オメガx鎧武xトッキュウジャー
スーパーヒーロー・ファイナルバウト
第6章
光輝たちの前に士が姿を現した。彼を目の当たりにして、光輝は一気に怒りを膨らませていた。
「ディケイド・・やはりよみがえっていたのか・・・!」
光輝が声をかけるが、士は笑みを浮かべるだけだった。
「どうやって・・どうやってよみがえった!?あのガルヴォルスがまた・・!?」
「あのガルヴォルス?・・あぁ、再生させることができるヤツのことか。確かにアイツの力が関わってるな・・」
問い詰める光輝に士が語りかける。
「だがそれは当たらずも遠からずってだけだ。オレは別にアイツに生かされているわけじゃない。」
「それはどういうことだ!?・・まさか・・!?」
「そうだ。オレはアイツの能力を利用した。そしてオレは、倒された他のライダーたちと一緒によみがえった・・」
士が語った言葉に、光輝だけでなく、紘汰たちも驚愕していた。
「なるほど。やはり光輝の言っていたガルヴォルスの力だったか。ただしヤツの支配力は及んでいない。もしかしたらヤツは既に倒れているだろう・・」
竜也が状況を把握して納得する。
「お前の言う通りだ。アイツならオレが地獄の底に叩き落としてやった・・」
士が光輝たちに向けてさらに語りかける。彼はネクロマンサーガルヴォルスの力を利用して復活を果たして、彼を撃退していた。
「君がよみがえった経緯は分かった・・」
「しかしなぜ、我々を手にかけようとしているのだ・・!?」
1号が声をかけて、アカレンジャーが士を問い詰める。
「お前たちじゃ真の平和は作れない。オレが世界のあるべき形にしようとしているんだ。」
「ふざけるな!お前、なぜ倒されたのかを忘れたのか!?オレの中にある怒りが分からないのか!?」
士の言葉に怒りを覚えて、光輝が怒鳴りかかる。しかし士は光輝を鼻で笑ってきた。
「世界を脅かす敵を倒すために戦う。そのために手段を選ばない。なぜなら、仮面ライダーは元々は、ショッカーの尖兵として生み出された改造人間だからだ。」
「屁理屈を言うな!たとえ元々が悪の力だとしても、本当に正義か悪かはその力の使い方次第だ!」
「それなら結果がそれを物語る。世界を平和にさえすれば、それは正義だ。」
「違う!目的のために何でもしていいなど、そんなのは正義じゃない!」
自分の考えを口にする士に、光輝はさらに怒りをぶつけていく。
「お前に何を言ってもムダのようだ・・お前は自分が正しい、自分のすることが正義、世界が自分を中心に動いていると思い上がっている・・・!」
「当然だ。オレは最強。オレは究極を超えている。オレが世界の中心にいるのは、もちろん言うまでもないことだろ。」
「どこまでお前は・・・もはやお前は仮面ライダーでも、ヒーローでもない・・世界や夢だけじゃない・・全ての破壊者だ!」
士の言動に光輝の怒りは頂点に達した。
「変身!」
光輝はオメガに変身して、士に飛びかかる。
「変身。」
“Kamen ride,Decade.”
士もディケイドに変身して、光輝が繰り出したパンチを受け止める。
「つくづくお前は勝手なことを言ってくるな。ま、破壊者だっていうのはだいたい合ってるけどな。」
「勝手なのはお前だ!だいたいどころか、確実なことだ!」
言いかける士に怒鳴って、光輝が再びパンチを繰り出す。軽やかにかわそうとした士だが、光輝が続けて繰り出した後ろ回し蹴りを受けて突き飛ばされる。
「マジで手癖と足癖の悪いヤツだ、相変わらず・・」
士が皮肉を口にしてから、ライドブッカーを手にしてガンモードにする。その射撃を受けて、今度は光輝が突き飛ばされる。
「光輝さん!」
紘汰がたまらず飛び出して、光輝と士の間に割って入ってきた。
「待ってくれ!アンタもライダーなんだろ!?だったら話し合えば分かり合えるはずだろ!」
紘汰が士に向かって呼びかける。すると士がため息をついてきた。
「話し合ってもムダだ。オレとコイツの考え方はどうにもならないほどに違くなってしまったんだからな。」
「ディケイドは自分が正しいと思い込んで、他のヒーローを自分の道具のように扱い、夢を踏みにじっている・・これはもはや、許されるものではない・・!」
士が鼻で笑い、光輝が怒りの言葉を口にする。
「だから待てって!一方的に倒そうとしてどうすんだよ!?」
「話し合うという方法が効果がないことは分かっている・・コイツは自分が正しいと思い上がっているからな・・・!」
話し合いを訴える紘汰だが、士だけでなく光輝も完全に話し合いに見切りをつけていた。
「お前も仮面ライダーなら、戦うことから逃げるな。さもないと、あっさりと倒されることになるぞ、オレにな。」
士も言いかけて、ライドブッカーをソードモードにして、切っ先を紘汰に向けてきた。
「何で・・どうしてみんなを・・・!?」
「世界の本当のあり方に、今までのライダーも戦隊もヒーローも必要ない。オレを除いてな。」
問い詰める紘汰に、士が態度を変えずに答える。彼のこの言葉に紘汰も感情を揺さぶられる。
「お前も、世界のために誰かを犠牲にしてもかまわない・・そういう考えの持ち主なのか・・!?」
「世界の破壊者だからな・・」
あくまでライダーや戦隊を滅ぼそうとする士に、紘汰も怒りを感じ出した。
「そんなやり方じゃ、それはホントの平和じゃない!変身!」
“オレンジアームズ・ハナミチ・オンステージ!”
