SDガンダムワールド
真・戦国英雄伝
第2章

 

 

 光秀は司馬懿、悟空と共に伝説の武将がいると噂されているノーザンワールドを目指して、旅を続けていた。
「光秀・・ノーザンワールドってとこにはまだ着かないのか~!?」
 悟空がため息をついて、光秀に不満をあらわにしてきた。
「あの山を越えた先に、ノーザンワールドに入る。それまでの辛抱だ。」
 光秀がひと息ついてから、山を指さして答える。
「トリニティバイクが通れる道があるが・・・」
「オイラ、腹減ってきたぞ・・何か食べないと力でないぞ~・・」
 光秀が話を続けるが、悟空はおなかに手を当てて空腹を訴える。
「この近くに小さな村がある。そこで休憩しながら軽く食事をとろう。」
「や、やった~・・メシが食える~・・!」
 司馬懿が村の方に目を向けて、悟空が弱々しく喜ぶ。
「少しの辛抱だ。小さな村でも茶屋ぐらいはあるだろう・・」
 司馬懿が呟いて、光秀、悟空と共に村に向かった。

 ノーザンワールドの前を隔たる山「ノーザンマウンテン」のそばにある村「ノルム」に立ち寄った光秀たち。ノルムは過疎であったが、畑が多く作物は多かった。
 ノーザンマウンテンに向かう前の旅人を、ノルムの住人はあたたかく迎えていた。
「ふぅ~・・食った、食った~♪」
 悟空が上機嫌になっておなかをさする。彼はたくさんご飯を食べていた。
「食べ過ぎて動けなくなっては・・・」
「悟空なら少し食休みすれば、すぐに動ける。」
 光秀が不安を覚えるが、司馬懿は落ち着いて答える。
「ここ、ノルムからすぐの入り口から山道を進み、ノーザンワールドに向かう。坂が多いが、危険な道ではない。」
「トリニティバイクで乗り越えられるな。」
 光秀が地図でノーザンマウンテンのルートを確かめて、司馬懿が頷く。
「さて、オレたちも食事を済ませるぞ。」
「あぁ。」
 司馬懿が声を掛けて、光秀が頷く。2人も食事を済ませて、体を休めた。

 ノルムを後にした光秀たちは、ノーザンマウンテンに向かって移動を始めた。
「ここから入っていく。山の中は1本道だ。」
 光秀がノーザンマウンテンの入り口を指さして、司馬懿が頷いた。
「待て。ここに近づいてくる強い力を感じる・・」
「何っ・・?」
 司馬懿が足を止めて、光秀が眉をひそめる。
「この気配・・・まさか、ヤツが・・!?」
 司馬懿が緊張を覚えて振り返る。彼らの前に2つの人影が現れた。
「私たちに気付くとは・・力を抑えていたはずですが・・・」
 投げかけられた声を聞いて、司馬懿と悟空が目を見開いた。三蔵が諸葛亮と共に、彼らの前に出てきた。
「お・・お師匠様・・諸葛亮・・・!」
「お久しぶりですね、悟空。あれから精進は続けていますか?」
 動揺を見せる悟空に、三蔵が悠然とした態度で問いかける。
「まさかここで会うことになるとはな、三蔵・・・!」
 司馬懿が三蔵に鋭い視線を向けて、両手を握りしめる。
「司馬懿さん、あなたとは強い因縁を感じています。切っても切り離せないほどに・・」
「三蔵、お前はオレたちの仲間を手に掛けただけでなく、諸葛亮までそそのかすとは・・!」
 視線を向けてきた三蔵に、司馬懿が憤りを見せる。
「別にそそのかされたわけではない。私は私の意思で三蔵殿についてきた・・」
 諸葛亮が司馬懿の前に出て言い返してきた。
「三蔵殿は私に力を与えてくれた。おかげで私は今まで以上に強くなれた・・」
「そのために、ショクを裏切ったというのか!?・・劉備まで裏切ったのか!?」
 強くなった自分を喜ぶ諸葛亮に、司馬懿が怒号を放つ。
「お前たちをショクに連れ帰る・・たとえ力ずくでも・・・!」
