Ogre SID

-死を背負いし剣-

第18話「心身 –怒りと悲しみの交わり-

 

 

 エリィと離れ離れになって絶望を膨らましたミリィ。深く苦悩した彼女の髪が、突然白くなった。

「どういうことなの!?・・どうして、私の髪が・・・!?

 今の自分の異変が理解できず、ミリィが困惑するばかりになっていた。

「ミリィさん、オレ、これから食べ物を取ってきま・・す・・よ・・・」

 テルがミリィに声を掛けてきた。そのとき、テルが変わり果てたミリィを目の当たりにして、言葉を詰まらせた。

「テルくん・・・私・・・!」

 ミリィが体を震わせて、テルも動揺を膨らませる。

「髪が白くなってる・・シドさんのように・・・!」

 ミリィがシドのことを思い出して、複雑な気分を感じていた。

(シドさんと同じ・・でも私、シドさんのことを・・・)

 エリィを思うあまりにシドと対立してしまった自分を責めるミリィ。

(でも信じたくはなかった・・エリィが、私たちを騙していたなんて・・・!)

 心の整理が付けられなくて、ミリィは絶望と悲しみから抜け出せないでいた。

 

 メフィストの襲撃から逃れるため、ハントたちはアルシュートに乗って航行していた。アルマとレイラは離れ離れになっているシドや他のアポストルたちの行方を追っていた。

「ダメです・・行方不明になっているアポストルの誰の居場所もつかめません・・」

「センサー捜索をしたほうが見つけやすいですが、メフィストに見つかりやすくなる危険も出てきます・・」

 アルマが報告をして、レイラが深刻さを浮かべる。

「近くにいるなら探知がしやすいけど、海の真ん中に隠れ潜んでいる可能性は低いわね・・」

「向こうとの距離がうまく縮まるのを願うしかない・・まずは我々は十分に休息を取り、体勢を整える必要がある・・」

 シーマとハントが答えて、シドたちとうまく合流できるように願っていた。

 

 放棄されたグレイブヤードをデュオ、ソルシエ、エリィは見回していた。ハントたちがグリムリーパーに関するデータを収集し、グレイブヤードに残ったデータを全て削除していた。

「すみません、デュオ様・・シドたちのことばかりに集中してて・・」

 エリィがデュオに謝って頭を下げる。

「気にしなくていいよ、エリィ。このくらいのほうが楽しめるからね。」

 デュオが微笑んで答えて、さらにグレイブヤードの中を見回していく。

「本当にもう何もないわね。自分たちのいた痕跡を全部消して出てったのね・・」

 ソルシエがグリムリーパーの手がかりがつかめなくて、ため息をついた。

「でもこれで彼らはしばらくは表立って動けないわね。少しの間、退屈になりそう・・」

「そうなるかどうかは、岸間シドたち次第かな。あの性格だと、長い時間おとなしくしているとは思えないね。」

 互いに微笑を見せ合うソルシエとデュオ。

「デュオ様、マブナ隊長があなたのご命令を待っているのですが・・」

 通信を聞いたエリィが、デュオに報告する。

「一応話をしておかないとね。彼らの戦いも、ここの人間たちを追いこめた勝因の1つなのだから。」

「戻りましょうか。ここにいても何もなさそうだし・・」

 デュオが頷いて、ソルシエとともに歩き出す。エリィも2人についていって、グレイブヤードを後にした。

 

