Ogre SID
-死を背負いし剣-
第25話「支配 –全てを束ねる者-」
迎撃に出てきたメフィストたちが、テルたちやアルシュートに攻撃を仕掛けてくる。デュオの放った光の球で消滅したメフィストは多かったが、それでも多数のメフィストが生き残っていた。
「まだあんなにいるよ〜!だいぶ仕留めたはずなのに〜!」
「こんなにメフィストがここに潜んでたってことか・・!」
アロンが頭を抱えて、テルが毒づく。
「獲物がたくさんいていいことじゃねぇかよ・・・!」
ギギがテルたちの前に出てきて、不敵な笑みを浮かべた。
「ギギ・・な、何だかいつもと感じが・・・!?」
アロンがギギの鬼気迫る雰囲気に息をのむ。
「アイツら、全部狩らせてもらうぜ・・1匹残らず譲らねぇぞ・・・!」
「ギギ・・・」
メフィストに対してかつてない敵意を見せるギギに、アロンが緊張を膨らませていく。
「行くぜ!命がいらねぇヤツはかかってこいやー!」
ギギが言い放ち、斧を手にしてメフィストたちに飛びかかる。メフィストたちが迎え撃つが、ギギが振りかざす斧に次々に切り裂かれる。
「すごい・・いつもすごいギギだけど、いつもよりもすごすぎる・・・!」
アロンはギギの戦いを見て、緊迫を募らせていた。
「オレもギギさんに加勢しないと・・!」
「いや、よしたほうがいい・・今のアイツに近づいたら、巻き添えを食らっちまうぞ・・・!」
飛び出そうとしたテルを、アロンが止めた。
「だけど、このまま1人で戦わせたら危険だよ・・・!」
「加勢しに行く方がもっと危険になる・・よせって、テル・・!」
ギギを心配するテルだが、感情を込めたアロンに止められる。
「アロンさん・・・分かりました・・オレたちはアルシュートの守りに行きましょう・・!」
「そうだな・・そこでギギを待つか・・・!」
聞き入れたテルは、アロンとともにアルシュートに戻っていった。
飛躍する力には空間を歪めるばかりか、時間にも介入できる可能性も秘められている。デュオのこの話を聞いて、シドもミリィも驚きを感じていた。
「時間をも操ることができれば、それは本物の神の領域だ。私たちが神々となるのだよ・・」
「それが本当なら、本当に神の能力になる・・・!」
デュオが悠然と語って、ミリィが息をのむ。
「だが、お前は自分のことしか考えていない・・自分の目的のために、他の人を犠牲にして平気でいる神がいるものか!」
それでもシドはデュオへの怒りを絶やさず、敵意をむき出しにする。
「お前のような敵を滅ぼすために、オレは戦い続ける・・そのためなら、どんな力にも手を出してやる・・・!」
「愚かな人間たちを憎む者同士、力を合わせるのが得策だというのに・・・」
「お前に心を許すくらいなら、死んだ方がマシだ!」
「やれやれ・・その強情さだけは私を超えているようだ・・・」
拒絶と怒りをむき出しにするシドに、デュオが呆れて肩を落とす。
「聞き分けが悪いなら、もはや力ずくという手段しかない・・無理やり従わせるか、消滅させるか・・」
「消えるのはお前のほうだ・・空間の狭間に落としてでも、お前をこの世界から消す・・!」
互いに相手を消すことを考えるデュオとシド。
「あなたたちは私たちから大切なものを奪ってきた・・私もあなたたちと分かり合うことはできない!」
ミリィもデュオと手を取り合うことを拒む。
「お前たちも世界のために動いてくれたなら、実に喜ばしいことだったのに・・残念だ・・・」
デュオはまた肩を落としてから、オーガの後ろに一瞬で回り込んだ。しかし直後に、オーガが瞬間移動でデュオの後ろに回り込む。
オーガとデュオがさらに瞬間移動を繰り返して、打撃と光のぶつけ合いを繰り広げる。
(デュオはすごいけど、彼にここまでついていくシドとミリィもやるわね・・)
ソルシエが両者の戦いを見守って感心する。
(でも、デュオと行動を共にできないなら、私もあなたたちを認めるつもりはないわ・・)
彼女が意識を集中して、オーガに狙いを定める。
(空間を操れるのはデュオやシドたちだけではないのよ・・デュオ!)
ソルシエが思念を送り、デュオが聞き入れた。デュオは攻防を続けながら、オーガをおびき出していく。
(引っかかった・・今よ!)
