Ogre SID
-死を背負いし剣-
第13話「双星 –降りかかる絶体絶命-」
アークを倒したシドが、ミリィとともにグレイブヤードに戻ってきた。
「シドさん!」
「ミリィお嬢様!」
テルとエリィが飛び出して、シドとミリィに駆け寄ってきた。
「無事でよかった・・やられちゃったんじゃないかって・・・!」
「オレは死なない・・敵を滅ぼすまでは・・・」
安心と笑顔を見せるテルに、シドは表情を変えずに自分の意思を告げる。
「お嬢様、ご無事でよかったです・・・!」
「シドさんを助けたい一心になっていました・・そうしたらオーガを出すことに勇気が持てましたし、私もオーガと融合することができました・・」
喜ぶエリィにミリィが微笑んで答えた。
「えっ!?お嬢様もオーガとの融合ができたのですか!?」
ミリィが強くなったことに、エリィが驚きを隠せなくなる。テルもギギたちもざわめき、ハントとシーマも息をのんだ。
(シドくんだけでなく、ミリィさんもオーガとの融合を・・しかもミリィさんは、オーガを出せるようになってからそれほど時間が経っていないのに、ここまで・・)
ミリィの進化にシーマは脅威を感じていた。
「ミリィさん・・お姉ちゃんの仇、討ってくれたんだね・・・」
ラミアが前に出て、震えながらミリィに声を掛けてきた。
「私は、シドさんを助けただけです・・ヒビキさんの仇を討ったのは、シドさんです・・」
ミリィがラミアに答えて、シドに視線を移す。
「私は強くなったと思いますが、シドさんには全然敵わないです・・」
「シドくんと比べるのはムチャってものだよ。シドくんは力が強いだけじゃなくて、意地でも敵を倒そうとする感情もあるから・・」
物悲しい笑みを浮かべるミリィに、ラミアが励ましを送る。
「これであの手ごわいメフィストを1人やっつけた・・他のメフィストは大したことは・・!」
アロンが自信を取り戻して、意気込みを見せる。
「いいえ・・あのメフィストと同じくらいの力を持つメフィストが、まだいました・・」
「えっ・・!?」
ミリィが口にした言葉に、アロンたちの表情が凍りついた。
「まさか、あんなすごいのが他にもまだまだいるってことなのか・・!?」
アロンが強力なメフィストの存在を予感して、緊張を隠せなくなる。
(あの女も、レベルの高いメフィストだった・・このオレが、女にビビっちまうなんてよ・・・!)
ギギがインバスのことを思い出して、体を震わせる。
「ギ、ギギ・・!?」
アロンに声を掛けられて、ギギが我に返る。
「どうしたんだ、ギギ?・・いったい・・」
「いや、何でもねぇ・・武者震いってヤツだ・・!」
アロンが聞いてきて、ギギが顔を横に振りながら答える。
(このままやられっぱなしのオレじゃねぇ・・必ず目にもの見せてやる・・そのために、オレもオーガとの融合を・・・!)
インバスやメフィストへの怒りを強めて、ギギは強い力を求めるようになっていた。
アークが倒れたことを気に掛け、ディアスとイフェルがグリムリーパーの本拠地、グレイブヤードを探していた。
「この前、アークとインバスがアポストルと戦った場所。その近くにヤツらの本拠地があるはずだ。」
「しかしこれ以上の詳しいことはまだ分からないわね・・あれだけの力をまた発揮してくれたら、話は別だけど・・」
ディアスとイフェルが会話をしながら、シドたちの気配を探っていた。オーガと融合を果たしたときの力なら感じ取れると、ディアスたちは思っていた。
「しばらくこの辺りで待機するとしようか。」
「そうね。もしかしたら、私たちのことを感じて、向こうからやってくるかもしれないし・・」
「おいおい。力を出しているときならともかく、そうじゃない普通の状態のオレたちを感じ取れたら、本当にとんでもない力の持ち主ということになるぞ。」
「そのほうが私たちの楽しみが増えるというものよ。期待して待ちましょう。」
ディアスとイフェルが会話を弾ませて、町の近くの森に留まることにした。
オーガとの融合を果たしたシドとミリィに触発されたのは、ギギだけではなかった。ラミアや他のアポストルの多くが、オーガとの融合を成功させようとしていた。
テルも自分のオーガを出そうと必死になっていた。
「そう何度もシドさんやミリィさんに甘え続けるわけにいかない・・オレだって戦えるようにならないと・・!」
シドたちをサポートしたいという気持ちを込めて、テルが集中力を高める。
(オレもオーガの中に入る・・シドができて、オレにできないことはないんだよ・・!)
