Ogre SID
-死を背負いし剣-
第22話「悲壮 –すがり合う男と女-」
アンをデュオに殺され、シドの心は絶望で満たされていた。彼はアルシュート内の自分の部屋に閉じこもり、いつも以上に人を寄せ付けない雰囲気を出していた。
アンの遺体はアルシュートが1度海に浮上した際に、シドが海の中に沈めていた。
(アン・・生きてて嬉しいと思っていたのに・・・何でお前が死ななくちゃならないんだ・・・!?)
アンを失った悲しみを感じて、シドが心の中で呟く。
(アンは何も悪くない・・メフィストや敵を滅ぼすために戦ってきたオレとは違う・・それを、アイツらは・・・!)
シドが非情の現実に怒りを感じて、体を震わせる。
(オレにはもう・・メフィストを憎んで、滅ぼすことしかできない・・・アイツらを野放しにすることは、オレにはできない・・・!)
デュオたちへの憎悪を強めていくシド。しかしアンを失った悲しみが今は強く、立ち直ることができないでいた。
シドに起こった事情をミリィが話して、ハントとシーマが深刻さを感じていた。
「シドさんの妹を、私たちよりもメフィストが先に見つけていたとは・・」
「しかもシドを陥れるために、彼女を利用するとは・・・」
シーマとハントがアンのことやデュオたちの目論みについて考える。
「メフィストは我々を狙っている。特にシドに目を付けている・・」
「シドは力を付けて、メフィストを多く倒していますし・・・」
ハントがメフィストの動向についても考え、シーマが答える。
「それだけではない気がする。シドには他の者とは違う何かを秘めている・・シドだけでなく、ミリィも・・」
「ミリィさんも・・?」
ハントが口にした言葉に、シーマが疑問符を浮かべる。
「ミリィもシドのように髪の色が変化した。エリィに裏切られた精神的ショックの影響かと思われたが、そうではないのかもしれない・・」
「隊長・・・」
ハントが話を続けて、シーマが困惑を感じていく。
「ミリィからもっと話を聞く必要があるな・・」
ハントがミリィからさらに話を聞こうと考えて、シーマが頷いた。
そのとき、ハントたちのいる部屋のドアがノックされて、ミリィが入ってきた。
「ミリィさん・・」
「シーマさん、ハントさん、話すことがまだあります・・・」
シーマが戸惑いを見せて、ミリィが真剣な面持ちで話を切り出した。
「私とシドの、体の変化のことです・・・」
ミリィが話しかけて、1本のナイフを取り出した。彼女は右手に持ったナイフで、自分の左手を突き刺した。
「ミ、ミリィさん!?」
ミリィの突然の行為に、シーマが驚く。ミリィは左手に刺したナイフを引き抜いた。
「ミリィくん、何を・・!?」
問い詰めてきたハントに、ミリィが左手を見せた。血があふれていた手の傷がすぐに塞がっていく。
「これは・・!?」
治療なしで傷が消えたミリィに、シーマが目を疑った。
「私たち、不死の体になってしまったようなのです・・体がバラバラになっても、脳や心臓が傷ついても、細胞が完全に消えない限りは再生されると・・」
「何が、どうなっているのですか!?・・あなたたちは、人間でなくなったというのですか・・!?」
ミリィが語りかけて、シーマが緊張を膨らませていく。
「いえ、私たちは人間です。他のアポストルたちも、メフィストも・・」
「何?・・メフィストも人間だというのか・・!?」
ミリィが話を続けて、ハントもさらに驚く。
「はい・・調整されて、常人離れした能力を得たのが、私たちがメフィストと呼んでいる彼らです・・人間が、力で世界を制圧していたのです・・・」
「信じられん・・我々だけでなく、敵も全員人間だったとは・・・!」
デュオたちのことを語っていくミリィに、ハントが緊迫を募らせていく。
「しかしそれでは、私たちはヤツらに勝てないことになりますよ・・第一、倒したメフィストは、再生したことがあるのはほとんどいないわ・・」
「メフィスト全員が不死というわけではありません。不死となっているのは稀で、数えるほどしかいないそうです・・」
