Ogre SID
-死を背負いし剣-
第２３話「神聖 –真の統率者の力-」
シドたちの前に異形の姿を現したデュオ。シドとミリィがデュオの潜在能力を感じて、息をのむ。
「あれがデュオの変身・・ただ変身しただけなのに、ものすごい圧力がかかっている気がする・・・」
ミリィがデュオに対して緊迫を募らせていく。
「ミリィとシドは感じているようだね。私の力を・・」
デュオがシドたちを見下ろして笑みをこぼす。
「ちょっと待て、テメェ！オレがいることを忘れてんじゃねぇぞ！」
ギギがいら立ちを見せて、デュオに怒鳴りかかる。
「オレの力を、お前に思い知らせてやる！」
ギギが大きくジャンプして、デュオに向かっていく。
「私の力を感じ取ることもできない愚か者が・・・」
デュオがため息をついて、右手を軽く動かした。ギギが振りかぶった右腕に、切り傷が付けられた。
「うぐっ！」
ギギが腕から鮮血をあふれさせて、激痛を覚えて体勢を崩す。
「愚か者は、自分と相手の実力差を把握しようとしない・・」
「お、おのれ、メフィストが・・！」
呟くように言うデュオを睨むギギが、落下して地上に叩きつけられた。
「相手の力を感じ取ることもできないようでは、私の相手が務まるはずもない。」
デュオは吐き捨てて、シドたちに視線を戻す。
「シド、ミリィ、君たちの合わさった力が私に通じるかどうか、試してみるかな？」
「お前・・お前のように自惚れているヤツは許してはおかない・・・！」
不敵な笑みを見せるデュオに、シドが鋭い視線を向ける。
「自惚れではないよ。自分の力を自己評価しているに過ぎない。」
「それが自惚れだというんだ！どこまでも思い上がって！」
悠然とした態度を崩さないデュオに、シドが怒号を放つ。
「君は力量が分かっているはずだけど・・怒りに囚われているのが原因か・・」
またため息をついたデュオに、シドが飛びかかる。彼が繰り出す拳を、デュオは軽々とかわす。
デュオが目を見開いて、衝撃波を放つ。
「うっ！」
シドが強い圧力を受けて押されるが、空中で踏みとどまる。
「まだこれは力の一端だぞ。これからもっと見せていくことになるぞ。」
デュオが微笑んで、音を立てずに移動する。彼はシドの懐に飛び込み、手を当てて衝撃波を放った。
シドがまた突き飛ばされて、地上の岩場に叩き落とされた。
「シド！」
ミリィが叫んで、シドに駆け寄ろうとした。彼女の前にソルシエが立ちはだかった。
「私も運動させてもらうわね。手伝ってくれるかな？」
「邪魔をしないで！」
微笑みかけるソルシエに、ミリィが念力を放つ。ソルシエも念じて、ミリィの力に対抗する。
「その間に、私たちはあっちを攻めに行くわよ。」
インバスが他のメフィストたちを引きつれて、アルシュートに向っていく。
「テルたちも出撃だ！メフィストをアルシュートに近づけさせるな！」
「はい！」
ハントが指示を出して、テルたちが答える。彼らもアルシュートから出て、呼び出したオーガと一体化した。
「シドさんだって全力で戦っているんだ・・オレもやってやる！」
テルが意気込みを見せて、アルシュートから陸地に飛び移る。アロンとアマミたちも彼に続く。
降下するメフィストたちを、テルたちが飛び上がって迎え撃つ。オーガとの融合をしている彼らを前にして、メフィストたちはアルシュートに近づくことができなくなる。
「何時になく威勢がいいわね。そこの彼は私が相手をするわ。」
インバスがテルに目を向けて降下していく。
「シドさんとミリィさんはあの２人を何とかしてくれる・・オレはアンタを倒す！」
「ウフフフ。ムリな話よ。あなたが私に勝とうなんて・・」
言い放つテルをあざ笑うインバス。
「そしてそれ以上に、デュオを倒すことなんて不可能よ。たとえあの２人でもね。」
「そんなことはない！２人が力を合わせるとすごいんだから！」
話を続けるインバスに言い返して、テルが飛びかかって握りしめた右手を振りかざした。彼の拳をインバスが軽い身のこなしでかわす。
「デュオの力は別格よ。あなたたちはもちろん、私たちも彼とは天地の差があるのよ・・」
インバスが顔から笑みを消して、右手を振りかざして突風を放つ。吹き飛ばされるテルだが、宙で体勢を整えて着地する。
