舞HIME −elemental destiny- 1st step「ignited」

 

 

月の裏、いばらのお城にとらわれた寂しい少女たち

彼女たちは幾千年に一度だけ咲く花のように

虚しいほどの輝きを放つ

彼女たちは愛のささやきのように

暗闇を舞う鳩のように

自由に飛べる場所を夢見る

このとらわれのお城のなかでは

少女たちは恋することさえ許されない

少女たちのそんな夢がかなえられるのは

少女たちの信じるおとぎ話の中だけ

 

 突如、空に出現した紅い星。

 赤々と輝くその星に、人々は喜びや不安など、いろいろな様子を見せていた。

 発見から数日後、政府はこの星の名が“媛星”であることを発表した。魅力的な星の名だと歓喜を表すものだと思っていた人々は、その後の発表に恐怖した。

 媛星は徐々に地球に接近し、最後には衝突する。そうなれば世界は滅びる。

 その魅力的な名とは程遠い、死の赤色巨星だったのである。

 その最悪の事態を防ぐ術を、ある人物が世界に伝えた。

 人々の前に現れたその青年は、自らを“黒曜の君”と名乗った。そして彼は、媛星と、HIMEの存在と運命を告げた。

 媛星による世界の崩壊を避けるには、世界に点在しているHIMEを全て滅ぼすことだった。

 媛星はHIMEの想いに引き寄せられているため、世界に接近してきている。HIMEが呼び出す、想いが具現化して生み出される異形の子、「チャイルド」を全て倒せば、媛星の衝突は免れる。

 黒曜の君は、人々にそう告げた。世界を救おうと人々は駆り立てられ、HIMEに対する敵意を見せるのだった。

 しかし黒曜の君は、HIMEに関する重大なことを人々に告げなかった。

 チャイルドが倒されれば、そのHIMEの想う人の命が消える。HIMEにとってその想いが1番大切なものであり、それが消えることは彼女たちの心までも壊すことも意味していた。

 それを告げなかったのは、人々がHIMEを倒すことを躊躇させないためだった。

 こうして、HIMEは破滅をもたらす魔女として恐れられ、人々の血みどろの争いが始まった。これが黒曜の君の企みであることも知らずに。

 

