SDガンダムワールド
真・戦国英雄伝
第7章

 

 

 光秀、司馬懿、悟空は全力を出して挑んだ。しかし混世の強大な力の前に返り討ちにされてしまった。
「やべぇ・・全然力が入らねぇ・・力を出せても、アイツが強すぎる・・・!」
「ナイトガンダムたちに鍛えてもらったのに、それでもあの男に敵わないとは・・・!」
 悟空と光秀が混世の力を痛感して絶望する。
「いや、可能性が1つだけある・・」
 そんな中、司馬懿が2人に提案をしてきた。
「何か作戦があるのか、司馬懿・・!?」
「あぁ・・オレたちのメモリを集めて、力を合わせるんだ・・!」
 光秀が聞くと、司馬懿が説明をする。
 本来の所持者の能力や記憶が宿っている「メモリ」。デバイスとなるものにセットすると、その能力を発揮することができるのである。
「確かにメモリを集めて使えば、力が飛躍的に上がるが・・・!」
「オ、オイラも八戒たちもメモリってヤツ、持ってないぞ・・・!」
 光秀が話に納得するが、悟空は困惑する。司馬懿と光秀はメモリを持っているが、悟空は八戒、沙悟浄を含めても持っていない。
“いや、持ってないけど、力を合わせれば生み出せるはずや。”
 そのとき、悟空の心に沙悟浄の声が響いてきた。
“オイラたちの力を合わせりゃ、どんなこともできるはずや!”
(八戒・・沙悟浄・・・)
 八戒も声を掛けてきて、悟空が戸惑いを覚える。
「オイラたち3人の力を合わせて、オイラたちのメモリを出してみる・・やってみせる・・!」
 悟空が仰向けになったまま、意識を集中する。彼の体から赤と青、白の光があふれ出した。
 3色の光が合わさり、虹色のメモリに変わった。
「これが、悟空のメモリか・・・!」
「いや、悟空、猪八戒、沙悟浄の3人の魂が宿ったメモリだ・・・!」
 司馬懿と光秀が虹色のメモリを見て呟く。
「何とか出せたけど、もうオイラは全然動けねぇ・・オイラたちの力、任せる・・・」
 悟空が力を使い果たして動かなくなった。
「悟空、八戒、沙悟浄・・お前たちの魂、決してムダにしない・・・!」
 光秀が悟空たちに深い感謝をした。
「光秀、お前にオレと悟空たちの力を託す・・お前ならその全ての力を引き出せる・・・!」
 司馬懿が左腕にあった自分のメモリを取り出して、光秀に差し出す。
「しかし司馬懿、君の方が戦闘経験が多く力が強い・・君にメモリを集めたほうが・・・」
「いや・・混世の攻撃で、オレは腕を痛めてしまった・・今、より万全に近いのは光秀、お前だ・・・!」
 当惑する光秀に司馬懿が説明する。彼は痛めた左腕を右手で押さえて、痛みに耐えていた。
「オレの全てを、お前に託すぞ、光秀・・・!」
「司馬懿・・・すまない・・悟空たちの力と君の力、私が受け取る・・・!」
 司馬懿の言葉を聞き入れて、光秀が3つのメモリを天牙麒麟刀の柄にセットした。天牙麒麟刀からまばゆい光があふれ出す。
「悟空はオレが守る・・光秀、お前は混世を倒すことに全力を注げ・・!」
「分かった・・任せてくれ・・・!」
 司馬懿が悟空を連れて離れて、光秀が混世を見据えて天牙麒麟刀を構える。
「まだ悪あがきをするつもりか?よほど苦しんで死にたいようだな。」
 混世があざ笑い、全身から黒いオーラを放出する。
