舞HIME –another elements- 第14話「美袋命」

 

 

「千草、まさかお前・・・!?」

 千草がHIMEであることを知り、堅は愕然となっていた。千草も何を言ったらいいのか分からず、沈黙を余儀なくされていた。

「お前も、HIMEだったなんて・・・」

「お兄ちゃん、わたし・・・」

 動揺のあまりに顔を歪ませる堅に、千草は何とか弁解しようとする。しかし堅は苛立ちをあらわにする。

「いいか、千草!これ以上戦うんじゃない!」

「えっ・・!?」

「HIMEの力は、必ず不幸や悲劇をもたらす。これ以上戦い続けたら、1番悲しむのはお前自身なんだぞ!いいか!もうチャイルドを、ペガサスを呼び出すな!」

 感情的になって千草に言い聞かせる堅。その激昂に、彼女は素直に頷くことができず、呆然と兄の怒りの表情を見つめるしかなかった。

 そんな2人を冷ややかに見つめる赤髪の少女の姿が、その森林の木陰にあった。

 

 その後、堅と千草は後から追いかけてきた舞衣と命と合流した。困惑の表情を見せていた兄妹を見て、何かあったのだと舞衣は悟ったが、あえてこの場では聞かないことにした。

 それから楯たちのところに戻り、心配や愚痴を聞かされる羽目になった。苦笑を浮かべる堅だったが、その胸中は苛立ちと動揺で満たされていた。

 堅が楯や巧海たちと会話しているのを見計らって、舞衣は千草に声をかけた。

「あのとき、何があったの、千草ちゃん?」

「えっ?・・舞衣さん・・?」

 気のない返事を舞衣にする千草。

「あそこに、オーファンがいたんだよね?・・そこで堅くんと何かあったんでしょ・・・?」

 沈痛の面持ちで問いかける舞衣に、千草は沈黙を置いて答えた。

「実は・・お兄ちゃんに知られてしまったんです・・私が、HIMEだってこと・・」

「えっ・・!?」

 千草の言葉に驚き、さらなる困惑を感じる舞衣。

「お兄ちゃん、これ以上HIMEの力を使っちゃいけないって。強く言い聞かせてきたけど、お兄ちゃんのためにも私・・・」

「千草ちゃん・・・」

 決意しようとする千草だが、彼女は兄に対する気持ちが分からなくなっていた。何とかして励ましたいと思っていながらも、舞衣もどうしたらいいのか分からず、かける言葉が見当たらなかった。

 

 次の日の昼休み。堅は1人で軽く昼食を取った後、すぐに職員室を訪れた。そこで彼は千草や巧海のクラスの担任、迫水を呼んだ。

 2人は場所を変えて、中等部校舎の昇降口近くの道に移動した。

「千草は、相変わらずの調子なんスかねぇ?」

「そうですねぇ。素直でいい子なんですけど、時々失敗を見せたりもしますね。」

 互いに苦笑を見せる2人。しかし迫水はすぐに思いつめるような顔つきになる。

「玖我さんから聞きましたよ。千草さんも、オーファンや一番地に関していろいろ聞いたそうですね。」

「あぁ。そうだけど?」

 ぶっきらぼうに答える堅に、迫水はひとつため息をつく。

「困るんですよねぇ、関係のない人を巻き込むのは。こちらももみ消すのにひと苦労ですよ。」

「別にそんなことする必要なんかない。オレはそんなこと頼んだ覚えも願ったこともない。それに、アイツはもう関係のないヤツじゃない・・」

 憮然とした態度を取っていた堅だが、徐々に沈痛さに包まれていく。

「何はともあれ、あまり深追いしないほうがいいと思いますがね。この前も怪我をして大変だったそうではないですか。」

「余計なお世話はしないでほしいな、福ダヌキ。」

 不機嫌そうになる堅の言葉に、迫水は顔色を変えなかったが胸中ではムッとしていた。

「オレはうやむやにされてワケ分かんなくなるのが気に入らないんだよ。だからオレはこれからも戦う。邪魔はしないでもらいたいな。」

 堅は歯がゆい思いを抱えながら、迫水に言い放つ。堅はオーファンだけでなく、HIMEや一番地と敵対することになっても構わないと思っていた。

 千草を守ることになるなら、それでも構わなかった。

 

