仮面ライダーオメガ 第6話

 

 

 ドラゴンガルヴォルス、竜也の猛攻に押された光輝。草むらに突き飛ばされた彼がまとっていた装甲が消失し、変身が解除される。

「くー!・・こんな強いガルヴォルスが出てくるなんて・・・下手なやり方をしたら、逆にバラバラにされてしまう・・・!」

 体に痛みを覚えながら、ドラゴンガルヴォルスの力を痛感する光輝。そこへメガブレイバーが駆けつけ、光輝に声をかける。

「光輝、大丈夫かい?」

「メガブレイバー・・大丈夫だ。このくらい、何とも・・・」

 メガブレイバーの心配に、光輝が笑みを浮かべて答えた。だがその直後、光輝が突然倒れ、メガブレイバーにもたれかかってきた。

「光輝!?しっかりするんだ、光輝!」

 メガブレイバーが呼びかけるが、光輝は答えない。メガブレイバーはやむなく、光輝を乗せたまま安全な場所へと移動するのだった。

 

 間もなく夕暮れになろうとしていた。帰りの遅い光輝に、くるみが不満を覚え、ヒカルが心配を感じていた。

「もう光輝ったら、どこを遊びまわってるっていうのよ!」

「くるみさん、少し落ち着いたほうが・・・」

 不満をあらわにしたまま右往左往するくるみを、ヒカルが呼び止めようとする。

 そのとき、家のチャイムが鳴り出し、くるみがそれに機敏に反応する。彼女はズカズカと玄関に向かい、勢いよくドアを開けた。

 その先には光輝の姿があった。彼を視認した瞬間、くるみの眼が大きくつり上がった。

「光輝!今までどこを遊びまわっていたのよ!?遅くなるならせめて連絡ぐらいしてから・・!」

 くるみが光輝に向けて怒鳴り散らす。すると光輝が力なく倒れる。

「こ、光輝!?

 くるみが血相を変えて光輝を支える。彼女が呼びかけるが、光輝は意識を取り戻さない。

「ヒカルちゃん、ちょっと手伝って!光輝が・・!」

「えっ!?は、はい!」

 くるみに呼びかけられて、ヒカルも顔を見せる。2人は光輝をベットまで運び、介抱するのだった。

 彼が眼を覚ましたのは、それから夜を終えて朝日が昇ろうとしたときだった。

「あ、あれ?・・・ここは、僕の家・・・」

 意識がハッキリしていない光輝が、部屋を見回して当惑を浮かべる。

「やっと眼が覚めたのね・・」

 そこへくるみがため息混じりに声をかけてきた。

「くるみちゃん・・・」

「玄関にいたと思ったらいきなり倒れるんだもん。ビックリしちゃったじゃないのよ・・」

 戸惑う光輝にくるみが肩を落とす。

「ゴメン、くるみちゃん・・・心配かけちゃって・・・」

「そう思うなら、最初から心配かけるようなことしないでよね・・」

 謝る光輝にくるみが再びため息をつく。そこへヒカルが現れ、心配の眼差しを光輝に向けてきた。

「光輝さん、大丈夫ですか・・・?」

「ヒカルちゃんもゴメン・・僕はもう大丈夫だよ・・ちょっと張り切りすぎて、疲れちゃっただけだよ・・」

 ヒカルが声をかけると、光輝が微笑みかける。

「よかった・・よかったです・・・」

 安心したヒカルが涙ながらに微笑む。

「光輝、いったい何をしているの?私たちに何を隠してるの?」

 くるみが深刻な面持ちで光輝に問いかける。

「こんなになるまでのことなんて、もうただ事じゃないことは分かりきってる。だから教えて。何をやってるの?」

「くるみちゃん・・・ゴメン・・今はまだ話せない・・・」

 光輝が沈痛の面持ちを浮かべて、答えるのをためらう。しかしそれで納得するくるみではなかった。

「たとえ隠し通そうとしたって、必ず暴いてやるんだから・・」

 くるみが不満を膨らませながら、リビングから自分の部屋に入り込んでしまった。

「くるみさん・・・」

 ヒカルがくるみに対して沈痛さを覚える。しかし光輝はさほど気にする様子を見せていなかった。

「大丈夫だよ。くるみちゃんはいつもあんな感じだから。しばらくしたらいつものように戻るって・・」

「そうなんですか?・・・とても不安になってきます・・・」

「もし本当に思いつめているようだったら、僕が声をかけるよ・・」

 笑顔を見せる光輝に、ヒカルは不安を和らげていった。2人はくるみが元気を見せるのを待つことにした。

 