ソルシエが両手をかざして、念力を放って、オーガのいる場所の空間を歪めた。
「ぐっ!」
「か、体の自由が・・!」
思うように動けなくなり、シドとミリィがうめく。
「空間の歪みに、あなたたちは引きずり込まれているのよ。バラバラになるほど歪みではないけど、それでも動きを止めるには十分・・」
ソルシエがオーガを見つめて言いかける。
「悪いがこれは真剣勝負ではない。卑怯などという言葉を言ったところで、無意味だと思ってもらおう。」
デュオもオーガを見下ろして微笑む。
「あなたたちが他人を弄んでいる時点で、正々堂々だとは思っていない・・・!」
「ただ、お前たちを許せないという考えが、さらに増すだけのことだ・・!」
ミリィとシドが声を振り絞り、オーガが歪みから抜け出そうとする。
「ムリに動こうとすれば、今度こそ体がバラバラになるわよ。下手に動かないほうが身のため・・」
ソルシエがシドたちに注意を投げかけたときだった。オーガは体が傷つくのも構わずに、強引に空間の歪みから抜け出した。
「不死の体を自覚しているのか、それとも傷ついてでも私たちに屈するのを拒絶しようとするのか。シドたちをおとなしくさせるのは不可能ということか・・」
シドとミリィの思考と行動を推察して、デュオが呟く。
「ならばこれで消滅を狙うまでだ・・」
デュオが両手を動かして、オーガの周囲に複数の空間の歪みを起こした。
「これで下手に動けばバラバラになる。空間を跳び越えて移動しようとしても、歪みに引っかかることになる・・」
「ならばこの歪みを吹き飛ばすまでだ・・!」
デュオの言葉をはねつけて、シドが感覚を研ぎ澄ませる。オーガが全身から光を発して、新たな空間の歪みを作り出して、デュオの歪みとぶつけ合って相殺していく。
「なんということ・・ますます力を上げて、デュオに近づきつつある・・・!」
ソルシエがシドたちの力を実感して、緊張を募らせる。
「しかし、手は既に打っている・・」
デュオが両手を動かすと、近くにいたメフィストが引き寄せられて、オーガにぶつけられた。
「えっ!?」
メフィストたちに押さえつけられて、ミリィが困惑する。オーガの周りに再び球状の歪みが発生した。
「あなた、メフィストを犠牲にするつもり!?」
「全ては世界を正すための犠牲だ。その人柱になれるのだから、みんな光栄というものさ。」
声を荒げるミリィに、デュオが悠然と答える。
「お前・・どこまで思い上がれば気が済む!?」
シドが激高して、オーガがメフィストを振り払おうとする。
「私が世界の全てを動かす。目的のために駒を切り捨てることも、必要不可欠なのだ。」
「命を物扱いするな、外道が!」
悪びれる様子もないデュオに、シドが怒号を放つ。
「お前たちも離れろ!アイツの言いなりになって死にたいのか!?」
「デュオに逆らっても消されるだけ・・・!」
「どうせ死ぬしかないなら、お前たちを道連れにするしかない!」
デュオに怒鳴られても、メフィストたちは離れようとしない。
「どいつもこいつも、血迷ったヤツらが・・!」
シドが怒りに体を震わせ、オーガが至近距離からメフィストに拳を叩き込む。それでもデュオに操られるメフィストは、オーガから離れない。
「ウフフフフ・・このまま一緒に消えることになるわね、シド、ミリィ・・・」
ソルシエが微笑んで見つめて、デュオがまた消滅の光の球を作り出した。
「先ほどよりも威力を強めている・・この前のように、わずかな欠片が生き残る可能性は低くなる・・」
デュオが笑みを強めて、光の球を放った。
「私たちは死ねない・・生きて、その心地をまた感じたい・・・!」
ミリィが自分たちの思いを口にする。
「そんなに死に急ぎたいなら、お前たちだけで勝手に逝け!」
シドが声を張り上げ、オーガが握った両手から光を発して、組み付いているメフィストたちの体を吹き飛ばした。
デュオがオーガたちに向かって、光の球を放った。
「逃げるようだけど、下がりながら空間を超えて回避するしかない・・!」
ミリィが最善の方法を模索して、メフィストの束縛から脱したオーガが後退しながら空間を飛び越える。光の球はメフィストたちを吹き飛ばしたが、オーガを捉えるには至らなかった。
「考えてよけたようだ・・しかしお前たちは無事でも、他はどうかな?」
デュオが言いかけて、シドとミリィが光の球の進む方向に目を向ける。オーガから外れた球は、アルシュートのほうへ向かっていた。
「いけない!アルシュートが!みんなが!」
「デュオ、お前・・!」
ミリィが叫び、シドがデュオへの怒りをさらにたぎらせる。オーガがスピードを上げて、アルシュートへ急ぐ。
「全速力でも間に合わない・・アルシュートが・・!」