 政府の代表格として表舞台に立った「一番地」と呼ばれる組織。黒曜の君が筆頭となっていることから、彼らは短期間で、世界の人々の心を支配した。

 その彼らが主な活動をしている街の中枢部。そのビルの一角に、ビジネススーツに身を包んでいる人々の中に、場違いとも思えるようなラフな格好をした青年が歩いていた。

 彼の名は京極扇(きょうごくせん)。彼は一番地が開発したあるものを手に入れようと、真正面から乗り込んできたのである。

 しかし彼のこの行動はあまりにも無謀すぎた。彼の周囲に数人の男たちが集まってきた。

「こんな格好で、ここへ何の用ですか?ここは関係者以外は立ち入り禁止となっていますが?」

 男の1人が扇に問いかける。しかし扇は憮然とした態度を崩さない。

「それがどうした?オレはここにある“破邪の剣”に用があるんだ。」

「何だと?貴様もしや、風華の者か?」

 扇の言葉に、別の男が銃を取り出し、銃口を向ける。騒然となるはずの広場だが、扇も周囲もひどく落ち着いていた。

「HIMEはこの世界に存在してはならない魔女たちだ。それに組するならば、たとえ普通の人間でも容赦しないぞ!」

 男が言い放った直後、扇は視線を鋭くして男の1人に殴りかかった。同時に他の男たちが銃の引き金を引く。

 扇は次々と放たれる弾丸をかわしながら、奥の非常用階段へと向かう。

「追え!出入り口を全て押さえろ!」

 命令が広場に響き、男たちが扇を追い求めて散らばる。

 その頃、扇は非常用階段で16階まで駆け上がり、扉を蹴破る。その先の廊下で軍人が待ち構えていたが、その数人がその扉で壁に叩きつけられる。

 立ち止まらずに駆ける扇に、軍人たちが銃を乱射させる。彼はそれをかいくぐって、迷わずにある場所まで向かう。

 追手を振り切って、とある部屋の前で立ち止まる扇。その扉さえも蹴破って、その部屋の中心に眼を向ける。

 そこには台の上に置かれた1本の剣があった。特殊なデザインが施されている柄と刀身。

 これが破邪の剣の1本、光の「プルート」である。

 破邪の剣は一番地の科学班が開発した武器で、HIMEの力、高次物質化能力に対抗できるものである。

 力と地の「ウラヌス」、風と海の「ネプチューン」、光と天の「プルート」が現在完成され、実践でも使用されている。

 このプルートは様々なエネルギーを自在に操ることができる。使い手の思い描くとおりに、刀身の形が変形する。

 しかし破邪の剣を扱える者は限られている。一番地や風華の人々が知る限りでは、HIMEとその想い人、媛星の力を宿している人だけである。

 もしそれに該当しない人がその柄を握れば、何らかの副作用が降りかかることになる。

 扇はその危険を顧みずに、プルートの柄を握る。プルートの副作用は、該当しない人がその柄を握った瞬間、その持てる力に囚われてしまうことである。

 使い手を狂戦士へと変貌させ、見境なく傷つけてしまう。強靭な心の持ち主でなければ、その力に溺れることになる。

 しかし扇はその力に溺れることはなかった。自分がHIMEに関わりがあると、彼は胸中で頷いた。

 彼がプルートを構えた直後、軍人がこの部屋の前まで駆けつけてきた。

「き、貴様、プルートを!?」

 軍人たちが声を荒げ動揺を見せる。彼らは破邪の剣の脅威を知っていた。

 HIMEさえも倒すことができる破邪の剣を前に、迂闊な行動をとれば返り討ちは免れない。

「何をしているんだ?」

 そこへ1人の青年が、軍人たちをかき分けて扇の前に出てきた。首もとの辺りまであるブラウンの髪。軍人の緑服とは違った、特殊なデザインをした赤服。ふてぶてしく思えるような不敵な笑みを浮かべていた。

 一番地が統率している軍の隊長を任せられている男、ハイネ・ヴェステンフルスである。

「ヴェ、ヴェステンフルス隊長・・!」

「ハイネでいいよ。それに隊長というのも、何か差別されている気がしてよくないな。」

 軍人の声に、ハイネが気の抜けた言葉を返す。不敵な笑みを崩さずに、プルートを構えている扇に振り向く。

「お前か。破邪の剣を狙ってきた侵入者は。しかも堂々と言ってのけてるそうじゃないか。ずい分と大胆不敵じゃないか。」

「くだらねぇこと言ってんじゃねぇよ。どかねぇと怪我するぞ。」

 気さくに語りかけるハイネに、扇は応じずに告げてくる。するとハイネがひとつため息をつく。

「おまけに物騒な態度ときたもんだ。あんまり度がすぎると痛い目見るよ。大人しくプルートを手放してちょうだい。」

 緊張感を破るような態度を続けながら、扇に宣告するハイネ。その言動が扇の感情を逆なでする。

「誰に向かって指図してんだ、テメェ。」

 眼つきを鋭くして、プルートを振りかざしてハイネに飛びかかる。ハイネは腰に下げていた剣を振り抜き、振り下ろされたプルートの刃を受け止める。

「ぐっ!」

 うめく扇。不敵に笑うハイネ。

 ハイネが持つ剣は、破邪の剣。地の「ウラヌス」である。3本の剣の中で打撃、斬撃の威力が強く、ハイネを隊長の地位に就かせたのも、この剣が使えたことが最大の要因とも言えていた。