 ドラゴンガルヴォルスに敗北を喫した光輝は、メガブレイバーの待機している廃工場に来ていた。

「まさか、あんな強いガルヴォルスが出てくるなんて・・」

「クリスタルシステムも完全無欠というわけではないよ。ひとつのユニットでガルヴォルス全員を一掃できるわけではない。」

 肩を落とす光輝にメガブレイバーが言いかける。

「ヒーローも無敵じゃない、か・・ヒーローに敗北はあってはならないというのが定理なんだけどね・・・ちょっと待って。ユニットって、オメガだけじゃないの・・・!?

「うん。ユニットは他にも存在する。破損したものもあるけど、どのくらい残っているのかは私も分からない・・いつか、ユニットを持った人と出会うことになるかもしれない・・」

「僕と同じ、ライダーになった人たちがこの世界にいる・・・何だかワクワクしてきちゃったよ!」

 他のユニットの持ち主の存在を知り、光輝が歓喜を浮かべる。

「相変わらず君は純粋で真っ直ぐだね、光輝・・」

「ユニットの持ち主と合流したいのもあるけど、まずは僕自身が強くならないことには何も始まらない・・もっと頑張らないと・・」

 意気込みを見せる光輝に、メガブレイバーは声をかけづらくなってしまった。

「よーし!僕も強くなって、悪いガルヴォルスから世界を守るぞー!」

 光輝は張り切って準備運動を始める。こうなった彼を止められないと考え、メガブレイバーはこれ以上声をかけなかった。

 

 自分が光輝にのけ者にされたと思い込んだために不機嫌になっていたくるみは、衝動買いに走っていた。ヒカルも心配になり、彼女についていっていた。

「もう!光輝ったら!あたしのことを何だと思ってるのよ!」

「落ち着いてください、くるみさん・・光輝さんがそんな悪い人ではないですよ・・」

 不満を口にするくるみを、ヒカルが困惑しながらなだめる。

「分かってるわよ!・・でもこのまま蚊帳の外でいるのが納得していないだけ。単に悪者扱いしてるだけよ・・」

 するとくるみが沈痛の面持ちで言いかける。その言葉にヒカルが戸惑いを覚える。

「ホントは光輝から話してきてほしかったのに・・」

「くるみさん・・・」

 愚痴をこぼすくるみに、ヒカルは戸惑いを浮かべるばかりだった。

 そのとき、2人のいるこの通りに悲鳴が飛び込んできた。それを聞いた彼女たちが振り返る。

 その先で人々が次々と肉体の崩壊を引き起こしていた。

「ち、ちょっと!?・・何がどうなってるのよ・・・!?

 あまりに非現実的な出来事に、くるみは驚愕の色を隠せなかった。そして彼女たちの前に、異形の怪物が姿を現した。

「怪物!?・・この様子、特撮じゃないわよね・・・!?

 眼の前の出来事に眼を疑うくるみ。危機を覚えたヒカルが後ずさりをする。

「くるみさん、ここは逃げたほうがいいですよ・・・!」

 ヒカルがくるみに呼びかけたときだった。怪物、ビーガルヴォルスが2人に向けて針を飛ばしてきた。

「危ない、くるみさん!」

 ヒカルがくるみを引っ張って後退する。2人がいた場所に針が突き刺さる。

「逃げましょう、くるみさん!」

 ヒカルは呼びかけると、くるみとともにここから逃げ出していく。

「逃げられると思っているのか?」

 ビーガルヴォルスが2人を追って、羽を羽ばたかせて飛行していった。

 