「できますかな、あなたたちに・・?」
 敵意を向ける司馬懿に対し、三蔵が悠然と振る舞う。
「行くぞ!」
 司馬懿が三蔵に向かっていって、拳を繰り出す。そこへ諸葛亮が飛び込み、扇「宙天羅扇(ちゅうてんらせん)」で拳を受け止めた。
「諸葛亮!」
「あなたの相手は私が務めさせていただきますよ、司馬懿・・!」
 声を荒げる司馬懿に告げて、諸葛亮が宙天羅扇に力を込める。
「うおっ!」
 司馬懿が押し返されて、地面に叩きつけられる。
「司馬懿!・・やめろ、諸葛亮!」
 悟空が叫んで、諸葛亮を止めに向かう。だが三蔵が彼の前に移動してきた。
「悟空、あなたの力、私が見定めてあげましょう。」
「お師匠様・・どうして・・どうしてみんなにひどいことをするんだ!?・・あれだけ優しかったお師匠様が、何で!?」
 手招きをする三蔵に、悟空が感情的に問い詰める。
「世界の在り方を見定めるために、私は旅をしてきました。道中であなたたちと知り合い、共に旅を続けてきました・・そして旅の果てに見定めたのです・・」
 語りかける三蔵から、光があふれ出す。
「世界は争いの絶えない愚かさであふれている・・私を含めた一部の者がまとめる必要があるのです・・」
 今の世界に失望した三蔵が、発している光を悟空にぶつける。
「おわっ!」
 悟空が吹き飛ばされて、激しく地面を転がる。
「悟空!司馬懿!」
 光秀が悟空たちに叫び、天牙麒麟刀を手にした。
「司馬懿、今までの私だと思ったら大間違いだよ・・!」
 諸葛亮が不敵な笑みを浮かべて、司馬懿に向かっていって宙天羅扇を振り下ろす。
「淵獄魔掌!」
 司馬懿が右手に淵獄魔掌を装着して、宙天羅扇を受け止める。
「光秀、オレは1人で乗り切る!お前は悟空に加勢しろ!」
 司馬懿が諸葛亮の攻撃に耐えながら、光秀に呼びかける。
「司馬懿・・分かった!少しだけ耐えていてくれ・・!」
 光秀が頷いて、悟空を助けるために三蔵に向かっていく。
「光秀と言いましたか。あなたの力がどれほどのものかも、確かめさせていただきます。」
 三蔵が光秀に目を向けて、体からの光を放出する。光秀が天牙麒麟刀を掲げて、光を受け止める。
「なかなかの耐久力ですね・・しかしこれはどうですか・・?」
 三蔵が笑みをこぼして、光を強める。
「うあっ!」
 光秀が光に押し切られ、宙に跳ね上げられた。
「光秀!・・やめてくれ、お師匠様!光秀はオイラの新しい友達なんだ!」
 悟空が三蔵に向かって必死に呼びかける。
「悟空、私の言うことを聞くのです。あなたにも、この世界のために戦ってほしいのです・・」
 三蔵が悟空に手を差し伸べて呼びかける。
「前のお師匠様じゃない・・今ここにいるのは、お師匠様なんかじゃない!」
 悟空が怒りを噛みしめて、如意棒を手にして構えた。
「私は本物の三蔵ですよ・・しかし、向かってくるならば相手をいたしましょう・・」
 三蔵はため息をついてから、飛びかかった悟空を迎え撃つ。
「あっ!」
 三蔵の放った閃光に押されて、悟空が地面に叩きつけられる。
「このぉ・・がぁっ!」
 起き上がる悟空だが、三蔵の放った光に捕まり、宙に持ち上げられた。
「動けない・・体が、言うことを聞かない・・・!」
「私の力で拘束させていただきました。あなたの強さを把握した上での力を掛けているので、あなたでは破れませんよ。」
 拘束から抜け出せずにうめく悟空に、三蔵が笑みをこぼして告げる。
「三蔵、友である悟空にこのような仕打ち、許しはせんぞ!」
 光秀が天牙麒麟刀を構えて、三蔵に言い放つ。
