Ogre SID

-死を背負いし剣-

第11話「天使 –真の翼、広がる時-

 

 

 オーガとの融合を果たしたシドに手傷を負わされて、アークはいら立ちを感じていた。

「あのアポストル・・このままには済まさんぞ・・この私の手で八つ裂きにしてくれる・・・!」

 シドへの憎悪をたぎらせて、アークが体を震わせる。

「あなたばかり遊んでズルいわよ。そろそろ私もやるわ。」

 インバスがやってきて、アークに声を掛けてきた。

「インバス・・他のヤツは構わないが、あの悪魔のオーガは私が仕留める・・!」

「アーク、いつにもまして殺気立っているわね。私としてはそういうほうが面白くなりそうだけど・・」

 呼びかけてきたアークに、インバスが微笑みかけた。

「私をからかおうとしているなら、たとえ同胞だろうと許さんぞ・・!」

「機嫌を悪くしないで。私も体を動かせるのを楽しみにしているからね。」

 不満を見せるアークだが、インバスは笑みを絶やさない。

「ついてこい、インバス。他のヤツに邪魔されないようにしてもらおう。」

「そうさせてもらうわ。私のほうがたくさん狩ることになりそうだけど・・」

 呼びかけて歩き出すアークに、インバスが答えてついていった。

 