 自分の白くなった髪をシドにも見せたミリィ。彼女の変化にシドも一瞬目を疑った。

「どういうことでしょうか?・・いきなり髪が白くなるなんて・・・」

 テルがミリィの髪を見つめて、疑問を感じていく。

「人はショックが大きすぎると、髪の毛が白くなるって聞いたことがあるけど・・」

 考え事をしてから、テルがシドに目を向ける。

「オレも昔は髪は黒だった。初めてメフィストに襲われたときに白くなった・・ショックで白くなるなら、それはそのときだろうな・・」

「シドさんも・・・」

 シドが自分のことを話して、テルが頷いた。

「エリィに裏切られたショックが強すぎて、それが原因で・・・」

 テルがミリィに聞こえないように、シドに小声で言いかける。

「エリィがオレたちを騙していたのは許せないですが、ミリィさんにとっては家族同然の仲間だったんです・・敵だってことをどうしても受け入れられなくて・・」

「だとしても、アイツがオレの敵に回るなら、オレはアイツもメフィストとともに叩きつぶす・・それでミリィがアイツを庇ってオレと戦おうとするなら、ミリィとも・・・!」

 ミリィの心境を察するテルだが、シドは自分の考えを変えない。

「メフィストが許せないのは、オレも同じだ・・だけどシドさん、あなたはその気持ちが強すぎて、人の心が失われてるような気が・・・」

「そうかもしれない・・メフィストを滅ぼせるなら、そうなってもオレは構わない・・だけどオレは、メフィストや愚かな連中と同じにはならない・・自分たちの目的で、何も悪くないヤツが虐げられるのは我慢がならない・・・!」

 心配するテルに、シドが正直な考えを口にする。メフィストへの怒りがシドを動かす原動力になっていると、テルは改めて思い知った。

「エリィも、愚かな1人だというつもりですか・・・?」

 ミリィが声を振り絞って、シドに問い詰める。

「お前も、愚か者の1人になってしまうのかよ・・・!?

「エリィを一方的に悪いと決めつけてしまう方が、ずっと愚かよ・・・!」

 互いに怒りと鋭い視線を向け合うシドとミリィ。

「どうしてそこまでアイツに入れ込む?・・アイツしか、エスポランスとしての仲間や家族がいないからか・・?」

 シドが落ち着きを取り戻そうとしながら、ミリィに問いかける。ミリィが悲しい顔を浮かべて、シドにゆっくりと近づいていく。

「私にはお父様もお母様もいない・・エリィまでいなくなったら、私はひとりぼっちになってしまう・・エスポランス家は、私しかいなくなってしまう・・・!」

 自分の気持ちを正直に言うミリィ。強まる悲しみと絶望に押しつぶされたくないと、彼女はエリィへの思いにすがっていた。

「私にも分かっていたの・・エリィに騙されて、裏切られたって・・・でも、それをどうしても認めることができなかった・・認めたら、どうしたらいいのか分からなると思って・・・」

 ミリィは本当の気持ちをシドとテルに打ち明けた。

「本当は口にもしたくなかった・・本当のことだと認めてしまうことに・・信じようとしたことがウソになってしまうことになってしまうって・・・」

「ミリィさん・・・」

 苦悩を深めていくミリィに、テルも困惑していく。

「もうイヤです・・私、こんなムチャクチャな現実で生きていたくない・・・!」

「おい・・何を言って・・・」

 ふさぎ込んでいくミリィに、シドが言い返す。するとミリィがシドにすがりついてきた。

「お願いです、シドさん・・あなたを、抱かせてください・・・」

「お前・・いきなり何を言い出すんだ・・・!?

 ミリィの言ってきたことに、シドが疑問と警戒を覚える。

「家族もエリィもいない・・今の私がすがれるのは、あなたしかいない・・・」

「いい加減にしろよ、お前・・そんなことでオレを振り回すつもりか・・・!?

「そう・・これは私のわがまま・・不満を持たれても仕方のないこと・・・それでも、そうでもしないと私、どうかなってしまいそうで・・・」

「だからってこんなこと・・・無理やりやってくるなら、オレはお前を叩き潰すことになるぞ・・・!」

「それでもいい・・どうしても許せないなら、私を殺してくれても構わない・・こんな辛い気分をいつまでも抱えていくくらいなら、死んでも構わない・・・!」

 シドの怒りを受ける覚悟で、ミリィは彼にすがりつこうとする。

「お前、死ぬことも考えているのか・・・!?