紘汰が鎧武に変身して、無双セイバーと大橙丸を手にして構える。
「お前が守ったから、お前たちが作ったから、平和ってわけでもないだろ。」
「自分のために他の誰かを犠牲にする・・そんな偽物の平和、オレがぶち壊してやる!」
あざ笑ってくる士に、紘汰が飛びかかる。無双セイバー、大橙丸とライドブッカーがぶつかり合う。
「自分のいいように世界を作り返そうとしているディケイド・・そんなことさせないけどね・・!」
ライトが言いかけて、トカッチたちと顔を見合わせて頷き合った。
“変身いたしまーす。白線の内側に下がってーお待ちくださーい。”
「トッキュウチェンジ!」
“トッキュウ1号。2号。3号。4号。5号。”
彼らもトッキュウジャーに変身して、士の前に駆けつけた。
「新しいスーパー戦隊か。おかしなスーツと仮面だな。」
「お前に言われたくないって!」
言いかける士にトカッチが文句を言う。
「まぁいい。お前たちもオレが倒す。」
「そうはいかないよ。だってオレたちにはまだ見えてないよ。自分の終着駅が。」
「そうか。だがオレには見えている。お前たち全員が消えるのをな。」
言いかけるライトに士も言葉を投げかける。
“撃ちまーす。”
“切りまーす。”
トッキュウブラスターを持って、ライトたちが士に向かっていく。トッキュウブラスターの剣技と射撃を、士は軽やかに回避していく。
「死ぬ前のままのオレだと思わないことだ。」
士がライドブッカーを振りかざして、ライト、トカッチ、ミオを切りつける。さらにライドブッカーをガンモードにして、ヒカリとカグラを狙い撃ちする。
「くっ!・・は、速い・・!」
「オレたちの攻撃をかわして反撃してきた・・それも正確に・・・!」
士の動きにトカッチとヒカリが声を上げる。
「降参するなら楽に終わらせてやる。そのほうが賢明だと思うが?」
「どこまでもお前は・・オレたちが諦めたりしないことを忘れたのか!?」
声をかけてきた士に光輝が怒鳴りかかる。
「だが諦めろ。どうやっても今のオレには敵わないんだからな。」
「それがお前の偽物の正義か・・」
強気な態度を見せる士に声をかけてきたのは、竜也だった。
「竜也・・・」
「ガルヴォルスの1人か。これじゃどっちが正義か悪か分からなくなりそうだな。」
光輝が戸惑いを見せて、士が皮肉を口にする。
「お前の正義は偽物だ・・自分が正しいと思い込んでいる、オレが倒すべきとしていた敵だ・・・!」
竜也も士を敵として認識していた。過ちを犯しておきながら自分たちを正しいと思い込んでいる。竜也はそれを偽物の正義と断定していた。
「だったらお前も倒す。オレは倒されるつもりはないからな。」
「倒されるのはお前だ!」
態度を変えずに言う士に言い放つ竜也がドラゴンガルヴォルスになる。ライドブッカーの射撃をかわして、竜也が士に飛びかかる。
竜也と士が組み付いて、互いに攻撃をぶつけ合っていく。
「すごい・・アイツと渡り合ってる・・・!」
「でも、何だか怖い・・・」
竜也の戦いを見て、トカッチとカグラが声を上げる。竜也は士に憎しみをぶつけているのだと、ライトたちには思えていた。
「オレは負けるつもりはない・・オレは憎むべき敵を倒すために戦っている・・・!」
竜也が声と力を振り絞って、士を押し返す。
「正義とか心とか、守るための戦いは光輝、お前たちに任せる・・だからお前たちは正義を見失うな・・・!」
「竜也・・・!」
竜也が投げかける言葉に、光輝が戸惑いを覚える。竜也との距離を取って、士が意識を集中する。
「そろそろ終わらせてやる。オレはここで足踏みするつもりはない。」
士は言いかけてから、タッチパネル型携帯電話「ケータッチ」を取り出した。
“Kuuga,Agito,Ryuki,Faiz,Blade,Hibiki,Kabuto,Den-o,Kiva.Final kamen ride,Decade.”