「私は司馬懿と悟空、八戒と沙悟浄の意志を受け継いだ・・だから決して負けるわけにはいかないのだ!」
 光秀が言い放ち、天牙麒麟刀から出ている光を身にまとった。
「お前たちに勝ち目はない。くたばるがいい!」
 混世が拳を繰り出して、オーラを凝縮させた光の球を放った。光秀が残像を伴った高速で、球をかわした。
 混世が光秀に詰め寄り手を伸ばす。光秀はこれもかわし、天牙麒麟刀を振りかざす。
 混世が横に動いて天牙麒麟刀をかわした。天牙麒麟刀が当たった地面に付けられた亀裂が、大きく伸びていく。
「力が上がっているようだが、まだオレ様の方が上だ・・!」
 混世が自信を浮かべて、黒いオーラを炎魔覇王剣に集中させていく。
「そのなまくら刀を叩き折ってくれる!」
「折れはしないぞ・・今の天牙麒麟刀も、私たちの魂も・・!」
 混世と光秀が言い放ち、同時に炎魔覇王剣と天牙麒麟刀を振りかざす。2つの刃がぶつかり合い、強い衝撃をもたらす。
 光秀と混世はさらに攻撃を繰り出す。立て続けに起こる衝撃が地面を削る。
「煉獄龍神斬(れんごくりゅうじんざん)!」
 光秀が刀身に宿る気を強めた天牙麒麟刀を振り下ろし、炎魔覇王剣に叩きつける。
「うっ!」
 炎魔覇王剣を通じて衝撃を痛感し、混世がうめく。彼は痺れに耐えて、全身から黒いオーラを放出した。
「これで力負けすることはもうないぞ・・!」
「我々の力はこの程度ではない・・お前に負けはしない!負けるわけにはいかないのだ!」
 不敵な笑みをこぼす混世に、光秀が言い返す。
 光秀と混世が再び天牙麒麟刀と炎魔覇王剣の打ち合いを繰り広げる。2つの刃は折れることなく、負けず劣らずの戦いを続けていた。
「すごい戦いだ・・この戦いに、何もできないことが悔しい・・・」
 光秀たちの戦いを見届けて、司馬懿が呟く。戦いの飛び火を避けようと、彼は悟空を連れて離れる。
「おのれ・・往生際の悪いヤツめ・・・!」
 光秀と拮抗していることに、混世がいら立ちを覚える。
「今度こそ・・今度こそ貴様を真っ二つにしてくれる!」
 混世はオーラを集中させた炎魔覇王剣を振り上げた。
「闇潰冥葬!」
 光秀が天牙麒麟刀から赤い光を放つ。光を浴びた混世が動きを止められる。
「金縛りか!小賢しいマネを!」
「あれはオレの力か・・!」
 混世がうめき、司馬懿が呟く。
「これでオレ様を止められると思っているのか!」
 混世が力を込めて、光を破って自由を取り戻す。
「煉獄龍神斬!」
「魔獄一閃(まごくいっせん)!」
 光秀と混世が気を込めた一閃を繰り出してぶつけ合う。強い反動を受けて、2人が後ろに飛ばされる。
「煉獄龍神刃!」
 光秀が天牙麒麟刀を振って、気の刃を放った。混世がかわして、光秀に近づいていく。
「終わりだ、若造!」
 混世が光秀を狙い、炎魔覇王剣を振り上げた。
「飛猿閃蹴!」
 その瞬間、光秀の左足から青いオーラがあふれ出した。彼はオーラの刃の出た左足の蹴りを、混世の体に当てた。
 さらに速度の上がった光秀の蹴りを受けて、混世が体勢を崩した。
(ヤツの速さが急激に上がっただと!?)
 混世がこの瞬間に驚愕する。速度が増した光秀の攻撃は、彼の不意を突いていた。
(今のは沙悟浄の技・・メモリの力と情報が、しっかりと光秀に伝わっている・・・!)
