仮面ライダーオメガ 第46話

 

 

 光輝、一矢、太一。3人の戦士が幸介の前に立ちはだかっていた。

「1人だろうと3人だろうと、私は負けない!」

 いきり立った幸介が刃を手にして光輝たちに飛びかかる。一矢と太一が真っ向から迎え撃ち、光輝はジャンプして幸介の後ろに回る。

 幸介が刃を振りかざし、一矢と太一だけでなく、光輝にも斬りかかる。だが3人は刃をかわす。

 光輝が反撃に転じ、幸介を攻め立てる。一矢と太一も攻撃に加わる。

「おのれ・・小賢しいマネを!」

 劣勢を強いられて毒づく幸介。だが反撃がままならず、彼は光輝たちに押されていくのだった。

「お前たちが束になろうと、私には絶対に勝てない!」

 怒りを爆発させた幸介が光輝たちと距離を取り、刃を投げつけてきた。だが光輝たちはこれもかわし、同時にクリスレイダーが飛び込んで幸介を突き飛ばす。

「ぐっ!」

「今だ!」

 怯んでうめく幸介と、チャンスを見出す光輝。光輝、一矢、太一がベルトの水晶を右足の脚部にセットする。

「ライダーキック!」

「ギガスマッシャー!」

「クリススマッシャー!」

 大きく飛び上がり、精神エネルギーを集中させたキックを幸介に繰り出す3人。目を見開く幸介に、3人の攻撃が叩き込まれた。

「ぐあっ!」

 強烈な攻撃を受けて、幸介が絶叫を上げる。大きく跳ね飛ばされて、彼は地面に落下する。

 着地した光輝たちが幸介を見据える。疲弊しながらも、幸介は力を振り絞って立ち上がってきた。

「今の攻撃を受けて立ち上がるなんて・・・!?

「大したものだと言っておこうか・・・」

 驚きを覚える太一と、淡々と言いかける一矢。苛立ちを膨らませる幸介が、再び刃を引き抜く。

「こんなことで・・私が倒れるなど・・・!」

 そのとき、幸介の姿が人間に戻る。力を使い果たし、彼はガルヴォルスの姿を維持できなくなった。

「バカな!?・・・この程度で、私が・・・!?

 愕然となる幸介が、光輝たちに目を向ける。

「今回はこれで終わりにしてやる・・だが勝ったなどと思うな・・・!」

 幸介は言い放つと、覚束ない足取りで光輝たちの前から去っていった。

「逃げられた・・でもしばらくは大人しくしているはず・・・」

「問題は、竜也くんだ・・・」

 呟きかける太一と光輝。彼らは変身を解除して、肩の力を抜く。

 その中で光輝は、竜也への心配を膨らませていた。

 

 光輝、一矢、太一に完膚なきまでに追い詰められた幸介は、怒りを抑えることができなくなっていた。だがそれ以上に光輝たちから受けたダメージが大きく、幸介は思うように動けなくなっていた。

「このまま・・このまま済ますものか!・・私が新しいキングだ・・私がこの程度のはずは・・・!」

「まだ自分が強いと思い上がっているのか・・・!?

 うめき声を上げたところで、幸介は自分に向けられての声を耳にする。緊迫を抱えたまま振り向くと、彼の視界に竜也の姿が入ってきた。

「お前か・・お前も新しいキングに刃向かう敵となるか・・・」

「キング?・・お前も結局、世界を愚かにする存在でしかないのか・・・!?

 声を振り絞る幸介に、竜也が怒りをあらわにする。彼の頬に異様な紋様が浮かび上がる。

「お前もオレが倒す・・この愚かな世界を変えるために・・・!」

 ドラゴンガルヴォルスに変身した竜也が幸介に迫る。幸介もとっさにジャックガルヴォルスに変身する。

「何度も言わせるな!私がキング!私に敵う者など存在しない!」

「それが思い上がりだというんだ・・愚か者は、それすらも分からない・・・」

 言い放つ幸介に、竜也が冷淡に告げる。

「愚か者は、私に刃向かうお前のことを言うのだ!」

 幸介が刃を手にして竜也に迫る。すると竜也が体を刺々しいものへと変化させる。

 幸介が振り下ろした刃を、竜也が右腕をかざして受け止める。その瞬間に幸介の刃が折れて弾き飛ばされる。

「なっ・・!?