ケータッチの液晶画面に表示されているライダーのマークをタッチする士。彼のまとうディケイドの装甲が変化した。
ディケイドの強化形態「コンプリートフォーム」である。
「うわっ!いろんなライダーの顔が浮かんでるよ!」
「ヤツの力はその程度のものではないぞ。」
ライトが驚きの声を上げると、丈瑠が真剣に言いかける。
「一気に終わらせる。お前たち偽りのヒーローを・・」
士が言いかけて、ソードモードにしたライドブッカーを構える。
「偽りのヒーローなのはお前のほうだ、ディケイド・・・!」
光輝が両手を強く握りしめて、士を見据える。
「メガブレイバー!」
彼に呼ばれてメガブレイバーが駆けつけてきた。1本の剣「スピリットカリバー」を携えて。
光輝はスピリットカリバーを手にして、オメガクリスタルを取り出して移し替える。するとオメガの装甲が光り輝き、金色のラインが加わる。
光輝はオメガの強化形態「スピリットフォーム」になった。
「光輝さんも、違う姿に・・・!」
紘汰が緊張を感じながら、光輝と士を見据える。
「あのときはやられたが、今度はそうはいかないぞ。」
「いや、今度も・・いや、何度でもお前を倒す・・・!」
強気に言いかける士に、光輝が鋭く言いかける。2人が同時に飛び出して、ライドブッカーとスピリットカリバーを振りかざしてぶつけ合う。
「このまま指をくわえて見てる場合じゃない!」
「オレたちも一気に立ち向かうぞー!」
紘汰とライトたちも士に立ち向かっていく。
そのとき、紘汰たちの前に次々に人影が現れてきた。黒い装甲や凶悪な形状など、様々な姿かたちの仮面ライダーたちだった。
「ウソっ!?こんなに仮面ライダーが!?」
「しかもみんな、何だか怖い・・・!」
トカッチが驚いて、カグラが不安を見せる。
「お前たちにも死を実感させてやる・・・」
「黒い炎で焦がしてやる・・・!」
「全ての人間を滅ぼす・・・!」
G4、リュウガ、オーガが低く呟く。
「何度も死と再生を体験させられるオレたちと対照的に、のうのうと生きて平和ボケしているお前たちにも、地獄ってヤツを体験してもらうぞ。」
エターナルが紘汰たちに言い放ってあざ笑ってくる。
「地獄っていうのがどういうのかはよく分かんないけど・・」
「地獄行きになるのはまっぴらごめんだ!」
ライトと紘汰が言い放って、無双セイバーと大橙丸、キリマスモードのトッキュウブラスターを構える。
「やはり地獄を知らないガキどもか・・だったら地獄を楽しみな!」
エターナルが言い放つと、G4たちが紘汰たちに向かってきた。紘汰たちが迎え撃つが、G4たちの戦闘力に押されていく。
G4が繰り出すパワーとパンチで、トカッチが突き飛ばされて横転する。
ミオとカグラがシンゴウハンマーとテッキョウクローを振り下ろすが、オーガに受け止められて押し返される。
ヒカリがトンネルアックスを振りかざすが、リュウガはトンネルアックスをかわして、ヒカリにパンチを叩き込んでいく。
光実がブドウ龍砲で射撃するが、リュウガは横に転んでかわす。
“Strike vent.”
