魔法少女リリカルなのはSchlüssel

12th stepvestige

 

 

 兄、庵に裏切られ、魔女にリンカーコアを奪われた仁美。しかしその魔力の根源は水晶に閉じ込められることなく、かりそめの体を持って、漆黒の闇の中を漂っていた。

 一糸まとわぬ姿で闇の中をさまよっていく仁美。彼女はその中で、幼い頃の自分と兄との思い出を思い返していた。

 いつも優しくしてくれて、何事に対しても負けない兄。そんな強い庵に対して、仁美は兄以上の想いを抱えていた。

 しかしその兄はどこにもいなくなっていた。彼女の心の中にしかいない。

 悲しみのあまりに涙を流す仁美。彼女は背中に何かが当たったような感覚を感じて、背後に視線を向ける。

 そこには同様に一糸まとわぬ姿で意識を失っていたユウキの姿があった。今ぶつかった衝動で、ユウキはゆっくりと眼を開き、もうろうとしている意識の中で周囲をうかがう。

「ここは・・・仁美・・・?」

「ユウキさん・・・無事だったんですね・・・」

 困惑を見せているユウキに、仁美が笑みをこぼす。だがすぐに彼女の顔から笑みが消える。

「ゴメンなさい、ユウキさん・・私がお兄ちゃんを信じようとしたばかりに・・・」

「仁美・・・気にするな。お前は真っ直ぐ庵を信じていただけなんだ・・お前を責めることなんてできないよ・・・」

「ユウキさん・・・」

 ユウキに励まされて、仁美はユウキにすがりつく。ユウキも仁美の体を強く抱きしめる。

 様々な思いと心を裏切り、そして裏切られ、打ちひしがれていた2人。互いへの抱擁とそのぬくもりだけが、傷ついた2人の心の痛みを和らげる唯一の術だった。

「やはりお前たちも意識を取り戻したようだな。」

 そこへ声がかかり、ユウキと仁美が緊迫を覚えて振り返る。その先には庵の姿があった。

「庵・・・」

「ここはヘクセス様の体内。取り込まれたリンカーコアが集まっている場所だ。」

 庵の言葉を受けて、ユウキと庵が周囲を見回す。淀む闇の中で、水晶に閉じ込められた裸身の人々の姿があった。その中にはユウキたちの見知った人たちもいた。

「シグナム・・ユーノくん・・・」

「ヴィータちゃん・・・」

 ユウキと仁美が沈痛の面持ちを浮かべる。彼らは自分たちが、シグナムたちを傷つけてしまったと思っていたのである。

 かつての友情、幼い頃からの兄への想い。それを確かめるため、ユウキも仁美も他の仲間たちを裏切り、傷つけてしまった。

「すまない、みんな・・・オレが・・オレが・・・」

「悔やむことはない、ユウキ。もはや誰もヘクセス様を止めることはできない。世界は新たなる色で塗り替えられるのだ。」

 歯がゆさをあらわにするユウキに、庵が淡々と言いかける。その言葉にユウキが反論する。

「そんなことはない!あってたまるか!またなのはちゃんやはやてちゃん、みんなが残ってるんだ!」

「だがムダだ。ヘクセス様は数多くの魔導師、騎士の魔力を得ている。もはやお前たちに、わずかな希望すらない。」

 勝ち誇った笑みを浮かべる庵。困惑を抱えながらも、ユウキと仁美はなのはたちに全てを託した。

 

 数多くの魔導師、騎士たちの強力な魔力を取り込み、ついに完全な復活を遂げた魔女、ヘクセス。次元の壁を打ち破り、その漆黒の姿をなのはたちの前に現した。

「こ、これが・・!?

「魔女・・・!?

 なのはとフェイトが驚愕しながら声を上げる。ヘクセスは全身に邪気を帯びながら、なのはたちを見据える。

「人間どもよ、そなたらはわらわの手によって、闇に葬られるのだ・・」

 ヘクセスが言い放ったところで、鎧たちを一掃させてきたはやて、ライム、ジャンヌが駆けつけてきた。

「なのはちゃん!」

「ライムちゃん、はやてちゃん、ジャンヌちゃん!」

 ライムの呼びかけになのはが答える。

 そのとき、ヘクセスから邪気が解き放たれ、周囲に広がっていく。

「危ない!」

 フォルファがなのはたちに駆け寄り、球状の障壁を展開して彼女たちを包む。広がる邪気を防ぐ障壁に荒々しい火花が巻き起こる。

 邪気はさらに広がり、やがて異空間の外にも広がっていった。

 

 邪気はなのはたちの住む世界に広がり、影響を及ぼしていた。その衝動に、大河の呼びかけで京野家に集まっていたアリサ、すずか、陸、海、奈々、紅葉が緊迫を覚えていた。

「ちょっと、何なのよ・・・!?

 その異変にアリサがたまらず声を荒げる。大河が様子を確かめようと外に身を乗り出す。

 空は異様な雲行きに変わりだしていた。その異変に大河が驚きをあらわにする。

「空が、おかしい・・・」

「それって・・・!?