「それでも行く!アイツの思い通りにさせてたまるか!」
ミリィが焦りを噛みしめて、シドがアルシュートに追いつこうとして、オーガが全速力で向かう。
「この距離と速度では追いつけない。アルシュートの消滅は確実だ。」
デュオが勝ち誇り笑みをこぼす。オーガは光の球に追いつくことができない。
「絶対に追いつく・・あそこは、グリムリーパーはオレたちの居場所だ・・絶対に消させるものか!」
感覚を研ぎ澄ませたシド。次の瞬間、光の球の後方にいたオーガが、アルシュートのそばまで来た。
「何っ・・!?」
オーガの動きを一瞬見失い、デュオが驚きを覚える。オーガがアルシュートを抱えて、再び移動をした。
光の球はアルシュートに当たることなく、落ちた地点の海水を蒸発させて消えた。
「これは空間移動の域をも超えている・・まさか、シドたちは・・・!」
デュオがシドたちが新たな力を得たと感付いて、驚愕をあらわにする。
オーガの動きは空間を渡り歩いての瞬間移動の速度を超えていた。シドとミリィは時間への干渉をも可能にしていた。
「た・・助けられた・・みんなを・・・!?」
オーガがアルシュートを救い出したことに、ミリィ自身戸惑いを感じていた。
「い・・今、一瞬、シドさんたちのオーガの姿が2人に見えた気が・・・!?」
テルがオーガを見つめて当惑する。彼はオーガが瞬く間に移動した瞬間を視界に入れていた。
「えっ!?残像か何かとかじゃないのか・・!?」
アロンが彼に疑問を投げかける。
「いや・・そんな感じには見えなかったです・・体や動きそのものに違和感はなかったのに・・・!」
テルがオーガが移動した瞬間を思い出して、2人とも本物だったと判断する。
「瞬間移動でも2人同時に現れるなんてありえない・・ということは、まさか・・・!?」
テルもシドたちが時間を超えたのではないかと考える。
「オレたちが、時間を超えた・・・!?」
シドも自分たちの能力に対して、戸惑いを感じていた。
「でもこれなら、デュオの攻撃をかわして、確実に私たちを当てて倒すことができるはず・・!」
「しかし、どうやって、時間を超える能力を出せたのか・・・!?」
勝利のカギを見出すミリィだが、シドが時間を超える能力が分からず苦悩する。
「まだ使いこなせたわけではないようね。今のは偶然できたに過ぎない・・」
ソルシエがオーガの様子を見て、安心を覚える。
「しかし1度でも使うことができたなら、再び使う可能性は十分にある。私が確かめるとしよう・・」
デュオは笑みを絶やさずに、オーガにゆっくりと近づいていく。彼は瞬間移動を使って、オーガとの距離を詰めた。
シドとミリィが反応し、オーガが振り返り様に拳を繰り出す。デュオとオーガの拳のぶつかり合いは、またも空間を歪めていく。
「時間への干渉・・その力を思うように使えないか・・」
オーガの状態を確かめながら、デュオは攻撃を続ける。
(このまま2人の力を解放させるか?私をも上回る敵を生み出すことになるかもしれない・・2人が、この世界を正しく導く存在になるのなら、それでも・・・)
デュオが思考を巡らせて、シドたちが自分を上回るようにすることも厭わない考えを抱いた。
「私に勝つには、時間をも超越する力を使いこなさなければならないぞ・・」
「オレたちはお前を滅ぼす・・そのためなら、どのような力にも手を出す・・たとえそれがオレたちに何かを及ぼそうとするものだとしても、オレたちはそれを跳ね返す!」
挑発するデュオに、シドが自分たちの意思を言い放つ。
「私を倒したとしても、お前たちは私の思惑通りに動くことになる・・」
「オレたちはお前たちとは違う!罪のない人を傷付けて平気でいるようなヤツじゃない!」
笑みをこぼすデュオに、シドが言い返す。
「私も、他人を道具にするようなやり方を認めはしない・・人の苦しみや辛さを分かろうとしない人にはならない!」
ミリィもデュオの意思に徹底的に反発する。たとえデュオたちと同じ過ちを犯してしまったとしても、それを悪いと思わない人にはならないと、シドもミリィも考えていた。
「強情だ・・実に強情だ・・そのような考え方は、意固地でありながら中途半端だ・・」
デュオはため息をついて、今度はテルたちに目を向けた。
「ならば私も、お前たちを思い通りにするために手段を選ばないようにしよう・・」
「デュオ、まさかテルくんたちを・・!?」
テルたちのほうに手を向けたデュオに、ミリィが緊迫を募らせる。デュオの手から光の球が現れる。
「いつまでもいい気になれると思うな・・デュオ!」
シドが激高して、オーガがデュオに飛びかかる。デュオがもう1本の手をオーガに向けて、もう1つ光の球を出した。
(これじゃ私たちもテルさんたちも、どちらも消される・・!)
