仮面ライダーオメガ 第47話
ヒカルの無事を確かめた光輝は、太一とともに病院を飛び出した。2人はメガブレイバー、クリスレイダーに乗って、竜也を探していた。
「行こう、メガブレイバー!竜也くんを止めなくちゃ!」
「しかしガルヴォルスの反応は私たちにはキャッチできない。しかし彼のことだ。ずっと大人しくしているとは思えない・・」
呼びかける光輝にメガブレイバーが答える。
「私と太一どのは一心同体。どのような判断を下そうとも、私はあなたについていきますぞ。」
「ありがとう、クリスレイダー・・こんな僕に、今まで付き合ってくれて・・・」
「お気遣いなく。私はクリスであるあなたに力を貸しているのですから・・」
感謝の言葉をかける太一に、クリスレイダーが弁解する。
「とにかく急ごう・・何か嫌な予感がするんだ・・・」
光輝は声を振り絞るように言いかけると、メガブレイバーのスピードを上げる。太一も彼に続いていく。
しばらく街の中を進んでいくと、2人は逃げ惑う人々を発見する。
「もしかして、ガルヴォルス・・・竜也くんじゃ・・・!?」
緊張感を膨らませる光輝が、逃げてきた1人に声をかける。
「どうかしたんですか!?」
「怪物が現れて、暴れているんだ!早く逃げないとひとたまりもない!」
声を荒げて答えると、その人は再び慌しく逃げ出していった。
「竜也くん、こんなことって・・・!」
一抹の不安を感じた光輝が、太一とともに再び走り出す。
「変身!」
「変身・・・!」
ベルトに水晶をセットして、光輝と太一がオメガとクリスに変身する。2人が駆けつけた広場では、竜也が一矢を踏みつけていた。
「竜也くん・・・やめるんだ、竜也くん!」
光輝が呼びかけると、気付いた竜也が一矢から足を離す。
「君は・・関係のない人まで傷つけるようになってしまったのか・・・自分の目的のためなら、何もしてこない人まで攻撃する・・そこまで堕ちてしまったというのか!?」
「敵は滅ぼす・・本当の平和を世界にもたらすために・・・!」
怒りを見せる光輝に、竜也が低い声音で言いかける。
「何もかもムチャクチャにした先の、どこに平和があるというんだ!?」
「ならば、この世界のどこに平和がある!?誰もが平和であると思っているのか!?」
互いに怒りの言葉を言い放つ光輝と竜也。
「誰もが自分さえよければそれでいいという愚か者ばかり!そんな連中が平和を作れると思うな!」
「だったら君はどうなんだ!?結局君のしていることも、自分さえよければそれでいいという考えじゃないのか!?」
「黙れ!お前が1番の愚か者であるというのに!」
光輝の怒りに反発して、竜也が地面を踏みつける。踏みつけられた地面が地割れを起こし、轟音が響く。
「オレは許さない!愚か者を全て葬るまで、オレは止まるつもりはない!」
「それが、君が貫いている決心なのか・・・!?」
叫ぶ竜也に対し、光輝が鋭く問いかけてくる。
「ならばオレはもう迷わない・・自由と平和を守るため、オレはお前を倒す!」
「ついに本性を現してきたか・・だがオレは倒されない!倒されるのはお前だ!」
決意を告げる光輝に、竜也が憎悪をむき出しにする。
そのとき、竜也が体に激痛を覚えてその場にひざを付く。一矢との戦いが彼の思っていた以上に大きかったのだ。
「オレは倒れない・・絶対に倒れない!」
竜也は光輝に言い放つと、力を放出しながら離れていった。光輝は彼を追わず、オメガへの変身を解いて一矢に駆け寄った。
「一矢さん、大丈夫!?・・・意識を失っている・・・!」
息を呑む光輝に、太一もクリスへの変身を解いて駆け寄ってくる。
「すぐに病院に行こう・・クリスレイダーならすぐに行けるよ・・!」