「光秀さん、あなたのことは信長さんに伝えておきましたよ。邪魔者は倒すという考えを崩していないようですね。」
「信長に会ったのか!?・・まさか、信長と手を結んだのか!?」
「はい。闘将と呼ぶにふさわしい武将でした。うまく話がまとまってよかったです。」
「貴様は・・そこまで我々の敵に回るというのか・・!」
 悠然と語る三蔵に、光秀が怒りを燃やす。彼が握りしめる天牙麒麟刀の刀身に光が宿る。
 光秀が三蔵に向かって飛びかかり、天牙麒麟刀を振りかざす。しかし三蔵に当たる直前で止められ、光秀が押し込むことができない。
「普段の悟空よりは力があるようですね。しかし悟空の強さは1つではありません。」
「強さが1つではない?どういうことだ!?」
 三蔵が口にした言葉に、光秀が疑問を覚える。
「悟空が本気になるなら、その意味をあなたも知ることになるでしょう。」
 三蔵が杖を手にして、先を光秀の体に当てた。
「ぐっ!」
 杖から放たれた光線を直撃され、光秀が激痛を覚えて目を見開いた。
「光秀!」
 倒れた彼に悟空が叫んだ。
(動けない!?・・たった一撃で、この私がこれほどのダメージを受けるとは・・・!)
 仰向けになっている光秀が、立ち上がることができず愕然となる。
「これが私の力です。あなたでは私を足止めすることもできません。」
 三蔵が自分の力について語って、光秀に近づいていく。
「やめろ・・光秀に近づくな・・光秀に手を出すな!」
 悟空が怒鳴り声を上げて、体に力を入れる。三蔵が光秀の前に来て、杖を彼に向けた。
「信長さんの退屈しのぎを潰してしまうことになりますが、まずはあなたを始末させてもらいます。」
 三蔵が光秀に告げて、杖の先に光を集める。
「やめろー!」
 そのとき、叫び声を上げた悟空の体から、炎のようなオーラがあふれ出した。彼を束縛していた光が、オーラの放出で打ち破られた。
「こ、これは・・・!」
「ついに他の強さを発揮しましたか。」
 光秀が悟空を見て驚愕を覚え、三蔵が振り向いて笑みをこぼす。
「まさかお師匠様が、オイラたちの敵になっとるとはな・・・!」
 着地した悟空が三蔵を見て言いかける。しかし彼の口調が変わっていた。
「違う・・今のアイツは悟空じゃない・・・!」
 司馬懿が悟空の異変に気付いて声を荒げる。彼は諸葛亮と淵獄魔掌と宙天羅扇をぶつけ合い、距離を取る。
「悟空・・それがお前の力なのか・・・!」
「ちゃう!オイラは八戒!猪八戒(ちょはっかい)インパルスガンダムや!」
 赤いオーラを発して猪八戒と名乗った。体は悟空のままだが、猪八戒という別の人格が出てきていた。
「お久しぶりですね、猪八戒。魂が目覚めて、あなたの人格が表に出てきましたか。」
「どなおなっとんのか、オイラには分からん・・お師匠様、アンタがなして悟空や劉備を裏切ったことも・・・!」
 悠然と声を掛ける三蔵に、八戒が問い詰める。
「世界を正すためですよ。今の愚かしい世界を正しく変えるのです。」
「世界ば変えるって・・そない考え方じゃ、世界ば支配すんのと同じやないか!」
 自分の考えを語る三蔵に、八戒が不満をぶつける。
「支配ではありません。いうなれば浄化というところでしょうか。」
「ふざけるな・・他者を蹂躙する浄化も平和もありはしない・・!」
 話を続ける三蔵に反論したのは、力を振り絞って立ち上がった光秀だった。
「自分が正しいと思い、従わない者を排除し、力で押し通す・・信長と同じだ!」
「私は彼のような闘将ではありません。力を前面に押し出すようなこと、私にはできません・・」
 怒りを燃やす光秀に対し、三蔵が悠然さを崩さずに顔を横に振る。