ギギも自分のオーガの肩の上に乗って、オーガの中に入り込もうとする。
(オレはもっともっと狩りを楽しみたいんだよ!)
感情を膨らませたギギ。そのとき、彼が押し付けてくる手が、オーガの中に入り始めた。
「おわっ!」
ギギが驚きながら、オーガの中に入り込んだ。彼はオーガの中にいることと力が増していることを実感する。
「オレ、オーガの中に入ったのか!?・・すげぇ・・マジですげえ!力があふれてくる感じだ!」
ギギが喜びに打ち震えて、両手を握りしめた。彼はオーガと一体化したときの力を確かめようと、オーガの体を動かしていく。
「オーガを動かしてるって感じが、もっと強くなってる・・これがオーガとの合体ってヤツか・・!」
ギギが喜びを抑えられなくなり、さらに動いていく。オーガと融合した彼の力は大きく向上していた。
一方、ラミアも集中力を高めていた。彼女の中には、まだヒビキを手に掛けられた怒りが強くたぎっていた。
(お姉ちゃん、私、やるよ・・メフィストを倒して、お姉ちゃんやみんなを安心させる・・・!)
ヒビキに向けての想いを募らせて、ラミアが自分のオーガに両手を押し当てる。彼女が自分のオーガの中に入り込んでいく。
「やった・・私も融合ができた・・・!」
オーガとの融合を果たせたことに、ラミアが戸惑いを感じていく。
(もう負けない・・お姉ちゃんの敵討ち・・メフィストは残らず倒す・・・!)
メフィストへの怒りを心に秘めて、ラミアも戦いに備えた。
オーガを初めて発現した者、オーガとの融合を果たした者が次々に増えていく。この流れを、ハントは真剣な面持ちで見守っていた。
「みんな、強くなっていますね。こうも一気に成長してくるとは・・」
シーマがラミアたちの成長に、驚きと感心を見せる。
「しかし力を上げてくれば、敵も警戒してくる・・今まで以上に用心したほうが賢明だろう・・」
ハントはメフィストへの警戒を強めていく。
「シドは我々よりも先に、メフィストの出現を感知した。もしもメフィストの中にも、強い力を感じ取る能力を持つ者がいるとすれば・・」
「では、このグレイブヤードが発見される危険が高くなると・・・!?」
ハントの言葉を聞いて、シーマが息をのむ。
「1度ギギたちに休息を取らす。それからレーダーでメフィストの動向をうかがう・・アルマ、レイラ、いいな?」
「はい!」
ハントが指示を出して、アルマとレイラが答えてレーダーを注視した。
「アポストルは全員、訓練を中断。自室にて休息を取るように。」
アルマが冷静に連絡を送って、ギギたちに待機を伝えた。
グリムリーパーの高めた力を、感覚を研ぎ澄ませてたディアスとイフェルが感知した。
「強い力を感じる・・しかも1つや2つじゃない・・数を増やしてきている・・」
「ここに来て一気に力を上げてくるとはね・・あのアポストルのオーガに影響されているのかしら?」
ディアスが呟き、イフェルが微笑む。
「しかし、これでヤツらの居場所は見つかった・・早速行くとするか。」
「えぇ。私たちの仲間をたくさん連れていったら、とても盛り上がるでしょうね。ウフフ・・」
ディアスがグレイブヤードへ行くことを決めて、イフェルが微笑んだ。
ギギたちが強化に努めていた頃から、シドは休息を取っていた。彼はオーガと融合し、そこからさらに力を増したときのことを思い出していた。
「あのとき、オレはさらに強くなった・・そのとき、オレはオーガの中で裸になっていた・・融合を解いたときには元に戻っていたが・・」
自分自身にも起きた変化に、シドは戸惑いを感じていた。彼はハントたちのいる指令室のそばに来た。
「シド、お前の力、さらに増したようだな。お前とミリィを捜索する中、お前の戦闘力が上がったのも探知した・・」
ハントの言葉を聞いて、シドは先日の戦いで起きたことを話した。