「ありがとう、太一くん・・・急ごう・・・!」
太一の呼びかけに光輝が頷く。2人は一矢を連れてこの場を離れた。
力を消耗して戦うことがままならなくなってしまった竜也。逃げる以外に術がなかったことが、竜也は許せなかった。
「こんなことで・・オレが戦えなくなるなど・・・!」
さらなる怒りを見せる竜也が、両手を強く握り締める。
「オレは愚か者たちを倒さなければならないんだ!だからオレは、弱く何もできない自分をも憎む!」
言うことを聞かない自分の体を無理矢理突き動かそうとする竜也。彼の体から紅いオーラがあふれてきていた。
「動け!このまま世界が終わってもいいのか!?平和を取り戻さなくてもいいのか!?」
ひたすら自分に問いかける竜也。怒りだけで体を突き動かし、彼は再び立ち上がる。
「愚か者を滅ぼす・・ヤツも・・光輝も!」
光輝への敵意をも膨らませていく竜也。もはや彼は自分自身さえも制御することができなくなっていた。
一矢を病院に連れて行った光輝と太一。一矢は瀕死の重傷を負っており、戦いができる状態ではなくなっていた。
傷ついた一矢を目の当たりにして、光輝は痛感していた。竜也は怒りに完全に突き動かされていることを。
「もうあそこにいるのは竜也くんじゃない・・敵であるものを倒していく怪人だ・・・」
「光輝くん・・・」
歯がゆさを膨らませる光輝に、太一が戸惑いを浮かべる。
「僕が止めるんだ・・僕がアイツを・・・たとえ、竜也くんを倒してしまうことになっても・・・!」
光輝は声を振り絞ると、竜也を追い求めて駆け出していった。
「光輝くん!」
太一が慌てて光輝を追いかけていく。2人はメガブレイバー、クリスレイダーに乗って、竜也を捜索する。
「僕は空から探す・・上からなら早く見つけられるかも・・!」
太一は光輝に呼びかけると、フライヤーフォームとなったクリスレイダーで空に上る。上空に出た彼は、改めて竜也の行方を追う。
「もう僕がやるしかない・・このままだと、いつか弥生ちゃんまで・・・!」
危機感を覚えていく太一。一刻も早く竜也を何とかしないといけない。彼はそう考えていた。
そのとき、近くで轟音が響いたのを太一が気付いた。街外れの通りに、ドラゴンガルヴォルスとなっている竜也が立っていた。
「あそこだ!あそこにアイツがいる!」
太一は光輝に呼びかけると、竜也を目指して加速していく。
「変身・・・!」
その間にベルトに水晶をセットして、太一がクリスに変身する。
「もう僕しか、未来を切り開けないんだ・・・!」
声を振り絞る太一が、竜也に向かっていく。彼はクリスセイバーを手にして、ベルトの水晶をその柄にセットする。
「クリスストラッシュ!」
精神エネルギーを込めた光の刃を解き放つ太一。だが力を暴走させる竜也は、その直撃を受けてもダメージを負わなかった。
「そんな・・僕の全力の攻撃が、全然効かないなんて・・・!?」
強大化している竜也の力に、太一は愕然となる。振り向いた竜也が大きく飛び上がり、太一に迫る。
「何っ!?」
驚愕する太一が、竜也が繰り出した右手に突き飛ばされる。クリスレイダーから投げ出された太一が地上に落下する。
痛烈なダメージを受けた太一からクリスの装甲が消失する。そこへ遅れて光輝が駆けつける。
「太一くん、大丈夫!?太一くん!」
光輝が呼びかけると、太一がゆっくりと目を開けてきた。
「光輝くん・・・僕のことはいい・・早く、アイツを・・・!」
「でも、それじゃ太一くんが・・・!」
「今君がしなくちゃいけないのは、アイツを何とかすることだよ・・・!」
不安を膨らませる光輝に、太一が声を振り絞る。
「僕は自力で病院に行くから・・・光輝くんはアイツを・・・!」
「太一くん・・・ゴメン・・ホントにゴメン・・・!」