リュウガが手甲「ドラグクロー」を突き出して、黒い火の玉「ドラグクローファイヤー」を放つ。火の玉が眼前の地面に命中して爆発を起こして、光実が吹き飛ばされる。
紘汰とライトがエターナルに向かってそれぞれ武器を振りかざしていくが、エターナルは軽やかにかわしていく。
「ガムシャラな上にその程度か。笑わせる・・」
エターナルが紘汰とライトをあざ笑ってくる。
「まだまだこんなもんじゃないよ!レールスラッシャー!」
ライトがレールスラッシャーに持ち替えて、再びエターナルに向かっていく。エターナルがレールスラッシャーをかわして、ライトにキックを見舞う。
ライトがレールスラッシャーを振りかざして、光の鞭を伸ばす。が、エターナルは大きく飛び上がって光の鞭をかわす。
「今度はオレの攻撃の番だ。お前たちの愚かさを思い知るのだな!」
「人間は愚かってだけじゃねぇ!」
言い放つエターナルに言い返して、ダイゴが飛びかかってきた。彼に組み付かれてエターナルが落下する。
「他のライダーや戦隊まで出てきたか・・!」
「お前らなんかに、この世界をムチャクチャにさせてたまるか!」
毒づくエターナルにダイゴたちが言い放つ。1号、2号、V3、RX、モモタロスもG4たちに立ち向かって、紘汰、光実、ライトたちを助けていた。
そして光輝と士は互角の戦いを繰り広げていた。
「お前のその力、精神エネルギーの強さにオレは1度負けた・・だが今のオレはそんなことにはならない。」
士が低く告げると、カードをディケイドライバーにセットする。
“Final attack ride,Decade.”
士が右足にエネルギーを集めて、大きくジャンプする。彼の前に9枚のカードのエネルギーが現れた。
「このエネルギー量・・今までのディケイド以上だ・・・!」
「まずい!みんな、離れろ!」
アカレンジャーが声を上げて、アオレンジャーが呼びかける。
「一文字、風見、行くぞ!」
「おうっ!」
「あぁっ!」
1号の呼びかけに2号とV3が答える。3人が士に対して同時にジャンプする。
「トリプルライダーキック!」
1号たちが同時にライダーキックを繰り出す。士がカードのエネルギーを通って、1号たちのキックに自分のキックを叩き込む。
「オレは、全ての世界を凌駕する・・・」
士が意思を口にした瞬間、キックのエネルギーが一気に広がった。エネルギーは1号たちだけでなく、光輝たちをも巻き込んだ。
1号たちと士のキックの衝突は周囲を大きく揺るがした。その衝撃に耐えて、光輝が立ち上がる。
「ど、どうなったんだ・・・!?」
砂煙の舞う周辺を見回す光輝。
「みんな、どこだ・・どこですか!?」
光輝が紘汰たちを探して呼びかける。すると紘汰とライトが起き上がってきた。
「紘汰!ライト!」
「ふぅ・・とんでもない爆発で、ビックリしたよ・・・」
声を上げる光輝に、ライトが大きく息をつく。
「ミッチは・・みんなはどこだ・・・!?」
紘汰が光実たちを探して辺りを見回す。するとトカッチ、ミオ、ヒカリ、カグラが駆けつけてきた。
「みんなも無事だったんだね。オレはそうだと思ってたよ。」
ライトがトカッチたちに笑みを見せてきた。
「みんな、ミッチは見なかったか・・!?」
「いや、まだ見てない・・他のみんなも・・・」
紘汰の問いかけに、トカッチが深刻さを込めて答える。
「早くみんなを見つけないと・・」
「バラバラになってたら、悪いライダーの思うつぼだよ・・!」
カグラとミオが不安の声を口にする。舞い上がっている砂煙がだんだんと弱まっていく。
次の瞬間、光輝たちの周辺で再び爆発が起こる。そして丈瑠たちとモモタロスが吹き飛んできた。
「丈瑠さん!」
「良太郎くん!」
紘汰とライトが声を上げて、彼らが丈瑠たちに駆け寄る。
「ちっ・・オレとしたことが・・・!」
「ディケイドの技の余波でできた隙を突かれた・・悪のライダーたちにたたみかけられた・・・!」
モモタロスが毒づき、丈瑠が声と力を振り絞る。
「ディケイドにキックをぶつけていた3人のライダーのみなさんも、競り負けて・・・!」
そこへ光実も現れて、光輝たちに声をかけてきた。
「ミッチ、無事だったのか!」
紘汰が光実に駆け寄って、無事を確かめて安心を見せる。
「本郷さんたちがやられた!?・・そんな・・・!?」
1号たちが士に倒されたことに、光輝は絶望を感じていた。
「ふあぁっ!」
「ぐあぁっ!」
そのとき、RXと優斗の絶叫が響いてきた。突き飛ばされてきた2人に向かって、リュウガとオーガが迫ってきた。
“Final vent.”
