仮面ライダーオメガ 第8話
光輝たちの前に現れた人物、ギガス。ビーストガルヴォルスがギガスに向かって飛びかかる。
だがビーストガルヴォルスが振りかざす豪腕を、ギガスは軽々とかわしていく。そして腕を振り下ろした隙を、ギガスは的確に捉えていく。
「くそっ!何という身のこなしだ!」
自身の劣勢に毒づくビーストガルヴォルス。光輝を追い詰めた彼が、完全にギガスに翻弄されていた。
ビーストガルヴォルスが両腕をギガスに向けて振り下ろす。だがギガスは飛び上がり、その攻撃をかわす。
ギガスが跳躍しながら発砲する。その銃撃がビーストガルヴォルスに命中する。
「ぐ、ぐあっ!」
撃たれたビーストガルヴォルスが絶叫を上げる。
「こ、このままではやられる・・撤退するしかない・・・!」
毒づいたビーストガルヴォルスが跳躍して逃走する。ギガスが発砲するが、ビーストガルヴォルスは姿を消してしまった。
追撃を諦めたギガスは銃を腰のフックにかける。そして光輝とヒカルに眼もくれずに、無言でこの場から立ち去っていった。
「何なんだ、いったい・・・!?」
新たなる戦士、ギガスの登場に、光輝は動揺を隠せなくなっていた。
メガブレイバーの待機している廃工場。光輝はそこにヒカルを案内して、メガブレイバーから話を聞こうとしていた。
「あれはオメガと同じクリスタルシステム。名称はギガスだよ。」
「ギガス・・・?」
メガブレイバーから聞かされた言葉に、光輝が疑問符を浮かべる。
「ギガスもオメガと同じクリスタルシステムのユニットだよ。バランスの取れたオメガと違って、ギガスはパワーが重視されているんだ。」
「ギガス・・僕と同じ仮面ライダーが、やっぱり他にもいたんだぁ♪」
メガブレイバーの説明を受けて、光輝が歓喜を浮かべる。狂喜乱舞する彼に、ヒカルが苦笑いを浮かべる。
「よーし!ギガスを見つけ出して、力を合わせよう!同じライダーなんだから、きっと力を貸してくれるよ!」
「そう考えるのはまだ早いよ、光輝。クリスタルユニットを使う人全員がいい人とは限らないんだから・・」
「そんなことないって!正義と平和を守る仮面ライダーに、悪い人はいません!」
完全に仮面ライダーは善人であると思っている光輝に、メガブレイバーは呆れるしかなかった。
「それで、これからそのギガスを探すのですよね?」
そこへヒカルが当惑を浮かべたまま問いかける。
「もちろんだよ。僕たちの前に現れたってことは、この近くにいるってことだからね。」
答える光輝にヒカルが頷く。こうして彼らはもう1人のクリスタルユニットの使い手、ギガスを探すこととなった。
ギガスの乱入で撤退を余儀なくされた男。男はギガスの力に毒づいていた。
「まさかあそこでギガスまで出てくるとは・・」
「それでやむなく引き返してきた、ということか・・」
そこへ現れた青年が、不敵な笑みを見せてきた。
「申し訳ありません・・ギガスに、不覚を取りました・・・」
「気にしなくていいよ。オメガには優勢だったわけだし、予想外だったとはいえギガスまで出てきてくれたんだ。むしろ褒めてやるべきだよ。」
頭を下げる男に、青年が悠然と言いかける。
「次は万全の状態でギガスと戦うことになる。そのときはギガスもオメガも倒してくれるのか?」
「もちろんです。私が必ず、オメガにもギガスにも打ち勝ち、その力を手に入れてみせます。」
問いかけてくる青年に答え、男は動き出す。戦意を膨らませた彼に、青年は楽しみを感じていた。
(せいぜい楽しませてくれ。オメガ、ギガス、クリスタルユニットが戦いを過激にしていく・・フフフフフ・・)
心の中で哄笑を上げながら、青年もこの場を去っていった。
