 しかし光の球はかわされても方向を変えて再び飛び込み、司馬懿は回避が間に合わず体に当てられていく。
「ついに当たるようになりましたね・・ここからもっと追い込んでいきますよ・・・!」
 三蔵が目を見開く、光の球の速さを上げた。
「ぐあぁっ!」
 球を何度もぶつけられて、司馬懿が絶叫を上げる。ダメージが大きくなり、彼は倒れた。
「ここまでのようですね、司馬懿・・終わりにしましょうか。」
 三蔵は光の球を1度戻して、司馬懿に近づいていく。
(負けるわけにいかない・・負けたら劉備や悟空、光秀たちが危険にさらされる・・・!)
 司馬懿が諦めず、力を振り絞り立ち上がる。
(仲間が傷つくのは許せない・・だがもう、手加減をして三蔵を止めることは、オレにはできない・・・!)
 三蔵を傷つけずに連れ戻すことが自分にできないと思い知り、司馬懿は悔しさを感じていく。
(すまない、悟空・・お前の師匠を無事に連れてくることができそうにない・・・!)
 悟空に対する申し訳のなさを覚えて、司馬懿が完全にためらいを捨てた。彼の体から出ている赤いオーラが背中に集中し、翼のような形になる。
「司馬懿・・まだまだ秘められた力があったようですね・・本当に侮れない人だ・・・!」
 三蔵が司馬懿の底力を警戒する。
「だからこそあなたは、ここで葬られなければなりません・・あなたのその高まる力は、これからの世界の障害にしかなりませんから・・」
 三蔵が司馬懿に向けて光の球を飛ばす。次の瞬間、司馬懿が目にも止まらぬ動きで球をかいくぐった。
 三蔵が杖を振りかざし、光を放つ。近づいてきた司馬懿が体勢を低くして、光もかわした。
(先ほどよりも速い・・!)
 その瞬間にさらなる脅威を覚える三蔵が、杖から障壁を発する。司馬懿が淵獄魔掌を振りかざし、障壁を打ち砕いた。
「うっ!」
 司馬懿の攻撃の強い衝撃で、三蔵が吹き飛ばされる。彼は空中へ動いて体勢を整える。
 だがその直後に司馬懿が詰め寄り、淵獄魔掌を突き出してきた。
「ぐっ!」
 防御するのもままならず、三蔵が突き飛ばされて地面に叩きつけられた。
「この私が、攻撃をかわせないとは・・・!」
 体に激痛を覚えて、三蔵が毒づく。立ち上がる彼の前に、司馬懿が降り立った。
「考えを改めろ、三蔵・・悟空たちのために戻れ・・・」
 司馬懿が低い声で三蔵に忠告する。
「私は世界のために動いているのです・・その使命を果たさなければ、世界は混迷に向かうばかりです・・・」
 しかし三蔵は降参せず、司馬懿に敵意を向け続ける。
「あなたや悟空が私に従うのです・・あなたたちも、世界をよくしたいという願いがあるはずです・・・!」
「オレたちの望む平和と、今のお前が塗り替えようとしている世迷言を一緒にするな・・・!」
 手招きをする三蔵の誘いを、司馬懿が一蹴する。
「オレたちはオレたち1人1人、互いのため、国のため、世界のために全力を注いでいる・・お前たちのしているような支配ではない・・!」
「支配ではありません・・誰かによって正しく導かれるのが、正しき世界の在り方なのです・・・」
「それが支配だというのが、分からないお前ではないだろう・・!」
「支配ではありません。世界を正しく導くのが、私たちの使命なのです・・」
 司馬懿が𠮟責するが、三蔵は考えを変えない。
「もはやお前は、かつての三蔵ではない・・支配欲に憑りつかれた愚か者だ・・・!」
 司馬懿が怒りを募らせ、淵獄魔掌に力を込めた。淵獄魔掌から赤い光の刃が出た。
「後で悟空に謝らないといけないな・・・!」
 悟空に対する罪の意識を抱えて、司馬懿が三蔵に向かっていく。
「あなたはここで消えるべき存在・・あなたがいれば、平和の障害になる!」
 三蔵が言い放ち、杖を構えて光の球を大量に出した。放たれた球に対し、司馬懿が淵獄魔掌を振りかざした。
「天地魔装剣(てんちまそうけん)・・!」
 司馬懿の光の剣の一閃が、光の球を全て切り裂いた。