 ウラヌスは該当しない使い手の接触を全て拒む。強い反動を伴って、手元から離れてしまう。

「悪いけど、アンタは破邪の剣を使いこなせていない。だからオレには敵わない。」

「ヤロー・・!」

 うめく扇を、ハイネは不敵な笑みと浮かべて突き飛ばす。激しい音を立てながら、扇が廊下の壁に叩きつけられる。

「くそっ・・・!」

 痛みを覚えながら、扇が立ち上がって構え直す。しかしハイネは余裕を見せていた。

 そのとき、扇の背後から荒々しい轟音が鳴り響いた。扇やハイネたちが振り返ると、その廊下の突き当たりに、巨大なアンコウが唸りを上げていた。

「こいつは、チャイルドか・・誰かHIMEがやってきたようだな。」

 ハイネが気さくな笑みを再び見せる。その視線の先、アンコウの姿をしたチャイルドの上に、先端に鉄球のついたハンマーを持った1人の少女が立っていた。

 軽いウェーブのかかった髪、黄緑をベースにした制服を着ている。風華の側についているHIMEの1人、珠洲城遥(すずしろはるか)である。

 彼女のチャイルドは光黙天。頭部にある第二の口から伸びる触手からレーザー光線を放つ。ちなみにレーザーでありながら、「天誅ビーム」という技名である。

「団結の乱れは風紀の乱れ。京極扇、あなたのしていることは団結力を欠いた独断せんぎょうよ!」

 言葉の間違いに気付かないまま、遥が扇に向けて指差す。しかし扇は憮然とした態度を続けている。

「それを言うなら独断専行だよ、遥ちゃん。」

 言い放つ遥の背後から、気さくな声がかかる。そこには赤いサイの姿をしたチャイルド、愕天王(ガクテンオー)と、その上に乗っている女性がいた。

 青ジャージの上着を羽織っているポニーテールの女性、杉浦碧(すぎうらみどり)である。

「なんてしゃべってる場合じゃないんだよね。あかねちゃん!」

「はいっ!」

 碧の号令を受けて、また1人、少女が返事をする。そして虎の姿をしたチャイルド、ハリーが飛び込み、扇とハイネの横で止まる。

 さほど長くない髪を結わいている、おっとりとした少女。日暮(ひぐらし)あかねである。

 あかねは扇を取り囲んでいる軍人たちを、手に持つ2本のトンファーでなぎ払う。

 彼女のトンファーや遥のハンマー、碧の斧は「エレメント」と呼ばれる武具に属している。これはHIME自身が持つもので、チャイルドはこれとセットで形成される。

「扇くん、こっち!」

「あかね・・・」

 あかねの呼びかけを受けて、扇はプルートを持ったまま、彼女の手をつかみ、ハリーの背に乗る。

「今よ!愕天王、吶喊(ドッカーン)!」

「光黙天、天誅ビーム!」

 それを確認した碧と遥が、派手に攻撃を開始する。愕天王が再びビルに突進し、光黙天が第二の口からの光線で廊下を破壊する。

 その騒然に紛れながら、ハリーがあかね、扇を乗せてこの場を離れる。それを確認した碧、遥も退却を試みる。

 そこへ白い糸が伸び、碧の持つ斧を絡め取る。彼女が振り返った先には、ビルの上に蜘蛛のような姿をした怪物がいた。

「碧さん!」

 あかねが叫ぶ先で、碧が動きを封じられる。彼女を捕らえている蜘蛛の横には、紅い髪の少女が微笑を浮かべていた。

「あ〜らら、いい気味ね。捕らわれの蝶っていうのは。」

 少女、結城奈緒(ゆうきなお)がエレメントの爪をつけた手を口元に当てながら微笑む。

 彼女のチャイルド、ジュリアは、胸部の口から糸状になる粘液を吐き出す能力を持っている。その糸は簡単には切れない。

 動きを封じられている碧を、奈緒の操るジュリアが引き込む。

 そこへ一条の光が飛び込み、ジュリアの糸を撃ち抜いた。遥の駆る光黙天の放ったレーザーである。

「こいつ!」

 毒づく奈緒を横目に、拘束から逃れた碧が愕天王とともに退避する。既にあかねも遥も退散していた。

(愕天王、光黙天、ハリー、そしてジュリア・・・)

