オメガ×フォーゼ×ゴーカイジャー
スーパーヒーロー列伝
第4章
バスコに立ち向かう光輝と弦太朗。だが驚異的なパワーを発揮するバスコに、2人は追い詰められていた。
「2人がかりでこんなもんなのかな?でもこのまま倒してしまうのももったいない・・」
倒れている光輝と弦太朗に向けて、バスコが悠然とした素振りを見せる。
「負けるわけにはいかない・・仮面ライダーを自分の道具にするとは・・絶対に許さない・・・!」
光輝が立ち上がって、バスコへの怒りを膨らませていく。
「メガブレイバー!」
光輝の呼び声を受けて、メガブレイバーが駆けつけてきた。光輝はジャンプしてメガブレイバーに乗り、バスコに向かっていく。
メガブレイバーの突進を、バスコは軽やかにかわす。光輝は転回して再びバスコに突進を仕掛ける。
だがバスコの素早い攻撃を受けて、光輝がメガブレイバーから突き落とされる。
「光輝!」
弦太朗が声を上げて、フォーゼドライバーにスイッチを差し込んだ。
“Elect.”
彼が変身しているフォーゼの姿が金色に変わる。「エレキスイッチ」の力を得た電気属性形態「エレキステイツ」へと変身した。
弦太朗がロッド「ビリーザロッド」を手にして、電気エネルギーを集めていく。
「今度はオレが、タイマン張らせてもらうぜ!」
「電気攻撃か?果たして僕に通用するかな?」
言い放つ弦太朗に悠然さを見せるバスコ。弦太朗が飛びかかって電撃を宿したビリーザロッドを振り下ろすが、バスコの右腕に防がれる。
「思っていたほどの威力じゃなかったね。これじゃマッサージにもならないな・・」
バスコが赤いエネルギーを放って、弦太朗を吹き飛ばす。その直後に、光輝がバスコに向かってきた。
「ライダーパンチ」
ベルトの水晶を右手の甲部に移して、光輝が精神エネルギーを集めたパンチ「メガブレイカー」を繰り出す。だがこの攻撃も素早く動いたバスコにかわされる。
「ぐあっ!」
バスコの速い連続攻撃を受けて光輝が倒される。起き上がろうとした彼に、バスコが右足で踏みつけて押さえ込んできた。
「やっぱり君もフォーゼも、僕には敵わないみたいだね・・」
笑みをこぼすバスコ。彼の右足を光輝は払うことができない。
「それじゃそろそろ終わりするか・・オメガのベルト、いただきまーす。」
バスコが光輝が身に着けているオメガのベルトをつかんで奪い取った。光輝の体からオメガの装甲が消失した。
「くっ・・オメガのベルトが・・・!」
ベルトを奪われたことに毒づく光輝。人間の姿に戻ったバスコが、オメガのベルトを見回していく。
「これがオメガのベルトか・・早速この力を試してみるとするか・・」
バスコがオメガのベルトを身に着けて、水晶を手にする。
「変身。」
ベルトに水晶をセットして、バスコがオメガに変身した。オメガが敵として立ちはだかることになり、光輝は緊張を膨らませた。
「こいつはやべぇことになっちまったぞ・・!」
弦太朗がバスコを見て焦りを見せる。
「オレたちも行きましょう!」
「ああっ!」
光太郎と志郎がバスコに向かっていく。
「変身・・V3!」
「変身!」
2人がV3とRXに変身して、オメガとなっているバスコに攻撃を仕掛ける。バスコは志郎と光太郎を同時に相手をして、互角に渡り合っていた。
「ベルトを奪い返すんだ、RX!」
「はい!」
志郎の呼びかけに光太郎が答える。
「メガフラッシャー。」
近づこうとした光太郎に、バスコが精神エネルギーを光にして放出してきた。閃光に視界をさえぎられて、光太郎の動きが一瞬鈍った。
その一瞬の隙を突かれて、光太郎と志郎がバスコのキックを受けて突き飛ばされる。
「なかなかの能力じゃないか。そしてオメガには心強い味方っていうのがあるんだよねぇ・・」
バスコが口にした言葉に、光輝が不安を感じた。メガブレイバーがバスコのそばに走り込んできた。
「えっ!?何でアイツのとこに光輝のバイクが来てんだ!?」
「メガブレイバーは・・オメガ専用のバイク・・・!」
驚きの声を上げる弦太朗に、光輝が立ち上がって言いかけてきた。
「オメガのベルトが別の人の手に渡れば、メガブレイバーがサポートする人も変わる・・今のメガブレイバーは、そいつの味方になっている・・・!」