不安を覚えるシーマに、ミリィが答える。
「分かっているのは、私とシドだけ・・あと、メフィストのトップに君臨しているデュオという男も、不死の体の可能性が高いです・・」
「不死の体を持つ敵・・1人でもいると厄介だな・・」
ミリィが推測も込めて、ハントがデュオへの警戒心を強める。
「デュオは私たちが相手をします。アイツを止められれば、メフィストの戦力は大きく減るはずです・・」
「確かにそうだ。しかし相手は不死である上に、力もメフィスト1だろう。簡単にいく相手ではないぞ・・」
「分かっています・・私もシドも、それを分かった上で戦うつもりです・・・」
「覚悟はできているか・・シドだけでなく、君も・・・」
ミリィの強い意思を、ハントは聞き入れた。
「デュオも他のメフィストも人間です・・しかし、自分の目的のために他の人を傷付けて平気でいるなんて、許されることではない・・私たちが必ず、あの人たちを・・・」
デュオたちに対する怒りと、エリィに裏切られアンを守れなかった悲しみを抱えたまま、ミリィは部屋を後にした。
「シドくんもですが、ミリィさんも大丈夫でしょうか?・・精神の不安が著しいように思えます・・・」
「2人がこの不安を乗り越えると信じるしかない・・」
シーマがミリィたちを心配して、ハントが2人の立ち直りを待つことにした。
ディアスを倒され、ソルシエが負傷し、デュオたちは1度撤退した。自分の力を跳ね除けられたことに、デュオはいら立ちを感じていた。
「まさか私の力を脅かすとは・・・しかし私と志を同じくするなら、それも私の思惑通りだ・・・!」
デュオが野心をむき出しにして、笑みを浮かべる。
「でも、彼女とは交わりを持ったのでしょ?あなたの子供が生まれることになる・・」
ソルシエがデュオに近づいて微笑みかける。
「そうだ・・私は交わりによって、私の命と魂を分け与えてきた。私と意思を共にする者なら、同士だろうと、普通の人間だろうと・・」
自分の意思と力を同じくする存在を増やそうと画策して、デュオが期待を膨らませていく。
「デュオ様・・・」
そこへエリィがやってきて、デュオに当惑を見せてきた。
「アイツと・・ミリィとエッチをしたのは、ホントですか・・・!?」
エリィが不安を込めて、デュオに問いかけてきた。
「あぁ。彼女にも私の子孫の母体になってもらおうとね・・」
「そんな!?・・アイツと、結ばれるなんて・・・!?」
デュオが気さくに答えるが、エリィが絶望を覚えて頭を抱える。
「彼女だけではない。私の命を宿すのは、選ばれた女性たちだ。もちろんエリィ、君もその1人だ・・」
「デュ、デュオ様・・・」
デュオの投げかけた言葉に、エリィが戸惑いを感じていく。彼女に近づいて、デュオが優しく抱きしめてきた。
「これから君にも激しい刺激が駆け巡る。受け入れる準備はできているかな?」
「は、はい・・デュオ様が相手でしたら・・・!」
デュオが微笑んで、エリィが笑顔で答えた。2人が服を脱いで、改めて抱擁を交わす。
「本当に浮気がひどいわね、デュオは。でもそれも、これからの世界のことを思ってのことだからね・・」
ソルシエがため息をつく素振りを見せてから、笑顔を取り戻す。彼女はエリィがデュオに胸を揉まれて体を撫でまわされて心地よくなっていくのを見届けて、楽しんでいた。
自分の部屋に閉じこもっているシド。彼は悲しみや絶望を避けようとして、何も考えないようにしていた。
静寂に満ちているこの部屋のドアがノックされた。
「シド、入ってもいい?・・シド、いるのよね・・・?」
ミリィが部屋の外から声を掛けてきた。しかしシドは答えず、ふさぎ込んだまま顔を上げない。
「中に入るよ、シド・・・」
ミリィが断りを入れてから、ドアを開けて部屋に入った。
「シド・・・私も・・どんなことを言えばいいのか分からない・・・ありきたりな言葉を言っても、大きく変わらない気がする・・・」
ミリィが困惑しながら、シドに言葉を掛けていく。