 シドがミリィの考えに不満を感じていく。

「死ぬなんて考えるのも許さないぞ・・死んだらそこで全てが終わることになる・・悪いことや許せないことを受け入れることにもなるんだぞ・・・!」

「それでも、辛くて逃げたくてたまんないのよ・・・!」

 シドが咎めると、ミリィがさらに感情をあらわにしていく。

「どんな人でも、独りでは生きていけないのよ・・誰だって、何かすがっているものがあるのよ・・!」

「・・・オレも、何かにすがっている・・・!?

 ミリィの口にした言葉を聞いて、シドが困惑する。

(オレもオレの怒り、メフィストを滅ぼすという目的を生きがいにしてきた・・それにすがっていたと言っても、間違いじゃない・・)

 自分の考えと今までの戦いを思い返して、シドはミリィの言葉を受け入れた。

「そうだな・・オレも、そんなものがある・・それがないと、オレがオレでなくなる・・・」

 シドが納得して、ミリィを抱き寄せた。彼からの抱擁に、ミリィが戸惑いを感じていく。

「テル、オレたちはあそこの洞窟の奥に行く・・オレたちが出てくるまで、奥には入ってくるな・・」

 シドがテルに目を向けて呼びかけてきた。

「でもシドさん、あなたとミリィさんだけじゃ・・・」

「コイツをおとなしくさせるには、コイツの納得する形を取るか、コイツを殺すしかない・・しかし、死のうとしているヤツを殺しても、そいつの思い通りになって、納得がいかない・・・」

 心配するテルに、シドが語りかける。

「だからミリィの気の済むようにする・・オレがどうかならない程度にな・・・」

「シドさん・・・何かあったら、声掛けぐらいはしますよ・・そのくらいはさせてください・・・」

 ミリィの願いを受け入れるシドへの戸惑いを募らせて、テルが聞き入れながらも自分の考えを伝えた。

「分かった・・すまないな・・・」

 シドは答えてから、ミリィを連れて洞窟の中に入った。

(シドさんが・・あんな返事をしてくるなんて・・・!)

 シドからの謝意が意外で、テルは動揺を隠せなくなった。

 

 シドに連れられて洞窟の中に入ったミリィ。外の光が差し込みにくい洞窟の奥で、2人は横たわった。

「お前と何かあって、どういうことになっても、オレは責任は取らないぞ・・」

「分かっています・・責任は全て、私が取るつもりです・・」

 忠告してくるシドに、ミリィが覚悟を見せる。

「だったら気が済むようにしてくれ・・オレが苦痛にならない程度にな・・・」

「それは分からないですが・・」

 ため息まじりに言うシドに、ミリィが不安を感じながら答える。

「では、いきます・・・」

 ミリィは気を落ち着けてから、着ていた服を脱ぐ。そして仰向けになっているシドの上着を脱がした。

 上半身をさらけ出したミリィが、シドに寄り添ってきた。彼女の胸が直接シドの体に当たる。

 この接触にシドが動揺を覚える。ミリィの柔らかくてあたたかい胸の感触に、シドは心を動かされていた。

(何だ、この感じ・・女の体に触れて、こんなに落ち着かなくなるものなのか・・・!?

 心の中で呟いて、シドが息を乱し始める。ミリィが彼の手を取って、自分の胸に当てた。

「あ・・あはぁ・・・」

 ミリィが快感を覚えて声をもらす。彼女はシドの手で自分の胸を撫でまわしていく。

(どんどん落ち着かなくなっていく・・イヤなことをしている、されているというのに・・気分がイヤにならない・・・)

 ミリィの胸の感触を実感して、シドが動揺を膨らませていく。彼が今まで感じたことのない感覚だった。

 ミリィがシドに顔を近づけて、唇を重ねた。口付けを交わされても、シドは不快には感じなかった。

 さらに呼吸を乱していくシドとミリィ。ミリィのぬくもりに、シドは心を揺さぶられていた。

「あっ・・・」

 そのとき、ミリィはシドの股間に触れて戸惑いを感じていく。

「シドさん・・すっかり反応している・・・」

 ミリィも快感を感じて、下着も脱いでいく。一糸まとわぬ姿になった彼女が、シドに再び寄り添う。

 ミリィが自分の胸にシドの顔をうずめさせる。

(あたたかいぬくもり・・こんなに密着しているのに、悪い気がしてこない・・・)

 ミリィとの抱擁による高揚感に引き込まれていくシド。この高まる心地よさを、彼は抑えられなくなっていた。

(我慢ができない・・オレ自身の体なのに・・・!)