「三蔵、お前は信長以上に厄介な存在かもしれん・・力を行使するだけでなく、他者を巧みに動かす悪知恵も備えている・・・!」
 光秀が三蔵を倒さなければならない敵と認識する。
「オレがお前を止める・・たとえ悟空から恨まれることになろうとも!」
「ちょー待ち!」
 三蔵と対峙する光秀に、八戒が声を掛けてきた。
「お師匠様ん相手はオイラがする!お前さんは手ぇ出さんでくれ!」
「しかし、お前1人でこの強大な力のある三蔵の相手をするなど・・!」
 呼びかけてくる八戒だが、光秀は納得しない。
「これはオイラとお師匠様ん問題や!オイラたちでかたを付けんといかんのや!」
「悟空・・・いや、猪八戒・・・!」
 八戒の訴えを聞いて、光秀が戸惑いを覚える。
「殊勝なことです、八戒。ですがあなたのこの判断は、勇気ではなく無謀というものです。」
 三蔵が頷いてみせて、杖の先を八戒に向けた。
 八戒が三蔵に向かって走り出して、赤いオーラをまとった大きな拳を振りかざした。しかし三蔵は音もたてずに動いて、八戒の攻撃をかわした。
 八戒が振り返り、三蔵を見つけて追いかける。八戒が連続で拳を振りかざすが、三蔵にことごとくかわされていく。
「あなたの力は確かに大きいです。しかし速さが伴わないため、命中させるのが難しいようですね。」
 三蔵が八戒の能力について語っていく。
「その上直線的で大振り・・対処に造作はないです。」
 三蔵が打撃をかわした直後に、八戒の体に杖を当てた。
「おわっ!」
 杖から放たれた光を受けて、八戒が吹き飛ばされた。
「八戒!・・お前には悪いが、オレも加勢させてもらう!」
 光秀が八戒に言って、三蔵に向かっていく。
 光秀が天牙麒麟刀を振りかざすが、三蔵に軽やかにかわされていく。
「あなたは八戒ほど力はないですが、速さと正確さがありますね。あなたのほうが厄介です・・」
 三蔵が光秀に警戒を見せて、左手をかざして光を放つ。
「ぐっ!」
 光秀が光に捕まり、動きを封じられて宙に持ち上げられる。
「光秀!」
「あなたの相手は私ですよ、司馬懿・・!」
 彼を見て叫ぶ司馬懿を、諸葛亮が力を込めて押し込んでいく。
「あなたはここで倒させてもらいます。今よりも強くなっては手に負えなくなるそうなので・・」
 三蔵が杖を構えて光を集める。光秀は体の自由が利かず、光から抜け出すことができない。
「紅蓮剛爪鈀(ぐれんごうそうは)!」
 八戒が両腕から大量の光の球を放った。気付いた三蔵が杖を振りかざして、光の壁を出して球を防ぐ。
 その直後に八戒が飛びかかり、大きな手を広げて爪を振りかざした。しかし三蔵は彼の頭上に動いて、攻撃をかわしていた。
「やはり力に速さが伴っていないですね・・・」
 三蔵がため息混じりに言って、杖から光を放とうとした。
 次の瞬間、八戒の体から今度は青い炎のようなオーラがあふれ出した。三蔵が杖から光を出した瞬間、八戒が高速で動いた。
 三蔵が着地し、移動した八戒に視線を移す。
「やれやれ、八戒・・お師匠様に振り回されすぎや・・」
 八戒の口調に変化が起きた。八戒とは別の人格が現れていた。
「あなたもお久しぶりですね、沙悟浄。」
「まさかこんな形でまた会うなんてな・・・」
 三蔵が挨拶して、新たに表に出てきた人格、沙悟浄インパルスガンダムが歯がゆさを見せる。
「沙悟浄・・悟空の体には悟空だけでなく、他に2人の人格が宿っていたのか・・・!」
 光秀が沙悟浄を見て、悟空の謎について確かめる。
 悟空の中には、彼を含めた3人の魂が宿っていた。他の2人は、仲間だった八戒と沙悟浄だった。