「今の私ができるのは、シドの気の済むように付き合うことしか・・・」
「ミリィ・・・」
ミリィが自分の体を抱きしめて、シドが顔を上げた。
「アンは殺された・・だけど、それを認めたくない気持ちでいっぱいなんだ・・考えるだけでも苦痛になってくるんだ・・・!」
「シド・・・」
シドが自分の気持ちを正直に言って、ミリィが困惑を膨らませていく。
「オレには家族がいない・・妹のアンもいなくなった・・・もうオレには、ミリィ・・お前しかいない・・・!」
絶望に打ちひしがれていくシドが、ミリィに近づいてすがりついてきた。
「ミリィ・・お前のそばにいさせてくれ・・・何かにすがっていないと、どうかなってしまいそうだ・・・!」
シドが感情のままにミリィを抱きしめてきた。
(同じ・・エリィに裏切られたときの私と・・何にもなくなって、どうしたらいいのか分からなくなっている・・・)
ミリィがシドの心境を察して、戸惑いを感じていく。
「シドはあのとき、私のわがままを受け止めてくれた・・今度は私が、シドを受け止める・・・」
「すまない、ミリィ・・ありがとう・・・」
意を決したミリィに、シドが感謝する。彼は部屋のドアに鍵を掛けて、ミリィとともに服を脱いだ。
「ミリィ・・お前のあたたかさに触れると、気分が落ち着いてくる・・・」
「私も、シドに触れられると、心が安らいでくる・・・」
シドとミリィが抱擁の心地よさを分かち合う。2人は抱き合ったまま、床に横たわった。
シドはミリィを仰向けにすると、彼女の胸に手を当てて揉みだした。
「うっ・・・」
シドの手に触れられて、ミリィが気分をよくしてうめく。シドが彼女の胸をさらに撫でまわしていく。
「シド・・・もっと・・もっと触って・・・」
ミリィが触れられることを欲して、シドが彼女の胸の谷間に顔をうずめてきた。
「うあぁ・・・!」
シドの吐息が体に伝わり、ミリィが刺激を感じてあえぐ。
「気持ちいい・・気持ちがよくなっていく・・・!」
シドがミリィの胸から顔を上げて、吐息をつく。彼はさらにミリィの体を手で撫でまわしていく。
「出そうだ・・だんだん、込み上げてくる・・・!」
シドが恍惚を募らせて、呼吸を乱していく。
「いいよ、出しても・・ここにいるのは私たちだけだし、誰も入ってこれない・・・」
ミリィが微笑んで小さく頷く。
「私も、出そうになっているから・・・」
「そうか・・そこまでいうなら、我慢をする必要はないな・・・!」
ミリィの言葉を聞いて、シドが頷いた。2人が深く抱きしめ合い、恍惚を高めていく。
シドが恍惚に突き動かされるままに、性器から精液をあふれさせる。精液が彼自身とミリィの体にかかる。
「やはり、私たちは溜め込んでいたようね・・・」
ミリィが微笑んで、シドの性器を自分の胸の谷間に挟んだ。胸の感触を感じて恍惚を膨らませて、シドが性器からさらに精液を出していく。
「うっ・・・」
精液が顔にかかり、ミリィがうめく。シドが1度離れて、精液に濡れたミリィを見下ろす。
「ミリィ・・・」
「シド・・・また、入れてもいいよ・・・私とあなた・・1つになろう・・・」
戸惑いを募らせるシドに、ミリィが微笑んできた。シドが小さく頷いてから、性器をミリィの秘所に差し込んだ。
「うあぁ!・・あぁぁぁ・・・シ・・シドと・・1つに・・・!」
ミリィが声を張り上げながらも、シドと交わることを望む。
「ミリィの中の感触が、オレに伝わってくる・・・!」
シドも快感に溺れて呼吸を乱していく。彼が体を振って、ミリィも揺さぶられる。
ミリィの中に精液があふれてくる。精液と愛液が混じり合い、彼女の秘所からあふれてくる。
シドが交わったまま、ミリィを抱きしめる。2人が心地よさを感じながら床を転がって、今度はミリィが上になった。
シドがさらに体を振って、ミリィを揺さぶる。
「うぅ・・うわあぁっ!」
強い快感が駆け巡り、ミリィが体を起こす。刺激に耐えようと、彼女がたまらず自分の体を抱きしめる。
(どんどん出ようとしてくる・・まるで吸い出されるみたいに・・・!)