 込み上げてくる快感に突き動かされて、シドがミリィの胸から顔を離して、大きく深呼吸をする。シドは直後にミリィを強く抱きしめてきた。

「シ、シドさん・・・!」

 シドからの抱擁に、ミリィは戸惑いを募らせていく。

(シドさんも・・性欲が増してきているの・・・!?

 シドの心境を察して、ミリィが彼の履いているズボンに手を掛けた。

「お、おい・・そこまでやるつもりじゃ・・・!?

 動揺を募らせるシドが、ミリィにズボンを脱がされる。

「やはりすごく反応していますね・・でも今は遠慮しなくていいです・・・」

 ミリィが微笑んで、シドとまた抱擁を交わす。彼女とともに全裸での抱擁をして、シドが呼吸を荒くしていく。

「な、何だ・・股間が落ち着かない・・漏れてしまいそうな・・・!」

 シドが落ち着かなくなり、下半身を震わせる。そのはずみで彼の性器がミリィの下半身に当たる。

「興奮が大きくなって、精液が出ようとしているんですね・・ここなら出してもいいです・・・!」

「し、しかし・・・!」

 ミリィが語りかけて、シドが声を荒げる。

「いっそのこと、あなたのそれを私に入れてもいい・・もっともっと興奮して、イヤな気持ちを押さえつけたいの・・・!」

 深い抱擁をシドに求めるミリィ。

「そこまでやれば、本当に取り返しのつかないことになるんじゃ・・・!?