ギガスの行方を求めて、先日の戦いの場となった広場を再び訪れた光輝とヒカル。しかし広場はガルヴォルスが現れたことがウソであるかのように、平穏な日常が戻っていた。
「これじゃ手がかりになるものさえ見つけられないですね・・」
「そうだね・・でもこの近くに必ずいるはずだよ・・まだ1日だっただけだし・・」
呟きかけるヒカルと光輝。周囲を探索しても、手がかりを見つけることができないでいた。
「やっぱり何も分からない・・どうしたものかな・・・」
「メガブレイバーさんは、ギガスの居場所が分からないんですか・・・?」
「メガブレイバーはオメガを守るために作られたって言ってた。オメガの居場所は分かっても、他のライダーの居場所は分からないんだ・・」
ヒカルの問いかけに光輝が答える。メガブレイバーはオメガの護衛と援護を目的として作られている。オメガの居場所を探知することができるが、他のクリスタルユニットを探知することはできない。
「これではガルヴォルスが出てくるのを待つしか・・」
「そんなのはダメだって。誰かが襲われるのを待つなんて・・」
思考を巡らせるヒカルと光輝。そのとき、光輝が唐突に足を止めた。
「どうしたんですか、光輝さん・・?」
「あれは・・竜也くんだ・・・竜也くん!」
ヒカルが訊ねる横で、光輝が見つめる先にいる竜也に声をかける。しかし竜也は立ち止まらずに歩いていってしまう。
「あ、ちょっと、竜也くん・・・!」
光輝が慌てて竜也を追いかける。光輝に駆け寄られて、竜也はようやく足を止めた。
「何の用か?くだらないことでオレを呼び止めるな。」
「そんな冷たい言い方しなくても・・でも、また会えて嬉しいよ・・」
冷徹に告げる竜也に、光輝が再会の喜びを見せる。
「それで用は何だ?用がないのにオレを呼び止めるな。」
「特に用があるってわけじゃないんだけど・・ただ・・・」
「ただ?」
「この辺り、最近怪物が出るようになってきたんだ・・だから竜也くんも気をつけてほしいと思ったわけで・・」
「怪物?オレにとって、思い上がった人間全てが怪物だ・・」
注意を促す光輝だが、竜也は冷徹に告げるばかりだった。彼こそはその怪物の1人であることを知らずに、光輝は親友への信頼を寄せていた。
「オレはお前のように正義を信じてはいない。滅んでしまえばいいと思っている・・・」
「竜也くん・・・」
「用はそれだけか?ならばオレはもう行くぞ・・」
竜也は言いかけると、光輝の前から立ち去っていった。
「竜也くん・・・」
その後ろ姿を見つめて、光輝は困惑を浮かべていた。
「どうしたのですか、光輝さん・・・?」
そこへヒカルが追いついてきて、光輝に声をかけてきた。
「友達に会ったんだ・・海道竜也くんっていうんだ・・」
「海道竜也さん・・・何だか、悲しそうな人・・・」
光輝が紹介すると、ヒカルが沈痛の面持ちを見せる。彼女の言葉に光輝も頷く。
「でも竜也くんは、必ずみんなと分かりあうことができる・・僕はそう信じているんだ・・・」
「なるほど・・それでは私も信じます・・私とも分かり合えると・・」
光輝の気持ちに同意して、ヒカルも自分の気持ちを告げる。その言葉に光輝は頷いた。
「やっぱり、この近くにいないみたいです・・・」
「そうだね・・ここはもう出直したほうがいいかも・・」
ヒカルの言葉に光輝が頷く。2人はひとまず家に帰ろうとした。
そのとき、近くで轟音が鳴り響いたのを、光輝とヒカルは耳にした。
「この音・・・!?」
「もしかしたら、ギガスがガルヴォルスと戦っているのかもしれない・・・!」
思い立った2人は、轟音のしたほうへと駆け出していった。
光輝とヒカルが駆けつけた河川敷。そこではビーストガルヴォルスとギガスが対峙していた。