太一に呼びかけられて、光輝は竜也を追うべくメガブレイバーに乗った。
「行くぞ、メガブレイバー!」
「了解!」
光輝の呼びかけに答えて、メガブレイバーが走り出す。彼の後ろ姿を見送って、太一が力を振り絞ってクリスレイダーにすがりつく。
「大丈夫ですか、太一どの!?」
「大丈夫・・・とはいえないかも・・・」
クリスレイダーが声を荒げると、太一が弱々しく答える。
「一矢さんでも、僕でもアイツを止められなかった・・もう光輝くんに頼るしかない・・・」
「太一どの・・・」
「光輝くんには、あのすごい力がある・・それに強い勇気と正義感もある・・必ず何とかしてくれる・・必ず・・・」
光輝に強い信頼を送る太一。全ての願いを光輝に託し、太一はクリスレイダーに連れられて病院に向かうのだった。
竜也を追って街外れの荒野に赴いた光輝。メガブレイバーから降りた彼の前に、竜也が姿を現した。
「やはり来たか・・光輝・・・」
「どうしてもと止まらないのか、竜也くん・・・?」
低く言いかける竜也と、深刻さを膨らませる光輝。
「もう話し合いをするつもりはない・・話しかけても何も聞き入れようとしないことが分かってるから・・・」
「とうとう本性を現したか・・・!」
「ただ、これだけは話しておこうと思ってる・・僕がなぜ戦うのか・・・」
光輝が竜也に向けて、自分が貫いてきた信念を語り始める。
「僕は子供の頃から、仮面ライダーが好きだった・・世界を征服しようとする怪人や悪の組織に立ち向かっていくライダーたちの姿に、僕はずっと憧れ続けてきた・・いつか自分もヒーローに、仮面ライダーになれたらって・・・」
純粋な気持ちで語っていく光輝が、いつしか笑みをこぼしていく。
「そしてこうしてオメガになって、ライダーになって、自分も悪と戦えるんだって自信が持てた・・でもこの世界は、いい人と悪い人がハッキリしているわけじゃない・・悪い仮面ライダーもいれば、人間以上にいい心を持った怪人もいる・・何が正しくて、何が悪いのかをちゃんと見なくちゃいけない・・」
光輝が笑みを消して、真剣な面持ちを見せる。
「誰だって間違いをする・・でもそのことをしっかりと反省して、2度と同じ間違いをしないようにするのが1番大切なんだ・・・」
「だが愚か者は間違いを繰り返す・・明らかに間違いだといえることを、ヤツらは間違いだと思っていない・・・!」
「そうかもしれない・・何が本当の正義なのか、分からなくなることがある・・君のような人と出会わなかったら、単純に正義が正しく悪が悪いって思い込んだままだったかもしれない・・・ただ、今ハッキリといえることがある・・・」
竜也の言葉に答えると、光輝が水晶を手にして前に掲げる。
「今の君のしていることは、明らかに人間として間違っていることだ・・その間違いを僕が止める・・たとえ君を倒すことになっても!」
「オレは止まらない!倒れるのはお前のほうだ!」
決意を言い放つ光輝にいきり立ち、竜也が飛びかかる。
「変身!」
ベルトに水晶をセットして、光輝がオメガに変身する。彼は前転をして竜也の横をすり抜ける。
「仮面ライダーオメガ!」
耐性を立て直して竜也を見据える光輝が、高らかに名乗りを上げる。
「これ以上罪のない人たちを傷つけさせるわけにはいかない・・自由と平和を守るため、オレはお前を止める!」
光輝が竜也に向かって駆け出していく。果敢に攻撃を繰り出していく光輝だが、力を暴走させている竜也には通じていない。
それでも攻め続ける光輝。だが竜也の突進に押し切られて、彼は跳ね飛ばされて横転する。
「倒してやる・・お前は偽善の象徴・・お前を倒せば、世界の平和は一気に広がる・・・!」