「そうか・・もしかしたら、融合のシンクロが増したのかもしれない・・」
「シンクロ?」
ハントの推測を聞いて、シドが疑問を投げかける。
「オーガとのシンクロを上げれば、オーガの力がさらに増す。しかし攻撃されたときにアポストル自身に及ぼすダメージもその分増すことになる。」
「ではなぜ、オレはオーガの中で裸に・・?」
「それもシンクロ率が上がり、オーガとのつながりが深まった結果だ。しかし実際に衣服が消えるわけではないようだ。その証拠に、オーガから出てきたお前は、格好に変化はなかった。」
「そうか・・確かにその通りだ・・・」
ハントの話を聞いて、シドは納得した。
「危機はしないだろうが、心の中には留めておけ。オーガが倒されればアポストルの精神が崩壊する。アポストルが融合したままオーガが倒されることになれば、アポストルも精神だけでなく、命を失うことになるだろう・・」
ハントからの忠告に、シーマたちが息をのんだ。しかしシドは動じることなく、表情も変えなかった。
「オレの生きる理由は変わらない・・メフィストを滅ぼすために戦う・・そのために、オレは死なない・・・!」
「相変わらずだな・・それでメフィスト打倒を実現させてくれるなら、誰もが喜ばしいことになる。」
「オレはアンタたちの言いなりになっているつもりはない。オレの意思でオレの戦いをする・・・!」
「頑固だな・・だが、お前はそうでなければ・・・」
頑ななシドに、ハントが笑みをこぼした。シドの揺るがない意思に、ハントは期待していた。
ハントからの指示で、ギギたちは自分の部屋に戻っていた。しかしテルは訓練場に1人残っていた。
オーガを出すイメージを練ろうとしているテルのところへ、シドがやってきた。
「シドさん・・オレ、全然オーガが出せなくて・・・やっぱり、死ぬかどうかのところまでいかないとムリなのかな・・」
テルがシドに気付いて、物悲しい笑みを浮かべた。
「命を粗末にするようなマネはするな・・オレは、死にたくないのに殺されそうになった・・大切な人を殺された・・それが許せなかった・・・!」
シドがテルに鋭く告げて、過去を思い返して両手を握りしめる。
「生きることを優先しろ・・自分から死に飛び込むことはない・・・」
「シドさん・・・」
シドの投げかける言葉に、テルが複雑な気分を感じていた。彼はシドの力になりたいと心から願っていた。
そのとき、シドが気配を感じて、目つきを鋭くした。
「どうしたんですか、シドさん?」
テルがシドの様子を気にして問いかける。
「メフィストが近づいてくる・・感じたことのないヤツが、2人・・」
「えっ!?メフィストが!?」
シドが口にした言葉を聞いて、テルが緊張を覚える。
「シドさん、メフィストが近づいてくるのが分かるのですか・・・!?」
「あぁ・・最近、分かるようになってきた・・・」
疑問を覚えるテルに、シドが気配を感じる方に目を向けたまま答える。
「オレ、みんなに知らせてきます!」
テルが慌ててハントのところへ走り出した。
(どんなヤツが何人出てきても、オレはメフィストを倒す・・それだけだ・・・!)
「オーガ!」
自分の揺るぎない意思を心の中で呟いてから、シドがオーガを呼び出した。彼はオーガに乗って、グレイブヤードの空に飛び上がった。
「メフィストが多数出現!こちらに向かってきています!」
「えっ!?」
レイラからの報告に、シーマが耳を疑った。レーダーはメフィストの反応が複数、グレイブヤードに近付いていることを示していた。
「オーガを出せるアポストルは全員、戦闘準備!グレイブヤードに近づけさせるな!」
「は、はい!」
ハントが指示を出し、アルマが答えてギギたちに伝える。
(この進攻・・間違いない・・敵はグレイブヤードに気付いている・・・!)