 その頃、千草は舞衣と命、千絵とあおいと昼食を取っていた。学食で各々のメニューを頼んだ中、命はどこから持ってきたのか、パックの納豆のかき混ぜと格闘していた。

「なるほど。つまりお兄さんとあんまり仲が芳しくなくなってるってことね。」

 千草から話を聞いた千絵が、スプーンを小さく揺らしながら呟く。

「ねぇ、もう1度話し合ってみたらいいんじゃないかな?お兄さんが何を考えてるのかを聞いてみるのも。」

 あおいが提案を出すと、千草はさらに考えあぐねた。今まで本当のことを話さなかった堅が、たずねたら話してくれるだろうか。

「大丈夫だ!堅なら聞いてくれる!堅は千草の兄上だから、ちゃんと聞いてくれるぞ!うんっ!」

 そこで命が千草たちに言い寄ってくる。納豆をかき混ぜている割り箸から糸が伸びていた。

「千草も堅もいいヤツだ!それに変わりはない!」

 自信ありげに頷く命に、千草は思わず笑みをこぼしていた。彼女に励まされて、少し気が楽になたようだ。

「ありがとう、命ちゃん。命ちゃんに免じて、ひとつお兄ちゃんの秘密を教えちゃいます。」

 命に感謝の言葉をかけた後、堂々とした態度で構える千草。彼女に舞衣とあおいが息をのみ、千絵が期待に胸を躍らせる。

「実はですね・・・」

「実は・・・?」

「実はお兄ちゃんは・・豆とネバネバした食べ物が嫌いなんです。」

「はいぃ?」

「ふむふむ。」

 千草の言葉に舞衣が疑問符を浮かべ、千絵が手帳にメモをしていた。

「特にその2つを合わせた納豆は、1番恐ろしい食べ物なんだって。」

 淡々と語る千草。その内容に混乱しながらも、舞衣は安堵の表情を浮かべた。

「そうなのか?コレはうまいけどなぁ。堅はコレが嫌いなのか?」

 その間も命は納豆をほお張っていた。その糸がカップ、割り箸、彼女の口元をつなげていて、舞衣たちは呆れたり苦笑いを浮かべたりしていた。

 

 街中のとあるバー。ライダースーツに身を包んだなつきはそこを訪れていた。

 未成年が立ち寄るようには思えないこの場所で、彼女は追い求めている情報を収集していた。

 彼女のもう1人の情報源である1人の男、山田(やまだ)のいるテーブル席に彼女もつく。

「あと一息で、岩境(いわさか)製薬の尻尾をつかめそうだ。」

「そうか・・」

 山田の冷淡な言動に、なつきは淡々と聞く。

「だが、もう1つ大きな情報を入手した。」

「大きな情報?」

「あぁ。内容からして、一番地の汚点とも言えるかもしれない。」

 眉をひそめていたなつきが、思わず不敵な笑みをこぼす。それを気にせず、山田は話を続ける。

「2年前にある施設が炎上した。一番地の研究施設の1つだ。施設の建物、データベースは全て焼失。属していた人間も全員死亡していた。ただ1人を除いて。」

「1人?」

 なつきが聞き返すと、山田は上着の内ポケットから1枚の写真を取り出した。

「おそらくこの少年が、全員を殺害したものと思われる。」

(まさか、アイツは!?)

 なつきはその写真の人物に眼を疑った。

 

