Ogre SID
-死を背負いし剣-
第17話「反逆 –裏切りの従事者-」
エリィはデュオのしもべで、グリムリーパーについて彼に報告していたスパイだった。
エリィはシドを背後から射撃して、彼の胸を撃ち抜いた。
「あたしはデュオ様に従う・・アンタたちを内側から崩壊させるために、あたしは動いてたのよ・・」
エリィが笑みを浮かべて、自分のことを語っていく。
「何を言っているの、エリィ!?・・あなたは私の、エスポランス家のメイドでしょ!?」
ミリィも感情をあらわにして、エリィに問い詰める。ミリィはエリィがメフィストの仲間であることが信じられず、絶望を感じていた。
「あなたは倒れていて、私たちが助けた!あなたはメフィストに襲われた被害者なのに!」
エリィを助けたときのことを思い出すミリィ。彼女はエリィの辛さと心を理解したつもりだった。
「被害者?・・すっかり騙されちゃって・・あれは芝居だよ。エスポランス家に潜入するためのね。」
「芝居!?・・あれが芝居・・・!?」
「あのときから既にグリムリーパーという反乱分子の存在を、デュオ様は耳にしていた。ただ破壊を繰り返しただけでは、本拠地が見つかるまで時間がかかる・・だから有力な資産家に転がり込んで、グリムリーパーと対面できるように仕向けたのよ。エスポランス家だったのは、ただの偶然・・」
「あなた、私たちを利用したというの・・!?」
「そうなるわね・・そしてうまくアンタとグリムリーパーが鉢合わせ。アンタはグリムリーパーに加わることになり、あたしもお世話役としてグレイブヤードに留まることになった・・もちろん、グリムリーパーの本拠地が見つかったことは、デュオ様にすぐに報告したけどね。」
「そんな・・そこまで、私たちのことを・・・!」
エリィから企みを聞かされて、ミリィが絶望を膨らませていく。
「だったら何で今になって攻撃をしてきたんだ!?ここのことが分かってるなら、すぐにでも攻撃できたはずだろ!?」
テルが語気を強めて、エリィに問い詰める。
「それはデュオ様の気まぐれ。デュオ様が攻撃に乗り気にならなくて、あたしはただそれに従っただけ・・」
「何だって!?・・そんなことで、オレたちは見逃されたっていうのか・・・!?」
淡々と答えるエリィに、テルも愕然となる。
「シドもミリィも強くなって、デュオ様がやる気を出すまでになったからね・・それだけアンタたちは認められてきたってことだね・・」
さらに笑みをこぼしてから、エリィが顔から笑みを消した。
「1番厄介だったシドは死んだ。他のアポストルも始末させてもらうよ・・」
エリィが銃を構えて、銃口をミリィに向けた。
「エリィ、やめなさい・・あなたのやっていることは、悲劇を広げているのよ!」
ミリィが必死にエリィを呼び止める。しかしエリィは銃を下げない。
「あなたには感謝していますよ、ミリィお嬢様・・・アンタの綺麗事のおかげで、あたしはデュオ様のご命令を果たせるんだからね!」
エリィが目を見開いて、銃の引き金を引いた。放たれた光線がミリィの左肩をかすめた。
「うっ!」
ミリィが激痛を覚えて、血のあふれた左肩を押さえる。
「よけないでよね・・ムダな抵抗をされると、時間が長引くじゃない・・!」
エリィが不満を口にして、またも銃を構えた。
「やめろ!」
テルが飛びかかって、エリィの銃を持つ手を押さえてきた。
「だからムダな抵抗は時間が長引くって・・・!」
「エリィさん、君は本気でミリィさんやオレたちを騙してたのか!?人間が支配されるのがいいって、本気で考えてるの!?」
不満を膨らませるエリィに、テルが怒りの声を上げる。
「何度も言わせないで・・あたしはデュオ様のしもべ・・アンタたちが何人死のうと、あたしの知ったことじゃないんだよ!」
エリィが鋭く言って、テルを蹴り飛ばした。
「うわっ!」
テルが壁に叩きつけられて、痛みを感じて顔を歪める。
「オーガも未だに出せないアンタを始末しても、全然面白くないんだよ・・でも邪魔されたら適わないからね・・」
エリィがため息をついてから、銃口をテルに向けた。
「エリィ、やめて!これ以上、人を傷付けないで!」
ミリィが痛みに耐えながら、エリィに呼びかける。
「もうアンタの言いなりにはなんないよ・・あたしが従うのはデュオ様だけ・・・!」
エリィがミリィをあざ笑い、テルに近づいていく。
「エリィ・・あなたに罪を犯させるわけにいかない・・・!」
「だったらどうする?あたしと戦うつもり?できないでしょうね。エスポランスのメイドであり心強い右腕と思っているあたしのことを、傷つけるなんてね!」
止めようとするミリィを、エリィがさらにあざ笑う。
「アンタは何も守れない・・世界もシドも、他のみんなもね!」
エリィが言い放ち、テルに向かって発砲した。
(死にたくない・・こんなことで死にたくない・・絶対にイヤだ!)