「風か・・そういう力には負けないぞ！」
テルが再びインバスに向かっていく。インバスが背中から翼を生やして、はばたかせて突風を放つ。
テルが集中力を高めて、重力を発して突風を止めた。
「これは、風ではない・・圧力・・重力を操るというの・・・!?」
彼の能力を目の当たりにして、インバスが緊張を覚える。
「その力、私を相手にどこまで使いこなせるかしらね・・！」
インバスが笑みをこぼして、羽根の矢を連射する。テルが重力を操り、飛んできた羽根を全て弾き飛ばした。
テルはさらに重力を操り、インバスの動きを押さえた。
「動けない・・・私が、デュオやソルシエ、ディアス以外に押さえつけられるなんて・・!?」
インバスが重力から抜け出せず、緊迫を募らせる。
「このままお前を押しつぶしてやるぞ・・・！」
テルが集中力を高めて、インバスにさらに重力を掛ける。インバスも目を閉じて、自分の周囲に風を巻き起こす。
「まだ完全に力を使いこなしているとは言い難いわね・・・！」
インバスが全身から突風を起こして、テルの重力を跳ね除けた。
「強い・・！」
「次はあなたが、私の本気を受ける番よ・・」
緊張を覚えるテルに、インバスが微笑みかける。彼女が再び羽根の矢を連射する。
テルが重力の衝撃波を出して、羽根をはじき飛ばそうとするが、羽根の数本が重力を突き抜けて、彼の体に刺さった。
「うっ！」
テルが痛みを覚えて顔を歪める。インバスの風と羽根の貫通力が、テルの重力を上回った。
「少しはやるようだけど、相手が悪かったと言っておくわ・・」
負傷したテルに微笑んで、インバスが追撃を繰り出す。そこへアマミが飛び込んで、手を振りかざして爪で羽根を弾いた。
「アマミちゃん！」
「私も加勢するよ。１対１の勝負をする必要はないからね。」
テルが声を上げて、アマミが彼に向けて微笑む。
「オレだってやれるんだからなー！」
アロンも飛び出して、空高くジャンプして、インバスに向かって急降下してきた。
「あのオーガの仲間ね・・私に敵うかしら？」
アロンを見て微笑むインバス。彼女が翼を広げて、上空へ上がる。
「あなたたち３人まとめてなら、いい勝負になりそうね・・・！」
「甘く見ないでよ！私たちだってやれるんだから！」
手招きをしてくるインバスに、アマミが感情を込めて言い放った。
他のアポストルたちもオーガを呼び出して、メフィストと交戦していた。その隙を狙い、エリィがアルシュートに近づいていた。
（アポストル全員が外へ出たわね。それでもハントたちのように軍に所属していたヤツもいる・・用心に用心を重ねないとねぇ・・・）
エリィが注意力を高めて、アポストルたちに気付かれないようにアルシュートに侵入した。
（アルシュートの構造はあたしも理解してる・・監視カメラの位置もね・・）
エリィが笑みをこぼして、アルシュートの廊下を進んでいく。カメラの位置を把握していた彼女は、監視の死角を縫って進んでいた。
そしてその死角の隙に、エリィは爆弾を仕掛けていった。大きくはないが、爆発力の高い爆弾である。
（これでアルシュートは撃沈。母艦を失ったグリムリーパーは崩壊することになる・・）
作戦の成功を確信して、エリィが笑みをこぼした。
「動かないで！」
そこへ声がかかり、エリィが緊迫を覚える。シーマが銃を手にして、彼女に銃口を向けていた。
「私たちの敵の中で、私たちのことを１番よく知っているのはあなた・・直接乗り込んで暗躍する可能性は十分にありました・・」
シーマがエリィに向けて冷静に告げる。
「監視カメラの一部の配置場所は変えさせてもらったわ。あなたの姿は既に捉えられていたのよ。」
「過信してたってことね・・だけどもうこっちの作戦は半分成功したようなものよ！」
シーマの話を聞いても、エリィは笑みを絶やさない。
「爆弾はいくつかセットしてるのよ。デュオ様たちと戦いながら、爆弾を全部外れるかしらね。」
エリィはあざ笑うと、銃を取り出して発砲してきた。シーマが物陰に隠れて射撃をかわして、反撃を仕掛ける。
「うっ！」
射撃が右腕をかすめて、エリィが痛みを覚える。
「私は軍に所属していたことがある。本気の訓練を受けていないあなたでは敵わないわ。」