 大河の呟きに奈々が声を荒げる。その直後、その異変が一気に広がり、彼女たちがいるこの家にも及んだ。

 その影響下で、大河やアリサたちの体が足元から灰色に変色し始める。

「ちょっと、これって・・・!?

「何なのよ、いったい・・・!?

 その変化にすずかとアリサが声を荒げる。

「なのはちゃん・・フェイトちゃん・・・」

 すずかの悲痛の声を最後に、彼女たちは邪気による石化に完全に包まれた。邪気はさらに広がり、人々を物言わぬ石像へと変え、生の輝きのない死の世界へと塗り替えていた。

 

 灰色に変貌を遂げていく世界を、なのはたちも目の当たりにして愕然となっていた。

「私たちの町が・・・」

「みんな、石に変わってく・・・」

 変わり果てた世界を目の当たりにして、なのはとライムが声を上げる。絶望感に揺さぶられる彼女たちを見つめて、ヘクセスが妖しく微笑む。

「わらわが存在することは、今ある世界の崩壊を意味する。力なき者はわらわのこの姿を見ることなく、永遠の眠りへと堕ちる・・・」

 魔女の言葉になのはたちが深刻な面持ちを浮かべて振り返る。

「そなたらも闇に堕ちるがいい。わらわに身を委ねれば、苦痛や悲劇を味わうこともなくなる。」

「そんな世界、私たちは認めない・・・!」

 ヘクセスのいざないをなのはは拒む。

「確かに苦しいことも辛いことも、悲しいこともある。だけど・・・!」

「楽しいことも嬉しいこともある!みんなの笑顔もある!」

「その笑顔がなかったら、もっと辛い・・・!」

「だから笑顔を守るため、あなたを倒します・・・!」

 続いてフェイト、はやて、ライム、ジャンヌもヘクセスに呼びかける。なのはたちはそれぞれの杖を構えて魔女と対峙する。

「そなたらの勇ましさ、褒めて遣わそう。だが同時に、愚かな考えだ・・・」

 ヘクセスは淡々と告げると、右手をかざして魔力を放出する。漆黒の魔力を、なのはたちは後退して回避する。

 その中でなのはとフェイトは、庵、仁美との戦いで体力を消耗していた。

「なのはちゃん、フェイトちゃん、大丈夫?」

「ジャンヌ・・うん、平気・・」

 ジャンヌの声にフェイトが答える。だがフェイトもなのはも疲れが見えていることはジャンヌの眼にも明らかだった。

「シャイニングソウル、シャイニングフォーム。」

Shining form.Drive ignition.”

 ジャンヌの呼びかけを受けて、シャイニングソウルが変形を始める。先端のバレルが透明な宝玉に収束するような形状となる。フルドライブの「シャイニングフォーム」である。

 シャイニングフォームは自身をはじめ、周囲に霧散している魔力を収束して、あらゆる方法で使用することのできる形態である。

「天使の息吹。女神の祝福。傷ついた心に癒しの雫を・・リザレクション!」

 ジャンヌが最高位の回復魔法「リザレクション」を発動する。リザレクションは傷はもちろん、リンカーコアの魔力消費も回復することができ、対象を完全に治癒、回復する。

 その効果を受けて、なのはたちの傷が癒え、魔力、体力が回復される。

「これで万全の状態に戻ったはずだよ。」

「ありがとう、ジャンヌちゃん・・」

 小さく頷くジャンヌに、なのはが微笑んで感謝する。そして彼女たちは改めてヘクセスを見据える。

「最高位の治癒魔法か。だが万全であろうと、わらわには到底及ばぬ。」

 ヘクセスが悠然と語ると、再び魔力を解き放つ。なのはたちは散開して回避し、迎撃に出る。

「アクセルシューター、シュート!」

 なのはがヘクセスに向けて魔法弾を数個発射する。魔法弾は魔女の周囲を旋回して、いっせいに襲い掛かる。

 しかしヘクセスは回避する様子も見せず、魔法弾の直撃を受ける。だがヘクセスは平然としており、全く効果がなかった。

 そこへすかさず、フェイトがザンバーフォームのバルディッシュを振り下ろしてきた。だがその奇襲にヘクセスは気づいていた。

「ダークネスホール。」

 ヘクセスから漆黒の球状のエネルギーが展開され、バルディッシュの光刃を阻む。漆黒の衝動でフェイトが吹き飛ばされる。

「フェイトちゃん!」

 たまらずなのはが叫ぶ。ライムが毒づきながら、クリスレイサーを構える。

(なんて力だ・・魔力やカートリッジの温存なんて、考えてる場合じゃない・・・!)

「クリスレイサー、ソリッドフォーム!」

Solid form drive ignition.”

 ライムのまとうバリアジャケットが軽量化される。高速化にために備えて、ライムがヘクセスを見据える。

Solid action start up.”