 街で起こっているビーガルヴォルスの騒動を、メガブレイバーのセンサーがキャッチした。光輝はメガブレイバーを駆り、街に向かっていた。

「もしかしたらくるみちゃんとヒカルちゃんが・・・急ぐんだ、メガブレイバー!」

「任せてくれ、光輝。」

 光輝の呼びかけに、メガブレイバーが答えて加速する。光輝が水晶を取り出し、装甲の装着を行う。

「変身!」

 ベルトに水晶にはめ込み、光輝がオメガへと変身する。街へと突き進んでいく中、彼はビーガルヴォルスを視認する。

 光輝はさらに加速してビーガルヴォルスに突進する。メガブレイバーの突進を受けて、ビーガルヴォルスが上空から叩き落とされる。

「な、何だ、お前は・・・!?

 立ち上がったビーガルヴォルスが光輝に問い詰める。くるみもヒカルもオメガの登場に動揺を覚える。

「仮面ライダーオメガ!」

 光輝が高らかに名乗り、ビーガルヴォルスを見据える。

「か、仮面ライダー・・ホントにいたの・・・!?

「くるみさん、今のうちに逃げたほうが・・・!」

 声を荒げるくるみにヒカルが呼びかける。様々な疑問を抱えたまま、くるみはヒカルに連れられてこの場を離れる。

「よくも邪魔をしてくれたな・・この礼は高くつくぞ・・!」

「お前の身勝手な振る舞い、許すわけにはいかない!」

 苛立ちを見せるビーガルヴォルスに、光輝が強く言い放つ。

「おのれ!これでも食らえ!」

 ビーガルヴォルスが光輝に向けて針を飛ばす。光輝の乗るメガブレイバーの前輪が、その針を叩き落とす。

「くそっ!オレの力は針だけじゃないんだぞ!」

 ビーガルヴォルスは言い放つと、きびすを返して飛行していく。光輝は彼を追ってメガブレイバーを走らせる。

 だがビーガルヴォルスの速さは、メガブレイバーの最高時速を上回っていた。

「このままでは逃げられてしまう・・どうしたら・・・!」

 危機的状況に毒づく光輝。そんな彼にメガブレイバーが呼びかける。

「スピードフォームに変形するよ!」

「えっ!?スピードフォーム!?

 その言葉に驚く光輝。そのとき、メガブレイバーの形状が変化し、スピード重視のものへと変わる。

 これがメガブレイバーのもうひとつの形状「スピードモード」である。スピードモードは通常時のパワードモードと比べて、スピードが飛躍的に増大するのである。

「スピードモードならあのガルヴォルスに追いつける。君もこの加速についてこられる。」

「そうか・・よし!行くぞ、メガブレイバー!」

 光輝の呼びかけを受けて、メガブレイバーが加速する。スピードフォームのメガブレイバーは、超高速でビーガルヴォルスに迫っていく。

 そして荒野に差し掛かったところで、メガブレイバーがビーガルヴォルスに追いついた。

「今だ!」

 光輝は飛び上がり、ビーガルヴォルスの背に乗った。

「お前!?

 驚愕の声を上げるビーガルヴォルスに、光輝が打撃を見舞う。背後からの攻撃で怯み、ビーガルヴォルスは光輝とともに地上に落下する。

「メガブレイバー!」

 光輝の呼びかけを受けて、メガブレイバーが駆け込んできた。地面に落ちようになった光輝は、メガブレイバーに拾われる。

 落下の勢いのまま地面に叩きつけられるビーガルヴォルス。メガブレイバーから降りた光輝が、ベルトの水晶を右手の甲の部分にはめ込む。

「お前たちの暴挙から人々を守る。それが仮面ライダーだ!」

 光輝は高らかに言い放つと、ビーガルヴォルスに向かって駆け出していく。

「ライダーチョップ!」

 光輝が振り下ろした手刀が、ビーガルヴォルスを切り裂いた。両断された怪物が絶命し、粉々になって吹き飛んだ。

 ビーガルヴォルスを撃破した光輝。彼は振り返り、メガブレイバーに向かって歩いていく。

「ありがとう、メガブレイバー・・君のおかげで僕は勝てた・・・」

「そんなことはない。君の力があればこそだ・・」

 感謝の言葉をかける光輝に、メガブレイバーが答える。光輝は変身を解くと、握る自分の手をじっと見つめる。

(これからもガルヴォルスたちが、人々に襲い掛かってくる・・その魔の手から人々を守るのが、僕の使命だ・・・)