シーマがエリィに忠告すると、エリィに狙いを定める。
「投降して、銃と爆弾を渡しなさい。そうすればこれ以上負傷することはないわ・・・！」
「アンタたちに屈することはないよ・・あたしが従うのはデュオ様だけ・・たとえ死んでも、デュオ様の命令には絶対に従う！」
シーマの言葉を聞かずに、エリィが銃を撃つシーマが反撃して、エリィの手から銃を弾き飛ばした。
「くっ・・！」
エリィは毒づきながら、シーマから離れていった。
「シーマさん！」
グリムリーパー所属の男女が、それぞれ銃を持って駆けつけてきた。
「大丈夫ですか、シーマさん!?」
「私は大丈夫よ。それよりも、アルシュートに爆弾を仕掛けられたわ・・」
青年の心配に答えて、シーマが状況を話す。
「あなたたち５人はアルシュートの出入り口で待機。外の敵を中に入れないように。」
「はいっ！」
シーマの指示に男女が答える。
「残りは爆弾を探して解除すること。エリィがまだ潜んでいるから、注意するように。」
「了解！」
シーマは他の男女とともに、エリィの仕掛けた爆弾を探しに向かった。
（シドくんたちも戦っている・・私たちも戦わなくては・・・！）
シーマは必ずアルシュートを守り抜く決意を強めていた。
デュオが次々に繰り出す衝撃波に、シドは一方的に痛めつけられていた。
「やはりお前１人では相手にならない。まずはミリィと融合しなければな・・」
デュオがシドを見下ろしてため息をつく。
「どこまでも思い上がる・・許しはしない！」
シドが怒りを膨らませて、デュオに飛びかかる。デュオが左手をかざして、念力でシドを束縛する。
動きを封じられたシドがもがくが、デュオによって動かされて飛ばされる。
「キャッ！」
シドをぶつけられて、ミリィが悲鳴を上げる。
「シド・・大丈夫・・!?」
ミリィがシドを支えて、心配の声を掛ける。
「オレたちが１つにならないと、アイツに勝てないというのか・・・!?」
シドが悔しさを感じて、手を強く握りしめる。
「融合してもあなたたちに勝ち目はないわよ。ただ少しいい勝負になるだけの話・・」
「何だとっ・・!?」
ソルシエが微笑んで、シドが怒りを募らせる。
「それが本当かどうか、確かめさせてもらうわ・・・！」
ミリィがソルシエに言い返して、デュオに視線を移す。
「シド、力を合わせよう・・・！」
「あぁ・・・！」
ミリィが声を掛けて、シドが頷いた。２人が意識を集中して、オーガが融合を果たした。
「今度こそお前を倒す・・お前たちの思い通りに、オレたちは絶対にならない・・！」
「君たちは既に、私の手のひらの上で踊っているよ。」
敵意を向けるシドだが、デュオは悠然とした態度を崩さない。
「いつまでも思い上がれると思うな！」
シドが怒号を放ち、オーガがデュオに向かっていく。デュオが左手をかざして念力を放つが、オーガはものともせずに前進する。
笑みをこぼしたデュオがオーガを迎え撃つ。オーガが繰り出す拳を、デュオは軽々とかわしていく。
「先程よりは格段にレベルアップしているが、まだ私には及ばないようだ。」
デュオがオーガの力を確かめていく。シドが激情を高めて、オーガがデュオの左腕をつかんだ。
「相手を捕まえればよけられないというところだけど・・」
デュオは笑みを絶やさずに、右手を出してオーガの体に突き刺した。
「うっ！」
シドとミリィが激痛を覚えて、オーガが負傷したのと同じ個所から血をあふれさせた。
「それは捕まえているほうにも言えることだよ・・」
デュオが囁いてから、オーガから手を引き抜いた。
「普通だったらこれが決定打になっているけど、君たちの体ならすぐに治るはずだ。」
デュオがオーガを見つめて悠然と告げる。シドとミリィ、オーガの傷が消えて、痛みも和らいだ。
「不死の体がすばらしいと、君たちも理解しているはずだ。それは世界を動かせるだけの力を備えていることと同じ意味を持っている。」
「だからお前たちの言いなりになれとでもいうのか!?・・どこまでも思い上がって・・・！」
淡々と語っていくデュオに、シドが怒りに打ち震える。
「君にとっても悪い話ではないよ。君が憎んでいるこの愚かしい世界を、正しく導く側に就くのだから。」