「もうお前を見るだけでも気分が悪くなる・・・」

 驚愕の声を上げる幸介に、竜也が苛立ちを覚える。彼が繰り出した左手が、幸介の体に叩き込まれる。

「ぐおっ!」

 痛烈なダメージを負って怯む幸介。光輝たちとの戦いで、彼は力を消耗していた。

「こんなことで・・私がやられるなど・・・!」

「終わりだ・・お前の全ては・・・」

 うめく幸介に低く告げる竜也。

「お前もキングの座を狙うか・・お前も栄光を求めているということか・・・だからこの私を・・!」

 声を振り絞った幸介を、竜也の剣が貫いた。突然のことに、幸介は目を疑った。

「栄光など興味はない・・そんなものに何の価値もない・・・」

 竜也は幸介から剣を引き抜く。幸介が力なく倒れ、動かなくなる。

「こんなバカな・・・この私が・・・」

 絶命した幸介が崩壊を引き起こす。彼の最後を、竜也はじっと見下ろしていた。

「愚か者はオレが滅ぼす・・世界の本当の平和を、オレが取り戻す・・・」

 人間の姿に戻った竜也が振り返り、ゆっくりと歩いていった。今の彼は世界の敵と認識した相手を倒すだけ。それは人間もガルヴォルスも関係なかった。

 

 幸介との戦いを終えて、一矢と太一が病院に戻ってきた。まだヒカルは目を覚ましていなかった。

「あのガルヴォルスを倒すことができたよ・・」

「本当はオレだけでも十分だったのだが・・オレとしたことが・・・」

 報告する太一と、憮然とした態度を見せる一矢。

「ヒカルちゃんは・・まだ目を覚ましていないの・・・?」

「うん・・命に別状はなく、休めば元気になるっていうんだけど・・・光輝はどうしたの・・・?」

「メガブレイバーと話をしている・・多分、竜也くんとどう向き合おうとしているのか、確かめようとしているんじゃないかな・・・」

 互いに答えるくるみと太一。

「光輝・・まだ悩んでるっていうの・・・?」

「ううん・・むしろ決心している・・それを自分で確かめようとしているんじゃないかな・・・」

 肩を落とすくるみに、太一が微笑んで言いかける。その答えを聞いて、くるみも小さく頷く。

「そうね・・今の光輝に迷いはない・・あたしも信じることができる・・・」

「僕は少し休んでから光輝くんと合流するよ・・僕には、光輝くんたちを支えることができるって分かってるから・・・」

 くるみに向けて決心を告げる太一。すると弥生が微笑みかけてきた。

「本当に変わったね、太一くん・・以前の太一くんだったら、まず泣き言が出てきていたはずなのに・・・」

「そうだね・・・今でも怖いよ・・でも怖がってばかりじゃ、何にもならないから・・・」

 弥生の言葉に、太一が自分の気持ちを告げる。彼は自分の弱さを自覚しながらも、勇気を出して立ち向かっていこうとしていた。これは光輝と出会ったことで気付けたことと、彼は認識していた。