 ライムが一気に魔女に詰め寄る。その速さは残像を残すほどで、何人ものライムが上空からヘクセスを狙い撃ちする。

 シルバースマッシャーの連射がヘクセスを襲うが、それでも魔女は平然としている。ライムは間髪置かずに上空に飛翔し、白い光刃を高らかに掲げる。彼女の背から天使のような白い翼が広がる。

「天牙一閃!」

 ライムが一気に降下し、カートリッジを装てんして威力を上げたクリスレイサーを振り下ろす。速さと力を兼ね備えた威力が魔女に叩き込まれたはずだった。

 だがヘクセスは、ライムの光刃を難なく受け止めていた。

「そんな!?

「言ったであろう。そなたらの力はわらわには通じぬ。」

 へクセスが光刃をつかんだまま魔力の稲妻を放つ。その衝撃にライムが悲鳴を上げる。

「ライム!」

 そこへジャンヌがシャイニングソウルを構えて飛びかかるが、ヘクセスはライムをジャンヌに投げつける。2人は衝突し、その勢いのまま横転する。

「僕たちの攻撃が全然通じない・・・!」

「効かないはずがない。だけど取り込んでいるリンカーコアが多くて、その分魔力が上がっている・・・」

 毒づくライム。ジャンヌが魔女の脅威を分析する。

「これで分かったであろう。力を得て復活したわらわの力を。」

「それは違う・・あの子たちやユウキさん、みんなから奪った力やないか・・・!」

 悠然と語るヘクセスの言葉にはやてが反論する。だがヘクセスは悠然さを崩さない。

「確かにこれらの魔力には宿主がいた。だがその力も、今ではわらわの力だ。」

 ヘクセスがいい終わると、なのはたちに向けて右手を掲げる。

「スターライトブレイカー。」

 ヘクセスが口にした呪文と、右手から放たれた砲撃になのはたちは驚愕する。魔女が放ったのは明らかになのはの長距離魔法である。

「跳ね返すんだ、クリスレイサー!」

Mirage wall.”

 なのは、フェイト、はやてが回避行動を取る中、ライムがジャンヌを守るため、反射効果のある氷の壁を出現させる。放出系の魔法ならば、効果に関係なく反射させることができる。

 だがヘクセスが放った砲撃は威力がすさまじく、ライムが展開した障壁は反射しきれず、ガラスのように粉々に砕かれてしまう。

 砲撃は勢いが衰えることなく、ライムとジャンヌを吹き飛ばす。クリスレイサーとシャイニングソウルのオートガードに守られたものの、2人は傷つき横転する。

「ライムちゃん!ジャンヌちゃん!」

 なのはがたまらず声を荒げる。フェイトがヘクセスが放った魔法に疑問を感じていた。

「どういうことなの・・あれは確かに、なのはのスターライトブレイカー・・・!」

「教えてやろう。わらわは取り込んだリンカーコアに記憶されている魔術を使うことができる。たとえ体外にリンカーコアが取り出されたとしても、その魔術を失うことはない。つまり、高町なのは、そなたの力は、全て見切っている・・・」

 動揺をあらわにするなのはに、ヘクセスが妖しく微笑む。そして両手を軽やかにかざして、魔法を発動させる。

「ウィンドバインド。」

 拘束の風がなのは、フェイト、はやての体を縛り付ける。

「こ、これは・・・!?

「ひばりちゃんの魔法・・・!?

 フェイトとなのはがさらなる驚愕を口にする。妖しく微笑むヘクセスがはやてに眼を向ける。

「さて、そろそろ終焉といこう。そなたらの魔力、わらわの糧としてくれる・・まずは夜天の主、八神はやて、そなただ。」

 はやてに狙いを定めるヘクセス。なのは、フェイト、はやてが即座に風のバインドを打ち破る。

 だが回避しようとしていたはやての背後に、ヘクセスが瞬間移動してきた。

「もはや逃げられん。わらわからも、世界の破滅からも・・・」

 振り返ったはやてから魔力を奪い取ろうと、ヘクセスが手を伸ばす。だがそこへライムが飛び込み、迎撃を試みる。

Smasher mode.Drive ignition.”

「スターダストミーティア!」

 ライムがはやてをかばいつつ、ヘクセスに向けて砲撃を放つ。至近距離からの砲撃のため、倒せなくても怯ませることはできるとライムは確信していた。

 だがヘクセスはその砲撃を、魔力を凝縮させた右手で軽々と受け止め、打ち消していた。

「そんな・・・!?