“Exceed charge.”
リュウガがドラグブラッカーを背にジャンプして、オーガが剣「オーガストランザー」を構える。
「光輝くん・・みんな・・逃げるんだ・・・!」
RXが光輝たちに向けて声を振り絞る。リュウガがRXに向けて、黒い炎をまとったキックを繰り出してきた。
リュウガのキックを受けて、RXが爆発に巻き込まれた。舞い上がる炎の中、彼の姿が消えた。
「RX!」
RXの消滅に光輝が悲鳴を上げた。優斗もオーガのオーガストランザーの一閃を受けて吹き飛ばされた。
“優斗!”
モモタロス憑依している中、良太郎が優斗に向けて心の叫びを上げる。
「他のヤツらも始末してやったぞ。残るのはお前らだ。」
エターナルが光輝たちの前に現れて、不敵な笑みを浮かべてきた。
「お前ら・・よくもみんなを!」
「紘汰、お前たちはここを離れて、体勢を整えろ・・・!」
怒りをふくらませる紘汰に丈瑠が呼びかける。
「ここはオレとコイツだけで十分だぜ・・」
モモタロスも光輝たちに呼びかけてきた。
「丈瑠さんとモモタロスだけじゃ、いくらなんでも・・・!」
「おめぇらがいても足手まといなんだよ・・さっさと行けってんだよ!」
声を荒げる光輝にモモタロスが呼びかける。
次の瞬間、光輝のオメガへの変身が突然解けた。彼は一気に疲れに襲われて、その場に膝をつく。
「こんなときに、エネルギーが尽きるなんて・・・!」
光輝が体力の消耗を感じて、息を乱していく。オメガは精神エネルギーを力に変えている。精神エネルギーの消耗が激しくなると、オメガへの変身を維持することもできなくなる。スピリットフォームになると精神エネルギーの消耗がさらに激しくなる。
「そんなんじゃまともに戦えねぇよな・・だから早く行けって!」
「良太郎くん、モモタロス・・分かった・・行くよ・・・!」
モモタロスに呼びかけられて、ライトが渋々頷いた。その彼らの後ろに烈車が走り込んできた。
「緊急事態です!みなさん、乗ってください!」
「こういう視界の悪いところを走るのはご法度なんですけどねー!」
呼びかける車掌と愚痴をこぼすチケット。ライトたちが光輝と紘汰、光実を連れてレッドレッシャーに入っていく。
そのとき、竜也が砂煙をかき分けて光輝たちの前にやってきた。
「竜也!」
光輝が呼びかけると、竜也が振り向いてきた。ライトも竜也に目を向ける。
「君も乗って!早く!」
ライトが飛び出して、竜也を呼んで連れてくる。
「オレもお前たちからすれば怪人と呼べる存在だぞ・・」
「怪人全部が悪いってわけじゃない。君は悪いって感じがしない。それにどうしても思えないんだ。ここが君の終着駅だってね・・」
声をかけてきた竜也に、ライトが真っ直ぐに気持ちを言う。彼を純粋な心の持ち主であると、竜也は実感した。
「ライト、早く乗らないと烈車が出れなくなるよ!」
「分かってる!トカッチ、手伝って!」
トカッチの呼びかけにライトが答える。2人が竜也を連れて、レッドレッシャーに乗り込んだ。
「よし!さっさと行け!」
モモタロスが声を張り上げると、車掌が烈車を発進させた。
「これでよかったのだろう?・・ならば気に病むことなく、戦いに集中できるな・・」
「くだらねぇことは気にしねぇよ・・オレは最初から最後まで、クライマックスなんだよ!」
丈瑠が声をかけると、モモタロスが高らかに言い放つ。そんな彼らの前にG4が駆けつけて、ミサイルランチャー「ギガント」を構えてきた。
「戦隊を、英雄を甘く見るな!」
「いくぜ、いくぜ、いくぜ!」
丈瑠とモモタロスがG4に向かっていく。
「お前たちも、死を背負ってみるのだな・・」
G4が低く言いかけてから、ギガントを発射した。放たれたミサイルの直撃に、丈瑠とモモタロスは巻き込まれた。
士のキックの爆発で、撃、晴人、ダイゴたちも吹き飛ばされていた。体力を消耗していた撃たちの前に、士とエターナルが立ちふさがる。
「これほどまでにパワーを上げているとは・・・!」
「そういうお前たちもレベルを上げていた。旅と戦いを繰り返してきた結果だろうな・・」