 司馬懿が光秀に宿る力について呟く。
「小賢しいマネを・・オレ様をなめるな!」
 混世がいら立ちを募らせて、炎魔覇王剣を振り下ろした。光秀が素早くかわし、混世の側頭部に左足の回し蹴りを当てた。
 攻撃を受けてふらつく混世だが、すぐに踏みとどまる。
「速くなっても、オレ様に勝てると思うな!」
 混世が光秀に向けて手を伸ばす。光秀がさらに左足を振り上げる。
 だが光秀の蹴りは、混世の掲げた炎魔覇王剣に止められた。
「止めてしまえば速さも意味を成さん・・!」
 混世が天牙麒麟刀の刀身をつかみ、光秀を引き寄せた。
「もらった!」
 混世が炎魔覇王剣を光秀目がけて振り下ろした。
 そのとき、光秀の右腕を取り巻いていた赤いオーラが、巨大な腕の形となって炎魔覇王剣を受け止めた。
「何っ!?」
 攻撃を止められたことに、混世が目を疑う。
「はっ!」
 光秀が右腕を振りかざして、炎魔覇王剣を押し返した。
(今度は八戒の力・・光秀はオレたちの力を使いこなしている・・!)
 司馬懿が光秀の戦いに心を動かされていく。
「今度は力が増しただと!?・・ヤツが使っているメモリは、能力を一時的に増大させる効果があるのか・・・!?」
 今の光秀の能力に、混世は脅威を感じるようになっていた。
「だが総合的な力は、オレ様の方が上だ!」
「たとえそうでも、我々はお前に負けるわけにはいかないのだ!」
 憎悪をむき出しにする混世に、光秀が言い返す。
 光秀が残像を伴った高速で混世に詰め寄る。2人が天牙麒麟刀と炎魔覇王剣を振りかざしぶつけ合う。
「ぐぅっ!」
 光秀に押されて、混世が大きく突き飛ばされた。
「このオレ様が、徐々に劣勢になっているだと!?・・あり得ん・・オレ様は力を蓄え、世界を支配するに十分なまでに強くなった!このオレ様が、他のザコに負けるはずがない!」
 混世が苛立ちを膨らませて、オーラを放出する。
「叩き切るだけでは済まさん!塵も残さずに消し飛ばしてくれる!」
「消えるのは貴様の方だ!世界を、貴様の思い通りにはさせん!」
 叫ぶ混世に言い放つ光秀。光秀の構える天牙麒麟刀の刀身に、虹色の光が宿り強めていく。
「ヤツめ・・力も速さもさらに増加している・・・!」
 光秀の強さを感じ取り、混世が毒づく。光秀は司馬懿、悟空、八戒、沙悟浄の力を集束させていた。
「私は1人ではない・・私に全てを託してくれた者が、私と共にいる!」
 司馬懿たち、ナイトガンダムたちの思いを背に受けて、光秀が言い放つ。
「それがどうした!貴様らが束になろうと何をしようと、オレ様に動かされるしかない!三蔵や諸葛亮、信長のようにな!」
 混世が言い返し、三蔵たちをあざ笑う。
「惑い力に溺れ魔道を進んだ三蔵たちにも非はある・・だが彼らさえも利用し弄んだ貴様は、決して許されない!」
 混世への怒りを強めて、光秀が飛びかかる。
「天地人閃光斬(てんちじんせんこうざん)!」
 光秀が天牙麒麟刀を振りかざし、虹色の気の刃を飛ばした。
「天上覇王撃(てんじょうはおうげき)!」
 混世が稲妻を帯びた黒いオーラを宿した炎魔覇王剣を振り下ろした。虹色の気の刃が炎魔覇王剣の刀身を折り、混世の体に食い込んだ。
「うぐっ!ぐあぁっ!」
 体の傷から虹色の光が広がり、混世が絶叫を上げる。
「オレ様は世界を支配する・・全てはオレ様のものだぁ!」
 野心を抱えたまま光に包まれて、混世が消滅した。
「やったか、光秀・・・!」
 司馬懿が笑みをこぼし、光秀が肩の力を抜いた。
「し、司馬懿・・光秀・・・」
 そのとき、悟空が意識を取り戻し、体を起こした。
「悟空、気が付いたか・・今、戦いが終わったところだ・・・」
 司馬懿が声を掛けて、悟空が光秀を見つめる。光秀が天牙麒麟刀から司馬懿と悟空たちのメモリを外した。