「ここからはワイが相手させてもらうで、お師匠様・・ワイがアンタを止める・・!」
「あなたでも無理です。3人の魂が集まっていても、肉体が1つでは・・」
 沙悟浄が構えを取り、三蔵が悠然とした態度を見せる。
 沙悟浄が両足に青いオーラを集中させて、三蔵に向かって走り出した。その速さは悟空や沙悟浄を超えるものだった。
 沙悟浄が三蔵に向けて足を振りかざした。三蔵が沙悟浄の高速の蹴りを、杖を掲げて防いでいく。
 しかし沙悟浄の蹴りの1発を体に受けて、三蔵が押された。
「確かに速さはあなたたち3人の中では最速です。しかし八戒とは逆に、力が及ばないですね。」
 三蔵が沙悟浄の強さを把握する。速さが秀でている沙悟浄だが、力までは高いと言えず、攻撃の数で威力を上げる戦い方もしていた。
「さすがお師匠様の力や・・やわな攻撃では跳ね返されてまう・・・!」
 沙悟浄が三蔵の力を痛感して、焦りを噛みしめる。
「この技で大人しくさせるしかなさそうやな・・!」
 彼は再び構えを取り、両足にオーラを集中させていく。
「いくで!飛猿閃蹴!」
 沙悟浄が大きく跳び上がり、空中で高速回転する。旋風を巻き起こしながら、彼は三蔵に近づいていく。
「はあっ!」
 沙悟浄が右足のオーラを刃に変えて、三蔵目がけて振りかざす。三蔵が球状の光を発して、沙悟浄の刃を止めた。
「やはり力不足のようですね・・1人1人では、それぞれの長所を完全に活かし切ることはできないようです・・・」
 三蔵が悟空、八戒、沙悟浄の強さを把握する。三蔵が杖を振りかざして、光を拡大させて沙悟浄を吹き飛ばした。
「うわっ!」
 沙悟浄が地面に叩きつけられて、意識を失った。直後に彼から出ていた青いオーラも消えた。
「沙悟浄・・悟空・・・龍気発動!」
 光秀が敗れた沙悟浄を見て、龍の閃光を放った。力を高めた彼は、束縛の光を破った。
「あれが、光秀の秘められた力ですか・・」
 三蔵が光秀に振り返り、警戒を抱く。
「三蔵・・貴様はオレが討つ・・貴様の野望は実現させはしない!」
 光秀が言い放ち、閃光を発しながら天牙麒麟刀を構える。三蔵も杖を構えて迎え撃つ。
 光秀が高速で飛びかかり、天牙麒麟刀を振りかざす。三蔵は防御ではなく回避を選び、後ろに下がる。
「速さも力もある攻撃・・防御しても決定打を受けかねませんね・・」
 三蔵が浮遊して、光秀との距離を取る。光秀が追うが、三蔵に追いつくことができない。
「いつまでも逃げられると思わないことだ・・・!」
 光秀が鋭く言って、天牙麒麟刀の刀身に光を集めていく。
「天牙龍神刃(てんがりゅうじんは)!」
 光秀が振りかざした天牙麒麟刀から、光の刃が放たれた。回避が間に合わないと判断し、三蔵が光の壁を出して光の刃を受け止めた。
「天牙龍神斬!」
 光秀が直後に追撃を仕掛け、三蔵へ天牙麒麟刀を振りかざした。
「はっ!」
 そのとき、三蔵が目を見開き、全身から閃光を放出した。
「うおっ!」
 光秀が光に包まれて、激痛に襲われて絶叫を上げた。
「な、何だ、この力は!?・・ただ強力というだけではない・・・!」
 光秀がうめきながら、三蔵の発揮した驚異の力に驚愕する。
「今の私にここまでさせるとは・・やはりあなたたちを、伝説の武将に会わせるわけにはいきませんね・・・!」
 三蔵が目つきを鋭くして、光秀を排除しようとする。
「光秀・・・このままじゃ全員やられる・・・!」
 司馬懿が光秀と沙悟浄を見て危機感を覚える。
「よそ見は命取りだよ・・!」
 諸葛亮が言いかけて、司馬懿に向けて宙天羅扇を振りかざす。かまいたちが放たれて、司馬懿に叩きつけられる。