シドが恍惚を実感して、精液を絞り出していく。
「どんどん気分が高ぶっていく・・天にまで昇ってしまいそうな感じ・・・」
ミリィが喜んで、シドに向かって身を屈める。シドが手を伸ばして、ミリィの胸に手を当てて揉んでいく。
「オレもだ・・このまま、この気分の中に沈んでしまいたいくらいだ・・・」
シドが共感して、ミリィと笑みをこぼしていく。2人が深く抱きしめて、互いにぬくもりを感じていく。
シドがミリィから性器を抜いて、彼女と口付けを交わした。2人は舌を絡ませながら、高ぶっていた気分を落ち着かせていく。
「今回も、出すものをみんな出してしまったな・・・」
「うん・・イヤな気分を、全部吐き出してしまったみたい・・・」
シドとミリィが仰向けになってひと息つく。
「オレにはもうミリィしかいない・・オレから離れないでくれ・・・」
「シド・・・」
シドの口にした頼みに、ミリィが戸惑いを覚える。
「シドは完全無欠というわけじゃない・・1人で戦えたわけじゃない・・・今まではメフィストへの怒りと、復讐という目的にすがってきた・・心から安らげる時間と場所も求めてきた・・・」
ミリィがシドの心境を察して語っていく。
「あぁ・・アンが生きていてすごく嬉しかったけど・・・希望を見失って、どうしたらいいか分からなくなった・・・もしもお前がいなかったら、オレは自分を見失っていただろう・・・」
「私も・・・シドがいなかったら、生きていく希望を見失っていた・・シドに抱かれて、私は不安を和らげることができた・・・」
互いに感謝し合うシドとミリィ。2人は互いにすがることで、自分を保っていた。
「これからも一緒にいてくれ、ミリィ・・オレ、お前がいないと、気分が晴れない・・・」
「私も・・傷を舐め合っているように思われるかもしれないけど、そうするしかないから・・・」
「傷を舐め合う・・そうかもな・・オレたちはオレたちの弱さに押しつぶされないように、お互いに甘えている・・・」
「そうならないようにできる強さは、私たちにはない・・ううん、1人でいられると思い込むのは、本当の強さじゃない・・・」
シドとミリィが言葉を交わして、優しく抱き合う。
「ミリィ、これからもまた、こうして抱かせてくれ・・お前がそばにいると、オレは戦える・・」
「うん・・一緒に戦おう・・力を合わせて、心を1つにして・・・」
シドとミリィが決意を口にして、また口付けを交わした。
(オレたちは気持ちを1つにする・・たとえ人間だろうと怪物だろうと、メフィストや身勝手な敵を滅ぼす・・それが、オレたちの戦い・・・)
(私たちの生きる場所と時間を守る・・このひとときも、その場所と時間・・・)
2人が唇を重ねたまま、これからの自分たちの戦いを見据えていた。デュオとの対決の予感と共に。
デュオに抱擁されて、エリィは気分を高めていた。大の字の仰向けになっている彼女を見下ろして、デュオが笑みをこぼしていた。
「う・・嬉しい・・デュオ様とエッチができて・・・こんなに、気分がよくなって・・・」
エリィが声を振り絞り、デュオに目を向けて微笑む。
「これで君にも、私の命が宿った。もちろん、この1回きりで終わらせはしないけどね・・」
「本当に嬉しい・・デュオ様、ここまで親切にしてくださって・・・」
デュオが声を掛けて、エリィが幸せを感じていく。
「少ししたらシドたちにまた会いに行く。今度は君の出番もあるからね・・」
「分かりました・・デュオ様・・・」
デュオの呼びかけに、エリィが小さく頷いた。デュオが服を着て、エリィの前から去った。
「また1人、あなたの母体となったわね・・」
ソルシエがデュオのそばに現れて声を掛けてきた。