「ありがとう、司馬懿、悟空。私に力を貸してくれて・・猪八戒と沙悟浄にも伝えておいてくれ・・・」
 光秀が司馬懿たちの前に戻ってきて、メモリを彼らに返した。
「礼を言うのはオレのほうだ、光秀。お前がいなかったら、オレたちは全滅していただろう・・」
「八戒も沙悟浄に、光秀に感謝してるぞ・・・」
 司馬懿も悟空も光秀に礼を言って、メモリを受け取った。
「しかし、私が未熟でなければ、邪道に足を踏み入れるのを止められたのに・・・」
 光秀が自分の無力さを痛感すると、司馬懿も表情を曇らせる。
「悟空、すまない・・三蔵を、お前たちの師匠を救えなかった・・・」
「そ、そんな・・・!?」
 謝る司馬懿に悟空が愕然となる。
「オレが許せないと思うはずだ・・それでもオレは、謝ることしかできない・・・」
「気にしなくていいよ、司馬懿・・・司馬懿も、助けようとしてくれたんだろ・・・?」
 自分を責める司馬懿だが、悟空に気を遣われて戸惑いを覚える。
「だったら受け入れるしかねぇ・・オレたちは司馬懿を許す・・ホントのお師匠様なら、きっとそうしてる・・・」
「そうか・・・ありがとう・・・」
 三蔵の意思を汲み取る悟空に、司馬懿が礼を言った。
「近くの町に行こう。病院へ行って、諸葛亮の手当てをしないと・・」
 司馬懿が呼びかけて、諸葛亮を抱える。
「司馬懿、腕は大丈夫なのか・・?」
「あぁ。バイクを運転する分には問題ない・・」
 光秀が心配して、司馬懿が答えてトリニティバイクに乗った。
「悟空、お前が乗っている雲は、お前以外は乗れないか?」
「乗れないことはない・・オレが抱えて連れていけばいいけど・・今はちょっときつい・・・」
 光秀が問いかけると、悟空が困った顔を浮かべる。
「そうか。ならば私が背負って、バイクを走らせる。急げば次の町へ連れていける。」
 光秀が諸葛亮を背負って、トリニティバイクに乗った。
「光秀、気を付けるんだぞ。お前も力を使い果たしているのだから・・・」
 司馬懿が注意して、光秀が頷く。光秀は諸葛亮をしっかりと背負って、トリニティバイクを走らせた。
「悟空、諸葛亮が落ちないように注意するんだ。」
「あぁ・・」
 司馬懿が呼びかけて、悟空が頷く。2人も光秀たちに続いて、町に向かった。

 ノルムの近くにある町「キョウ」に来た光秀たち。彼らに病院に連れてこられた諸葛亮は、そこの医者から手当てを受けることになった。
“そうか・・諸葛亮は助かったが、三蔵さんは・・・”
 司馬懿から話を聞いて、劉備が悲しみを覚える。司馬懿は劉備と連絡を取っていて、モニターに映っている劉備の表情を司馬懿は見ていた。
「オレたちは強くなった・・しかし諸葛亮を止めるしかできなかった・・・」
“あまり気に病むな、司馬懿・・オレなんか、この戦いに加わることもできなかったのだから・・・”
「ありがとう、劉備・・オレたちも休んだら、諸葛亮を連れてショクに戻る。」
“分かった。オレももうすぐ退院できそうだ・・じゃ、また。”
 司馬懿が礼を言って、劉備との連絡を終えた。
「諸葛亮の治療が終わった。命に別状はない。」
 光秀が戻ってきて、司馬懿に報告してきた。
「そうか・・よかった・・・」
 振り向いた司馬懿が安心を覚える。
「悟空は疲れて眠ってしまった・・私たちで泊まる場所を見つけて、悟空を連れていこう。」
 光秀が悟空のことも話して、司馬懿が頷いた。
「悟空もオレたちも死力を尽くした・・それでも己の未熟さを痛感することになった・・・」
「この先も、私たちは精進しなければならないようだ・・守るべきものを守れるように・・・」
 自分たちの無力さを思い知り、光秀と司馬懿が表情を曇らせる。
「司馬懿、私は体を休めたら、旅に出ようと思う。己をさらに高めるため、そして世界をもっとよく知るために・・」