ミリィがこの絶体絶命に緊迫を募らせる。
(デュオの攻撃をやめさせないと・・私たちも消えないし、みんなも消させない・・絶対に!)
感覚を研ぎ澄ませたミリィは、無意識にシドを抱きしめていた。2人は互いの抱擁に強い恍惚を覚えた。
そのとき、オーガが一瞬にしてデュオの眼前まで詰め寄り、拳を振りかざしてきた。
「それではまだ私を捉えきれはしない・・・!」
デュオが光の球の1つを、オーガに押し当てようとした。
次の瞬間、デュオのその手がつかまれて止められた。つかんできたのは、眼前にいるオーガとは別の手。
しかしその手は紛れもなくシドとミリィのオーガだった。デュオはオーガが2人いるのを目の当たりにした。
「これは・・!」
デュオが思わず声を上げた。時間を超えて今に戻ってきたオーガが、デュオの攻撃を止めたのである。
1人目のオーガが繰り出した拳が、デュオの体に叩き込まれた。デュオが体勢を崩して、2つの光の球を手放した。
次の瞬間、1人目のオーガの姿が消えた。
(攻撃してきたほうのシドたちが、一瞬前の過去に飛んだ・・!)
デュオが2人目のオーガに目を向けて、つかんできている手を払いのけた。
(仲間や大事な人、自分自身を傷付けられるという絶望から逃れようとすると、時間を超える力を発揮するようになる・・)
デュオがシドとミリィの心理状態を察して笑みをこぼす。
(もっと攻めるのだ・・シドたちの心のよりどころを・・2人の力を解放するために・・・)
デュオがまた光の球を出して、テルたちを攻撃しようとする。
「デュオ、テルさんたちを攻撃して、私たちに揺さぶりを掛けるつもりなの・・!?」
ミリィがデュオの企みに憤りを感じていく。
「いい加減にしろよ、このヤロー・・!」
シドも怒りを増して、力を上げようとする。
(オレたちは2度も時間を超えることができた・・また越えられるはずだ・・・!)
自分たちの力を確かめるシド。彼はミリィとともに時間を超えるイメージを思い描いていく。
(デュオを止める瞬間に、移動する・・!)
シドたちが意識を高めて、オーガがデュオの後ろに移動した。デュオがオーガに対して光の球を当てようとした。
その直後、デュオの周りに多数のオーガの姿が現れた。様々な未来からオーガが今に移動してきたのである。
「まさか、ここまで時間に干渉する能力を使いこなせるようになったというの・・!?」
ソルシエがオーガたちを見て驚愕する。
「すばらしい・・これが、時間を超えた力・・神の領域だ・・・!」
デュオがシドたちに感動を覚えつつも、光の球の数を増やした。次の瞬間、オーガたちが同時に拳を繰り出して、デュオの体に叩き込んだ。
(私でも回避が間に合わない・・迎撃もままならない・・・!)
オーガたちの攻撃を直撃されて、デュオが体勢を崩す。
(しかし、この2人ができて、私ができないはずはない・・私も、限界を超えられるはずだ・・・!)
自分が頂点の存在だという自負を思い返して、デュオが自身の力を解放する。彼は光の球を自分を守る球状の壁にして、オーガたちを阻む。
「下手に手を出せば消滅することは、分かっているかな?」
「そんなことは関係ない・・・!」
デュオが挑発するが、シドは敵意を消さず、ためらいも持たない。
「ならば消えに来るか?これを突破しない限り、私を倒すというお前たちの望みは叶わない・・」
「突破する・・たとえバラバラになってでも!」
悠然と振る舞うデュオに言い返すシド。
(アイツを倒す力を出す・・・!)
(あの人に攻撃を当てられるだけの距離の力を出す・・・!)
シドとミリィがデュオに詰め寄り倒すイメージを膨らませていく。オーガたちが息を合わせて、両手に光を灯してデュオに向かって突っ込んだ。
全身に光を発して壁を作り、デュオの光を阻むオーガたち。だがそれでも完全に防げるわけでなく、オーガたちの体が崩壊をしていく。
(本当に強情だ・・力任せに私に逆らい続ける・・・!)
