仮面ライダーオメガ 第18話
「クリスタルユニット3機、全て私がいただかせてもらう・・・!」
混沌とした光輝たちの隙を突いて、幸介が攻撃を仕掛けてきた。一矢との戦いで体勢を崩されている太一に、幸介が迫る。
「太一くん!」
そこへ光輝が飛び込み、幸介の前に立ちはだかる。幸介はとっさに、標的を光輝に変える。
「お前からユニットを奪われたいか・・・!?」
幸介が刃を引き抜いて、光輝を攻め立てる。その一閃を受けて、オメガの装甲から火花が散る。
「くっ!」
「光輝くん!」
うめく光輝と声を荒げる太一。完全に戦意を揺さぶられていた太一は力を発揮することができず、その精神面の弱さの表面化でクリスへの変身が解除してしまう。
「太一くん!?・・何とかしないと・・!」
危機感を膨らませる光輝が反撃に転じる。
「またオレの邪魔をしてくるとは・・腹立たしいことだ・・・!」
太一との戦いを妨害されたことを不快に感じ、一矢が幸介に向かって飛びかかる。光輝と一矢、2人の同時攻撃に、幸介は攻めあぐねてきた。
「くそっ!また私が追い詰められるなど・・!」
毒づく幸介に対し、光輝と一矢が水晶を右手の甲にはめ込む。
「ライダーパンチ!」
「ギガブレイカー!」
2人が飛びかかり、エネルギーを集束させた打撃を幸介に叩き込む。刃で防ぐも耐え切れず、幸介は突き飛ばされる。
「おのれ!」
声を荒げる幸介がその勢いに乗っかる形で、やむなく撤退していった。敵を撃退したことに安堵して、光輝は一矢とともに変身を解除する。
「太一くん・・・!」
光輝がたまらず太一に駆け寄る。くるみと弥生に支えられている太一が怖がって震えている。
「それがクリスの装着者か・・こんなに臆病なのが・・・」
そこへ一矢が歩み寄り、太一の様子を見て肩を落とす。その態度に光輝が憤る。
「あなたが攻撃してきたのがいけないんでしょうが!・・太一くん、また怖がって・・・」
「しかしさすがに怖がりすぎだ。こんなんじゃ、とても戦えるものではない・・」
光輝の怒りを受けても、一矢は悠然さを崩さない。すると怒ったくるみが詰め寄り、一矢の顔面にパンチを叩き込む。
「ぐっ!くるみさん、何を・・!?」
「相変わらず、あなたは性格が曲がっていますね!少しは他人の気持ちを考えることはできないんですか!?」
顔を押さえてうめく一矢に、くるみが怒鳴りかける。しかし気持ちを落ち着けた一矢の考えは変わらない。
「オレは世界一だ。オレより下の人、つまりオレ以外の人には大方興味はない。せいぜい吉川光輝と・・水神くるみさん、あなただけだ・・」
「ふざけないで!あたしは情けない人は嫌いだけど、思いやりのない人はもっと嫌いなのよ!いつまでも自分勝手でいるのはやめて!」
悠然と語りかける一矢に、くるみがさらに怒りをぶつける。
「今はケンカしてる場合じゃないよ、2人とも!」
そこへ光輝が声をかけ、くるみと一矢が目を向ける。
「大学か家に戻ろう・・弥生さん、行きましょう・・」
「ここからならまだ大学のほうが近いです・・・」
光輝の呼びかけに弥生が答える。彼らは太一を連れて、大学へと戻るのだった。
ひどく怯えてしまった太一の様子に、昭平は深刻さを隠せなかった。
「勇気は持てたとしても、打たれ弱さまではいかんともしがたいか・・・」