 放課後、千草は1人で夕食の買出しのために街に来ていた。しかしその途中で、彼女の前に赤髪の女子が現れた。

「あなたは確か、中等部の結城奈緒さん・・・」

「ンフフ、正解。」

 千草の呟きに、奈緒は微笑を浮かべて頷いた。

「ちょっといいかな?2人だけで話をしたいんだけど?」

 奈緒に促されて、千草は渋々頷いた。

 そして2人は街外れの広場にやってきた。

「ちょっとねぇ、アンタのお兄ちゃんにいろいろとお世話になってね。」

「あぁ、お兄ちゃんの知り合いなんですね。」

 笑みをこぼす千草。しかし奈緒は妖しい笑みを消して冷淡な態度を見せる。

「まぁ、お知り合いといったらその通りね。私のやることに口出ししてきてね・・・ムッとくるのよね。」

 不敵な笑みを見せる奈緒が右手を掲げる。その手は人のものではない不気味な形の手になっていた。

「奈緒、さん・・!?」

 千草がその姿に眼を疑った。HIMEの力を解放し、エレメントの爪を彼女に向ける奈緒。

「実はあのとき見たんだよね。アンタもHIMEだったなんてね。しかもあんな可愛げのあるチャイルドまで使ってさ。」

 奈緒の顔から笑みが消える。

「アンタも、いろいろとウザいんだよね。可愛い妹ぶっちゃってさ。」

 そして彼女の背後からジュリアがその姿を現す。ジュリアがその口から白い粘液を千草に向けて吐き出す。

「キャッ!」

 何とか回避しようとする千草だが、右足にその粘液が付着する。糸状になった粘液は、彼女の動きを封じ込めた。

「う、動けない・・!」

「ムダよ。ジュリアの糸は絶対に切れないわ。それじゃ、たっぷりと可愛がってあげるから。」

 もがいている千草に、奈緒がゆっくりと近づいてくる。

「せめてチャイルドぐらい出して抵抗しなさいよ。黙ってやられるつもり?」

 身動きのできない千草をあざ笑いながら、奈緒が鋭い爪を彼女に突きつける。危機感を感じた千草はエレメントの短刀を出現させ、奈緒の爪を弾いた。

「くっ!」

 刃を向けられた右手を押さえてうめく奈緒。

「ペガサス!」

 千草はペガサスを呼び出し、ジュリアに突進させた。その間に短刀を使って、固まった粘液を打ち砕いてその場を逃れる。

 ペガサスの突進をかわし、ジュリアが粘液を吐きかけてくる。しかしペガサスの機敏な動きにかわされる。

 そこへ奈緒が着地したペガサスに飛びかかり爪を立てる。突き飛ばされて怯んだ天馬に、蜘蛛の粘液が降りかかる。

「ペガサス!」

 千草が動けなくなるペガサスに向かって駆け出す。そこへジュリアが立ちふさがる。

「残念ね。これでゲームオーバーよ。恨むなら、愛しのお兄ちゃんを恨むんだね。」

 エレメントの爪を光らせて、奈緒が千草を見据える。そこへ一条の刃が2人を隔てる。

 千草と奈緒が振り向くと、そこには堅がいた。彼の放った波動の刃が、奈緒の接近を阻んだ。

「へぇ。やっとお兄ちゃんのご登場のようね。」

 妖しい笑みを浮かべる奈緒に、堅は苛立ちを見せていた。

「お前・・いったいどういうつもりなんだ!」

 激昂する堅。しかし奈緒は不敵な笑みを崩さない。

「気に入らないのよ。仲好しこよししているアンタたち兄妹がね。」

 エレメントの爪を掲げて、意識を集中する奈緒。

「ホント・・サイテーだわ。」

 呆れた態度を見せながら、ジュリアを差し向ける。未だに身動きが取れなくなっているペガサスに向かって。

(ペガサスがやられたら、千草の大切なものが・・・!)

 危機感を覚えた堅が、ジュリアに向かって飛びかかる。そこへジュリアが振り返り、粘液を吐きかけてきた。

「なっ!?」

 虚を突かれた堅に糸状の粘液が降りかかる。近くの大木に叩きつけられ、身動きが取れなくなってしまった。

「アッハハハハ。アンタもけっこうバカなんだね。」

「し、しまった・・!」

 哄笑を浮かべる奈緒に、動けない堅がうめく。

「さて、アンタの眼の前で可愛い妹ちゃんを惨めにしてあげるよ、お兄さん。」

 もがく堅の眼の前で、奈緒が千草に接近する。2人の距離が狭まるに連れて、堅に恐怖が押し寄せる。

(千草が・・千草が・・・!)