「この場を離れるしかない・・そしてノーザンマウンテンを突っ切る・・・!」
 思い立った司馬懿が目に光を宿す。
「闇潰冥葬!」
 彼が淵獄魔掌から赤い光を放ち、諸葛亮の動きを封じた。
「しまった・・動けない・・・!」
 諸葛亮が動けない間に、司馬懿が光秀たちのところへ向かう。
「私のところに来ますか、司馬懿・・・」
 三蔵が司馬懿に振り向き迎え撃とうとする。
「殲獄波動!」
 司馬懿が淵獄魔掌を振りかざして一閃を放つ。一閃は三蔵の眼前の地面に当たり、砂煙を舞い上げて視界を遮った。
「違う・・ヤツは悟空たちを連れて逃げるつもりですね・・・!」
 三蔵が感覚を研ぎ澄ませて、司馬懿たちの行方を追う。司馬懿は淵獄魔掌で光秀と悟空を抱えて、トリニティバイクに向かう。
「し、司馬懿・・・!」
「光秀、動けるか・・なら自力でバイクを動かすんだ・・・!」
 声を振り絞る光秀に、司馬懿が小声で呼びかける。司馬懿は悟空をトリニティバイクの後ろに乗せて、光秀と共に走り出した。
 同時に三蔵が全身から光を放出して、土煙を吹き飛ばした。
「不覚を取りましたか・・ノーザンワールドに入られてしまいました・・・」
 追撃ができないと判断して、三蔵がため息をつく。諸葛亮が力を込めて、赤い光を破って脱した。
「申し訳ありません、三蔵殿・・まだまだ僕は不甲斐ないです・・・」
「気に病むことはありません。今のは不意打ちをされたに過ぎませんし、あなたの力はまだまだこんなものではないですよ・・」
 謝罪する諸葛亮を三蔵が励ます。
「しかし我々は、伝説の武将から拒絶されることになるでしょうね・・この統一の道を歩み始めてしまったのですから・・・」
 三蔵が深刻さを感じて、諸葛亮が思い詰める。光秀たちに追いつけないと痛感しながらも、2人もノーザンマウンテンを進んでいった。

 三蔵たちから辛くも逃げ切ることができた光秀たち。気絶していた悟空が、ノーザンマウンテンの道中で目を覚ました。
「あれ?・・ここは、どこだ・・・?」
「気が付いたか・・お前、悟空か・・・?」
 顔を上げて疑問符を浮かべる悟空に、光秀が問いかける。
「何言ってんだ?オイラは悟空だぞ・・」
「人格が元に戻っている・・・」
 再び疑問を浮かべる悟空に対し、光秀は3人の魂が存在していることを実感する。
「悟空の仲間、猪八戒と沙悟浄。2人も三蔵を師として悟空と共に旅を続けていた・・」
 司馬懿が悟空、八戒たちのことを光秀に語り始める。
「師である三蔵によって、八戒と沙悟浄は倒れた。しかし2人の魂は悟空の体に宿った・・さっき現れた八戒と沙悟浄の姿は、2人の魂が表に出てきたことによるのだろう・・」
「だからまず八戒が表に出てきてその力を発揮し、次に沙悟浄が出てきたと・・」
 司馬懿の話を聞いて、光秀が納得する。
「お、おい・・オイラの中に、八戒たちがいんのか・・!?」
「気付いてなかったのか?・・悟空に自覚はないということか・・きっと、八戒も沙悟浄も・・・」
 驚く悟空を見て、光秀は彼が八戒たちが表に出てきたときの記憶がないと思った。
「光秀、悟空、考えるのは後だ。ノーザンマウンテンを超えてから整理するぞ。」
「あ、あぁ・・」
「分かったよ、司馬懿・・」
 司馬懿が山越えに集中して、光秀と悟空が頷いた。
 悟空は呼び出した筋斗雲に乗って、光秀と司馬懿はトリニティバイクを走らせた。彼らは日が暮れる前にノーザンマウンテンを抜けることができた。
「ここが、ノーザンワールドか・・・!」
 光秀が北の大地、ノーザンワールドを見渡して、真剣な面持ちを浮かべる。
「この場所のどこかに、伝説の武将がいるかもしれないのか・・・!」