「いつもヒーローを夢見て、子供みたいっていつも思うけど・・光輝にとっては本気のことなのよね・・・」

 くるみも光輝について語り出す。

「呆れさせてくれるけど、本気にもさせてくれるのよね・・・」

「フン。オレには子供同然としか見えないな。呆れてものもいえないほどだ・・」

 一方で一矢は光輝の考えに呆れ果てていた。

「あのようなヤツに合わせてやることはない。もっとも、オレは他に合わせることはないのだが・・」

 一矢はそう告げると、くるみたちの前から去っていった。

「もう、相変わらず自信過剰なんだから、一矢さんは・・・」

 一矢の態度に呆れるくるみ。太一も弥生も苦笑いを浮かべていた。

 落ち着きを取り戻したくるみが、病室に目を向ける。するとベットで眠っていたヒカルが目を覚ました。

「ヒカルちゃん・・・ヒカルちゃんが目を覚ましたよ!」

「本当!?・・すぐに先生に知らせないと!」

 くるみが声を上げると、太一が慌しく医師を呼びに行った。

「ヒカルちゃん・・・よかった・・目が覚めたんだね・・・」

「くるみさん・・・私・・・」

 安堵の笑みを浮かべるくるみに、ヒカルが当惑を見せる。

「あなたは気絶していたの・・でもホントに目が覚めてよかった・・・」

「私が・・・光輝さんは・・・?」

「今はここにいない・・でも元気でいるよ・・迷いも吹っ切っちゃってるし・・」

「光輝さんが・・・よかった・・・」

 くるみから光輝の無事を聞いて、ヒカルが安堵を覚える。

「すぐに光輝さんのところに行かないと・・1度会わないと・・・」

「ダメよ、まだ休んでいないと・・今まで意識不明だったんだから・・・!」

 起き上がろうとするヒカルをくるみが止める。意識がまだ覚束なかったため、ヒカルはやむなく再びベットに横になる。

「光輝は大丈夫だから・・ヒカルちゃんがムチャしたら、それこそ光輝が安心できなくなっちゃうじゃない・・・」

「そうですね・・・光輝さんに会いたい・・いつもの、元気で明るい姿で・・・」

 くるみに励まされて、ヒカルは微笑んで頷く。そこへ太一と医師が病室に入ってきた。

「おぉ・・意識を取り戻したか・・・」

「先生・・後はお願いします・・・」

 笑みをこぼす医師に、くるみが頭を下げる。

「ヒカルちゃん、あたしたちは廊下にいるから・・・」

「はい・・ありがとうございます・・・」

 くるみが呼びかけると、ヒカルが微笑んで頷いた。

 

 その頃、光輝は廃工場にいた。彼はメガブレイバーに、改めて自分の心境を打ち明けていた。

「メガブレイバー・・今まで僕を助けてくれてありがとう・・君がいなかったら、僕は弱いままだったかもしれない・・・」

「いや、私も君に出会えたことを誇りに思っている・・君のような人がオメガになってくれて・・・」

 互いに感謝の言葉を掛け合う光輝とメガブレイバー。

「僕はこれから、竜也くんに会いに行く・・もしかしたら戦うことになるかもしれない・・負けるかもしれない・・・」

「光輝・・・」

「でも僕は生きて帰る・・みんなの、ヒカルちゃんの笑顔が見たいから・・・」

 自分の正直な気持ちを打ち明ける光輝。竜也を救いたいとい願いを持つ一方で、彼はヒカルたちを大切にしていた。

「ならば必ず元気で帰らないといけない・・お互いのために・・・」

「メガブレイバー・・ありがとう・・・」

 メガブレイバーからの励ましの言葉に、光輝が笑顔を見せて頷く。

「ただ、もう1度病院に行ってからにする・・もしかしたら、ヒカルちゃんが目を覚ましているかもしれないから・・・」

「ならば私に乗っていくといい。そのほうが速いだろう・・」

 病院に戻ろうとする光輝に、メガブレイバーが呼びかける。光輝はメガブレイバーに乗って、病院に向かっていった。

 