「黙れ！オレはお前たちとは違う！自己満足のためだけに、関係のない人を苦しめて、それが正しいことだと自惚れる愚か者にはならない！」
手招きをするデュオだが、シドが頑なに彼の誘いを拒む。
「私も、そんな人にはならないわ・・！」
ミリィもデュオの意思を拒絶する。デュオに逆らう意思は、シドもミリィも同じだった。
「お前たちがそう思い込んでも、お前たちは私の思惑通りの行動を起こすさ・・」
デュオは悠然さを消さずに右手を軽く上げた。オーガの周りに大きな光の刃が大量に現れた。
ミリィが集中力を高めて、オーガが念力を放つ。デュオが放った光の刃を、オーガが食い止める。
しかし光の刃の数本が、オーガの体に突き刺さり貫いた。
「ぐっ！」
シドとミリィが激痛を覚えて顔を歪める。複数の刃に貫かれたことにより、オーガは体の自由を封じられた。
「不死だからといって、それだけでは無敵というわけではない。何もできなければ、死ぬよりも地獄というものだ。」
デュオがオーガを見下ろして、満足げに頷く。
「この地獄、オレたちはお前たちに何度も味わわされてきた・・今度はお前たちが、地獄に落ちる番だ！」
シドが怒号を放ち、オーガが無理矢理体を動かす。光の刃のうちの５本は跳ね除けたオーガだが、残りの刃に体を切られていく。
それでもオーガはとどまらずに、デュオに向かっていく。その体が刃に切られて、上半身と下半身に両断された。
普通なら致命傷のはずだった。しかしシドとミリィの融合したオーガの体は、すぐにくっついて再生した。
「そのような強引さで束縛を抜け出すとは・・不死の体だからこそ成せる業か・・」
オーガを見つめて、デュオが不死について改めて確かめて笑みをこぼした。
「死ぬほど痛いけど・・あなたを討つためなら・・・！」
ミリィが痛みに耐えながら、デュオへの怒りを膨らませていく。
「そこまで私を憎むか・・しかしこの愚かしい現実を作り出したのは、これまで世界を陰から動かしてきた愚か者たちだ・・」
シドたちの怒りを心外に感じていくデュオ。
「お前たちも、自惚れている愚か者たちにも憎しみを抱いているだろうに・・」
「私たちの敵である愚か者の中に、あなたも含まれているのよ・・・！」
デュオの投げかける言葉を否定するミリィ。
「何度も言わせるな・・オレたちは、お前たちの思い通りにはならない！」
シドが怒りを募らせ、オーガが剣を具現化してデュオに飛びかかる。デュオが振り下ろされた剣をかわして、その場の空間が切り裂かれたのを目撃する。
「空間さえも突破する。そこまで力を上げてきているか・・」
シドとミリィの力の高まりに感心していくデュオ。
「しかし空間への干渉は、既に私は自在に行えるようになっている。」
デュオがオーガのそばから突然姿を消した。シドとミリィが視線を移して、デュオの行方を追う。
次の瞬間、オーガの体から手から飛び出してきた。手に体を破られて、オーガがシド、ミリィとともに目を見開いた。
「これは、ヤツの手!?・・なぜヤツの手が、オレたちから・・!?」
「まさか、空間を超えて、私たちのオーガの中から・・!?」
シドが驚愕して、ミリィがデュオの位置を推測する。オーガの体を突き破り、デュオが出てきた。
「その通り。相手の中にワープして、そこから破壊することも可能だ。」
デュオが答えて、落下していくオーガを見下ろす。鮮血をあふれさせるオーガだが、再び再生して踏みとどまった。
「己の高まっている力をより自在に操れる私の方が上。私がお前たちを翻弄しているのが証拠だ。」
「コイツ・・！」
「覆したければ、もっと力を発揮することだね。今まで進化を繰り返してきたように。」
「お前！」
挑発してくるデュオに激高するシド。オーガが構えた剣に力を込めていく。
「デュオ！」
ミリィも叫んで、オーガが剣を振りかざして光の刃を飛ばした。デュオが横に動いて回避した。
その直後、光の刃の飛んだ軌跡の空間が歪み、デュオにも揺さぶりが掛かった。
「この力にも、空間を揺さぶる効果が・・!?」
デュオが全身から力を発して、空間の歪みに引きずり込まれないように耐える。
「引力が強い・・今までよりも大きく力を上げてきたか・・・」