 シドとともに戦うことを心に決めて、テルはオーガを出すために集中力を高めていた。しかしなかなかオーガが具現化されない。

「もう・・何で出てこないんだろう?・・何かコツがあるのかな・・・?」

 呼吸を乱しながら、テルが成功への方法を模索する。その彼の近くに、ミリィとエリィが来ていた。

「テルさんも頑張っているね・・」

 ミリィがテルの様子を見つめて、戸惑いを感じていく。

「お嬢様、ムリに戦う必要はないです。しばらく休んでいましょう・・」

「えぇ・・でも、みんなが命懸けの戦いをしているのに、私が何もしないわけには・・」

 エリィが気を遣うが、ミリィは苦悩を拭うことができないでいた。

「ふぅ・・ちょっと休憩するかな・・」

 テルがひと息つこうと、建物の中に戻っていく。そこで彼はミリィたちに気付いて、足を止めた。

「あなたたちは、アポストル家の・・!」

「はい。ミリィ・アポストルです・・オーガのことは、あなたも聞いていますか・・?」

 動揺を見せるテルに、ミリィが自己紹介をする。

「うん・・オーガがやられると、アポストルの心が壊れるって・・シドさんからもそのことを聞かされたよ・・」

「それなら、あなたはどうしてオーガを出そうとしているのですか・・?」

「強くなりたいからだ・・メフィストもだけど、メフィストに対して何もできなかった自分が許せない・・・」

「だからそれでも、オーガを出して戦おうと・・・」

 メフィストへの怒りを感じていくテルに、ミリィが困惑する。

「戦うのが怖くないのですか?・・私は怖いです・・死ぬのも、心が壊れるのも・・・」

「怖いよ・・だけど、やらないでやられる方がもっと怖い気がして・・・」

 不安を込めて問うミリィに、テルが正直な思いを口にする。

「ま、戦うか戦わないかは、その人次第じゃないかな。シドさんにも言われたけど、ムリに戦うことはないって・・」

「戦うかはその人次第・・私は、戦いたいと思わなければ、戦う必要はない・・・」

 テルの言葉を聞いて、ミリィは戦わないことを選んだ自分に安心を感じていく。

「ミリィさんが戦いたくないなら、僕にはそれ以上言えない・・でもこれだけ教えて・・どうやってオーガを出せるようになったのか・・」

「オーガの出し方ですか?・・それは・・・」

 テルからオーガの出し方を聞かれて、ミリィが動揺を募らせる。

「私がオーガを出したときは、ヒビキさんがオーガを使って襲ってきました。死にそうになったときに、オーガが発動される可能性が高くなるって・・」

「それじゃ、オレも死にそうになるしかないってことなのかな・・・」

「だからと言って危険に飛び込んで、本当に死んでしまっては何にもなりません・・生き延びなければ、強くなることもできなくなります・・」

「それはそうだけど・・・さすがに自殺するみたいなことはイヤだな・・」

 ミリィが心配して、テルが苦笑いを見せる。

「ま、それは最後の手段にしておきますよ。ムチャは、そうしなくちゃならないときだけにしないと・・」

 テルが気さくに笑って、ミリィが戸惑いを募らせる。

「オレの名前、言ってなかったね。オレはテル。夜桜テル。」

 テルが自己紹介をしてから、ミリィたちの前から去っていった。

「テルさんもテルさんなりに戦おうとしている・・でも、私は逃げてばかり・・・」

 自分の情けなさを痛感して、ミリィが落ち込む。

「それでも構わないのではないでしょうか。ミリィ様はミリィ様の思うようにすれば・・」

 エリィがミリィを気遣い、励ましを送る。

「ありがとう、エリィ・・でも私がどうするかは私自身で決めるわ・・」

 ミリィがエリィにお礼を言って、これからの自分の行動について考えていた。

 

 襲撃からグリムリーパーが駆けつけるまでの時間を集計していたインバス。その時間が短かった地点から近い町に、彼女とアークは狙いを定めた。

「この近くにあのアポストルたちがいるかもしれないか。」

「アポストルの隠れ家がどこなのかは分かっていないけど、ここを襲えばすぐに来るはずよ。」

 アークとインバスが言いかけて、町を見渡していく。

「では始めるぞ・・人間たちよ、愚かな反逆者をおびき出す人柱となれ・・・!」

「私も久々に暴れさせてもらうわ・・!」

 アークとインバスが目を見開いて、メフィストへと変貌した。インバスが変化したメフィストは、鳥の羽のような翼を背中から生やしていた。

 インバスが翼をはばたかせて、突風と共に羽根を飛ばした。羽根が矢のように地面や建物に刺さっていく。

 町にいた人々がアークたちから慌てて逃げ出していく。

「どうやら体はなまってはいないようだ。足を引っ張られる心配はないな。」

「あなたが私の足を引っ張るなんてことがないようにね・・」

 笑みをこぼすアークに、インバスが微笑みかける。彼女にからかわれても気に留めず、アークも町へ攻撃を仕掛けた。

 

 アークたちの出現に、ハントとシーマはすぐに気付いた。

「グレイブヤードの近くに現れるとは・・まさか、ここに気付いたのでは・・・!?

「それならは直接ここを叩きに来るはずだ。メフィスト出現から我々が駆けつけるまでの時間の短さを計算して、そこを攻撃しているのだろう。我々をおびき出すために・・」

 緊張を覚えるシーマに、ハントが冷静に推測を告げる。

「しかし、迂闊に飛び出せば、それこそグレイブヤードの位置がメフィストに・・」

「だからすぐに出ず、少し間を置いてから出撃する。ヤツらを混乱させる。」

 不安を浮かべるシーマに、ハントはメフィストに対する作戦を伝えた。

「しかし、シドが強引に出撃していくのでは・・・!」

 アルマがシドの行動を予測して、不安を口にする。

「グレイブヤード内に消火用のガスをまけ!視界が遮られれば、ヤツが出ていくのを遅らせることができる!」

「了解!消火ガス、手動噴出します!」

 ハントの指示にレイラが答える。グレイブヤード内に白いガスが噴射されて、中にいた人たちが視界を遮られる。

「これで時間稼ぎができるはずだ・・・!」

 シドたちの出撃を遅らせることができると思いながら、ハントはシーマたちと共に状況の把握に努めた。

 

 シドたちにはアークたちの出現の知らせは伝わっていなかった。しかしシドはメフィストが現れたという予感を感じていた。

 ところがグレイブヤードに吹きつけられた消火ガスに視界が遮られて、シドたちは思うように動けないはずだった。

 シドは視界に惑わされることなく、外へ向かっていく。岸間家で鍛えられていた彼は、目が見えない状態でも周囲を把握して動けるようになっていた。

「オーガ!」

 シドがオーガを呼び出して、その手のひらの上、さらに肩の上に乗った。彼のオーガが翼をはばたかせて空へ飛び上がった。

「シドのヤツ、また1人で飛び出していきやがって・・!」

 シドの単独行動に憤るギギ。しかしガスがまだ周囲を漂っていて、シドを追うことができなかった。

 

「シドがグレイブヤードから出撃しました!」

「消火ガスをものともせずに出ていくとは・・!」

 レイラとアルマがシドが出ていったことを報告する。

「そんな!?・・あの見えない状態で動けるなんて・・!?