「終わらせるぞ、三蔵・・!」
 司馬懿が三蔵の眼前まで一気に詰め寄ってきた。司馬懿が振り下ろした光の剣を、三蔵が気を込めた杖で受け止めようとした。
 しかし司馬懿の一閃は三蔵の掲げた杖を切り裂いた。
「まだだ・・まだ終わりではない!」
 三蔵が右手を前に出して、司馬懿に念力を仕掛けて動きを封じる。
「このまま確実にとどめを刺します・・!」
「そうはいかない・・オレはやられはしない!」
 左手に気を溜める三蔵に言い返し、司馬懿が全身に力を入れて念力から強引に動く。彼は強まった光の剣を突き出した。
「うっ・・!」
 三蔵が光の剣に体を貫かれ、目を見開いた。
「あ、あなたは・・私の命を・・・!」
「お前は悟空の師として、多くの者の仲間として過ちを犯した・・取り返しのつかない過ちを・・・!」
 うめく三蔵に、司馬懿が感情を押し殺して告げる。司馬懿の光の刃が引き抜かれ、倒れた三蔵の姿が元に戻った。
「まさか・・私がここで果てるとは・・・」
 死を痛感する三蔵が弱々しく声を発する。
「悔い改めてほしかった・・悟空は、心からお前の帰りを待っていたのだから・・・」
 司馬懿が三蔵に向けて悲しい顔を浮かべる。
「そうはいきません・・私は仏のお告げに従ったまでです・・・」
「仏や神に仕えるだけじゃなく、お前を信じていたヤツも信じるべきだっただろうが・・・!」
 考えを改めない三蔵に、司馬懿が怒りを噛みしめる。
「お前は三蔵ではない・・人を踏み外した愚か者だ・・・三蔵は、もういない・・・」
 司馬懿は三蔵に背を向けて、ゆっくりと歩き出した。
「司馬懿・・・猪八戒、沙悟浄・・・悟空・・・」
 司馬懿の後ろ姿を見送り、三蔵が呟く。彼は悟空たちとの旅を思い返していく。
(懐かしい思い出ですね・・懐かしい過去・・・)
 旅の記憶を懐かしく思い、三蔵は眠りについた。

 光秀と信長が天牙麒麟刀とへし切長谷部を構えたまま、互いの出方を伺っていた。
「来んのか?ならばわしから行かせてもらうぞ!」
 信長が不敵な笑みを浮かべて、光秀に向かって飛びかかる。
 光秀がへし切長谷部をかわし、天牙麒麟刀を振りかざす。信長がへし切長谷部を掲げて、天牙麒麟刀を止めた。
「弱い・・これで強くなったなどと、片腹痛いわ!」
 信長があざ笑い、へし切長谷部で天牙麒麟刀を押し返した。押された光秀が地面に足を付けて踏みとどまる。
「貴様はわしに及ばんが、力は我が軍の中で戦った!戦の兵の配置も戦略も見事なものじゃ!・・じゃが、わしに歯向かうならば、何者であろうとわしの敵じゃ!」
 信長が言い放ち、へし切長谷部の切っ先を光秀に向ける。
「私はその高い力に惹かれ、ついてきた・・しかしお前はその力に溺れ、敵だけでなく味方にも傍若無人を働くようになってしまった・・・!」
 光秀が過去を思い返して、信長への怒りを募らせる。
「貴様を慕う者を、私のように後悔させてはいけない・・貴様は、私が討つ!」
「貴様ごときに、わしの首が獲れるか!」
 言い放つ光秀を信長があざ笑う。信長がへし切長谷部を振りかざして、気の刃を放った。
「ぐっ!」
 天牙麒麟刀を構えて防ぐ光秀だが、気の刃に押されて突き飛ばされる。
「どうした!?せめてわしに一矢報いてみろ!」
 信長が高らかに言って、へし切長谷部をさらに振りかざす。次々に放たれる気の刃を、光秀が回避していく。
 しかし回避が間に合わなくなり、光秀が次第に追い込まれていく。
「つまらんわ!貴様など、さっさと片付けてしまおうか!」
 信長がため息をつき、光秀に近づいていく。光秀が体力を消耗して、呼吸を乱していく。
(ナイトガンダムとの戦いを思い出せ・・信長の動きや技は強力だが、どの攻撃にも必ず隙や弱点があるはずだ・・・!)
 ナイトガンダムからの教えを思い出す光秀。
(その隙を突くにしても、激しい攻撃をかいくぐり、信長に近づかなければならない・・それは厳しい勝負になることは確実・・・!)