「いた!ギガスだ!」
「この前出てきたガルヴォルスですよ・・・!」
声を荒げる光輝とヒカル。ビーストガルヴォルスがギガスを鋭く見据えていた。
「この前の雪辱を晴らさせてもらうぞ。オメガとの戦いでの疲れがなければ、私はお前にやられることはなかった・・・!」
いきり立ったビーストガルヴォルスがギガスに飛びかかる。振り下ろされる豪腕と爪を、ギガスは次々と回避していく。
「どうした!?よけてばかりでは私には勝てないぞ!」
高らかに言い放ちながら、ビーストガルヴォルスがギガスに迫る。だがギガスはここで反撃に転じた。
ビーストガルヴォルスの大振りな腕をかわすと、ギガスは乱打を繰り出す。その猛攻にビーストガルヴォルスが押される。
「くっ!真っ向勝負でもギガスに劣るというのか・・・!」
劣勢に苛立ちを覚えるビーストガルヴォルス。そこへギガスが懐に飛び込んできた。
だがビーストガルヴォルスが、両腕でギガスをつかんだ。
「あっ!」
「捕まえたぞ!このまま締め上げてくれるぞ!」
声を上げる光輝の前で、ビーストガルヴォルスが哄笑を上げる。力が込められるその両腕から、ギガスは脱しない。
「早く助けに行かないと・・!」
耐えかねた光輝が、ギガスとビーストガルヴォルスに向かって飛び出した。
「変身!」
水晶をベルトにはめ込んで、オメガに変身する光輝。彼が果敢に突っ込むと、ビーストガルヴォルスは横転してギガスを放す。
「大丈夫か!?・・お前のようなヤツに、世界の平和を乱させはしないぞ!」
光輝は高らかに言い放つと、ビーストガルヴォルスに向かって駆け出していく。
「今度こそとどめを刺してやるぞ、オメガ!」
これを迎え撃つビーストガルヴォルスが、光輝に向けて右腕を振りかざす。光輝は前転してこの攻撃をかわす。
すぐさま打撃に転じる光輝。その猛襲がビーストガルヴォルスを押していく。
「おのれ!調子に乗りおって!」
苛立ちを覚えたビーストガルヴォルスが、光輝の両腕をつかみ上げる。
「ぐっ!」
腕を押さえつけられてうめく光輝。ビーストガルヴォルスが勝ち誇って哄笑を上げる。
「これで終わりだ、オメガ!」
「オレは・・オレは負けない・・お前たちガルヴォルスから自由と平和を守るために・・・!」
光輝が力を振り絞り、ビーストガルヴォルスの腕を払おうとする。
「負けるわけにはいかないんだ!」
光輝が高らかに叫んだとき、ベルトの水晶から閃光がほとばしった。
「何っ!?」
「オメガフラッシャー!」
驚愕するビーストガルヴォルスに向けて、閃光が解き放たれる。その光を受けたビーストガルヴォルスが吹き飛ばされる。
クリスタルユニットは使用者の精神力に呼応する。精神力の強さが、使用者の戦闘力へと結びつくのである。
「この力・・オメガにこんな能力を持っていたとは・・・!」
オメガの力に脅威を覚えるビーストガルヴォルス。
「仮面ライダーの代名詞はライダーキックだけど、ライダーの必殺技はそれだけではない!」
光輝は言い放つと、ベルトの水晶を右手の甲の部分にはめ込んだ。彼の精神力が力になって拳に集束される。
「ライダーパンチ!」
光輝がビーストガルヴォルスの体に拳を叩き込む。強い衝撃に襲われるビーストガルヴォルスだが、両足に力を込めて踏みとどまる。
「この程度で、私を倒せると思っているのか!?」
ビーストガルヴォルスが光輝に向けて拳を振るう。光輝は飛び上がり、その攻撃をかわす。
「ライダーチョップ!」
降下しながら振り下ろされる光輝の手刀。その一閃がビーストガルヴォルスの頭部を切り裂いた。
「ぐおっ!」
頭に激痛を覚えて、ビーストガルヴォルスが後ずさりする。