「なぁ、光秀、司馬懿、八戒と沙悟浄がオイラの中にいるって、どういうことなんだよ・・!?」
 呟く彼に悟空が問いかけてきた。
「あ、そうだったな・・三蔵と戦っているときのことだった・・」
 光秀が悟空に起こったことを話した。悟空の人格が八戒に、その後に沙悟浄に変わったこと、それぞれの能力と戦い方を見せたことを。
「それで、八戒たちはどうなったんだ?またオレの中に戻ったのか!?」
「それは分からない・・沙悟浄が気絶して次に目を覚ましたとき、悟空の人格に戻っていた・・・」
 悟空が問い詰めて、光秀が深刻な面持ちで答える。
「でもオイラの中に2人がいるなら、きっと話ができるはずだ・・・!」
 悟空が自分の胸に手を当てて、八戒と沙悟浄の魂がいることを感じようとする。
「力も心も強くしていくなら、きっと2人と通じ合うことができるかもしれない・・」
「そのためにオレたちはここに来たんだな・・」
 光秀が悟空に激励を送り、司馬懿も気を引き締める。
「お師匠様と諸葛亮を止めるために・・八戒と沙悟浄と話をするために・・・!」
 新たなる決意を言って、悟空は光秀たちと共にノーザンワールドの中へ入っていった。

 光秀たちがノーワンワールドに入って最初に訪れた町「ホクト」。町としては立派な建物や家が立ち並んでいたが、並々ならぬ静寂が立ち込めていた。
「何だか重い空気を感じる・・・」
「町だと思えないくらいだ・・・」
 光秀と司馬懿がホクトの雰囲気に緊張を覚える。
「しかし、何者かに襲われた様子もない・・どういうことなんだ・・・?」
「オイラ、何だかゾクゾクしてきたぞ・・・!」
 光秀が疑問を募らせて、悟空が体を震わせる。
「伝説の武将のいる国・・噂だけではないようだな・・・!」
 司馬懿が両手を強く握りしめて、町の奥に進んでいく。
「強くなり、必ず信長の暴挙を止める・・・!」
 信長への怒りを募らせて、光秀も歩き出す。
「八戒・・沙悟浄・・・お師匠様・・諸葛亮・・・」
 悟空は様々な思いを胸に秘めて。2人を追いかけていった。

 ホクトの町の人通りは少なかった。通りがかる人もみんな無表情だった。
「本当にどうなっているんだ?・・これでは生きた心地もしない・・・」
「これがノーザンワールドということか。誰もが重大な何かを抱えて、そのために全てを賭けているようだ・・」
 緊張を膨らませる光秀と、ノーザンワールドの現状を口にする司馬懿。
「それで光秀、伝説の武将がどこにいるんだ?」
「このホクトよりもさらに北だ。そこに人が寄り付かない荒野がある。武将はそこにいると言われている。」
 悟空が問いかけて、光秀がホクトの先を見据えて答える。
「そこで強くなれば、オイラが知りたがってる答えが見つかるかもしれない・・・やってやる・・・!」
「それは、オレたちも同じだ、悟空・・・」
「共に精進していこう・・・!」
 意気込みを見せる悟空に、司馬懿と光秀が答える。
「今日はもうここで泊まり、明日向かおう・・」
 光秀が周りを見回して、司馬懿が頷いた。
「オイラ、腹が減ったぞ~・・」
 悟空がおなかに手を当てて空腹を訴えてきた。
「三蔵と諸葛亮の戦いで、かなり消耗してしまった・・今のままでは我々は絶対に勝てないことを、改めて思い知った・・・」
「今回以上の厳しい試練を超えなければ、オレたちは三蔵たちを超えられないんだ・・・!」
 光秀と司馬懿が覚悟を決めて、悟空と共に泊まれる場所を探しに向かった。

 

 

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