 幸介を葬り、憎悪のままに力を振るおうとしていた竜也。彼は日本から正しくしようと考えていた。

「滅ぼしてやる・・愚か者を、全て滅ぼしてやる・・・!」

 さらなる憎悪をたぎらせて、ゆっくりと歩を進めていく竜也。だが彼は気付いていなかった。彼の目に映るもの全てが敵に見えてしまっていることに。

 信じていたものの全てに裏切られ、見放され、その全てが許せなくなった。彼の憎悪は、彼自身も制御できないほどにまで膨れ上がっていた。

「滅ぼす・・世界の敵は、全てオレが・・・!」

 憎悪に突き動かされる竜也がドラゴンガルヴォルスに変身する。異形の怪人の姿となった彼に、周囲にいた人々が恐怖を覚え、悲鳴を上げて逃げ出す。

「ついに見境をなくしたか、ガルヴォルスが・・」

 そこへ一矢が姿を現した。振り返った竜也が、彼に鋭い視線を向ける。

「お前も敵・・お前もオレが葬ってやる・・・!」

「問答無用か・・それもいい。オレはお前たちのような怪物と話をしようなどとは考えていない・・・変身。」

 鋭く言い放つ竜也に不敵な笑みを見せて、一矢が水晶をベルトにセットする。

「オレに敵などいない。なぜなら、オレは無敵だから・・」

 ギガスに変身した一矢が高らかに言い放つ。

「どこまでも思い上がって!」

 怒号を見せる竜也が一矢に飛びかかる。竜也が繰り出してきた両腕を、一矢が両手で受け止める。

「ぐっ!」

 だが強引に攻めてくる竜也に、一矢が押されていく。踏みとどまれず、一矢が大きく突き飛ばされる。

 壁に叩きつけられて一瞬怯む一矢。竜也が怒りをさらに見せ付けて、力を増大させていく。

「本当に暴走している・・手の付けられない狂犬だ・・・!」

 毒づく一矢がギガシューターを手にして発砲する。だがその弾丸は竜也には通じていなかった。

「許さない・・絶対に許すものか!」

 竜也の体が刺々しいものへと変化する。さらなる力を発揮した彼が、一矢に迫る。

「どこまでも往生際の悪いことだ・・・!」

 鋭く言いかける一矢が、右足の脚部に水晶をセットして飛び上がる。

「ギガスマッシャー!」

 精神エネルギーを込めたキックを放つ一矢。竜也が力を集中させた両腕を突き出す。

「オレは無敵!オレが1番!この事実は絶対に変わらない!」

「それがお前の思い上がり!お前の限界だ!」

 互いに言い放つ一矢と竜也。2つの巨大な力の衝突の中、竜也が一矢を弾き飛ばした。

「ぐあっ!」

 激しく横転する一矢。力の消耗とダメージによって、彼の体からギガスの装甲が消失する。

 体に痛みを覚えながらも、起き上がろうとする一矢。だが迫ってきた竜也に踏みつけられて、一矢がさらなる苦痛を覚える。

「もう逃がさない・・ここで叩き潰す・・・!」

 怒りを込めて、一矢を踏みつけている足に力を込める竜也。激痛にさいなまれて、一矢がついに絶叫を上げた。

 

 メガブレイバーに乗って、病院に駆けつけた光輝。病室にやってきた彼は、廊下で待つくるみ、太一、弥生に声をかけた。

「くるみちゃん・・ヒカルちゃんは・・?」

「丁度よかった・・今、目が覚めたところだよ・・・」

 光輝の問いかけにくるみが微笑んで答える。ヒカルの無事を確かめて、光輝が喜びを覚える。

「よかった・・まだ病室だよね・・・?」

「うん・・今、先生が診察してるから、もうちょっと待って・・・」

 病室に向かおうとした光輝をくるみが呼び止める。

「それで、竜也くんは・・・?」

「これから会いに行く・・まだ何もしていなければいいんだけど・・・」

 くるみの問いかけに光輝が答える。彼は竜也に対する不安を浮かべていた。

「これから行ってくる・・これ以上竜也くんに、罪を犯させてはいけない・・・」

「僕も行く・・ヒカルちゃんも目を覚ましたし、安心できる・・・」

 呼びかける光輝と太一。そこで医師が病室から出てきた。

「もう大丈夫ですよ・・入ってもいいですが、あまりムリをさせないように・・」

「はい・・ありがとうございます!」

 微笑みかける医師に、光輝が深々と頭を下げる。彼は病室に入ると、ベットの上で体を起こしているヒカルを目にする。

「ヒカルちゃん・・・よかった・・ホントによかった・・・」

「光輝さん・・・すみません・・迷惑をかけてしまって・・・」

 安堵を覚える光輝に、ヒカルが謝る。

「いいんだよ・・ヒカルちゃんが無事でいただけで、僕は嬉しい・・・」

 光輝が弁解すると、ヒカルは笑顔を見せて頷いた。

「ヒカルちゃん・・僕は行かなくちゃいけない・・竜也くんを止めないと・・・」

「私、今は思うように力を使うことができません・・・力になれなくて、すみません・・・」

「いいんだよ・・ヒカルちゃんやくるみちゃんに、ムリして戦わせたいとは思っていないから・・・」

 再び謝るヒカルに、光輝が優しく言いかける。

「くるみちゃん、ヒカルちゃんをお願い・・・」

「任せといて・・光輝こそ、無事で帰ってきてよね・・・」

 呼びかける光輝にくるみが言いかける。微笑んで頷いた光輝は、太一とともに病院を飛び出した。

 

 

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