心の中で叫び声を上げるテル。その瞬間、エリィの撃った光線の軌道が曲がり、テルからそれてその先の壁に当たった。
「えっ!?」
射撃が外れたことに、エリィが驚愕する。テルの前に、巨大な手が出現していた。
「その手・・まさか、オーガ・・!?」
エリィが巨大な手を見て息をのむ。死の淵に立たされたテルが、ついにオーガの具現化に成功したのだった。
「出た・・オレのオーガが・・・!」
自分もオーガを出せたことに、テルが戸惑いを覚える。
「冗談じゃない・・そんなことで、邪魔されるわけにいかない!」
いら立ちを膨らませるエリィが、テルに向かって再び発砲する。
「オーガー!」
テルが叫んで感情を高ぶらせた。手だけでなく、彼のオーガが完全に具現化して、光線を弾いてから外に飛び出した。
「オーガが完全な形になった・・でもアポストルを殺せば・・!」
エリィがオーガに構わずに、テルを狙って発砲した。
「やめろ!」
テルが怒りの声を上げると、彼のオーガが右手を振り下ろした。
「うっ!」
エリィが突然上からの圧力に押されて、うつ伏せに倒れた。放たれたビームも圧力で歪んで、軌道が曲がって地面に当たった。
「た、立てない・・何もないのに、のしかかられているみたいな・・・!?」
体にかかる重さを痛感して、エリィがうめく。
「これが、オレのオーガの能力・・圧力や重力を操れるのか・・・!?」
テルが自分のオーガの能力を確かめる。オーガが発した重力が、エリィとビームを上から押し付けたのである。
「ミリィさん、シドさんを連れて、ここから離れるんだ!」
テルがミリィに目を向けて呼びかける。
「でも、エリィを置いてはいけない・・連れていかなくちゃ・・・!」
「何を言ってるんです、ミリィさん!?エリィはオレたちを裏切ったんですよ!」
エリィを気に掛けるミリィに、テルが困惑を覚える。
「違う・・エリィは私のお世話役・・エスポランス家のメイドで、私たちのかけがえのない家族・・置いていくわけにはいかないわ!」
絶望感に囚われていたミリィは、辛い事実を拒絶してエリィを信じようとする。
「目を覚ますんだ!エリィはオレたちの敵だったんだ!メフィストの味方だったんだよ!」
「違うわ!エリィは裏切ってはいない!あんなに優しくしてくれたエリィが、私たちを傷付けるはずがない!」
「だったら何でエリィが撃ってくるんだ!?何でシドさんを撃ったんだ!?」
「それは・・・!」
テルに問い詰められて、ミリィが口ごもる。それでもミリィはエリィを信じて絶望に押しつぶされないようにしていた。
「デュオ様、ミリィたちが逃げます!デュオさまー!」
エリィが声を張り上げて、デュオを呼ぶ。テルのオーガが左手を伸ばして、シドとミリィを捕まえた。
「放して!エリィを助けなくちゃ!放しなさい!」
ミリィがオーガの手から離れようとする。オーガが軽い圧力を掛けて、ミリィの動きを止める。
「動けない・・・このまま、エリィを見捨てるなんて・・私はイヤ!」
ミリィが感情をあらわにして、オーガを呼び出した。
「放しなさい!」
ミリィが強く念じて、テルのオーガに念力を掛けた。テルのオーガの動きが止められ、ミリィたちを押さえている重力が弱まる。
「やめろ!そんなことしたら、エリィがオレたちを攻撃してくる!」
テルが怒鳴るが、ミリィは念力を止めない。
「あたしの本性をこれだけ見せられても、あたしを信じてるなんて・・つくづく甘いよ、アンタは!」
エリィが目を見開いて、銃を構えてテルを狙う。
「アポストルを仕留めればオーガも消える・・押さえつけてくる鬱陶しい力も消える!」
エリィがテルに向かってビームを放つ。ミリィのオーガの念力を払いのけられず、テルのオーガは動くことも力を使うこともできない。
(このまま死ぬなんてイヤだ・・オレの大事な人が、理不尽に殺されるのも!)
