仮面ライダーオメガ 第24話

 

 

 左腕を負傷しながらも、マッシュルームガルヴォルスに挑んでいった光輝。だが左腕の痛みが光輝を追い込み、彼はやむなく撤退することとなった。

 メガブレイバーに救われながらも、光輝は疲れ切って意識を失ってしまった。

「光輝!?・・光輝!」

 呼びかけるメガブレイバーだが、光輝は目を覚まさない。そこへヒカルから連絡を受けた太一と弥生が駆けつけてきた。

「光輝くん、大丈夫!?

「しっかりしてください、光輝さん!」

 光輝に呼びかける太一と弥生。

「あとは僕たちに任せて、メガブレイバー!・・行こう、弥生ちゃん!」

 太一の呼びかけに弥生が頷く。光輝は2人に助けられて、病院に連れて行かれることになった。

 

 2度目の診察でも、光輝に命の別状はなかった。だが腕の負傷は悪化しており、回復まで長引くことになってしまった。

「絶対にムリは禁物ですからね。しばらく家で大人しくしていてください。」

「すみません・・厳重に注意しておきますから・・・」

 注意する医者にひたすら謝るくるみ。医者が去ったところで、彼女は光輝を睨みつけてくる。

「そんな腕じゃなかったら、今頃殴ってるところだからね・・もう太一くんたちに任せて、アンタは大人しくしてなさい!」

「ゴメン、くるみちゃん・・・大人しくするから・・・」

 くるみに鋭く言われて、光輝が気落ちする。2人を見て、ヒカルだけでなく、太一と弥生も微笑みかける。

「ありがとう、太一くん、弥生さん・・光輝を助けてくれて・・・」

「ううん、気にしなくていいよ・・ヒカルさんが知らせてくれたから・・・」

 感謝の言葉をかけるくるみに、太一が弁解を入れる。

「ガルヴォルスは見つけていない・・どこにいるのか・・・」

「でも探さないと・・こんな状態の光輝くんに代わって、僕がやらないと・・・」

 弥生が不安を浮かべると、太一が気持ちを引き締める。

「光輝さんが傷つくほどの相手です・・気をつけてください・・・」

「それでも、もう僕がやるしかないんだ・・・光輝くんの代わりに、僕が・・・」

 呼びかけるヒカルに対し、太一は呟きかける。彼は深呼吸をしてから、光輝たちの前から歩き出していった。

「太一くん、1人で大丈夫かな・・・?」

 太一のことが気がかりになるくるみ。光輝も不安を拭えないでいた。

「一矢さんにも、協力してもらったほうが・・・」

「ダメよ・・あの人、この上ないくらいにマイペースだから・・・」

 ヒカルが切り出すが、くるみは肩を落とすだけだった。

「・・・やっぱり・・このままじっとしているなんて・・・」

 そのとき、光輝が深刻さを込めて言いかける。その言葉を耳にして、くるみが彼に詰め寄る。

「アンタ、いい加減にしなさいよ!その調子でやってると、命がいくつあっても足りないわよ!」

「分かってる・・・でも、それでも僕は・・・」

 さらに怒鳴るくるみだが、光輝は頑固になっていた。そこへ看護師が慌しくやってきた。

「大変です!亮太くんの容態が・・!」

「えっ・・・!?

 彼女の報告を耳にして、光輝たちは緊迫を覚えた。

 

 突然容態が急変した亮太。2人の看護師の介抱を受けている彼のいる病室に、医者と光輝たちがやってくる。

「すぐに手術を行わなければ・・準備を!」

「分かりました!」

 医者の呼びかけに看護師たちが答える。手術室に向かおうとしている亮太が、光輝に目を向ける。

「お兄ちゃん・・僕、頑張るよ・・・だって、仮面ライダーが見てるから・・・」

 弱々しく声をかける亮太に、光輝が戸惑いを覚える。彼の中で、子供たちの仮面ライダーに対する気持ちが渦巻いていたのだ。

 看護師たちに連れられていく亮太を、深刻さを感じながら見送るヒカルたち。その傍らで光輝は動揺を膨らませていた。

(亮太くんやみんなは、今も仮面ライダーを信じているんだ・・ライダーである僕が、こんなところでじっとしているわけにいかない・・・!)