「すみません・・僕たちがついていながら・・・」
肩を落とす昭平に、光輝が頭を下げる。
「吉川くんが謝ることはない・・悪いのは、私の力不足だ・・・」
「昭平さんこそ謝らないでください・・もう2度と、太一くんにこのような思いはさせません・・・」
互いに弁解を入れる昭平と光輝。弥生とくるみの介抱によって、太一は落ち着きを取り戻していった。
「太一くん・・大丈夫・・・?」
「うん・・・ゴメンね、弥生ちゃん・・また、迷惑をかけちゃったね・・・」
心配の声をかける弥生に、太一が沈痛の面持ちで謝る。そこへくるみが困り顔で言いかける。
「光輝の言ってたとおり、臆病な性格みたいね・・でも光輝みたいに正直者でもあるみたいだね・・ウソが付けないって感じ・・」
「嫌われたくないというのが1番の気持ちなんだ・・でもこんな性格ってだけで嫌われることもあるんだけど・・・」
くるみの言葉に太一が物悲しい笑みを浮かべる。
「今までは全然逃げてばかりでした・・でも光輝くんに言われて、自分のことは自分で何とかしないといけないって思ったんだ・・・」
「なるほど・・でも光輝、頭より体や口が働くからね、いつも・・・」
自分の気持ちを告げる太一に、くるみは光輝に対して呆れた態度を見せる。
「その点太一くんはしっかりしてるから、そんなに心配しなくてもよさそうね・・」
「そういってもらえると・・嬉しいというか何というか・・・」
くるみの言葉に戸惑いを見せる太一。光輝は気まずくなっており、返す言葉もなくなっていた。
「でも、さっきのガルヴォルスたちが近くにいるかもしれないわね・・・」
くるみが話を切り替えると、光輝が深刻な面持ちを浮かべる。
「僕が周りを見てくる・・くるみちゃんは太一くんと弥生さんをお願い・・」
「しょうがないわね・・分かったわよ・・」
光輝の言葉にくるみが渋々頷く。彼はガルヴォルスの行方を追うべく、外に飛び出した。
「光輝さん、大丈夫でしょうか・・・?」
「無鉄砲なところがあるからね・・心配ないというか何というか・・・」
弥生が投げかける疑問に、くるみが呆れながら答える。太一も光輝のことが気がかりで仕方がなくなっていた。
だがしばらくしてから、太一たちに向けて危機が訪れた。
「こんなところにいたのか・・」
「どうやらあの子供染みたヤツはいないみてぇだ・・」
太一たちのいる部屋に、ガルヴォルスの男子たちが姿を現した。
ガルヴォルスの行方を追う光輝。しかし大学とその周囲には生徒や教師たち、人々が大勢おり、その中から人の姿を取っているガルヴォルスを見つけることは容易ではなかった。
「やっぱり見つけるのはムリなのか・・・メガブレイバーと協力して・・・」
次の打開策を模索しながら、光輝はひとまずくるみたちのところに戻ろうとした。
そのとき、光輝は自分の携帯電話が受信してバイブレーションしていることに気付く。彼は電話を取り出し、電話の相手がくるみであることを確かめる。
「くるみちゃん・・・どうしたの、くるみちゃん?」
“どうした、じゃないわよ!さっきのガルヴォルスがこっちに・・”
慌しいくるみの声を聞いて、光輝も緊迫を覚える。
「どこにいるの、くるみちゃん!?太一くんたちは!?」
“今校舎から外に出た!一矢さんが1人と戦ってるけど、もう1人が・・!”