 立ち去る碧たちから悔しがる奈緒に視線を移し、ハイネが不敵な笑みを浮かべる。

(HIMEの同士討ちが世界を救う、か・・・どうなんだろうねぇ・・・何にしても、ホントの救世主はもういない・・・舞衣HIMEは・・・)

 

 現在、HIMEやそれに組する人間は、世界から見放され、風華の地に隔離されていた。一番地もHIMEたちの力の結集のために迂闊に手が出せず、双方にらみ合いという状態が続いていた。

 その中で、風華に留まっている人々も、HIMEの力と運命に当惑していた。世界や政府からの援助はないに等しく、自力での生活を余儀なくされていた。

 そんな不安定な場所に、扇が碧、遥、あかねとともに帰還してきた。破邪の剣、プルートを手にして。

「扇・・貴様・・・」

 彼を迎えたのは、憤りの表情を浮かべている玖我(くが)なつきだった。彼女は憮然とした態度を取っている扇につかみかかった。

「ち、ちょっと、なつきさん・・!」

 あかねが動揺して声を荒げるが、なつきと扇は構わずににらみ合っている。

「自分がやったことが分かってるのか!貴様のしたことは私たち全員を危険に晒しかねないことだったんだぞ!」

「ケッ!オレが何をしようとオレの勝手だろ。現に破邪の剣の1本をぶん取ってきたんだぞ。」

 言い寄るなつきだが、扇は鋭く言い放つ。

「やめるんだ、扇。」

 そこへ1人の青年が割り込み、扇をいさめる。彼の幼なじみであり、あかねが心を寄せている相手、倉内和也(くらうちかずや)である。

「あまりみんなを心配させるのはよくないよ。あかねちゃんだって・・・」

 和也が困惑の面持ちを扇に見せた後、あかねに視線を移す。すると彼女も頬を赤らめて眼を背ける。

「だったらこのまま一番地って連中の好きにさせていいのかよ。オレは黙ってみるつもりはねぇよ。破邪の剣を手に入れるしかねぇんだよ。オレたちやHIMEが勝つためにはな。」

 扇はなつきや和也から離れ、困惑の面持ちで見つめている男女に近づいた。

 少し逆立った茶髪をした青年、楯祐一(たてゆういち)と、片方に2本ずつ垂れているピンクの4本テールが特徴的な、少しおしゃまな感じの少女、宗像詩帆(むなかたしほ)である。

「それより、テメェもいつまでも昔のことを引きずってんじゃねぇよ。」

「オ、オレが何だってんだよ・・!」

「そうだよ!お兄ちゃんも詩帆も、みんなと今を精一杯生きてるんだから!」

 扇の言葉を、祐一と詩帆が声を荒げて否定する。しかし扇は顔色を変えず、彼女の髪に手を当てる。

「祐一、今テメェが守らなくちゃいけねぇのは、この詩帆だろうが。」

「扇・・・」

「寝ぼけてるって言うならいい加減眼を覚ませ。アイツは・・舞衣は、死んだんだ・・・」

「そんなことない!舞衣さんは生きてる!絶対生きてるよ!」

 うめくように低く告げる扇に、詩帆がさらに言い寄る。

「そんなわけねぇだろ!・・一番地の総攻撃で、アイツの弟の巧海は・・・」

 扇は言いかけてやめる。その言葉に周囲は息をのみ、あの惨劇を思い返していた。

 

 これが、風華に対する一番地の優位を決定付ける、最悪の出来事だった。

 水晶の姫、風花真白(かざはなましろ)を狙って、一番地の軍が攻め込んできた。その戦いに、炎の竜、カグツチを駆るHIME、鴇羽舞衣(ときはまい)、その弟の巧海(たくみ)、蛙の姿をしたチャイルド、ゲンナイを駆る尾久崎晶(おくさきあきら)も巻き込まれた。