「やっぱりどうしても、このままじっとしているわけにはいかない・・仮面ライダーを信じている亮太くんを、裏切るわけにはいかない・・・!」

 改めて決意を口にする光輝が、左腕を支える包帯を外す。

「光輝、アンタって人は・・・!」

 怒りが爆発寸前になるも、あえて自制するくるみ。気持ちを落ち着けてから、彼女は光輝に言い寄る。

「そこまで言うならもう止めない・・だけどこれだけは絶対に守って・・無事に帰ってくること・・・」

「くるみちゃん・・・分かってるよ・・危なくなったら引き返すことにするよ・・・」

 くるみに念を押されると、光輝は微笑んで頷く。仮面ライダーとしての使命を胸に秘めて、光輝は歩き出していった。

「光輝さん・・・」

 彼の後ろ姿を見つめて、ヒカルは戸惑いを募らせていた。

 

 街外れの通りを歩く女性。楽しく歩く彼女の前に、男が現れた。

「・・お前・・ママ、なのか・・・?」

「ちょっと、あなた何を言って・・・!?

 声をかけてくる男に、女性が不安を浮かべる。

「そう・・ママじゃないんだ・・・」

 憤りをあらわにした男が、マッシュルームガルヴォルスに変身する。その異形な姿に女性が驚愕する。

 マッシュルームガルヴォルスが口から胞子を吐き出す。その胞子を浴びて、女性は苦しんで昏倒してしまう。

「・・ママじゃないなら、消えてしまえばいいんだ・・・」

 再び不気味な笑みをこぼすマッシュルームガルヴォルス。そこへ太一が駆けつけ、マッシュルームガルヴォルスが振り返る。

「ガルヴォルス・・よくも光輝くんを・・・」

 不気味に笑うマッシュルームガルヴォルスに、太一は憤りを見せる。

「変身・・・!」

 太一がベルトに水晶をはめ込み、クリスに変身する。

「もう僕しか、未来を切り開けないんだ・・・」

 太一は低く告げると、クリスセイバーを手にしてマッシュルームガルヴォルスに飛びかかる。振り下ろされる一閃を受けて、マッシュルームガルヴォルスが怯む。

「くっ・・痛いじゃないか・・・」

 不満を口にしたマッシュルームガルヴォルスが、太一に向けて突進を仕掛ける。太一は跳躍してその突進をかわす。

 だがマッシュルームガルヴォルスは反転して再び突進する。太一はとっさにクリスセイバーを掲げて、突進を受け止める。

「負けられない・・光輝くんのためにも、負けたくはない・・・!」

「邪魔しないでよ・・僕はママを見つけるんだ・・・!」

 鋭く言いかける太一とマッシュルームガルヴォルス。2人の力は拮抗し、互いに一歩も引かない。

 そのとき、マッシュルームガルヴォルスが口から胞子を吐き出す。その胞子にまかれて、太一が怯んで後退する。

「ぐっ!・・毒の胞子か・・!」

 すぐさま息を止めて胞子を吸い込まないようにする太一。クリスの装甲に守られていたため、太一は精神力である程度胞子を跳ね除けていた。

(いけない・・息を止めながら戦うのは、ムリがある・・・!)

 息苦しさを痛感して、焦りを募らせる太一。そこへマッシュルームガルヴォルスが突進を仕掛け、太一が突き飛ばされる。

 窮地に追い込まれる太一。彼は起死回生を図り、ベルトの水晶をクリスセイバーにセットする。

「クリスストラッシュ!」

 クリスセイバーを振りかざし、太一が光の刃を放つ。だがマッシュルームガルヴォルスは横に飛んでその一閃をかわす。

 ガルヴォルスに接近され、両腕をつかまれて持ち上げられる太一。抵抗することもできず、太一が苦痛を膨らませていく。

「もう終わりだよ・・このまま壊してやるんだから・・・」

 笑みをこぼしながら力を込めるマッシュルームガルヴォルス。その両手を振り払うことができず、太一がうめく。

 そのとき、マッシュルームガルヴォルスが突如横から突き飛ばされる。解放された太一が地面に倒れ込む。

 駆けつけたのは、メガブレイバーに乗る光輝だった。メガブレイバーの突進がマッシュルームガルヴォルスを突き飛ばし、太一を助けたのである。

「大丈夫、太一くん!?