メフィストの動きを見て、ハントは最悪の事態に陥ったことを痛感する。
「非戦闘員は緊急時に備え、すぐに脱出できるよう準備をしておけ!最悪の場合、グレイブヤードを放棄することも頭に入れておくように!」
「は、はい・・!」
ハントが続けて指示を出して、レイラが緊張を膨らませながら答えた。
「それと、“アルシュート”の出港準備も急げ。そこへみんなを乗せて脱出する・・!」
「了解です!」
ハントが潜水艦、アルシュートのことを告げて、アルマが出港の準備を行った。
メフィストたちを連れてグレイブヤードに向かっていたディアスとイフェル。彼らとその上に乗っている2人の前に、オーガと融合して迎撃に出たギギ、ラミア、シド、ミリィが現れた。
「オレたちのいるところへ乗り込んでくるとはいい度胸じゃねぇか・・まとめて狩ってやるよ!」
「お姉ちゃんの分まで、私が戦う・・メフィストを倒すよ・・!」
ギギが野心をむき出しにして、ラミアが決意を口にする。
「アポストルが入っているオーガが増えているわね。」
「それだけ楽しみが増えたということだ・・オレたちの力を存分に発揮できる楽しみが・・・」
イフェルとディアスがギギたちを見て笑みをこぼす。
「では、オレたちも体を動かすとするか。」
「そうね・・」
ディアスとイフェルが声を掛け合って、メフィストの上から飛び出した。2人の姿が巨大な異形の姿に変わった。ディアスは頭と肘、背中から、イフェルは両肩から角が生えていた。
「メフィストの上にいた2人も、メフィストに・・!」
「あの2人が、ここにいるメフィストの中で力がある・・・!」
2人を見てミリィが呟き、シドが目つきを鋭くする。
「アイツか・・アークをやったのは・・」
ディアスがシドに興味を抱いて前進する。シドもディアスを迎撃して、2人が拳を繰り出してぶつけ合う。
「直接受けてみて、お前の力を把握できた気がする・・・!」
「何をふざけたことを・・メフィストは、オレが滅ぼす!」
笑みをこぼすディアスに、シドが憤りを募らせる。
「しかし、オレはアークのようにはいかないぞ・・・!」
ディアスが顔から笑みを消して、さらに拳を振りかざす。
「ぐっ!」
回避しようとするシドだが、かわし切れずにディアスの拳を体に受ける。
「シドさん!」
「おめぇを仕留めるのはオレだぜ!」
ミリィが叫び、ギギがディアスに向かっていく。
「パワーアップしたオレの力、見せてやるぞ!」
「ほう?アイツとどちらが強いか、オレが確かめてやるぞ。」
飛びかかるギギに目を向けて、ディアスが笑みをこぼした。ギギが拳を繰り出すが、ディアスが軽々とかわしていく。
「スピードはアイツよりは速くない。アイツのほうが上のようだ・・」
「このヤロー・・オレをなめるな!」
笑みをこぼすディアスに、ギギがいら立ちを覚える。ギギが力を込めて右の拳を繰り出すが、ディアスに左手で受け止められた。
「何っ!?」
「お前ではオレの相手は務まらないようだ・・」
驚愕するギギに対してため息をついてから、ディアスが拳を繰り出した。
「ごあっ!」
ギギが顔面を殴られて、空中から落下する。
「ギギ、シド・・今度は私が・・!」
ラミアがディアスに攻撃しようとするが、イフェルが行く手を阻んできた。
「人気者ね、ディアスは。でも、私がいることを忘れては困るわ。」
イフェルが微笑んで、手を伸ばしてラミアの左腕をつかんだ。
「うわっ!」
ラミアが投げ飛ばされるが、すぐに空中で体勢を整える。
「その調子ね。もっと楽しませてもらえる!」
イフェルが目を見開いて、ラミアに向かって飛びかかる。ラミアが迎撃して、イフェルとパンチとキックをぶつけ合った。
地上に落ちていたシドが、空中にいるディアスを見上げて、いら立ちを膨らませた。
「アイツ・・いつまでもいい気になれると思うな・・・!」
シドがディアスに鋭い視線を向けて、集中力を高める。彼がオーガとのシンクロを上げて、力を上げていく。
オーガの体から力があふれてくる。その中にいるシドの姿は全裸になっていた。
(やはりそうか・・シンクロが高まると、文字通りアポストルとオーガのつながりが深まる。力と共に、オレ自身が解放されるということか・・)
改めて自分の状態を確かめるシド。
(この姿を気にすることはない・・この姿を誰かに見られているわけじゃない・・・!)