「つまり、思ってる以上にやばいことになってるわけか・・!」
光輝の言葉を聞いて、弦太朗が焦りを見せる。
「そういうこと。それじゃそのメガブレイバーのパワー、試させてもらうよ。」
バスコがメガブレイバーに乗って、弦太朗たちに向かって走り込んできた。弦太朗たちは横に飛んで突進をかわす。
「そっちがそう来るなら、オレも・・!」
弦太朗がバスコに対抗しようと、バイク「マシンマッシグラー」に乗って走り出す。2台のバイクがスピードを上げて、交差と同時にそれぞれ車体から火花が散る。
「くっ!・・バイク勝負でも決定打を与えらんねぇ!」
「なかなかだね、メガブレイバーも・・でもこういうのは僕にあまりふさわしくないみたいだ・・」
弦太朗が焦りを膨らませる中、バスコがメガブレイバーを止めて降りた。彼はベルトの水晶を右手の甲部にセットした。
「メガスラッシャー。」
バスコがマシンマッシグラーで向かってくる弦太朗に、手刀「メガスラッシャー」を繰り出す。精神エネルギーを集めた手刀に切られて、弦太朗がマシンマッシグラーから落とされる。
「や、やべぇ!」
“Hopping.”
弦太朗がとっさに「ホッピングスイッチ」をセットして、左足にスプリングを装備する。ジャンプ力を上げて、彼はバスコの追撃から離れる。
「おい、平気か!?」
着地した彼にマーベラスが駆け寄ってきた。
「オメガのベルトを奪われた・・!」
「ベルト・・そうか。あのライダーはバスコが変身してるいるんだ・・!」
光輝からの答えを聞いて、ドンが声を上げる。オメガに変身しているバスコに、マーベラスたちも緊張を膨らませていた。
そのとき、ジョーは響いてくる音を耳にして、注意を傾ける。
「どうかしたのですか?」
アイムが声をかけると、ジョーが音のするほうに振り向いた。それは重圧のある足音。一歩一歩が心にまで響き渡るようだった。
「この足音・・まさか・・・!?」
光太郎はこの足音の正体に気付いていた。彼らの前に現れたのは、銀の鎧のような体をした男。
「お前もこの世界に来ていたか、仮面ライダーBLACK RX・・」
「この世界にもいたのか・・シャドームーン・・・!」
男、シャドームーンに光太郎が緊張を膨らませる。
「お前との決着をつけたいところだが、ゴーカイジャーとの勝負もしておきたい・・」
シャドームーンが視線を光太郎からマーベラスたちに移す。
「オレたちに挑戦してくるとはいい度胸だな。受けて立ってやるぜ!」
マーベラスがゴーカイサーベルとゴーカイガンを構えて、シャドームーンに向かっていく。
「よせ!ヤツは・・!」
志郎が呼び止めるのも間に合わず、マーベラスがシャドームーンと交戦する。だが彼のゴーカイサーベルもゴーカイガンも、シャドームーンは的確にかわしていく。
ジョー、ルカ、鎧もシャドームーンに向かっていく。ドンとアイムもゴーカイガンで後方からシャドームーンに向けて発砲する。
だが彼ら全員の攻撃さえも、シャドームーンは回避と防御でかいくぐっていく。
「コイツ、できる・・・!」
「あたしたちの攻撃を全部かわしてる・・!」
シャドームーンの強さにジョーとルカが毒づく。シャドームーンがマーベラスとジョーをパンチで突き飛ばし、さらに両手から放ったビームでルカと鎧を束縛して投げ飛ばす。
「僕たちの攻撃が全然効かない・・!」
「強いだけでなく、私たちの動きを読んでいるみたいです・・!」
ドンもアイムも焦りを感じていく。シャドームーンの出現とオメガとなったバスコに、マーベラスたちは窮地を感じていた。
「コイツはマジでやべぇな・・何かいいスイッチは・・」
「おい、ここは1度撤退するぞ!」
次にセットするスイッチを探している弦太朗に、マーベラスが呼びかけてきた。
「その手もあるけど、どうやってアイツから逃げたら・・!?」
「お前、煙出せるか?」
動揺を見せる弦太朗に、マーベラスが冷静に問いかける。
「煙!?そりゃ、出せるけど・・!」
「なら一緒にやるぞ!」
弦太朗の答えを聞いて、マーベラスがレンジャーキーを取り出した。
「ゴーカイチェンジ!」
“シーンケンジャー!”