「そうだ。それもこれは実験も兼ねているんだよ。」
デュオが答えて、エリィのいるほうへ目を向ける。
「この私の命が、力のない人間に宿ってどうなるか。吉か凶かを確かめるのも一興かと・・」
「あなたもいろいろ考えるわね・・悪いことにならないように、祈らせてもらうわ・・」
好奇心を増していくデュオに、ソルシエが笑みをこぼした。
「デュオ、次は私のことを抱いてくれないかな?私も楽しみたいわ・・」
「そうだな。次の戦いの後でやろうか。」
お願いをするソルシエに頷くデュオ。
「シドもミリィも、私の思惑通りに動くことになるだろう。2人の本意、不本意に関わらず・・」
デュオが期待を膨らませて、笑い声を上げた。
シドとともに、そのまま彼の部屋で就寝していた。目を覚ました2人は、部屋を出てハントたちの前に現れた。
「シド、ミリィ、来たか・・」
「はい。もう大丈夫です、ハントさん・・」
ハントが声を掛けて、ミリィが答えた。
「以前に現れたメフィストのエネルギー値を分析して、広範囲で探索しました。」
「ポイント360にメフィストが集まっています!」
レイラとアルマがレーダーを見て、反応の位置を報告する。
「そこにメフィストが集まっているだろう。ヤツらの言いなりになっている各国の軍も・・」
ハントが口にした言葉に、ミリィが小さく頷いた。
「今まで以上の厳しい戦いになることは間違いない。命が惜しいと少しでも思う者は、戦線を離れることも考えてもらいたい・・」
ハントがシドたちに対して、警告を投げかけてきた。この言葉にシーマとアルマたちが息をのんだ。
「オレたちのメフィストを倒すという考えは変わらない・・そして死ぬつもりは毛頭ない・・・」
「メフィストを倒して、必ず生き残る・・それが私たちの戦いです・・」
シドとミリィが自分たちの意思をハントたちに伝えた。
「そういうことは他のヤツに言ってくれ・・」
「その必要はないですよ、シドさん!」
シドがハントに言ったところで、テルがやってきて声を掛けてきた。
「オレも戦います!そして必ず生きて帰ります!」
「テル・・・」
決意を口にするテルに、シドが戸惑いを覚える。
「オレの狩りはオレが決める・・シドが勝手に決めるな・・!」
ギギも現れて、シドに鋭い視線を向けてきた。続けてアロンとアマミ、他のアポストルたちも来た。
「オレもビビってるところがあるけど、ここで逃げたらマジのビビりになっちまう!」
「私も力を付けてきたんです!最後までやらせてください!」
アロンが勇気を振り絞り、アマミも頼み込んだ。他のアポストルも、メフィストから逃げようとは考えていなかった。
「分かった、みんな。メフィストを滅ぼし、真の自由を取り戻すぞ・・!」
ハントが檄を飛ばして、テルたちが笑みを浮かべた。
「進路、ポイント360!アルシュート、スピードを上げて!」
「了解!」
シーマが指示して、アルマが答える。アルシュートがデュオたちのいる場所を目指して、航行を続けた。
シドたちの接近を、デュオとソルシエは感じ取った。
「来たか・・」
「向こうも私たちの力を感じ取ったみたいね・・」
デュオが呟いて、ソルシエが微笑みかける。
「また各国に動いてもらおうか。敵わなくても足止めぐらいにはなるだろう。」
「その間に迎え撃つ準備をしましょう。エリィを向かわせないといけないし。」
デュオとソルシエが声を掛け合い、服を着て現れたエリィに目を向けた。
「君にも動いてもらうよ、エリィ。アルシュートに向うんだ。」
「はい、デュオ様・・・!」
デュオからの指示を受けて、エリィが微笑んだ。