感情を高ぶらせて、テルが力を振り絞って強引に体を動かした。彼はとっさに自分のオーガにもたれかかった。
次の瞬間、テルがオーガの中に入り込んだ。彼が一体化を果たしたことで、オーガの力が増し、ミリィの念力がはねのけられた。
「オーガの中に入って、力を増した!?」
エリィがテルに対して驚愕して、ミリィも動揺を膨らませていく。
「私もオーガの中に入って力を上げないと、テルさんを止められない・・!」
ミリィも自分のオーガの中に入ろうとする。しかし強くなった重力に束縛されて、ミリィは動けない。
「エリィ・・一緒に行こう・・あなたは私の、家族も同然なんだから・・!」
ミリィがエリィに向かって必死に手を伸ばす。
「ミリィ・エスポランス・・あたしはアンタのこと、最初から何とも思っちゃいなかったよ・・思っていたとしたら、騙されやすいバカな女だったってくらいだよ!」
エリィは身動きが取れないながらも、ミリィを嘲笑する。
「ウソです・・あなたがそんなことを言うなんて・・そんなことを考えるなんて・・・!」
「そんなに信じたきゃ、信じたまま殺されるといいよ!おめでたいお姫様よ!」
信じ抜こうとするミリィへの敵意をむき出しにして、エリィが目を見開いていた。
「お前も、救いようのない敵の1人だったのか・・・!?」
そのとき、倒れていたシドが意識を取り戻して、体を起こしてきた。
「シ、シドさん・・!」
「そ、そんなバカな!?アンタは胸を貫かれたはず!?」
ミリィとエリィがシドを見て驚きを隠せなくなる。胸を撃ち抜かれたにもかかわらず、シドは目を覚ました。
「シドさん、無事だったんですね!?よかった〜!」
テルもシドが目を覚ましたことに、喜びを安心を見せる。
「シドさん、体は大丈夫なのですか・・・!?」
「体・・確かに、オレは心臓を撃たれたはずなのに・・・!?」
ミリィが心配の声を掛けて、シドが自分の胸に手を当てた。シドは自分が撃たれたという実感を持っていたが、今の彼の胸の傷は小さくなっていて、脈も心臓も動いていた。
「確かなのは、アイツが許せないってことだ・・オレたちを騙したアイツが・・!」
シドがエリィに振り向いて、目つきを鋭くする。
「オレは敵は倒す・・アイツもメフィストも、オレの敵だ・・!」
「違う!エリィは私たちの味方!メフィストに操られているだけなのよ!」
エリィを敵視するシドを、ミリィが呼び止める。
「いい加減に目を覚ませ!こうして目を覚ましたからよかったけど、シドさんがあのまま死んでしまったら、ミリィさんはどうしたんだよ!?」
テルがミリィに不満をぶつける。
「エリィは私の家族も同然・・エリィまでいなくなったら、私・・・!」
「そうまでしてアイツの味方をしようというなら、お前も倒すぞ・・!」
エリィを助けようとするミリィをも、シドは敵視する。
「エリィを傷付けようとするなら、たとえシドさんでも・・!」
ミリィがエリィを思うあまり、シドにも不満をぶつけようとしていた。
「まさかまだ生きていたとはね。」
そこへデュオがソルシエとともに姿を現して、シドを見て笑みをこぼしていた。
「デュ、デュオ様!・・も、申し訳ありません!岸間シドを確かに撃ったのですが・・!」
エリィが動揺しながら謝ると、デュオが彼女に視線を向けてきた。
「確かに君は彼の心臓を撃ち抜いている。にもかかわらず目を覚ました。普通だったら死んでいるはずだ。」
デュオはエリィを責めることなく、シドの復活を気にしていた。
「まさか彼も、この領域にたどり着いていたとは・・エリィの今までの報告を聞く限り、本人もその変化に気付いていなかったようだ。」
デュオがシドに視線を戻して、その変化を予感して微笑んだ。
「アイツは・・今度こそ、アイツを叩き潰す・・!」
シドがデュオと戦うためにオーガを呼び出そうとした。しかしまだ集中力を高められる精神状態になっておらず、シドが自分の頭に手を当てる。
「シドさんはまだ戦える状態じゃない・・やっぱり、1度休まないと・・!」
テルがシドを心配して、デュオたちに目を向ける。
「シドさん、後で恨み言をたくさん聞きますから、今は引き返しますよ!」
テルが呼びかけて、シドとミリィを連れて離れていく。
「逃げちゃったら、楽しくなくなっちゃうじゃない・・」
ソルシエがため息をついてから、テルを追撃しようとする。
(たとえ効かなくても、一瞬でも動きを止められれば・・!)