 驚愕するライムの体をヘクセスの魔手が貫いた。

「順番が変わってしまったが・・いずれにしろ、そなたらが敗北することに変わりはない。」

 そしてライムからリンカーコアを取り出し、ヘクセスは自分の体に取り込む。

「ライムちゃん!」

 力を失っていくライムに、はやてが駆け寄る、魔力を失ったライムの体は石のように固くなっていく。

「はやてちゃん、僕は平気だよ・・だって僕には君が、みんながついてるんだから・・・」

 はやてに微笑みかけたまま、ライムは完全に石化に包まれた。変わり果てたライムの姿に、はやてはいたたまれない心境に駆られた。

 だがヘクセスははやての体を背後から貫いていた。そして彼女の強靭な魔力を奪い、自らに取り込んだ。

「そなたの魔力、今度こそもらい受けるぞ。」

 妖しく微笑むヘクセスの前で、はやての体が胸元から石に変わっていく。

(みんな、ゴメンな・・助けることができなくて・・・)

 守護騎士たちに対して思いを秘めるはやても、完全に石化に包まれてしまった。

「ライムちゃん・・はやてちゃん・・・」

 困惑を隠しきれなくなるなのは。ヘクセスが次の標的を見定めようと周囲をうかがっていた。

(ライムもはやても、みんなのために・・私も全力を出さなくちゃ・・・!)

「インパルスブラスター!」

 ライムとはやての思いを背に受けたジャンヌが、ヘクセスに向けて見えない砲撃を放つ。その直後、へクセスが右手を振りかざして氷の壁を作り出し、ジャンヌの砲撃を阻む。

「そんな・・ライムの魔法まで取り込んだっていうの・・・!?

 驚愕を覚えるジャンヌに、ヘクセスがゆっくりと近づき手を伸ばす。

「恐れることはない。そなたもわらわの一部となるのだから。」

 言いかけるヘクセスがジャンヌの胸を貫く。ジャンヌからもリンカーコアを奪い取り、その魔力を自分のものとする。

「なのは、私は大丈夫だから・・なのははなのはの道を進んで・・・」

 なのはとフェイトに全てを託したジャンヌも魔力を失い、石像へと変わった。力を上げていくヘクセスが、右手を動かしてその実感を確かめる。

「3人の強靭な魔力、存分に発揮させてもらおう・・・ダークネスホール。」

 ヘクセスが漆黒の魔力を解き放ち周囲からの進入を阻む。だがフェイトは構わずに、ザンバーフォームのバルディッシュを振りかざす。

「疾風、迅雷!」

Sprite zamber.”

 魔法効果を打ち破る力を備えた光刃が漆黒の魔力を切り裂く。だがその力はヘクセスに防がれる。

「次はそなたか、フェイト・テスタロッサ。」

「フェイトちゃん!」

 フェイトに眼を向けたヘクセスに、なのはがレイジングハートを構える。カートリッジを4個、立て続けに装てんし、砲撃魔法に備える。

「ムダだ。そなたの力はわらわには通じぬ。そなたの力をわらわは見切っておるし、今のわらわの力の前では、もはやそなたらなど赤子同然。」

 ヘクセスもなのはに眼を向け、右手を向けて魔力を収束させる。

「エクセリオンバスター!」

「エクセリオンバスター。」

 なのはとヘクセスが同時に中距離砲撃を放つ。だが様々な魔力を取り込んでいるヘクセスの魔力が、次第になのはを追い詰めていく。

 そしてついに、ヘクセスの力がなのはを吹き飛ばした。レイジングハートのオートガードによって守られたものの、なのはは大幅に魔力を削られてしまう。

 満身創痍に陥ったなのはにヘクセスがゆっくりと近づく。

「高町なのは、そなたの魔力、改めてもらい受ける。」

 ヘクセスは言い放つと、なのはに向けて手を伸ばす。だがその魔手はなのはではなく、彼女をかばって前に出たフェイトの胸を貫いていた。

「フェイトちゃん・・・!」

「なのはを、これ以上傷つけさせるわけにはいかないから・・・」

 驚愕するなのはに、フェイトが優しく語りかける。その体から金色の結晶が引き抜かれ、ヘクセスの体に取り込まれる。

 魔力を失ったフェイトの体が灰色に染まっていく。それでもフェイトは笑みを絶やさない。

「なのは、私も信じてるから・・もう1度みんなと笑いあえるのを・・・」

 なのはに思いを伝えたフェイトも、完全に石化に包まれた。変わり果てた仲間たちの姿になのはは愕然となった。

「これでわらわの力はまたさらに増した。もはやいかに抵抗しようとも、誰もわらわを止めることはできぬ。」

 ヘクセスが高まった自分の力を確かめる。

「雷牙発動!」

 そこへ稲妻をまとったフォルファが飛びかかり、拳を繰り出す。だが左手をかざしたヘクセスに軽々と受け止められる。

「なっ・・!?

「ダークネスホール。」

 驚愕するフォルファに対し、ヘクセスが持てる魔力を解き放つ。その凄まじい威力を受けたフォルファが異空間の壁に叩きつけられる。

「フォルファさん!」

 叫ぶなのはの先で、フォルファが傷つき倒れる。高まっていくヘクセスの魔力に彼は毒づいていた。

(何という力だ・・これではなのはに勝ち目がない・・あの、三種の神器に秘められたあの魔法なら、魔女を封印、あるいは消滅させることができたんだが・・それは三種の神器に選ばれた者、つまりはユウキ、仁美、京野庵でなければ発動できない・・・万事休すか・・・!)