ブラックホールのように周囲を吸い込もうとする歪みに、デュオが毒づく。近くにいたメフィスト数体が、歪みの穴に吸い込まれていった。
オーガが力を込めて、さらに剣を振りかざして光の刃を連射していく。デュオが回避していくが、空間が次々に歪んでいく。
「これ以上空間が崩壊したら、世界そのものが耐えられなくなって崩壊してしまうわね・・」
ソルシエが歪みの広がりを目の当たりにして、苦笑いを浮かべる。
「シドさん、ミリィさん、空の様子がおかしいです！」
テルが呼びかけて、シドとミリィが我に返る。２人も歪みによって空間が揺れ動いているのを目の当たりにする。
「オレたちの力が、ここまでやったのか・・・!?」
「うまく力を使わないと、私たちごと世界を押しつぶしてしまうことになる・・・！」
シドとミリィが自分たちの力がもたらす脅威を痛感する。
「お前たちの力も、この世界を震撼させるほどの高さまで来ている。つまり、君たちもこの世界を動かせるのだよ。」
デュオがシドたちに感心の素振りを見せる。
「ふざけるな！オレはお前たちのような、自分たちが正しいと思い上がるヤツにはならない！」
シドが言い返し、オーガが剣を構えてデュオに飛びかかる。
「今度は直接私を切りに来たか・・」
デュオが呟いて、両手に力を集めて、オーガが振り下ろした剣を挟み込んだ。
「し、真剣白刃取り!?」
「空間をも切り裂くシドさんたちの剣を受け止めるなんて・・!?」
アマミとテルがデュオのした行為に驚愕する。空間の断裂にも襲われたように見えたデュオだが、彼の手からも強い衝撃が放たれて、オーガの剣の威力を相殺させていた。
「空間を操れるのは、お前たちだけでないことを忘れたのかな？」
デュオが手の力を上げて、オーガの一閃を完全に止めた。
「何だとっ!?・・ぐあっ！」
シドが驚愕の声を上げると、デュオの放った衝撃波にオーガが吹き飛ばされて、剣を手放してしまう。
「不死の体を滅ぼすには、細胞１つ残さず、完全に消滅させること。お前たちよりも私のほうが可能性が高い・・」
デュオが顔から笑みを消して、オーガに向けて右手をかざした。
「この姿になった私の本気を出すときが来たということか・・」
呟いた彼の手に、稲妻を帯びた光が現れて濃くなっていく。
「この力で吹き飛ばされて、最後まで生き残れるかな・・？」
デュオがオーガに向かって急降下していく。
「受ければ吹き飛ばされる・・・！」
ミリィがデュオの力に脅威を覚えて、オーガが回避行動をとる。しかしデュオは瞬間移動でオーガの後ろに回り込んでいた。
「逃げられはしないよ・・・」
デュオが低く告げると、右手の光を大きくした。光に触れたオーガの左手が、塵になって消えていく。
オーガがとっさに光から離れようとするが、光に追いつかれ、体を分解されていく。
「早く離れないと、私たちは消えてしまう・・元に戻れなくなる・・・！」
緊迫を募らせるミリィが、シドとともに集中力を高める。しかしオーガが回避しきれず、肉体が崩壊していく。
「オレは・・オレたちは・・こんなところで、消えるわけには・・・！」
シドが怒りを膨らませて、光に抗おうとする。オーガの姿が光の前から消えた。
「これが不死の最大の弱点。完全消滅すれば、復活することはできない・・」
光と共にオーガが消えたのを確かめて、デュオが笑みを浮かべた。
「そ、そんな!?・・シドさん、ミリィさん・・・!?」
テルがオーガが消えたことに目を疑い、動揺を隠せなくなる。
「シドさーん！ミリィさーん！」
テルがシドたちに向けて悲痛の叫びを上げた。
爆弾の回収とともに、エリィの行方を追っていたグリムリーパーの面々。エリィは見つからないように動いて、アルシュートから出ようとしていた。
（もう少しでアルシュートが爆発する・・・私は死ぬわけにいかない・・デュオ様のために・・デュオ様から与えられた命のために・・・）
生き延びることに躍起になるエリィ。彼女は入口にグリムリーパーの男女が見張っているのを目にする。
（不意を突けばそこの全員を仕留められる・・爆発する前に、絶対にここから出てやるんだから・・・！）
デュオへの忠誠心と生き残ろうとする意思に突き動かされていくエリィ。彼女はグリムリーパーの面々の排除という野心を強めていた。