 恐れを抱く彼の脳裏に、チャイルドの破壊によって消滅した親友と和也の姿が蘇る。その無残な光景を見て、堅に新たな感情が浮かび上がる。

「やめろ・・・!」

 彼の周囲に波動の渦が巻き起こる。

「やめろ!」

 その波動が粘液の付着した大木を吹き飛ばした。着地した堅が、驚きの表情を向ける奈緒を睨みつける。その瞳は血のように紅く染まっていた。

「HIMEの悲劇は・・オレが終わらせる!」

 憤慨の表情を浮かべる堅が、眼にも留まらぬ速さで飛び込み、ジュリアに波動の刀を叩きつける。

「なっ!?」

 驚愕する奈緒の眼の前で、堅がさらに攻撃を加える。

「お兄ちゃん!」

 千草が必死の思いで呼びかける。しかしペガサスが粘液から脱したにも関わらず、堅は聞く耳を持たず、攻撃をやめようとしない。

「千草!」

 そこへ命となつきが駆けつける。なつきは既に銃とデュランを呼び出していた。

「命ちゃん、なつきさん!お兄ちゃんが・・!」

 千草の悲痛の叫びに、彼女たちの視線が堅に向けられる。そこでなつきが、眼を紅くしてジュリアを攻撃している彼の姿に驚愕する。

「紅い眼・・・!」

「とにかく、お兄ちゃんをとめないと!」

 千草のこの言葉で、なつきは我に返る。この状況を脱出しようと目論み、デュランの銃口を戦いの場に向ける。

 その間にも、堅の猛襲で怯むジュリアが広場の中心に倒れる。とどめを刺そうと刀を振り上げて落下する。

 そのとき、その間にまばゆい光がきらめき、堅の動きが鈍る。

(フラッシュカートリッジか!)

 彼の推測どおり、その光はデュランが放った閃光弾だった。その光で眼をくらまし、堅はジュリアを見失う。

「ペガサス!」

 そこへ千草の呼びかけを受けたペガサスが、宙に漂う堅を受け止める。千草も命もなつきも、その光に紛れて広場から離れた。

「くっ・・・!」

 デュランの光のために堅たちを見失う奈緒。光が治まった広場には、既に彼らの姿はなかった。

「やってくれたわね、アイツ・・!」

 苛立ちを胸に秘めて、奈緒はジュリアとともに姿を消した。

 

「それでは、あの人が一番地の施設を崩壊させたというのですか?」

 風花邸の私室で、真白が凪に問いかける。すると凪は無邪気そうな笑みを浮かべて振り向く。

「そう。秘密主義を貫いてきたのに、派手になっちゃって。まぁ、研究員全員とそこにあったデータが全て燃えてなくなっちゃったのは、不幸中の幸いというところかな。」

 まるでその出来事を楽しんでいるかのように、凪が笑みをこぼす。しかし真白と二三は沈痛と困惑を浮かべていた。

「真白様・・・」

 二三が声をかけると、真白は眼を閉じた。

「彼を拘束したとしても、何の意味も成さないでしょう。彼に殺意を抱かせたのは、HIMEの運命と、あなたたち一番地なのですよ。」

「人聞きが悪いなぁ。僕たちはただ隠密に事を運んでいるだけさ。」

「でもそれが彼の心に傷をつけたことは紛れもない事実です。」

 白々しい態度を見せる凪。真白は悲痛さを感じながら、窓越しから外を見つめた。

「彼を束縛する権利は、私たちにはありません・・・不知火堅さん・・・」

 