 シーマがシドの行動に驚きを隠せなくなる。

「消火ガスをすぐに引っ込めろ!メフィスト出現を知らせるんだ!」

「はいっ!」

 ハントが指示して、アルマがメフィスト出現の知らせをギギたちに伝えた。

(この小細工をものともしないとは・・しかし、シドは我々が知らせる前に、メフィストが現れたことに気付いた・・・!)

 危機感を覚えるハントが、シドがメフィストの出現を感知したことにも驚かされる。

(ここがヤツらにばれなければいいが・・・)

 一抹の不安を抱えたまま、ハントはメフィストとの戦いに臨んだ。

 

 町への攻撃を続けるアークとインバス。2人はシドたちが来るのを待って、感覚を研ぎ澄ましていた。

「おっ。ついに来たか、グリムリーパーのヤツらが・・」

 アークがシドの接近に気付いて振り向いた。

「あれがあなたを追い詰めたアポストル・・なかなかの力を持っているようだけど、あなたを超えるほどじゃ・・」

「今はな・・ヤツは戦いの中で、力を格段に上げてくる・・」

 インバスもその方向へ振り向いて、アークが警戒を見せる。シドがオーガとともに町に降り立った。

「また会ったな、貴様・・今度は私のこの手で、確実に仕留めてやるぞ・・」

「メフィストは1人残らず倒す・・お前たちの思い通りにはさせない・・・!」

 互いに敵意を向け合うアークとシド。

(オーガと1つになれば、アイツらを倒せる・・オレは、ヤツらを倒さなければならない・・そうしなければ、オレたちは救われない・・・!)