「いや、まだだ・・オレは、負けるわけにはいかない・・・!」
声を振り絞る竜也に言葉を返して、光輝が立ち上がる。
「オレが倒れれば、ヒカルちゃんやくるみちゃん、たくさんの人が悲しむことになる・・だからオレは、ここで倒れるわけにはいかないんだ!」
「まだきれいごとを口にするか!」
言い放つ光輝に激昂して、竜也がエネルギーを放出する。
「メガフラッシャー!」
光輝も精神エネルギーを放出して迎撃するが、竜也の力に押されてしまう。オメガの装甲から火花を散らしながら、光輝がその場にひざを付く。
さらに攻め立ててくる竜也。両腕と両足からの攻撃に、光輝が追い込まれていく。
「オレは止まらない・・オレは倒れない・・世界に本当の平和を取り戻すまでは、オレは倒れるわけにはいかない!」
言い放つ竜也が繰り出した右足を受けて、光輝が突き飛ばされる。体力を消耗しながらも立ち上がる光輝が、ベルトの水晶を右手の甲にセットする。
「ライダーパンチ!」
光輝がメガブレイカーを繰り出す。だがこの直撃を受けても竜也は押されず、逆に光輝は上空に跳ね飛ばされる。
「ライダーチョップ!」
光輝が落下の勢いを利用しつつ、メガスラッシャーを繰り出す。だがこれも竜也の体を切りつけることができない。
竜也が突き出した右手で、光輝がさらに突き飛ばされる。光輝は踏みとどまると、すぐさま水晶を右足の脚部にセットして飛び上がる。
「ライダーキック!」
「いつまでもそんなものが通用すると思うな!」
メガスマッシャーを放つ光輝に、竜也が両腕を突き出す。力を込めた両腕に、光輝が弾き飛ばされる。
「ぐあっ!」
声を上げる光輝が激しく横転する。力を消耗した彼が、オメガへの変身が解かれる。
仰向けに倒れている光輝の前に、竜也がゆっくりと歩み寄って立ちはだかる。
「お前が口にしている正義では、オレを止めることはできない・・オレの怒りは、お前の考えでは止めることはできない・・・!」
「そんなことはない・・できないといって、諦めるわけにはいかない・・・!」
冷徹に告げる竜也に言い返して、光輝が力を振り絞る。
「オレは絶対に諦めない・・ヒカルちゃんたちのような心優しい人たちがいる限り、絶対に諦めない!」
「あの女はガルヴォルス、しかもクイーンと呼ばれていたヤツだ・・結局お前は、偽善を口にする愚か者でしかない・・」
「違う!ヒカルちゃんは人間だ!心優しい、1人の人間だ!」
竜也の言葉に反発すると、光輝がベルトから水晶を取り出す。
「人間の心を踏みにじることは、僕は絶対に許さない・・・メガブレイバー!」
光輝に呼びかけられて、メガブレイバーが駆けつけてきた。メガブレイバーが乗せていたスピリットカリバーを、光輝が手にする。
「オメガの力はまだ尽きてはいない・・もっと大きいものなんだ・・・変身!」
水晶をスピリットカリバーの柄にセットして、光輝が一気にスピリットフォーム・オメガへと変身する。強力となった精神エネルギーが、オメガの装甲からあふれ出してくる。
「その姿を見せたか・・だが、それでもオレを止めることはできない!」
言い放つ竜也の姿も刺々しいものへと変化する。
「お互い全力・・オレたちの全てを、ここでぶつけ合うことになる・・・だから!」
振り絞るように言いかける光輝が、スピリットカリバーの切っ先を竜也に向ける。
「だからこそ、お互いの全てを伝え合える・・そんな気がする・・・」
「オレは誰とも分かりあうつもりはない・・オレは他に絶対に陥れられない・・・!」
「たとえ分かり合えることがなくても、伝えることはできる・・オレの正義、君に伝える・・・!」
竜也と言葉を交わし、光輝が飛び出す。自分の中にある正義を賭けて、光輝は竜也に挑んでいくのだった。