仮面ライダーオメガ 第14話
オメガのベルトを奪われ、さらにメガブレイバーまでもが敵に回ってしまった光輝。幸介の駆るメガブレイバーが、光輝に襲い掛かる。
光輝はとっさに横に飛んで、メガブレイバーの突進をかわす。だが幸介は反転して、再び光輝を狙う。
「やめるんだ、メガブレイバー!ホントにアイツの味方になっちゃったのか!?」
「ムダだ!もはやメガブレイバーは、オメガとなった私のものだ!」
呼びかける光輝の言葉を、幸介が一蹴する。
「光輝、逃げて!このままじゃやられるって!」
くるみが光輝に向けて呼びかける。だが幸介の駆るメガブレイバーから逃れられるはずもない。
メガブレイバーの突進を必死に回避する光輝。だが避けることばかりに気を取られたため、彼は避けた先の廃屋のダンボールの山に突っ込んでしまった。
「光輝!」
くるみが慌てて廃屋の中に入っていく。幸介も光輝を追って廃屋に突っ込む。
だがほこりの舞う廃屋の中に、光輝とくるみの姿はなかった。
「逃げたか・・だがオメガユニットは私のものとなった。もはやヤツには刃向かう力もない・・」
幸介は悠然さを浮かべると、メガブレイバーとともに廃屋を去っていった。その姿を見送って、一矢が苛立ちを募らせていた。
くるみに助けられて、辛くも危機を逃れた光輝。だがオメガユニットを奪われ、2人は困惑を隠せなくなっていた。
「まさか、オメガのベルトを取られるなんて・・・!」
「どうしよう・・あんなんじゃ、取り返すこともできないじゃない・・・!」
ベルトを奪われたことに悔しがる光輝と、考えが思い浮かばず困惑を膨らませるくるみ。
「だけど、このまま諦めるわけにはいかないよ・・オメガの力が、人々を脅かすために使われるわけにいかない・・・!」
「光輝・・・」
「・・とにかく家に戻ろう・・ヒカルちゃんにも、このことを伝えないと・・」
「そうだね・・・どこかに出かけていなければいいんだけど・・・」
光輝の呼びかけを受けて、くるみが携帯電話を取り出して自宅に電話する。彼女は家にいるヒカルに連絡を取ろうとした。
だがつながらず、留守番電話につながってしまった。
「出ない・・どこかに出かけてるみたい・・・」
「まずい・・もしオメガになった幸介に会ったら・・・!」
くるみの言葉に光輝が緊迫を浮かべる。
「急がないと・・ヒカルちゃんが危ない!」
光輝がヒカルを探しに飛び出す。くるみも慌てて光輝を追いかけていった。
その頃、ヒカルは買い物に出ていた。この日の夕食の買出しに出ていた。
「ありがとうございます。次もよろしくお願いします。」
「こっちこそすまねぇな、ヒカルちゃん。またよろしくな。」
挨拶をするヒカルに、町の八百屋のおじさんが気さくな笑みを見せる。ヒカルは買い物を終えて、家へと向かう。
「光輝さんとくるみさんのために、私が頑張って料理を作らないと・・せめてもの恩返しがしたいから・・」
光輝とくるみに喜んでもらおうと、ヒカルは気持ちを引き締めていた。
その帰路の途中、ヒカルは唐突に足を止めた。彼女は近づいてくるオメガの姿を目撃していた。
「光輝、さん・・・?」
ヒカルがオメガの様子に戸惑いを覚える。彼女はそこのオメガが光輝であると思っていた。
「その女・・・まさかな・・あの方は姿を消して、気配さえ感じなくなっているというのに・・・」
「その声・・・」