 打開の糸口を見失い、フォルファは危機感を覚えていた。その前でヘクセスが視線を向ける。

「これで残ったのはそなた1人・・たとえ三種の神器の力をもってしても、そなたがわらわに敵うことはありえぬ。諦めるのだな。」

「イヤ・・諦めない・・・!」

 悠然とするヘクセスになのはが抗う。

「ここで諦めたら、みんなの気持ちまで壊れちゃうから・・だから諦めたくない・・・!」

「・・その強靭な魂と力、褒めてやろう。それらに免じて、そなたの信じる仲間の力で葬ってやろう。」

 ヘクセスがなのはに右手をかざすと、その手のひらに金色の光が収束される。フェイトの最大級の砲撃魔法「プラズマザンバー」である。

(諦めたくない・・フェイトちゃん、はやてちゃん、ライムちゃん、ジャンヌちゃん・・・みんなが私を信じてくれてるから・・・!)

 それでもなのはは立ち上がり、砲撃魔法で迎え撃とうとする。だが傷ついた彼女が魔女の強大となった力に及ばないのは明らかだった。

「私は諦めない!みんなのいるこの場所が大好きだから!」

「そうだ!諦めるな!」

 そのとき、どこからか声がかかり、なのはは周囲をうかがう。その直後、鋭い一閃がヘクセスの右肩を切り裂いた。

 突然の攻撃を受けて、ヘクセスが収束させていた魔力が霧散する。そしてなのはの隣に1人の青年が着地する。

 オレンジの整った髪をしており、オレンジと蒼を織り交ぜたバリアジャケットを身に着けている。手には軽量性の見られる剣が握られている。

 青年の登場になのはは当惑を覚える。その矢先に、彼女は上空に停滞する戦艦を目の当たりにする。

「これって・・アースラ・・・!?

 困惑のあまりに声をもらすなのは。戦艦の形状はアースラと大きく酷似していた。

「同じ管理局の戦艦だけどさ・・時空管理局所属、特務艦“ミーティア”。そしてオレは管理局執務官、ハイネ・ヴェステンフルスだ。」

 青年、ハイネの紹介になのはが驚きを見せる。だがすぐに気を取り直して、ヘクセスに視線を戻す。

「魔女の力はとんでもないくらいに上がっている。だけど勝算がないわけじゃない。」

 ハイネの言葉になのはは耳を傾ける。

「魔女にはウィッチコアと呼ばれる魔力の根源があり、その力でリンカーコアの吸収を行っている。そのウィッチコアを破壊すれば、みんなのリンカーコアを取り戻すことができるはずだ。」

「それじゃ・・!」

「強い力を与えて拮抗させれば、ウィッチコアはその力に呼応して光を放つはず。オレとミーティアが攻めている間に、君はウィッチコアを見つけ出して破壊してくれ。」

「はい、分かりました!」

 ハイネの指示になのはが答える。

「行くよ、レイジングハート!」

All right, my master.A.C.S. standby.”

 なのはの声にレイジングハートが答え、6枚の光の羽根を展開する。なのはは身構えながら、ヘクセスの魔力の根源を探る。

(艦長、イグナイテッドの発射を。目標、魔女。)

“分かった。うまく魔女を引き付けてくれ。そこを狙う。”

 念話を使ってハイネがミーティアに向けて呼びかける。すると艦長が答え、指示を与える。

 ミーティア内の作戦室。艦長の指示の下、魔導砲の発射準備を行っていた。

「イグナイテッド、バレル展開!効果範囲、収縮!」

「ファイアリングロックシステム、オン!」

 オペレーター、そして艦長の声が飛び交う。眼の前に現れた箱状の引き金に艦長は鍵を差し込む。魔導砲の発射キーである。

「もしかしてミーティアってアルカンシェルのことじゃ・・ダ、ダメです!そんなの撃ったら、石にされているフェイトちゃんたちまで・・!」

 ミーティアを発射しようとしていたところで、なのはが抗議の声を上げる。するとハイネは気さくな態度で答える。

「大丈夫だ。ミーティアはアルカンシェルをちょっといじくったものなんだ。空間歪曲を収縮して範囲を絞ることが可能なんだ。」

 その説明を受けて、なのはが安堵の笑みを浮かべる。

「ヴェスティージ、オレたちの先行だ!」

Bewegung!”

 ハイネの言葉に剣のデバイス「ヴェスティージ」が答える。カートリッジを装てんした剣を構えて、ハイネはヘクセスに飛びかかる。

「ダークネスホール。」

 飛び込んできたハイネの一閃に対し、へクセスは魔力を放出してハイネを弾き飛ばすも、2人の魔力は互いを相殺していた。

 体勢を整えて着地し、距離を取ってヘクセスを見据えるハイネ。その間にも、ミーティアではイグナイテッドの発射準備が完了していた。

「イグナイテッド、発射!」

 艦長が発射キーを回すと、ミーティアの前方から高出力のエネルギー砲が放たれる。ヘクセスが持てる魔力を右手に集中させて、その砲撃とその歪曲を受け止める。

 空間歪曲と反応消滅の威力は凄まじく、ヘクセスは全力を出すことを余儀なくされた。そのため、魔女の胸元に淡い輝きが灯る。

(あれが・・!)