 光秀がこれからのことを司馬懿に話す。
「オレも鍛錬のために世界を巡ろうと思っていたところだ・・」
「司馬懿も・・?」
「あぁ・・きっと悟空もそう思うはずだ。三蔵の本当の遺志を継ぎ、八戒、沙悟浄と共に・・」
「みんな揃ってか・・だとしたら、また私たちは共に旅をすることになるかもしれない・・・」
 司馬懿も同じ決意を抱いていて、光秀が笑みをこぼした。
「オレたちの旅も戦いも、まだまだこれからのようだ・・」
「オレたちは力を合わせるだけでなく、競い合うこともできる。これも精進する形の1つだ。」
 光秀と司馬懿が気を引き締めて、握った手を軽く当てて意思を分かち合う。
「今度は劉備もついていきそうだな。諸葛亮も連れて・・」
「今回よりも心強い旅になりそうだ・・」
 司馬懿が劉備たちのことを言って、光秀が笑みをこぼした。
「私は信長と敵対し、そして打ち倒した・・もはや私に、信長の軍に戻ることはできない・・兵に追われる可能性もある・・・」
 自分の身に危険が及ぶことを、光秀は司馬懿に伝える。
「向こうからオレたちに戦いを挑んでくるということか・・望むところだ・・」
「もちろん、もう無闇に血を流すつもりはない・・倒すことになっても、最小限に留めなければ・・」
 兵士や侍を迎え撃つことをよしと思う司馬懿と、自分自身を律する光秀。
「あぁ・・オレたちだけじゃなく、世界中の強者が正しく精進するように・・」
「あぁ。1人1人が、体も心も強くなるように・・・!」
 司馬懿と光秀が声を掛け合い、軽く握った手を互いに当てて、新たに誓いを立てた。彼らの新しい旅が始まろうとしていた。

 光秀、司馬懿、悟空も町の宿泊所で療養をしていた。混世たちとの戦いから3日が経ったときだった。
「話に聞いていた以上に激しい戦いだったようだな。」
 その宿泊所を訪れたのは、治療を終えてキョウに来た劉備だった。
「り、劉備!?」
「退院したとは聞いていたが、こんな短期間でここに来るとは・・・!」
 司馬懿と光秀が劉備の道場に驚く。
「連絡しなかったのは悪かったよ・・でも体を動かす意味でも、みんなのところに行こうと思ってた・・」
 劉備が説明をして、光秀たちに照れ笑いを見せた。
「劉備・・元気になって、よかった・・・」
 悟空が劉備が回復したことを喜ぶ。
「あぁ。心配かけて悪かったよ、悟空・・」
 劉備が答えて、悟空の肩に優しく手を乗せた。
「劉備・・・」
 諸葛亮が劉備の前に現れて、悲しい顔を浮かべていた。
「体はもういいのか、諸葛亮・・?」
 劉備が聞くと、諸葛亮が小さく頷いた。
「劉備・・・僕は・・・」
「お前が戻ってきてくれてよかった・・・またオレたちと一緒に、みんなのために戦ってくれるか・・・?」
 困惑する諸葛亮に、劉備が真剣な面持ちで問いかけた。
「いいのか?・・僕は、君やみんなにここまでひどいことをしたのに・・・」
「罪の意識を感じているなら、その償いのためにも力を貸してくれ・・・!」
 自分を責める諸葛亮に、劉備が激励を送る。
「劉備・・・申し訳ない・・そして、ありがとう・・・!」
 諸葛亮が感謝して、劉備が差し伸べた手を取って握手を交わした。
「必要なものは持ってきている。みんなの武器も手入れしておかないとな。」
 劉備が話をして、宿泊所の外に目を向ける。彼は必要となる道具や武具を手入れするもの、食料を持ってきていた。
「用意周到だな、劉備。だが大荷物で旅をするわけにいかないな・・」
「そうか・・ちょっと張り切りすぎたか・・」
 司馬懿が言葉を返すと、劉備が苦笑いを浮かべた。
「だが食料の方は、ほとんど悟空の腹の中に納まりそうだ。」
 司馬懿が言いかけて悟空に視線を向ける。すると悟空の腹の虫が鳴り出した。