 メフィストへの怒りと自分の安らぎへの思いを膨らませていくシド。彼が集中力を高めて、自分のオーガに飛び込んで一体化した。

 シドと融合したことで、彼のオーガが戦闘能力を高めた。

「力が大きく増した・・アーク、あなたの言う通りね・・」

 インバスがシドの力を感じ取り、微笑みかける。

「前に言った通り、私がヤツを仕留める・・手を出すな・・!」

 アークがシドに近づいて、両手を強く握りしめる。そのとき、インバスがギギたちの接近に気付いた。

「私は他のアポストルの相手でもするわ。」

 インバスがアークに言ってから、降りてきたギギのアークを迎え撃った。

「シドのヤツ、何度も抜け駆けを企んで・・!」

 ギギがシドに鋭い視線を向ける。彼と彼のオーガの前に、インバスが立ちはだかった。

「退屈することはないわ。あなたの相手は私がしてあげる。」

「オレの相手を買って出たことを、後悔させてやるぞ・・!」

 微笑みかけるインバスに、ギギが敵意を向ける。彼のオーガがインバスに飛びかかり拳を振りかざすが、インバスは軽やかにかわしていく。

「猪突猛進ね。それでは私には勝てないわよ。」

「いい気になるな、悪魔女め!」

 からかうインバスにギギがいら立ちを募らせる。オーガが具現化した斧を手にして振りかざすが、これもインバスにかわされる。

「武器も大振り・・本当に力任せな男ね・・」

「コイツ・・どこまでもなめやがって・・・!」

 さらに笑みをこぼすインバスに、ギギが怒りを増すばかりになっていた。

「そろそろ私の攻撃の番にさせてもらうわ・・」

 インバスが背中の翼をはばたかせて、羽根を飛ばす。オーガが斧を振りかざして羽根を弾き飛ばそうとするが、全てを払えずに羽根が体に刺さる。

「オーガが倒れればあなたの精神が壊れる。オーガを退けないと、取り返しのつかないことになるわよ・・」

「それでおとなしく尻尾巻いて逃げるオレじゃねぇぞ!」

 さらにからかうインバスに、ギギが怒鳴り声を上げる。

「そんなに死に急ぎたいなら、望み通りにしてあげるわ・・」

 インバスがため息をついてから、翼の羽根の1本を手にした。羽根が巨大化して剣へと形を変えた。

 インバスがギギのオーガに向かって剣を振りかざした。彼女とオーガの距離はあったが、オーガの斧の刃が両断された。

「何だとっ・・!?

 折られた斧を目の当たりにして、ギギが驚愕する。

「これが私とあなたの力の差よ。今のままでは、あなたは絶対に私には勝てない・・」

「オレを見くびるな・・オレは、メフィストという獲物を狩る・・1匹残らずな!」

 勝利を確信しているインバスに対し、ギギは強気を絶やさない。

 ギギのオーガが刃の折れた斧をインバス目がけて投げつける。インバスが上に飛翔して、斧をかわした。

 そのさらに上まで跳び上がり、ギギのオーガが待ち伏せていた。オーガが拳を振り下ろし、インバスの左肩に当てた。

「少しはやれるようね・・それで私も少しは本気になれそうね・・」

 インバスが笑みをこぼして目を見開いた。その瞬間、ギギは彼女の殺気を感じて気圧された。

 インバスが剣を突き出す瞬間、ギギのオーガが姿を消した。

「ようやく身の程を思い知った、というところね・・」

 体を震わせているギギを見下ろして、インバスが笑みをこぼしていた。

 

 オーガと一体となったシドは、アークを力で圧倒していた。

「私の全力でも、今のヤツに歯が立たぬというのか・・!?

 シドに対して劣勢になっていることに、アークがいら立ちを募らせる。

「お前も他のメフィストも全員倒す・・お前たちのように、他のヤツを傷付けて平気でいる敵を、オレは野放しにはしない・・・!」

 シドが怒りの声を上げて、右手を握りしめてアークに近づいていく。

「お前たちは私たちには遠く及ばない下等な存在だ・・私たちがお前たちを自由にしても、おかしなことは何もないぞ!」

 アークが怒号を放ち、手にしている剣を振りかざす。しかしシドに右手の指で剣をつかまれた。

「その思い上がりを、オレは絶対に許さない・・・!」

 シド右手に力を込めて、アークの手から剣を弾き飛ばした。

「何っ!?ぐふっ!」

 驚愕するアークが、シドの左の拳に殴られて倒れる。

「わ、私が・・お前たちのような、下等な存在に負けるなど・・・!」

 アークが声と力を振り絞り、シドを鋭く睨みつける。

「下等なのは、他のヤツを下等だと見下して、思い上がるお前たちのほうだ・・!」

 シドが怒りを膨らませて、剣を具現化して振り上げた。

 そのとき、シドの右肩を別の剣が貫いた。

「ぐっ!」

 オーガの中にいたシドも右肩に痛みを覚える。彼に剣を突き刺したのは、インバスだった。

「悪いわね、水を差して・・でも仲間が死ぬよりはいいと思ってね・・」

「インバス・・余計なマネを・・・!」

 微笑みかけるインバスに、アークが不満を覚える。

「仕留めるなら早く済ませてよね。でないとあなたのご要望に応えてばかりというわけにいかなくなるわ・・」

「次に手を出すなら、お前も容赦しないぞ・・!」

 注意を投げかけるインバスに言い返してから、アークが立ち上がり、肩を押さえているシドに右手の爪の先を向ける。

「今までの礼をさせてもらうぞ、アポストル・・・!」

 憎悪を込めた笑みを見せるアークに憤るも、シドは右腕を思うように動かせなくなっていた。

 