「こ、光輝くん!?・・腕は大丈夫なの・・・!?

 呼びかける光輝に、太一は驚きを覚える。光輝の腕はまだ悪いままだった。

「まだ戦える状態じゃない・・・それでも戦わなくちゃいけないって思ったんだ・・自由と平和、夢のために・・・」

「光輝くん・・・」

 決意を口にする光輝に、太一が戸惑いを見せる。立ち上がろうとする太一だが、胞子の毒の影響で体がふらつく。

「太一くんは休んでいて・・後は僕がやるから・・・」

 光輝が太一に呼びかけて、マッシュルームガルヴォルスの前に立つ。

「これ以上、お前の好きなようにはさせないぞ・・・変身!」

 言い放つ光輝が痛みに耐えながら、水晶をベルトにセットしてオメガに変身する。満身創痍の中、彼は人々を襲うガルヴォルスに立ち向かおうとしていた。

(亮太くんは手術を受けている今も、仮面ライダーを信じて頑張っているんだ・・)

 光輝の脳裏に、仮面ライダーを信じる亮太の笑顔がよぎる。

(オレも仮面ライダーとなって戦っているんだ・・だから亮太くんの気持ちを、裏切ることはできない・・・!)

 決意を秘めた光輝が、突っ込んでくるマッシュルームガルヴォルスを迎え撃つ。負傷している左腕に負担をかけないよう、右手で相手の攻撃を受け流していく。

(長期戦になったら不利だ・・速攻で決めるしかない・・・!)

 マッシュルームガルヴォルスが振りかざす両手をかわしながら、光輝はメガブレイバーに乗る。マッシュルームガルヴォルスが口から胞子を放つが、メガブレイバーが加速してかわす。

 いきり立って突進を仕掛けるマッシュルームガルヴォルス。だがメガブレイバーの前輪に逆に突き飛ばされる。

 メガブレイバーから降りた光輝は、水晶を右足の脚部にセットする。

「これが、夢と信頼を込めたライダーキックだ・・・!」

 鋭く言い放つ光輝が、持てる力を右足に込めて飛び上がる。突き出した右足に精神エネルギーが集束される。

 光輝が放ったメガスマッシャーが、マッシュルームガルヴォルスに叩き込まれる。この改心の一撃により、マッシュルームガルヴォルスが力尽き、霧散して消滅していった。

 同じく全身全霊を賭けた光輝が疲弊し、オメガへの変身も解除される。

「光輝くん!」

 クリスへの変身を解除した太一が、倒れ込んだ光輝を支える。

「光輝くん、しっかりして!光輝くん!」

「アハハハハ・・・やっぱり、ムチャしちゃったみたいだね・・また先生や、くるみちゃんに怒られちゃう・・・」

 呼びかける太一に、光輝が苦笑いを浮かべる。ひとまず無事だったことに、太一は安堵を感じた。

「亮太くんにも伝わっているはずだ・・仮面ライダーが、その気持ちに応えたって・・」

「光輝くん・・・光輝くんがいうなら、そうだと思うよ・・・」

 光輝が口にした言葉に太一も同意する。

「急いで戻らないと・・亮太くんの手術が終わっているはずだ・・・」

「手術・・だったら急がないと・・・!」

 光輝の言葉に太一が慌てる。2人は急いで病院に戻ることにした。

 

 太一に支えられて、光輝は病院に戻ってきた。既に亮太の手術は終わり、緊張感に満ちていた廊下に平穏が戻ってきていた。

「ヒカルちゃん、くるみちゃん・・・ただいま・・・」

「光輝さん・・無事だったんですね・・・」

 光輝が声をかけると、ヒカルが彼の無事を喜ぶ。

「僕は大丈夫・・それより、亮太くんは・・・?」

 光輝が深刻になって訊ねると、くるみが微笑んで答える。

「手術は成功よ・・十分休めば、元気になるそうよ・・・」

「そうか・・・よかった・・ホントによかった・・・」

 くるみの言葉を聞いて、光輝は安心する。だが直後、疲れていた光輝がその場に倒れ込む。

「光輝くん!?