 戦況を悟る彼が、信長の動きを注視する。
(しかしやるしかない・・やらなければ、私だけでなく、多くの命が蹂躙される・・・!)
 光秀が覚悟を決めて、天牙麒麟刀を構える。彼は信長の動きを伺い、隙を見抜いて突くことに全力をつぎ込んだ。
「足掻いてくるか・・せめて最後にわしを楽しませてみせろ!」
 信長が言い放ち、へし切長谷部を振りかざして気の刃を放った。光秀が素早く動き、気の刃をかわして信長に近づいていく。
「懐に来たところで、わしに斬られるだけじゃ!」
 信長が不敵に笑い、へし切長谷部を上へ振り上げた。
「絶刀燬灼龍穿!」
 信長が光秀目がけてへし切長谷部を振り下ろす。光秀がこの一閃を見抜き、紙一重でかわした
「天牙龍神斬!」
 光秀が振りかざした天牙麒麟刀が、信長の脇腹をかすめた。
「くっ・・!」
 信長が痛みに顔を歪めて、再びへし切長谷部を振りかざす。光秀が天牙麒麟刀でへし切長谷部を受け止めるも、その衝撃で彼も信長も押された。
「まさか貴様に、手傷を負わされることになるとは・・・!」
 信長がいら立ちを覚えて、光秀に鋭い視線を向ける。
「貴様はわしに完膚なきまでに叩き潰さねばならんようじゃな・・!」
 信長が憎悪を募らせて、1つの仮面を取り出した。
「事前に三蔵がくれたもんじゃ。これを着ければ、わしの力が格段に増すと言っておった・・」
「三蔵に!?・・待て、信長!何が起こるか分からないぞ!」
 仮面のことを語る信長を、光秀が呼び止める。
「くだらんことを・・そんなことより、自分の身を心配するんじゃな!」
 信長が言い放ち、仮面「ダークマスク」を顔に付けた。ダークマスクから黒いオーラがあふれ出し、信長の全身を包み込んだ。
「力が・・力がみなぎるぞ!」
 ダークマスクによって力を高めて、信長が酔いしれ興奮する。彼は力を込めると、全身のオーラが放出される。
「ものすごい力だ・・先ほどまでの信長が大したことないほどに・・・!」
 信長の高まる力を感じ取り、光秀が緊張を膨らませる。ひと息ついた信長が、光秀に視線を戻す。
「わしのこの力、存分に味わってからあの世に逝くがいい!」
 信長が言い放ち、光秀に飛びかかった。彼が振り下ろしたへし切長谷部を、光秀がとっさに横に動いてかわした。
 へし切長谷部が当たった地面が深く長く切り裂かれた。
「な・・何という威力だ・・直撃されれば、最悪真っ二つだ・・・!」
 光秀が信長の戦闘力に緊迫を募らせる。
 信長がへし切長谷部を振りかざして、黒い気の刃を飛ばした。光秀は身を屈めて、気の刃をかわす。
「いつまでも逃げられると思うな、若造が!」
 信長が言い放ち、光秀に向かって走り出す。
「天牙龍神刃!」
 光秀も天牙麒麟刀を振って気の刃を飛ばす。しかし信長の気の刃に破られる。
「ぐっ!」
 気の刃が地面を削り、光秀が衝撃を受けて吹き飛ばされる。
「貴様をわしの刀の錆にしてくれる!」
 信長が笑い声をあげて、へし切長谷部を構えた。
(今の信長は、かつての信長を大きく凌駕している・・だが、今のヤツはその力に囚われている・・そこが、私がヤツを討つ千載一遇の好機・・・!)
 ダークマスクを着けている信長にも隙があると、光秀は確信していた。彼は天牙麒麟刀に気を集中させ、次の一撃に賭ける。
「あの世に逝け、光秀!わしの前から消えろ!」
 信長が光秀に向けて、黒いオーラを刀身に宿したへし切長谷部を振り下ろした。
(今だ!)