「そうなるわね・・でもあなたなら、シドなら受け止められる・・・!」

 改めて忠告するシドだが、ミリィの覚悟は揺るがない。

「オレはどういうことになるのか分からない・・本当にどうなっても、オレは知らないぞ・・・!」

「うん・・あなたのことを、私の中に・・・」

 言いかけるシドをミリィが受け入れる。ミリィが自分の秘所に、シドの性器を入れた。

「う、うわぁ・・あああぁぁぁ・・・!」

 ミリィが押し寄せる強い刺激を感じて、あえぎ声を上げて体を起こす。

「ぐっ・・ミリィの中に入っていく・・気分がもっとすごくなっていく・・・!」

 シドも恍惚を感じて体を震わせる。彼はミリィの中の感触を感じていた。

「ダメだ・・出てしまう・・これ以上やると、オレの中から何かが出てくる・・・!」

 シドが耐えようとして表情を歪ませる。

「構わない・・出していい・・私の中に出していいよ・・!」

「ミリィ・・・!」

「ずっと一緒にいさせて・・シド!」

 ミリィが叫び声を上げて、シドが戸惑いを感じていく。

「これは私のわがまま・・責められても憎まれてもいい・・あなたにすがらないと、私はどうかなってしまいそうで・・・!」

 ミリィが想いを口にして、恍惚のままに体を揺らす。シドも刺激されて、恍惚を募らせていく。

 そしてついに、ミリィに入れられたまま、シドの性器から精液があふれ出た。

「あはぁ・・・!」

 精液の感覚を感じて、ミリィが体を反らして吐息をもらす。

「で・・出てしまった・・しかも、ミリィの中に・・・!」

 ミリィの中にもらしてしまったことに、シドが困惑していく。

「いい・・出していい・・もっと・・もっと!」

 ミリィが叫んで、シドを強く抱きしめる。

「ここまで来たなら、オレも我慢しない・・いけるところまでいくぞ・・・!」

 開き直ったシドに、ミリィが微笑んで頷いた。それから2人は抱擁を続けた。

 シドが恍惚に身を任せ、ただひたすらあえぎ声と精液をもらしていく。ミリィもこの感触を堪能して、性器の入っている秘所から精液と愛液があふれていく。

「・・お前からも、あふれてきている・・収まり切らない・・・!」

 シドが声をもらして、大の字になって倒れる。彼の性器がミリィの秘所から抜けて、精液が噴き出す。

 ミリィの素肌にシドの精液がかかる。ミリィは不快には思わず、安らぎを感じていた。

「シドと交われた・・こんなにもいい気分になれるなんて・・・」

 ミリィが微笑んで、シドに寄り添った。

「すっかり、その気になってしまった・・おかしな気分になってる・・・」

 シドが呼吸を乱したまま、横に並んだミリィに目を向ける。

「だとしたら、そうさせたのは私・・私がイヤな気分から逃れようとして、あなたと交わってしまった・・・」

 ミリィが責任を感じて、悲しい顔を浮かべる。

「私、分かっていたんです・・エリィは私たちを裏切ったって・・私がどんなに願っても、エリィにその気持ちは届かないって・・・」

 ミリィが本心をシドに打ち明けていく。

「でも、それを認めてしまったら、現実に心が壊れてしまうかもしれない・・私が私でなくなってしまうかもしれないと思って・・・」

「ミリィ・・・」

「だからそんな怖さと辛さをかき消すくらいの強い気持ちを感じることができたらって・・・」

「だから、オレとこんなことを・・・」

 ミリィの話を聞いて、シドが納得する。

「ごめんなさい・・私のわがままに付き合わせて・・・」

「もういい・・オレも悪い感じだとは思っていない・・・」

 謝るミリィにシドが弁解する。

「オレもすっかり入れ込んでしまった・・お前と抱き合っていると、気分が晴れていくような・・」

「シドもこの気分を堪能していたのね・・」

 恍惚を受け入れていたシドに、ミリィが微笑みかける。

「私、あなたのことを呼び捨てにしてしまったけど・・悪かったかな・・?」

 ミリィがシドの気を悪くしたと思い、戸惑いを見せる。

「いや、別に呼び捨てでもいい・・口調や態度が悪くなければ気にはしない・・」

 シドが正直に答えて、ミリィを優しく抱いてきた。

「今回はお前がオレを抱いたんだ。次にこういうことをするときは、オレがお前を抱く・・」

「シド・・・いいよ・・私のわがままを受け止めてくれたんだから、私もしっかりと受け止めないと・・」

 シドの言葉を聞いて、ミリィが微笑んで頷いた。

「オレ、お前を抱いていると、気分が楽になっていくんだ・・辛いことやイヤなものを、そのときだけ忘れられるみたいだ・・」

 シドがミリィのぬくもりを感じて、安堵の吐息をもらす。

「私も・・シドと一緒だと安心ができる・・勇気が湧いてくる・・・」

 ミリィも笑顔を見せて、シドに寄り添った。

「これからも、ずっと一緒にいさせて・・シド・・・」

「それはオレのセリフだ・・これからも、オレのそばにいてくれ・・オレに力を貸してくれ・・・」

 互いに懇願して抱き合うミリィとシド。2人は心身ともにつながりを深めていった。

 

 一夜が過ぎて、洞窟の入口で見張っていたテルは、疲れて眠っていた。洞窟の中に差し込んできた朝日で、テルは目を覚ました。

「いけない・・眠ってしまった・・・!」

 テルが飛び起きて外の様子をうかがう。洞窟の周りには異変は見られない。

「何もないみたいだ・・・シドさんとミリィさんは・・・?」

 テルがひと息ついてから、シドたちのことを気にして洞窟の中を見る。するとシドとミリィが奥から戻ってきた。

「シドさん・・ミリィさん・・・」

 服を着たシドたちを見て、テルが戸惑いを覚える。

「1度水を浴びたい気分だ・・」

「私も・・・」

 シドとミリィが言いかけて、目を合わせて頷いた。

「待たせたな、テル・・ここを離れるぞ・・」

「あ、はい・・」

 シドの声に、テルが動揺を見せながら答える。シドとミリィが落ち着きを取り戻したのを見て、テルは安心して笑みをこぼした。

 

 

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