問いかける光輝にくるみが答える。一矢がソードフィッシュガルヴォルスを相手取っている間、フライングフィッシュガルヴォルスが彼女たちを追いかけていたのだ。
次の瞬間、大学から悲鳴が上がる。ガルヴォルスたちの姿を目撃して、生徒や教師たちが飛び出してきた。
「見境なしに追いかけているのか・・・!」
毒づく光輝が大学の周りを駆け抜けていく。その裏門に差し掛かったとき、くるみ、太一、弥生が飛び出してきた。
「くるみちゃん!」
「光輝!」
光輝とくるみが声を掛け合う。直後、フライングフィッシュガルヴォルスも飛び出してきた。
「ガルヴォルス!」
身構える光輝が水晶を取り出す。
「変身!」
水晶をベルトにはめ込み、光輝がオメガに変身する。
「仮面ライダーオメガ!」
光輝が高らかに名乗ると、フライングフィッシュガルヴォルスに飛びかかる。素早く跳躍しようとしたフライングフィッシュガルヴォルスを、光輝が組み付いて引き倒す。
「ここはオレに任せろ!みんなは逃げるんだ!」
光輝の呼びかけを受けて、くるみが太一と弥生を連れて再び逃げ出す。3人は大学から遠ざかることができた。
「また会えるとは嬉しいぞ、クリス。」
だが彼らの前に幸介が姿を現した。
「アンタはこの前の・・!?」
「あの2人が先に出てきてくれたのは好都合だった・・このチャンス、逃すわけにはいかない・・」
驚愕の声を上げるくるみと、不敵な笑みを見せる幸介。
「オメガとギガスは2人の相手で手一杯・・その間にクリスユニットを手に入れる!」
いきり立つ幸介がジャックガルヴォルスに変身する。くるみと弥生が危機感を覚える中、太一が水晶を手にする。
「もう僕しか、未来を切り開けないんだ・・・変身!」
太一が水晶をベルトにはめ込み、クリスへと変身する。弥生たちを守るため、太一は単身幸介に挑もうとしていた。
「この私に挑むとは・・だが1人で私を止められるかな?」
幸介が悠然さを見せると、クリスセイバーを手にした太一を迎え撃つ。クリスセイバーの一閃を、幸介は引き抜いた刃で受け止める。
「負けたくない・・お前なんかに、僕たちの安息を壊されてたまるか!」
「小僧の分際で大きな口を・・!」
言い放つ太一に苛立ちを見せる幸介。果敢に挑む太一の姿に、弥生は困惑を募らせていた。
その頃、ソードフィッシュガルヴォルスとの激闘を繰り広げていた一矢。1対1の勝負では、一矢の勝利は揺るがなかった。
「見苦しいものだな・・力の差が理解できないまま、私に無謀な勝負を挑んでくることに・・」
「くそっ!・・全然歯が立たないなんて・・・!」
悠然と言いかける一矢に、ソードフィッシュガルヴォルスが焦りを膨らませる。
「あまり時間は割きたくない・・そろそろ終わらせてもらうぞ・・」
一矢はベルトの水晶を脚部にはめ込む。
「ギガスマッシャー!」
飛び上がった一矢が繰り出した両足の蹴りが、ソードフィッシュガルヴォルスに叩き込まれる。突き飛ばされたソードフィッシュガルヴォルスが壁に叩きつけられ、同時に事切れたことで肉体が崩壊した。
「手間をかけさせて・・・さて、クリスは少しはやる気になっているかな・・・?」
一矢はくるみを助けるべく、すぐさまこの場から移動していった。
フライングフィッシュガルヴォルスに猛攻を仕掛ける光輝。くるみたちを守りたいという気持ちが、オメガとしての力を向上させていた。
「何で・・さっきはついてこれなかったはずなのに・・・!?」
「お前たちガルヴォルスから、みんなの平和と自由を守る・・それがオレの戦いだ!」
困惑するフライングフィッシュガルヴォルスに、光輝が高らかと言い放つ。彼はベルトの水晶を脚部にはめ込み、飛び上がる。
「ライダーキック!」
光輝が繰り出したメガスマッシャーを受けて、フライングフィッシュガルヴォルスが突き飛ばされる。絶命したガルヴォルスが崩壊を喫した。
「やった・・・急いでくるみちゃんたちのところに行かないと・・・!」
光輝は気持ちを切り替えて、くるみたちを追いかけていく。その途中、彼は同じく戦いを終えた一矢と合流する。
「一矢さん!」
「光輝か・・くるみさんはオレが助ける。お前は邪魔をするな。」
声を上げる光輝に、一矢が悠然と言いかける。2人は太一と幸介の戦いの場にたどり着く。
「アイツ、性懲りもなく・・・」
一矢は半ば呆れながらも、幸介に向かって飛びかかる。