 その光をウィッチコアと判断したなのはは、その輝きに狙いを定めて飛び出す。

Load Cartridge.”

 魔力の弾丸が立て続けに4発装てんされる。そしてなのはは閃光の中にいる魔女の輝き目がけてその真っ只中に飛び込んでいく。

(みんなが私を支えてくれている・・みんなの気持ちがあるから、今の私がある・・だからその気持ち、届けてみせる!)

 なのはが閃光によって発せられている障壁をレイジングハートを駆使して突き破ろうとする。膨大な魔力の衝突の中、先端のストライクフレームが障壁を突き破る。

「エクセリオンバスター、ブレイクシュート!」

 そこからなのはは高出力の魔力砲を解き放つ。

「お願い!届いて!」

 なのはの思いを乗せた魔力で、閃光が弾ける。その反動でなのはが吹き飛ばされ、髪を結わいていた白いリボンが断ち切れる。

 だが魔力は消えることはなく、ヘクセスの体内を駆け巡っていった。

 

 魔女の中へと入っていった魔力を、ユウキ、仁美、庵も察知していた。

「この力・・・まさか、高町なのはが・・!?

 近づいてくる魔力に、庵が声を荒げる。魔力の接近により、ユウキたちはその光を眼にする。

(なのはちゃん、ちゃんと届いたよ。なのはちゃんの強い気持ち・・・君のように、オレも答えを出したよ・・・)

 そのあたたかな光を見つめて、ユウキは微笑んで頷く。そしてその光に向けて手を伸ばす。

 そして仁美もその光に手を伸ばす。なのはの強く優しい光を、2人はつかみ取る。

「バカな!?・・ここまで、ヘクセス様の中にまで魔力を通すなど・・!?

 信じられない心境に駆られる庵。ユウキと仁美は手にした光をじっと見つめている。

(さよなら、お兄ちゃん・・私、もうお兄ちゃんに甘えたりしないから・・・)

 兄、庵への想いに区切りをつけて、仁美は光に意識を集中する。

「シェリッシェル!」

「クライムパーピル!」

 ユウキと仁美が呼びかけると、自分たちが使っていた三種の神器がそれぞれ手の中に出現する。そして困惑している庵の手にも、剣の形状のクリンシェンが現れる。

「クリンシェン・・・!?

 庵が見つめる中で、クリンシェンがシェリッシェル、クライムパーピルに呼応するかのように輝きを放つ。それは三種の神器とその使い手だけが使用できる魔法の発動を意味していた。

「三種の光よ、漆黒の闇を打ち払え!」

Mix delta.”

 ユウキと仁美が同時に呼びかけ、2人のつかんでいる光が2つの三角形へと変化する。そしてその形状のまま、ユウキたちが見上げている先の漆黒の水晶に向けて放たれる。

 光を受けた水晶がまばゆいばかりの閃光を放ちながら砕け散る。その直後、周囲に漂っていた水晶たちがその束縛から解放され散らばっていく。

「ヘ、ヘクセス様!」

 庵がたまらず声を荒げる。ユウキたちも魔女の呪縛から解放され、肉体へと還っていった。

 

 リンカーコア収容の源であり、魔力の根源でもあったウィッチコアが破壊され、ヘクセスが絶叫を上げる。彼女の体から取り込んでいたリンカーコアが飛び出し、各々の宿主へ戻っていく。

 魔力の根源を取り戻したフェイトたちの石の体が、光を帯びて元の色を取り戻していく。

「あ・・元に戻ったの・・・?」

 当惑しながら現状を確かめようとするフェイト。そこで彼女はなのは、そして同様に石化から解放されたはやてたちを眼にする。

「なのは!」

「あっ!フェイトちゃん!みんな!」

 フェイトが呼びかけると、なのはが笑顔を見せて答える。そしてはやて、ライム、ジャンヌもなのはに駆け寄ってくる。

 そしてシェリッシェルを手にしているユウキと、クライムパーピルを手にしている仁美も駆けつけてきた。

「ユウキさん・・」

「仁美さん・・」

 2人の無事になのはとフェイトが安堵の笑みを見せる。

「ゴメン、なのはちゃん・・オレのために、みんなに迷惑をかけてしまって・・・」

「もういいよ・・私の、みんなの気持ち、ユウキさんたちに届いたんですね・・・」

「あぁ・・なのはちゃんが力を分けてくれたおかげで、オレと仁美は・・・」

 微笑んで頷くユウキは、なのはから返されたシェリッシェルを見つめる。そして決意を胸に秘めて、満身創痍に陥っているヘクセスに眼を向ける。

「フォルファから話は聞いてる。この三種の神器には、魔女の力を封じ込める魔法があるの。でもこの魔法は、三種の神器に選ばれた人、つまり私たちでしか使えないものなの。」

 仁美がなのはたちに説明を入れる。

「三位一体魔法“ミックスデルタ”を使えば、魔女を封印、さらにそこから強い力で攻撃すれば、消滅させることもできるって。」

「仁美さん、それって・・!?