オメガの装甲をまとっている幸介の声を聞いて、ヒカルが困惑を覚える。
「ヒカルちゃん、逃げるんだ!それは僕じゃない!」
そこへ光輝が駆けつけ、呼びかけてきた。その瞬間、ヒカルは眼前のオメガが光輝でないことを確信する。
「いずれにしろ、この女を始末することに何の障害もない。たとえガルヴォルスであったとしても、その力を開花させるにも丁度いい・・」
構えを取る幸介に、ヒカルが危機感を覚えて後ずさりする。その直後、光輝が幸介に飛びつき、横に突き倒す。
「今のうちだ!ヒカルちゃん、逃げるんだ!」
光輝がヒカルに向けて再び呼びかける。だが幸介の打撃を受けて、激痛を覚えた光輝がうずくまる。
「まさかすぐにまた会えるとはな・・よほど私に葬られたいと見える・・・」
立ち上がった幸介が悠然と言いかける。痛みにあえぐ光輝は、まだ立ち上がることができない。
「そんなに死に急ぎたいなら、望みどおりにしてやるぞ・・お前から先に始末してやる・・・!」
「ヒカルちゃん・・くるみちゃんと一緒に逃げるんだ・・・!」
幸介が鋭く言いかける前で、光輝がヒカルにさらに呼びかける。しかしヒカルは引き下がろうとしない。
「ダメですよ、光輝さん!それでは光輝さんが・・!」
「僕に構わないで・・このままではヒカルちゃんまで危険に・・・!」
ヒカルに必死に呼びかける光輝を、幸介が踏みつける。
「あまり往生際を悪くしてくれるな。うまく手加減ができなくなるじゃないか・・」
「ぐっ!・・たとえ体がバラバラになっても、お前たちガルヴォルスの好き勝手にはさせない・・・!」
冷淡に言いかける幸介に、光輝が声と力を振り絞る。
「そこまで私に葬られたいか・・ならばすぐにバラバラにしてやる!」
怒号をぶつける幸介が、ベルトの水晶を右手の甲にはめ込む。
「メガブレイカーで、お前の体をバラバラにしてくれる!」
「光輝さん!」
拳を振りかざす幸介と、悲鳴を上げるヒカル。だがその瞬間、幸介が横から突き飛ばされ、横転する。
「ぐっ・・・!」
幸介がうめきながら立ち上がる。痛みと攻撃から解放された光輝の目の前には、一矢の姿があった。
「か、一矢さん・・・!?」
「勘違いするな。オレはお前には負けを認めるつもりは毛頭ない。改めて、オメガであるお前に勝利する。その邪魔をされたくないだけだ。」
動揺を浮かべる光輝に、一矢が淡々と言いかける。
「邪魔者は始末する。オレの邪魔をしたことを後悔するがいい。」
「ギガスか・・オレのオメガの力を試すには丁度いい。」
一矢が鋭く言いかけると、幸介が不敵な態度を見せる。
「変身・・・!」
一矢は手にした水晶をベルトにセットし、ギガスに変身する。
「オレに敵などいない。なぜなら、オレは無敵だから・・」
「オメガに敗れたヤツの言えたセリフか?」
高らかに言い放つ一矢を、幸介が嘲笑する。先に飛び出して攻撃を仕掛けたのは一矢のほうだった。
パワー重視の性能を持つギガスの力を振るう一矢。次々と繰り出される攻撃を、幸介は軽やかにかわしていく。
(オレは常に1番でなければならない・・1番になることで、オレは世界を覆す力をも手にする・・1番であるオレは、世界をも変えられる・・・!)
戦闘中、一矢は胸中で自分に言い聞かせていた。世界を変えるのは、常に1番である者。それが一矢が自身を勝者へと駆り立てていた。
(1番であるオレに、敗北はない・・・!)