 苦境に立たされたシドたちの様子を、ハントたちもミリィたちもモニター越しに見ていた。

「このままではシドたちがやられてしまう・・・!」

「アロンとラミアたちも急行していますが、他のメフィストに妨害されています!」

 シーマが焦りを感じて、レイラが状況を報告する。アロンたちはシドたちの援護に行くことができない。

「オーガを出せるアポストルの中で、今ここにいるのは、ミリィだけ・・・」

「しかし、ミリィの今の精神状態では、加勢できたとしてもシドたちを援護できるかどうか・・」

 ミリィのことを考えるハントに、シーマが苦言を呈する。

「ギギにシドを連れ戻すように伝えろ!無理やりにでもだ!」

 ハントが命令を出して、アルマとレイラが通信を送った。しかし混戦の中にいるシドやギギたちから応答がなかった。

 

 悪戦苦闘を強いられているシドを目の当たりにして、ミリィは心を動かされていた。しかしオーガを倒されたときの恐怖が、彼女をこの場に留まらせていた。

「このままじゃシドさんがやられてしまう・・・!」

 ミリィとエリィのそばにいたテルが、シドを心配する。

「ミリィさん、お願いです!オレをシドさんのところへ連れていってください!」

 シドがミリィに振り向いて頼み込んできた。

「悔しいですが、オレはまだオーガを出せないです・・だから、オーガの出せるミリィさんにお願いするしかないんです!」

「ですが、今のお嬢様にはオーガを出して戦うことは・・・」

 呼びかけるテルに対し、エリィがミリィへの気遣いを口にする。

「このままだとシドさんが・・このまま指をくわえて見てるなんてできない・・・!」

「テルさん・・・」

 必死に頼み込むテルに、ミリィが戸惑いを覚える。自分にしかシドを救えないと思うようになり、彼女は心を動かされていた。

「分かりました・・私が行ってみます・・・」

 ミリィが迷いを振り切ろうとしながら、シドの救出に行くことを決めた。

「お嬢様、大丈夫なのですか・・・!?

「怖いです・・でも、怖がって何もしなかったために、助けられるはずの命を助けられなかったほうが、もっと怖いです・・・」

 エリィが心配して、ミリィ正直な気持ちを口にする。まだ震えていた彼女だが、シドを助けるために勇気を出そうとしていた。

「テルさん、エリィさんと待っていてください。シドさんを連れて、戻ってきます・・」

「ミリィさん・・ありがとうございます!」

 微笑んだミリィに、テルが感謝して深々と頭を下げた。ミリィが外に出て意識を集中する。

(ヒビキさんのようになりたくはない・・でも、そのために誰かが傷ついたり悲しい思いをしたりするのは、もっと耐えられない・・・)

 自分の周りの人たちのことを気遣うミリィ。その優しさが、彼女に勇気を与えていた。

(戦わなくても、シドさんやみんなを助けるぐらいは・・・!)

 思い立ったミリィの体から光があふれ出した。オーガが姿を現して、彼女の後ろに降り立った。

 ミリィを肩の上に乗せて、オーガが翼をはばたかせて飛び上がった。

“シドさんがメフィストに傷ついた肩を攻められています!”

 レイラからの報告が伝わって、ミリィが緊張を膨らませる。

(早く行かないと、間に合わなくなってしまう・・でも、これでも全力の速さ・・これ以上は出せない・・・!)

 焦りを膨らませていくミリィが、シドの救出のための方法を考えていく。

(もっと速さが出せたら・・もっと速くなりたい・・もっと強くなりたい・・・!)

 力を求めるようになり、ミリィが集中力を高めていく。

 そのとき、ミリィとオーガの体から淡い光が発せられた。

「この光・・えっ・・!?

 動揺するミリィが、オーガに吸い込まれ始めていく。

「わ、私がオーガの中に・・!?

 さらに動じるミリィがオーガの中に入った。オーガから発する光が強まって、背中の翼が大きく広がった。

「こ、ここは!?・・もしかして、私もオーガと融合した・・・!?

 自分にも起こったオーガとの融合に、ミリィが戸惑いを募らせる。彼女との融合で、オーガも強化が果たされた。

 

 

12

 

小説に

 

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