うめく晴人に士が淡々と言いかける。
「だがオレはお前たち以上に力を付けた。ギャバン、お前が1番よく分かっている場所だ。」
「オレの!?・・・まさか・・・!?」
士の指摘に撃が驚愕を覚える。
「そうだ。オレは魔空空間にいた。そして魔空空間の力によって、オレは一気に力を高めた。破壊者としての力に反応しただろうな・・」
士が撃たちに語りかけて、皮肉も交えていく。
光輝に倒された士は魔空空間で目を覚ました。世界の破壊者である彼は、悪しき存在の力を高める魔空空間の影響を受けることになった。
「力を高めたオレは、魔空空間に戻ってきたあのガルヴォルスから力を奪った。さらに力を高めたオレは、自力で魔空空間から外に飛び出した。その瞬間に、地獄に落ちていたライダーや怪人たちも一緒に飛び出してきたようだ・・」
「そうか・・他のライダーたちは、アンタの復活のおまけということか・・・!」
士の話を聞いて、晴人が毒づく。
「今のオレは、究極や絶対という言い方は生ぬるいな。もはや神の領域だ。」
「神だと・・何もかもムチャクチャにする神様なんて、オレは信じないぜ・・!」
強気に振る舞う士に、ダイゴが声を振り絞って言い返す。
「だったら消えるついでに思い知れ。オレの無敵の強さをな。」
「ディケイド・・どうやらお前は、魔空空間に、地獄に落ちていた間に、本当の強さを見失ってしまったようだな・・・!」
不敵な笑みを浮かべる士に、撃が落胆の言葉を投げかけてきた。
「自分だけが正しい・・自分のすることなら何をやっても許される・・・」
「それは決して正義などではない・・紛れもなく悪の道でござる・・・!」
晴人と空蝉丸が士に言いかける。
「目的のためなら何でもしていいというやり方・・オレたちは絶対に認めないぞ!」
「認めてもらおうなんて、オレは思っていないけどな・・」
言い放つダイゴに士がため息をつく。
「いい気になっていられるのもここまでだ。そろそろ地獄へ落ちてもらおうか。」
エターナルが声をかけて緑色のオーラ「エターナルウェーブ」を集中させていく。
「全員まとめてコイツで終わらせてやる。」
“Etarnal,maximum drive.”
エターナルがエターナルウェーブを巨大なエネルギーの球にして放った。
「ダイゴ、アミィを!」
イアンがアミィをダイゴに向けて引っ張り込んだ。
「イアン!ウッチー!」
「ノッさん!ソウジ!」
アミィとダイゴが声を上げる。エターナルの放った光の球に巻き込まれて、イアン、ノブハル、ソウジ、空蝉丸の姿が消えた。
「みんな!・・お前!」
「他のヤツに構っている余裕はないぞ。」
怒りを覚える晴人に士が声をかける。彼がライドブッカーをガンモードにする。
“Faiz,kamen ride,blaster.”
ケータッチを操作した士の隣に1人のライダー、ファイズ・ブラスターフォームの幻影が現れた。2人が同じ動き、同じ構えでライドブッカーとファイズブラスターを構える。
「お前たちも後を追わせてやる。」
士がライドブッカーから光線を発射する。
「オレは・・まだ!」
「こんなところで倒れるわけにはいかない・・・!」
「お前たちに、正義と平和を塗り替えることはできない!」
ダイゴ、晴人、撃が声と力を振り絞る。彼らの勇姿が、士の放った閃光の中に消えた。
「これでギャバン、ウィザード、キョウリュウジャーも始末した・・ほとんどのヒーローが世界から消えたことになる・・」
士がディケイドへの変身を解いて呟く。
「残るはオメガ、鎧武、バロン、龍玄、トッキュウジャーか・・烈車で逃げたようだが、すぐにヤツらも始末してやる・・」
全てのヒーローを自らの手で倒すことを、士は改めて誓った。
「さて、オレはオレで勝手にやらせてもらうぞ。のうのうとしている人間たちに地獄を体感してもらわないとな。」
「好きにしろ。だがオレの敵になるなら容赦しない。他のヤツらにもそう言っておけ・・」
声を掛け合うエターナルと士。士は光輝たちを追いかけて、単独で移動してこの場を離れていった。