 声を荒げる太一が光輝を支える。光輝は眠ってしまい、寝息を立てていた。

「もう、ホントにしょうがないんだから、光輝は・・・」

 光輝の寝顔を見て、くるみは呆れ果てていた。

「亮太くん・・亮太くんは・・・!?

 そこへ知らせを聞いたみどりが慌しく駆け込んできた。

「もう大丈夫よ、みどり・・手術は終わって休んでるよ・・・」

 くるみの答えを聞いて、みどりが安堵を浮かべる。

「仮面ライダーが、亮太くんに勇気を与えてくれましたから・・・」

 ヒカルが続けて言いかける。仮面ライダーの雄姿が、光輝を奮い立たせ、亮太に勇気を与えたのだった。

 

 意識を取り戻した光輝は、ヒカルとくるみに連れられて家に戻った。彼はくるみに家で休むように念を押されることとなった。

 療養の日々と束の間の休息を過ごし、数日がたった。元気になった亮太が退院を迎えたのである。

 みどりとともに病院を出てきた亮太を、光輝、くるみ、ヒカルも出迎えていた。

「退院おめでとう、亮太くん・・」

「お兄ちゃん・・・ありがとうね・・お兄ちゃんが励ましてくれたから、僕、頑張れたんだよ・・」

 声をかける光輝に、亮太が笑顔を見せる。すると光輝が亮太の肩に手を添える。

「亮太くんが頑張れたのは僕じゃなく、仮面ライダーのおかげ・・そうだよね?」

「そうだね・・仮面ライダーのおかげなんだよね・・」

 光輝の言葉に亮太が頷く。

「これからも勇気を持って、仮面ライダーのように強くなるんだよ・・ライダーも、きっとそれを願っているはずだから・・・」

「うん。僕、これからも頑張るよ。どんな病気にも負けないようにね・・」

 光輝の励ましの言葉を受けて、亮太は元気に頷いた。光輝の願いと仮面ライダーの雄姿が、1人の少年を救ったのである。

「それじゃ行こう、亮太くん・・パパとママが来るから・・」

「うん・・それじゃお兄ちゃん、お姉ちゃん、さようなら・・」

 みどりに呼ばれると、亮太は光輝たちに挨拶をして、遅れて病院から出てきた両親に向かって走っていった。

「あんまりムリして、大丈夫なのかな・・?」

「大丈夫だよ・・これから亮太くんは、どんどん強くなっていく・・体も、心も・・・」

 不安を浮かべるくるみに、光輝が笑顔で答える。

「亮太くんみたいな子供たちに夢を与え、守るために、仮面ライダーは戦い続けているんだ・・僕だって・・・」

「でも何度もケガをするのはやめてください・・いくらみんなを守るためでも、傷だらけになる光輝さんは見ていられません・・・」

 自分の気持ちを口にする光輝に、ヒカルが沈痛の面持ちで言いかける。その言葉に光輝が戸惑いを浮かべる。

「光輝さんは一人しかいないんです・・ですから光輝さん、自分の体のことも大切にしてください・・・」

「ヒカルちゃん・・・ヒカルちゃんやくるみちゃんには、ホントに迷惑かけっぱなしだね・・・」

 切実に言いかけるヒカルに、光輝が苦笑いを浮かべる。

「それじゃ、そろそろ帰るわよ。ケガ人は大人しく家で休むように。」

「分かりました、くるみ先生・・・エヘへ・・」

 呼びかけるくるみに光輝が頭を下げる。彼らは休息のため、家に戻っていった。

(みんなを守り、自分も守る・・仮面ライダーは、自分の戦いのために悲しみを与えてしまうことはない・・僕も大切な人たちを悲しませたくない・・くるみちゃんも、ヒカルちゃんも・・・)

 改めて決意を思い描いていく光輝。次の戦いに備えて、彼は家路に着いた。

 

 

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