彼はシンケンレッドに変身して、文字を具現化させる「モヂカラ」を使う。彼はシンケンジャーのアイテム「ショドウフォン」で「煙」の字を書く。
「そうか、逃げるが勝ちってヤツか!」
“Smoke.”
弦太朗も「スモークスイッチ」をセットして、右足に発煙装置を装備する。マーベラスが描いた文字が具現化されて、2人がバスコに向けて煙を放った。
「今のうちに引き上げるぞ!」
「行くぞ、光輝!逃げるぞ!」
ジョーと弦太朗が呼びかける。光輝も光太郎に助けられて、この場を後にした。
「まぁいい。今回はオメガのベルトを手に入れただけでよしとするか。」
煙が晴れていく中、バスコはオメガへの変身を解く。煙にさえぎられても光輝たちの動きが分かっていた彼だが、あえて追おうとしなかった。
「今度は負けないよ、マベちゃん・・いや、マーベラス・・・」
マーベラスとの決着を待ちわびるバスコ。彼から悠然さが消えていた。
バスコの襲撃から辛くも脱出した光輝たち。だが光輝はオメガのベルトをバスコに奪われてしまった。
バスコの復活、シャドームーンの出現、奪われたオメガのベルト。光輝たちの苦悩は深まっていた。
「まさかバスコがまた現れるとは・・」
「しかも仮面ライダーを操っていたとは・・」
ジョーとアイムが現状を呟いていく。
「この世界を支配している仮面ライダーは、バスコが操っているものだな?レンジャーキーでスーパー戦隊を呼び出して操ったように・・」
「あぁ。仮面ライダーやスーパー戦隊だけではない。バスコはこの世界の支配者となっている。ヤツの操るライダーと戦隊のために、両者とも世界の敵となっている・・」
マーベラスの問いかけに志郎が答える。
「ここは仮面ライダーとスーパー戦隊が対決した世界。ここではその戦いをスーパーヒーロー大戦と呼ばれている。」
「大戦で仮面ライダーとスーパー戦隊の力は、ライダーキーとレンジャーキーに形を変えた。その全てと宇宙最大の宝を手に入れたバスコは、この世界の支配者となった・・」
志郎に続いて光太郎も説明をしていく。
「あのバスコはオレたちが倒したバスコだった。アイツはオレたちの目の前で死んだ。それがなぜああして生きているんだ・・?」
「死んだ者を生き返らせた者がいる。調べたところ、それはネクロマンサーガルヴォルスとして覚醒している・・」
「ネクロマンサー?」
「死者や霊を操る術者で、死者を生き返らせることもできると言われている。その力を使いこなせるとしたら、それでバスコや他の怪人たちをよみがえらせたことの説明がつく・・」
「なるほどな。バスコやあのシャドームーンとかいうヤツもだが、そいつも探し出さないといけねぇようだな・・」
光太郎の説明を聞いて、マーベラスが笑みを見せる。
「ところで、光輝はどうしたのよ?」
「1人で落ち込んでいる・・オメガのベルトを奪われたのがショックだったようだ・・」
ルカの問いかけに光太郎が答える。光輝はゴーカイガレオンの中の廊下で落ち込んでいた。
マーベラスとの再会とオメガのベルトの奪取を済ませたバスコ。彼の前に1人の怪人が現れた。
風貌はフードを着ているようで、魔術師のように見えた。
「ゴーカイジャーたちに会ってきたのか?」
「あぁ。それとオメガのベルトもいただいてきた。」
怪人、ネクロマンサーガルヴォルスに、バスコがオメガのベルトを見せる。
「君にはいろいろと感謝してるよ。僕を生き返らせてくれただけじゃなく、僕を世界の支配者に仕立て上げてくれたのだから・・」
「別に感謝してほしいとは思っていないが、君が恩をあだで返す性格をしているとは思っている。何かを得るために何かを捨てるのが、君のやり方だから・・」
「なるほどね。結構警戒されちゃってるね、僕・・」
ネクロマンサーガルヴォルスの言葉を受けて、バスコが笑みをこぼす。
「君を始末しておいても何の問題もないけど、その前にやっておきたいことがあるんだよね・・」
「ゴーカイジャーの始末か・・」
「それもあるけど・・オメガのベルトを取り返そうと、持ち主が死にもの狂いになるだろうね・・」