 光輝は改めて誓った。自由と平和を脅かすガルヴォルスと戦い続けることを。

「それじゃ僕はくるみちゃんとヒカルちゃんのところに行くよ・・」

 光輝はメガブレイバーに言いかけると、くるみとヒカルのところに向かっていった。

 

 突然の怪物の出現に、くるみもヒカルも困惑していた。

「いったい何なのよ!?・・・怪物もだけど、その怪物を追いかけていった人も・・・!」

 たまらず声を荒げるくるみ。ヒカルはビーガルヴォルスと対峙したオメガの正体に気付いていたが、確かめるのが怖くなり、打ち明けられずにいた。

「とにかくここから離れたほうがよさそうね・・またあんな怪物が出てくるかもしれないし・・」

「はい・・分かりました・・・」

 くるみの呼びかけにヒカルが頷く。2人が街から離れようとしていた。

「くるみちゃーん!ヒカルちゃーん!」

 そこへ光輝が現れ、2人に声をかけてきた。

「光輝!?

「光輝さん・・」

 声を荒げるくるみと、困惑を浮かべるヒカル。光輝が2人に笑顔を見せる。

「街のほうで怪人が出たって聞いて、飛び出してきたんだ・・」

「怪人・・そんなはずは・・だってあればTVの話で・・・」

 光輝が言いかけると、くるみが状況の整理がつかず、混乱に陥る。

「とにかくここから離れたほうが・・・」

 そこへヒカルが声をかけ、くるみが我に返る。光輝も笑みを見せたまま頷きかける。

 街から離れようとしたとき、くるみは光輝に鋭く声をかけてきた。

「もしかして、あんな怪物を相手にしてるってことないよね・・・!?

「えっ!?まさか、そんな!アハハハハ・・・」

 くるみの言葉に対して、光輝が苦笑いを浮かべる。

「でも、もしあんな怪人が出てきたなら、僕がやっつけてやるぞー!それがヒーローというものだー!」

「ハァ・・相変わらずアンタって人は、光輝・・・」

 正義感あふれる意気込みを見せる光輝に、くるみは呆れ果てていた。

(絶対に何かに関わっている、光輝は・・必ず突き止めてやるんだから・・・!)

 くるみが光輝に対して疑念を抱いていた。彼女はその真相を突き止めることを心に決めていた。

 

 漆黒に彩られた洞窟。その中に1人の青年がいた。

 青年は周囲の静寂に一切の動揺も感じていなかった。そんな彼の前に1人の男がやってきた。

「オメガが現れたようです・・」

「分かっている。だが私が直接手を下す機会ではない。」

 男からの報告に、青年が淡々と答える。

「先ほど、オメガ奪取のために1人向かわせた。オメガの力を再確認するためにな。」

「なぜ、そのようなことを・・あなたならオメガを倒すことは容易のはず・・」

「そいつが志願してきたのだ。それに、こういう茶番を眺めるのも悪くないと思ってな・・」

 青年が口にした言葉に、男が当惑を覚える。

「もしもオメガが、我々の想像以上の相手ならば、私が直接相手になってやるとしよう・・」

 青年は淡々と言いかけると、洞窟から歩き出していった。

(我々ガルヴォルスにとって恐ろしい脅威と囁かれているクリスタルシステム。その力量がどれほどのものなのか、確かめておかないとな・・)

 歩く中、青年はオメガの力に興味を示していた。

(もしもそれなりのレベルなら、私が手に入れてみるのも悪くない・・)

 彼はいつしかオメガの力にひかれ始めていた。ガルヴォルスの猛威が、本格的にオメガに忍び寄ろうとしていた。

 

 

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