「まだ浅いのか・・・!」
「まさか私が、オメガに手傷を負わされるとは・・・!」
互いに毒づく光輝とビーストガルヴォルス。危機感を覚えたビーストガルヴォルスが後退し、そのまま姿を消してしまった。
「・・何とか追い返した、ということか・・・」
安堵をつく光輝が、ギガスに振り返る。だがギガスはこの場を離れようとする。
「待って!」
光輝が呼びかけると、ギガスは1度足を止める。
「君もガルヴォルスと戦っているんだよね?だったら一緒に力を合わせて・・」
言いかける光輝だが、ギガスは言い終わるのを聞かずに改めて歩き出していった。
「行ってしまいましたね・・・」
ヒカルが声をかけると、光輝はオメガへの変身を解除した。
「また会える・・僕はそう信じているんだ・・・」
「光輝さん・・・光輝さんが信じるのですから、私も信じます・・・」
光輝の言葉を受け止めて、ヒカルも微笑みかける。2人は必ず活路が開かれると信じていた。
「もう日が落ちます・・今日は帰りましょう、光輝さん・・・」
「そうだね・・帰ろう、ヒカルちゃん・・・」
ヒカルの呼びかけに光輝が頷く。2人はひとまず帰宅することにした。
光輝の猛攻に押され、撤退を余儀なくされた男。
「まさかオメガに、私がやられるとは・・・こんなバカなこと・・・!」
「オメガを侮った結果だ。」
悔しがる男に、背後から現れた青年が声をかけてきた。
「クリスタルユニットは、使用者の精神力が戦闘力として働きかける。完全に実力が上だと高をくくるとこうなるのだ。」
淡々と言いかける青年に、男は言葉を出すことができなかった。
「しかし1度はオメガを追い詰め、ギガスまで引っ張り出してきたお前の行動は評価できる。よくやってくれた・・」
青年は微笑みかけると、男に右手を差し出した。するとその手から衝撃波が放たれ、男が吹き飛ばされる。
「な、何をする!?」
「ここからは私がオメガとギガスの相手をする。悪いがお前は用済みだ。」
声を荒げる男に、青年が淡々と言いかける。
「私を利用していたというのか!?私を敵に回すつもりか!?」
「敵?お前程度など、敵とも見ていない。」
「貴様!」
青年への怒りをあらわにした男が、ビーストガルヴォルスに変身する。ビーストガルヴォルスが豪腕を振りかざし、青年に攻撃を仕掛ける。
だがその攻撃を、青年は右手からの衝撃波で軽々と受け止めてしまった。
「何っ!?」
「ガルヴォルスは人の姿を取っていても、普通の人間の能力を超えている。それはお前も分かっていたはずだが?」
驚愕するビーストガルヴォルスに、青年が淡々と言いかける。
「お前程度、わざわざガルヴォルスの姿を見せるまでもない・・・」
嘆息混じりに言いかけると、青年はビーストガルヴォルスの体に左手の指を当てる。その指先からビームが放たれ、ビーストガルヴォルスの体を貫いた。
命を奪われたビーストガルヴォルスの体が崩壊していった。青年がきびすを返して、再び不敵な笑みを浮かべた。
「そろそろ本格的に力を慣らしておくか・・この男のように寝首をかかれるわけにいかないから・・」
青年は呟きながら歩き出していった。オメガ、ギガス、クリスタルユニットの力を突き止めるべく、彼は自ら行動を起こすのだった。
街外れの廃屋に来ていたギガス。ギガスは水晶を外して意識を傾け、装甲を解除した。
「オメガが現れたのか・・だがオレにとっては問題ですらない・・」
青年は呟きながら、廃屋から歩き出していった。
「オレは全てにおいて頂点に立つ。世界のためにオレがあるのではない。オレのために世界があるのだ・・」
悠然とした態度を振舞いながら、青年は歩き出していった。これが青年、富士野一矢だった。