 光秀が動き、へし切長谷部を紙一重でかわした。へし切長谷部が地面に当たった衝撃に押されるが、光秀は耐えた。
「龍牙閃!」
 光秀が天牙麒麟刀を信長の体に突き立てた。体を貫かれて、信長が目を見開いた。
「このわしが・・このような若造に討たれただと・・・!?」
 信長が愕然となり、へし切長谷部をゆっくりを上げる。しかし光秀を切ることなく、彼はへし切長谷部を手から落とした。
「信長殿・・あなたは、部下や民を思う主君であってほしかったです・・・!」
 光秀が怒りを押し殺し、信長への敬意を示した。
「おのれ・・・おのれ、光秀・・・!」
 天牙麒麟刀を引き抜かれて倒れる信長が、光秀への呪詛を呟いた。彼の顔から外れたダークマスクが、地面に落ちて割れた。
「これで全てが終わりとなりました・・あなたの天下も、あなたに仕えた私の時間も・・・」
 光秀が天牙麒麟刀を下げて、ひと息つく。彼は信長との戦いと復讐、その果ての虚しさを感じていた。
「傍若無人から元に戻れないのならば、私があなたを止める・・これが私の責務であり、罪なのです・・・」
 信長に仕え過ごした時間を思い返して、光秀は彼を手に掛けた罪を背負う覚悟を胸に秘めた。
「司馬懿と悟空は戦いを終わらせただろうか・・合流しなければ・・・!」
 光秀が気を抑えて落ち着きを取り戻し、司馬懿たちと合流しようとした。
 そのとき、光秀が突然背中に強い衝撃を覚えた。目を見開いた彼が前のめりに倒れていく。
「あっ!光秀!」
 司馬懿と共に戻ってきた悟空が、光秀に向かって叫ぶ。
「おい、しっかしろ、光秀!何があった!?」
 司馬懿が光秀を支えて呼びかける。光秀は意識はあったが、痛みで動けなくなっている。
「まさか、信長も三蔵たちも破れるとはな・・」
 1人の男が光秀たちの前に立ちはだかった。
「お前は誰だ!?三蔵たちの仲間か!?」
 司馬懿が男に向かって問いかける。
「我が名は混世(こんせい)ジ・O(オー)。貴様たちはオレ様が始末してくれる。」
 男、混世が彼らに向かって声を掛けてきた。
「ヤツらを上回る敵が現れるとはな。もう少しでオレ様の天下につなげられるはずだったが・・」
「まさか、お師匠様と諸葛亮、信長を騙したのは、おめぇなのか!?」
 混世の呟きを聞いて、悟空が怒りを覚える。
「その通りだ。オレ様は神に成りすまし利用してやれば、簡単に騙された。あの三蔵も、偽者でも神の前ではすっかり信じ込んでしまうとはな。」
「ふざけんな!よくもお師匠様を騙してくれたな!」
 笑みをこぼす混世に、悟空が怒りを爆発させる。彼は如意棒を手にして飛びかかる。
 だが振り下ろされた如意棒は、混世に左手で軽々とつかまれた。
「なっ・・!?」
「オレ様に逆らうとは、身の程知らずの小僧だ・・」
 驚愕する悟空に、混世がため息をつく。
「お、おわっ!」
 混世に如意棒を振り回されて、悟空が投げ飛ばされた。
「悟空!」
 倒れた悟空に司馬懿が叫ぶ。光秀をゆっくり横たわらせて、司馬懿が混世と対峙する。
「お前が全ての元凶だったのか・・三蔵を騙し、諸葛亮を引き抜き、信長をその気にさせた・・・!」
「世界を正しく導くとその気になって、三蔵も愚かなことだ・・それがオレ様の支配になっているとも考えずに・・」
 司馬懿からの指摘を聞いて、混世が三蔵をあざ笑う。
「結局は騙されて悪に手を染める・・三蔵も諸葛亮も、所詮はその程度だったということか・・」
「お師匠様と諸葛亮を・・悪く言うな・・・!」
 あざ笑う混世に言い返して、悟空がゆっくりと立ち上がる。
「2人を騙して、みんなが苦しんでるのを遠くから眺めて・・おめぇだけは、ゼッテーに許さねぇ!」
 混世に怒号を放ち、悟空が如意棒を構える。
「自分の欲や支配のために他のヤツを利用し、自分は安全なところで高みの見物をする・・お前のようなヤツは、オレも許しはしない!」
 司馬懿も怒りを言い放つ、淵獄魔掌を構える。
「フン。オレ様が偉そうなだけの愚か者だと思わんことだな・・!」
 混世が不敵な笑みを浮かべて、全身から黒いオーラを発した。