「私とユウキさんが魔女の力を抑えるから、そこを全力で撃ち込んでほしいの。フェイトちゃん、なのはちゃんたちを信じてるから・・・」

 なのはたちに信頼を告げる仁美。ユウキに眼を向けて頷きあうと、魔法の発射に備える。

「シェリッシェル、クライムパーピル、結合!」

Awakening.”

 ユウキと仁美、そして庵が手にしていた三種の神器が結合し、1機のデバイスを成す。ユウキと仁美はそのデバイスを手にして、魔法発射のために魔力を注ぎ込む。

「取り込んだ魔力の根源たちを・・・これ以上お前たちの好きにはさせんぞ!」

 激昂したヘクセスが、ユウキたちの魔法の発動を阻止すべく、右手を向ける。

 そのとき、ヘクセスの体が白く凍てつき、その動きを止める。その瞬間に驚きを見せたなのはたちは振り向いた先には、デュランダルを構えているクロノの姿があった。リンカーコアを取り戻したことで、石化が解かれたのである。

「これ以上、お前の自由にさせるわけにはいかない!」

「クロノくん・・・」

 ヘクセスに言い放つクロノに、なのはが安堵の笑みを浮かべる。ヘクセスは力ずくで凍結を打ち破ろうとする。

 そこへはやてがシュベルトクロイツを構えて魔法の発動に備える。

「撃ち抜け、ミストルティン!」

 展開された魔法陣から、石化の効果を帯びた光の槍が放たれる。その槍に体を貫かれた魔女の体が灰色に染まる。

 次々と体を拘束されるも、ヘクセスは魔力を振り絞ってその効果を打ち破ろうとする。

「轟天爆砕!ギガントシュラーク!」

 そこへ巨大な鉄槌が魔女目がけて振り下ろされた。右手をかざして受け止めるヘクセスの先には、復活したヴィータの姿があった。

「ぶっ潰せ!」

「ヴィータちゃん!」

 声を上げるなのはの見つめる先で、ヴィータがヘクセスへの一撃に力を込める。だがヘクセスは石化を打ち払い、ヴィータをその一撃ごと弾き返す。

 その先には、ボーゲンフォルムのレヴァンティンを構えたシグナムの姿があり、ヘクセスが眼を見開く。

「翔けよ、隼!」

Sturmfalken.”

 魔力を帯びた矢を放つシグナム。その一矢は疾風のごとき速さで駆け抜け、ヘクセスの体を貫いた。

 その痛烈な攻撃に、ヘクセスは絶叫を上げる。

「シグナム!」

 フェイトが声をかけると、シグナムとヴィータが笑みを見せる。だが魔女の邪気を察知して、すぐに緊迫を覚える。

「おのれ・・守護騎士の分際で!」

 憤慨したヘクセスが、シグナムたちに向けて魔力を解き放つ。身構えるシグナムとヴィータの前にザフィーラが割り込み、障壁を展開して2人を守る。

「ザフィーラ!」

 はやてが呼びかける前で、ザフィーラが必死にヘクセスの魔力を防ぐ。そしてそこへユーノ、アルフも加わり、防御魔法を発動する。

「アルフ!」

「ユーノくん!」

 フェイトとなのはが微笑んで呼びかける。

 さらにラークもウィンドバインドでヘクセスの体を縛る。そこへフォルファが破壊の雷「ツァルシュブリッツ」を放ち、魔女の攻撃を遮断する。

「大丈夫か!?

「あぁ、すまない・・」

 ファルファの呼びかけにシグナムが答える。その間に、シャマルがクラールヴィントを駆使して、なのはの傷を癒していた。

「ありがとう、シャマルさん。」

「みなさんの治療が、私の役目ですから。」

 感謝するなのはにシャマルが微笑む。シグナムたちの無事を確かめたフォルファが微笑んだ後、ユウキたちに呼びかける。

「今だ!」

 フォルファの呼びかけを受けて、ユウキと仁美がヘクセスに向けて魔法を解き放つ。

「ミックスデルタ!」

 2人の前方に三角上の魔力が展開され、ヘクセスに向けて放つ。ミックスデルタは魔女の動きを封じ込め、さらに魔力を弱まらせる。

「ぐっ・・ち、力が・・・!」

「今だ、なのはちゃん!」

 ユウキの呼びかけを受けて、なのはたちがそれぞれの魔法の発動に備える。

「全力全開!スターライトブレイカー!」

「雷光一閃!プラズマザンバー!」

「響け、終焉の笛!ラグナロク!」

「スターダストミーティア・フルスロットル!」

「解き放て、閃光!シャイニングブラスター!」

 なのは、フェイト、はやて、ライム、ジャンヌがそれぞれの最大砲撃を放つ。その拍子でフェイトのリボン、ライムの髪止めが弾ける。5つの力は結集し、ヘクセスの体を貫いた。