テルが集中力を高めて、デュオとソルシエに重力を掛けた。直後にテルが一気にスピードを上げて、この場から離れた。
「エリィ!」
ミリィがエリィを連れて行こうとするが、テルの重力で動きを止められた。
「エリィ・・エリィ!」
ミリィはエリィに向かって、悲痛の叫びを上げることしかできなかった。
「逃げられたか・・しかし興味深い男だったな、岸間シドというのは。」
デュオはシドたちを追おうとせず、機体を感じて笑みをこぼした。
「それにシドとともにいた彼女・・シドとともにいて、これからどうなるか。」
「あのお姫様にも興味を持ったの?デュオは興味津々ね。」
ミリィにも興味を示すデュオに、ソルシエが微笑みかける。
「すみませんでした、デュオ様!あたし、デュオ様の命令を実行できませんでした!」
エリィがデュオたちに近づいてきて、深々と頭を下げてきた。
「これは私も想定していなかったことだ。君は悪くない。」
「デュオ様・・・!」
デュオに励まされて、エリィが戸惑いを感じた。
「さて、ここもそろそろ落ちるかな。」
「みんなのところへ行きましょうか。」
デュオと声を掛け合って、ソルシエがエリィを拾って空へ上がった。
メフィストとの戦いを繰り広げていたギギたち。メフィスト数体を倒したギギたちだが、インバスが加勢したことで劣勢に追い込まれていた。
「ちくしょう・・体力が消耗する・・万全の状態だったら、あんなヤツ・・!」
呼吸を乱すギギが、インバスに鋭い視線を向ける。
「少しは楽しめたけど、そろそろ終わらせてもらうわ。ダラダラと長引かせるのは、逆によくないから・・」
インバスが微笑んでから、翼をはばたかせて突風を巻き起こした。
「おわっ!」
ギギが突風に押されて、アロンのオーガにぶつかった。
「大丈夫か、ギギ・・!?」
「あぁ・・オレはこんなもんじゃへこたれないぞ・・必ずアイツを・・!」
心配するアロンに答えて、ギギがインバスに鋭い視線を向ける。
“グリムリーパーのアポストル、全員グレイブヤードから撤退するように。”
そのとき、アルマからの連絡がギギたちに届いた。
「撤退って・・オレたち、マジで逃げるってこと・・!?」
「冗談じゃねぇ!尻尾巻いて逃げられるかよ!」
アロンが動揺を膨らませて、ギギが不満を口にする。
“我々にヤツらの攻撃を食い止める術はない・・撤退し、体勢を整える・・!”
ハントもギギたちに向けて呼びかけてきた。
“グレイブヤードを放棄する・・全員、撤退しろ!”