光輝が挑んでくることも楽しみにして、バスコは悠然さを崩さなかった。
「それにしても、あのシャドームーンってヤツまで呼び出して、君は何を考えているのかな?」
「シャドームーンは仮面ライダーBLACKと同じ改造を施された改造人間で、今は仮面ライダー打倒という本能の赴くままに行動している。今はライダーだけでなく、スーパー戦隊に対しても同様の感情を抱いているようだが・・」
「そういうこと。まぁ、邪魔してこなければ、僕は構わないんだけど・・」
ネクロマンサーガルヴォルスに話をしてから、バスコは歩き出していった。
「私も信用していないか・・だがそれも私の思惑の範囲内だ・・裏切ることも敵に回ることも・・」
ネクロマンサーガルヴォルスも呟いてから姿を消した。
ゴーカイガレオンの船上で、光輝は落ち込んでいた。彼はバスコにオメガのベルトを奪われたことを気にしていた。
「ライダーになれなくなったのがそんなに辛いのか?」
そんな光輝にマーベラスが声をかけてきた。鎧も一緒に来ていた。
「今回が初めてじゃない・・オメガのベルトを奪われたのは・・でも、何度経験しても、どうしても落ち着かないんだ・・・」
「けっこう気にしてるんですね、自分自身の仮面ライダーの力を・・」
光輝の言葉を聞いて、鎧が物悲しい笑みを見せる。
「だけど、たとえ変身できなくても、誰かを助けようとしたり何かをしようとしたりする気持ちは変わってないんですよね?」
「それは、そうですけど・・・」
「オレ、ゴーカイシルバーになる前は普通の地球人でした。それでも正義の心はちゃんとありました・・」
鎧が光輝に自分のことを打ち明けた。彼は自分の危険も顧みずに子供を助けたことがあり、そのことを認められてゴーカイセルラーを託された。
「ゴーカイシルバーに変身できなくなったときも、ヒーローがどういうものか、正義の心を教わって、オレは立ち直ることができました・・たとえ変身できなくても、正義を失わなければその人はまだヒーローです!」
「正義を失わなければ・・・」
鎧に励まされて、光輝が戸惑いを見せる。彼は仮面ライダーとして、ヒーローとしての正義まで失いかけた自分を情けなく思っていた。
「僕自身が取り戻さないと・・僕がやらなくちゃ、何も起こらない・・・」
「へっ。そうでなくちゃな。バスコはオレたちに因縁がある。ついでにお前がベルトを取り戻す手伝いをしてやるよ。」
決意を口にする光輝に、マーベラスが不敵な笑みを見せてきた。
「だけどあのバスコ、本当に強い・・僕と弦太朗くんが同時に攻撃しても通用しなかった・・」
「アイツはオレたちでも倒すのが難しかった・・伊達にスーパー戦隊の大いなる力を奪い取っただけのことはあった・・」
バスコの強さを痛感する光輝に、マーベラスが言葉を投げかける。
「もしかして、話そうとしていた厄介なヤツって・・」
「あぁ・・アイツはさっきの仮面ライダーのように、スーパー戦隊を呼び出して戦わせたり、パワーがあるだけじゃない。スーパー戦隊の大いなる力を、無理やり奪い取ることができるんだ・・」
マーベラスの話を聞いて、光輝が緊張を膨らませていく。
バスコのラッパラッターはレンジャーキーを使ってスーパー戦隊を操るだけでなく、戦隊の大いなる力を奪い取る能力も備えている。バスコはこれで「太陽戦隊サンバルカン」、チェンジマン、フラッシュマン、「光戦隊マスクマン」、「地球戦隊ファイブマン」の大いなる力を奪い取ったことがある。
「最後は大いなる力を賭けて戦い、オレたちはバスコを倒した・・そのはずだったが、どういうわけかアイツは死んじゃいなかった・・」
「誰が、バスコを生き返らせたんでしょうか・・・?」
歯がゆさを浮かべるマーベラスと、疑問を見せる鎧。光輝も疑問を感じながらも、この世界を救うことを考えていた。
その頃、ジョーとアイムは光太郎と話していた。ジョーはシャドームーンのことと、光太郎との関係を気にしていた。
「アンタ、あのシャドームーンというヤツを知っていたようだが・・」