 強大な威力の魔力を受けたヘクセスが絶叫を上げる。閃光に包まれた魔女の体が崩壊を始める。

「フフフフ・・まさかわらわが敗れるとはな・・・だが、これで全てが終わったわけではない・・・」

 ヘクセスが微笑を浮かべて、なのはたちに呼びかける。

「光ある場所に闇がある。闇がある限り、わらわは何度でも蘇る・・・いつか必ず蘇り、全ての世界を漆黒に染め上げてくれるぞ・・・」

 ヘクセスは自身の復活を言い残し、次元の闇の中へ消滅していった。

 戦いの終幕を察して、なのはたちが安堵を見せる。持てる全ての力を注ぎ込んだことで、彼女たちの体には疲労が蓄積していた。

 だが安心するのはまだ早かった。

“みんな、早くその異空間から脱出して!崩壊が始まるよ!”

「エ、エイミィさん!」

 アースラからエイミィが呼びかけ、なのはが声を荒げる。その直後、彼女たちのいる空間が揺れだし、その崩壊を示唆していた。

 満身創痍の体に鞭を入れて、少女たちは撤退を開始する。フェイトに支えられる形となった仁美は、1人立ち尽くしている庵を発見する。

「お兄ちゃん、早く避難しよう!もうすぐここが消えてなくなるよ!」

 仁美が呼びかけると庵は振り向くが、この場を動こうとしない。

「もはやオレがここから離れる理由がない・・オレはヘクセス様とともに、新しい世界を築いていきたかった・・・だがその望みの潰えたオレに、生きていく意味はない・・・」

 生きる希望を切り捨てた庵が、異空間の崩壊で生じた亀裂の中に身を投げた。

「お兄ちゃん!」

 フェイトに支えられていた仁美が駆け出そうとするが、庵を助けるには間に合わない。

 これで全てを終わらせられると悟り、庵は笑みをこぼした。だが落下が止まったと感じ、庵は眼を見開いて顔を上げる。

 なのはとユウキが庵の右手をつかみ、助けようとしていた。

「生きる意味がないなんてことはない!庵、お前はまだ生きなくちゃいけないんだ!」

「ユウキ・・・!?

 ユウキの呼びかけに庵が驚きを見せる。

「庵さん、あなたはみんなから必要とされてる!仁美さんやユウキさんだけじゃない!私やフェイトちゃん、はやてちゃん、みんな庵さんを大切に思っているから・・!」

 ユウキに続いて庵に呼びかけるなのは。彼女の言葉を受けて、庵が周囲に眼を向ける。フェイト、はやて、ライム、ジャンヌ、そして仁美。周囲の仲間たちが庵を助けたい一心を抱えていた。

 だが庵は今の世界を受け入れることができず、考えを改めようとしなかった。

「それでもオレは、この世界を認めることはできない。オレの全てを否定することになるから・・・この世界で生き恥をさらすくらいなら・・・!」

 庵はなのはとユウキが必死につかんでいる手を振り払う。そして庵は崩壊する異空間の底へと落下していく。

「庵!」

「庵さん!」

「お兄ちゃん!」

 ユウキ、なのは、仁美が叫ぶ。異空間の中で命を散らしながら、庵は仁美を想っていた。

(仁美、お前はオレがいなくても、強く生きていける・・お前は三種の神器に選ばれたほどの力を持っている・・オレよりも、強く生きていけるはずだ・・・)

 妹へ想いを馳せながら、庵は光となって消滅した。

「くそっ!何で・・何で!」

 ユウキが庵を助けられなかったことに対して憤り、拳を床に叩きつける。なのはも沈痛の面持ちを浮かべ、悲しみに暮れている仁美にフェイトがそっと手を添える。

“みなさん、急いでアースラかミーティアに避難を!”

 そこへリンディの呼びかけが飛び込み、はやてたちは避難を始める。仁美もフェイトに支えられながらこの場を離れる。

「行こう、ユウキさん・・ここは危ないよ・・・」

「・・うん・・・」

 なのはの声を受けて、ユウキもこの場を離れることにした。

「庵・・・」

 庵に対する歯がゆさを抱えたまま、ユウキは異空間を後にした。

 

 

次回予告

 

たくさんの出会いがあって。

たくさんの別れがあって。

すれ違いも衝突もあったけど。

たくさんの思い出を抱いて。

私たちは、それぞれの未来を歩いていく・・・

 

最終回・「lyrical step

 

リリカルマジカル、未来(あした)に向かって、ドライブ・イグニッション!

 

 

作品集

 

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