 暴走していた堅を引き戻し、千草たちは女子寮付近の林道まで逃げ延びていた。全員、大きく息をついて警戒心を解く。

「大丈夫か、みんな・・!?」

 なつきが呼吸を整えながらみんなに声をかける。命と千草は何とかそれに頷くが、堅は困惑の表情を浮かべたままだった。

「なつき、命、みんな・・!?」

 そこへ舞衣が通りかかり、驚きの表情で堅たちを見つめる。

「舞衣さん・・・」

 千草が困惑の表情を舞衣に見せる。

 そこへ堅が呼吸を整えて、千草に歩み寄った。

「お兄ちゃん・・・」

 さらなる困惑に襲われる千草。そんな彼女の頬を堅が叩く。

 叩かれて赤くなった頬を押さえて、千草が困惑の眼差しを向ける。その先の堅の顔は憤りに包まれていた。

「ペガサスを呼ぶなって言っただろ!どうして聞こうとしないんだ!」

「お兄ちゃん・・・?」

「チャイルドの力を使えば、必ず誰かを不幸に陥れる!最後に悲しい思いをするのは、お前なんだぞ!」

「やめろ、堅!」

 憤慨する堅を、命が悲痛の思いで呼び止める。

「堅が怒って、千草が悲しんでいる!千草が悲しむと、私も悲しい!」

 訴えかける命を前にして、堅は言葉を詰まらせる。

「いいよ、命ちゃん・・・」

 そこで千草が悲しい笑みを見せて、命に言い聞かせる。

「お兄ちゃん、私が戦うのは、私も当事者だからだよ。」

「千草・・・!」

 千草の言葉に、堅は憤りを拭えないままうめく。それを受け止めながら、彼女は続ける。

「私がお兄ちゃんや舞衣さんたちに何も聞こうとしなかったのは、私が通りすがりだと思ったから・・でも私もHIMEだというなら、私も当事者なのよ。もう知らん振りはできないよ・・・」

「しかし、それでもお前は・・・!」

「いい加減にしたらどうだ?」

 反論しようとする堅に、なつきが割り込んでくる。

「千草が覚悟して決めていることだ。お前がこれ以上言っても意味はない。」

「そんなのは関係ない!ならオレがアンタに言えば、アンタは聞いてくれるとでも言うのか?」

 剣幕の表情を見せる堅に、なつきは淡々とした態度を崩さない。

「まさか。でも、私が私の道を選ぶことと、千草が自分の道を選ぶことにどんな違いがあるというんだ?」

 なつきに言いとがめられて、堅は憤りを抱えたまま反論できないでいた。

「ねぇ、お兄ちゃん、どうして、そんなにHIMEを憎むの?」

 再び千草が堅に声をかける。

「確かに私もHIMEが嫌いだったときがあった。でも、HIMEが全員悪い人たちじゃないって分かったのよ。だからせめて、ワケぐらい聞きたいと思ってる・・」

「千草・・・」

 千草の決意に、堅は戸惑いを見せる。自分の道を自分で選んだとはいえ、それは彼にとって選んでほしくないことだった。それを思うと彼は心を痛めずにはいられなかった。

「そうねぇ。聞かせてもらいたいねぇ。」

 そこへ碧が現れ、気さくな笑みを見せて声をかけてきた。

「杉浦先生・・?」

 困惑の面持ちを見せる千草。

「まぁ、これでも食べながら気長に聞きましょうか。私のおごりよ。」

 そういって碧は、持っていたビニール袋を前に置いた。中にはコンビニで買ったおにぎりが入っていた。シャケ、おかか、梅、ツナマヨネーズ、明太子、チャーハンが各種1個ずつ入っていた。

「うおおっ!いいぞ、碧!」

 命が歓喜に湧いて、おにぎりに手を出そうとする。

「1人1個ずつだよ。」

 碧が命に念を押す。それを聞いているのかいないのか、命が満面の笑みを浮かべて、改めて手を伸ばす。

 しかし彼女より先におにぎりを1個取っていったのがいた。なつきであり、取ったのはツナマヨネーズである。

「あぁ、そういえば、なつきはマヨネーズが好きだったんだよねぇ・・」

 舞衣が苦笑を浮かべて呟く。取ったおにぎりをかじって、なつきは渡すものかという鋭い視線で周囲を睨みつけていた。

「さて、本題に参りましょうか、不知火堅くん。」

 碧が呆れながら、堅に声をかける。舞衣たちも彼に眼を向ける。

 みんなの視線が釘付けになったところで、堅が思いつめた面持ちを見せる。

「オレの親友は、HIMEの力のせいで死んだんだ・・・」

 堅の語る言葉に、舞衣たちは真剣な面持ちで耳を傾けた。

 

 

次回

第15話「森貴典」

 

「撮っておきたいのよ。思い出の1枚をね。」

「私も応援しますから、結衣さん!」

「オレがしっかりサポートしてやるよ、お二人さん。」

「これからも友でいてくれよ、堅。」

「オレも強くなりたい・・アイツのために。」

 

 

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