「早速食事の時間になりそうだな。」
 司馬懿が悟空に対して言って、光秀たちが笑みをこぼした。
「劉備もここまで大変だっただろ。食事と休息をとりながら、次の目的地を決めよう。」
「あぁ。そうしよう。」
 司馬懿が気を遣い、劉備が頷いた。2人と光秀たちは宿泊所のそばの食堂に向かった。

 司馬懿の言った通り、劉備の持ってきた食料のほとんどは、悟空によって食べられることになった。
「おなかもいっぱい!すっかり元気になった!」
 悟空がおなかを軽く叩いて満足する。
「張り切っているところ悪いが、出発は明日だ。それまでにある程度、目的地を決めておかなければ・・」
 司馬懿が悟空に言って、光秀が腕組みをして行き先を考える。
「今回が北だったから、今度は南がいいんじゃねぇか?」
 悟空が方向を考えて、光秀たちに言う。
「南か・・気分転換をする意味でもいいかもしれないな・・」
「よし!次の旅はまずは南へ向かう!その道中で本格的に目的を定めていけばいい!」
 光秀がその提案に賛成して、司馬懿が声を掛けて意気込みを見せる。
「この前以上に、長く果てしないと思う旅になりそうだ。」
「しかし今度はオレもいる。諸葛亮も戻ってきた。強さも結束も増している。」
 光秀が呟くと、劉備が彼の肩に手を乗せて励ます。
「うん・・そうだね、劉備・・・」
 諸葛亮が劉備を見つめて、微笑んで頷いた。
「特にオレも、みんなに置いていかれないように強くならないとな。」
 劉備は一気に力を付けた光秀たちのことを気にしていた。
「劉備、お前だって強いし、まだまだ強くなれる。」
「そうだぞ!オイラたちと一緒に強くなろうぜ!」
 司馬懿と悟空が劉備を励ます。自信を持つ劉備が大きく頷いた。

 次の日の朝となり、万全を期した光秀たちは旅立ちの時を迎えた。
「よし!準備万端だ!オレたち5人の旅の始まりだ!」
 劉備が意気込みを見せて、光秀たちが頷いた。
「我々はそれぞれの精進のため、それぞれの答えを見出すため、そしてそれらを強さにして世界のために生きていく・・」
「この先に何があるのかは分からない。それを確かめるためにも、オレたちは戦い続ける。」
 光秀と司馬懿が決意を口にして、悟空たちが同意する。
「オレたちは5人だけじゃない!今も八戒も沙悟浄も一緒だ!」
 悟空が言いかけて、自分の胸に手を当てた。中にいる八戒と沙悟浄も微笑んでいることを、彼は実感していた。
「あぁ。オレたちは7人だ、みんな。」
 光秀が司馬懿たちと向き合い、笑みを見せた。旅と戦いを通じて、彼らの結束は強くなっていた。
「さぁ、そろそろ出発しよう。」
「トリニティバイクの調整もバッチシだ!」
 光秀が檄を飛ばして、劉備が自分のトリニティバイクの座席に手を乗せて満足げに頷く。
「筋斗雲、来い!」
 悟空に呼ばれて、筋斗雲が彼の前に来た。
「みんな、行くよ!南に向かって!」
 劉備が指さして、光秀たちと共に走り出した。悟空も筋斗雲に乗って、彼らについていった。
(さらばです、信長様・・私はこれからは私たちの生き方をします・・新たな仲間と共に・・・)
 かつて自分が従っていた信長に別れを告げて、光秀が未来を見据える。
「光秀、何をやっているんだ?」
「早くしないと置いてっちゃうぞー!」
 司馬懿と悟空に声を掛けられて、光秀が前に視線を戻した。
「あぁ。今行く。」
 光秀が微笑んで答えて、司馬懿たちに追いついた。強さに磨きをかけるため、新たな答えをつかむため、彼らの新しい旅が始まった。


信念、正義、結束。
様々な思惑を胸に秘めて、戦士たちの戦いと旅は続いていく。
真の強さを魂に秘めて。
 
 
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