「あぁ・・シャドームーンは、オレの親友だったんだ・・」
ジョーの言葉を受けて、光太郎が自分の過去とシャドームーンとの宿命を語り始めた。
シャドームーンの正体は秋月信彦。光太郎とは兄弟同様に育った親友だった。
光太郎と信彦はゴルゴムに拉致され、世紀王に改造された。光太郎は完全に改造される前に脱出できたが、信彦は脳改造まで施され、信彦としての人格を失ってしまった。
世紀王の宿命の中で親友同士の対決を強いられた光太郎。この戦いに勝ち残り、ゴルゴムを滅ぼした彼だが、信彦を失ったことで受けた心の傷はまだ刻まれたままだった。
「光太郎さんに・・そんなことがあったのですが・・・」
光太郎の話を聞いて、アイムが動揺を浮かべる。
「オレはシャドームーンとなった信彦と戦うことを迷った・・だがそれが、世界の人たちの希望を失いかける形となってしまった・・」
光太郎が友と戦い、失った辛さと悲しみを思い返していく。
「自由の平和のために戦おうとしたが、友を失うことはどうしても辛く感じてしまうものだな・・」
「同じだ・・オレと同じ経験をしている・・・」
光太郎の話にジョーが反応していた。
「君も・・?」
「オレにも、親友と呼べる先輩がいた・・だがその人は機械化されて、それ以前の記憶を失った戦士になってしまった・・・」
ジョーが光太郎に自分のことを打ち明けた。
ジョーはかつてはザンギャックの兵士だった。そのときの先輩、シド・バミックは彼に剣を教えた師であり、かけがえのない無二の親友でもあった。
だがシドはザンギャックのサイボーク戦士「バリゾーグ」に改造されてしまった。バリゾーグは改造した者の能力をそのままに、命令に忠実に動く戦士である。
バリゾーグとなったシドとの対決にジョーは苦悩した。だがスーパー戦隊との出会いと激励で、彼は宿命に立ち向かうことへの迷いを振り切ることができた。
「ある人がオレに教えてくれた・・元通りにできないというならせめて、友の魂だけでも救ってやれと・・・」
「友の魂だけでも・・その人は、本当にいいことを言ってくれたんだね・・・」
ジョーの話を聞いて、光太郎が笑みをこぼす。
「オレたちは友を失った悲しみを背負っているだけではない。新たなかけがえのない友と出会い、ともに戦っている・・」
「そうですね。私もジョーさんもみなさんも、もう1人ではありません・・」
光太郎が口にした言葉にアイムが頷く。
「ジョー・・君もジョーという名前か・・オレの今の仲間も、君と同じ名前を持つ霞のジョーだ・・」
「・・ここまで奇遇が出るのはおかしな話だな・・これからも、友でいてくれるか・・・?」
「もちろんだ。友と自由のために戦っていこう・・」
ジョーと光太郎が握手を交わす。強まった2人の友情に、アイムも喜んでいた。
ゴーカイガレオンの居住区に残っていた弦太朗、ルカ、ドン。弦太朗は歴代のスーパー戦隊にも変身できるゴーカイジャーに感動を感じていた。
「いやぁ、何度見ても感動しちゃうぜ!いろいろな戦隊に変身できるんだから、どんなピンチも乗り越えられるってもんだ!」
「アンタ、ホントにのん気だね。呆れてものも言えないっていうのはこういうことね・・」
弦太朗の様子にルカが呆れる。
「だけど、いろいろ変身できるっていうのは便利でもあるよね。それで何度もピンチを乗り越えてきたし・・」
ドンが笑みをこぼして、ゴーカイチェンジを喜ぶ。
「オレはそこまで便利なことはできねぇけどさ、やりてぇことはあるんだ!まず言えるのは、オレの通ってる天ノ川学院高校の生徒全員と友達になることだ!けど仮面ライダー全員とも、スーパー戦隊全員とも、友達になりてぇと思ってる!」
「スーパー戦隊全員とねぇ・・でもそれはムリかもね。」
「そんなことはねぇ!その気になればどんなヤツとだって・・!」
「スーパー戦隊の中には、命を落とした人もいるのよ・・」
意気込みを見せる弦太朗にルカが言い返す。彼女の言葉を聞いて、弦太朗が言葉を詰まらせる。
「スーパー戦隊の中には、戦いの最中に、あるいは戦いの後に命を落とした人もいるんだ・・でもその人たちが、スーパー戦隊の大いなる力を託してくれたこともあったんだ・・」