改めて決意を固めた一矢が、果敢に攻め立てる。その猛攻に幸介が押され気味になる。
「何っ!?ギガスの力が上がってきた!?」
驚愕の色を隠せなくなる幸介。反撃に転じようとするが、一矢の力に劣勢を覆せずにいる。
「くそっ!」
苛立った幸介が、水晶を手の甲にはめる。同じく一矢も、右手の甲に水晶をはめ込む。
「メガブレイカー!」
「ギガブレイカー!」
精神エネルギーを込めたパンチを繰り出す幸介と一矢。攻撃の衝突で轟いた轟音の直後、吹き飛ばされたのは幸介だった。
「バカな!?私はオメガとなった!その私が、オメガに負けたギガスに負けるはずはない!」
「何度も言わせるな。オレにできないことは何もない。当然、オレがお前に勝てないはずもない。」
声を荒げる幸介に、一矢が淡々と言いかける。一矢は自分への絶対の自信を取り戻していた。
「そろそろピリオドを打たせてもらうよ。オレは、オメガとなった吉川光輝と決着を着けるのだ。」
一矢は言い放つと、幸介の懐に素早く飛び込んだ。そして一矢は右足を振り上げ、幸介が装着していたオメガのベルトを蹴り飛ばした。
「なっ!?」
驚愕の声を上げる幸介から、オメガの装甲が消失する。空中に飛び上がったオメガのベルトを、駆け出していた光輝がキャッチする。
「一矢さん・・・」
「これでオレは、オメガとなった君と戦うことができる。だがその前に、オレたちの邪魔をしたあの男が先だ。」
戸惑いを見せる光輝に、一矢が淡々と言いかける。
「あなたへの不満はたくさんあるけど、今はあのガルヴォルスを何とかするのが先決だ・・」
気持ちを引き締めて、光輝が幸介を見据える。オメガの力を失い、幸介は苛立ちを募らせていた。
「おのれ・・絶対に許してはおかないぞ、貴様たち・・・!」
怒号を上げた幸介がジャックガルヴォルスに変身する。光輝がオメガのベルトを身に付け、水晶を手にする。
「変身!」
ベルトに水晶をはめ込み、光輝がオメガに変身する。
「仮面ライダーオメガ!」
高らかと名乗り、構えを取る光輝。彼と一矢を相手に、幸介は興奮をあらわにしていた。
「いいだろう!オメガとギガス、2人まとめて叩き潰してやる!」
いきり立った幸介が刃を2本引き抜き、飛びかかる。同時に刃を振りかざすが、光輝と一矢はそれらをジャンプでかいくぐる。
振り返り、立て続けに刃を振りかざす幸介。だがその攻撃全てを回避、防御されていく。
「全く直撃しない・・これがクリスタルユニットの真髄だというのか・・・!?」
危機に陥る幸介が、息を絶え絶えにしながら声を荒げる。
「人々の自由と平和を守るため、全てを賭けて戦う・・それがオレの信じ抜く正義だ!」
「これはオレの力だ。無敵のオレの力を、お前などに超えられるわけがない。」
光輝が高らかに、一矢が悠然と言い放つ。立ちはだかる2人の戦士に、幸介が眼を見開く。
「ふざけるな・・私はジャックだ・・王と女王に次ぐ存在・・貴様たちなどに負けるはずなどない!」
激情を膨らませて、幸介が飛びかかる。光輝と一矢が水晶を脚部にはめ込み、同時に飛び上がる。
「ライダーキック!」
「ギガスマッシャー!」
2人が繰り出したキックが、幸介の体に叩き込まれる。突き飛ばされた幸介が激痛にさいなまれ、うめき声を上げる。
「こんなことが・・こんなことが!」
苛立ちが頂点に達した幸介が、刃を振りかざして砂塵を巻き上げる。視界をさえぎられた光輝と一矢は、逃亡した幸介を見失った。
「しまった・・逃げられた・・・!」
「オレの攻撃を受けて逃げ延びようとするとは、大したものだな・・」
光輝が毒づき、一矢が不敵に笑う。2人はそれぞれオメガ、ギガスへの変身を解除する。
「ありがとう、一矢さん・・あなたがいなかったら、どうなっていたか・・・」
「だから勘違いするな。オレは君を助けたわけではない。邪魔者を排除したに過ぎない・・」
感謝の言葉をかける光輝に、一矢が高らかな態度を見せる。