 真の姿を見せた真白を前に、風華は始めは優勢を見せていた。しかし巨大なマシンの突然の乱入によって、その優劣が逆転した。

 モーターとエンジン音を轟かせる黒の機体。対HIME用に一番地が開発した最新鋭武装マシン、エレメンタルスライガーである。

 最大速度は時速1500km。使用されている装甲、搭載されている武器には、高次物質化エネルギーが含まれている。つまりこれはHIMEに対抗できるマシンであり、チャイルドを倒すことのできる威力をも備えている。

 この脅威の機体を操るのは、当時まだ1軍人だったハイネだった。

「さて、どれほどのものか見せてもらおうか。チャイルドの力を。」

 ハイネが不敵な笑みを浮かべて、HIMEたちに狙いを定める。標的は晶の駆るゲンナイ。

 アクセルを吹かせ、軍の攻撃をかいくぐった晶に向けて突っ込む。

「うわっ!」

「晶くん!」

 吹き飛ばされてうめく晶。舞衣と巧海が叫ぶ。援護に回りたかった舞衣だが、巧海を守るとこで手一杯だった。

「ゲンナイ!必殺地獄釜!」

 晶の号令を受けて、大口を開けたゲンナイが鉄球を放つ。

「単純な攻撃だな。かわすのはわけはない!」

 しかしハイネの駆るエレメンタルスライガーが、高速でこれをかわす。オートパイロットに切り替えて、彼はマシンから飛び降りた。1本の剣、破邪の剣の1本、ウラヌスを振り上げて。

「もらったあっ!」

 ハイネがウラヌスを振りかざして、ゲンナイを狙う。

「に、逃げろ・・ゲンナイ!」

「晶くん!」

 ゲンナイに逃げるよう促す晶。舞衣が今度こそ援護しようとカグツチを駆る。

 しかし炎の竜が向かう前に、ハイネの振り下ろした刃がゲンナイの体を切り裂いた。絶命し、青白い炎をまといながら、ゲンナイが光の粒子になって霧散する。

「あっ・・・!」

「た・・巧海・・・!」

 眼前の光景に眼を疑う舞衣。愕然となりながら、倒れた晶が意識を失う。

「晶くん!・・・うぐっ・・!」

 晶に駆け寄ろうとする巧海だが、突然の胸の痛みにうなだれ、その場に倒れ込む。

「巧海!」

 舞衣がたまらず巧海に駆け寄る。横たわる彼の体から光の粒子があふれ出す。

「巧海・・・いやぁっ!」

 涙ながらに、舞衣が巧海に呼びかける。すると巧海が力なく微笑みかけてくる。

「ゴメンね、お姉ちゃん・・・ありが、とう・・・」

 そう告げた瞬間、巧海の体がゲンナイ同様、光の粒子となって消えてしまった。消滅した弟を抱いていた両腕を、舞衣は呆然と見つめていた。

 絶望感に包まれた彼女は戦意を失い、結果、カグツチが姿を消してしまう。立ち上がる気力さえ失った彼女に、武装した軍人たちが取り囲んだ。

 

 舞衣が戦うことをやめたため、真白も一番地の脅威の前に敗れた。巧海を失った舞衣がそれからどうなったのか、風華の人々は知らない。

 偵察能力に長けている菊川雪之(きくかわゆきの)のチャイルド、ダイアナの力を持ってしても、彼女の行方は分からないままだった。

「お兄ちゃん、舞衣さんは必ず生きてるよね・・・?」

 街を一望できる展望台で、詩帆が祐一に不安を浮かべながら訊ねる。すると祐一は遠くを見据えながら答える。

「アイツは人一倍頑張ってきてたんだ。巧海のために。自分たちのために・・・だから、そう簡単に負けたりはしないさ。」

「お兄ちゃん・・・」

 答える祐一に、詩帆は笑顔を作る。

(そう、信じてやりたい・・舞衣・・・)

 舞衣がどこかで生きていると信じ、祐一は詩帆を初めとしたたくさんの人を守っていきたいと心に誓った。

 

 

2nd stepへ

 

その他の小説に戻る

 

TOPに戻る

inserted by FC2 system