今の自分の姿を気に留めず、シドが戦いに集中する。
「さらに力が高まった。その力でアークを倒したということか・・」
ディアスがシドの力を感じて、小さく頷く。
「しかし、これでようやくオレと互角に戦えるかどうかというところだ・・!」
ディアスが目を見開いて、シドと同時に拳を繰り出した。2人の打撃のぶつかり合いが、爆発のような衝撃を巻き起こした。
イフェルと激しい攻防を繰り広げるラミア。しかしイフェルのスピードに翻弄されて、ラミアは苦戦を強いられていた。
「速い・・オーガと融合して強くなっているのに、間に合わない・・・!」
「私にはスピードには自信があるの。オーガと1つになったからって勝った気でいると、痛い目を見るわよ・・」
焦りを募らせるラミアを見下ろして、イフェルが微笑みかける。
「では本格的に攻めさせてもらうわね・・」
イフェルが顔から笑みを消して、スピードを上げてラミアに迫った。
「うあっ!」
イフェルが振りかざす爪に切りつけられて、ラミアが苦痛を覚えて叫ぶ。
「ラミアさん!」
ミリィが叫び、イフェルの動きを捉えようとする。しかし素早く動くイフェルを見つけることができない。
(体に痛みが・・これが、オーガと融合するってことなんだね・・・!)
ラミアが自分の体の痛みを感じて息をのむ。オーガが受けたダメージが自分自身に来るものだと、彼女は痛感していた。
「退屈にはならなかったからよしとするわね。では終わらせることにするわ。」
イフェルが笑みをこぼして、右手に力を込めた。
「今!」
彼女がとどめのために動きを止めた一瞬を捉えて、ミリィが両手を前に出して念力を放った。
「ぐっ!」
イフェルが念力で動きを止められうめく。
「しまった・・これほどの力が・・・!」
「ラミアさん、今のうちに!」
毒づくイフェルと、ラミアに向かって呼びかけるミリィ。
「ありがとう、ミリィちゃん・・この一撃で、アイツを倒す!」
ラミアがミリィに感謝してから、イフェルに向かって突っ込んだ。ラミアがエネルギーを集めた右手を、イフェルの体に突き立てた。
「うあぁっ!」
イフェルが突き飛ばされて、絶叫を上げながら地上に落下した。その衝撃で土煙が大きく舞い上がった。
「やった・・やったよ、ミリィちゃん!」
ラミアがミリィに振り向いて、喜びを見せた。
「うまく動きを止めることができてよかったです・・」
ミリィも微笑んで、ラミアをサポートできたことを素直に喜んだ。
「さぁ、シドくんたちの援護に行こう。他のメフィストも何とかしないといけないし・・」
「はい。」
ラミアが呼びかけて、ミリィが微笑んで頷いた。
次の瞬間、ラミアの体が貫通して、血があふれ出した。
「あっ・・・!」
「ラミア、さん・・・!?」
目を見開くラミアに、ミリィが目を疑う。
「今の念力には驚かされたわ。かからないようにしないと危険ね・・」
ラミアの後ろにイフェルが姿を現した。ラミアの体を貫いている右手も、姿と同時に現れた。
「私の自慢はスピードだけじゃないの。姿を消すこともできるの。カメレオンが周りの色に合わせるみたいにね・・」
イフェルがラミアたちに向けて言いかける。地上に叩きつけられた後、イフェルは姿を消してラミアの後ろに来て、爪で貫いたのだった。
「油断大敵・・それをしっかり頭に入れて、天国へ旅立ってね・・」
イフェルが囁いてから、ラミアの体から右手を引き抜いた。
「がはぁっ!」
ラミアが吐血して、脱力して落下していく。
「ラミアさん!」
ミリィが追いかけて、ラミアを受け止めた。
「ラミアさん、しっかりしてください!ラミアさん!」
「ミリィちゃん・・・アハハ・・油断しちゃったよ・・・」
必死に呼びかけるミリィに、ラミアが微笑みかける。
「すぐに戻ります!早く手当てしないと!」
ミリィがラミアを連れて、グレイブヤードに戻ろうとした。
「お姉ちゃん、ゴメン・・メフィスト、全滅させることができなかったよ・・・」
ラミアがヒビキのことを思い出して、目に涙を浮かべた。ミリィの腕の中で、ラミアが腕をだらりと下げた。
「ラミアさん・・!?」
力を失ったラミアに、ミリィが愕然となる。ラミアの体が光の粒子になって消えていった。
「そんな!?・・・ラミアさん・・ラミアさん!」
目を疑うミリィが、ラミアの死に絶望し、両手を強く握りしめる。
(オーガの死はアポストルの精神の崩壊につながる・・アポストルがオーガと融合すると、力が増す代わりに、オーガの受けるダメージも共有する・・融合したままオーガが倒されたら、アポストルも一緒に死ぬ・・・!)
オーガについてさらに思い知ることになったミリィ。融合したまま力尽きたラミアは、オーガとともに消滅した。