ハントからの指示がギギたちに伝わった。
「グレイブヤードを放棄・・マジかよ・・・!?」
「ちくしょう・・ちくしょうが!」
アロンが愕然となり、ギギが怒鳴り声を上げた。
「みんな、ここを離れるぞ!」
ギギが呼びかけて、アロンと生き残ったアポストルたちとともにグレイブヤードから離れていく。
「ここまで来て逃げようとするなんて・・」
インバスがギギたちを追撃しようとした。
「今日はここまでにしておくよ。」
そこへデュオがソルシエたちとともにやってきて、インバスを呼び止めた。
「これでグリムリーパーの本拠地は押さえたわ。これで彼らも思うように動けなくなるわね・・」
ソルシエもグレイブヤードを見下ろして微笑む。
「あの3人もどこかに行ったし、少しの間は退屈になりそうだ。」
デュオがシドたちのことを思い出して、エリィがミリィへのいら立ちを覚える。
「では1度引き返すとしようか、みんな。」
「えぇ。」
デュオの呼びかけにソルシエが答える。デュオたいはメフィストたちを引きつれて、グレイブヤードを後にした。
ハントたちはアルシュートに乗艦して、グレイブヤードから脱出した。ギギたちも戻ってアルシュートの上に乗った。
「まさか、あそこを離れることになるなんて・・・!」
アルシュートの中に入って、アロンが大きく肩を落とす。
「あれ?ミリィちゃんたちはどこ?」
アポストルの1人、アマミがミリィたちのことを心配してきた。
「ミリィさんたちは戻ってきていないわ。連絡も来ていない。」
シーマがやってきて、アマミたちに答えた。
「シドさんたちが一緒なら、大丈夫だと思うのだけど・・・」
シーマがシドたちのことを気に掛けて、アマミとアロンたちが深刻さを感じていく。シーマたちはエリィがデュオの味方であることを知らなかった。
デュオたちから必死に逃げたテルは、谷の奥に降り立ったところで、オーガとの融合を解いた。シドとミリィがテルのオーガの手から降りて、ふらついて倒れた。
「シドさん!ミリィさん!」
テルがシドたちに近寄って心配する。
「エリィ・・エリィ・・・!」
ミリィがエリィっと離れ離れになって、絶望に囚われていた。
「何で逃げたんだ!?・・アイツはオレたちを騙していた・・裏切り者となった敵だった・・!」
シドがテルにつかみかかって、怒りを向けてきた。
「シドさんがオーガを出せない状態だった・・シドさんが死ななくてよかったとは思ってるけど、どうしてもほっとくなんてできなかった・・・!」
テルがシドに正直な考えを口にした。テルは責められることを覚悟して、シドは怒りのやり場のなさを痛感して地面に拳を叩きつける。
「エリィは敵ではない・・たとえシドさんでも、エリィを敵だというのなら、許すことができません・・・!」
ミリィがエリィへの思いと彼女に対する敵意への怒りを見せる。シドも憤りを募らせて、ミリィの胸ぐらをつかむ。
「これ以上アイツの味方をしようというなら、オレはお前も許さない・・・!」
「それはこっちのセリフよ・・もしもエリィを傷付けようとするなら、あなたが相手でも、私は戦う・・・!」
鋭く言いかけるシドだが、ミリィも鋭い視線を向けてきていた。
「エリィがいなくなったら・・・私は・・独りになってしまう・・・!」
しかし悲しみを抑えることができず、ミリィが目から涙をあふれさせる。彼女はたまらずシドたちから離れて、近くの洞窟の中に入っていった。
「ミリィさん・・・」
ミリィの悲痛さを感じて、テルが困惑する。シドはデュオたちやエリィへの怒りとミリィへの不満を抱えたまま、体を震わせていた。
洞窟の中に入ったミリィは、エリィに対する悲しみを膨らませて泣き崩れた。
(私は家族を失った・・エリィ、あなたまでいなくなったら、私は・・・!)
孤独を恐れるミリィは、岩場にもたれかかってひたすら泣き続けた。
泣いて疲れて眠りそうになったところで、ミリィは顔を上げて歩き出す。
「エリィ・・・」
苦悩を深めたまま、ミリィが洞窟から外へ出た。
そのとき、ミリィは風でなびいた自分の髪を見て、驚きを覚える。
「えっ・・・!?」
ミリィが自分の髪を手のひらに乗せて、目を疑う。彼女の髪は色を失い、白くなっていた。
「どうなっているの?・・どうして、私の髪が・・・!?」
自分に起こった異変に疑問を感じずにいられなくなるミリィ。度重なる理不尽に打ちひしがれて、彼女は冷静になれずにいられなかった。