(全てはデュオ様のため・・愚かな人間を正す希望は、デュオ様だけ・・・)
エリィがデュオへの想いを募らせて、彼と出会ったときのことを思い出していた。
「私たちがシドたちの相手をしている間に、君はグリムリーパーの船に乗り込むんだ。」
「はい・・」
デュオの指示を受けて、エリィが答えた。ソルシエとインバスがメフィストの姿になって、他のメフィストたちとともに飛び上がった。
「では、私も力を解放しようか・・久しぶりだから、うまく加減できればいいが・・・」
デュオが目を閉じて意識を集中する。彼の姿に変化が起こった。
ポイント360の近くまで移動したアルシュート。その先には森と山が広がる孤島があった。
「あの島にエネルギー反応があります!」
「あそこにメフィストの本拠地が・・・!」
レイラが報告して、シーマが緊張を膨らませていく。
「死にに行くようなマネはするな・・危険だと判断したら、遠慮なく撤退するんだ・・」
ハントが改めて、シドたちに注意を呼び掛けた。
「あのな、隊長・・今さら尻尾巻いて逃げるんだったら、最初からそうしてるって・・」
「そうですよ!メフィストを一気に叩く絶好のチャンスが目の前にあるんですから!」
ギギが肩を落として、アマミが意気込みを見せる。
「分かった・・ただしいきなり全員が出るのは危険だ。シド、ミリィ、ギギ、まずはお前たち3人が先陣を切れ。」
ハントがシドたちに第一陣を任せた。
「命ぜられなくても、オレは先に出るけどな・・・!」
ギギが笑みをこぼして、左手と握った右手を合わせる。
「他の者は指示があるまで待機だ。状況を見て出撃させる。」
「はい!」
ハントがさらに呼びかけて、テルたちが答えた。
「シド、ミリィ、ギギ、まずは頼むぞ・・」
「分かりました・・・!」
ハントの声に、ミリィが真剣な面持ちで答えた。彼女はシドとともにアルシュートの出入り口に向かう。
海中を進んでいたアルシュートが海上に浮上した。シド、ミリィ、ギギがアルシュートから出て、島に目を向ける。
「オレたちに気付いて、獲物がどんどん出てきやがるぜ・・!」
飛翔してきたメフィストの大群を見て、ギギが笑みをこぼす。
「けどな、オレの目的はあんなザコじゃねぇ・・この前の女だ!」
ギギがインバスへの逆襲を考えて、オーガを呼び出して中に入った。大きくジャンプした彼は、島の岸に着地して、上空のメフィストたちに目を向けた。
「シド・・・」
「あぁ・・メフィストを滅ぼす・・アイツを倒す・・!」
ミリィとシドが声を掛け合い、意識を集中する。
「オーガ!」
2人がそれぞれオーガを呼び出して、その中に入った。
「ウフフフ・・来たわね、あなたたち。」
ソルシエがシドたちを見下ろして笑みをこぼす。
「メフィストは滅ぼす・・ここでお前たちを叩き潰す・・・!」
「メフィストという呼び方は、愚かしい人間たちが勝手に付けたものなのだけどね。」
敵意を見せるシドに向けて、ソルシエの肩の上に現れたデュオが声をかけてきた。
「デュオ・・・!」
ミリィがデュオを見て、怒りを覚えて目つきを鋭くする。
「高みの見物ばかりというわけにはいかないからね。君たちに私の力を披露するとしよう・・」
デュオがシドたちに告げると、集中力を高めていく。彼の体から光があふれて、姿かたちが変化していく。
「もう1人、メフィストが出てきた・・・!」
テルがデュオの変化を見て息をのむ。デュオが巨大な異人へと変貌を遂げた。
「これが・・!?」
「そう。これが力を解放した私の姿だ。世界に逆らう愚か者よ。従わないならばこの世界から消えるがいい。」
ミリィが緊迫を覚えて、デュオが高らかに言い放つ。デュオが真の姿をシドたちの前に見せた。