「三蔵が出した黒い力・・貴様が三蔵に力も与えたのか!?」
 司馬懿が三蔵のことを思い出し、混世を問い詰める。
「その通り。信長が使ったダークマスクも、元々はオレ様のものだ。野心、憎悪、欲望、あらゆる負の感情を力と共に増幅させる代物だ。」
 混世が笑い声をあげて答える。
「三蔵、信長、諸葛亮。この3人がいれば世界征服も夢じゃない。そう思っていたのだがな・・」
「お前は、3人を自分の目的のために、そこまで利用したのか!?」
「利用だけではない。最後には捨て駒にするつもりだった・・フハハハハ!」
「お前だけは許さん・・混世ジ・O、お前はここで確実に討つ!」
 あざ笑う混世に、司馬懿が怒号を放つ。
「オイラもおめぇに、お師匠様の思いを叩き込む!」
 悟空も言い放ち、赤と青、白のオーラを放出して闘戦勝仏となった。
「お前たちも強化してきたが、オレ様には遠く及ばんな。」
 混世が呟いて、握りしめた両手に黒いオーラを集中させた。
「行くぞ、悟空!」
「分かった、司馬懿・・・!」
 司馬懿と悟空が声を掛け合い、同時に混世に向かって飛びかかる。2人がそれぞれ淵獄魔掌と左拳を繰り出した。
 混世が掲げた両手から光の壁を出して、司馬懿たちの攻撃を受け止めた。
「ぐっ!」
 司馬懿が悟空と共に押し込もうとするが、混世の出す光の壁を破ることができない。
「今ので天地の差が証明されたな・・」
 混世が不敵な笑みを見せて、光の壁を破裂させた。司馬懿と悟空が爆発を受けて吹き飛ばされる。
「オレたちの力を合わせても、ヤツの方が上なのか・・!?」
「混世ジ・O・・とんでもないヤツが親玉だったとは・・・!」
 悟空と司馬懿が混世の力を痛感して毒づく。
「だが、諦めるのは早いぞ・・・!」
 信長が立ち上がり、2人に檄を飛ばす。
「光秀、動けるのか・・・!?」
「泣き言を言っている場合ではない・・ヤツを倒さなければ、ショクも世界もヤツの思い通りにされてしまう・・・!」
 司馬懿が声を掛けて、光秀が声を振り絞る。彼は痛みに耐えて、天牙麒麟刀を構える。
「3人束になろうとムダだ。まとめて地獄に叩き落としてくれる。」
 混世は強気な態度を変えず、両手に集めたオーラを光の球にして飛ばす。光秀たちが回避して、地面に次々に爆発が起こる。
「オレ様自ら出てきているのだ。せめてオレ様を楽しませるぐらいはしろ!」
 混世があざ笑い、さらに光の球を飛ばす。
「ぐあっ!」
「うあっ!」
 司馬懿、光秀、悟空が球をぶつけられて吹き飛ばされる。
「ちくしょう・・煉獄烈光掌!」
 司馬懿が淵獄魔掌を前に出して、閃光を放つ。光の球は閃光を受けて爆発するが、混世が発したオーラに打ち破られた。
「何だと!?」
 全力を破られたことに、司馬懿が驚愕する。
「悟空、全力で撃ち込むぞ!」
「分かった!」
 光秀が呼びかけて、悟空が頷いた。光秀が天牙麒麟刀に、悟空が右手に気を集める。
「天牙龍神刃!」
「はっ!」
 光秀が振り下ろした天牙麒麟刀から気の刃が放たれ、悟空が繰り出した拳から気の球が飛んだ。
「ムダだ!」
 混世が両腕を交差させて振りかざして、オーラを飛ばして2人の攻撃を吹き飛ばした。
「今の我々の力が、ことごとく破られるとは・・・!」
 光秀が混世との力の差を痛感し、愕然となる。
「それで終わりか?ならばオレ様の力の大きさを、冥土の土産として思い知れ!」
 混世が言い放ち、巨大な剣「炎魔覇王剣(えんまはおうけん)」を手にして振り上げた。
「煉獄火炎斬(れんごくかえんざん)!」
 彼が炎魔覇王剣を振り下ろし、黒い炎の一閃を放った。
「ぐあぁっ!」
 光秀たちが一閃を受けて吹き飛ばされた。彼らは地面に叩きつけられて力尽きた。
「終わったな・・今度こそオレ様の天下の時が来る!」
 混世が炎魔覇王剣を下げて勝ち誇る。持てる力を注ぎ込んでも、光秀たちは混世に太刀打ちできなかった。
 
 
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