「そんなことが・・オレ、すっげー感動して涙が止まらなくなってきたぞー!」
ドンの話を聞いて、弦太朗が感動を見せる。スーパー戦隊の悲劇と激励に、弦太朗も心を揺さぶられていた。
「そういえばおめぇらに夢とか、やりたいこととはあるのか?」
弦太朗がルカに問いかけてきた。
「そうね・・あるにはあるけど教えない。教えると、絶対に敵わなくなる気がするから・・」
しかしルカは話そうとはしなかった。
ルカにはザンギャックに親を奪われた子供たちが笑顔で暮らせる世界を作るため、宇宙を買い取る夢があった。だが口にすると叶わなくなると思い、彼女はマーベラスたちにも打ち明けていない。
「そうか・・どんな夢かは分かんねぇけど、叶うといいな・・」
「叶うといいなじゃないわよ。願いとか夢は叶えるもんなんだから。」
呼びかけてくる弦太朗に、ルカが強気な態度を見せる。2人は拳を突き合わせて友情を交わした。
「さて、ライダーになれなくて困ってるダチのために、いっちょ全力を出すとするか!」
「バスコが一筋縄じゃいかない相手だってことは、君も分かってるよね?」
自分に気合を入れる弦太朗に、ドンが問いかけてくる。
「あぁ。痛い目見て思い知った・・けどオレは諦めねぇ!ダチを助けるために、オレはアイツとタイマンを張る!」
「ハァ・・アンタのそういう様子を見てると呆れてくるわ・・」
陽気な弦太朗を見て、ルカがため息をつき、ドンは苦笑いを浮かべていた。そこへ光輝たちとマーベラスたちが戻ってきた。
「おっ、みんな戻ってきたか!」
気さくに声をかける弦太朗に、光輝は真剣な表情を見せてきた。
「ベルトを取り戻す・・自分の目的のために他を平気で利用したり犠牲にしたりするようなヤツに、仮面ライダーやスーパー戦隊の力を使わせるわけにはいかない・・」
「光輝くん・・・」
光輝が口にする決意を、光太郎が真剣な表情で聞く。
「たとえ変身できなくても、力がなくても、それを言い訳にして諦めたくない・・」
「へっ。よく言った。バスコを倒すついでに、お前のベルトも取り返してやる。」
マーベラスが光輝に不敵な笑みを見せる。
「オメガのベルトに発信器をこっそりつけておいたんだ・・何も言わないでこういうことをしたのは悪かったけど、こうしておいて正解だったね・・」
ドンが光輝に言いかけて、コンピューターを操作する。モニターにレーダーと発信器の反応が映し出される。
「といっても、向こうも気付いていて、わざと居場所を知らせているのだろうが・・」
ジョーが呟いてモニターを見つめる。
「たとえ罠を仕掛けていたとしても、僕は行く・・」
「オレたちも行くぞ。罠ごとバスコをぶっ潰してやる・・」
光輝もマーベラスもバスコに立ち向かう意思を消してはいなかった。
「それじゃ早速行こうぜ!青春も待っちゃくれねぇんだからな!」
弦太朗も意気込みを見せてきた。
「みんな、心を決めたようだな・・なら全員で乗り込むとするか。」
志郎が呼びかけると、光輝たちは頷いた。ゴーカイガレオンはバスコに向けて前進していった。
マーベラスたちが密かにつけた発信器のことは、バスコも気付いていた。だが彼はあえて発信器を壊さず、自分の位置を知らせて待ち構えようとしていた。
「相変わらず手が込んでるね、マベちゃん。それを知っててわざわざ受けて立つ僕ほどじゃないけどね。」
バスコが気さくに言いかけて振り返る。その先には何人もの兵士たちがいた。
仮面ライダーと戦った「ショッカー」の戦闘員から星屑忍者、ダスタード、スーパー戦隊と戦った「黒十字軍」のゾルダーからザンギャックのゴーミン、スゴーミン、ドゴーミンまで、様々な勢力の戦闘員が集結していた。
「今の僕の駒は、レンジャーキーやライダーキーだけじゃない。それじゃ戦闘員のみなさーん、攻撃開始でーす!」
バスコが呼びかけると、戦闘員たちがそれぞれ独特の掛け声をあげて前進していった。この世界の戦闘員たちも怪人、支配者であるバスコの手下となっていた。