デュオが毒づき、光を集中させてオーガたちの消滅を狙う。オーガの数体が光を突破して、デュオの体に拳を叩き込んだ。
突き飛ばされるもすぐに踏みとどまるデュオ。しかしダメージが大きく吐血した。
「デュオ!」
追い詰められるデュオを見て、ソルシエが叫ぶ。
「しかし、私も不死の体となっている。完全消滅させなければ、私を倒したことにはならない・・」
デュオが笑みを取り戻して、体を回復させる。
「だったら消滅させるまでだ・・何度でも消しに行く!」
シドが激情を募らせ、時間を隔てて1人に戻ったオーガが右手に光を集めていく。消滅の効果を備えた光を帯びて、オーガが拳を繰り出した。
デュオが瞬間移動で回避しようとしたが、その先にオーガが回り込んでいた。
(時間移動は、空間移動をも超える・・!)
時間を超える能力の高さを改めて痛感するデュオ。オーガが光の拳をデュオ目がけて繰り出す。
「させない!」
ソルシエがオーガとデュオの間に割って入り、両手からそれぞれ炎と吹雪を同時に発した。
「来るな、ソルシエ・・君が消されるだけだ・・!」
「あなたが消されるくらいなら、私があなたを守るわ・・・!」
呼び止めるデュオだが、ソルシエは退こうとしない。
「私が食い止めている間に、シドとミリィを・・!」
ソルシエがデュオに告げると、炎と吹雪を出しながらオーガに近づいていく。
「つかんで動きを止めれば、いくら時間を飛び越えようとしても逃げ切れないものよ・・!」
ソルシエが距離を詰めていき、オーガの腕をつかんだ。
「うあっ!」
シドたちの力を浴びて体の崩壊を起こして、ソルシエが苦痛を覚えて顔を歪める。それでも彼女はオーガから手を放そうとしない。
「放さない・・あなたたちは私と共に消える・・生き残るのはデュオよ・・!」
ソルシエがオーガに鋭い視線を向ける。
「オレたちは消えない・・消えるのはお前たちだ!」
シドが言い返して、オーガがソルシエの手を払おうとする。
「ソルシエ・・感謝するぞ・・・!」
デュオが両手を前に出して、巨大な光の球を出した。放たれた光の球は、ソルシエごとオーガをのみ込んだように見えた。
(デュオ・・世界を変えて・・私は、あなたとともにここまで行けて、嬉しかったわ・・・)
デュオへの感謝を胸に秘めたまま、ソルシエが光の中に消えた。
「ソルシエ、すまん・・・シドたちが生き残っていないか、行方を追わなくては・・・」
デュオが謝意を浮かべてから、シドとミリィが生き残っていないかを確かめる。光は消えていたが、その地点には何も残っていなかった。
(今度は完全消滅したか・・しかし念には念を入れておくか・・・!)
デュオは警戒を緩めずに、両手で巨大な光の球を作り出す。
「グリムリーパー、アポストル、お前たちもシドとミリィの後を追わせてやろう。それが私をここまで手こずらせたシドたちへの手向けだ・・!」
デュオがテルたちに目を向けて言いかける。
「じじじじ、冗談じゃねぇってー!あんなの、逃げ切ることもできねぇよー!」
アロンが動揺を膨らませて慌てふためく。
「逃げようとしても逃げ切れない・・可能性はわずかしかないけど、迎え撃つしかない・・!」
「どんな攻撃だろうと、真っ二つにしてやるぞ!」
テルが覚悟を決めて、ギギが斧を構える。
「触れた瞬間に消滅することになる。それを見る機会は十分にあったのに、それが分からないとは・・」
デュオがため息をついてから、光の球を放とうとした。
次の瞬間、デュオが体を貫かれて目を見開いた。
「こ・・こんなことが・・・!?」
「時間を超える力・・何となくだけど、つかめた気がする・・・」
驚愕するデュオに声を掛けたのはミリィだった。オーガが体を再生させて、デュオの体を後ろから手で貫いていた。
「消される直前で飛んだんだ、この“今”に・・そして体を元に戻して、お前に詰め寄った・・・!」
シドも静かに言って、オーガがデュオを貫いている手に光を灯す。
「このまま貫いたままなら、完全には再生できない・・この状態で、あなたを消滅させる!」
ミリィがシドと意識を共有して、オーガが光を大きくした。オーガが密着状態でデュオを消そうとしていた。