「それでも、あなたには感謝している・・・おかげで僕は、オメガとして、仮面ライダーとして戦える・・・」
「くだらない・・だが君からの賞賛は、ありがたく受け取っておこう・・」
一矢は光輝に言いかけると、きびすを返して立ち去っていった。
「光輝・・・!」
「光輝さん!」
そこへくるみとヒカルが光輝に駆け寄ってきた。
「光輝さん、大丈夫ですか!?ケガはしていませんですか!?」
「大丈夫だよ、ヒカルちゃん、くるみちゃん・・一矢さんのおかげで助かったよ・・・」
心配の声をかけるヒカルに、光輝は笑顔を見せる。
「一矢さん、行っちゃったけど・・・」
「大丈夫だよ・・一矢さんはライダーにはふさわしくないけど、その信念は本物だよ・・・」
くるみが不安を口にするが、光輝は笑みをこぼしていた。彼の一矢に対する懸念はある程度和らいでいた。
(もしもまた戦うことになっても、僕は負けない・・世界の平和、人々の自由のために戦う・・それが仮面ライダーだから・・・)
決意を新たにして、光輝はこれからの戦いに備えるのだった。
「帰ろう、ヒカルちゃん、くるみちゃん・・ちょっと疲れちゃったかな・・」
「今日は私が夕食を作ります。いつも光輝さんとくるみさんにお世話になってますから・・・でも、さっきの騒動で、買ったものが・・・」
呼びかける光輝に答えるヒカルが、表情を曇らせる。幸介に襲われたとき、買ったものを落として多くがぐしゃぐしゃになってしまっていた。
「あちゃぁ・・また買いなおしになるのかな・・・」
「冗談言わないで!・・仕方がないから残り物でうまく調理しちゃうわよ。ヒカルちゃん、あたしも手伝うから・・」
頭に手を当てる光輝と、料理への乗り気を見せるくるみ。
「でも、それではくるみさんに悪いです・・・」
「そう思うなら次の機会にお願いね。楽しみしてるからね、ヒカルちゃんの料理。」
困惑を浮かべたところでくるみに言いかけられ、ヒカルは励まされて笑顔を見せた。
「それじゃ行こうか、ヒカルちゃん、くるみちゃん。」
「はい・・」
光輝が改めて呼びかけ、ヒカルが頷く。3人は家に帰り、平穏な日常へと戻っていった。
光輝と一矢の逆襲を受けて、多大なダメージを被った幸介。だが彼にとって、体の痛みよりも2人にやられた屈辱のほうが強かった。
「まさかこの私が・・ここまでやられるとは・・・!」
敗北への苛立ちを膨らませていく幸介。
「やむなしというべきなのか・・オメガとギガス、2人のクリスタルユニット装着者を同時に相手にするのは・・・」
腑に落ちない心境ながら、徐々に気持ちを落ち着かせていく幸介。彼は改めて、クリスタルユニットの脅威を痛感していた。
「この私でも、2つのユニットの力に手も足も出なかった・・さらに別のユニットが加われば、さすがのオレでも生き延びることは不可能・・下手をすれば、キングをも脅かす脅威となる・・合流し一騎団結する前に叩き潰しておく必要がある・・・」
人間の姿に戻った幸介が1人呟きかける。
「ユニットはオメガとギガスだけではない。かつていくつものクリスタルユニットが開発されてきた。だが戦いの中で、その多くが破壊され、さらに異常の発生したユニットも少なくない・・故に現在残っているユニットは、設計されたものの中のほんの一握り・・」
次々と思考を巡らせていく幸介。
「すぐにその中の1機を手に入れて、オメガとギガスを叩けば、私の脅威は一気に激減する・・・!」
妙案を練り上げて、幸介が眼を見開いて哄笑を上げる。
「オメガとギガスの他に1機、クリスタルユニットの存在が確認されている・・まずはそれを手に入れることが先決だ・・」
思い立った幸介が、痛みが和らいできたのを見計らって歩き出す。
「もしも装着してきたのなら、始末してでも奪えばいい・・クリスタルユニットの1機、クリス・・必ず私が手に入れてやるぞ・・・!」
新たなる野心を宿して幸介は歩く。クリスタルユニット「クリス」の存在が明らかになろうとしていた。