「ギガス・・オメガも来たか!」
毒づく幸介が太一から後退し、一矢の特攻を回避する。
「そんなに私に始末されたいようだな・・ならば望みどおりにしてくれる!」
高らかに言い放つ幸介が跳躍し、建物の壁や屋根を伝って校舎の屋上に行き着く。そこで彼は体から刃を2本引き抜く。
「何をする気なんだ・・・!?」
警戒心を強める光輝。幸介が彼らに向けて、刃の1本を投げつける。
「何っ!?」
飛び込んできた刃を、光輝たちが回避する。地面に刺さった刃が爆発を引き起こす。
さらに刃を投げつける幸介。その間にも彼は、新たに刃を引き抜いてきていた。
「攻撃の届かない位置から狙ってくる・・姑息なことを!」
「近づこうとしても狙い撃ちされる・・・いったいどうしたら・・・!?」
声を荒げる一矢と光輝。幸介が哄笑を上げて、さらに刃を投げつけてきていた。
「もう・・僕がやるしかない・・・」
そんな中、太一は一抹の決意を膨らませていた。
「クリスレイダー!」
太一が高らかに呼びかける。そこへ1台のバイクが走りこんできた。
クリスレイダー。クリスユニット装着者のためのマシンで、スピード重視の性能となっている。
「呼ばれましたか、太一どの?待ちかねておりましたぞ・・」
クリスレイダーが太一に向けて声をかけてくる。
「クリスレイダー、君ならあのガルヴォルスのところに行けるね?・・僕をそこまで連れて行ってほしい・・」
「そんな気兼ねなどせずに命令してください。私は太一どのの味方ですから・・」
太一の呼びかけにクリスレイダーが答える。太一はクリスレイダーに乗り、幸介を見据える。
「何をするつもりだ、君は・・・!?」
「クリスレイダーにはあるフォームがある。スピード重視の性能とそのフォームを使えば・・」
一矢が訊ねると、太一が気持ちを落ち着けながら答える。彼はクリスレイダーを駆り、幸介に向かっていく。
「クリスレイダー、フライヤーフォーム!」
太一の呼びかけを受けて、クリスレイダーが形状を変える。タイヤが横になって収納され、横に翼が伸びてくる。
これがクリスレイダーのもうひとつの形態、「フライヤーフォーム」である。フライヤーフォームはエアバイクの形状であり、飛行運転が可能となっている。
「空を飛ぶバイク・・こんなすごい機能を持っているなんて・・・」
その姿を見て光輝が驚きを覚える。飛翔したクリスレイダーが、遠距離攻撃を続ける幸介に向かっていく。
「飛んで接近するつもりか・・だが近づけさせるものか!」
いきり立つ幸介が、太一を狙って刃を投げつける。だがクリスレイダーの素早い動きで、幸介は攻撃を当てられずにいる。
「何という速さ・・ここまで速く動けるなど・・・!」
その速さに幸介が毒づく。クリスレイダーが一気に距離を詰めると、クリスセイバーを手にした太一が飛び上がる。
「バカが!わざわざ的になりに来たか!」
嘲笑を浮かべて、幸介が刃を振り上げる。だがそこへクリスレイダーが飛び込んできた。
「何っ!?」
虚を突かれた幸介が、クリスレイダーの突進を受ける。飛び上がった太一は自ら囮となり、クリスレイダーによる奇襲を狙っていたのだ。
「まさかこんな攻撃を仕掛けてくるとは・・おのれ!」
苛立ちを浮かべる幸介が撤退を決め込む。クリスレイダーの上に降り立った太一が、安堵を浮かべていた。
幸介との戦いに辛くも勝利した光輝たち。光輝、一矢とともに変身を解除した太一が、弥生に目を向ける。
「弥生ちゃん・・・僕、もう大丈夫だから・・・」
「うん・・・太一くん、今まででかっこよかったよ・・・」
微笑みかける太一に、弥生が賞賛の言葉をかける。褒められたことで、太一が照れ笑いを浮かべる。
「やれやれ。おめでたいことだな・・だがこれで、さっきのような臆病は薄らいだようだ・・」
そこへ一矢が口を挟んできた。振り向いた太一が困惑の面持ちを浮かべる。
「ま、オレに少しでも近づけるように精進することだな・・」
一矢は悠然と言いかけると、きびすを返してこの場を後にした。
「一矢さん・・・」
一矢の後ろ姿に、太一だけでなく光輝も戸惑いを感じていた。
(一応、ガルヴォルスと戦う心強い仲間、ということでいいんだよね・・・)
一途の信頼を一矢に寄せる光輝。心強い仲間を新たに得て、光輝はガルヴォルスと戦っていく決意を強めていくのだった。